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JP5426436B2 - 変性フェノール樹脂及びそれを含む水性塗料組成物 - Google Patents

変性フェノール樹脂及びそれを含む水性塗料組成物 Download PDF

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Description

本発明は、マレイン化した不飽和脂肪酸によって変性されたフェノール樹脂及びそれを含む水性塗料組成物に関する。
金属素材に塗布することにより発錆を抑制し腐食を防ぐために防食塗料が用いられる。従来防食塗料のバインダーとして素材密着性が高くまた腐食因子である水または酸素の透過性が低いエポキシ樹脂やフェノール樹脂が多用されていた。またかかる防食塗料は有機溶剤で希釈する溶剤型塗料として用いられることが一般的であった。特にフェノール樹脂は優れた防食性能を示すことから多用されていた。
一般に耐溶剤性や耐久性に優れた防食塗膜を得るためには硬化塗膜とすることが望ましい。しかし無変性のフェノール樹脂はそれ自体では硬化性が乏しい為硬化剤と併用したり乾性油により変性することが古くから行われてきた。例えば特許文献1には乾性油変性フェノール樹脂の製造方法が開示されている。
近年環境保護、VOC削減のために溶剤型塗料から水性塗料への転換が進められている。しかしながら本来疎水性物質である乾性油変性フェノール樹脂はそのままでは水に溶解も分散もしないためフェノール樹脂をバインダーとする防食塗料の水性塗料化は進まなかった。特許文献2には水溶性高分子を保護コロイドとするオイル変性フェノール樹脂乳濁液の製造方法が開示されている。しかしこのフェノール樹脂を用いた水性塗料は水溶出成分である水溶性高分子を多く含むことに原因して塗膜の耐水性が劣り十分な防食性能を発揮することが出来ないものであった。
特開昭55−73721号公報 特開2009−67921号公報
本発明の課題は、水分散性を持つフェノール樹脂を製造することおよびそれをバインダーとする塗膜性能に優れた水性塗料組成物を得ることである。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、無水マレイン酸を用いてマレイン化した不飽和脂肪酸によって変性したフェノール樹脂はその酸無水基を水、アルコール、アミンなどによってで開環させたのち塩基により中和することにより水分散することが出来、その水分散体を用いた水性塗料は優れた塗膜性能を示すことを見出し本発明の完成に到った。
かくして、本発明は以下に示す項よりなる。
1. 不飽和脂肪酸が無水マレイン酸によりマレイン化されている不飽和脂肪酸変性フェノール樹脂の水分散体であって、該不飽和脂肪酸変性フェノール樹脂が無水マレイン酸に由来する無水基が開環されてなるカルボキシル基を有することを特徴とする不飽和脂肪酸変性フェノール樹脂の水分散体
2. 不飽和脂肪酸の原料がカシュー油、トール油及びアマニ油の中から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする項1に記載の不飽和脂肪酸変性フェノール樹脂の水分散体
. 無水基の開環により生じたカルボキシル基由来の樹脂酸価が40〜100であることを特徴とする項1または2に記載の不飽和脂肪酸変性フェノール樹脂の水分散体。
. 不飽和脂肪酸変性フェノール樹脂中のカルボキシル基がアミン中和されいてかつアミン中和度が0.60〜1.00であることを特徴とする項1〜3のいずれか一項に記載の不飽和脂肪酸変性フェノール樹脂の水分散体。
. 項1〜4のいずれか1項に記載の不飽和脂肪酸変性フェノール樹脂の水分散体及び顔料を含むことを特徴とする水性塗料組成物。
