上記の本発明のオスコネクタにおいて、前記挿入部を前記チューブに挿入したとき、前記アームはその弾性回復力により前記チューブを周方向に延伸させることが好ましい。あるいは、前記アームの外周面には、前記チューブと係合する係合形状が形成されていることが好ましい。これらにより、簡単な方法で上述したようにチューブとオスコネクタとの強固な接続を実現できる。
前記少なくとも1つのアームは、中心軸と反対側に、前記挿入部の先端から前記基端部にいくにしたがって中心軸からの距離が増大するような傾斜面を備えることが好ましい。これにより、チューブに対するオスコネクタの挿入作業性が向上する。
前記アームが、中心軸に対して対称位置に一対設けられていることが好ましい。これにより、より高い接続強度を安定して得ることができる。
上記の本発明のオスコネクタは、前記少なくとも1つのアームを中心軸に近づくように弾性変形させた状態で前記少なくとも1つのアームを係止する係止機構を更に備えることが好ましい。これにより、チューブに対してオスコネクタを挿入及び引き抜きする際に、アームが弾性回復しないように指で押さえ続ける必要がない。
以下、本発明の好適な実施形態を図面を用いて説明する。但し、本発明は以下の実施形態に限定されないことは言うまでもない。
(実施の形態1)
図1は、本発明の本実施の形態1にかかるオスコネクタ100の斜視図である。図2Aは図1の矢印2Aに沿って見たオスコネクタ100の正面図、図2Bは図1の矢印2Bに沿って見たオスコネクタ100の側面図である。
オスコネクタ100は、その中心軸101に沿った貫通穴102が形成された全体として略中空円筒形状を有している。オスコネクタ100の一端は例えばPEGチューブの上流側端(メスコネクタ)に挿入される挿入部103であり、その他端は液状物が充填された容器などに接続された経腸栄養投与セットを構成するチューブの下流側端と接続される基端部104である。液状物は、基端部104側から挿入部103側に向かって貫通穴102内を流れる。以下の説明の便宜のため、中心軸101方向において、基端部104側(上流側)を「上側」、挿入部103側(下流側)を「下側」と呼ぶ。
挿入部103の外周面の一部には、基端部104側で外径が大きなテーパ面(円錐面)が中心軸101方向に複数個繰り返して配置されたタケノコ形状部105が形成されている。但し、タケノコ形状部105は一例であって、これ以外の、オスコネクタの挿入部として公知の形状が形成されていても良い。
挿入部103の外周面の他の一部に、好ましくはタケノコ形状部105よりも基端部104側の位置に、中心軸101から遠ざかるように外方向に突出した2つのアーム(拡径部)130a,130bが形成されている。2つのアーム130a,130bは中心軸101に対して対称位置に配置されている。
アーム130a,130bは、その下側の、挿入部103の外周面との境界部分である接続部131a,131bを固定端とし、その上側の押圧部132a,132bを自由端とする片持ち支持構造を有している。アーム130a,130bは、その押圧部132a,132bが中心軸101に接近するように弾性変形することができる。アーム130a,130bの外側面(中心軸101とは反対側の面)は、傾斜面133a,133bと押圧面134a,134bとを含む。傾斜面133a,133bは、中心軸101と平行な方向に挿入部103側から基端部104側にいくにしたがって、中心軸101からの距離が増大するように傾斜した平面又は曲面である。押圧面134a,134bは、押圧部132a,132bの、中心軸101とは反対側の面であって、傾斜面133a,133bと連続し、アーム130a,130bのうち中心軸101からの距離が最も遠い面である。中心軸101に直交する方向に沿った押圧面134a,134b間の距離はタケノコ形状部105の最大外径よりも大きい。押圧部132a,132bの中心軸101側の面に、係合爪135a,135bが設けられている。
