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JP5493557B2 - 大入熱溶接用鋼材 - Google Patents

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Description

本発明は、船舶や建築・土木等の分野における各種鋼構造物に使用される鋼材、特に降伏応力が460MPa以上の高強度で、しかも溶接入熱量が300kJ/cmを超える大入熱溶接に適した鋼材に関するものである。
船舶や建築・土木等の分野で使用される鋼材は、溶接接合により所望の形状の構造物に仕上げられるのが普通である。したがって、これらの構造物には、安全性を確保する観点から、使用される鋼材の母材靱性はもちろんのこと、溶接部の靱性にも優れていることが要請されている。
さらに、近年では、上記船舶や鋼構造物はますます大型化し、使用される鋼材も高強度化や厚肉化が積極的に進められている。それに伴い、溶接施工には、サブマージアーク溶接やエレクトロガス溶接、エレクトロスラグ溶接などの大入熱で高能率の溶接方法が適用されるようになってきている。したがって、大入熱溶接によって溶接施工したときでも、溶接部の靱性に優れる鋼材が必要となってきている。
ここで、図1は、溶接部断面のマクロ組織写真であり、溶接部の中央には、溶融した母材および溶接材料から生成した溶着金属の両者が溶融状態でほぼ均一に混合し、凝固した溶接金属部分が存在しており、その両側には、溶接時に投入された熱によって影響を受け、母材の組織と特性が変質した熱影響部(Heat Affected Zone;HAZ)が存在し、さらにその両側には、母材が存在している状態を示したものである。上記溶接金属と熱影響部の境界部(図中の破線部)は、一般に「ボンド部」と称されている。
上記ボンド部近傍に位置する熱影響部(HAZ)は、熱影響部の中で、最も高い融点付近の温度まで加熱され、その後、急冷されるという熱サイクルを受けるため、溶接時の入熱量が大きくなると、結晶粒が粗大化し、靱性が著しく低下することが知られている。このような大入熱溶接に伴うHAZの靱性低下に対しては、これまでにも多くの対策が検討されてきた。例えば、TiNを鋼中に微細分散させて、オーステナイト粒の粗大化を抑制したり、フェライト変態核として利用したりする技術が既に実用化されている。また、Tiの酸化物を分散させることで、上記と同様の効果を狙った技術も開発されている(例えば、特許文献1参照)。
しかし、TiNを活用する上記技術は、大入熱溶接を受けた際、溶接熱影響部がTiNの溶解温度域まで加熱され、TiNが分解して再溶解してしまうため、上記分散効果が消失したり、さらに、TiNの分解により生成した固溶Tiおよび固溶Nの増加によって鋼が脆化し、靱性が著しく低下したりするという問題を抱えている。また、Ti酸化物を活用する技術は、酸化物を均一微細に分散させることが難しいという問題がある。
このような問題に対する技術として、例えば、特許文献2には、300kJ/cmを超える大入熱溶接した溶接熱影響部の靱性を向上させるため、硫化物の形態制御のために添加しているCaの量を適正化して、CaSを晶出させ、これをフェライト変態核として有効に活用する技術が開示されている。このCaSは、酸化物に比べて低温で晶出するため、鋼中に微細分散させることが可能であり、さらに、冷却中に、これを核として、MnSやTiN,BN等のフェライト変態生成核が微細に分散析出するので、溶接熱影響部の組織を微細なフェライトパーライト組織とすることができ、高靱性化を達成することができる。
しかし、特許文献2の技術をもってしても、降伏応力が460MPa以上で、比較的多量のCや合金元素が添加された鋼では、溶接入熱量が300kJ/cmを超える大入熱溶接を施したときに、ボンド部近傍の熱影響部に島状マルテンサイト(MA)と呼ばれる硬質の脆化組織が面積分率で数%形成され、これが溶接部の靭性のさらなる改善を阻んでいることが問題となっている。従って、このような高強度鋼材における大入熱溶接部の靭性改善には、フェライト変態核の微細分散や固溶N、固溶Bの低減に加えてさらに、上記ボンド部近傍の熱影響部における島状マルテンサイトの生成を抑制する必要がある。