本発明によれば、天然物由来原料を用いて安定な水分散体としうる変性フェノール樹脂を得る事ができる。その水分散体を含む水性塗料組成物はVOC排出量が少なく、また常温乾燥可能であり、その硬化塗膜は優れた塗膜性能を示し特に防食塗料として好適に用いることが出来る。
以下に本発明について更に詳しく説明する。
フェノール樹脂
本発明に用いるフェノール樹脂は、ノボラック型フェノール樹脂やレゾール型フェノール樹脂が用いられる。フェノール樹脂は、フェノール類とアルデヒド類、ケトン類等のカルボニル化合物との反応で得られ、フェノール類としては、例えばフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、クレゾール、キシレノール、ノニルフェノール等が挙げられる。アルデヒド類としては、例えば、ホルムアルデヒドが挙げられる。ホルムアルデヒド類としては、例えばホルマリン、パラホルムアルデヒド等が一般的である。
フェノール樹脂の分子量は、ノボラック型フェノール樹脂においては、数平均分子量が300〜4000であることが好ましく、レゾール型フェノール樹脂では、数平均分子量が200〜2000であることが好ましい。数平均分子量が前記の範囲にあると耐食性と平滑性のバランスがとれることから好ましい。
なお、本明細書において数平均分子量及び重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)を用いて測定した保持時間(保持容量)を、同一条件で測定した分子量既知の標準ポリスチレンの保持時間(保持容量)によりポリスチレンの分子量に換算して求めた値である。具体的には、ゲルパーミエーションクロマトグラフ装置として、「HLC8120GPC」(商品名、東ソー社製)を使用し、カラムとして、「TSKgel G−4000HXL」、「TSKgel G−3000HXL」、「TSKgel G−2500HXL」及び「TSKgel G−2000HXL」(商品名、いずれも東ソー社製)の4本を使用し、検出器として、示差屈折率計を使用し、移動相:ジメチルスルホキシドテトラヒドロフラン測定温度:40℃、流速:1mL/minの条件下で測定することができる。
変性に用いる不飽和脂肪酸
本発明においてフェノール樹脂の変性に用いる不飽和脂肪酸の原料としては、例えば、カシュー油、アマニ油、トール油、エノ油、桐油、ゴマ油、ナタネ油、綿実油、大豆油、ツバキ油、オリーブ油、ヒマシ油、トール油の植物油、ロジン(アビエチン酸、ピマール酸等)を含む各種テルペン類等が挙げられる。これらは天然物由来の原料であり、単独あるいは2種以上を混合して使用することができる。また、カシュー油は自体が天然フェノール物質でもある。
これらの原料類の中でも、品質の安定、取り扱い易さ、塗膜物性の観点からカシュー油、トール油、アマニ油の中から選ばれるものが好適であり、特にカシュー油が好適である。
これら原料はそのまま変性反応に用いても良い(例えば多くの植物油の場合は脂肪酸トリグリセリドである)し、分解・精製により単離した脂肪酸を用いても良い。そのような脂肪酸として、例えばリノール酸、リノレン酸、エレオステアリン酸、ステアリドン酸などを挙げることができる。
本発明で用いられる変性フェノール樹脂の合成方法としては、例えば、上述したフェノール類、アルデヒド類、及び不飽和脂肪酸を含有する原料を、酸性触媒の存在下で反応(変性)させてノボラック型変性フェノール樹脂を得る方法、上述したフェノール類、及び不飽和脂肪酸を含有する原料を、酸性触媒の存在下で反応(変性)させた後、アルデヒド類をアルカリ性触媒存在下で反応させてレゾール型変性フェノール樹脂を得る方法、上述したフェノール類、及びオイルを、酸性触媒の存在下で反応(変性)させた後、アルデヒド類を反応させてノボラック型変性フェノール樹脂を得る方法などが挙げられる。
また、先にレゾール型またはノボラック型のフェノール樹脂を合成した後に不飽和脂肪酸を含有する原料による変性を行っても良い。
