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JP5416439B2 - アルミニウム合金ろう付け体およびその熱処理方法ならびに熱交換器 - Google Patents

アルミニウム合金ろう付け体およびその熱処理方法ならびに熱交換器 Download PDF

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Description

本発明は、アルミニウム合金ブレージングシートをチューブ材やプレート材としてろう付けして製造されるアルミニウム合金ろう付け体に関するもので、特に高温で使用される自動車用の熱交換器に関する。
自動車に搭載されるコンデンサ、エバポレータ、インタークーラ等の熱交換器は、流体通路を有する形状にロール成形したチューブ材やプレス成形したプレート材と、コルゲート成形したフィン材とを交互に重ね合わせて組み合わされた状態でろう付けされることによって製造される。これらのチューブ材、プレート材、およびフィン材に成形される板材は、ろう付け用のアルミニウム合金材、またはアルミニウム合金を心材としてこれにろう材を積層したアルミニウム合金ブレージングシートからなる。熱交換器は小型化、軽量化が要求されており、そのためにこれらのアルミニウム合金ブレージングシート等も薄肉化の可能な高強度ならびに高耐食性のものが開発されている。
例えば、従来Al−Mn系合金が主流であったアルミニウム合金ブレージングシートの心材に対して、特許文献1,2には、さらにCuを添加したAl−Mn−Cu合金を心材とすることでろう付け後の強度と耐食性を向上させたアルミニウム合金ブレージングシートが開示されている。また、特許文献3には、0.7質量%を超え2.5質量%以下の多量のCuを添加したAl合金を心材とすることで、熱交換器のチューブとして高強度が得られるアルミニウム合金ブレージングシートが開示されている。
特公平7−33559号公報(3頁左欄6〜14行) 特開平4−202735号公報(請求項1、2頁右下欄下から3行目〜3頁左上欄8行目) 特開平8−291353号公報(段落0010,0012)
前記従来技術のアルミニウム合金ブレージングシートから製造される熱交換器の使用温度は概ね100℃程度であり、このような条件下において前記特許文献1〜3のように心材のアルミニウム合金にCuを添加することは強度および耐食性の向上に有効であるといえる。しかしながら、近年、熱交換器の使用条件は高温化する方向にあり、アルミニウム合金ブレージングシートについては150℃程度の高温に耐え得る特性が要求されている。このような高温経時において、前記のCuを含有するアルミニウム合金を心材とするブレージングシートは、耐食性が低下する虞がある。
本発明は、前記問題点に鑑みてなされたものであり、Cuを含有するアルミニウム合金を心材とするブレージングシートを適用して、熱交換器として高温経時の耐食性に優れるアルミニウム合金ろう付け体を提供することを目的とする。
本発明者らは、前記課題を解決するため、Cuを含有するアルミニウム合金を心材とするブレージングシートの高温経時特性について鋭意研究した結果、ろう付け加熱後に熱処理を施すことにより、高温経時の耐食性の低下を抑制できる場合があることが判明した。さらに、Cuの含有量に応じて、高温経時の耐食性が良好となる熱処理の温度および時間の条件が存在することを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明に係るアルミニウム合金ろう付け体は、Cu:0.5質量%以上を含有するアルミニウム合金からなる心材の少なくとも一方の面にアルミニウム合金からなるろう材を備えるアルミニウム合金ブレージングシートをろう付けした後に、前記心材の粒界と粒内とにCuを析出させる熱処理を施したアルミニウム合金ろう付け体であって、前記アルミニウム合金ブレージングシートの心材のCuの含有量(質量%)を[Cu]として表し、前記熱処理における温度(℃)をT、時間(hr)をtとしてそれぞれ表したとき、t>(190−T)/(0.62×[Cu]−0.16)の関係を満足することを特徴とする。
