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JP5496825B2 - 電子写真機器用導電性ロール - Google Patents

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Description

本発明は、電子写真機器用導電性ロールに係り、特に、電子写真方式を利用した複写機、プリンター、ファクシミリ等に用いられる導電性ロールに関するものである。
電子写真方式を利用した複写機やプリンター、ファクシミリ等の画像形成装置(以下、電子写真機器という)においては、感光ドラムの周囲に、帯電ロール、現像ロール、転写ロール、トナー供給ロールなどの導電性ロールが配設されている。導電性ロールは、金属製芯金等からなる軸体の外周面上に、ゴム組成物にて形成された導電性弾性体層が設けられている。
上記導電性ロールにおいて、例えば帯電ロールは、感光ドラムと接触して相互に回転しながら感光ドラムを帯電させるために用いられ、感光ドラムと安定した接地性(ニップ幅)を保つために柔軟であること、感光ドラムを汚染しないこと、及び回転時の振れを小さくするために寸法精度が良好であること等が求められる。
また、帯電ロールは、感光ドラムに対して一定の荷重で圧接して使用される。このため、感光ドラムと圧接した状態で長時間放置されたときに、感光ドラムと圧接した部分が変形して元の形状に戻らない場合には、その変形部に対応する箇所が印刷画像にスジとして現れて、画像不具合を引き起こす。このように帯電ロールの圧接部分の変形が元に戻らない状態を一般に、ロールのヘタリといい、変形量が多い場合、ロールのヘタリ性が悪いという。電子写真機器において画像不具合の発生を防止するためには、導電性弾性体層の硬度(ロール硬度)を上げて、ロールの変形量を小さくする方法が考えられる。
しかし、ロール硬度を上げると、感光ドラムに対して安定した接地性が得られず、感光ドラムへの帯電が不均一になって、形成される画像の画質が低下してしまう。また、ロール硬度を上げると、感光ドラムやトナーに対するストレスが増大し、感光ドラム表面の削れや、トナーの劣化等、電子写真機器の耐久性を悪化させる要因にもなってしまう。そこで、電子写真機器における高画質及び高耐久性を満足するためには、導電性弾性体層を形成する材料として、低硬度で、かつ、良好なヘタリ性を持つ材料が求められている。帯電ロールに限らず、他の導電性ロールも、他の部材と圧接して使用され、トナー等へ電荷を付与するために用いられる。このため、導電性弾性体層を形成する材料としては同様に、低硬度で良好なヘタリ性を持つ材料が求められている。
また、導電性ロールには、電子写真機器における高画質を満足するために、電気抵抗が均一であることが求められ、導電性弾性体層を形成する材料としては、均一な電気抵抗が得られやすいイオン導電性ゴムが用いられている。イオン導電性ゴムとして、エピクロルヒドリンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ウレタンゴム等が用いられる。イオン導電性ゴムを低硬度化する手段として、液状NBR、液状BR等の液状ポリマーや、パラフィンオイル、ナフテンオイル等の可塑剤を、添加剤成分としてゴム組成物に含有させることが知られている(特許文献1)。
しかし、イオン導電性ゴムに液状ポリマーやオイル等の可塑剤を添加したゴム組成物を用いて導電性弾性体層を形成した場合、導電性弾性体層を低硬度にできるものの、ヘタリ性が悪くなってしまうという問題があった。また、イオン導電性ゴムに可塑剤を添加したゴム組成物を用いて導電性弾性体層を形成した場合、導電性弾性体層を低硬度にできるものの、可塑剤が経時的にロール表面にブリードし、ブリードした可塑剤が感光ドラム等の相手部材表面に付着して、汚染してしまうという問題があった。
上記以外にも、エピクロルヒドリンゴムに、添加剤成分として低分子量エピクロルヒドリン系重合体を混合して用いることが提案されている(特許文献2)。しかしながら、近年の電子写真機器の高速化に伴って低融点のトナー成分が用いられ、さらに小型化に伴って小径のロール(導電性弾性体層の厚みが薄いロール)が用いられるようになり、導電性弾性体層には更なる低硬度化による柔軟性が求められている。これに対して、上記添加剤成分を含有させたゴム組成物では、充分な性能が得られなかった。
上記の問題に対して、イオン導電性ゴムに、常温で液状のポリ(メタ)アクリレートを添加剤成分として含有させたゴム組成物を用いて導電性弾性体層を形成することにより、低硬度化による柔軟性、ヘタリ性、及び汚染性の良好な導電性ロールが得られている(特許文献3)。
ところで、近年、電子写真機器には、高画質化、高速化、小型化に加えて、省電力化が求められている。これに伴い、導電性ロールには、低硬度化による柔軟性、ヘタリ性、及び汚染性が良好であるとともに、低い印加電圧においても均一な帯電乃至電荷付与性能が得られるように、電気抵抗(体積抵抗率)をより低くすることが求められている。
しかしながら、特許文献1、2及び3に提案されているものを始めとする、従来の添加剤成分を含有させたゴム組成物を用いて形成された導電性弾性体層は、低硬度化による柔軟性、ヘタリ性、及び汚染性が良好であると共に、体積抵抗率が充分に低いものであるとは言い難く、改良の余地が残されていた。
