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JP5409125B2 - 耐scc性に優れる7000系アルミニウム合金押出材及びその製造方法 - Google Patents

耐scc性に優れる7000系アルミニウム合金押出材及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は耐応力腐食割れ性(耐SCC性)に優れたJIS(日本工業規格)7000系のアルミニウム合金押出材に関する。
7000系のアルミニウム合金押出材の分野にあっては、Zn、Mgの主成分量およびCu等の添加量を調整することにより、自動車部品であるバンパリィンホースなどの構造材として必要な強度を確保することはできる。
この場合にZn、Mgを適宜添加すると、強度は上昇するが、耐SCC性が低下することが知られている。
その理由として必要な強度を確保するためにZn、Mgを添加すると、結晶粒界には鋳造工程における凝固後の冷却時に晶出物が晶出し、押出材製造工程における押出直後の冷却時に粒界析出物が析出し、粒内と粒界の電位差が拡大することによって、応力腐食割れが発生する環境にさらされたときに粒界の晶出物、析出物が溶出し、割れが発生すると考えられている。
特許文献1、2等には合金組成成分範囲を制御し、PFZ(無析出帯)を制御することで耐SCC性を改善した技術を開示するが、その改善効果が未だ不十分であった。
特開2007−119904号公報 特開2003−286532号公報
本発明は、耐SCC性に優れる7000系アルミニウム合金押出材及びその製造方法の提供を目的とする。
本発明に係る耐SCC性に優れる7000系のアルミニウム合金押出材は、押出ダイスから押し出されてくる押出直後の押出材温度が580〜660℃の範囲で、その後に20℃/min〜50℃/minの冷却速度で押出材温度が100℃以下になるまで冷却し、金属組織の結晶粒内に粒子径1〜15nmの析出物が透過型電子顕微鏡による観察測定で1,000〜10,000ヶ/μm存在していることを特徴とする。
ここで、耐力が、300〜550MPaの範囲であるのが好ましい。
7000系のアルミニウム合金押出材は、Mg、Zn、Cu添加量を調整することにより、バンパリィンホースなどの構造材として必要な強度を確保する必要があるが、質量%で、Mg添加量を0.8〜1.5%、Zn添加量を5.5〜7.0%、Cu添加量を0.05〜0.3%に設定するのがよい。
その他の添加成分としては、Mn:0.05〜0.3%、Cr:0.01〜0.3%、Zr:0.01〜0.2%を単独または混合して添加し結晶粒を微細化したり、再結晶を抑えることも耐SCC性の改善に寄与することは公知である。
また、ビレット鋳造時の結晶粒の微細化には、Ti:0.001〜0.05%添加すると効果があることは公知である。
これに対して本発明の特徴は、7000系アルミニウム合金押出材の耐SCC性はアノード型SCCであるので、粒内−粒界の電位差が大きいと粒界の晶出物、析出物が溶出することで割れが発生することから、金属組織の結晶粒内に粒子径1〜15nmの析出物が1,000〜10,000ヶ/μm存在するようにした点にあり、これにより、粒内−粒界の電位差が小さくなり、耐SCC性が向上する。
このように、結晶粒内に粒子径1〜15nmの析出物が所定量存在するようにするには、押出ダイスから押し出されてくる押出直後の押出材温度が580〜660℃の範囲で、その後に20℃/min〜50℃/minの冷却速度で押出材温度が100℃以下になるまで冷却するとよく、押出材を押出成形後に2段時効処理する工程において1段目の熱処理温度が70〜100℃の範囲で2段目の熱処理温度が140〜170℃の範囲にするとよい。
本発明において製造条件を上記のように設定した理由は次のとおりである。
(1)押出直後の押出材温度が580℃未満であると溶体化処理が不十分であり、その後の熱処理によって粒内に15nm以下の析出物が所定量析出しなく、耐力が300MPa未満になる。
また、押出材温度が600℃を超えると次第に押出材表面に肌荒れが発生し、660℃を超えると溶解するため、押出材温度は580℃〜660℃とし、望ましくは600℃以下とした。
(2)形材冷却速度は100℃以下になるまで管理し、冷却速度が20℃/min以下になると、焼入れが十分に得られず、その後の熱処理によって粒内に15nm以下の析出物が所定量析出しない。
また、50℃/min以上になると、PFZに影響を及ぼすことでSCC性が低下するため、押出材の冷却速度は20℃/min以上、50℃/min以下とした。
(3)製造条件における2段時効処理時の2段目の熱処理温度が140℃以下であると、熱処理時間が長くなり、生産性が低下する。