このように、ろう付け後に心材のCu濃度に対応した熱処理を施されることにより、高温経時のCuの粒界析出によるアルミニウム合金の耐食性の低下が抑制される。
また、本発明に係るアルミニウム合金ろう付け体は、前記ろう材を前記心材の一方の面に備えて、他方の面にはアルミニウム合金からなる犠牲陽極材をさらに備えるアルミニウム合金ブレージングシートを適用してもよい。このような片面に犠牲陽極材を備えたアルミニウム合金ブレージングシートを用いることにより、この面の側の耐食性が向上する。
本発明に係る熱交換器は、これらのアルミニウム合金ろう付け体を用いたものである。心材にCuを多く含有するアルミニウム合金ブレージングシートが適用されていることで強度に優れ、さらにろう付け後の熱処理により高温経時の耐食性が向上する。
また、本発明に係るアルミニウム合金ろう付け体熱処理方法は、Cu:0.5質量%以上を含有するアルミニウム合金からなる心材の少なくとも一方の面にアルミニウム合金からなるろう材を備えるアルミニウム合金ブレージングシートをろう付けした後に行って、前記心材の粒界と粒内とにCuを析出させる熱処理の方法であって、前記心材のCuの含有量(質量%)を[Cu]として表したとき、熱処理温度T(℃)および熱処理時間t(hr)が、t>(190−T)/(0.62×[Cu]−0.16)の関係を満足するように行うことを特徴とする。
このように、ろう付け後にアルミニウム合金ブレージングシートの心材のCu濃度に対応した条件で熱処理を施すことにより、効率的に高温経時の耐食性の低下の抑制効果が得られる。
本発明に係るアルミニウム合金ろう付け体によれば、心材にCuを多く含有して強度に優れるアルミニウム合金ブレージングシートを用いて、150℃程度の高温経時においても十分な耐食性を有する熱交換器とすることができる。本発明に係る熱交換器によれば、前記アルミニウム合金ろう付け体を用いたことにより、軽量化が可能となり、さらに150℃程度の高温経時においても十分な耐食性を有して、自動車用に特に好適な熱交換器とすることができる。本発明に係るアルミニウム合金ろう付け体熱処理方法によれば、前記高温経時においても十分な耐食性を有する熱交換器を製造することができる。
Cu含有量0.5質量%、0.85質量%のアルミニウム合金をそれぞれ心材とするブレージングシートからなるアルミニウム合金ろう付け体の粒界腐食深さの熱処理時間依存性のグラフであり、(a)は熱処理温度150℃、(b)は熱処理温度180℃である。 アルミニウム合金ろう付け体の実施例における供試材の高温経時耐食性への熱処理温度と熱処理時間との依存性を示すグラフであり、(a)はCu含有量0.5質量%、(b)はCu含有量0.85質量%のアルミニウム合金を心材とするブレージングシートからなる供試材である。
以下、本発明に係るアルミニウム合金ろう付け体を実現するための形態について説明する。本発明に係るアルミニウム合金ろう付け体は、特に高温下で使用される自動車用の熱交換器として好適である。
本発明に係るアルミニウム合金ろう付け体は、少なくとも片面側にアルミニウム合金からなるろう材を備えるアルミニウム合金ブレージングシートを、所望の形状に成形して部品とし、必要に応じて他の部品と組み合わせて加熱してろう付け接合し、さらに後記の所定の条件で熱処理を施してなる。以下に、本発明に係るアルミニウム合金ろう付け体を構成する各要素について説明する。
〔アルミニウム合金ブレージングシート〕
本発明に係るアルミニウム合金ろう付け体を構成するアルミニウム合金ブレージングシートは、Cu:0.5質量%以上を含有するアルミニウム合金からなる心材の片面または両面にアルミニウム合金ろう材を積層したクラッド材である。または、前記心材の片面(一面側)にろう材を、他面側に犠牲陽極材を備えてもよい。アルミニウム合金ブレージングシートの厚さは、好ましくは0.2〜3mmであるが、特に規定されるものではなく、作製される熱交換器の仕様等に合わせて、要求される軽量化や強度および耐食性に対応可能な厚さとする。
