図1は、本発明の実施例1に係る電子防振システムを具備するカメラ(撮影装置)の構成を示した図である。撮影レンズ11からの入射光束(撮影光)は、絞り13aで光量制限されたのちに、シャッタ12aを通り、MOSやCCDなどの半導体撮像素子からなる撮像部19に結像される。
撮影レンズ11は複数の光学レンズ群により構成され、これらのレンズ群のうち一部又は全部がAF(オートフォーカス)駆動モータ14aからの駆動力を受けて光軸10上を移動し、所定の合焦位置に停止することで焦点調節を行う。AF駆動モータ14aは焦点駆動部14bからの駆動信号を受けることで駆動する。また、撮影レンズ11のうち一部の光学レンズ群は、ズーム駆動モータ15aからの駆動力を受けて光軸10上を移動し、所定のズーム位置に停止することで撮影画角を変更する。ズーム駆動モータ15aは、ズーム駆動部15bからの駆動信号を受けることで駆動する。
絞り13aは複数の絞り羽根を有しており、これらの絞り羽根は、絞り駆動部13bからの駆動力を受けることで作動して、光通過口となる開口面積(絞り口径)を変化させる。シャッタ12aは複数のシャッタ羽根を有しており、これらのシャッタ羽根はシャッタ駆動部12bからの駆動力を受けることで、光通過口となる開口部を開閉する。これにより、撮像部19に入射する光束を制御する。
ストロボ16aは撮影時の条件(被写体輝度等)などに応じて閃光駆動部16bからの駆動信号を受けて駆動(発光)する。スピーカー17aは撮影動作を撮影者に知らせるためのもので、発音駆動部17bからの駆動信号を受けて駆動(発音)する。
上記の焦点駆動部14b、ズーム駆動部15b、絞り駆動部13b、シャッタ駆動部12b、閃光駆動部16b、発音駆動部17bの各駆動は、撮影制御部18により制御されている。
撮影制御部18には、レリーズ操作部12c、絞り操作部13c、ズーム操作部15c、閃光操作部16c及び後述する防振操作部120からの操作信号が入力されるようになっている。そして、カメラの撮影状態に合わせて上記操作信号を各々焦点駆動部14b、ズーム駆動部15b、絞り駆動部13b、シャッタ駆動部12b、閃光駆動部16bに与えて撮影条件を設定し、撮影を行うようにしている。
なお、絞り13aの開口径やストロボ16aの発光は、通常は撮影時にカメラ側で自動的に設定するために、絞り操作部13cおよび閃光駆動部16bは不要であるが、撮影者が任意に撮影条件を設定する時のために設けられている。
撮影制御部18は、後述する信号処理部111に取り込まれた画像信号に基づいて被写体輝度の測定(測光)を行い、この測光結果に基づいて絞り13aの絞り口径とシャッタ12aの閉じタイミング(露光時間)を定めている。また、撮影制御部18は、焦点駆動部14bを駆動させながら、信号処理部111からの出力に基づいて撮影レンズ11の合焦位置を求めている。
撮影制御部18内には撮影条件検出部18aが含まれているが、説明の都合上図1では独立して示している。この撮影条件検出部18aは、撮影時の以下の条件
・露光時間
・撮影焦点距離
・撮影被写体距離
・予め設定される連写撮影枚数
・電源状態
を検出している。この撮影条件検出部18aの出力は、後述する重み付け設定部114に入力されている。
撮像部19から出力される映像信号は、A/D変換部110によりデジタル信号に変換されて信号処理部111に入力される。信号処理部111は、入力された信号に対して輝度信号や色信号を形成するなどの信号処理を行ってカラー映像信号を形成する。そして、信号処理部111で信号処理された映像信号は、信号切換部112を介して第2画像補正部118bに入力され、入力された信号のガンマ補正や圧縮処理が行われる。そして、この第2画像補正部118bの信号は、表示部119と記録部121に入力され、撮影された画像が表示部119に表示されるとともに記録部121に記録される。なお、第1画像補正部118aについては後述する。
ここで、撮影者によりレリーズ操作部12cのレリーズボタンの半押し操作(スイッチsw1のオン)がなされると、撮影準備動作(焦点調節動作や測光動作等)が開始される。そして、測光動作により得られた測光値に基づいてシャッタ12aの閉じタイミング(露光時間)と絞り13aの絞り口径が設定される。絞り13aの口径はこの時点で適正口径に変更される。
次に、撮影者によりレリーズ操作部12cのレリーズボタンの押し切り操作(スイッチsw2のオン)がなされると画像記録のための露光動作が開始される。詳しくは、レリーズ操作部12cのレリーズボタンの押し切り操作(スイッチsw2のオン)がなされると、撮像部19に蓄積中の画像データ(電荷)は一旦すべてリセットされ、設定された画像サイズで再び電荷蓄積が開始される。そして、上記レリーズボタン半押し操作(スイッチsw1のオン)時に測光して決められた露光時間が経過した時点でシャッタ12aが閉じられ、この閉じられている間に電荷の転送が行われ、電荷の転送終了後にシャッタ12aが開けられる。
ここで、防振操作部120がオンの状態の時には、上記露光時間を制限する事で、手振れによる画質劣化を防いでいる。但し、露光時間を短くすると露出がアンダーになってしまい、ノイズの影響を受け易くなるので、実際には短い露光時間で連続撮影を行うことで複数枚の画像を取得し、それらを合成することで露出の改善を図っている。
また、複数枚の各撮影画像間における手振れにより夫々の画像は若干の構図変化が生じているので、画像の構図合わせを行ってから合成するようにしている。以下にこの機能の詳細説明を行う。
本実施例1において、連続撮影に応じて撮像部19から撮影毎に複数出力される画像信号は、A/D変換部110でデジタル信号に変換され、信号処理部111にて信号処理が施される。
一方、防振操作部120を操作して防振システムがオンにされたことが撮影制御部18に伝えられると、信号処理部111からの画像データは信号切換部112を介して画像記憶部113に入力される。すなわち、第2画像補正部118bへの入力は絶たれる。画像記憶部113は、撮影された複数の画像を記憶しておく。
ここで、画像記憶部113は得られた画像のすべてを記憶しておくのではなく、明らかに不良な画像は信号処理部111と撮影制御部18で判定され、画像記憶部113にも第2画像補正部118bにも伝わらないように信号切換部112にて切り換え制御される。
重み付け設定部114は、ずれ検出部115のずれ検出で使用される特徴点の重み付けを設定する。この特徴点とは、各画像の中で、輝点やエッジ部など周囲に対してコントラストの高い点などであり、画像の中で判別し易く、他の画像における対応する特徴点との関係で画像間のずれを検出しやすい画像の小さな領域を示す。重み付け設定部114は本発明の最も重要な構成要素であり、詳細については後述する。
ずれ検出部115は、画像記憶部113に記憶された画像内における重み付け設定部114にて設定された重み付けの特徴点を抽出し、この特徴点の撮影画面内における位置座標を割り出す。