また、170℃を超えると析出物は粗大化するために粒内に15nm以下の析出物が所定量析出しなく、耐力も300MPa未満になる。
そこで、製造条件における2段時効処理時の2段目の熱処理温度は140℃以上、170℃以下とし、20時間以内とした。
本発明は、7000系アルミニウム合金押出材において、金属組織中の粒内と粒界との電位差が小さくなることで耐SCC性に優れた材料を得ることができる。
アルミニウム合金の組成及び評価結果を示す。 実施例1に相当する結晶粒内の透過型電子顕微鏡写真を示す。 実施例2に相当する結晶粒内の透過型電子顕微鏡写真を示す。 実施例3に相当する結晶粒内の透過型電子顕微鏡写真を示す。 比較例4に相当する結晶粒内の透過型電子顕微鏡写真を示す。 SCC評価治具を示す。
図1の表に示すように、Mg、Zn、Cu成分の添加量を調整し、残部がアルミニウムと不純物からなるビレットを鋳造し、図1の表に示す押出材温度、冷却条件で押出材を押出成形した。
図1の表における各実施例と比較例の時効処理条件を以下に示し、
1段目時効処理条件−2段目時効処理条件の順に示す。
実施例1 95℃,4時間−160℃,4時間
実施例2 95℃,4時間−150℃,7時間
実施例3 90℃,4時間−140℃,14時間
比較例1 95℃,4時間−160℃,4時間
比較例2 95℃,4時間−150℃,7時間
比較例3 90℃,4時間−140℃,14時間
比較例4 95℃,4時間−160℃,4時間
比較例5 90℃,6時間−150℃,8時間
比較例6 90℃,4時間−135℃,20時間
比較例7 90℃,4時間−175℃,2時間
なお、図1の表中に、製造条件、耐力が管理内にあるものを「○」と表示した。
評価条件を説明する。
(応力腐食割れ試験方法)
図6に示すように耐力の80%の応力を3点曲げにより負荷し、クロム酸混合液中に連続浸漬し、割れが発生するまでの時間を評価した。
(腐食環境)
ニクロム酸カリウム:30g/L、酸化クロム(6価):36g/L、塩化ナトリウム :3g/L混合液→50℃に温浴し、連続浸漬した。
(応力負荷用治具)
(1)応力負荷用治具は、アルミ製のコ字型形状で、サンプル(評価材)をセットした後に、ステンレスボルトで締上げて3点曲げし、応力負荷する。
(2)サンプルと応力負荷用治具はアルミナ棒で絶縁し、ステンレスボルトとの電食によるアルミサンプルの溶出により、負荷した応力に影響がないように配慮した。
(3)評価サンプルに負荷した応力は、評価サンプルの厚さ及び、押出方向に連続した部位から引張試験を行って測定したヤング率及び耐力を、以下の式に従って3点曲げ量を決定し、応力を負荷した(JIS H 8711準拠)。
(割れ判定方法)
浸漬開始より6、12、24、36、48、60、72hr後に表面を目視で観察し、明瞭な割れが観察されるか記録した。
割れ発生サイクルが長いほどSCC性に優れる。72hr連続浸漬で明瞭な割れが発生しなかった場合、評価を○とし、それ以外を×とした。
図2は実施例1、図3は実施例2、図4は実施例3、図5は比較例4に相当する結晶粒内の透過型電子顕微鏡写真をそれぞれ示す。
これらの写真を比較すると分かるように、押出材の押出直後の温度、その後の冷却速度を所定内に制御し、人工時効処理の2段目の条件を140℃〜170℃とした実施例1〜3は粒内析出物がそれぞれ1,400ヶ/μm、6,800ヶ/μm、8,500ヶ/μmで有り、耐SCC性に優れることが確認できた。

Claims (3)

  1. 押出ダイスから押し出されてくる押出直後の押出材温度が580〜660℃の範囲で、その後に20℃/min〜50℃/minの冷却速度で押出材温度が100℃以下になるまで冷却し、金属組織の結晶粒内に粒子径1〜15nmの析出物が透過型電子顕微鏡による観察測定で1,000〜10,000ヶ/μm存在していることを特徴とする耐SCC性に優れる7000系アルミニウム合金押出材。
  2. 耐力が、300〜550MPaの範囲であることを特徴とする請求項1記載の耐SCC性に優れる7000系アルミニウム合金押出材。
  3. 押出ダイスから押し出されてくる押出直後の押出材温度が580〜660℃の範囲で、その後に20℃/min〜50℃/minの冷却速度で押出材温度が100℃以下になるまで冷却した7000系アルミニウム合金の押出材を2段時効処理する工程において1段目の熱処理温度が70〜100℃の範囲で2段目の熱処理温度が140〜170℃の範囲であることを特徴とする耐SCC性に優れる7000系アルミニウム合金押出材の製造方法。
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