(心材)
Cuは、アルミニウム合金中で固溶・析出強化して強度を向上させる。また、Cuはアルミニウム合金の電位を貴にする働きがあるため、ろう材が心材を犠牲防食し、アルミニウム合金ブレージングシートの耐食性を向上させる。一方で、Cuは、その含有量が0.5質量%以上になると、150℃以上の高温において初期に粒界に析出するため、腐食環境下で粒界腐食を生じて耐食性を顕著に劣化させるため、熱交換器に組み立てる際に後記の熱処理を施す。なお、Cu含有量が0.5質量%未満では、特に前記熱処理を施さなくても耐食性の劣化を生じないため、本発明の範囲外とする。また、Cu含有量の上限は特に規定しないが、増大するにしたがいアルミニウム合金の融点が低下するため、3.5質量%以下が好ましく、2質量%以下がさらに好ましい。
アルミニウム合金ブレージングシートの心材を構成するアルミニウム合金は、前記Cu以外に、さらに、一般的なアルミニウム合金ブレージングシートの心材やろう付け用アルミニウム合金材に添加される成分や不可避的不純物を含有してもよい。具体的には、Mn:2質量%以下、Mg:0.5質量%以下、Si:2質量%以下、Fe:1質量%以下、Ti:0.3質量%以下、Zr:0.3質量%以下、Cr:0.3質量%以下、Ni:0.5質量%以下の1種以上が挙げられる。
(ろう材)
アルミニウム合金ブレージングシートに備えるろう材は、一般的なアルミニウム合金ブレージングシートに積層されるろう材やろう付け用アルミニウム合金材のろう付けに通常用いられるろう材用のアルミニウム合金を使用できる。このようなアルミニウム合金としては、例えば、Al−Si系合金、Al−Si−Zn系合金、Al−Si−Mg(Bi)系合金等を挙げることができる。
(犠牲陽極材)
アルミニウム合金ブレージングシートに備える犠牲陽極材は、一般的なアルミニウム合金ブレージングシートの犠牲陽極材として公知のアルミニウムまたはアルミニウム合金を使用することができる。アルミニウム合金としては、例えば、Al−Zn系合金、Al−Zn−Mg系合金、そしてこれらにMn,Si等を添加した合金等が挙げられる。
アルミニウム合金ブレージングシートは、公知のクラッド材の製造方法により製造される。以下にその一例を説明する。
まず、アルミニウム合金ブレージングシートの心材の成分のアルミニウム合金を連続鋳造にて溶解、鋳造し、必要に応じて面削、均質化熱処理して、鋳塊とし、この鋳塊を、熱間圧延または切断によって所定厚さにして、心材用アルミニウム合金板を得る。同様の方法で、ろう材用アルミニウム合金板、そして必要に応じて犠牲陽極材用アルミニウム合金板を得る。なお、それぞれのアルミニウム合金板はクラッド率に合わせてそれぞれの所定厚さにする。
次に、心材用アルミニウム合金板の片面または両面にろう材用アルミニウム合金板を重ね合わせ、または、心材用アルミニウム合金板の一面側にろう材用アルミニウム合金板を、他面側に犠牲陽極材用アルミニウム合金板を重ね合わせ、400℃以上の温度で加熱した後、熱間圧延により圧着し、板材とする。その後、必要に応じて粗鈍、冷間圧延、中間焼鈍、冷間圧延を行うことにより所定の板厚とする。なお、冷間圧延は、所望の板厚になるまで適宜中間焼鈍を挟んで繰り返す。さらに、最終の板厚とした冷間圧延の後、仕上げ焼鈍を実施してもよい。
本発明に係るアルミニウム合金ろう付け体は、前記のアルミニウム合金ブレージングシートを常法にて所望の形状に成形し、公知のろう付け方法でろう付け接合したろう付け体を、さらに後記の熱処理方法で熱処理を施すことによって製造される。ろう付け方法の一例としては、アルミニウム合金ブレージングシートのろう材側の表面に市販の非腐食性のフラックスを塗布し、窒素雰囲気中、ろう材のアルミニウム合金組成に応じた温度(580〜610℃)で数分間保持する。なお、アルミニウム合金ろう付け体は、必要に応じて他の部材と組み合わせてろう付け接合してもよい。