例えば、図2に示すように、フレーム122aにおいて、人物122fが建物123aを背景にして立っている写真を撮影する場合を考える。複数枚撮影する場合には、フレーム122bのように手振れによりフレーム122aに対して構図がずれた画像が撮影されることがある。重み付け設定部114は、画面の周辺に位置する建物123aのうち、輝度の高い点である窓124aのエッジ125aをエッジ検出により特徴点として取り出す。そして、ずれ検出部115はこの特徴点125aと、フレーム122bにおける特徴点125bとを比較し、この差分を補正(座標変換)する。図2では、フレーム122bの特徴点125bを矢印126のようにフレーム122aの特徴点125aに重ねるようにして、フレーム122bを座標変換する。
ここで、特徴点として撮影画面の周辺を選択する理由を以下に説明する。
多くの撮影の場合では、画面中央近傍に主被写体が位置し、且つ主被写体は人物である場合が多い。このようなとき、主被写体を特徴点として選ぶと被写体振れによる不都合が出てくる。すなわち、複数枚の撮影を行っている際、撮影者の手振ればかりでなく、被写体振れも重畳してくるので、被写体振れに基づいて画像の座標変換をしてしまう。この場合、主被写体の構図が適正になるように座標変換するので好ましい画像ができるように思われるが、一般的には人物の動きは複雑であり、特徴点を選ぶ場所によってずれ検出精度が大きく左右される。
例えば、主被写体(人物)の眼を特徴点として選んだ場合は瞬きの影響が出るし、手の先を特徴点として選択した場合には手は動きやすいので実際の被写体全体の振れとは異なってしまう。この様に人物の1点を特徴点として画像の座標変換を行っても、その人物のすべてが適正に座標変換される訳ではなく、複数の画像を座標変換して合成する場合においても、画像毎に座標の位置がばらつき、好ましい画像は得られない。
そこで、上記のように背景のような静止被写体を特徴点として選択して、画像の座標変換を行った方が好ましい画像が得られる。尚、画像のずれを求める方法は上記の様に周辺のエッジなどの特徴点を抽出してずれとする方法ばかりではなく、画面全体における各領域の画像間の動きベクトルを検出し、それらの中で最も頻度の高い動きベクトルをずれとする方法でも良い。
座標変換部116では、ずれ検出部115で求められた各画像間のずれ量に基づいて複数画像の位置合わせを行う。
ここで、合成前に座標変換部116は以下の動作も行っている。先ず、各画像の座標を変換して位置合わせを行う時に基準となる画像を選ぶ。選ばれた基準画像に対して大幅にずれている画像は以降の合成に用いないように削除する。座標変換された各画像は、画像合成部117に出力されて各画像が1枚の画像に合成される。デジタル画像の場合には、1枚の露出不足の写真でもゲインアップすることで露出の補正が可能であるが、ゲインを高くするとノイズも多くなり、見苦しい画像になってしまう。
しかし、本実施例1のように多くの画像を合成して画像全体のゲインをアップさせる場合には、各画像のノイズが平均化されるためにS/N比の大きい画像を得ることができ、結果的にノイズを抑えて露出を適正化することができる。別の考え方をすれば、例えばノイズを許容して撮像部19を高感度にして複数枚撮影し、これらを加算平均することで画像に含まれるランダムノイズを減少させているとも云える。
合成された画像データは、第1画像補正部118aに入力されてガンマ補正や圧縮処理が行われ、更に合成時の各画像の端部欠損部が切り出され、画像サイズが小さくなった分が拡散補完される。図3における互いが重ならない領域129がカットされ、2枚の画像が重なった領域のみについて切り出されて拡散補完処理が行われる。その後、記録部121に記録される。
一般にデジタルカメラの場合では、撮影後に撮影画像をカメラの背面液晶モニター(表示部119)に表示する。しかし、本実施例1のように画像を合成して露出補完を図る場合には、合成画像を作成してから表示するまでに時間がかかってしまう。
そこで、本実施例1においては、カメラの表示部119には合成前の画像を表示するようにしている。これはカメラの表示部119は小さい為に露出不足の画像のゲインを上げて表示しても鑑賞時に気にならない為である。
図1の記録部121から表示部119に入力される信号は、記録部121に記録された画像を再生する場合に必要とされる。上述したように複数枚の画像を撮影し、それらを合成する場合には、撮影直後では特定した駒を表示する訳である。しかし、表示禁止部119aは合成処理が完了した後において画像を再生する時には上記特定駒を表示部119で表示するのではなく、合成処理が完了した画像を表示する事で実際の画像を確認できるようにしている。
尚、画像の再生モードの場合には一般的には記録部121内のすべての画像データを見ることが出来るが、複数枚を撮影してこれらを合成する場合においては表示禁止部119aにより合成前の画像は再生時には見えないようにしている。これは、再生時に上記複数枚の合成用画像を表示するようにすると、撮影者の認識していない画像が多く表示されることになり、画像の閲覧に時間がかかるばかりではなく、混乱をきたす為である。
以上の構成において、上述した重み付け設定部114について、その詳細を説明する。
重み付け設定部114の役割は、撮影倍率に基づいて各画像における特徴点の重み付けを設定する事である。そして、撮影倍率が低い時は、画像周辺領域における特徴点の重み付けを大きくし、撮影倍率が高い時は、画像中央領域における特徴点の重み付けを大きくしている。これは、撮影倍率が低い時は、前述した様に背景の振れを補正した方が好ましい画像になり、撮影倍率が高い時は、主被写体の振れを補正した方が好ましい画像になることが分かって来た為である。
ここで、撮影倍率とは、撮影条件検出部18aが検出した撮影焦点距離と撮影被写体距離により求まる倍率である。例えば撮影焦点距離が長く(テレ)、撮影被写体距離が近い時は撮影倍率が高く、撮影焦点距離が短く(ワイド)、撮影被写体距離が遠い時は撮影倍率が低い。撮影焦点距離が短くても撮影被写体距離が近ければ撮影倍率は大きくなり、同様に撮影被写体距離が遠くても撮影焦点距離が長ければ撮影倍率は大きくなる事もある。
尚、ここで云う撮影倍率とは、撮影される被写体の大きさと同じ大きさで撮像部19の撮像面に撮像される時を等倍(撮影倍率1)、撮影される被写体の大きさに対して、その0.25倍の大きさで撮像面に撮像される場合を撮影倍率0.25倍という。
撮影倍率が低い時は前述した様に角度振れが殆どを占め、シフト振れの影響はないので、画面中央に位置することの多い主被写体も、周辺に位置することの多い背景も、同じ量だけ振れている。その為、複数枚の画像を位置合わせして合成する時には、図2を用いて説明したように、被写体振れの虞がある主被写体領域(画像中央領域)よりも背景領域(画像周辺領域)で画像間の位置ずれを検出し、各画像の位置合わせ、合成を行えばよい。
しかしながら、撮影倍率が大きくなるにつれてシフト振れの影響が大きくなるので、主被写体(画像中央領域)と背景(画像周辺領域)で撮影距離が異なる場合では、各々の振れ量が異なってくる。例えば植物を近接撮影する場合を考える。
