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JP5541775B2 - ガラス母材延伸装置 - Google Patents

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Description

本発明は、光ファイバプリフォームインゴット等のガラス母材を加熱炉で処理することにより、所望の外径に延伸し、一定の外径のガラスロッドを得るためのガラス母材延伸装置に関する。
光ファイバプリフォームインゴット等に代表されるようなガラス母材を加熱延伸し、所望の外径のガラスロッドを得る装置として、特許文献1〜4に記載されているような、上部にトップチャンバと称される母材収容部を有するものがある。
図1に、トップチャンバを有するガラス母材延伸装置の模式図を示す。
ガラス母材101は、加熱炉102の内部に配設されたヒーター103により加熱され、送り機構104により炉内に送り込まれつつ、送り速度より速い速度で下方に移動する引取り機構105により引取られ、ガラス母材101よりも小径のガラスロッド110とされる。
加熱炉102の内部に設けられたヒーター103及びその周囲の断熱材(図示を省略)は、加熱温度が2300K前後と非常に高温なため、通常、炭素系の材料が用いられる。しかしながら、等方性黒鉛やカーボン成形断熱材、CCコンポジット等のこれら炭素系の材料は、770K以上の高温下で酸素含有雰囲気に曝されると酸化消耗する。このため、加熱炉102の内部は、窒素ガスやアルゴンガス等の不活性ガス雰囲気に保たれる。
ガラス母材101は、その上端部にテーパー部107を有し、さらに直胴部106にも径変動があるため、加熱炉102の上部からガスが漏れないようにシールするには、特殊な装置が必要になる。その一手段として、加熱炉102の上部にガラス母材101の収容を兼ねてトップチャンバ108を設ける方法がある。
この方法は、ガラス母材101を支持するシャフト109は外径が一定であるため、トップチャンバ108の上部中央に設けられたシャフト挿通孔とシャフト109との隙間を小さくすることができ、加熱炉102の内部に供給する不活性ガスの量を適切に保つことで、シャフト挿通孔の隙間から外気が流入することはなく、炉内の酸素濃度を十分低く保つことができる。
トップチャンバ108を有するガラス母材延伸装置は、必然的にシャフト109の長さをトップチャンバ108の長さよりも長く取る必要があったり、ガラス母材101の出し入れのために送り機構104のストロークを長く取る必要があり、装置高さが極めて高くなる。このため、装置コストが高くつくなどのデメリットがある。これらの問題に対して、様々な構造や材質のトップチャンバが提案されている。
特許文献1は、トップチャンバ108の前面を観音開きとし、ガラス母材101の出し入れをトップチャンバ108の前面から行うことで、加熱炉102へのガラス母材投入に必要な送り機構104のストロークを低減している。ここで、トップチャンバ108の材質として不透明材料であるステンレス鋼が挙げられている。
特許文献2では、トップチャンバ108を摺動可能な複数の円筒で構成することにより、伸縮自在とし、シャフト109の長さ及び送り機構104のストロークを短くし、装置高さを低く抑えている。ここで、トップチャンバ108の材質として不透明材料であるステンレス鋼が挙げられている。
特許文献3では、トップチャンバ108を伸縮可能なジャバラ構造とし、その材質として不透明材料であるアルミコートカーボン繊維の外側にシリコーン樹脂をコーティングしたものを用いている。
特許文献4では、二重に設けられたジャバラの内部に、水冷式の伸縮炉芯管を配設したトップチャンバ108が開示されている。なお、ジャバラの材質は耐熱断熱性シート材、水冷伸縮炉芯管は金属製であり、いずれも不透明材料である。
特開平11−147731号公報 特開平11−060259号公報 特開平06−256034号公報 特開平11−209137号公報