特開2000−35032号公報 特開平10−87892号公報 特開2009−258674号公報
ここにおいて、本発明が解決しようとする課題は、低硬度化による柔軟性、ヘタリ性、及び汚染性が良好であると共に、体積抵抗率が低い導電性弾性体層を有する電子写真機器用導電性ロールを提供することにある。
本発明者は、導電性弾性体層を形成するゴム組成物について鋭意検討を重ねたところ、イオン導電性ゴムを主成分とするゴム組成物に、末端にグリシジルエーテル基を有する特定の化合物を添加剤成分として含有させることで、上記課題を解決することを見出し、本発明を完成するに至ったのである。
すなわち、本発明は、軸体の周りに導電性弾性体層を設けてなる電子写真機器用導電性ロールにおいて、該導電性弾性体層が、下記の(A)、(B)、及び(C)成分を含有するゴム組成物にて形成されており、かつ、該(A)成分100重量部に対して、該(B)成分の含有割合が1〜40重量部の範囲に設定されていることを特徴とする電子写真機器用導電性ロールを、その要旨とするものである。
(A)イオン導電性ゴム。
(B)下記の一般式(1)で表されるグリシジルエーテル化合物。
Figure 0005496825
〔式中、Rは、グリシジルエーテル基、アルコキシ基、フェノキシ基からなる群から選ばれた置換基である。Rは、二価の飽和炭化水素基である。nは、1以上の整数である。〕
(C)過酸化物架橋剤、硫黄系架橋剤、及び脱塩素系架橋剤からなる群から選ばれた少なくとも一つの架橋剤。
上記電子写真機器用導電性ロールにおいて、前記Rが、炭素数2〜6の二価の飽和炭化水素基であることが好ましい。
上記電子写真機器用導電性ロールにおいて、前記nが、3〜25の範囲であることが好ましい。
上記電子写真機器用導電性ロールにおいて、前記(B)成分のエポキシ当量が、100〜1000の範囲であることが好ましい。
上記電子写真機器用導電性ロールにおいて、前記(A)成分は、エピクロルヒドリンゴム及び/又はニトリルゴムであることが好ましい。あるいは、前記(A)成分は、エポキシ化天然ゴムであることが好ましい。
更に、上述したような本発明の電子写真機器用導電性ロールにあっては、有利には、前記導電性弾性体層が、円筒状の成形キャビティを有する金型内の中心軸上に配置された前記軸体の周りに、該金型内に前記ゴム組成物を注入することにより設けられた該ゴム組成物よりなる層を架橋して形成されているものである。
本発明に従う電子写真機器用導電性ロール(以下、導電性ロールともいう)にあっては、その導電性弾性体層が、イオン導電性ゴム(A成分)、特定のグリシジルエーテル化合物(B成分)、及び特定の架橋剤(C成分)を含有するゴム組成物にて形成されている。特定の架橋剤(C成分)は、A成分と架橋反応を起こすが、B成分とは架橋反応を起こさない。これにより、B成分は、A成分のポリマー間に架橋しない状態で入り込み、A成分の凝集を防止する。その結果、導電性弾性体層の硬度を低くすることができ、柔軟な導電性ロールが得られる。
更に本発明は、導電性弾性体層が他部材と圧接する際に、A成分のポリマー間に架橋しない状態で入り込んだB成分が、A成分のポリマー同士の凝集を防止するため、圧接による変形が凝集により固定化されて元の形状に戻らなくなるのを防止する。このため、長期間の圧縮を受けても導電性ロールのヘタリ性が良好である。
また、B成分は、オイル等のように導電性ロール表面からブリードすることはない。このため、導電性ロールと接触する相手部材表面を汚染する虞がない。この理由として、B成分は、末端にグリシジルエーテル基を有するために、極性が大きい。このため、B成分は、極性を有するA成分への溶解度が大きく、かつ、A成分中における移動度が小さい。これにより、導電性ロール表面からのブリードが有利に抑制されると考えられる。しかも、A成分100重量部に対するB成分の含有割合が40重量部以下に設定されていることから、過酷な使用環境下においても、B成分が導電性ロール表面からブリードする虞はない。
更に、B成分はエーテル結合を有するために、ゴム組成物に含有させることでイオン導電性の効果が得られる。このため、B成分を含有させることで、導電性弾性体層の体積抵抗率を低下させることができる。
また、ゴム組成物にB成分を含有させることで、ゴム組成物の粘度を低下させることができる。ゴム組成物を低粘度化することで、導電性ロールを所望のロール形状に精度良く製造することができ、ロールの振れを小さくすることができる。例えば、導電性ロールを製造する場合、金型内に軸体をセットし、金型にゴム組成物を注入して製造する。ゴム組成物を金型に注入する際に、ゴム組成物の粘度が高いと、ゴム組成物を注入する際の圧力を高める必要が生じて、軸体を曲げやすくなる。導電性ロールの軸体が曲がると、使用時(回転時)にロールの振れが大きくなり、形成される画像にムラ(画像不具合)を発生させてしまう。ゴム組成物の粘度を低下させることで、金型へのゴム組成物の注入が容易となり、金型へのゴム組成物の注入圧力を小さくすることができるので、軸体を曲げる虞が小さくなり、振れの小さい導電性ロールが得られる。本発明の振れが小さい導電性ロールを電子写真機器に用いることで、良好な画像形成に寄与することができる。
本発明の導電性ロールの一例を示し、(a)は外観斜視図であり、(b)は(a)のB−B断面図である。