オスコネクタ100の外周面の、上記押圧部132a,132bとほぼ対向する位置に、2つの係止爪110a,110bが設けられている。アーム130a,130bを、その押圧部132a,132bが中心軸101に接近するように弾性変形させると、図3に示すように係合爪135a,135bと係止爪110a,110bとを噛み合わせ係合させることができる。図3のようにアーム130a,130bを弾性変形させた状態を「縮径状態」と呼ぶ。係合爪135a,135b及び係止爪110a,110bは、アーム130a,130bを縮径状態に弾性変形させた状態で係止するための係止機構を構成する。これに対して、係合爪135a,135bと係止爪110a,110bとの係合状態が解除され、アーム130a,130bに外力が加えられていない図1及び図2Aに示す状態を「拡径状態」と呼ぶ。
基端部104の円筒面である外周面には、中心軸101を含む面に沿って板状の一対の把持板140a,140bが立設されている。把持板140a,140bは、オスコネクタ100を保持したり、中心軸101周りにオスコネクタ100を回転させるためのトルクをオスコネクタ100に付与したりする際に把持される。但し、本発明において把持板140a,140bは必須ではなく、把持板140a,140bを省略したり、把持板140a,140bに代えて、基端部104の外周面を各種多角柱面に形成したり、該外周面に凹凸模様などを付与したりしても良い。
オスコネクタ100は、硬質の樹脂材料、例えばポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリエチレン、ABS樹脂、ポリ塩化ビニル等を用いて、射出成型等により一体に製造することができる。
オスコネクタ100と可撓性を有する中空のPEGチューブ90の上流側端(メスコネクタ)とを接続する方法を以下に説明する。
最初に、図3に示すように、アーム130a,130bを縮径状態とする。即ち、図1及び図2Aに示す拡径状態から、アーム130a,130bを、親指と人差し指とで挟んで、その押圧部132a,132bが中心軸101に接近するように弾性変形させる。上述したように、係合爪135a,135bと係止爪110a,110bとを係合させると、アーム130a,130bから指を離しても縮径状態が維持される。
次に、図4に示すように、アーム130a,130bを縮径状態にしたままで、オスコネクタ100の挿入部103をPEGチューブ90の上流側端に挿入する。このとき、オスコネクタ100の基端部104に設けられた把持板140a,140bを指で摘み、回転力を加えながらオスコネクタ100をPEGチューブ90内にねじ込むことができる。
アーム130a,130bは、その外側に傾斜面133a,133bを備えているので、オスコネクタ100をPEGチューブ90内に挿入するにしたがって、PEGチューブ90の上流側開口端縁は傾斜面133a,133bの形状に沿って周方向に僅かに拡張される。
図4に示すように、アーム130a,130bの押圧部132a,132bがPEGチューブ90でほぼ覆われるほどに、オスコネクタ100をPEGチューブ90内に深く挿入する。PEGチューブ90は柔軟で弾力性を有するので、オスコネクタ100の外形に沿って周方向に適宜拡張され、オスコネクタ100の外周面に密着する。
図4において、PEGチューブ90の図示しない下流側端は、患者の腹に形成された胃ろうを通って胃内に挿入されている。80は患者に投与される液状物を搬送するための経腸栄養投与セットの下流側に設けられた可撓性を有する中空のチューブである。チューブ80の下流側端は、オスコネクタ100の貫通穴102に基端部104側から挿入されて、融着などの方法によりオスコネクタ100と一体化されている。経腸栄養投与セット80の図示しない上流側端は、例えば経腸栄養剤が充填された容器に接続されている。経腸栄養投与セットの構成は、特に制限はなく、例えばJIS T3213で規定された経腸栄養投与セットや、これ以外の公知の経腸栄養投与セットのいずれであってもよい。経腸栄養投与セットには、その中を流れる液状物を圧送するための加圧機構などが設けられていても良い。
次に、PEGチューブ90の外周面を指で摘んでねじり力を加えるなどして、係合爪135a,135bと係止爪110a,110bとの係合状態を解除する。係合状態が解除されると、図5に示すように、アーム130a,130bは、図1及び図2Aに示した拡径状態に戻ろうとする弾性回復力によって、PEGチューブ90の内周面を外側に向かって押し出す。その結果、PEGチューブ90は、アーム130a,130bによって周方向に伸ばされる。PEGチューブ90の周方向の伸び量は、図4の縮径状態よりも、図5の状態の方が大きい。このPEGチューブ90の周方向の伸び量の増加に対応して、PEGチューブ90とオスコネクタ100との密着力が増大する。このように、アーム130a,130bを縮径状態(図3、図5)から拡径状態(図1、図2、図4)又はこれに近い状態に弾性回復させてPEGチューブ90の周方向の伸び量を増大させることにより、PEGチューブ90とオスコネクタ100とをより強く接続することができる。