本発明に係るアルミニウム合金ろう付け体を熱交換器とする場合は、前記アルミニウム合金ブレージングシートを流体通路を有する形状にロール成形したチューブ材やプレス成形したプレート材等として、これを常法にて、コルゲート成形したフィン材と交互に重ね合わせて組み合わせた状態でろう付け加熱後、後記の所定条件で熱処理を行うことで製造できる。
〔熱処理方法〕
(熱処理時間t(hr):t>(190−T)/(0.62×[Cu]−0.16)、熱処理温度T(℃)、[Cu]:アルミニウム合金ブレージングシートの心材のCu含有量(質量%))
本発明に係るアルミニウム合金ろう付け体熱処理方法(以下、熱処理方法)は、時間t(hr)が、熱処理温度(℃)をT、アルミニウム合金ブレージングシートの心材のCuの含有量(質量%)を[Cu]として表したとき、条件式:t>(190−T)/(0.62×[Cu]−0.16)を満足するように行う。
本発明に係るアルミニウム合金ろう付け体を構成するアルミニウム合金ブレージングシートは、Cuを0.5質量%以上含有するアルミニウム合金を心材として備える。このようなアルミニウム合金は、150℃程度の高温経時にてCuが粒界に析出して粒界腐食の起因となり、顕著に耐食性が劣化する。詳しくは、Cuが粒界に析出することで、粒内の粒界に沿った領域でCu濃度が低くなって電位が相対的に卑化するため、粒界腐食感受性が高くなって耐食性が低下する。しかし、その後さらに時間が経過すると、Cuが粒内にも析出して粒界と粒内のCu濃度の差が小さくなるため、粒界腐食感受性が低下して耐食性が回復する。すなわち耐食性の低下は高温経時の初期における一時的な現象である。そこで、アルミニウム合金ろう付け体を自動車用の熱交換器等の高温・腐食環境下で使用される前に、非腐食環境下で高温経時に、すなわちろう付け加熱後に熱処理を施すことによりアルミニウム合金(心材)の耐食性を回復させることができる。
ろう付け加熱後の熱処理においては、前記した通り、まず、アルミニウム合金中のCuが粒界に析出し、次に粒内にも析出して、最終的に粒界と粒内のCu濃度が均一となる。熱処理は、Cuが粒内に析出して、少なくとも熱交換器として必要な耐食性に回復するまで行う。好ましくは、粒界と粒内のCu濃度が均一になるまで、すなわちCu析出反応が完了するまで熱処理を行う。ここで、アルミニウム合金におけるCu析出反応の反応速度は、熱処理温度と当該アルミニウム合金のCu含有量に依存する。そこで、心材のCu含有量を変えたブレージングシートでアルミニウム合金ろう付け体のサンプルを作製し、さらに温度を変えて熱処理を施し、耐食性の経時変化を調査した。
表1に示す組成を有する心材(C1:Cu0.5質量%、C3:Cu0.85質量%)用、および表2に示す組成を有するろう材(F)用のアルミニウム合金を作製し、連続鋳造にて溶解、鋳造した後、均質化熱処理、熱間圧延を施し、心材用アルミニウム合金板およびろう材用アルミニウム合金板を得た。心材用アルミニウム合金板を両面からろう材用アルミニウム合金板で挟んで重ね合わせ、両面のろう材の厚さをそれぞれ板厚全体の10%となるように熱間圧延にてクラッドし、冷間圧延にて板厚1.5mmとした。その後、仕上げ焼鈍によりO材に調質して2種類の3層材(ブレージングシート)を作製した。
Figure 0005416439
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作製したブレージングシートを、幅100mm×長さ200mmの短冊状に切り出し、その表面(ろう材の表面)に市販の非腐食性のフラックスFL−7(森田化学工業株式会社製)5g/m2を塗布し、乾燥後、長手方向を垂直に吊り下げて、窒素雰囲気中、590℃で2分間保持することによりろう付け加熱を行って、アルミニウム合金ろう付け体のサンプルを作製した。
さらに、アルミニウム合金ろう付け体のサンプルを、それぞれ150℃および180℃の温度で12hr以上の熱処理を施し、以下の方法による促進腐食試験後の粒界腐食深さを測定し、測定限界値(10μm)未満に到達するまで熱処理を継続した。図1に粒界腐食深さ(最大値)の熱処理時間依存性のグラフを示す。