上記島状マルテンサイトを低減する技術については、例えば、特許文献3には、C量を低減すると同時に、Mn量を増やして変態開始温度を低下させることで、Cの未変態オーステナイト中への分配を低減し、島状マルテンサイトの生成を抑制する技術が開示されている。また、特許文献4には、C,Siの含有量の低減の他に、Pの含有量の低減が、大入熱溶接したHAZ部の島状マルテンサイトの低減に対して有効であることが開示されている。
特関昭57−051243号公報 特許第3546308号公報 特開2007−084912号公報 特開2008−163446号公報
特許文献3の技術によれば、島状マルテンサイトの量を低減することはできる。しかし、C低減による強度低下を補償するために、Nbを0.03mass%以上添加することを必要としており、これによる島状マルテンサイトの生成が懸念される。さらに、この技術は、変態生成核としてTi酸化物を利用しているため、それを微細分散させるという技術的課題が残されている。また、特許文献4の技術では、やはり、島状マルテンサイトの量の低減が可能で、かつ、Caを適正量添加することで、フェライト変態核を微細に分散させることが可能である。しかし、高価なNiの添加を必須としているため、合金コストが高くなるという問題がある。
そこで、本発明の目的は、高価な合金元素の添加を行うことなく溶接熱影響部における島状マルテンサイトの生成を抑制し、高強度でかつ溶接部の靭性に優れる大入熱溶接用鋼材を提供することにある。
発明者らは、降伏応力が460MPa以上の高強度鋼材に対して、溶接入熱量が300kJ/cmを超える大入熱溶接を施したときにボンド部近傍の熱影響部に生成する島状マルテンナイトの量を低減するべく鋭意検討した。その結果、島状マルテンサイトを極力生成させずに強度を高めることが可能な元素であるMnを積極的に添加するとともに、不純物元素であるPの含有量を0.008mass%以下にまで低減することによって、大入熱溶接後の冷却中に生成する島状の未変態オーステナイトがセメンタイトに分解しやすくなり、島状マルテンサイトの生成をほぼ抑制することができることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、C:0.01〜0.03mass%、Si:0.01〜0.15mass%、Mn:2.6〜3.5mass%、P:0.008mass%以下、S:0.0005〜0.0040mass%、Al:0.005mass%超0.1mass%未満、Ti:0.003〜0.03mass%、N:0.0025〜0.0070mass%、B:0.0003〜0.0025mass%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有し、溶接入熱量が300kJ/cmを超える大入熱溶接を施したときのボンド近傍の熱影響部組織における島状マルテンサイト面積分率が1%以下であることを特徴とする大入熱溶接用鋼材である。
本発明の大入熱溶接用鋼材は、上記成分組成に加えてさらに、V:0.2mass%以下を含有することを特徴とする。
また、本発明の大入熱溶接用鋼材は、上記成分組成に加えてさらに、Cu:1.0mass%以下、Ni:1.0mass%以下、Cr:0.4mass%以下、Mo:0.4mass%以下およびNb:0.04mass%以下のうちから選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする。
また、本発明の大入熱溶接用鋼材は、上記成分組成に加えてさらに、Ca:0.0005〜0.0050mass%、Mg:0.0005〜0.0050mass%、Zr:0.001〜0.02mass%、REM:0.001〜0.02mass%のうちから選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする。
本発明によれば、300kJ/cmを超える大入熱溶接を行っても、優れた溶接熱影響部靭性を有する高強度の鋼材を安価に提供することができる。したがって、本発明は、サブマージアーク溶接、エレクトロガス溶接、エレクトロスラグ溶接などの大入熱溶接により施工される大型鋼構造物の品質向上や低コスト化に大きく寄与する。
大入熱溶接部のマクロ組織を説明する写真である。
先ず、本発明の鋼材における溶接熱影響部(HAZ)の組織について説明する。
