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JP5402932B2 - バンドパスフィルタ、高周波部品及び通信装置 - Google Patents

バンドパスフィルタ、高周波部品及び通信装置 Download PDF

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Description

本発明は、例えば携帯電話等の移動体通信機器や電子電気機器間における無線伝送を行う無線LAN等の無線通信装置等に使用されるバンドパスフィルタ、及びそれを用いた高周波部品並びに通信装置に関する。
現在IEEE802.11規格に代表される無線LANによるデータ通信が広く利用されている。無線LANは、例えばパーソナルコンピュータ(PC)、プリンタやハードディスク等のPCの周辺機器、FAX、標準テレビ(SDTV)、高品位テレビ(HDTV)、携帯電話等の電子機器、自動車内や航空機内での有線通信に代わる信号伝達手段として用いられている。
このような無線LANのマルチバンド通信装置に用いられる高周波回路は、通信周波数帯が異なる二つの通信システム(例えば、IEEE802.11aとIEEE802.11b及び/又はIEEE802.11g)で送受信が可能な一つのアンテナと、送信側回路及び受信側回路との接続を切り替える高周波スイッチとを備え、二つの通信システムの送信側回路及び受信側回路の切り替えを行う。無線装置の小型化及び高機能化に伴い、高周波回路を具現した高周波部品にも一体化及び小型化の要求が強くなっている。
このような高周波回路のうち、所定帯域の信号を選択的に通過させるバンドパスフィルタは重要な回路である。バンドパスフィルタは、アンテナ回路のフロントエンド、送受信回路の間等に配置され、通過帯域の外側にある不要波を除去する。バンドパスフィルタには、通過帯域近傍における急峻なフィルタ特性だけでなく、高調波帯域のように通過帯域から離れた帯域でも高い減衰量も要求される。その上、小型化及び高性能化も要求される。
WO 2008/066198は、三つの共振器を備え、各共振器を構成する共振線路が複数の層に形成された電極を並列接続することにより構成された小型の積層型バンドパスフィルタを開示している。このような構成のバンドパスフィルタは、低インピーダンス及び低挿入損失で優れた減衰特性を有する。しかし、このバンドパスフィルタでは共振線路が複数の伝送線路で構成されているので、伝送線路間に電磁気的な結合が生じる。従って、小型化の要請に応じて共振線路の間隔を狭めると、電磁気的な結合が強くなりすぎ、挿入損失が増大する。このように、WO 2008/066198のバンドパスフィルタは低挿入損失のまま小型化することができない。また複数の誘電体層にわたって共振線路が形成されているため、積層ずれにより共振線路の積層方向配置がずれ、フィルタ特性が変動するという問題もある。
従って、本発明の第一の目的は、通過帯域近傍だけでなく、さらに高周波側における減衰特性に優れたバンドパスフィルタ、それを用いた高周波部品、及び通信装置を提供することである。
本発明の第二の目的は、低損失で小型化が可能なバンドパスフィルタ、それを用いた高周波部品、及び通信装置を提供することである。
本発明のバンドパスフィルタは、複数の誘電体層からなる積層基板内に三つの入出力端子間に配置された二つ以上の共振器を備え、
各共振器は共振線路とその一端に直列接続された共振容量により構成され、前記共振器の各々は両端が接地されており、
前記共振容量を形成する容量電極と前記共振線路は、積層方向から見たときバンドパスフィルタの構成部分全体を覆う平面状のグランド電極を介して、異なる誘電体層に配置され、
前記二つの入出力端子が接続された共振器の各々において、前記共振線路と前記共振容量との間を直列に繋ぐ経路と前記入出力端子との接続点の積層方向位置は、相対的に前記共振線路より前記共振容量に近いことを特徴とする。
この構成により入出力端子から共振容量までのビア導体を短くでき、入出力端子から見た共振容量までの寄生インダクタンスを低減できる。バンドパスフィルタは、通過帯域より高周波側では共振容量のインピーダンスが短絡に近づき、高い減衰量を得るが、ビア導体の寄生インダクタンスが大きいと共振容量のインピーダンスが高周波側で十分に短絡にならない。本発明の構成によれば寄生インダクタンスが抑制され、通過帯域近傍だけでなく高周波側でも高い減衰量が得られる。
前記バンドパスフィルタにおいて、二つの入出力端子は、共振容量を形成する容量電極が配置された誘電体層において前記経路に接続されているのが好ましい。この構成により入出力端子と共振容量とをビア導体を介さずに直接接続するので、入出力端子から見た共振容量までのビア導体の寄生インダクタンスを最小にでき、もって高周波側においてさらに高い減衰量を得ることができる。
前記バンドパスフィルタにおいて、各共振線路の一端はビア導体を介して各共振容量に接続され、各共振線路の他端はビア導体を介して前記グランド電極に接続されているのが好ましい。この構成によれば、ビア導体は共振線路の一部を構成するインダクタとして機能する。従って、共振を得るために必要な共振線路を短くでき、バンドパスフィルタの小型化及び低損失化に寄与する。
前記バンドパスフィルタは共振線路同士を結合する結合容量を備え、共振容量を形成する容量電極及び結合容量を形成する容量電極がともに前記グランド電極を形成した同じ誘電体層を介して、前記共振線路とは異なる誘電体層に配置されているのが好ましい。この構成により共振線路と容量電極がグランド電極により完全に分離されるので、共振線路と容量電極との間の寄生容量が低減され、バンドパスフィルタの広帯域化及び高減衰量化が実現できる。
前記バンドパスフィルタにおいて、共振容量を形成する容量電極及び結合容量を形成する容量電極がともに二つのグランド電極に挟まれているのが好ましい。これにより、結合容量以外の不要な寄生容量をグランド電極で分離でき、バンドパスフィルタのさらなる広帯域化及び高減衰量化が実現できる。
前記バンドパスフィルタにおいて、前記結合容量は、結合しようとする共振線路に接続された複数の対向容量電極により形成され、積層方向から見たとき一方の容量電極の対向部が他方の容量電極の対向部をマージンをもって覆っているのが好ましい。ここで、「マージンをもって覆っている」とは、積層方向から見て一方の容量電極の対向部分が他方の容量電極の対向部分を内側に包含するように、両容量電極が配置されていることを意味する。例えば容量電極が矩形の場合、一方の容量電極の対向部分が他方の容量電極の対向部分より幅及び長さとも大きいものとする。この構成により積層ズレが生じても容量電極の対向面積が変化しないので、特性変動を抑制できる。