ろう材側の一面を試験面とし、他面および端面をシールして、5%NaCl水溶液中にて、電流密度1mA/cm2で24時間の定電流電解による促進腐食試験を行った。試験後に試験面から粒界腐食深さを測定した。
図1(a)に示すように、心材Cu含有量0.5質量%のブレージングシートについて、150℃における粒界腐食深さの経時変化は、開始から上昇して約50hrでピークに到達した後、緩やかに下降して、開始から約380hrで測定限界値未満に到達する。これは、心材アルミニウム合金中で、開始から約50hrまでの間にCuが粒界に析出して粒界腐食感受性が最も高い状態になり、その後、Cuが粒内にも徐々に析出して粒界腐食感受性が低下し、約380hrで粒界と粒内のCu濃度が均一になったと考えられる。また、心材Cu含有量0.85質量%のブレージングシートについての150℃における経時変化については、粒界腐食深さの上昇が見られないが、1回目の測定時(12hr後)付近でピークに到達したと考えられ、その後速やかに粒界腐食深さが下降し始めて、約240hrで測定限界値未満に到達したと推定される。このように、心材Cu含有量0.85質量%のブレージングシートの方が、心材Cu含有量0.5質量%のブレージングシートよりも粒界腐食深さの変化の推移が速く、同様に、図1(b)に示す180℃における経時変化においても、心材Cu含有量による推移の速さの違いが見られた。さらに、図1(a)、(b)を比較すると、同じ心材Cu含有量のブレージングシートについて、150℃における経時変化より180℃における経時変化の方が大幅に進行が速い。このように、アルミニウム合金におけるCu析出反応は、当該アルミニウム合金のCu含有量が高いほど、また熱処理温度が高いほど、反応速度が速くなる。
ここで、熱交換器として必要な耐食性として粒界腐食深さが100μm以下に回復した熱処理時間t(hr)を、図1(a)、(b)のそれぞれのグラフから読み取った。熱処理温度(℃)をT、アルミニウム合金ブレージングシートの心材のCu含有量(質量%)を[Cu]として表し、これらの相関を求めると、t>(190−T)/(0.62×[Cu]−0.16)と近似され、本発明の条件式が成立する。この条件式に基づいて、アルミニウム合金ブレージングシートの心材のCu含有量および熱処理温度から算出した処理時間で熱処理を施したアルミニウム合金ろう付け体であれば、アルミニウム合金ブレージングシート(心材)において、少なくとも必要な耐食性に回復するまでCuの析出が進行している。すなわち150℃程度の高温経時で再びCu濃度が不均一化することはないので、例えば熱交換器として腐食環境下で使用されても粒界腐食が発生し難くなる。
なお、熱処理温度は特に規定しないが、温度が低いとCu析出反応が遅くなり、所要時間が長くなって実用的でないため、150℃以上が好ましい。一方、温度が高くなるとCuが固溶する虞がある。また反応速度が速すぎて熱処理の制御が困難であるため、180℃以下が好ましい。また、熱処理の時間は、本発明の条件式を満足する範囲であれば特に規定しないが、アルミニウム合金ろう付け体の均熱性の観点から1時間以上行うことが好ましい。
以上、本発明を実施するための形態について述べてきたが、以下に、本発明の効果を確認した実施例を、本発明の要件を満たさない比較例と比較して具体的に説明する。なお、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
(供試材作製)
表3、表4、表5に示す組成を有する心材(C1〜C5)用、ろう材(F)用、および犠牲陽極材(S)用のアルミニウム合金を作製し、連続鋳造にて溶解、鋳造した後、均質化熱処理、熱間圧延を施し、心材用アルミニウム合金板、ろう材用アルミニウム合金板および犠牲陽極材用アルミニウム合金板を得た。それぞれのアルミニウム合金板を表6に示す組合せで重ね合わせ、ろう材および犠牲陽極材の厚さをそれぞれ板厚全体の10%となるように熱間圧延にてクラッドし、冷間圧延にて板厚1.5mmとした。その後、仕上げ焼鈍によりO材に調質して表6に示す3層材(ブレージングシート)を作製した。