本発明は、溶接部の熱影響部(HAZ)、中でも最も高温に曝され、オーステナイトが粗大化しやすいボンド部近傍の熱影響部における島状マルテンサイトの生成を抑制することによって、大入熱溶接部の靭性向上を図るところに技術的特徴がある。斯かる効果を得るためには、上記ボンド部近傍の熱影響部における島状マルテンサイトを、面積分率で1%以下に低減することが必要である。
ここで、上記ボンド部近傍の熱影響部とは、ボンド部から500μm以内の範囲の熱影響部を指す。また、ボンド部近傍の熱影響部における島状マルテンサイトは、溶接部の断面を研摩し、エッチングし、SEMで観察することで確認することができる。なお、ボンド部近傍の熱影響部の組織は、上記島状マルテンサイトの外は、アシキュラーフェライトやベイナイトを主とし、フェライトやパーライトなどを含むものである。
次に、本発明の鋼材が、島状マルテンサイトを低減して溶接部を高靭性化すると共に、母材の高強度化を図るのに必要な成分組成について説明する。
C:0.01〜0.03mass%
Cは、鋼材強度を高める元素であり、構造用鋼として必要な強度を確保するには、0.01mass%以上含有させる必要がある。しかし、Cが0.03mass%を超えると、島状マルテンサイトが生成し易くなるため、上限は0.03mass%とする。
Si:0.01〜0.15mass%
Siは、脱酸剤として添加される元素であり、0.01mass%以上の添加が必要である。しかし、0.15mass%を超えると、母材の靱性が低下するほか、大入熱溶接した熱影響部に島状マルテンサイトが生成し、靱性の低下を招きやすくなる。よって、Siは0.01〜0.15mass%の範囲とする。
Mn:2.6〜3.5mass%
Mnは、大入熱溶接後の冷却中にボンド部近傍のHAZに生成する島状の未変態オーステナイトをセメンタイトに分解しやすくし、無害化する効果があるので、島状マルテンサイトを生成させずに強度をあげることができる重要な元素である。上記効果を得るには、2.6mass%以上の添加が必要である。しかし、3.5mass%を超えて添加すると、島状マルテンサイトが多量に生成し、溶接部の靱性を低下させる。よって、Mnは2.6〜3.5mass%の範囲とする。好ましくは、2.7〜3.0mass%の範囲である。
P:0.008mass%以下
Pは、大入熱溶接後の冷却中にボンド部近傍のHAZに生成する島状の未変態オーステナイトをセメンタイトに分解し難くし、靭性を低下させるので、本発明においては制限すべき重要な元素である。特に、0.008mass%を超える含有は、上記悪影響が著しくなる。よって、本発明では、上記弊害を抑制するため、Pは0.008mass%以下に制限する。好ましくは、0.006mass%以下である。
S:0.0005〜0.0040mass%
Sは、フェライトの核生成サイトを形成するMnSあるいはCaSを生成するために必要な元素であり、斯かる効果を得るためには、0.0005mass%以上含有させる必要がある。しかし、0.0040mass%を超えると、母材の靱性が却って低下する。よって、Sは0.0005〜0.0040mass%の範囲とする。
Al:0.005mass%超0.1mass%未満
Alは、鋼の脱酸のために添加される元素であり、0.005mass%超え含有させる必要がある。しかし、0.1mass%以上添加すると、母材の靱性のみならず、溶接金属の靱性をも低下させる。よって、Alは0.005mass%超0.1mass%未満の範囲とする。
Ti:0.003〜0.03mass%
Tiは、凝固時にTiNとなって析出し、溶接熱影響部でのオーステナイトの粗大化を抑制し、また、フェライト変態核となって、溶接熱影響部の靭性向上に寄与する。斯かる効果を得るには、0.003mass%以上の添加が必要である。一方、0.03mass%を超えて添加すると、析出したTiNが粗大化し、上記効果が得られなくなる。よって、Tiは、0.003〜0.03mass%の範囲とする。
N:0.0025〜0.0070mass%
Nは、TiNの生成に必要な元素であり、必要量のTiNを確保するには、0.0025mass%以上含有させる必要がある。しかし、0.0070mass%を超えて添加すると、溶接熱サイクルによってTiNが再溶解する領域では、固溶N量が増加し、溶接部の靱性が著しく低下するようになる。よって、Nは、0.0025〜0.0070mass%の範囲とする。
B:0.0003〜0.0025mass%