前記バンドパスフィルタにおいて、前記共振線路は隣同士が電磁結合するように並設され、各共振線路は複数の層にわたって形成された複数の帯状導体パターンの両端同士を接続することにより構成されており、隣同士の共振線路が積層方向にずれて配置されるように、それらの帯状導体パターンの一部は同じ誘電体層に配置され、残部は互いに異なる誘電体層に配置されているのが好ましい。この構成により段違いになった隣同士の共振線路の結合が弱められるので、バンドパスフィルタの小型化のために共振線路の間隔を狭めることができる。また積層ズレがあっても隣同士の共振線路の層間の電磁結合が少ないので、積層ズレによる特性変動が抑制される。
前記バンドパスフィルタは、積層方向にずれた三つ以上の平行な共振線路を有するのが好ましい。この構成によれば、共振線路を構成する帯状導体パターン同士をさらに近づけることができ、バンドパスフィルタを小型化できる。また積層ずれがあっても隣接する共振線路の層間の電磁気的な結合を減らすことができる。共振線路は積層方向に順にずれてもよいが、共振線路を構成するのに必要な層数を低減するために積層方向に交互にずれているのがより好ましい。
前記バンドパスフィルタは複数の共振線路同士を結合する結合容量を有し、前記結合容量は、結合しようとする共振線路に接続された複数の容量電極が対向することにより形成され、前記複数の容量電極は、前記グランド電極を介して、前記共振線路を形成した誘電体層と別の誘電体層に形成されているのが好ましい。この構成により、共振線路の間隔を狭めても制約を受けずに、高い設計自由度で結合容量を形成することができる。
前記バンドパスフィルタを積層方向から見たとき、結合容量の一方の容量電極の対向部が他方の容量電極の対向部をマージンをもって覆っているのが好ましい。この構成により、積層ズレが生じても容量電極の対向面積が変化せず、特性変動を抑制することができる。
本発明の高周波部品は通信装置用高周波回路を有し、前記高周波回路は電極パターンを形成した複数の誘電体層からなる積層体と、前記積層体の表面に搭載された素子により構成されているとともに、上記バンドパスフィルタを有することを特徴とする。
本発明の通信装置は、上記高周波部品を具備することを特徴とする。
本発明のバンドパスフィルタは、通過帯域近傍だけでなく高周波側でも減衰特性に優れている。
本発明の一実施形態によるバンドパスフィルタを構成する積層基板内の導体パターンを示す展開図である。 図1(a) に示す帯状導体パターンの配置を示す断面図である。 帯状導体パターンが積層方向に交互にずれていない配置の一例を示す断面図である。 帯状導体パターンが積層方向に交互にずれていない配置の別の例を示す断面図である。 図1(a) に示すバンドパスフィルタの等価回路を示す図である。 本発明のさらに他の実施形態によるバンドパスフィルタを構成する積層基板内の導体パターンを示す展開図である。 本発明のさらに他の実施形態によるバンドパスフィルタを構成する積層基板内の導体パターンを示す展開図である。 図1(a) に示すバンドパスフィルタの減衰特性を示すグラフである。 従来のバンドパスフィルタの減衰特性を示すグラフである。 本発明の他の実施形態によるバンドパスフィルタを構成する積層基板内の導体パターンを示す展開図である。 図6に示すバンドパスフィルタの等価回路を示す図である。 本発明のさらに他の実施形態によるバンドパスフィルタを構成する積層基板内の導体パターンを示す展開図である。 図8に示すバンドパスフィルタの等価回路を示す図である。 本発明のさらに他の実施形態によるバンドパスフィルタを構成する積層基板内の導体パターンを示す展開図である。 本発明の高周波部品の一例の等価回路を示す図である。
本発明の各実施形態を添付図面を参照して以下詳細に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではなく、また各実施形態の説明は特に断りがなければ他の実施形態にも適用可能である。本発明のバンドパスフィルタは、導体パターンを有する複数の誘電体層からなる積層基板により構成された積層バンドパスフィルタであり、二つの入出力端子間に二つ以上の共振器を備える。例えば、各共振器は、共振線路とその一端に接続された共振容量からなる。
図1(a) は本発明の一実施形態による積層型バンドパスフィルタを構成する各層の導体パターンを示し、図2は図1(a) に示すバンドパスフィルタの等価回路の一例を示す。このバンドパスフィルタは、共振線路と共振容量からなる三つの共振器を備える。第一〜第三の共振線路L1〜L3は隣同士が電磁結合するように並設されている。インダクタンス素子である各共振線路の一端には接地容量である共振容量C1〜C3が接続され、他端は直接接地されて共振器を構成する。共振容量との接続関係において、第二(中央)の共振線路L2と共振容量C2との接続方向は、その両側の第一及び第三の共振線路L1,L3と共振容量C1,C3との接続方向と逆である。第一の共振線路L1と共振容量C1との接続点J1に一方の入出力端子P1が接続され、第三の共振線路L3と共振容量C3との接続点J2に他方の入出力端子P2が接続されている。接続点J1と接続点J2との間に、共振線路L1と共振線路L3を結合する容量として飛び越し容量C4が接続されている。ただし本発明のバンドパスフィルタの等価回路は図2に限定されず、他の構成を有していても良い。例えば共振線路の数は三つに限らず、二つでも四つ以上でも良い。また共振線路の方向も限定的でなく、全て同じ方向でも良いし、三本の共振線路のうち端の一本の方向だけが逆でも良い。ただし、方向が交互の共振線路を設けると共振容量の形成の自由度が高くなり、バンドパスフィルタの小型化に有利である。各入出力端子P1,P2に入出力容量を接続しても良いし、結合容量として飛び越し容量だけでなく、隣接する共振線路を結合する段間の結合容量を用いても良い。共振線路、共振容量及び結合容量の構成は、必要とされる特性等に応じて適宜変更できる。