作製したブレージングシートを、幅100mm×長さ200mmの短冊状に切り出し、そのろう材側の表面に市販の非腐食性のフラックスFL−7(森田化学工業株式会社製)5g/m2を塗布し、乾燥後、長手方向を垂直に吊り下げて、窒素雰囲気中、590℃で2分間保持することにより、ろう付け加熱を行い、ろう付け熱処理材を作製した。
ろう付け熱処理材を表6に示す条件で熱処理(温度T(℃)、時間t(hr))を施して供試材(供試材No.1〜16)とした。また、本発明の条件式による時間tの下限として、(190−T)/(0.62×[Cu]−0.16)の値を表6に併記する。なお、[Cu]は供試材の心材のCuの含有量(質量%)である。
(高温経時耐食性の評価)
高温経時耐食性の評価として、ろう材側の一面を試験面とし、他面および端面をシールして、5%NaCl水溶液中にて、電流密度1mA/cm2で24時間の定電流電解による促進腐食試験を行った。試験後に試験面から粒界腐食深さを測定した。耐食性の合格基準は、最大腐食深さが100μm以下として「○」、100μmを超えたものは「×」として表6に示す。なお、熱交換器使用環境の高温経時は、熱処理時間に含むものとした。
Figure 0005416439
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供試材No.1〜10は、熱処理時間が本発明の範囲内の実施例であるので、高温経時耐食性が十分に高い。これに対して、供試材No.11〜14は、心材のCu含有量および熱処理温度に対して熱処理時間が不足していたため、高温経時耐食性が低下した。また、供試材No.15,16は、心材のCu含有量が少ないまたは無添加で本発明の対象外の参考例であり、熱処理条件に関係なく、高温経時耐食性の低下は生じなかった。
図2は、熱処理温度Tと熱処理時間tとの高温経時耐食性への依存性を示し、(a)は心材のCu含有量[Cu]が0.50質量%、(b)は0.85質量%におけるグラフである。図2においても、高温経時耐食性は表6と同様に良好「○」、不良「×」で示す。図2(a)、(b)にそれぞれ示すように、直線:T=190−(0.62×[Cu]−0.16)×tの右側の領域、すなわちt>(190−T)/(0.62×[Cu]−0.16)となる領域においては、高温経時耐食性が良好となる。

Claims (4)

  1. Cu:0.5質量%以上を含有するアルミニウム合金からなる心材の少なくとも一方の面にアルミニウム合金からなるろう材を備えるアルミニウム合金ブレージングシートをろう付けした後に、前記心材の粒界と粒内とにCuを析出させる熱処理を施したアルミニウム合金ろう付け体であって、
    前記アルミニウム合金ブレージングシートの心材のCuの含有量(質量%)を[Cu]として表し、前記熱処理における温度(℃)をT、時間(hr)をtとしてそれぞれ表したとき、t>(190−T)/(0.62×[Cu]−0.16)の関係を満足することを特徴とするアルミニウム合金ろう付け体。
  2. 前記アルミニウム合金ブレージングシートは、前記ろう材を前記心材の一方の面に備えて、前記心材の他方の面にアルミニウム合金からなる犠牲陽極材をさらに備える請求項1に記載のアルミニウム合金ろう付け体。
  3. 請求項1または請求項2に記載のアルミニウム合金ろう付け体を用いた熱交換器。
  4. Cu:0.5質量%以上を含有するアルミニウム合金からなる心材の少なくとも一方の面にアルミニウム合金からなるろう材を備えるアルミニウム合金ブレージングシートをろう付けした後に行って、前記心材の粒界と粒内とにCuを析出させるアルミニウム合金ろう付け体熱処理方法であって、
    前記アルミニウム合金ブレージングシートの心材のCuの含有量(質量%)を[Cu]として表したとき、熱処理温度T(℃)および熱処理時間t(hr)が、t>(190−T)/(0.62×[Cu]−0.16)の関係を満足するように行うことを特徴とするアルミニウム合金ろう付け体熱処理方法。
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