PEGチューブ90とオスコネクタ100との接続状態を解除するには、上記と逆の操作を行えばよい。即ち、図5において、PEGチューブ90を介してアーム130a,130bを指で挟んで弾性変形させて、係合爪135a,135bと係止爪110a,110bとを係合させて縮径状態とする。次いで、PEGチューブ90からオスコネクタ100を引き抜く。その後、係合爪135a,135bと係止爪110a,110bとの係合状態を解除してアーム130a,130bを拡径状態に戻してもよい。
以上のように、本実施の形態1のオスコネクタ100は、挿入部103をPEGチューブ90内に挿入した後に、アーム130a,130bの拡径状態へ戻ろうとする弾性回復力を利用して、PEGチューブ90の周方向の伸び量を増大させる。これにより、PEGチューブ90の内周面とオスコネクタ100との密着強度が増大するので、PEGチューブ90とオスコネクタ100とを強固に接続することができる。従って、PEGチューブ90を通じて液状物を患者に圧送する場合や、オスコネクタ100とPEGチューブ90との接続部分に作業者が意図せずに外力を加えてしまった場合などでも、PEGチューブ90からオスコネクタ100が外れてしまうのを防止できる。
オスコネクタ100をPEGチューブ90に挿入する過程において、アーム130a,130bを縮径状態に維持することにより、アーム130a,130bによるPEGチューブ90の伸び量は小さく抑えられる。また、アーム130a,130bには、その押圧面134a,134bよりも下側に傾斜面133a,133bが設けられている。これらにより、PEGチューブ90に対するオスコネクタ100の挿入作業性は良好である。
一方、PEGチューブ90とオスコネクタ100とを分離する際には、アーム130a,130bを再び縮径状態にすればよい。これにより、PEGチューブ90の周方向の伸び量が小さくなるので、PEGチューブ90とオスコネクタ100との分離は容易になる。
PEGチューブ90は、アーム130a,130bによって周方向に可逆的に伸ばされるだけであるので、PEGチューブ90とオスコネクタ100とを何度でも再接続することができる。また、再接続を繰り返しても、PEGチューブ90とオスコネクタ100との接続強度は変化しない。
アーム130a,130bがPEGチューブ90の内周面を中心軸101から遠ざかるように押し出すことで、高い接続強度を得ることができる。即ち、オスコネクタ100はPEGチューブ90の外周面に対して何ら作用しない。従って、PEGチューブ90の外径や肉厚とは無関係に、常に高い接続強度を得ることができる。
また、オスコネクタ100以外の部品は不要であるので、部品を紛失する可能性がない。オスコネクタ100を一体成形すれば、組み立て工程が不要となり、低コストで製造できる。
上述したオスコネクタ100とPEGチューブ90との接続方法では、アーム130a,130bを縮径状態(図3)にした状態でオスコネクタ100をPEGチューブ90に挿入したが、アーム130a,130bを拡径状態(図1、図2A)にしたままで図5に示す状態までオスコネクタ100をPEGチューブ90内に挿入しても良い。オスコネクタ100をPEGチューブ90内に挿入するのに要する力は、アーム130a,130bを拡径状態にした場合の方が、縮径状態にした場合よりも大きくなるが、アーム130a,130bに傾斜面133a,133bが設けられていること、アーム130a,130bが適宜弾性変形すること等のために、挿入することは可能である。この方法では、オスコネクタ100をPEGチューブ90内に挿入後に、係合爪135a,135bと係止爪110a,110bとの係合状態を解除する作業は不要となる。PEGチューブ90とオスコネクタ100との接続状態を解除するには、上述した方法と同様に、アーム130a,130bを縮径状態にした後に、PEGチューブ90からオスコネクタ100を引き抜けばよい。
