JP5554000B2 - 糖化ヘモグロビン測定用試料の測定方法 - Google Patents
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Description
そこで近年、上記従来の測定方法の問題点を解決する方法として酵素法が新たに開発された。酵素法とは、糖化ヘモグロビンよりタンパク質分解酵素を作用させて糖化アミノ酸あるいは糖化ペプチドを生成させ、さらに糖化アミノ酸あるいは糖化ペプチドを基質として過酸化水素を生成する酸化還元酵素を用いて過酸化水素を生成し、さらに該過酸化水素をパーオキダーゼの存在下において発色基質と反応させて発色へと導く比色定量法である(特許文献1)。
従って、本発明は、糖化ヘモグロビン測定用の試料を酵素法により正確に測定するための方法を提供することを課題とするものである。
そこで、さらに検討したところ、糖化ヘモグロビン測定用試料を測定する前に、予め該試料とチオール封鎖剤とを混合した後に酵素法による測定に付せば、該試料にチオール化合物が含まれている場合でも、チオール化合物による影響を回避し、高精度に糖化ヘモグロビン濃度を測定できることを見出し、本発明を完成に至った。
また、本発明は、チオール封鎖剤を含有することを特徴とする糖化ヘモグロビン測定用試料の前処理試薬を提供するものである。
上記緩衝液としては、好ましくは、pH4.0〜10.0、さらに好ましくは、pH5.0〜9.0の範囲で緩衝能を有するもので、例えば、クエン酸、コハク酸、酒石酸、リンゴ酸等の有機酸及びその塩類;グリシン、タウリン、アルギニン等のアミノ酸類;塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、ホウ酸、酢酸等の無機酸及びその塩類等、グッドの緩衝液などの両性緩衝液が挙げられる。
また、糖化ヘモグロビン測定用試料には、防腐剤等が含まれていてもよい。なお、該試料のpH、組成等の制限はない。
チオール封鎖剤は、溶解性の点から、マレイミド系化合物が好ましく、特にNEMが好ましい。
糖化ヘモグロビン測定用試料にはヘモグロビン(以下、Hbという)1mgあたり0.03μmole〜0.5μmoleのチオール化合物が含有される場合があり、例えば、該試料中のチオール化合物濃度にもよるが、チオール封鎖剤を、Hb1mg当たり0.03μmole〜50μmole、好ましくは0.03μmole〜25μmoleとなるように混合するのが好ましい。
上記前処理試薬中のチオール封鎖剤の含有量は、1〜300mMとするのが好ましく、特に10〜200mMとするのが好ましい。
かくして、酵素法により糖化ヘモグロビン測定用試料を測定することによって、他の測定法と比較しても負誤差のない、正確な糖化ヘモグロビン濃度の測定値が得られる。
1.試料に含まれるチオール化合物の濃度測定
(1)試料の調製
・標準液(システイン希釈系列)
1,000μMのL−システイン水溶液を生理食塩水で倍々希釈することにより、10濃度の希釈系列を調製した(1,000、500、250、125、62.5、31.25、15.625、7.8125、3.90125、1.950125)
・グリコHbコントロール(シスメックス社製、凍結乾燥品)
2種の凍結乾燥品を精製水200μLで溶解(Level1(HbA1c%、5.6%)、Level2(同9.8%))後、さらに生理食塩水で50倍希釈したものを試料として測定に供した。
・JCCLS CRM−004a(HECTEF、HbA1c測定用実試料標準物質(凍結品))(対照)
5種の凍結品(Level1(HbA1c%、4.54%)、Level2(同5.27%)、Level3(同6.96%)、Level4(同9.24%)、Level5(同11.58%))を生理食塩水で50倍希釈したものを試料として測定に供した。
日立7170形自動分析装置を用いて、以下の操作により各試料の測定を行った。
<第一試薬>
50mM トリス緩衝液(pH7.5)
<第二試薬>
1mM 5,5’−Dithiobis(2−nitrobenzoic acid)(DTNB、和光純薬工業社製)
50mM トリス緩衝液(pH7.5)
<測定パラメータ>
分析方式:2ポイントエンド
測定波長(副/主):505/405
側光ポイント:16−34
反応時間:10分
サンプル量:15μL
第1試薬量(R1):180μL 第3試薬量(R2):90μL
各試料の吸光度I及び吸光度IIから式Aを用いて各試料の吸光度変化量(測定値)を算出した。
式A:吸光度変化量(測定値)=吸光度II−(吸光度I×(15+180)/(15+180+90))
(1)試料の調製
・グリコHbコントロール
上記2種の凍結乾燥品を精製水200μLで溶解したものを測定に供した。
・JCCLS CRM−004a
上記5種の凍結品を室温にて融解後、測定に供した。
ネスコート ヘモキット−N(アルフレッサファーマ社製)を用いて、以下の操作により各試料の測定を行った。