合成反応に用いうる酸性触媒としては、例えば、蓚酸、塩酸、硫酸、ジエチル硫酸、リン酸類、フェノールスルホン酸等、二価金属(Ca、Mg、Znなど)の酢酸塩類、ホウ酸、二価金属(Ca、Mg、Znなど)のホウ酸塩、パラトルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、三弗化ほう素、塩化第二錫、塩化第二鉄、パーフロロメタンスルホン酸などを単独または2種類以上併せて使用できる。
前記酸性触媒の使用量としては、フェノール類1モルに対して、通常、0.001〜0.05モルとすることができる。
用いうるアルカリ性触媒としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物、アンモニア水、トリエチルアミンなどの第3級アミン、カルシウム、マグネシウム、バリウムなどアルカリ土類金属の酸化物及び水酸化物、炭酸ナトリウム、ヘキサメチレンテトラミンなどのアルカリ性物質等を単独または2種類以上併用することができる。
前記アルカリ性触媒の使用量としては特に限定されないが、フェノール類1モルに対して、通常、0.01〜0.1モルとすることができる。
本発明に用いるマレイン化された不飽和脂肪酸によって変性されたフェノール樹脂の合成において、変性成分とフェノール樹脂の割合としては、変性フェノール樹脂の固形分全体に対して、変性成分を40〜98重量%とすることが好ましい。さらに好ましくは、50〜95重量%である。この範囲よりも変性成分が少ないとマレイン化後に無水基を開環し中和、水分散するときに十分な水分散性が得られない場合があり、この範囲よりも変性成分が多いと多いと塗料として用いたときに十分な塗膜物性が得られない場合がある。なお、ここで変性成分とはマレイン化された脂肪酸成分を指すものである。
マレイン化
本発明において不飽和脂肪酸はマレイン化されている。不飽和脂肪酸のマレイン化はフェノール樹脂を変性する前に行っても良いし、変性後に行っても良いが、アルカリ性触媒による無水基の不要な開環反応を避ける意味から不飽和脂肪酸で変性されたフェノール樹脂に対してマレイン化を行うことが好ましい。
マレイン化反応は公知の方法によって行うことが出来る。例えば不飽和脂肪酸変性フェノール樹脂と無水マレイン酸を混合して、160℃以上の温度、好ましくは160℃〜220℃の温度で混合撹拌することにより不飽和基のマレイン化を進行させることが出来る。このとき220℃を大きく上回るような高温で反応させると樹脂の熱劣化や不飽和基の酸化、重合などの好ましくない副反応が起こることがある。
マレイン化する際の無水マレイン酸の量は、マレイン化後の樹脂酸価(単位:mgKOH/g)にして40〜100相当量であることが好ましく、50〜80相当量であることがより好ましい。無水マレイン酸由来の酸価が40より少ないと水分散性が不十分であることがある。また無水マレイン酸由来の酸価が100を越えると塗料成分として用いたときに防食性能が不十分であることがある。
ここで樹脂酸価は、樹脂をアルコールを含む混合溶媒に溶解しエタノールに溶かした水酸化カリウムで滴定することにより決定できる。このとき本来からあるプロトン酸に加え、マレイン化により導入された酸無水物をエタノール等のアルコールで開環付加をさせて、エステル結合と1つのプロトン酸としてから系中の有機固形分1gに含まれる全てのプロトン酸を中和するのに必要な水酸化カリウムの質量をmgで表した時の数値として得られる値であり、測定はJIS K−6901−2008に基づいて行う事ができる。
水分散体
本発明において、マレイン化した不飽和脂肪酸変性フェノール樹脂はマレイン酸無水基を開環してカルボキシル基とする。このとき開環剤として水を用いて加水分解すると無水基は2つのカルボキシル基となる。開環剤としてアルコールを用いて加アルコール分解(ハーフエステル化)するとカルボキシル基とアルキルエステルになる。何れも無水基に対し当量以上の過剰の水又はアルコールを加え加熱することにより開環反応は進行するが、このとき少量の触媒を用いても良い。触媒としては公知のものを支障なく用いることができる。