PEGチューブ90の構成は特に制限はない。本実施の形態のオスコネクタ100を上述した方法で接続することができればよい。PEGチューブ90はシリコーン、ウレタン等の柔軟な材料からなることが好ましい。
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2のオスコネクタ200を説明する以下に示す図において、実施の形態1で説明した図に示された構成要素と同じ構成要素には同一の符号を付しており、それらについての説明を省略する。以下、実施の形態1との相違点を中心に、本実施の形態2のオスコネクタ200を説明する。
図6は、本発明の本実施の形態2にかかるオスコネクタ200の斜視図である。図7は図6の矢印7に沿って見たオスコネクタ200の正面図である。
挿入部103の外周面に、好ましくはタケノコ形状部105よりも基端部104側の位置に、中心軸101から遠ざかるように外方向に突出した2つのアーム(拡径部)230a,230bが形成されている。2つのアーム230a,230bは中心軸101に対して対称位置に配置されている。
本実施の形態2のアーム230a,230bは、実施の形態1のアーム130a,130bと異なり、その自由端側に棒状の操作レバー238a,238bを更に備える。操作レバー238a,238bは、押圧部132a,132bの上側端から、上側に向かって、中心軸101とほぼ平行に延びている。操作レバー238a,238bは基端部104に対向している。
一方、本実施の形態2のオスコネクタ200は、実施の形態1のオスコネクタ100が備えていた係合爪135a,135b及び係止爪110a,110bを備えていない。
本実施の形態2では、操作レバー238a,238bを互いに接近するように指で把持することにより、図8に示すようにアーム230a,230bを弾性変形させることができる。図8のようにアーム230a,230bを弾性変形させた状態を「縮径状態」と呼ぶ。これに対して、操作レバー238a,238bに対する把持力を解除した図6及び図7に示す状態を「拡径状態」と呼ぶ。本実施の形態2では、縮径状態を維持するためには、操作レバー238a,238bを把持し続ける必要がある。
更に、本実施の形態2のオスコネクタ200は、実施の形態1のオスコネクタ100が備えていた把持板140a,140bを備えていない。
オスコネクタ200は、実施の形態1のオスコネクタ100と同様に、硬質の樹脂材料、例えばポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリエチレン、ABS樹脂、ポリ塩化ビニル等を用いて、射出成型等により一体に製造することができる。
オスコネクタ200と可撓性を有する中空のPEGチューブ90の上流側端(メスコネクタ)とを接続する方法を以下に説明する。
実施の形態1のオスコネクタ100と異なり、本実施の形態2のオスコネクタ200には、アーム230a,230bを縮径状態に弾性変形させた状態で係止するための係止機構は設けられていない。従って、操作レバー238a,238bを親指と人差し指とで挟んで、図8に示すようにアーム130a,130bを縮径状態に弾性変形させる。この状態で図9に示すようにオスコネクタ200の挿入部103をPEGチューブ90の上流側端に挿入する。このとき、操作レバー238a,238bを指で摘み、回転力を加えながらオスコネクタ200をPEGチューブ90内にねじ込むことができる。
図9に示すように、アーム130a,130bの押圧部132a,132bがPEGチューブ90でほぼ覆われるほどに、オスコネクタ200をPEGチューブ90内に深く挿入する。PEGチューブ90は柔軟で弾力性を有するので、オスコネクタ200の外形に沿って周方向に適宜拡張され、オスコネクタ200の外周面に密着する。
次に、操作レバー238a,238bから指を離す。これにより、図10に示すように、アーム230a,230bは、図6及び図7に示した拡径状態に戻ろうとする弾性回復力によって、PEGチューブ90の内周面を外側に向かって押し出す。その結果、実施の形態1の場合と同様に、PEGチューブ90は、アーム230a,230bによって周方向に伸ばされる。これにより、PEGチューブ90とオスコネクタ200との密着力が増大するので、PEGチューブ90とオスコネクタ200とをより強く接続することができる。