<ヘモグロビン濃度測定試薬>
・呈色液
精製水で50倍希釈して使用した。
・標準液(ヘモグロビン16.0g/100mL)
そのまま使用した。
式B:Hb濃度(g/dL)=(吸光度I−吸光度III)÷(吸光度II−吸光度III)×16.0
(1)試料の調製
・グリコHbコントロール
上記2種の凍結乾燥品を精製水200μLで溶解した後、150mM N−エチルマレイミド(NEM)(東京化成工業社製)酸性溶液(pH2.8、1N 塩酸にて調製)あるいは精製水と等量ずつ混合し、さらに下記検体希釈液で7倍希釈したものを試料として測定に供した。
・JCCLS CRM−004a
上記5種の凍結品を融解した後、150mM N−エチルマレイミド(NEM)酸性溶液(pH2.8)あるいは精製水と等量ずつ混合し、さらに下記検体希釈液で6倍希釈したものを試料として測定に供した。
<検体希釈液>
10mM 亜硝酸ナトリウム
<プロテアーゼ含有基質試薬(第一試薬)>
以下の成分を含む50mM リン酸ナトリウム緩衝液 pH7.0
1.5% アンヒトール20BS(花王社製)
2.0 mg/mL プロチンPC10F(大和化成工業社製)
0.01% アジ化ナトリウム(キシダ化学社製)
50μM DA−67(10−(カルボキシメチルアミノカルボニル)−3,7−ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジンナトリウム、和光純薬工業社製)
<発色試薬(第二試薬)>
以下の成分を含む50mM リン酸ナトリウム緩衝液 pH7.0
10U/mL フルクトシルペプチドオキシダーゼ(キッコーマン社製)
1U/mL パーオキシダーゼ(東洋紡社製)
<校正用試料>
・ブランク試料;10U/mL POD水溶液(10,000Uのパーオキシダーゼ(東洋紡社製)を、精製水1Lで溶解した)
・ヘモグロビンA1c校正用試料L(HbA1c(%)5.27%、凍結乾燥品)、(積水メディカル製、HbA1cコントロールL)
・ヘモグロビンA1c校正用試料M(HbA1c(%)7.64%、凍結乾燥品)、(積水メディカル製、HbA1cコントロールM)
・ヘモグロビンA1c校正用試料H(HbA1c(%)10.81%、凍結乾燥品)、(積水メディカル製、HbA1cコントロールH)
いずれも検体希釈液300μLで溶解して測定に供した。
日立7170形自動分析装置を用いて、以下の操作により各試料の測定を行った。
<測定パラメータ>
分析方式:3ポイントエンド
測定波長(Hb、副/主):800/505
(HbA1c、副/主):800/660
測光ポイント(Hb):0−14
(HbA1c):16−34
反応時間:10分
サンプル量:12μL
第1試薬:180μL(R1) 第3試薬(R2):60μL
各試料のAbs1(mOD)及びAbs2(mOD)から下記式Cを用いて各試料の吸光度変化量(測定値)を算出した。
式C:吸光度変化量(ΔAbs)=Abs2−Abs1×192÷252
また、ブランク試料と校正用試料(HbA1cコントロールL)の2点のAbs3よりHbの検量線を作成した。
式D:HbA1c(%)=HbA1c(μmol/L)÷Hb(μmol/L)×96.3+1.62
(1)試料の調製
・グリコHbコントロール
上記2種の凍結乾燥品を精製水200μLで溶解した後、さらに検体希釈液(東ソー社製)で101倍希釈したものを東ソー自動グリコヘモグロビン分析計HLC−723G8で測定した。
・JCCLS CRM−004a
上記5種の凍結品を検体希釈液で201倍希釈したもの試料としてHLC−723G8で測定した。
HLC−723G8を用いて測定した。表1にHPLC法により求めた各試料のHbA1c量(%)を示す。
また、表1に示すようにチオール化合物を多量に含有するグリコHbコントロールをNEM酸性溶液と混合せずに測定に供する方法では、HPLC法測定値に対して酵素法測定値は有意に低値となるのに対して、NEM酸性溶液と混合した後に測定に供する方法では、酵素法はHPLC法とほぼ一致する測定値を得ることができた。なお、JCCLS CRM−004aについてはNEM酸性溶液との混合の有無に関わらず酵素法測定値はHPLC法測定値とほぼ一致した。
Claims (4)
- 酵素法により、チオール化合物が添加された糖化ヘモグロビン測定用試料中の糖化ヘモグロビンを測定する方法において、該試料とN−エチルマレイミドとを混合した後、酵素法による測定に付することを特徴とする、測定方法。
- チオール化合物が添加された糖化ヘモグロビン測定用試料が校正用試料である請求項1記載の測定方法。
- チオール化合物が添加された糖化ヘモグロビン測定用試料が精度管理試料である請求項1記載の測定方法。
- 糖化ヘモグロビンがヘモグロビンA1cである請求項1〜3のいずれか1項記載の測定方法。
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