本発明に係る電子写真機器用導電性ロールについて詳細に説明する。図1は、本発明の導電性ロールの一例を示し、(a)は外観斜視図であり、(b)は(a)のB−B断面図である。図1(a)、(b)に示すように、導電性ロールは、導電性を有する軸体2と、該軸体の外周に沿って形成されている、弾性を有するロール体3から構成されている。ロール体3は、同図(b)に示すように、軸体2の外周に沿って形成された導電性弾性体層31と、該導電性弾性体層31の外周に沿って形成されている表層32とから構成されている。導電性弾性体層は、イオン導電性ゴム(A成分)、特定のグリシジルエーテル化合物(B成分)、及び特定の架橋剤(C成分)を含有するゴム組成物を架橋して形成されている。
ここで、本発明において用いられるイオン導電性ゴム(A成分)としては、エピクロルヒドリンゴム、ニトリルゴム(NBR)、エポキシ化天然ゴム、クロロプレンゴム(CR)、ウレタンゴム(U)等のイオン導電性を有するゴムが挙げられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。これらのなかでも、体積抵抗率が比較的低い点で、ヒドリンゴムとニトリルゴムとが好適に用いられる。また、エポキシ化天然ゴムは、低硬度化が容易で、ヘタリ性も良好であるという天然ゴム本来の性質に加えて、エポキシ化されていることでイオン導電性が得られて体積抵抗率も比較的低い点で、好適に用いられる。
そして、本発明に従う電子写真機器用導電性ロールは、下記の一般式(1)で表されるグリシジルエーテル化合物(B成分)を含有するゴム組成物にて導電性弾性体層を形成するところに大きな特徴がある。すなわち、下記の一般式(1)で表されるグリシジルエーテル化合物を含有することにより、低硬度化による柔軟性、ヘタリ性、及び汚染性が良好であると共に、体積抵抗率が低い導電性弾性体層を、有利に得ることができる。
Figure 0005496825
〔式中、Rは、グリシジルエーテル基、アルコキシ基、フェノキシ基からなる群から選ばれた置換基である。Rは、二価の飽和炭化水素基である。nは、1以上の整数である。〕
ここで、上記特定のグリシジルエーテル化合物(B成分)の含有割合は、イオン導電性ゴム(A成分)100重量部に対して1〜40重量部の範囲に設定する必要があり、好ましくは2〜10重量部の範囲である。すなわち、上記特定のグリシジルエーテル化合物(B成分)の配合量が少なすぎると、低硬度化による柔軟性、ヘタリ性、及び体積抵抗率の低下に対する効果が得られない。逆に、特定のグリシジルエーテル化合物(B成分)の配合量が多すぎると、過酷な使用環境下においては特定のグリシジルエーテル化合物(B成分)がブリードするからである。
上記特定のグリシジルエーテル化合物(B成分)を用いることで、上記良好な性能を有する導電性弾性体層を有利に得ることができるのは、以下のような作用によるものと考えられる。すなわち、特定のグリシジルエーテル化合物(B成分)は、末端に極性の高いグリシジルエーテル基が存在することにより、極性を有するイオン導電性ゴム(A成分)のポリマー間に入り込み易く、ゴムポリマー間の凝集を有利に防止できるものと推測される。このため、低硬度化による柔軟性、及びヘタリ性が良好となる。
また、上記特定のグリシジルエーテル化合物(B成分)は、末端に極性の高いグリシジルエーテル基を有するために、極性を有するイオン導電性ゴム(A成分)への溶解度が大きく、かつ、イオン導電性ゴム(A成分)中における移動度が小さいと推測される。これにより、導電性ロール表面からのブリードを有利に抑制することができる。
そして、上記特定のグリシジルエーテル化合物(B成分)は、エーテル結合を有するために、ゴム組成物に含有させることでイオン導電性の効果が得られると推測される。このため、特定のグリシジルエーテル化合物(B成分)を含有させることで、導電性弾性体層の体積抵抗率を低下させることができる。
尚、上記特定のグリシジルエーテル化合物(B成分)は、式(1)に示されるように、一方の末端にグリシジルエーテル基を有し、他方の末端(R)は、グリシジルエーテル基、アルコキシ基、フェノキシ基のいずれかであることが必要である。好ましくは、イオン導電性ゴム(A成分)との相溶性が大きくて混ざりやすく、容易に含有させることができる点で、両末端がグリシジルエーテル基であると良い。なお、他方の末端が、上記以外の基(例えば、水酸基など)であると、イオン導電性ゴム(A成分)と混ざりにくくなって含有させることが困難となり、本発明の効果が得られない。
上記アルコキシ基としては、炭素数1〜15の飽和アルコキシ基が好ましく、分岐鎖を有していても、分岐鎖を有しない直鎖であっても良い。具体的に、分岐鎖を有するものとしては、イソプロポキシ、イソブトキシ、s−ブトキシ、t−ブトキシ等の基が、また、分岐鎖を有しない直鎖のものとしては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、オクチルオキシ、デシルオキシ、ドデシルオキシ等の基が挙げられる。これらのなかでも、イオン導電性ゴム(A成分)との相溶性が良好な点で、メトキシ基が好ましい。
また、上記フェノキシ基は、フェノキシ基を構成するベンゼン環の水素の代りに、メチル基、エチル基、t−ブチル基等のアルキル基や、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基等の置換基を有していても良い。好ましくは、イオン導電性ゴム(A成分)と容易に混合させることができる点で、上記のような置換基を有さないフェノキシ基であることが好ましい。