PEGチューブ90とオスコネクタ200との接続状態を解除するには、上記と逆の操作を行えばよい。即ち、図10において、PEGチューブ90で覆われていない操作レバー238a,238bを指で摘んでアーム230a,230bを縮径状態とし、PEGチューブ90からオスコネクタ200を引き抜く。その後、操作レバー238a,238bから指を離すとアーム230a,230bは拡径状態に戻る。
本実施の形態2のオスコネクタ200は、実施の形態1のオスコネクタ100と同様の効果を奏する。
更に、本実施の形態2のオスコネクタ200には、実施の形態1のオスコネクタ100に設けられていた係合爪135a,135b及び係止爪110a,110bからなる係止機構が設けられていない。従って、操作レバー238a,238bを指で把持したときのみ縮径状態となり、指を離すと拡径状態に戻る。よって、オスコネクタ200の構造を簡単化することができ、また、チューブに対する挿入/引き抜きの作業を簡単化することができる。
また、接続部131a,131bから遠く離れた操作レバー238a,238bを把持することでアーム230a,230bを縮径状態に弾性変形させることができる。従って、実施の形態1のオスコネクタ100に比べて、より小さな操作力でアームを縮径状態にすることができる。
(実施の形態3)
本発明の実施の形態3のオスコネクタ300を説明する以下に示す図において、実施の形態1,2で説明した図に示された構成要素と同じ構成要素には同一の符号を付しており、それらについての説明を省略する。以下、実施の形態1,2との相違点を中心に、本実施の形態3のオスコネクタ300を説明する。
図11は、本発明の実施の形態3に係るオスコネクタ300の斜視図である。図12は図11の矢印12に沿って見たオスコネクタ300の正面図である。
挿入部103の外周面の下側端及びその近傍には、基端部104側で外径が大きなテーパ面(円錐面)305が形成されている。但し、テーパ面305は一例であって、これ以外の、オスコネクタの挿入部として公知の形状(例えばタケノコ形状部105)が形成されていても良い。
挿入部103の外周面に、好ましくはテーパ面305よりも基端部104側の位置に、中心軸101から遠ざかるように外方向に突出した2つのアーム330a,330bが形成されている。2つのアーム330a,330bは中心軸101に対して対称位置に配置されている。
アーム330a,330bは、その下側の接続部331a,331bを固定端として挿入部103に支持された片持ち支持構造を有している。接続部331a,331bは、これより下側の挿入部103の外周面よりも外方向に突出している。アーム330a,330bの外側面(中心軸101とは反対側の面)には、接続部331a,331bより上側に、傾斜面333a,333bが延びている。傾斜面333a,333bは、実施の形態1,2の傾斜面133a,133bと同様に、中心軸101と平行な方向に挿入部103側から基端部104側にいくにしたがって、中心軸101からの距離が増大するように傾斜した平面又は曲面である。アーム330a,330bの外側面上において、傾斜面333a,333bの上側には、凹溝336a,336bが形成されている。凹溝336a,336bは、中心軸101に対して直交する平面に沿って延び、アーム330a,330bの幅方向の両端縁を繋いでいる。
本実施の形態3のアーム330a,330bは、実施の形態2のアーム230a,230bと同様に、その自由端側に操作レバー338a,338bを更に備える。操作レバー338a,338bは、凹溝336a,336bから上側に向かって、中心軸101とほぼ平行に延びている。操作レバー338a,338bは基端部104に対向している。
本実施の形態3のオスコネクタ300は、実施の形態2のオスコネクタ200と同様に、実施の形態1のオスコネクタ100が備えていた係合爪135a,135b、係止爪110a,110b、把持板140a,140bを備えていない。