ガラス母材は、ヒーターによって2100〜2500K程度に加熱されるが、このとき発生する放射光はガラス母材中を全反射して上部へ伝播し、ガラス母材上部のテーパー部から横方向に放射される。この放射光の強度は、ガラス母材の外径が大きいほど、また、ヒーター温度が高いほど強大になる。なお、ガラス母材の直胴部内では、放射光は全反射により上部へ伝播されるため、横方向への光の放射は殆んどない。
近年、生産性向上のために、ガラス母材の大型化及び延伸速度の高速化が図られており、延伸速度向上のためにヒーター温度がより高く設定される傾向にある。テーパー部から放射される光は、トップチャンバの内面に照射されるが、特許文献1〜4に記載されているように、トップチャンバが不透明材料で構成されているため、トップチャンバが照射された放射光を反射又は吸収する。反射した光は、再度、ガラス母材に向けて照射され、テーパー部の温度を上昇させる。他方、吸収された光によってトップチャンバの温度は上昇し、この場合もテーパー部の温度を上昇させることになる。
ガラス母材の直胴部から横方向に放射される光は極めて少ないため、直胴部の温度は上昇しずらく、このような過程を経ると、ガラス母材上部のテーパー部の温度が直胴部の温度よりも高くなってしまう。
延伸して得られるガラスロッドの外径は、ガラス母材の送り速度、ガラスロッドの引取り速度、さらにガラス母材の外径から決定されるが、ガラス母材上部のテーパー部が高温になり軟化すると、テーパー部が伸び、加熱炉へのガラス母材の送り速度は、送り機構の移動速度とテーパー部の伸び速度を足した速度になる。
その結果、ガラス母材は、意図したよりも速い速度で加熱炉に送り込まれることとなり、延伸されたガラスロッドの外径が予定よりも太くなってしまうことがあった。
本発明は、加熱炉へのガラス母材の送り速度を所定の速度で行うことができ、径の安定したガラスロッドを得ることのできるガラス母材延伸装置の提供を目的としている。
本発明のガラス母材延伸装置は、ガラス母材を加熱延伸して所望の外径を有するガラスロッドを製造する延伸装置において、トップチャンバ、加熱炉、ガラス母材の送り装置及び引取り装置を備え、加熱炉の常用温度T(K)において、前記トップチャンバが下記の数式1で示される波長λ(μm)において透明体であることを特徴としている。
Figure 0005541775
なお、ガラス母材及びトップチャンバの材質は石英ガラスとするのが好ましい。
本発明のガラス母材延伸装置は、延伸して得られるガラスロッドの外径が110mm以上である場合に、特に有効である。
本発明のガラス母材延伸装置は、ガラス母材テーパー部の温度上昇を抑制することができ、テーパー部の意図しない伸びは抑制され、延伸されたガラスロッドの外径を安定化させることができる。延伸して得られるガラスロッドの外径が110mm以上であっても、径変動の小さなガラスロッドを得ることができる。
さらに、本発明の装置は、トップチャンバに断熱層を必要とせず、また、金属製のトップチャンバで必要であった水冷構造を必要としないため、装置の簡略化が可能となり、コストを低減することができる。
トップチャンバを有するガラス母材延伸装置の模式図を示す図である。
本発明のガラス母材延伸装置は、加熱炉の上部にガラス母材を収容するトップチャンバを備え、加熱炉の常用温度T(K)において、トップチャンバがλ=2898/Tで示される波長λ(μm)において透明体であることを特徴としている。
なお、λは、ヴィーンの変異則による黒体放射の中心波長を表しており、ヒーターやガラス母材の被加熱部から放射される光の波長を代表している。実際の放射光は、λをピーク波長とするブロードなスペクトルを持つ。
トップチャンバの材質が波長λの放射光に対する透過率が高い場合、トップチャンバは放射光の吸収が低く抑えられ、加熱されづらく、トップチャンバ内に収容されたガラス母材上部のテーパー部の温度を低く保つことができ、テーパー部の意図しない伸びを抑制することができ、ひいては延伸されたガラスロッドの外径を安定化させることができる。
本発明においては、トップチャンバの材質を石英ガラスとするのが好ましい態様である。