この時、図4のフレーム41において、主被写体である画像中央の花42とその背景である画像周辺の葉43各々の特徴点(例えば花や葉のエッジ)の動きベクトルを比較する。すると、撮影被写体距離の近い花は動きベクトル42aは大きく、撮影被写体距離の遠い葉の動きベクトル43aは小さくなる。このような場合、撮影者が最も撮影したい主被写体領域(画像中央領域)における振れを十分補正してゆくのが望ましい。
そこで、重み付け設定部114は、撮影倍率が大きくなると画像周辺のずれ検出用の特徴点のずれ検出値に対して、画像中央領域のずれ検出用の特徴点のずれ検出値の重み付けを大きくする。例えば、撮影倍率が極めて大きいときには、画像周辺のずれ検出用の特徴点のずれ検出値の重み付けをゼロにし、画像中央領域における特徴点のずれ検出結果のみで各画像の位置合わせ、合成を行う。
但し、撮影倍率が大きい場合の全てに関して上記処理を行えばよい訳ではない。それは上記処理を行うと背景である葉43に関しては逆に過補正で振れが大きくなる可能性がある。これは、実際の振れは動きベクトル43aで示すように小さいのであるが、補正は動きベクトル42aで行われる為である。
被写体倍率がきわめて大きく、シフト振れによる主被写体の振れがとても大きい時には、主被写体の振れ補正を優先し、背景の振れに関しては許容することができる。それはこのような撮影条件では画像殆どを主被写体が占め、背景領域が極めて少ないので、その振れの過補正は目立たない為である。しかしながら、図4のような撮影倍率(通常撮影よりは撮影倍率が大きいが最大の撮影倍率では無い条件)においては、画像周辺領域も所定の振れ補正を行い、画像全体(主被写体である画像中央領域と背景である画像周辺領域)で良好な像にしたい。
そこで、このような条件の場合には、画像周辺のずれ検出用の特徴点のずれ検出値の重み付けをゼロにはせず、画像中央領域における特徴点のずれ検出結果と画像周辺のずれ検出用の特徴点のずれ検出結果で各画像の位置合わせ、合成を行う。
具体的には、画像周辺のずれ検出用の特徴点のずれ検出値の重み付けを0.4、画像中央領域における特徴点のずれ検出値の重み付けを0.6とし、各々の特徴点のずれ検出結果に重み付けを掛けた後の合成ベクトルで各画像の位置合わせ、合成を行う。この場合、画像中央領域の主被写体の振れ補正は不十分(0.6倍になるので補正不足)であるが、画像周辺領域である背景に関しては振れの過補正は軽減される。
撮影倍率が小さいほどシフト振れの影響は減り、撮影距離が異なる事による主被写体の振れ量と背景の振れ量の差はなくなってくるので、重み付け設定部114により定める各領域の特徴点の重み付けは、図5(a)に示すようになる。
図5(a)では、横軸の撮影倍率が大きくなるほど画像中央領域における特徴点の重み付けを大きくし(実線)、反対に画像周辺領域における特徴点の重み付けを小さくし(破線)、最終的に等倍撮影では画像周辺領域における特徴点の重み付けをゼロにしている。なお、51は或る撮影倍率を示すもので、後述する。
重み付けの方法は図5(a)に限られず、図5(b)に示すように、撮影倍率が所定より小さい(例えば0.25倍)ものは画像周辺領域の特徴点重み付けを1にして、画像中央領域の特徴点重み付けをゼロにしても良い。また、図5(c)のように、所定の撮影倍率(例えば0.25倍)を境にして撮影倍率がそれより大きい時は、画像周辺領域の重み付けを1からゼロにし、画像中央領域の重み付けをゼロから1にしても良い。
図6は、本発明の実施例1に係る主要部分の撮影動作をまとめたフローチャートであり、このフローはカメラの電源がオンされたときにスタートする。
ステップ#1001では、撮影者によりレリーズボタンの半押し操作、つまりスイッチsw1がオンされ、撮影準備部動作が行われるまでこのステップで待機し、その後、スイッチsw1がオンされるとステップ#1002へ進む。
次のステップ#1002では、撮像部19により被写体を撮像し、信号処理部111でその画像のコントラストを検出しながら撮影制御部18によりAFモータ14aを駆動してレンズ11の繰り出しが開始される。そして、最もコントラストが高かった位置を検出し、その位置にレンズ11を繰り出すことでピント合わせを行う。尚、上記はTV−AF(いわゆる山登り)方式を例にした場合であるが、位相差AF方式であっても良い。この場合には、始めにAFセンサ(不図示)で焦点状態を検出し、その結果からレンズの繰出し量を演算してレンズを繰り出し、再度焦点状態を検出する。そして、ピントが合っている場合にはレンズ駆動を停止し、ピントが合っていない場合には再度レンズ駆動を繰り返す事でピント合わせを行う。また、このステップ#1002では、同時に撮像部19や図1では不図示の測光センサにより出力より被写体の明るさを求める。
次のステップ#1003では、撮影者により防振操作部120がオンされているか否かを判定し、オンされている場合はステップ#1004へ進み、オフのままである場合はステップ#1019へ進む。
先ず始めに、防振操作部120がオンされており、ステップ#1004へと進んだ場合について説明する。ステップ#1004へ進むと、上記ステップ#1002で求めた被写体の明るさ等の撮影条件から、撮影する枚数と各々の露光時間を求める。ここで云う撮影条件とは
・被写体の明るさ
・撮影焦点距離
・撮影被写体距離
・撮影光学系の明るさ(絞りの値)
・撮像部の感度
の5点である。
このステップ#1004では、さらに撮影焦点距離と撮影被写体距離より撮影倍率を求める。例えば撮像部の感度がISO200に設定されていたとする。このとき、被写体の明るさを測光し、それを適正に露光するためには、絞り13aは全開(例えばf2.8)、シャッタ12aは露光時間1/8が必要である計算になったとする。この際、撮影焦点距離が35mmフィルム換算で30mmであるときは、露光時間1/8の撮影では手振れの虞があるので手振れの虞がない露光時間1/32に設定し、4回撮影を行うように設定する。ここで、撮影倍率が所定より大きい(例えば撮影倍率0.25倍以上)の場合には、シフト振れの影響で振れが大きくなるので、上記露光時間を更に短くする。例えば、撮影倍率0.25倍では露光時間を1/64にし、撮影倍率0.5倍では露光時間を1/128にし、撮影倍率等倍では露光時間を1/256にする。そして、それに応じて撮影枚数を設定する(例えば、撮影倍率0.25倍では8枚、撮影倍率0.5倍では16枚、撮影倍率等倍では32枚)。
以上のように複数枚撮影を行う時の露光時間を撮影条件に合わせて決定し、更に何枚撮影するかも撮影条件に合わせて設定する。また、同一被写体を複数枚に分けて撮影するとしても、各撮影の露光条件はなるべく適正露光に近い方が撮像部19に正確な情報が撮像できる。そのために暗い被写体の場合、絞り13aが絞り込んでいる場合、あるいは、撮像部19の感度が低く設定されている場合には、複数枚撮影といえども各撮影の露光時間はなるべく長くして有効な露光条件にする。