図1(a) に示す本発明のバンドパスフィルタは10層の誘電体層からなる。最上の第1層と最下の第10層にはそれぞれグランド電極1,14が形成されており、第6層及び第8層にもそれぞれグランド電極6,10が形成されている。平面状のグランド電極を有する第1層と第6層に挟まれた第2層〜第5層にインダクタンス素子として機能する共振線路を構成する帯状導体パターン3〜5が形成されており、平面状のグランド電極6,14を有する第6層と第10層に挟まれた第7層〜第9層に容量電極パターンが形成されている。図中、対角線を付した小さな四角はビア導体を表し、対角線のない小さな四角はビア導体が接続される部分を表す。第1層、第6層及び第8層に形成されたグランド電極1,6,10の四辺に沿って一列に設けられたビア導体は第10層のグランド電極14に接続されている。ビア導体の列はバンドパスフィルタを構成する領域全体を囲み、外部との干渉を抑制する。なお図示されていないが、内層のグランド電極はビア導体等を介して表面又は裏面のグランド端子に接続されている。
並列に配置された共振線路L1〜L3の各々は、複数の層にわたって形成された複数の帯状導体パターンの両端同士をビア導体を介して直接接続することにより構成される。共振線路を並列とすることにより抵抗が低下し、挿入損失抑制される。第一及び第三の共振線路L1,L3をそれぞれ構成する帯状導体パターン3,5は第2層〜第4層の誘電体層にわたって形成されており、第二の共振線路L2を構成する帯状導体パターン4は第3層〜第5層に形成されている。すなわち、隣同士の共振線路の複数の帯状導体パターンの一部は同じ誘電体層(第3層及び第4層)に配置され、残りは異なる誘電体層(第2層及び第5層)に配置されている。第一〜第三の共振線路L1〜L3の帯状導体パターンは同形状で良い。
このように隣同士の共振線路は一層分ずらして配置されており、第3層と第4層において三つの共振線路の結合が図られている。このような構成により、第一〜第三の共振線路L1〜L3の帯状導体パターン同士を全て同じ誘電体層に配置する場合より全体の電磁気的な結合が弱くなるため、帯状導体パターン同士をさらに近づけることができ、もってバンドパスフィルタを小型化できる。なお帯状導体パターンを全て別の層に形成すると、電磁気的な結合はかえって弱くなり過ぎる。共振線路を複数層にわたった並列線路で構成する場合、誘電体層の積層ずれがあると隣接する共振線路の電磁気的な結合が異なる誘電体層に設けられた帯状導体パターン間でも起こることがあり、その結果バンドパスフィルタの特性が変化する恐れがある。これに対して、図1(a) に示すように隣同士の共振線路を積層方向にずらして配置すると、積層ずれがあっても隣接する共振線路の層間の電磁気的な結合を減らすことができる。従って、隣同士の共振線路を積層方向にずらして段違いに配置する構成は、積層ずれによる特性変動を抑える点でも有利である。
第一の共振線路、第二の共振線路及び第三の共振線路を同じ積層方向に順にずらすと誘電体層の数が多くなるので、図1(a) 及び図1(b) に示すように、隣接する共振線路を積層方向に交互にずらすのが好ましい。この配置により、例えば一層ずらす場合には1つの誘電体層を増やすだけで良く、バンドパスフィルタの高さの増加を抑えることができる。その結果、帯状導体パターン同士をさらに近づけることができ、バンドパスフィルタを小型化できる。また積層ずれがあっても隣接する共振線路の層間の電磁気的な結合を減らすことができる。隣接する共振線路が積層方向に交互にずれる場合でも、ずれが2層分になると、図1(c) に示すように2つの誘電体層を増やす必要がある。隣接する共振線路が積層方向に順にずれる場合も、図1(d) に示すように、2つの誘電体層を増やす必要がある。
図3は、共振線路を構成する帯状導体パターンの配置が図1(a) と異なる実施形態を示す。共振線路以外の部分は図1(a) と同じであるので、説明を省略する。図3に示す実施形態では、第一及び第三の共振線路L1,L3をそれぞれ構成する帯状導体パターン3,5は第2層〜第4層にわたって形成されており、第二の共振線路L2を構成する帯状導体パターン4は第4層〜第6層に形成されている。すなわち、隣同士の共振線路の複数の帯状導体パターンの一部は同じ誘電体層(第4層)に配置され、残りは異なる誘電体層(第2層、第3層、第5層及び第6層)に配置されている。このように隣同士の共振線路を二層分ずらして配置すると、第4層だけで三つの共振線路の電磁気的な結合が図られ、第一〜第三の共振線路全体の電磁気的な結合はさらに弱くなる。そのため、帯状導体パターン同士をいっそう近づけて、バンドパスフィルタを小型化することが可能となる。また帯状導体パターンの電磁気的な結合に対する積層ずれの影響はさらに低減するので、積層ずれによる特性変動を抑える点でもさらに有利である。なお第一〜第三の共振線路L1〜L3の帯状導体パターンは同形状で良い。
図4は、共振線路を構成する帯状導体パターンの配置が図1(a) と異なる他の実施形態を示す。共振線路以外の部分は図1(a) と同じであるので、説明を省略する。図4に示す実施形態では、第一及び第三の共振線路L1,L3をそれぞれ構成する帯状導体パターン3,5は第2層及び第3層に形成されており、第二の共振線路L2を構成する帯状導体パターン4は第3層及び第4層に形成されている。すなわち、隣同士の共振線路の複数の帯状導体パターンの一部は同じ誘電体層(第3層)に配置され、残りは異なる誘電体層(第2層及び第4層)に配置されている。図1(a) の実施形態では三つの帯状導体パターンにより一つの共振線路を形成しているのに対して、図4に示す実施形態では二つの帯状導体パターンにより一つの共振線路を形成している。図4に示す構成は、使用する誘電体層の数を減らし、バンドパスフィルタの低背化を図る上で有利である。なお第一〜第三の共振線路L1〜L3の帯状導体パターンは同形状で良い。
共振線路を積層方向にずらして並設する配置は低損失化及び小型化に有利であるが、本発明はそれに限定されない。共振線路をずらさずに同一の誘電体層に配置しても良いし、各共振線路を一つの線路で構成しても良い。しかし、共振線路を積層方向にずらして並設する配置は、入出力端子の接続位置や共振容量電極の配置に関係なく、バンドパスフィルタに広く適用できる。例えば、積層基板内の複数の層にわたって形成した複数の帯状導体パターンの両端同士を接続することにより隣同士が電磁結合するように並ぶ複数の共振線路を有し、隣同士の共振線路を積層方向にずらして、複数の帯状導体パターンの一部を同じ誘電体層に配置し、残りを異なる誘電体層に配置したバンドパスフィルタが提供可能である。