先の数式1に延伸工程の温度2100〜2500Kを代入すると、波長λは1.16〜1.38μmとなる。石英ガラスは、この波長帯ではほぼ完全な透過体であり、実用的な厚さである数mm〜十数mmの範囲では、表裏両面合計で7%程度の表面反射のみを考えればよく、透過率は93%に達する。このため、ガラス母材上部のテーパー部から放射される光を極めて効率良く外部に逃がすことができ、テーパー部の温度上昇を抑制することができる。
さらに、石英ガラスは、高温での形状安定性に優れ、熱膨張率も極めて小さいため、大型のガラス母材を延伸する際に、金属製のトップチャンバでは必要であった水冷構造や断熱層を付与する必要がなく、装置の簡略化が可能となり、コストを低減することができる。なお、トップチャンバの構造には、図1に示したような単純な円筒形状や、特許文献2に記載されているような多層円筒による伸縮構造等が挙げられる。
従来、延伸されたガラスロッドの外径変動が大きな部分は、既存のガラス旋盤による再延伸を行うことで修正していたが、ガラスロッドの外径が110mm以上ある場合、既存のガラス旋盤による延伸では、熱効率が落ちるために非常に困難もしくは不可能である。このため、ガラスロッドの延伸目標外径が110mm以上の場合に、本発明の延伸装置の有効性が特に強く発揮され、径変動の小さなガラスロッドを得ることができる。
実施例1;
図1に示した装置を用い、有効部の平均外径170.5mm、有効部の長さ1000mmで、両端に約300mmのテーパー部を有する光ファイバプリフォーム用ガラス母材101を、目標外径d=120mmとして延伸した。なお、トップチャンバ108は石英ガラス製とした。延伸中、加熱炉102の内部は窒素ガス雰囲気とし、温度は2300Kで保持した。
延伸条件は、ガラス母材の送り速度V1=10mm/minで、ガラスロッドの引取り速度V2は延伸部分のガラス母材の外径をDとして、次式
2=V1×(D/d)2
によって決定した。
ガラス母材の有効部を延伸して得られたガラスロッドのうち、延伸終了端付近の外径は最大120.8mmであり、許容される外径変動120±1.2mmを超える部分はなかった。
比較例1;
図1に示した装置を用い、有効部の平均外径169.7mm、有効部の長さ1000mmで、両端に約300mmのテーパー部を有する光ファイバプリフォーム用ガラス母材101を、目標外径d=120mmとして延伸した。トップチャンバは、水冷されたステンレス鋼の内側に10mm厚のカーボン成形断熱材を内貼りしたものを用いた。なお、延伸中、加熱炉102の内部は窒素ガス雰囲気とし、温度は2300Kで保持した。
延伸条件は、ガラス母材の送り速度V1=10mmで、ガラスロッドの引取り速度V2は延伸部分のガラス母材の外径をDとして、次式
2=V1×(D/d)2
に従って決定した。
ガラス母材の有効部を延伸して得られたガラスロッドのうち、延伸終了端付近の外径は最大125.4mmであり、許容される外径変動120±1.2mmから外れた部分の長さが250mmに達した。
本発明のガラス母材延伸装置を用いることで、光ファイバの製造コストを低減することができる。
101.ガラス母材、
102.加熱炉、
103.ヒーター、
104.送り機構、
105.引取り機構、
106.直胴部、
107.テーパー部、
108.トップチャンバ、
109.シャフト、
110.ガラスロッド。

Claims (3)

  1. ガラス母材を加熱延伸して所望の外径を有するガラスロッドを製造する延伸装置において、トップチャンバ、加熱炉、ガラス母材の送り装置及び引取り装置を備え、加熱炉の常用温度T(K)において、前記トップチャンバが下記の数式1で示される波長λ(μm)において透明体であることを特徴とするガラス母材延伸装置。
    Figure 0005541775
  2. ガラス母材及びトップチャンバの材質が石英ガラスである請求項1に記載のガラス母材延伸装置。
  3. 延伸して得られるガラスロッドの外径が110mm以上である請求項1及び2に記載のガラス母材延伸装置を用いてガラス母材を延伸する延伸方法。
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