但し、あまり露光時間を長くすると手振れによる劣化の影響が像面に表れるために、上述したように撮影焦点距離が35mmフィルム換算で30mmであるときは手振れの虞のない、約焦点距離分の一である露光時間1/32に設定している。そして、その露光時間では足りない分を撮影枚数で補完している。焦点距離が長い場合には、更に露光時間を短くしないと手振れによる像劣化が生ずるので、更に露光時間を短くして、その分撮影枚数を増やして露出補完を行う。
このように複数枚撮影における露光時間は撮影被写体が暗いほど、又撮影レンズが暗いほど長くなり、撮像部19の感度が低いほど長くなり、レンズの焦点距離が長いほど短くなり、撮影倍率が大きいほど短くなる。そして、複数枚撮影における撮影枚数は撮影被写体が暗いほど、又撮影レンズが暗いほど多くなり、撮像部19の感度が低いほど多くなり、レンズの焦点距離が長いほど多くなり、撮影倍率が大きいほど多くなる。
以上の計算が終了した後で、カメラのファインダや背面液晶モニターに防振モード(複数回撮影モード)が設定されたことを表示すると同時に、求めた撮影枚数を表示し、撮影者に知らせる。
次のステップ#1005では、重み付け設定部114により、撮影倍率に応じて画像中央領域の特徴点のずれ検出の重み付けと画像周辺領域の特徴点の重み付けを設定する。この重み付けは、撮影倍率が大きいほど画像中央領域の特徴点の重み付けを大きくしており、その重み付けの撮影倍率による変化は、図5(a)ないし図5(c)で説明した通りである。
次のステップ#1006では、レリーズボタンを押し切り操作がなされてスイッチsw2がオンしたか否かを判定し、オンしていなければステップ#1001に戻り、以下同様の動作を繰り返す。その後、スイッチsw2がオンして撮影指示があったことを判定するとステップ#1007へ進む。
ステップ#1007へ進むと、1枚目の撮影を開始する。つまり、先ず撮像部19の電荷をリセットし、再蓄積を開始させる(メカ(機械的)シャッタの場合は、蓄積開始後にシャッタを開口する)。次に、上記ステップ#1004で求められた露光時間待機し、その後電荷の転送を行う(メカシャッタの場合には、電荷転送に先立ってシャッタを閉じる)。そして、得られた画像を一旦画像記憶部113に記憶しておく。又、この時同時に撮影開始の発音を、発音駆動部17bを介してスピーカー17aで行う。この音は例えばピッ!と云う電子音でも良いし、フィルムカメラなどにおけるシャッタの開き音、ミラーアップの音でも良い。
尚、ステップ#1007から後述するステップ#1014までは短い露光時間の撮影を複数回繰り返し、それを合成してみかけの露出を適正にする合成撮影モードの動作である。
次のステップ#1008では、すべての撮影が完了したか否かを判定し、完了していなければステップ#1007、#1008を循環して待機する。そして、撮影が完了するとステップ#1009へ進む。
ステップ#1009では、撮影完了の発音を、発音駆動部17bを介してスピーカー17aで発音させる。この音は、上記撮影開始の発音と同様、例えばピッピッ!と云う電子音でも良いし、フィルムカメラなどにおけるシャッタの閉じ音、ミラーダウン音やフィルム巻き上げ音でも良い。このように複数枚撮影する場合においても、その動作を表す発音は1セット(最初の撮影の露光開始から最後の撮影の露光完了までに1回)なので、撮影者に複数枚撮影の違和感を与える事はない。特に電子シャッタなどを用いて連写を行った場合においては、メカシャッタ動作の音や振動がまったく生じないので、撮影者は連写を行ったことすら認識しないで円滑な撮影を行える。
ステップ#1010では、ずれ検出部115により、重み付け設定部114にて設定された、領域ごとの各画像間のずれ量を求める。このずれ量は画像中央領域および画像周辺領域ごとに各々設けてある特徴点の平均を算出し、画像中央領域の特徴点座標の平均と画像周辺領域の特徴点座標の平均各々に対して上記ステップ#1005で求めた重み付けを行い、最終的な座標としている。
次のステップ#1011では、座標変換部116により各画像の座標変換を行う。続くステップ#1012では、すべての画像が座標変換完了したか否かを判定し、完了していなければステップ#1010に戻り、完了するまでステップ#1010,#1011を循環して待機し、すべての画像の座標変換が完了するとステップ#1013へ進む。
次のステップ#1013では、画像の合成を行う。ここで、画像の合成は各画像の対応する座標の画像信号を加算平均することで行い、画像内のランダムノイズは加算平均することで減少させられる。そして、ノイズの減少した画像をゲインアップして露出の適正化を図る。続くステップ#1014では、合成された画像の端部のように各画像が構図振れにより重ならなかった領域をカットし、元のフレームの大きさになるように画像を拡散補完する。そして、次のステップ#1015にて、合成画像に対して信号のガンマ補正や圧縮処理を行う。
次のステップ#1016では、上記ステップ#1015で求まった画像をカメラ背面に配置された背面液晶モニター(表示部119)に表示する。続くステップ#1017では、上記ステップ#1015で求まった画像を例えば半導体メモリなどでカメラに対して着脱可能な記録媒体(記録部121)に記録する。そして、ステップ#1018にてスタートに戻る。
尚、ステップ#1018の段階で未だ継続してスイッチsw1がオンされている場合は、そのままステップ#1001→#1002→#1003→#1004と再度フローを進めてゆく。しかし、ステップ#1018の段階でスイッチsw2が継続してオンのままであるときはスタートに戻らず、ステップ#1018で待機する。
次に、上記ステップ#1003にて防振操作部120がオフであるとしてステップ#1019へ進んだ場合について説明する。
ステップ#1003からステップ#1019へ進むと、ここでは防振システムを使用しないと手振れによる画像劣化が生ずる撮影条件であるか否かを判定する。撮影条件は前述した様に、被写体の明るさ、レンズの明るさ、撮像感度、撮影焦点距離である。このステップ#1019では、被写体の明るさ、レンズの明るさ、撮像感度に基づいて露光時間を求め、その露光時間が現状の撮影焦点距離においては手振れによる画像劣化の可能性があるか否かを判定している。その結果、画像劣化の可能性があると判定した場合はステップ#1020へ進み、そうでない時は直ちにステップ#1021へ進む。
ステップ#1020へ進むと、カメラのファインダや背面液晶モニター(表示部119)に防振モードに設定する事を推奨する表示を行う。そして、次のステップ#1021にて、スイッチsw2がオンされて撮影の指示があるまで、ステップ#1001からステップ#1021を循環して待機する。
その後、ステップ#1021にてスイッチsw2がオンされたことを判定するとステップ#1022へ進み、通常の撮影(一回の露光で有効な露光条件を形成する通常撮影モード)が完了するまで待機し、露光完了と共に上記したステップ#1015へと進む。