Bは、溶接熱影響部でBNを形成して固溶Nを低減するとともに、フェライト変態核として作用するので、溶接熱影響部の高靭性化にとって有用な元素である。このような効果を得るには0.0003mass%以上添加する必要がある。しかし、0.0025mass%を超えて添加すると、焼入れ性が増して、却って靭性の低下を招く。よって、Bは、0.0003〜0.0025mass%の範囲とする。
本発明の鋼材は、上記成分に加えてさらに、フェライト生成核として作用するVを下記の範囲で添加することができる。
V:0.2mass%以下
Vは、VNとして析出し、母材の強度・靱性の向上に寄与すると共に、フェライト生成核としても作用するので、必要に応じて添加することができる。これらの効果を得るためには0.01mass%以上含有させることが好ましい。しかし、過剰の添加は、却って靱性の低下を招くので、上限は0.2mass%とするのが好ましい。
また、本発明の鋼材は、上記成分に加えてさらに、母材の高強度化に有効なCu,Ni,Cr,MoおよびNbから選ばれる1種または2種以上を下記の範囲で添加することができる。
Cu:1.0mass%以下
Cuは、母材の高強度化に有効な元素であり、その効果を得るためには0.05mass%以上含有させることが好ましい。しかし、多量に添加し過ぎると、靱性に悪影響を及ぼすため、添加する場合には、1.0mass%以下とするのが望ましい。
Ni:1.0mass%以下
Niは、母材の高強度化に有効な元素であり、その効果を得るためには0.05mass%以上含有させることが好ましい。しかし、多量に添加し過ぎると、靱性に悪影響を及ぼすため、添加する場合には、1.0mass%以下とするのが望ましい。
Cr:0.4mass%以下
Crは、母材の高強度化に有効な元素であり、その効果を得るためには0.02mass%以上含有させることが好ましい。しかし、多量に添加すると、靭性に悪影響を及ぼすようになるため、添加する場合には、上限を0.4mass%とするのが好ましい。
Mo:0.4mass%以下
Moは、母材の高強度化に有効な元素であり、その効果を得るためには0.02mass%以上含有させることが好ましい。しかし、多量に添加すると、靭性に悪影響を及ぼすようになるため、添加する場合には、上限を0.4mass%とするのが好ましい。大入熱溶接部靱性をより安定して確保する観点からは、0.1mass%未満とするのがより好ましい。
Nb:0.04mass%以下
Nbは、母材の強度・靭性および溶接継手の強度を確保するのに有効な元素であり、その効果を得るためには0.004mass%以上含有させることが好ましい。しかし、0.04mass%を超えて添加すると、溶接熱影響部に島状マルテンサイトが生成して靭性が低下するようになる。よって、添加する場合には、上限を0.04mass%とするのが好ましい。
また、本発明の鋼材は、上記成分に加えてさらに、Ca,Mg,ZrおよびREMから選ばれる1種または2種以上を下記の範囲で添加してもよい。
Ca:0.0005〜0.0050mass%
Caは、Sの固定や、酸化物、硫化物の分散により靱性改善効果を有する元素であり、必要に応じて添加することができる。上記効果を得るには、少なくとも0.0005mass%含有させることが好ましい。しかし、0.0050mass%を超えて添加しても、上記効果は飽和する。よって、Caを添加する場合は、0.0005〜0.0050mass%の範囲とするのが好ましい。
Mg:0.0005〜0.0050mass%、Zr:0.001〜0.02mass%、REM:0.001〜0.02mass%
Mg,ZrおよびREMはいずれも、酸化物の分散による靱性改善効果を有する元素である。このような効果を得るには、Mgは0.0005mass%以上、ZrおよびREMは0.001mass%以上含有させることが好ましい。一方、Mgは0.0050mass%超え、ZrおよびREMは0.02mass%超え添加しても、その効果は飽和するだけである。よって、これらの元素を添加する場合は、上記範囲とするのが好ましい。
本発明の鋼材における上記成分以外の残部は、Feおよび不可避的不純物である。ただし、本発明の作用効果を害さない範囲であれば、上記以外の元素の含有を拒むものではない。