共振線路と容量電極とは、バンドパスフィルタの構成部分全体を覆う平面状のグランド電極で分けられた誘電体層に配置されている。例えば図1(a) に示す実施形態では、共振容量C2,C1,C3を形成する容量電極8、12,13が設けられた誘電体層(第7層及び第9層)は、共振線路L1〜L3を構成する帯状導体パターン3〜5が設けられた誘電体層(第2層〜第4層)と異なり、これらの間に平面状のグランド電極6が形成された誘電体層(第6層)がある。共振線路と容量電極がグランド電極により完全に分離されているので、共振線路と容量電極との間の寄生容量は抑制される。例えば図1において、第二の共振線路L2に接続される共振容量C2を形成するために第7層に形成された容量電極8は、第6層に形成されたグランド電極6及び第8層に形成されたグランド電極10と対向しているが、グランド電極6により第2層〜第5層に設けられた共振線路用の帯状導体パターン3〜5から分けられている。容量電極8と共振線路L2の一端はビア導体で接続されている。
図1(a) に示す実施形態では、第7層に形成された容量電極8は、第6層に形成されたグランド電極6及び第8層に形成されたグランド電極10と対向し、共振容量C2を形成する。容量電極8の一端はビア導体により上層の共振線路L2の一端と接続されている。また第9層に形成された容量電極12,13は、第8層に形成されたグランド電極10及び第10層に形成されたグランド電極14と対向し、それぞれ共振容量C1,C3を形成する。各容量電極12,13の一端はビア導体により上層の各共振線路L1,L3の一端と接続されている。第7層に形成された容量電極7及び第9層に形成された容量電極11はビア導体を介して第一の共振線路L1の一端に接続されている。第8層に形成された容量電極9はビア導体を介して第三の共振線路L3に接続されている。第一〜第三の共振線路L1〜L3の他端(共振容量と接続する端部と反対側の端部)は、ビア導体を介してグランド電極6に接続されている。
グランド電極6には、共振線路L1と共振容量の容量電極12とを接続するビア導体の周辺の電極非形成部(誘電体層)6a、共振線路L2と共振容量の容量電極8とを接続するビア導体の周辺の電極非形成部(誘電体層)6b、及び共振線路L3と共振容量の容量電極13とを接続するビア導体の周辺の電極非形成部(誘電体層)6cが設けられている。電極非形成部6bは容量電極8の外縁より内側に位置するので、積層ずれがあっても、容量電極8とグランド電極6とで形成される容量の変動が抑制される。
共振線路と共振容量とを接続するビア導体、及び共振線路とグランド電極とを接続するビア導体はインダクタとして機能し、共振線路と一体となって共振インダクタを形成するので、共振に必要な線路の長さを短縮でき、バンドパスフィルタの小型化及び低損失化を可能とする。隣接及び対向するビア導体により、隣接する共振器の結合度を調整することもできる。この場合、隣接する直線状の帯状導体パターンに接続されたビア導体の間隔は、帯状導体パターンの間隔と等しいかそれより小さいのが好ましい。積層基板の裏面(実装面)側のグランド電極のうち最も共振線路に近いグランド電極6は、上述のように共振線路と共振容量との間の寄生容量を低減する目的も有する。またグランド電極6は複数のビア導体を介して裏面のグランド14に接続されている。第一〜第三の共振線路L1〜L3の他端をビア導体を介してグランド電極6に接続することにより、安定した接地が可能である。これはビア導体をインダクタとして用いるだけでなく、増幅回路の実装面より遠い下側のグランド電極に接続することにより、寄生インダクタンスを減らすことができる。
各容量電極12,13の一端に接続線路15,16を介して各入出力端子P1,P2が接続されている。平面状のグランド電極10は、容量電極9を形成するための電極非形成部(誘電体層)10aを除き、バンドパスフィルタの構成部分全体を覆う。接地容量を形成するためのグランド電極10と結合容量C4を形成する容量電極9とで誘電体層を共用することにより、バンドパスフィルタは小型化される。電極非形成部10aはグランド電極10をくりぬくように形成されている。容量電極12,13の幅は、電極非形成部10aと交差する部分では小さくしてある。
第一の共振線路L1に接続された容量電極7及び11は第三の共振線路L3に接続された容量電極9と対向し、第一の共振線路L1と第三の共振線路L3とを結合する飛び越し容量C4を形成している。結合容量の形成のために共振線路と容量電極を対向させる必要がないため、共振線路の間隔が狭くても容易に結合容量を形成することができる。このような結合容量の構成は、図1(a) に示す飛び越し容量に限らず、隣接する共振線路を結合する段間の結合容量に適用しても良い。
上述のように、共振容量C1,C3を形成する容量電極8、12,13が設けられた誘電体層(第7層及び第9層)は、共振線路L1〜L3を構成する帯状導体パターン3〜5が設けられた誘電体層(第2層〜第4層)と異なる。接続線路15,16を介して入出力端子P1,P2と接続される各共振器(L1/C1、L3/C3)は以下の構成を有する。図1(a) に示す実施形態では、共振線路L1(L3)と共振容量C1(C3)との間の経路は主に第4層〜8層に形成されたビア導体で構成されており、これらの経路に接続線路15,16を介して二つの入出力端子P1,P2が接続されている。このように二つの入出力端子P1,P2は、共振容量C1,C3を形成する容量電極12,13が配置された誘電体層上で前記経路に接続されている。ビア導体はインダクタンス成分を有するので、ビア導体を入出力端子P1,P2の接続点J1,J2(図1(a) では第8層に設けたビア導体と第9層の電極との接合部分が該当)より共振線路側に配置し、もってビア導体のインダクタンス成分をインダクタとしての共振線路と一体化するとともに、共振容量にインダクタンス成分が付加されるのを防ぐ。これにより、高周波側の不要な共振を抑制することができる。バンドパスフィルタは、通過帯域より高周波では共振容量のインピーダンスが短絡側になり、高い減衰量を示すが、ビア導体の寄生インダクタンスが大きいと共振容量のインピーダンスが高周波で十分に短絡にならない。この問題は、図1(a) に示す構成により寄生インダクタンスを抑制することにより解決でき、もって高周波側で高い減衰量を得ることができる。
共振線路と共振容量との間の経路を構成するビア導体と入出力端子P1,P2との接続点J1,J2は、図1(a) に示すように共振容量を形成する容量電極が配置された誘電体層(第9層)に設けるのが好ましいが、高い減衰量を得る効果は図1(a) に示す構成でなくても、接続点J1,J2が共振線路より共振容量に近い積層方向位置にあれば得られる。例えば、接続点J1,J2をグランド電極6より容量電極側の第7層又は第8層に設けても良い。従って、「共振線路より共振容量に近い位置」は共振容量と同じ誘電体層上にある場合も含む。このような配置により、入出力端子P1,P2と共振容量の寄生インダクタを抑制し、通過帯域近傍だけでなく、高周波側でも高い減衰量を得ることができる。