上記一般式(1)において、Rは二価の飽和炭化水素基である必要がある。二価の飽和炭化水素基以外、例えば、二価の不飽和炭化水素基である場合には、イオン導電性ゴム(A成分)と混ざりにくくなり、ブリード性が劣る。同様に、水酸基等を側鎖に有する場合にも、イオン導電性ゴム(A成分)と混ざりにくくなり、ブリード性が劣る。
また、上記Rは炭素数2〜6の二価の飽和炭化水素基が好ましく、特に好ましくは炭素数2〜4の二価の飽和炭化水素基である。上記炭素数が大きくなると、特定のグリシジルエーテル化合物(B成分)におけるエーテル結合の比率が相対的に減少して、体積抵抗率を低くする効果が得られにくくなる。また、上記Rの二価の飽和炭化水素基は、分岐鎖を有するものであっても、分岐鎖を有しないものであっても良い。具体的には、分岐鎖を有するものとしては、プロピレン、エチルエチレン、2−メチルブチレン等の基が、また、分岐鎖を有しないものとしては、エチレン、テトラメチレン、ヘキサメチレン等の基が挙げられる。これらのなかでも、体積抵抗率を低くすることができる点で、エチレン、テトラメチレンが好ましい。
そして、上記一般式(1)において、nは1〜4500、より好ましくは3〜25の範囲であると良い。この範囲のものは、適度な分子量を有するため、ゴム組成物において均一に分散しやすく、これにより、低硬度化による柔軟性、ヘタリ性、及び汚染性が良好であるとともに、体積抵抗率の低い導電性ロールが得られやすい。
更に、上記特定のグリシジルエーテル化合物(B成分)としては、JIS K7236に準拠して求められるエポキシ当量が、50〜100000の範囲のものが好ましく、特に好ましくは100〜1000の範囲のものであり、更に好ましくは400〜600の範囲のものである。エポキシ当量は、グリシジルエーテル基1当量当たりの添加剤成分の質量を示す値である。エポキシ当量が小さくなると、特定のグリシジルエーテル化合物(B成分)がゴム組成物から揮発しやすくなる。逆に、エポキシ当量が大きくなると、イオン導電性ゴム(A成分)と混合する際に、特定のグリシジルエーテル化合物(B成分)が混ざり難くなりやすい。
上記特定のグリシジルエーテル化合物(B成分)として、更に具体的には、以下の式(2)〜式(9)のものが挙げられる。
Figure 0005496825
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(A)成分としてエポキシ化天然ゴムを選択した場合には、低硬度化による柔軟性、ヘタリ性、及び汚染性が良好であると共に、体積抵抗率が低い導電性弾性体層を、有利に得やすくなる観点から、上述の式(2)(化3)、式(3)(化4)、及び式4(化5)から選択される1種又は2種以上のグリシジルエーテル化合物を好適に用いると良い。
つぎに、上記特定の架橋剤(C成分)としては、過酸化物架橋剤、硫黄系架橋剤、及び脱塩素系架橋剤が用いられる。上記特定の架橋剤(C成分)は、イオン導電性ゴム(A成分)とは架橋反応を起こすが、特定のグリシジルエーテル化合物(B成分)とは架橋反応を起こさない。このため、特定のグリシジルエーテル化合物(B成分)は、イオン導電性ゴム(A成分)のポリマー間に架橋しない状態で存在して、イオン導電性ゴム(A成分)の凝集を防止する効果が得られると推測される。これにより、低硬度化による柔軟性、及び良好なヘタリ性を得ることができる。
上記過酸化物架橋剤としては、特に限定されるものではなく、具体的には、パーヘキサHC、パーヘキサVやパーヘキサC(何れも商品名、日油社製)等のパーオキシケタール系架橋剤、パーブチルP、パーヘキサ25B、ペロキシモンF−40、パークミルD、パーブチルC、パーヘキシルDやパーブチルD(何れも商品名、日油社製)等のジアルキルパーオキサイド系架橋剤、パーブチルE、パーブチルIやパーブチルZ(何れも商品名、日油社製)等のパーオキシエステル系架橋剤、ケトンパーオキサイド系架橋剤、パーオキシジカーボネート系架橋剤、ジアシルパーオキサイド系架橋剤、ハイドロパーオキサイド系架橋剤等を、例示することが可能である。これらを単独で用いても2種以上を併用してもよい。
また、上記硫黄系架橋剤としても、特に限定されるものではなく、例えば、硫黄、加硫促進剤等が挙げられ、これらを単独で用いても2種以上を併用してもよい。
上記加硫促進剤としては、例えば、チアゾール系、スルフェンアミド系、チウラム系、アルデヒドアンモニア系、アルデヒドアミン系、グアニジン系、チオウレア系等の加硫促進剤が挙げられる。
上記チアゾール系加硫促進剤としては、例えば、ジベンゾチアジルジスルフィド(MBTS)、2−メルカプトベンゾチアゾール(MBT)、2−メルカプトベンゾチアゾールナトリウム塩(NaMBT)、2−メルカプトベンゾチアゾール亜鉛塩(ZnMBT)等があげられる。これらのなかでも、特に架橋反応性に優れる点で、ジベンゾチアジルジスルフィド(MBTS)、2−メルカプトベンゾチアゾール(MBT)が好適に用いられる。