ここで省いているが、通常撮影の場合においても、撮影開始から完了の動作に合わせて撮影動作音をスピーカー17aより発音させている。即ち、合成撮影モード(複数枚の撮影の合成)においても通常撮影モードにおいても同じ様式の撮影動作音を発音させている。電子シャッタ選択時にはその動作音の長さ(撮影開始音から撮影完了音迄の長さ)の違いにより長秒時露光か否かを撮影者が認識できる程度であり、複数枚の撮影を行っているか否かは撮影者には判らないようになっている。そのため、合成撮影モードにおいても特別な撮影を行っているという認識を撮影者に与えることがなく、使い易いカメラになっている。
上記ステップ#1022からステップ#1015へ進むと、ここでは撮影画像に対して信号のガンマ補正や圧縮処理を行う。そして、次のステップ#1016にて、上記ステップ#1015で求まった画像をカメラ背面に配置された背面液晶モニター(表示部119)に表示する。続くステップ#1017では、上記ステップ#1015で求まった画像を例えば半導体メモリなどでカメラに対して着脱可能な記録媒体(記録部121)に記録し、ステップ#1018を介してスタートへ戻る。
図6のフローで分かるように、防振操作部120がオフされている場合においても、手振れによる画像劣化が生ずる撮影条件の時には、撮影者に防振システムの活用(合成撮影モード)を促す表示を行って画像劣化を未然に防いでいる。更に合成撮影モードにおいても、各々の露光時間は焦点距離により変更することでいかなる焦点距離においても望ましい撮影ができるようにしている。
以上のように、複数枚の画像を取得し、それらの互いのずれ量を検出すると共に、その結果に基づいて各画像を位置合わせして合成する電子防振システムを有するカメラに関する。このカメラにおいて、撮影倍率に基づいて画像における異なる領域の特徴点の重み付けを設定(変更)するようにしている。このことで、近接撮影時においてもバランスのよい振れ補正(像振れ補正)を可能にしている。
詳しくは、本実施例1におけるカメラは、以下のような構成要素を具備している。順次撮影を実行して複数枚の画像を得る撮影制御部18および画像記憶部113と、撮影倍率に基づいて画像における異なる領域の特徴点の重み付けを設定する重み付け設定部114とを有する。さらに、重み付け設定部114により領域(画像中央領域と画像周辺領域)ごとに重み付けされた特徴点の各座標より各画像間のずれ量を検出するずれ検出部115を有する。さらに、ずれ検出部115により検出されたずれ量に基づいて各画像の座標変換を行う座標変換部116とを有する。さらに、座標変換部116による座標変換後の各画像を合成する画像合成部117と有する。そして、撮影倍率に基づく重み付けが反映されたずれ量により前記各画像間の像振れを補正した後に合成を行い、画像の露出を補完するようにしている。
上記重み付け設定部114について更に詳しく説明すると、撮影倍率が低い時は高い時に比べて、画像周辺領域における特徴点の重み付けを大きくし、撮影倍率が高い時は低い時に比べて、画像中央領域における特徴点の重み付けを大きくするようにしている。
よって、近接撮影時においても満足できる像振れ補正を行うことが可能となった。つまり、近接撮影条件においても主被写体の像振れ補正と背景の像振れ補正をバランスよく行え、防振精度の高い画像を得ることが可能となった。
上記実施例1においては、撮影倍率に応じて画像中央領域と画像周辺領域の重み付けを変更し、その重み付けでずれ量を求めて画像合成を行っていた。これに対し、本発明の実施例2では、以下の点が異なる。一つは、画像をコントラストの高い領域とコントラストの低い領域に分け、コントラストの高い領域に位置する特徴点とコントラストが低い領域に位置する特徴点の重み付けを撮影倍率で可変にしている点である。もう一つは、コントラストの高い領域とコントラストの低い領域のコントラストを比較し、その比較結果によっても重み付けを変更している点である。
以下に本発明の実施例2における重み付け設定部114について、その詳細を説明する。その他は上記実施例1とほぼ同様であるので、その説明は省略する。
重み付け設定部114の役割は、撮影倍率に基づいて各画像における特徴点の重み付けを設定することである。詳しくは、撮影倍率が低い時は画像のコントラストが低い領域における特徴点の重み付けを大きくし、撮影倍率が高い時は画像のコントラストが高い領域における特徴点の重み付けを大きくするようにしている。
これは、撮影倍率が低い時は前述した様に背景の振れを補正した方が好ましい画像になり、撮影倍率が高い時は、主被写体の振れを補正した方が好ましいが画像になることが分かって来た為である。そして、背景の領域は一般的にピントが合っていないのでコントラストが低く、主被写体はピントが合っているのでコントラストが高い。即ち、実施例1では、画像の中央と周辺で主被写体と背景の分離を行っていたが、本発明の実施例2では、コントラストにより主被写体と背景の分離を行っている。
尚、撮影倍率が低い時は前述した様に角度振れが殆どを占め、シフト振れの影響はないのでコントラストの高い領域に位置することの多い主被写体もコントラストの低い領域に位置することの多い背景も同じ量だけ振れている。
その為、複数枚の画像を位置あわせ合成する時には、図2を用いて説明した様に、被写体振れの虞がある主被写体領域(コントラストの高い領域)よりも背景領域(コントラストの低い領域)で画像間の位置ずれを検出し、各画像の位置合わせ、合成を行えばよい。
しかしながら、撮影倍率が大きくなるにつれてシフト振れの影響が大きくなるので、主被写体(コントラストの高い領域)と背景(コントラストの低い領域)で撮影距離が異なる場合では、各々の振れ量が異なってくる。
図4に示した様にフレーム41において、主被写体である画像中央の花42とその背景である画像周辺の葉43各々の特徴点(例えば花や葉のエッジ)の動きベクトルを比較する。すると、撮影被写体距離の近い花は動きベクトル42aは大きく、撮影被写体距離の遠い葉の動きベクトル43aは小さくなる。このような場合、撮影者が最も撮影したい主被写体領域(コントラストの高い領域)における振れを十分補正してゆくのが望ましい。
そこで、重み付け設定部114は、撮影倍率が大きくなるとコントラストの低い領域のずれ検出用の特徴点のずれ検出値に対してコントラストの高い領域のずれ検出用の特徴点のずれ検出値の重み付けを大きくする。例えば、撮影倍率が極めて大きいときにはコントラストの低い領域のずれ検出用の特徴点のずれ検出値の重み付けをゼロにし、コントラストの高い領域における特徴点のずれ検出結果のみで各画像の位置合わせ、合成を行う。
但し、撮影倍率が大きい場合の全てに関して上記処理を行えばよい訳ではない。それは上記処理を行うと背景である葉43に関しては逆に過補正で振れが大きくなる可能性があることである。これは実際の振れは動きベクトル43aで示す様に小さいのであるが、補正は動きベクトル42aで行われる為である。