バンドパスフィルタのみからなる高周波部品の場合、接続線路15,16は側面又はビア導体を介して裏面(実装面)に導出され、二つの入出力端子P1,P2に接続される。一方、バンドパスフィルタを他の回路素子と複合化した高周波部品の場合、接続線路15,16に接続された二つの入出力端子P1,P2の少なくとも一方は他の回路素子に接続される。他の回路素子に接続するビア導体をバンドパスフィルタと同じ層に形成する場合、接続用ビア導体をグランド電極の四辺に沿ったビア導体列の外側に配置することにより、バンドパスフィルタへの不要な干渉を抑制できる。
図1(a) に示す実施形態では、結合容量C4を形成する容量電極7、9及び11は、共振線路を構成する帯状導体パターン3〜5(第2層〜第5層に形成)と異なる第7層〜第9層に配置されており、容量電極7、9及び11と帯状導体パターン3〜5との間にグランド電極6が介在している。同様に共振容量C1〜C3を形成する容量電極8、12及び13も、グランド電極6を介して、帯状導体パターン3〜5と異なる第7層及び第9層に配置されている。このようにグランド電極を挟んで一方の側(上側)に共振線路を配置し、他方の側(下側)に全ての容量電極(共振容量、結合容量等)を配置することにより、寄生容量が低減する。結合容量は飛び越し容量に限らず、隣り合う共振線路間の段間の結合容量でも良いし、両方でも良い。容量電極と共振線路との間にグランド電極を形成した誘電体層を配置すれば良いが、図1(a) に示すようにさらに第10層にもグランド電極を形成し、容量電極を二つのグランド電極で挟むと、寄生容量の低減効果がいっそう高まる。
第8層に形成された容量電極9の対向部(ビア導体との接続等に用いる帯状部分を除く矩形の部分)は、第7層及び第9層にそれぞれ形成された容量電極7,11の対向部(ビア導体との接続等に用いる帯状部分を除く矩形の部分)より小さいので、容量電極9の対向部全体が容量電極7,11の対向部に完全に挟まれる。このように一方の容量電極の対向部が他方の容量電極の対向部の内側に位置することにより、積層ずれがあっても容量の変動が抑えられる。
第6層に形成したグランド電極6において、容量電極7,9に接続するビア導体の周囲に電極非形成部6a,6cが形成されている。容量電極7,9のうち電極非形成部6a,6cと交差する部分は対向部より細いので、積層ズレがあっても特性変動を抑制できる。また容量電極7,9のうち容量を形成する対向部は、全体がグランド電極6と重なる。
図5(a) は図1(a) に示す実施形態によるバンドパスフィルタの減衰特性を示し、図5(b) は従来のバンドパスフィルタ(入出力端子の接続位置が共振線路側にある)の減衰特性を示す。いずれのバンドパスフィルタも2.4 GHz帯を通過帯域とする。図5(b) に示すように、従来のバンドパスフィルタは、通過帯域より高周波側(三倍波付近)の減衰量が小さく、高周波側の不要信号を十分に阻止できない。一方、図5(a) に示すように、本発明のバンドパスフィルタは、高周波側の帯域でも減衰量が大きく、高周波帯域の減衰特性に優れている。
図6は本発明の他の実施形態によるバンドパスフィルタの各層の導体パターンを示し、図7は図6に示すバンドパスフィルタの等価回路を示す。図1(a) と同じ構成には同符号を付してあり、また図1(a) に示す実施形態と共通する部分の説明は省略する。図6に示す実施形態では、第一〜第三の共振線路L1〜L3を構成する帯状導体パターン17〜19は第2層〜第5層にわたって形成されている。各共振線路を四つの帯状導体パターンで構成するとともに、各帯状導体パターンを全て同じ誘電体層に配置することにより、誘電体層の数の増加を抑えつつ低損失化を達成している。図1(a) に示す実施形態と同様に10層の誘電体層でバンドパスフィルタを構成している。
図7に示す等価回路は、結合容量を含む容量電極の配置に関して図2に示す等価回路と異なる。図7に示す等価回路では、共振線路L1,L3と共振容量C1,C3との間の経路と入出力端子P1,P2との接続点J1,J2と入出力端子P1,P2との間の点J3,J4と、中央の共振線路L2と共振容量C2との間の経路の点J5との間に、結合容量C5,C6が設けられている。このように、隣り合う共振器同士は段間の結合容量で結合されている。このような容量の相違により、第7層〜第9層における導体パターンの構成が図1(a) と異なる。
グランド電極6を介して共振線路L1〜L3と積層方向反対側の第7層に容量電極20〜22が形成され、容量電極20及び21の一端に接続線路23,24を介して入出力端子P1,P2が接続されている。第9層には、接続線路部分以外容量電極20〜22と同形状の容量電極27〜29が形成されている。各容量電極20〜22及び各容量電極27〜29はビア導体で接続され、第6層に形成されたグランド電極6、第8層に形成されたグランド電極26及び第10層に形成されたグランド電極14と対向し、共振容量C1〜C3を形成している。
グランド電極26に設けられた長方形の電極非形成部26aの中に帯状の容量電極25が形成されており、容量電極25の中央部はビア導体を介して容量電極22,29に接続されている。容量電極25は共振線路の長手方向に対して垂直に延設され、その一端は容量電極20及び27の一部と対向し、他端は容量電極21及び28の一部と対向し、それぞれ段間の結合容量C5,C6を形成している。各容量電極20,21,27及び28は、グランド電極26と対向して接地容量を形成する部分と、容量電極25と対向して結合容量を形成する部分と、接地容量形成部と結合容量形成部との間の細い接続部分とからなり、細い接続部分はグランド電極26と電極非形成部26aとの境界部と交差する。このような構成により、積層ズレが生じた場合の特性変動を抑制することができる。また電極非形成部26aの中に結合容量を形成する容量電極25が配置されているので、接地容量を形成するグランド電極と結合容量を形成する容量電極とが同じ誘電体層に設けられており、バンドパスフィルタの小型化が図れる。
図6に示す実施形態では、共振線路L1,L3と共振容量C1,C3との間の経路は、主に第5層及び第6層に形成されたビア導体で構成されており、第7層で接続線路23,24を介して二つの入出力端子P1,P2に接続されている。それらの接続点J1,J2は接続線路23,24と容量電極20,21との接合部分に相当する。この実施形態でも、二つの入出力端子P1,P2は、共振容量C1,C3を形成する容量電極20,21が配置された誘電体層上で、共振線路L1,L3と共振容量C1,C3との間の経路に接続されている。このように、接続点J1,J2は共振線路より共振容量に近い位置にある。勿論、「共振線路より共振容量に近い位置」は、共振容量と同じ誘電体層上にある場合も含む。