上記スルフェンアミド系加硫促進剤としては、例えば、N−オキシジエチレン−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(NOBS)、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CBS)、N−t−ブチル−2−ベンゾチアゾイルスルフェンアミド(BBS)、N,N′−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアゾイルスルフェンアミド等が挙げられる。
上記チウラム系加硫促進剤としては、例えば、テトラメチルチウラムモノスルフィド(
TMTM)、テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラエチルチウラムジスルフィド(TETD)、テトラブチルチウラムジスルフィド(TBTD)、テトラキス(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィド(TOT)、テトラベンジルチウラムジスルフィド(TBzTD)等があげられる。
上記の硫黄系架橋剤にはさらに、加硫助剤として、例えば、亜鉛華(ZnO)、ステアリン酸、酸化マグネシウム等を併用してもよい。
そして、上記脱塩素系架橋剤としても、特に限定されるものではなく、例えば、チオウレア化合物、ジチオカーボネート化合物等が挙げられ、これらを単独で用いても2種以上を併用してもよい。
上記チオウレア化合物としては、例えば、エチレンチオウレア系、ジアルキルチオウレア系、トリアルキルチオウレア系等のチオウレア化合物が挙げられる。なかでも、2−メルカプトイミダゾリン、1,3−ジエチルチオウレア、1,3−ジブチルチオウレア、トリメチルチオウレア等が好ましい。
また、上記ジチオカーボネート化合物としては、例えば、キノキサリン−2,3−ジチオカーボネート、6−メチルキノキサリン−2,3−ジチオカーボネート、6−イソプロピルキノキサリン−2,3−ジチオカーボネート、5,8−ジメチルキノキサリン−2,3−ジチオカーボネート等が挙げられる。なかでも、6−メチルキノキサリン−2,3−ジチオカーボネートが好ましい。
上記特定の架橋剤(C成分)の配合量は、イオン導電性ゴム(A成分)100重量部に対して、0.1〜3重量部であるのが好ましい。
ところで、上記のイオン導電性ゴム(A成分)、特定のグリシジルエーテル化合物(B成分)、及び特定の架橋剤(C成分)を含有するゴム組成物にて導電性弾性体層を形成することで、体積抵抗率を低下させることができるが、体積抵抗率の更に低い導電性ロールが求められる場合には、導電性弾性体層を形成するゴム組成物にイオン導電剤を含有させてもよい。本発明において使用可能なイオン導電剤としては、特に限定されるものではなく、従来より公知の各種のもの、例えば、第4級アンモニウム塩、第4級ホスホニウム塩、過塩素酸塩、有機ホウ素錯体塩、イオン性液体等を挙げることができる。
上記イオン導電剤の含有量は、イオン導電性ポリマー(A成分)100重量部に対して、好ましくは、0.01〜10重量部の範囲、より好ましくは0.1〜5重量部の範囲であると良い。
また、上述したゴム組成物を架橋して得られる架橋体の体積抵抗率は、10〜10Ω・cmの範囲が好ましく、更に好ましくは、10〜10Ω・cmである。上述したゴム組成物を用いて導電性弾性体層を形成することで、低硬度化による柔軟性、ヘタリ性、及び汚染性が良好であるとともに、上記範囲の体積抵抗率を有利に得ることができる。
また、上記導電性弾性体層を形成するゴム組成物は、必要に応じて、老化防止剤、光安定剤、加工助剤、難燃剤、発泡剤、消泡剤、充填剤、顔料、分散剤、滑剤、離型剤等の各種添加剤を1種または2種以上含有していても良い。
ところで、本発明に従う導電性ロールを作製するに際しては、上述したゴム組成物を用いて、有利には射出成形法に従って、軸体(芯金)の周りにゴム組成物層が形成される。具体的には、円筒状の成形キャビティを有する金型内の中心軸上に軸体(芯金)を配置し、その状態にて、金型内へゴム組成物を射出(注入)し、軸体(芯金)の周りにゴム組成物層を形成することができる。そして、ゴム組成物層に対して架橋操作を施すことで、本発明の導電性弾性体層31を有する導電性ロールが得られる。なお、射出成形の際の各種条件や、架橋する際の温度条件等は、ゴム組成物の組成等に応じて、適宜選択される。
近年、導電性ロールを小径化するために、径の小さい軸体(芯金)が用いられたり、導電性弾性体層の厚みも小さく設定される傾向にある。上述したゴム組成物は粘度が小さいため、上記製法においてゴム組成物の射出圧力を低く設定することができる。このため、ゴム組成物を金型内へ射出するときに、軸体(芯金)を曲げてしまう虞が小さくなり、振れの小さい導電性ロールを得ることができる。
導電性弾性体層31は、複数層から構成しても良い。また、導電性弾性体層31の厚みは、特に限定されないが、好ましくは0.1〜10mm、より好ましくは1〜5mmの範囲に形成することができる。
なお、このようにして作製された導電性ロールの表面(導電性弾性体層31の外周面)には、必要に応じて、表層32が形成される。この表層32は、表面保護のために形成されるものであり、主成分となるポリマー、或いはポリマーを構成するモノマー及び/又はオリゴマー等の成分を含む表層組成物により形成される。