また無水基に対して開環剤として1級または2級のアミンを加え加アミン分解(ハーフアミド化)してもカルボキシル基とアミドが生成する。
上述のハーフエステル化、ハーフアミド化はともに無水基に対してアルコールまたはアミンを直接反応させるものであるが、水により開環させた後にカルボキシル基の全量に対して半分以下即ち0.5当量以下のアルコールまたはアミンを縮合させてエステルまたはアミドとすることもできる。
開環剤としてまたは縮合剤としてアルコールまたはアミンを用いるときにアルコールまたはアミンが分子中にノニオン性の親水基を持つ化合物であると水分散性の観点から好ましい。そのような化合物としてポリアルキレングリコール、ポリアルキレングリコールモノアルキルエーテル、ポリアルキレングリコール変性アミンなどを挙げることができる。
無水基の開環によって生じたカルボキシル基を中和することにより本発明のマレイン化した不飽和オイル変性フェノール樹脂を水分散することができる。中和剤としては塩基性物質であれば問題なく用いることができるがた防食性の観点からアミンを用いることが好ましい。
かかるアミンとして例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミンなどの3級アミン;ジエチルアミン、ジブチルアミン、ジエタノールアミン、モルホリンなどの2級アミン;プロピルアミン、エタノールアミンなどの1級アミン;アンモニア等が挙げられる。塩基性物質の使用量としては上記のマレイン化した不飽和オイル変性フェノール樹脂中のカルボキシル基に対して0.6〜1.0モル当量の範囲内であることが好ましい。塩基性物質の量が0.6モル当量より少ないと十分な水分散性が得られないことがある。また塩基性物質の量が1.0モル当量より多いと防食性や耐水性に悪影響を及ぼす場合がある。
水性塗料組成物
本発明の変性フェノール樹脂の水分散体に、さらに必要に応じて、着色顔料、体質顔料、防錆顔料などの顔料類;顔料分散剤、沈降防止剤、増粘剤、消泡剤、凍結防止剤、防腐剤、有機溶剤、造膜助剤、塗面調整剤などの通常の塗料用添加剤、さらに変性フェノール樹脂以外の水性樹脂を配合することができる。
本発明の水分散体を含有する水性塗料組成物において顔料を配合する場合には、本発明で得たマレイン化不飽和脂肪酸変性フェノール樹脂水分散体を顔料分散樹脂に使用すると、良好に顔料分散ができ他の分散安定剤などの添加剤が不要になるので好適である。
本発明の水分散体を含有する水性塗料組成物は、スプレー塗装、ローラー塗装、刷毛塗装など従来公知の方法により塗装できる。
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。なお、以下、「部」及び「%」はいずれも質量基準によるものとする。
実施例1
加熱装置、温度計、冷却管、攪拌機を備えたフラスコに、カシューオイル(カシュー株式会社製、製品名CX−1000)100部、ホウ酸1.0部を仕込み、130℃迄昇温後、37%ホルマリン水溶液25部を2時間かけて滴下した。溶媒である水またはホルマリンの縮合により発生する水を除去するため、溜出する物質は全て系外に排出した。滴下終了後、同温度で1時間反応させた後、170℃に昇温し減圧下で溜出分を除去した。その後、無水マレイン酸8.12部を仕込み、180℃に昇温し2時間熟成した。ついで、冷却しながら脱イオン水5.0部を1時間掛けて滴下した。120℃で2時間熟成後、ブチルセロソルブ40部を仕込み、数平均分子量3000、カルボキシル基由来の酸価80のマレイン化カシューノボラック樹脂を得た。さらに得られたマレイン化カシューノボラック樹脂に付加したカルボキシル基に対して1.0倍当量に当るトリエチルアミン17部を加え中和し、撹拌しながら脱イオン水を徐々に加えて行き水分散体を得た。得られたマレイン化カシュー変性ノボラック樹脂水分散体1は固形分は30%、粘度は4000mPa・sであった。