容量電極25の両端の矩形の対向部は、各容量電極20,21,27及び28の矩形の対向部より小さく、前者は後者に完全にマージンをもって覆われている。つまり、積層方向から見て容量電極25の対向部は各容量電極20,21,27及び28の対向部に内側に包含されている。このように、積層方向で見たときに一方の容量電極の対向部を他方の容量電極の対向部の内側に配置させことにより、積層ずれがあっても容量の変動が抑えられる。
図8は、共振線路より共振容量に近い積層方向位置で、二つの入出力端子が共振線路と共振容量の間の経路に接続されている積層バンドパスフィルタの他の例を示し、図9は図8に示す積層バンドパスフィルタの等価回路を示す。ただし、上記と同じ構成及び機能については説明を省略する。この積層バンドパスフィルタは二つの入出力端子間に四つの共振器を備え、フィルタ特性に優れている。隣同士が電磁結合するように第一〜第四の共振線路L1〜L4は並設されている。インダクタンス素子である各共振線路の一端には接地容量である共振容量C11〜C14が接続され、他端は直接接地されて、共振器を構成している。外側の二つの共振線路L1及びL4には同じ長手方向一端側(図の下側)に共振容量C11,C14がそれぞれ接続されており、内側の二つの共振線路L2,L3には長手方向他端側(図の上側)に共振容量C12,C13がそれぞれ接続されている。このように外側の二つの共振線路L1及びL4と内側の二つの共振線路L2及びL3は共振容量との接続方向が逆である。この構成により共振容量の配置の自由度が高い。一段目の共振線路L1と共振容量C11との接続点J1に一方の入出力端子P1が接続されており、四段目の共振線路L4と共振容量C14との接続点J2に他方の入出力端子P2が接続されている。接続点J1と接続点J2との間に、共振線路L1と共振線路L4を結合する容量として飛び越し容量C15が接続されている。
図8に示すバンドパスフィルタは、8層の誘電体層からなる。第1層(最上層)、第5層及び第8層(最下層)にはそれぞれ平面状のグランド電極31,39及び47が形成されている。グランド電極31及び39に挟まれた第2層〜第4層には共振線路の帯状導体パターンが形成されており、グランド電極39及び47に挟まれた第6層及び第7層には容量電極パターンが形成されている。すなわち、グランド電極39を挟んで、積層方向一方側に共振線路が、他方側に容量電極が配置されている。共振線路と容量電極がグランド電極により完全に分離されるため、共振線路と容量電極との間の寄生容量が低減され、バンドパスフィルタの広帯域化及び高減衰量化が達成できる。
各共振線路L1〜L4は、低損失化のために、複数の層(第2層〜第4層)にわたって形成された複数の帯状導体パターンの両端同士をビア導体を介して接続することにより構成されている。各層に形成された帯状導体パターンは同形状である。接続用のビア導体に向かって各帯状導体パターンの両端部は細くなっている。内側の帯状導体パターン36,37の各端部は幅方向中央に延出しており、両端の帯状導体パターン35,38の各端部は並列方向の外側に偏って延出している。帯状導体パターン35〜38の各端部にビア導体が接続している。この構成はビア導体に接続される接続線路の小型化に寄与する。
第5層の平面状グランド電極39を介して共振線路と積層方向反対側の第7層に形成された容量電極43〜46は、第5層に形成されたグランド電極39及び第8層に形成されたグランド電極47と対向し、第一〜第四の共振線路L1〜L4に接続される共振容量C11〜C14を形成している。各容量電極43〜46は、グランド電極と対向して容量を形成する矩形部と、ビア導体と接続する幅の狭い接続部とからなる。外側の共振器と内側の共振器の向きが異なるために、容量電極43〜46の矩形部は縦横二列づつとなるように配置されている。この構成により、容量電極43〜46は帯状導体パターン35〜38の形成領域内に配置され、バンドパスフィルタは小型化される。
小型化のために容量電極43〜46と共振線路用の帯状導体パターン35〜38は異なる誘電体層に配置されており、それぞれビア導体で接続されている。また全ての共振容量の容量電極を同じ誘電体層に形成することにより積層基板の層数を削減し、もってバンドパスフィルタの低背化及び低コスト化を達成している。
平面状グランド電極39は、共振線路と共振容量を接続するビア導体の周辺部分を除き、バンドパスフィルタの構成部分全体を覆っている。グランド電極39は、内側の帯状導体パターン36,37と容量電極44,45とを接続するビア導体の周囲に設けられた絶縁用の電極非形成部39aと、外側の帯状導体パターン35,38と容量電極43,46とを接続するビア導体の周囲に設けられた切り欠き部39bとを有する。
第6層に結合容量を形成する矩形の容量電極42が設けられている。容量電極42の長手方向両端部は容量電極43,46と対向し、第一の共振線路L1と第四の共振線路L4とを結合する飛び越し容量C15を形成している。このように、結合すべき共振線路に接続された複数の容量電極(共振線路と別の誘電体層に形成)をさらに別の誘電体層に形成した追加の容量電極と対向させることにより、複数の共振線路の結合容量が形成される。結合容量の形成のために共振線路と容量電極を対向させる必要がないため、共振線路の間隔が狭くても、結合容量を容易に形成できる。さらに外側の共振器の向きが同じなので、共振器の向きが交互の場合より、入出力間の飛び越し容量の配置が容易である。その結果、不要な寄生容量が低減され、バンドパスフィルタの広帯域化及び高減衰量化が達成される。
結合容量を形成する容量電極42は、グランド電極39を挟んで共振線路の反対側(共振容量と同じ側)に形成されているので、グランド電極により共振線路から完全に分離されている。容量電極42は、長手方向両端が容量電極43,46より外側に位置するように長く、横手方向両端が容量電極43,46より内側に位置するように幅が狭い。この構成により、積層ズレが生じても特性変動を抑制できる。結合容量は図8に示す飛び越し容量に限らず、隣接する共振線路の段間の結合容量でも良い。