本実施の形態3では、実施の形態2と同様に、操作レバー338a,338bを互いに接近するように指で把持することにより、アーム330a,330bを弾性変形させることができる。アーム330a,330bを互いに接近するように弾性変形させた状態を「縮径状態」と呼ぶ。これに対して、操作レバー338a,338bに対する把持力を解除した状態を「拡径状態」と呼ぶ。実施の形態2と同様に、縮径状態を維持するためには、操作レバー338a,338bを把持し続ける必要がある。
オスコネクタ300は、実施の形態1,2のオスコネクタ100,200と同様に、硬質の樹脂材料、例えばポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリエチレン、ABS樹脂、ポリ塩化ビニル等を用いて、射出成型等により一体に製造することができる。
オスコネクタ300とPEGチューブの上流側端(メスコネクタ)とを接続する方法を図13、図14を用いて説明する。図13は、オスコネクタ300をPEGチューブ390の上流側端に挿入する直前の状態を示した斜視図である。図14は、オスコネクタ300をPEGチューブ390の上流側端に挿入した状態を示した断面図である。
本実施の形態3のオスコネクタ300が好ましく使用されるPEGチューブ390は、その上流側端に、円筒形状を有する径大部391を備えている。径大部391の内径は、これより下側の被挿入部395の内径より大きく、径大部391と被挿入部395とはドーナツ状の底板393を介して接続されている。径大部391の内周面には、周方向に連続する環状凸部392が形成されている。環状凸部392は、例えばポリプロピレン、ポリカーボネート等の相対的に硬く、実質的に変形しない材料からなる。一方、環状凸部392以外の、径大部391、底板393、被挿入部395を含むPEGチューブ390はシリコーン、ウレタン等の相対的に柔軟な材料からなる。このような異種材料からなるPEGチューブ390は、例えば二色成形(ダブルモールド)により製造できる。参照符号399は、PEGチューブ390の下流側端に設けられたバルーン(図示せず)と連通したバルブを指すが、本発明とは関係がないので図14ではその内部構造の図示を省略している。
オスコネクタ300とPEGチューブ390の上流側端(メスコネクタ)との接続は、図13に示すようにオスコネクタ300の挿入部103をPEGチューブ390の上流側端から挿入することにより行う。オスコネクタ300をPEGチューブ390内に挿入していくと、径大部391の内周面に突出した環状凸部392が、オスコネクタ300のアーム330a,330bの傾斜面333a,333bに当接する。更にオスコネクタ300をPEGチューブ390内に挿入すると、環状凸部392は、アーム330a,330bを中心軸101に接近する方向に弾性変形させながら傾斜面333a,333b上を摺動する。そして、アーム330a,330bの凹溝336a,336bが環状凸部392に到達するとアーム330a,330bが弾性回復して、図14に示すように環状凸部392が凹溝336a,336b内に嵌入して、オスコネクタ300とPEGチューブ390との接続が達成される。この状態では、オスコネクタ300の外方向に突出した接続部331a,331bが底板393に接触する。そして、PEGチューブ390の被挿入部395は、先端のテーパ面305を含むオスコネクタ300の挿入部103の外形に沿って周方向に拡張されて、挿入部103の外周面に密着する。
上記の説明から理解できるように、オスコネクタ300のアーム330a,330bはPEGチューブ390の環状凸部392によって適宜弾性変形される。従って、オスコネクタ300をPEGチューブ390内に挿入する際に、実施の形態2と異なり、操作レバー338a,338bを指で挟んでアーム330a,330bを縮径状態に弾性変形させる必要はない。但し、アーム330a,330bを縮径状態に弾性変形させながらオスコネクタ300をPEGチューブ390内に挿入しても良いことは言うまでもない。
PEGチューブ390とオスコネクタ300との接続状態を解除するには、操作レバー338a,338bを指で摘んでアーム330a,330bを縮径状態とし、環状凸部392と凹溝336a,336bとの係合状態を解除する。この状態で、PEGチューブ390からオスコネクタ300を引き抜けばよい。その後、操作レバー338a,338bから指を離すとアーム330a,330bは拡径状態に戻る。