被写体倍率がきわめて大きく、シフト振れによる主被写体の振れがとても大きい時には主被写体の振れ補正を優先し、背景の振れに関しては許容することができる。それはこのような撮影条件では、画像殆どを主被写体が占め、背景領域が極めて少ないので、その振れの過補正は目立たない為である。
しかしながら、図4の様な撮影倍率(通常撮影よりは撮影倍率が大きいが、最大の撮影倍率では無い条件)では、画像周辺領域も所定の振れ補正を行い、画像全体(主被写体であるコントラストの高い領域と背景であるコントラストの低い領域)で良好な像にしたい。
そこで、このような条件の場合には、コントラストの低い領域のずれ検出用の特徴点のずれ検出値の重み付けをゼロにはしない。そして、コントラストの高い領域における特徴点のずれ検出結果とコントラストの低い領域のずれ検出用の特徴点のずれ検出結果で各画像の位置合わせ、合成を行う。具体的には、コントラストの低い領域のずれ検出用の特徴点のずれ検出値の重み付けを0.4、コントラストの高い領域における特徴点のずれ検出値の重み付けを0.6とする。そして、各々の特徴点のずれ検出結果に重み付けを掛けた後の合成ベクトルで各画像の位置合わせ、合成を行う。
この場合、コントラストの高い領域の主被写体の振れ補正は不十分(0.6倍になるので補正不足)であるが、コントラストの低い領域である背景に関しては振れの過補正は軽減される。
撮影倍率が小さいほどシフト振れの影響は減り、撮影距離が異なる事による主被写体の振れ量と背景の振れ量の差はなくなってくる。よって、重み付け設定手段により定める各領域の特徴点の重み付けは、上記実施例1で説明した図5(a)から図5(c)と同様に設定すればよい。
図7は本発明の実施例2に係る主要部分の撮影動作をまとめたフローチャートであり、このフローはカメラの電源がオンされたときにスタートする。図7のフローチャートは、図6のフローチャートと比べて、ステップ#1005の代わりにステップ#2001を行う点が異なる。
ステップ#2001では、重み付け設定部114により、撮影倍率に応じてコントラストの高い領域の特徴点のずれ検出の重み付けと、コントラストの低い領域の特徴点の重み付けとを設定する。ここで、画像のコントラストは公知の画像処理により得られるものであるが、画像内にはコントラストの高い被写体とコントラストの低い被写体が混在している。又、コントラストの高い被写体でもピントが合っていなければコントラストは低くなる。
そこで、画像を、図8に示すように、画像を大まかに分割(第2領域である領域101aと第1領域である領域101b〜101g)する。そして、その分割領域毎にコントラスト平均値を求め、その値に基づいてコントラストの高い領域とコントラストの低い領域を設定するようにしている。この重み付けは、撮影倍率が大きいほど、コントラストの高い領域(図8では、領域101aで示す第2領域)の特徴点の重み付けを大きくしており、その重み付けの撮影倍率による変化は、図5(a)から図5(c)で説明した通りである。
上記のように、本実施例2では、画像をコントラストの高い領域とコントラストの低い領域に分け、コントラストの高い領域に位置する特徴点とコントラストが低い領域に位置する特徴点の重み付けを撮影倍率で可変にするようにしている。このことで、上記実施例1に比べ、更に正確に主被写体と背景を判定して、ずれ検出用の特徴点に適切な重み付けを与える事ができるようになっている。
そして、本実施例2においては、以下に述べる処理を行う事で、主被写体と背景のずれの補正のバランスを更に高める事を可能にしている。
前述した様に、近接撮影ではカメラに加わるシフト振れの影響による画像のずれがあり、そのずれ量は撮影被写体の距離で変化する。そして、撮影被写体がカメラに対して近い場合には、遠い場合に比べて、シフト振れによる画像のずれが大きくなる。
主被写体と背景がカメラに対して略同等の距離にある場合には、シフト振れによる画像のずれも殆ど同じである為に、前述した様に各画像間のずれを検出し、そのずれに基づいて各画像を位置合わせをし、合成すれば主被写体も背景も良好にずれ補正できる。しかしながら、主被写体の撮影距離に対して背景の撮影距離が離れている場合、例えば主被写体はカメラに対して20cmの位置、背景はカメラに対して1mの位置の場合では、シフト振れによる画像のずれは主被写体は大きく、背景には殆ど影響しない量になる。その為、主被写体のずれ量に基づいてずれ検出を行い、各画像を位置合わせして合成すると、背景領域では却ってずれを発生させる事になる。しかし、主被写体に対して背景は十分に離れているので、背景の画像のコントラストは極めて低く(ピントが合っていない為)、その領域にずれが合ってもさほど問題にはならない。
上記2つの条件の場合では、共に主被写体領域(コントラストの高い領域)の特徴点を用いてずれ検出を行えばよい。ところが、上記2つの条件の中間の条件ではずれ検出に調整が必要になる。例えば、主被写体はカメラに対して20cm、背景はカメラに対して40cmの場合である。このような時は主被写体の領域(コントラストの高い領域)で検出したずれに基づいて各画像を位置合わせして合成すると、背景は却ってずれを発生させることになる(過補正)。このこと自体は背景が1mの場合と同じである。つまり、背景の撮影距離も主被写体の撮影距離に近いので、主被写体に対するコントラストの低下も少なく、上記過補正が目立ち、良好な画像にはならない。
このような条件においては、主被写体のずれ補正量(精度)を低くし、その分背景の過補正量を減らすことで画像全体としてバランスをとるようにするのが、本実施例2におけるもう一つの特徴である。
今まで説明してきた例では、撮影倍率が大きいほど、背景に対して主被写体のずれ補正精度を上げてきており、それは画像中央領域或いはコントラストの高い領域における特徴点の重み付けを大きくする事で対処してきた。ここではそれに加えて、撮影倍率が大きい場合においても、更に背景の撮影倍率(撮影被写体距離やコントラスト)に応じて主被写体領域(コントラストの高い領域)と背景(コントラストの低い領域)の特徴点の重み付けを変更するものである。
具体的には、コントラストの高い領域とコントラストの低い領域のそれぞれのコントラストを比較し、その差、或いは比が大きい時には、背景は主被写体に対して遠くにある(撮影距離が長い)と判定する。そして、主被写体(コントラストの高い領域)における特徴点の重み付けを高くするように重み付けを補正する。一方、差、或いは比が小さい時には背景は主被写体に対して近くにあると判定し、主被写体(コントラストの高い領域)における特徴点の重み付けを低くするように補正するようにしている。
このようにすることにより、背景が遠い場合でもコントラストが高い模様の時には背景ずれの過補正を防ぎ、良好な画像を得る事ができる。
図9は、図7のステップ#2001での処理内容の詳細を説明するフローチャートである。