第5層に形成されたビア導体(容量電極43,46と帯状導体パターン35,38の一端を接続する)に接続線路40及び41が接続されており、接続線路40,41は第1層に露出するビア導体33,34を介して入出力端子P1,P2に接続されている。図8では、共振線路L1(L4)と共振容量C11(C14)の間の経路は、主に第4層〜第6層に形成されたビア導体で構成されており、第5層の接続線路40,41を介して二つの入出力端子P1,P2に接続されている。接続線路40,41とビア導体との接続点と容量電極との距離が、接続点と帯状導体パターンとの距離より小さくなるように、帯状導体パターンを形成した第4層の厚さは第5層及び第6層の合計厚さより大きい。このような構成により、図8に示す実施形態でも、共振線路より共振容量に近い積層方向位置で、二つの入出力端子が共振線路と共振容量の間の経路に接続されている。図8に示す構成を有する一例では、接続線路40,41とビア導体との接続点(二つの入出力端子の接続点)と共振容量との距離は30μmであり、接続点と共振線路との距離は200μmである。接続線路40,41とビア導体との接続点(二つの入出力端子の接続点)と共振容量との距離は、接続点と共振線路との距離の1/3以下が好ましい。接続線路40,41とビア導体との接続点(二つの入出力端子の接続点)と共振容量との距離は100μm以下が好ましい。
図10は、共振線路より共振容量に近い積層方向位置で、二つの入出力端子が共振線路と共振容量の間の経路に接続されているバンドパスフィルタの他の例を示す。このバンドパスフィルタの等価回路は図9に示すものと同じである。図8に示す構成と同じ部分に同じ符号を付し、同じ部分の説明は省略する。図8に示す構成との相違点は入出力端子の接続位置である。帯状導体パターン35に接続する入出力端子P1は図8に示す実施形態と同じであるが、帯状導体パターン38は第7層に形成された接続線路50及びビア導体52を介して入出力端子P2に接続されている。入出力端子P1の接続線路40の構成は図8に示すものと同じであるが、入出力端子P2の接続線路50は容量電極46と同層に形成されている。図10に示す実施形態でも、入出力端子P1,P2は共振線路より共振容量に近い位置で、共振線路と共振容量の間の経路に接続されている。図10では入出力端子P1,P2が積層方向両側に分かれているので、積層方向にずらして配置された回路素子間にバンドパスフィルを配置する場合、接続構成を簡略化できる。また接続線路50と同様の接続線路を第7層の容量電極43側にも形成し、入出力端子との接続点を両方とも第7層に配置しても良い。さらに図10に示す構成において、一方の入出力端子だけを共振線路より容量電極に近い積層方向位置で、共振線路と共振容量の間の経路に接続しても、本発明の効果をある程度発揮させることができる。
上記構成は、入出力端子の接続形態等に関係なく、広く四段のバンドパスフィルタに適用できる。例えば、複数の誘電体層を有する積層基板内で二つの入出力端子間に四つの共振器が配置されたバンドパスフィルタであって、各共振器が共振線路とその一端に接続された共振容量により構成され、四つの共振線路が誘電体層の面内方向に並設され、外側の二つの共振線路の一端側と内側の二つの共振線路の他端側にそれぞれ共振容量が接続され、共振容量を形成する容量電極と共振線路が異なる誘電体層に配置されたバンドパスフィルタが得られる。周波数帯域が近い通信システムを使用するマルチバンド通信では、小型化の要求を満たしつつ、従来のバンドパスフィルタでは満たされないほど急峻なフィルタ特性が必要とされるが、上記四段のバンドパスフィルタの構成はかかる要求を満たすことができる。
本発明のバンドパスフィルタは単体部品でも良いが、高周波回路に組合せた高周波部品としても良い。例えば、電極パターンを形成した複数の誘電体層からなる積層体と、積層体表面に搭載された半導体素子やインダクタ等の素子とを具備する通信装置用高周波部品に、本発明のバンドパスフィルタを組合せても良い。この場合、例えば図1(a) における第1層をチップ素子搭載面側とし、第10層を外部電極端子等を備えた端子面側とし、半導体素子の直下に配置するグランド電極とバンドパスフィルタの共振容量及び共振線路と接続するグランド電極とを離間させると、半導体素子とバンドパスフィルタとのアイソレーションが向上する。
高周波部品としては、例えば、無線LAN等の無線通信の送受信を切り換えるアンテナスイッチモジュールや、アンテナスイッチモジュールと高周波増幅器モジュールを一体化した複合モジュール等が挙げられる。このような高周波部品は、例えば、少なくとも一つのアンテナ端子と、少なくとも一つの送信端子と、少なくとも一つの受信端子と、アンテナ端子と送信端子との接続及びアンテナ端子と受信端子との接続を切り換える少なくとも一つのスイッチ回路とを有する。
図11は、高周波部品の一例としての無線LAN用フロントエンドモジュールを構成する高周波回路の等価回路を示す。図11に示すフロントエンドモジュールは、アンテナと接続するアンテナ端子Antと、2.4 GHz帯の送信信号が入力される送信端子Tx_2.4Gと、5 GHz帯の送信信号が入力される送信端子Tx_5Gと、2.4 GHz帯の受信信号が出力される受信端子Rx_2.4Gと、5 GHz帯の受信信号が出力される受信端子Rx_5Gと、アンテナ端子Antを送信端子Tx_2.4G、Tx_5G又は受信端子Rx_2.4G、Rx_5Gと接続させるスイッチ回路SPDTとを有する。スイッチ回路SPDTの共通端子にはアンテナ端子Antが接続され、二つの切り換え端子には、送信側の分波回路DIP1及び受信側の分波回路DIP2がそれぞれ接続されている。送信側の分波回路DIP1と送信端子Tx_2.4Gとの間には2.4 GHz帯の送信信号を増幅する高周波増幅回路PA1が接続され、送信側の分波回路DIP1と送信端子Tx_5Gとの間には5 GHz帯の送信信号を増幅する高周波増幅回路PA2が接続されている。高周波増幅回路PA1,PA2の入力側にはバンドパスフィルタBPF1,BPF2がそれぞれ接続され、出力側にはローパスフィルタLPF1,LPF2がそれぞれ接続されている。受信側の分波回路DIP2と受信端子Rx_2.4Gとの間には2.4 GHz帯の受信信号を増幅する低雑音増幅器回路LNA1が接続され、受信側の分波回路DIP2と受信端子Rx_5Gとの間には5 GHz帯の受信信号を増幅する低雑音増幅器回路LNA2が接続されている。低雑音増幅器回路LNA1,LNA2の出力側にはバンドパスフィルタBPF3,BPF4がそれぞれ接続されている。バンドパスフィルタBPF1〜BPF4は本発明のバンドパスフィルタである。スイッチ回路SPDT、高周波増幅回路PA1,PA2、及び低雑音増幅器回路LNA1,LNA2のICチップは積層基板上に搭載される。