表層32の主成分として用いられるポリマーとしては、例えば、フッ素系樹脂、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリアミド、ポリウレタン、ポリカーボネート等の樹脂、ニトリルゴム、エピクロルヒドリンゴム等のゴム、これらをシリコーン、フッ素等で変性した変性物等が挙げられる。これらは、1種又は2種以上含まれていても良い。
また、上記表層32を形成する表層組成物には、導電剤(カーボンブラック等の電子導電剤、第4級アンモニウム塩等のイオン導電剤)、離型剤、硬化剤等の成分が、1種又は2種以上含まれていても良い。
表層32は、有機溶剤等の溶媒中に上記表層組成物を溶解乃至分散させて得られる表層コーティング液を、導電性弾性体層31の表面に塗工し、乾燥或いは加熱、紫外線照射等により硬化させることで形成することができる。
上記表層コーティング液に用いられる上記溶媒は、例えば、メチルエチルケトン(MEK)、メタノール、イソプロピルアルコール、メチルセロソルブ、ジメチルホルムアミド、トルエン、水等が挙げられる。これらは混合して使用しても良い。上記コーティング方法としては、例えば、ロールコーティング法、ディッピング法、スプレーコーティング法等が挙げられる。
上記表層32は、0.01〜500μmの厚みに形成するのが好ましい。また、表層32の体積抵抗率は、10〜1010Ω・cmにするのが好ましい。
軸体2は、鉄、アルミニウム、ステンレス等の金属製の中実体よりなる芯金、内部が中空の金属製円筒体、又はこれらにめっきが施された導電性シャフト等が用いられる。また、必要に応じて、軸体2の表面に接着剤、プライマー等を塗布しても良い。
また、導電性ロール1は、図1に示す態様のロール構成に限定されず、少なくとも軸体2と、導電性弾性体層31を有するロール体3とを備えていればよく、他の層を適宜の位置に設けることができる。
以下に、本発明の実施例、比較例を示す。
先ず、ゴム組成物を調製するための成分として、下記表1に示す添加剤、及び以下のものを準備した。
エピクロルヒドリンゴム(ECO):Hydrin T3106(商品名)、日本ゼオン社製
ニトリルゴム(NBR):DN219(商品名)、日本ゼオン社製
エポキシ化天然ゴム(ENR):エポキシプレン50(商品名)、MUANG MAI GUTHRIE PUBLIC COMPANY LIMITED 社製
過酸化物架橋剤:パーブチルP(商品名)、日油社製
加硫促進剤:ノクセラーTS(商品名、TMTM)、大内新興化学工業社製
加硫剤:硫黄
脱塩素系架橋剤:サンセラー22C(商品名、2−メルカプトイミダゾリン)、三新化学工業社製
イオン導電剤:テトラブチルアンモニウムパークロレート
下記表1に示す添加剤のなかで、A−1〜A−8は、本発明に係る特定のグリシジルエーテル化合物(B成分)であり、上記の式(2)〜式(9)に示した構造を有する。
そして、他の添加剤(B−1、B−2、C−1〜C−3、D−1、D−2)は、比較例で用いたものである。このなかで、B−1は以下の式(10)に、B−2は以下の式(11)に示す構造を有する。
Figure 0005496825
Figure 0005496825
また、末端にグリシジルエーテル基を有する、A−1〜A−8、B−1、及びB−2については、グリシジルエーテル基1当量当たりの添加剤成分の質量(エポキシ当量)を、JIS K7236に準拠して測定し、その測定結果を表1に示す。
Figure 0005496825
〔ゴム組成物の調製〕
下記表2〜6に示す配合割合に従い、各成分を配合して、ロール練りによりゴム組成物を調製した。また、各ゴム組成物について、以下の手法に従って各種物性を測定した。その測定結果を、組成物の物性、及び架橋体の物性として下記表2〜6に示す。
−ムーニー粘度―
各ゴム組成物について、JIS K6300に準拠し、L形ロータを用いて121℃の試験温度にて、ムーニー粘度(ML(1+3)121℃)を測定した。
−せん断粘度−
各ゴム組成物について、東洋精機社製のキャピラリーレオメータを用い、φ2mmダイとシリンダとを90℃に温調して、100mm/分の押出速度でゴム組成物を射出することにより、せん断粘度(Pa・s)を測定した。
―圧縮永久ひずみ―
各ゴム組成物について、160℃で30分間、プレス架橋成形を行い、直径29mm、厚さ12.5mmの試験片を得た。得られた試験片を用いて、JIS K6262に準拠し、25%圧縮した状態で、70℃、22時間後の圧縮永久ひずみ(%)を測定した。
―タイプA硬度―
各ゴム組成物について、160℃で30分間、プレス架橋成形を行い、直径29mm、厚さ12.5mmの試験片を得た。得られた試験片を用いて、JIS K6253のデュロメータ硬さ試験に準拠し、タイプAデュロメータを用いて、タイプA硬度を測定した。
−体積抵抗率−
各ゴム組成物を用いて、160℃で30分間、プレス架橋成形を行い、厚さ2mm、100mm×100mmの試験片を得た。得られた試験片を用いて、JIS K6271の二重リング電極法に準拠して、体積抵抗率(Ω・cm)を算出した。なお、表2〜6には、10Ω・cmを単位とする値で示した。
次に、表層コーティング液を調製するための成分として、以下のものを準備した。
N−メトキシメチル化ナイロン:100重量部
導電性酸化スズ:60重量部
クエン酸:1重量部
メタノール(溶剤):500重量部
〔表層コーティング液の調製〕
サンドミルを用いて上記成分をメタノール中に分散させ、表層コーティング液を調製した。