実施例2
加熱装置、温度計、冷却管、攪拌機を備えたフラスコに、カシューオイル100部、ホウ酸1.0部を仕込み、130℃迄昇温後、37%ホルマリン溶液25部を2時間かけて滴下した。溶媒である水または縮合により発生する水を除去するため、溜出する物質は全て系外に排出した。滴下終了後、同温度で1時間反応させた後、170℃に昇温し減圧下で溜出分を除去した。その後、無水マレイン酸8.12部を仕込み、180℃に昇温し2時間熟成した。ついで、120℃まで冷却しジェファーミンM−1000(HUNTSMAN社製、1級アミン基をもったポリエーテル化合物)を10部仕込み、同温度で1時間熟成した。ついで、脱イオン水5.0部を1時間掛けて滴下した。120℃で2時間熟成後、ブチルセロソルブ40部を仕込み、数平均分子量3100、カルボキシル基由来の酸価65のポリエーテル変性マレイン化カシューノボラック樹脂を得た。さらに得られたポリエーテル変性マレイン化カシューノボラック樹脂に付加したカルボキシル基に対して1.0倍当量に当るトリエチルアミン10.3部を加え中和し、撹拌しながら脱イオン水を徐々に加えて行き水分散体を得た。得られたポリエーテル変性マレイン化カシュー変性ノボラック樹脂水分散体2は固形分は30%、粘度は3000mPa・sであった。
実施例3
加熱装置、温度計、冷却管、攪拌機を備えたフラスコに、フェノール25部、カシューオイル75部、ホウ酸1.0部を仕込み、130℃迄昇温後、37%ホルマリン溶液25部を2時間かけて滴下した。溶媒である水または縮合により発生する水を除去するため、溜出する物質は全て系外に排出した。滴下終了後、同温度で1時間反応させた後、170℃に昇温し減圧下で溜出分を除去した。その後、無水マレイン酸8.12部を仕込み、180℃に昇温し2時間熟成した。ついで、冷却しながら脱イオン水5.0部を1時間掛けて滴下した。120℃で2時間熟成後、ブチルセロソルブ40部を仕込み、数平均分子量1200、カルボキシル基由来の酸価80のマレイン化カシューノボラック樹脂を得た。さらに得られたマレイン化カシューノボラック樹脂に付加したカルボキシル基に対して1.0倍当量に当るトリエチルアミン17部を加え中和し、撹拌しながら脱イオン水を徐々に加えて行き水分散体を得た。得られたマレイン化カシュー変性ノボラック樹脂水分散体3の固形分は30%、粘度は1000mPa・sであった。
実施例4
加熱装置、温度計、冷却管、攪拌機を備えたフラスコに、フェノール50部、アマニ油50部、ホウ酸1.0部を仕込み、130℃迄昇温後、37%ホルマリン溶液20部を2時間かけて滴下した。溶媒である水または縮合により発生する水を除去するため、溜出する物質は全て系外に排出した。滴下終了後、同温度で1時間反応させた後、170℃に昇温し減圧下で溜出分を除去した。その後、無水マレイン酸8.12部を仕込み、180℃に昇温し2時間熟成した。ついで、冷却しながら脱イオン水5.0部を1時間掛けて滴下した。120℃で2時間熟成後、ブチルセロソルブ40部を仕込み、数平均分子量1000、カルボキシル基由来の酸価80のアマニ変性マレイン化ノボラック樹脂を得た。さらに得られたアマニ油変性マレイン化ノボラック樹脂に付加したカルボキシル基に対して1.0倍当量に当るトリエチルアミン17部を加え中和し、撹拌しながら脱イオン水を徐々に加えて行き水分散体を得た。得られたマレイン化アマニ油変性ノボラック樹脂水分散体4の固形分は30%、粘度は800mPa・sであった。
比較例1