図1(a)、3、4、6、8及び10に示す導体パターンを有するセラミック積層基板は、例えば、1000℃以下の低温で焼結が可能なセラミック誘電体材料LTCC(Low Temperature Co-fired Ceramics)からなる厚さ10〜200μmのグリーンシートに、低抵抗率のAgやCu等の導電ペーストを印刷して所定の電極パターンを形成し、複数のグリーンシートを適宜一体的に積層し、焼結することにより製造することができる。セラミック誘電体材料としては、例えば、(a) Al、Si、Srを主成分として、Ti、Bi、Cu、Mn、Na、Kを副成分とする材料、(b) Al、Si、Srを主成分として、Ca、Pb、Na、Kを副成分とする材料、(c) Al、Mg、Si、Gdを含む材料、(d) Al、Si、Zr、Mgを含む材料等で、誘電率が5〜15程度のものを用いることができる。また誘電体材料として、樹脂や、樹脂とセラミック誘電体粉末との複合材料を用いても良い。またアルミナを主体とするセラミック誘電体材料とタングステンやモリブデン等の高温焼結可能な金属とを用いるHTCC(高温同時焼成セラミック)技術により、積層基板を作製しても良い。セラミック積層基板でバンドパスフィルタを構成する場合、所望の回路を構成するように各層に共振線路用帯状導体パターン、容量電極パターン、配線用電極パターン、グランド電極パターン、及びビア導体を形成する。
本発明のバンドパスフィルタは高周波スイッチモジュールだけではなく、他の高周波部品にも使用でき、本発明のバンドパスフィルタを用いた高周波部品は、携帯電話機、Bluetooth(登録商標)通信機器、無線LAN通信機器(802.11a/b/g/n)、WIMAX(802.16e)、IEEE802.20(I-burst)等の各種の通信装置に使用できる。例えば、本発明の高周波部品を2.4 GHz帯無線LAN(IEEE802.11b及び/又はIEEE802.11g)と5 GHz帯無線LAN(IEEE802.11a)の2つの通信システムを共用可能な高周波フロントエンドモジュール、又はIEEE802.11nの規格に対応可能な高周波フロントエンドモジュールとし、小型のマルチバンド通信装置に用いることができる。通信システムは上記周波数帯域及び規格に限らない。また2つの通信システムだけでなく、例えば分波回路を多段に用いて、より多数の通信システムにも対応可能である。マルチバンド通信装置としては、例えば携帯電話等の無線通信機器、パーソナルコンピュータ(PC)、プリンタやハードディスク、ブロードバンドルータ等のPCの周辺機器、FAX、冷蔵庫、標準テレビ(SDTV)、高品位テレビ(HDTV)、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ等の家庭用電子機器等が挙げられる。

Claims (12)

  1. 複数の誘電体層からなる積層基板内に、二つの入出力端子間に配置された三つ以上の共振器を備えたバンドパスフィルタであって、
    各共振器は共振線路とその一端に直列接続された共振容量により構成され、前記共振器の各々は両端が接地されており、
    前記共振容量を形成する容量電極と前記共振線路は、積層方向から見たときバンドパスフィルタの構成部分全体を覆う平面状のグランド電極を介して、異なる誘電体層に配置され、
    前記二つの入出力端子が接続された共振器の各々において、前記共振線路と前記共振容量との間を直列に繋ぐ経路と前記入出力端子との接続点の積層方向位置は、相対的に前記共振線路より前記共振容量に近いことを特徴とするバンドパスフィルタ。
  2. 請求項1に記載のバンドパスフィルタにおいて、前記二つの入出力端子は、前記共振容量を形成する容量電極が配置された誘電体層において前記経路に接続されていることを特徴とするバンドパスフィルタ。
  3. 請求項1又は2に記載のバンドパスフィルタにおいて、各共振線路の一端はビア導体を介して各共振容量に接続され、各共振線路の他端はビア導体を介して前記グランド電極に接続されていることを特徴とするバンドパスフィルタ。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載のバンドパスフィルタにおいて、
    前記共振線路同士を結合する結合容量を備え、
    前記共振容量を形成する容量電極及び前記結合容量を形成する容量電極がともに前記グランド電極を形成した同じ誘電体層を介して、前記共振線路とは異なる誘電体層に配置されていることを特徴とするバンドパスフィルタ。
  5. 請求項4に記載のバンドパスフィルタにおいて、前記共振容量を形成する容量電極及び前記結合容量を形成する容量電極がともに二つのグランド電極に挟まれていることを特徴とするバンドパスフィルタ。
  6. 請求項4又は5に記載のバンドパスフィルタにおいて、
    前記結合容量は、結合しようとする共振線路に接続された複数の対向容量電極により形成され、
    積層方向から見たとき一方の容量電極の対向部が他方の容量電極の対向部をマージンをもって覆っていることを特徴とするバンドパスフィルタ。
  7. 請求項1に記載のバンドパスフィルタにおいて、
    前記共振線路は隣同士が電磁結合するように並設され、
    各共振線路は複数の層にわたって形成された複数の帯状導体パターンの両端同士を接続することにより構成されており、
    隣同士の共振線路が積層方向にずれて配置されるように、それらの帯状導体パターンの一部は同じ誘電体層に配置され、残部は互いに異なる誘電体層に配置されていることを特徴とするバンドパスフィルタ。
  8. 請求項7に記載のバンドパスフィルタにおいて、積層方向にずれた三つ以上の平行な共振線路を有することを特徴とするバンドパスフィルタ。
  9. 請求項7又は8に記載のバンドパスフィルタにおいて、
    前記複数の共振線路同士を結合する結合容量を有し、
    前記結合容量は、結合しようとする共振線路に接続された複数の容量電極が対向することにより形成され、
    前記複数の容量電極は、前記グランド電極を介して、前記共振線路を形成した誘電体層と別の誘電体層に形成されていることを特徴とするバンドパスフィルタ。
  10. 請求項9に記載のバンドパスフィルタにおいて、積層方向から見たとき、前記結合容量の一方の容量電極の対向部が他方の容量電極の対向部をマージンをもって覆っていることを特徴とするバンドパスフィルタ。
  11. 通信装置用高周波回路を有する高周波部品であって、前記高周波回路は、電極パターンを形成した複数の誘電体層からなる積層体と、前記積層体の表面に搭載された素子により構成されているとともに、請求項1〜10のいずれかに記載のバンドパスフィルタを有することを特徴とする高周波部品。
  12. 請求項11に記載の高周波部品を具備することを特徴とする通信装置。
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