以上のように、本実施の形態3のオスコネクタ300は、挿入部103をPEGチューブ390の被挿入部395内に挿入した状態で、オスコネクタ300の凹溝336a,336bにPEGチューブ390の環状凸部392を嵌入させて両者を係合させる。これにより、PEGチューブ390とオスコネクタ300とを強固に接続することができる。従って、PEGチューブ390を通じて液状物を患者に圧送する場合や、オスコネクタ300とPEGチューブ390との接続部分に作業者が意図せずに外力を加えてしまった場合などでも、PEGチューブ390からオスコネクタ300が外れてしまうのを防止できる。
オスコネクタ300をPEGチューブ390に挿入する過程においては、作業者はオスコネクタ300をPEGチューブ390内にねじ込むことに専念すればよい。オスコネクタ300のアーム330a,330bの外周面には傾斜面333a,333bが設けられているので、オスコネクタ300の挿入が進むにしたがって、アーム330a,330bはPEGチューブ390の環状凸部392によって徐々に弾性変形させられる。そして、環状凸部392が凹溝336a,336b内に嵌入する際の「カチッ」という音と、アーム330a,330bが弾性回復する際の形状変化とにより、接続が完了したことを容易に確認できる。また、PEGチューブ390の環状凸部392は周方向に連続しているので、PEGチューブ390に対するオスコネクタ300の中心軸101回りの回転位置は何ら考慮する必要がない。これらにより、PEGチューブ390に対するオスコネクタ300の挿入作業性は良好である。
一方、PEGチューブ390とオスコネクタ300とを分離する際には、操作レバー338a,338bを指で摘んでアーム330a,330bを縮径状態にすればよい。これにより、環状凸部392と凹溝336a,336bとの係合が解除されるので、PEGチューブ390とオスコネクタ300との分離は容易になる。
PEGチューブ390の環状凸部392は実質的に変形しない材料からなり、また被挿入部395は挿入部103によって周方向に可逆的に伸ばされるだけであるので、PEGチューブ390とオスコネクタ300とを何度でも再接続することができる。また、再接続を繰り返しても、PEGチューブ390とオスコネクタ300との接続強度は変化しない。
環状凸部392と凹溝336a,336bとが係合することで、高い接続強度を得ることができる。即ち、オスコネクタ300はPEGチューブ390の外周面に対して何ら作用しない。従って、PEGチューブ390の外径や肉厚とは無関係に、常に高い接続強度を得ることができる。
また、オスコネクタ300以外の部品は不要であるので、部品を紛失する可能性がない。オスコネクタ300を一体成形すれば、組み立て工程が不要となり、低コストで製造できる。
本実施の形態3のオスコネクタは、アームの外周面にPEGチューブ390と係合する係合形状が形成されていればよく、係合形状の具体的な構成は上述した凹溝336a,336bに限定されない。例えば、凹状の溝ではなく、階段状の単なる段差であってもよい。あるいは、中心軸101方向に複数の凹溝が形成されていてもよく、この場合には、複数の凹溝の中から環状凸部392と係合する凹溝を選択することにより、オスコネクタ300のPEGチューブ390に対する挿入深さを適宜変更することができる。あるいは、PEGチューブ390の内周面に周方向に連続する環状溝が形成されていても良く、この場合には、アーム330a,330bの外周面にはこの環状溝に係合する凸部が形成されていてもよい。
上記のオスコネクタ300の接続部331a,331bは、挿入部103の外周面から外方向に突出していたが、実施の形態1,2の接続部131a,131bのように挿入部103の外周面上に設けられていても良い。この場合には、オスコネクタ300をPEGチューブに挿入する際に、接続部がPEGチューブの上流側端の開口端縁に引っ掛かることがないので、挿入作業性が向上する。
本実施の形態3のオスコネクタ300が接続可能なPEGチューブは上記のPEGチューブ390に限定されない。