加熱装置、温度計、冷却管、攪拌機を備えたフラスコに、カシューオイル100部、ホウ酸1.0部を仕込み、130℃迄昇温後、37%ホルマリン溶液25部を2時間かけて滴下した。溶媒である水または縮合により発生する水を除去するため、溜出する物質は全て系外に排出した。滴下終了後、同温度で1時間反応させた後、170℃に昇温し減圧下で溜出分を除去した。その後、ポリアクリルアマイド(ポリストロン117、15%水溶液 、荒川化学工業(株)製)100部を添加し、撹拌しながら脱イオン水を徐々に加えて行き水分散体を得た。得られたカシュー変性ノボラック樹脂水分散体5の固形分は30%、粘度は300mPa・sであった。
比較例2
加熱装置、温度計、冷却管、攪拌機を備えたフラスコに、カシューオイル100部、ホウ酸1.0部を仕込み、130℃迄昇温後、37%ホルマリン溶液25部を2時間かけて滴下した。溶媒である水または縮合により発生する水を除去するため、溜出する物質は全て系外に排出した。滴下終了後、同温度で1時間反応させた後、170℃に昇温し減圧下で溜出分を除去した。その後、無水マレイン酸4.5部、ナフテン酸銅0.02部を仕込み、180℃に昇温し2時間熟成した。ついで、冷却しながら脱イオン水5.0部を1時間掛けて滴下した。120℃で2時間熟成後、ブチルセロソルブ40部を仕込み、数平均分子量2900、カルボキシル基由来の酸価45のマレイン化カシュー変性ノボラック樹脂を得た。さらに得られたマレイン化カシュー変性ノボラック樹脂に付加したカルボキシル基に対して1.0倍当量に当るトリエチルアミン9.24部を加え中和し、撹拌しながら脱イオン水を徐々に加えて行き水分散体を作成したが、数時間後に水層と油層に分離した。
比較例3
加熱装置、温度計、冷却管、攪拌機を備えたフラスコに、カシューオイル100部、ホウ酸1.0部を仕込み、130℃迄昇温後、37%ホルマリン溶液25部を2時間かけて滴下した。溶媒である水または縮合により発生する水を除去するため、溜出する物質は全て系外に排出した。滴下終了後、同温度で1時間反応させた後、170℃に昇温し減圧下で溜出分を除去した。その後、無水マレイン酸8.12部、ナフテン酸銅0.02部を仕込み、180℃に昇温し2時間熟成した。ついで、冷却しながら脱イオン水5.0部を1時間掛けて滴下した。120℃で2時間熟成後、ブチルセロソルブ40部を仕込み、数平均分子量3000、カルボキシル基由来の酸価80のマレイン化カシュー変性ノボラック樹脂を得た。さらに得られたマレイン化カシュー変性ノボラック樹脂に付加したカルボキシル基に対して0.5倍当量に当るトリエチルアミン8.5部を加え中和し、撹拌しながら脱イオン水を徐々に加えて行き水分散体を作成したが、数時間後に水層と油層に分離した。
水性塗料の実施例
実施例5
実施例1で得た固形分30質量%のマレイン化カシュー変性ノボラック樹脂水分散体1を200部(固形分60部)、カーボンMA−100(注1)5.0部、タルクMA(注2)120部、EXPERT NP−1020C(注3)40部、脱イオン水85部加え、ボールミルに仕込み20時間攪拌することによって固形分50%の顔料分散ペーストを得た。得られた顔料分散ペーストを450部(固形分225部)及びマレイン化カシュー変性ノボラック樹脂水分散体−1を133部(固形分40部)を混合し、攪拌しながら脱イオン水80部を徐々に加えて、固形分40%の水性塗料−1を得た。
(注1)カーボンブラックMA−100:カーボンブラック、商品名、三菱化学社製
(注2)タルクMA:林化成社製、商品名、タルク、平均粒子径14μm、吸油量27ml/
100g
(注3)EXPERT NP−1020C:東邦化学社製、商品名、亜リン酸カルシウム
実施例6〜8
実施例5と同様にして、表1に示す配合で水性塗料−2〜4を得た。
比較例4
実施例1と同様にして、表1に示す配合で水性塗料−5を得た。
Figure 0005426436
塗膜性能評価
試験板の作成
脱脂した厚さ0.8mmの無処理冷延鋼板に上記の実施例5〜8、比較例4にて得た水性塗料−1〜5を乾燥膜厚が20±2μmとなるようにスプレー塗装した。得られた塗装板を電気熱風乾燥機を用いて75℃で20分間強制乾燥し、次いで室温(23℃)で7日間エージング(養生乾燥)を行って試験板を得た。