次いで、得られたゴム組成物、及び表層コーティング液を用いて、以下の手法に従って導電性ロールを作製した。
〔導電性ロールの作製〕
φ12mmの円筒状の成形キャビティを有する成形型(金型)を準備し、金型内の中心軸上にφ6mmの軸体(芯金)を配置した後、かかる金型内にゴム組成物を射出した。その後、所定の架橋操作を施すことにより、軸体上に導電性弾性体層を形成した。以下、軸体上に導電性弾性体層のみを形成したものを、ベースロールと呼ぶ。
更に、導電性弾性体層の表面に、表層コーティング液をディッピング法により塗布し、乾燥して、表層(厚み10μm)を形成することで、導電性ロールを作製した。
このようにして得られた各ベースロール及び各導電性ロールについて、以下の手法に従って各種物性を測定し、評価した。その評価結果を、ヘタリ性評価、実機耐久評価、帯電性評価、ブリード性評価、ロールの振れ、及び射出性評価として、下記表2〜6に示す。
−ヘタリ性評価−
ロールのヘタリ性評価は、変形量と画像評価の試験により行った。変形量は、片側500gの荷重を加えた状態で各導電性ロールを感光ドラムと当接させ、40℃、95%RH環境下に1ヶ月放置後、荷重を取り除いてから30分経過後の外径を測定し、当接前の外径との差を変形量として求めた。また、画像評価は、上記変形量測定後の導電性ロールを、市販のプリンタ(リコー社製:RICHO CX3000機)に帯電ロールとしてセットし、ハーフトーン画像を印刷して、得られた印刷画像を目視にて確認した。なお、評価基準は、以下の通りである。
○:得られた印刷画像の上記当接部に対応する位置に、スジが確認されない。
×:得られた印刷画像の上記当接部に対応する位置に、スジが確認される。
−実機耐久評価−
実機耐久評価は、トナー付着性と感光ドラム汚染性の試験により行った。トナー付着性の試験は、各導電性ロールを市販のプリンタ(リコー社製:RICHO CX3000機)に帯電ロールとしてセットし、文字チャートを一万枚印刷して、印刷後の帯電ロール表面を目視にて観察した。評価基準は、以下の通りである。
○:帯電ロールの表面に、トナーの付着が確認されない。
×:帯電ロールの表面に、トナーの付着が確認される。
また、感光ドラム汚染性の試験は、感光ドラムに各ベースロールを当接した状態にて、40℃、95%RH環境下で1ヶ月放置後、その感光ドラムを用いて画像評価を行った。画像評価は、市販のプリンタ(リコー社製:RICHO CX3000機)に上記感光ドラムをセットし、ハーフトーン画像を印刷して、得られた印刷画像を目視にて確認した。
評価基準は、以下の通りである。
○:得られた印刷画像の上記当接部に対応する位置に、スジが確認されない。
×:得られた印刷画像の上記当接部に対応する位置に、スジが確認される。
―帯電性評価―
各導電性ロールを、市販のプリンタ(リコー社製:RICHO CX3000機)に帯電ロールとしてセットし、感光ドラムと帯電ロールとを接触させた状態で感光ドラム、帯電ロールともに60rpmで回転させながら、帯電ロールに−1200V印加した。このとき、帯電ロールとの当接位置から感光ドラムの回転方向に90度回った位置で、感光ドラム表面から2mm離した位置に表面電位計(トレックシャパン社製、MODEL−370)のプローブを配置し、暗所にて感光ドラム中央部の表面電位(帯電量)を測定した。表面電位(帯電量)の値が小さい(すなわち、絶対値が大きい)ほど、帯電性が良好であることを示す。なお、評価基準は、以下の通りである。
◎:帯電量が、−550V未満である。
○:帯電量が、−550V以上、−450V未満である。
×:帯電量が、−450V以上である。
―ブリード性評価―
各ベースロールを、40℃、95%RHの環境下で2週間放置した。放置後、ベースロール表面を目視で確認した。評価基準は、以下の通りである。
◎:ロール表面に、全くブリードが確認されない。
○:ロール表面に、わずかにブリードしている状態が確認される。
×:ロール表面に、非常に多くブリードしている状態が確認される。
―ロールの振れ―
各ベースロールの軸体両端を支点として、ベースロールを周方向に回転させ、基準ゲージからロール表面(導電性弾性体層表面)までの距離をレーザーで計測し、その距離の最大値と最小値との差をロールの振れ(μm)とした。
―射出性評価―
金型へのゴム組成物の射出時間を測定し、以下の評価基準にて判定を行った。
◎:射出時間が、3秒以下である。
○:射出時間が、3秒超、5秒以下である。
△:射出時間が、5秒超、7秒以下である。
×:射出時間が、7秒超、9秒以下である。
××:射出時間が、9秒超である。
Figure 0005496825
Figure 0005496825
Figure 0005496825
Figure 0005496825
Figure 0005496825
イオン導電性ゴム(A成分)としてエピクロルヒドリンゴムを用いた実施例1〜13を表2に、イオン導電性ゴム(A成分)としてニトリルゴムを用いた実施例14〜25を表3に、イオン導電性ゴム(A成分)としてエポキシ化天然ゴムを用いた実施例26〜30を表6にまとめて示す。
また、イオン導電性ゴムとしてエピクロルヒドリンゴムを用いた比較例1〜11を表4に、イオン導電性ゴムとしてニトリルゴムを用いた比較例12〜22を表5にまとめて示す。