ステップ#20011を介してステップ#20012へ進むと、ここでは、コントラストの高い領域とコントラストの低い領域のそれぞれのコントラストの比を求める。なお、コントラストの高い領域とは、図8の領域101aで示す第2領域などの主被写体領域であり、コントラストの低い領域とは、図8の領域101fで示す第1領域などの背景領域である。
次のステップ#20013では、上記ステップ#20012で求めたコントラスト比に基づいて各領域(コントラストの高い領域101a、コントラストの低い領域101f)に点在している特徴点の重み付けを補正する。そして、次のステップ#20014にて、図7のステップ#1006へ進む。
ここで、特徴点の重み付けの補正について説明する。
図10は、図5(a)における或る撮影倍率51の撮影条件における領域毎の重み付けを示している。ここで、横軸は、コントラストの高い領域(例えば図8の領域101a)とコントラストの低い領域(図8の領域101f)のコントラストの比である。図中の右方向に行く程、コントラストの比が小さい(コントラストがほぼ同じであり、主被写体と背景は同じ撮影距離近傍にある)。縦軸は、各領域(コントラストの高い領域とコントラストの低い領域)の重み付けであり、それぞれ、破線で示すコントラストの高い領域、実線で示すコントラストの低い領域が対応している。
コントラスト比が大きい(背景が遠くにあり、ピントがボケている)ときは、各領域は図5(a)に示す撮影倍率51の位置における重み付けになっているが、コントラスト比が小さくなるにつれて各々の重み付けに違いがなくなるようにしている。そのため、主被写体と背景の撮影距離が離れている時は、主被写体に重み付けされたずれ検出結果で画像の合成が行われ、主被写体と背景がほぼ等撮影距離にある時には、主被写体と背景のずれの平均ずれ検出結果で画像の合成が行われる。よって、主被写体のずれと背景のずれをバランスよく補正でき、良好な画像を得る事ができる。
以上のように、実施例1と同様に、近接撮影時においてもバランスのよい像振れ補正を可能にしている。
実施例2における重み付け設定部114を詳しく説明すると、撮影倍率が低い時は高い時に比べて、コントラストの低い画像が多い第1領域における特徴点の重み付けを大きくする。撮影倍率が高い時は低い時に比べて、コントラストの高い画像が多い第2領域における特徴点の重み付けを大きくする。更には、重み付け設定部114は、第1領域と第2領域のコントラスト比較結果が大きいほど、第2領域における特徴点の重み付けを大きくするようにしている。
よって、近接撮影時においても満足できる像振れ補正を行うことが可能となった。
上記実施例1から3においては、撮影倍率に応じて特徴点の重み付けを変更していた。これにより、画像を位置合わせして合成することで、像振れが少なく、且つ露出も補完された良好な画像を得ることができた。
これまでの実施例1〜3に述べたように、画像を複数枚に分けて撮影する場合には、その各々は手振れによる像劣化が生じない様な短い露光時間で撮影する必要がある。そして、その露光時間はカメラの焦点距離や撮影倍率により調整しており、焦点距離が長い時や撮影倍率が高い時には、手振れによる画像劣化が大きくなるので、各画像の露光時間を焦点距離が短い時や撮影倍率が低い時に比べて短くしている。その為に露出を補完するために、より多くの画像を取得してそれらを位置合わせして合成する必要がある。
合成枚数が多い時には、実施例1〜3で述べた主被写体と背景の振れ補正量の関係が変化してくる。前述した様に、近接撮影において像振れ補正が可能であるのは、撮影距離が同じである被写体のみであり、背景などの撮影距離の異なる被写体においては却って過補正になる場合もある。それを避けるために、主被写体の振れ補正精度を調節し(精度を落とし)、背景の過補正を弱めて全体にバランスの良い画像を得ている。しかしながら、撮影枚数が多くなると、始めに撮影された画像と最後に撮影された画像の時間差が長くなりすぎて、その間の振れ量も大きくなってくる。その為にバランスの良い画像を得る為に主被写体の振れ補正精度を落とすと、残存振れは許容できなくなる虞がある。
そこで、本発明の実施例4においては、撮影枚数が多い時には、主被写体領域の特徴点の重み付けを大きくして主被写体の振れ補正精度を上げる。一方、撮影枚数が少ない時には、背景領域の特徴点の重み付けを大きくして画像全体でバランスのとれた振れ補正を行うようにしている。
カメラの構成は図1と同様であり、その説明は省き、複数枚画像の処理部についてのみ説明する。
本実施例4において、連続撮影に応じて撮像部19から撮影ごとに複数出力される画像信号は、A/D変換部110でデジタル信号に変換されてから信号処理部111にて信号処理が施される。
一方、防振操作部120が操作されて防振システムがオンされた事が撮影制御部18に伝えられると、信号処理部111からの画像データは信号切換部112を介して画像記憶部113に入力される。画像記憶部113は、撮影された複数の画像を記憶しておく。
重み付け設定部114は、次段のずれ検出部115のずれ検出で使用される特徴点の重み付けを設定するものであり、本実施例4における重み付け設定部114での詳細については後述する。ずれ検出部115は、画像記憶部113に記憶された画像内における重み付け設定部114で設定された重み付けの特徴点を抽出し、この特徴点の撮影画面内における位置座標を割り出す。座標変換部116ではずれ検出部115で求められた各画像間のずれ量に基づいて複数画像の位置合わせを行う。
ここで、合成前に座標変換部116は以下の動作も行っている。
先ず、各画像の座標を変換して位置合わせを行う時に基準となる画像を選ぶ。選ばれた基準画像に対して大幅にずれている画像は以降の合成に用いないように削除する。座標変換された各画像は、画像合成部117に出力されて各画像が1枚の画像に合成される。合成された画像データは、第1画像補正部118aに入力されてガンマ補正や圧縮処理が行われ、更に合成時の各画像の端部欠損部が切り出され、画像サイズが小さくなった分が拡散補完される。つまり、図3における互いが重ならない領域129がカットされ、2枚の画像が重なった領域のみについて切り出して拡散補完処理が行われる。その後、記録部121に記録される。
以上の構成において、本実施例4に係る重み付け設定部114について、その詳細を説明する。
重み付け設定部114の役割は、撮影枚数に基づいて各画像における特徴点の重み付けを設定する事であり、撮影枚数が少ない時は、画像周辺領域における特徴点の重み付けを大きくする。一方、撮影枚数が多い時は、画像中央領域における特徴点の重み付けを大きくしている。
これは前述した様に、撮影枚数が多い時は補正すべき振れ量が大きくなるので、主被写体の補正精度を維持するためには主被写体領域の特徴点の重み付けを大きくする必要があるためである。撮影枚数が少ない時は、補正すべき振れ量は少なくなるので、主被写体の振れ補正と背景の振れ補正のバランスをとるために重み付け設定部114により各領域(主被写体のある画像中央領域と背景のある画像周辺領域)の特徴点の重み付けを均等にする。