試験板を、後記の試験方法によって試験に供した結果を表2に示す。
Figure 0005426436
(注4)塗料安定性:各水性塗料を250mlのガラス容器に入れて暗所で、40℃にて30日間貯蔵し、状態をチェックした。
○は、塗料のゲル化及び分離のいずれも認められない。
△は、塗料のゲル化にまでは至らない粘度増加及び撹拌すれば均一になる程度の軽度の分離の少なくともいずれかがみられる。
×は、塗料のゲル化及び不可逆の著しい分離の少なくとも一つがみられる。
(注5)仕上り性:各試験板の塗面外観を目視で評価した。
○は、平滑性が良好で問題なし。
△は、塗面にハジキ、凹み、曇りの少なくとも1種の低下がやや見られる。
×は、塗面にハジキ、凹み、曇りの少なくとも1種の低下が大きい。
(注6)鉛筆硬度:JIS K 5600-5-4に準じて、試験塗板面に対し約45°の角度に鉛筆の芯を当て、芯が折れない程度に強く試験塗板面に押し付けながら前方に均一な速さで約10mm動かした。塗膜が破れなかったもっとも硬い鉛筆の硬度記号を鉛筆硬度とした。
(注7)耐薬品性:濃度5%の硫酸水溶液に、素地露出面をシールした各試験板を60℃で3時間浸漬した後の塗面を目視で評価した。
◎は、塗膜に全く異常がない。
〇は、塗膜にツヤビケがわずかに認められるが製品として問題ないレベル。
△は、塗膜にフクレ又はワレのいずれかが認められる。
×は、塗膜にフクレ又はワレが著しく認められる。
(注8)耐水性:各試験板を23℃で脱イオン水に72時間浸漬し、塗面を評価した。
◎は、良好で問題ない。
○は、ややツヤビケが見られるが製品として問題ないレベル。
△は、フクレ、色落ちのいずれかが見られる。
×は、フクレ、色落ちのいずれかが大きい。
(注9)防食性:各試験板の塗膜にナイフでクロスカット傷を入れ、これをJIS Z−2371に準じて480時間耐塩水噴霧試験を行った。試験後、ナイフ傷からの錆、フクレ幅によって以下の基準で評価した。
◎は、錆、フクレの最大幅が、カット部から2mm未満(片側)。
○は、錆、フクレの最大幅が、カット部から2mm以上でかつ3mm未満(片側)。
△は、錆、フクレの最大幅が、カット部から3mm以上でかつ4mm未満(片側)。
×は、錆、フクレの最大幅が、カット部から4mm以上(片側)。
実施例5〜8の塗膜は比較例4の塗膜と比べ耐薬品性、耐水性、防食性に優れている。

Claims (5)

  1. 不飽和脂肪酸が無水マレイン酸によりマレイン化されている不飽和脂肪酸変性フェノール樹脂の水分散体であって、該不飽和脂肪酸変性フェノール樹脂が無水マレイン酸に由来する無水基が開環されてなるカルボキシル基を有することを特徴とする不飽和脂肪酸変性フェノール樹脂の水分散体
  2. 不飽和脂肪酸の原料がカシュー油、トール油及びアマニ油の中から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の不飽和脂肪酸変性フェノール樹脂の水分散体
  3. 無水基の開環により生じたカルボキシル基由来の樹脂酸価が40〜100であることを特徴とする請求項1または2に記載の不飽和脂肪酸変性フェノール樹脂の水分散体。
  4. 不飽和脂肪酸変性フェノール樹脂中のカルボキシル基がアミン中和されいてかつアミン中和度が0.60〜1.00であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の不飽和脂肪酸変性フェノール樹脂の水分散体。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の不飽和脂肪酸変性フェノール樹脂の水分散体及び顔料を含むことを特徴とする水性塗料組成物。
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