なお、本発明の鋼材は、従来公知の方法で製造することができ、特に、製造条件に制限はない。例えば、溶銑を転炉等で溶鋼とした後、RH脱ガス等で鋼成分を上記適正範囲に調整した後、連続鋳造または造塊−分塊工程を経て鋼片とする。次いで、上記鋼片を再加熱し、熱間圧延して所望の寸法の鋼材とした後、放冷するか、あるいは、上記熱間圧延後、加速冷却、直接焼入れ−焼戻し、再加熱焼入れ−焼戻し、再加熱焼準−焼戻しなどの工程を経て製造することができる。
表1に示した成分組成を有するNo.1〜22の鋼を150kg高周波溶解炉にて溶製し、熱間圧延して厚さ70mmの鋼片とした。この鋼片を1150℃で2時間加熱した後、さらに熱間圧延して板厚18mmの鋼板とし、放冷した。次いで、これらの鋼板についての溶接熱サイクル後の靭性を評価するため、上記鋼板のそれぞれから幅80mm×長さ80mm×厚さ15mmの試験片を採取し、1450℃に加熱後、800から500℃の範囲を270secで冷却する熱処理を施した。この熱処理は、入熱量400kJ/cmのエレクトロガス溶接を行った際、溶接熱影響部が受ける溶接熱サイクルに相当するものである。
Figure 0005493557
次いで、上記熱処理後の鋼板から組織観察用の試験片を採取し、断面を研摩後、2段エッチング法で島状マルテンサイトを現出したのち、SEMを用いて2000倍で5視野の組織写真を撮影し、得られた組織写真5枚をトレースしたのち画像解析し、島状マルテンサイトの平均面積分率を求め、これをボンド部近傍の熱影響部(HAZ)のMA分率とした。
また、上記熱処理後の鋼板から、試験片長手方向が圧延方向と一致するようにして2mmVノッチシャルピー試験片を採取し、−100〜40℃の温度範囲でシャルピー衝撃試験を行い、延性破面率50%となる破面遷移温度vTrsを求め、靭性を評価した。
表2に、各々の鋼板の島状マルテンサイトの面積分率と溶接熱影響部の靭性の測定結果を示した。表2から、本発明例のNo.1〜12の鋼板は、いずれも島状マルテンサイトの面積分率が1%以下で、vTrsで−50℃以下という良好な溶接熱影響部靭性が得られているのがわかる。これに対して、C,Mn,P等の化学成分のいずれかが本発明の範囲から外れているNo.13〜22の比較例の鋼板は、いずれも島状マルテンサイトの面積分率が1%を超えることによって、溶接熱影響部の靭性が、vTrsで−10℃以上と低下している。また、No.23の比較例の鋼板は、N含有量が低過ぎたため、ボンド部近傍の固溶Bが過剰となり、焼入性が高くなって島状マルテンサイトの分率が増加した例、No.24の比較例の鋼板は、逆にN含有量が高過ぎたため、島状マルテンサイトの分率は1%未満であるが、固溶Nが増加して靱性が低下した例である。
Figure 0005493557

Claims (4)

  1. C:0.01〜0.03mass%、Si:0.01〜0.15mass%、Mn:2.6〜3.5mass%、P:0.008mass%以下、S:0.0005〜0.0040mass%、Al:0.005mass%超0.1mass%未満、Ti:0.003〜0.03mass%、N:0.0025〜0.0070mass%、B:0.0003〜0.0025mass%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有し、溶接入熱量が300kJ/cmを超える大入熱溶接を施したときのボンド近傍の熱影響部組織における島状マルテンサイト面積分率が1%以下である大入熱溶接用鋼材。
  2. 上記成分組成に加えてさらに、V:0.2mass%以下を含有することを特徴とする請求項1に記載の大入熱溶接用鋼材。
  3. 上記成分組成に加えてさらに、Cu:1.0mass%以下、Ni:1.0mass%以下、Cr:0.4mass%以下、Mo:0.4mass%以下およびNb:0.04mass%以下のうちから選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の大入熱溶接用鋼材。
  4. 上記成分組成に加えてさらに、Ca:0.0005〜0.0050mass%、Mg:0.0005〜0.0050mass%、Zr:0.001〜0.02mass%、REM:0.001〜0.02mass%のうちから選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の大入熱溶接用鋼材。
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