例えば、環状凸部392がPEGチューブ390の他の部分と同じ柔軟な材料で構成されていてもよい。この場合も、環状凸部392が凹溝336a,336bと係合することで高い接続強度を得ることができる。また、実施の形態1,2と同様に、アーム330a,330bが拡径状態に戻ろうとする弾性回復力を利用して環状凸部392を含む径大部391を周方向に伸ばすことができるので、更に高い接続強度を得ることができる。柔軟な材料からなる環状凸部392は、上述のようにアーム330a,330bを弾性変形させる機能に劣るかも知れない。このような場合には、操作レバー338a,338bを指で挟んでアーム330a,330bを縮径状態に弾性変形させながらオスコネクタ300をPEGチューブ390内に挿入すると、挿入作業性が向上する。
また、底板393が設けられておらず、径大部391と被挿入部395との間でPEGチューブ390の内径がなだらかに変化していても良い。
オスコネクタのアームの外周面に形成された係合形状と係合することができれば、PEGチューブの内周面には上述した環状凸部392以外の形状が形成されていてもよい。
上記の実施の形態1〜3は例示に過ぎず、種々の変更が可能である。
例えば、上記の実施の形態1,2,3ではオスコネクタ100,200,300は2つのアーム130a,130b;230a,230b;330a,330bを備えていたが、アームの数は2つに限定されず、1つ又は3つ以上であっても良い。但し、アームの数が1つだけだと、オスコネクタが中心軸101に対して非対称に配置されることになるので、高い接続強度を安定して得ることが困難となることがある。また、アームの数が3つ以上だと、アームの縮径状態と拡径状態との切り替え操作が煩雑となる可能性がある。従って、アームの数は2つであることが好ましい。
複数のアームを設ける場合、それらの中心軸101に対する配置は特に制限はないが、中心軸101に対して等角度間隔に配置されることが好ましい。これにより、実施の形態1,2では、オスコネクタをPEGチューブ90に挿入したときに、PEGチューブ90を中心軸101に対して対称に伸ばすことができ、且つ、チューブの周方向の伸び量が増大するので、より高い接続強度を安定して得られやすくなる。また、実施の形態3では、オスコネクタとPEGチューブとの係合箇所を中心軸101に対して等角度間隔に配置することができるので、より高い接続強度を安定して得られやすくなる。
実施の形態2に示したオスコネクタ200に、実施の形態1のオスコネクタ100に設けられていた、係合爪135a,135b及び係止爪110a,110bからなる係止機構を設けてもよい。この場合、挿入部103をPEGチューブ90に挿入した状態において、係合爪135a,135bと係止爪110a,110bとの係合の解除をPEGチューブ90の外に露出した操作レバー238a,238bを用いて行うことができる。実施の形態3で示したオスコネクタ300にも、実施の形態1のオスコネクタ100に設けられていた上述の係止機構を設けることができる。
上記の実施の形態1〜3では、本発明のオスコネクタを経腸栄養投与セットを構成するチューブの下流側端に設ける例を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、ラインを延長するために、経腸栄養投与セットと経腸栄養カテーテルとの間に接続して使用される経腸栄養延長チューブを構成する可撓性を有する中空のチューブの下流側端に設けることもできる。経腸栄養延長チューブの構成は、特に制限はなく、例えばJIS T3264で規定された経腸栄養延長チューブや、これ以外の公知の経腸栄養延長チューブのいずれであってもよい。オスコネクタと経腸栄養延長チューブとの接続は、上記の実施の形態1〜3と同様に、経腸栄養延長チューブを構成するチューブの下流側端を、オスコネクタ100,200,300の貫通穴102に基端部104側から挿入し、融着などの方法によりオスコネクタ100,200,300と一体化することで行うことができる。更に、経腸栄養投与セットや経腸栄養延長チューブ以外の中空のチューブの一端に本発明のオスコネクタを取り付けることもできる。
上記の実施の形態1〜3は、本発明のオスコネクタをPEGチューブと接続する場合を例に説明したが、本発明のオスコネクタは、PEGチューブ以外の経鼻チューブやPTEGチューブなどの経腸栄養療法に用いられる各種チューブ(経腸栄養カテーテル)や、経腸栄養療法以外に用いられる医療用チューブ、更には医療用以外の用途に用いられるチューブとの接続に適用することが可能である。