実施例1〜25のうち、実施例1〜11及び実施例14〜24は、過酸化物架橋剤を用いたものであり、実施例12及び実施例25は、硫黄系架橋剤を用いたものであり、さらに、実施例13は、脱塩素系架橋剤を用いたものである。また、実施例1、12、14、及び25は、イオン導電剤を含有しないものであり、他の実施例は、イオン導電剤を1重量部含有させたものである。
実施例2〜4及び実施例15〜17は、表1のA−1〜A−3に示す、両末端にグリシジルエーテル基を有し、分子量が比較的小さい(エポキシ当量が比較的小さい)グリシジルエーテル化合物を用いたものである。また、実施例5〜9及び実施例18〜22は、表1のA−4〜A−6に示す、両末端にグリシジルエーテル基を有し、分子量が比較的大きい(エポキシ当量が比較的大きい)グリシジルエーテル化合物を用いたものである。このなかで、実施例5〜7及び実施例18〜20は、A−4の含有量を変えたものを示す。さらに、実施例10、11、23、及び24は、表1のA−7及びA−8に示す、片末端にグリシジルエーテル基を有し、分子量が比較的大きい(エポキシ当量が比較的大きい)グリシジルエーテル化合物を用いたものである。また、実施例26は、表1のA−1、実施例27は、表1のA−3、実施例28〜30は、表1のA−2に示すグリシジルエーテル化合物を用いたものである。
表2、表3、表6からも明らかなように、表1のA−1〜A−8を用いた実施例1〜30にあっては、低硬度化による柔軟性、ヘタリ性、及び汚染性が良好であると共に、体積抵抗率を低くすることが可能であり、帯電性も良好であることが確認された。
なかでも、表1のA−4、A−5、及びA−6を用いた、実施例5〜9及び実施例18〜22については、ヘタリ性に優れていた。
これに対して、比較例3及び14は、特定のグリシジルエーテル化合物(B成分)の含有量が少なすぎるため、ゴム組成物の粘度が充分に小さくならず、ロールの振れ、及び射出性が劣っていた。また、比較例4及び15は、特定のグリシジルエーテル化合物(B成分)の含有量が多すぎるため、ブリード性が劣っていた。
比較例5及び16は、表1のB−1に示す、不飽和炭化水素基の連鎖を有するグリシジルエーテル化合物を用いたものであり、イオン導電性ゴム(A成分)と混ざりにくく、ブリード性も劣っていた。また、比較例6及び17は、表1のB−2に示す、水酸基及びグリシジルエーテル基を側鎖に有するグリシジルエーテル化合物を用いたものであり、同様にイオン導電性ゴム(A成分)と混ざりにくく、ブリード性も劣っていた。
さらに、比較例7、8、18、及び19の液状ゴムを添加剤成分として含有させたものは、タイプA硬度は低くなったものの、圧縮永久ひずみが大きくなり、ヘタリ性が劣っていた。また、比較例10、11、21、及び22のオイルを添加剤として含有させたものは、ヘタリ性、ブリード性、及び感光ドラム汚染性が劣っていた。
比較例9及び20は、常温で液状のポリアクリレートを添加剤成分として含有させたものであり、タイプA硬度が低くなり、ヘタリ性、及び汚染性も良好であったが、添加剤成分を含有しない比較例2及び13に比べて、体積抵抗率が上昇して帯電性も低下(帯電量の値が上昇)した。
実施例1〜30のヘタリ性評価、実機耐久評価、及び帯電性評価は、本発明の導電性ロールを帯電ロールとして用いたときの評価結果を示している。同様に、本発明の導電性ロールを現像ロール、転写ロール、及びトナー供給ロールとして用いた場合にも、ヘタリ性評価、実機耐久評価、及び電荷付与性能について良好な結果が得られた。
1 導電性ロール
2 軸体
3 ロール体
31 導電性弾性体層
32 表層

Claims (5)

  1. 軸体の周りに導電性弾性体層を設けてなる電子写真機器用導電性ロールにおいて、
    該導電性弾性体層が、下記の(A)、(B)、及び(C)成分を含有するゴム組成物にて形成されており、かつ、該(A)成分100重量部に対して、該(B)成分の含有割合が1〜40重量部の範囲に設定されていることを特徴とする電子写真機器用導電性ロール。
    (A)エピクロルヒドリンゴム及び/又はニトリルゴム又はエポキシ化天然ゴムであるイオン導電性ゴム。
    (B)下記の一般式(1)で表されるグリシジルエーテル化合物。
    Figure 0005496825
    〔式中、R1は、グリシジルエーテル基、アルコキシ基、フェノキシ基からなる群から選ばれた置換基である。
    R2は、二価の飽和炭化水素基である。
    nは、1以上の整数である。〕
    (C)過酸化物架橋剤、硫黄系架橋剤、及び脱塩素系架橋剤からなる群から選ばれた少なくとも一つの架橋剤。
  2. 前記一般式(1)において、前記R2が、炭素数2〜6の二価の飽和炭化水素基である請求項1に記載の電子写真機器用導電性ロール。
  3. 前記一般式(1)において、前記nが、3〜25の範囲である請求項1又は2に記載の電子写真機器用導電性ロール。
  4. 前記(B)成分のエポキシ当量が、100〜1000の範囲である請求項1から3の何れか1項に記載の電子写真機器用導電性ロール。
  5. 前記導電性弾性体層が、円筒状の成形キャビティを有する金型内の中心軸上に配置された前記軸体の周りに、該金型内に前記ゴム組成物を注入することにより設けられた該ゴム組成物よりなる層を架橋して形成されている請求項1からの何れか1項に記載の電子写真機器用導電性ロール。
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