図12は本実施例4に係る重み付けの説明図であり、縦軸は重み付けを示し、横軸は撮影枚数を示している。この図14では、撮影枚数が多くなるほど、画像中央領域における特徴点の重み付けを大きくし(実線)、反対に画像周辺領域における特徴点の重み付けを小さくしている(破線)。
図13は本発明の実施例4に係る主要部分の撮影動作をまとめたフローチャートであり、図6のフローと異なるのは、ステップ#1005がステップ#3001に変更になっている点であるので、ステップ#1004の説明を除き、その他の説明は省く。
ステップ#1004では、ステップ#1002で求めた被写体の明るさ等の撮影条件から撮影する枚数と各々の露光時間を求める。ここで云う撮影条件とは
・被写体の明るさ
・撮影焦点距離
・撮影被写体距離
・撮影光学系の明るさ(絞りの値)
・撮像部の感度
の5点である。更に撮影焦点距離と撮影被写体距離より撮影倍率を求める。
また、以下の手順で撮影枚数を求める。例えば、撮像部19の感度がISO200に設定されていたとする。このとき、被写体を明るさを測光し、それを適正に露光するためには絞り13aは全開(例えばf2.8)、シャッタ12aは露光時間1/8が必要である計算になったとする。
このとき、撮影焦点距離が35mmフィルム換算で30mmであるときは、露光時間1/8の撮影では手振れの虞があるので、手振れの虞がない露光時間1/32に設定し、4回撮影を行うように設定する。焦点距離が長い場合には、更に露光時間を短くしないと手振れによる像劣化が生ずるので、更に露光時間を短くして、その分撮影枚数を増やして露出補完を行う。
このように、複数枚撮影における露光時間は撮影被写体が暗いほど、又撮影レンズが暗いほど長くなり、撮像部19の感度が低いほど長くなり、レンズの焦点距離が長いほど短くなる。さらに、撮影倍率が高いほど短くなる(撮影倍率が高いとシフト振れの影響も出てくるので、露光時間を更に短くする必要がある)。そして、複数枚撮影における撮影枚数は、撮影被写体が暗いほど、又撮影レンズが暗いほど多くなり、撮像部19の感度が低いほど多くなり、レンズの焦点距離が長いほど多くなり、撮影倍率が大きいほど多くなる。
以上の計算が終了した後で、カメラのファインダや液晶表示部に防振モード(複数回撮影モード)が設定されたことを表示すると同時に、求めた撮影枚数を表示し、撮影者に知らせる。
図13のステップ#3001では、重み付け設定部114により、撮影枚数に応じて画像中央領域の特徴点のずれ検出の重み付けと画像周辺領域の特徴点の重み付けが設定される。この重み付けは、撮影枚数が多いほど、画像中央領域の特徴点の重み付けを大きくしており、その重み付けの撮影倍率による変化は、図12で説明した通りである。
上記実施例では、画像の中央領域と周辺領域の重み付けを、撮影枚数に応じて変化させていたが、上記実施例2および3で述べた様に、画像のコントラストの高い領域と低い領域における特徴点の重み付けを撮影枚数で変更してもよい。さらには、合焦状態ごとに分けた領域の特徴点の重み付けを撮影枚数で変更してもよい。
また、主被写体と背景のコントラストの比や合焦状態の比較により重み付けの補正を行い、より振れ補正バランスのとれた画像を得る事ができる。
これらコントラストや合焦状態を利用した重み付けの制御に関しては、既に実施例2,3に詳細説明しており、これら実施例2,3と異なるのは、撮影倍率に応じる事が、撮影枚数に応じる事に変更された点だけであるので説明は省く。
以上のように、複数枚の画像を取得し、それらの互いのずれ量を検出すると共に、その結果に基づいて各画像を位置合わせして合成する電子防振システムを有するカメラに関する。このカメラにおいて、撮影枚数に応じて画像における異なる領域の特徴点の重み付けを設定(変更)するようにしている。このことで、近接撮影時においてもバランスのよい像振れ補正を可能にしている。
詳しくは、本実施例4におけるカメラは、以下のような構成要素を具備している。順次撮影を実行し、複数枚の画像を得る撮影制御部18および画像記憶部113と、撮影枚数に応じて画像における異なる領域の特徴点の重み付けを設定する重み付け設定部114とを有する。さらに、重み付け設定部114により重み付けされた特徴点の各座標より各画像間のずれ量を検出するずれ検出部115と、ずれ検出部115により検出されたずれ量に基づいて各画像の座標変換を行う座標変換部116とを有する。さらに、座標変換部116による座標変換後の各画像を合成する画像合成部117とを有する。そして、撮影枚数に応じた重み付けが反映されたずれ量により前記各画像間の像振れを補正した後に合成を行い、画像の露出を補完する構成にしている。
上記重み付け設定部114についてさらに詳述すると、撮影枚数が少ない時は多い時に比べて、画像周辺領域における特徴点の重み付けを大きくし、撮影枚数が多い時は少ない時に比べて、画像中央領域における特徴点の重み付けを大きくする。又は、撮影枚数が少ない時は多い時に比べて、コントラストの低い画像が多い第1の領域における特徴点の重み付けを大きくし、撮影枚数が多い時は少ない時に比べて、コントラストの高い画像が多い第2の領域における特徴点の重み付けを大きくしている。
また、カメラは撮影画面内の異なる領域の合焦状態を検出する合焦状態検出手段を有する。上記重み付け設定部114は、撮影枚数が少ない時は多い時に比べて、画像の合焦近傍以外の領域における特徴点の重み付けを大きくする。撮影枚数が多い時は少ない時に比べて、合焦近傍領域における特徴点の重み付けを大きくしている。
よって、画像の露出を補完する近接撮影時においても満足できる像振れ補正を行うことが可能となった。
また、上記の実施例中ではカメラ(撮像装置)について説明したが、撮影を実行できる電子機器、通信機器などでも同様の効果を得ることができる。
(他の実施例)
また、各実施例の目的は、前述した実施例の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードをシステムあるいは装置に供給する方法によっても達成される。そして、そのシステムあるいは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU)がそのプログラムコードを読み出し実行する。この場合、プログラムコード自体が前述した実施例の機能を実現することになる。また、そのプログラムコードをシステムあるいは装置のコンピュータに提供する、先に説明した手順に対応するプログラムコードが格納された記録媒体も本発明を構成することになる。
(発明と実施例との対応)
撮影制御部18および画像記憶部113が本発明の露光制御手段に、重み付け設定部114が本発明の重み付け設定手段に、ずれ検出部115が本発明のずれ検出手段に、それぞれ相当する。また、座標変換部116が本発明の座標変換手段に、画像合成部117が本発明の画像合成手段に、それぞれ相当する。また、TV−AF(いわゆる山登り)方式や位相差AF方式により、撮影画面内の異なる領域の合焦状態を検出する撮影制御部18の部分が、本発明の合焦状態検出手段に相当する。