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JP5487024B2 - プロピレン系樹脂多層シートおよびそれを用いた加熱処理用包装体 - Google Patents

プロピレン系樹脂多層シートおよびそれを用いた加熱処理用包装体 Download PDF

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Description

本発明は、多層シートおよびそれを用いた加熱処理用包装体に関し、詳しくは、加圧蒸気処理もしくは加圧熱水処理などの加圧下での加熱処理を行なっても、変形や内面融着などを起こし難い、優れた耐熱性を有しながらも、良好な透明性、柔軟性、耐衝撃性を持つプロピレン系樹脂多層シートおよびそれを用いた加熱処理用包装体に関する。
レトルト用包装体や薬液等の輸液バッグなど加圧処理を行って殺菌、滅菌が必要な包装袋に求められる性能として、内容物を確認可能なための透明性、空気孔を開けずとも排液可能にするための柔軟性、内容物の品質保持のための低温保管・低温運搬時に破袋しないための耐低温衝撃性、121℃の滅菌、殺菌処理でも変形、融着しないための耐熱性、易製袋性のためのヒートシール特性等の2次加工適性等が挙げられる。
とりわけ輸液バッグに関しては、かつては上述の性能を満たす材料として塩化ビニル樹脂が使用されていたが、可塑剤の溶出、廃棄処理に難があること、近年の地球環境への配慮等の問題があることから、ポリオレフィン系樹脂に代替されてきている。
ポリエチレンを主構成とする輸液バッグは柔軟性、耐衝撃性に優れるが耐熱性に乏しく、オーバーキル条件である121℃の滅菌温度では変形等の外観不良が発生し、輸液バッグとしての性能を満たすことはできない(例えば特許文献1)。一方、ポリプロピレンを主構成とする輸液バッグは良好な耐熱性を有しているが、輸液バッグ材料としては硬く、低温での耐衝撃性が不足しているため、こちらも上述の性能を満たすことはできない(例えば特許文献2)。
そこで、ポリプロピレンにエラストマー成分を添加し、柔軟性・耐衝撃性を付与した技術が開示されている(例えば特許文献3)。しかし、ポリプロピレンの耐熱性が犠牲となり、また滅菌後の低分子量成分がブリードアウトし、透明性も悪化する問題がある。エラストマー成分としてスチレン系エラストマーを添加する技術の開示もあるが(例えば特許文献4)、ブロッキングが起こりやすくなり、生産性に優れているとは言い難い。またスチレン系エラストマーはオレフィン系エラストマーに比較して高価であり、コスト的にも課題が残る。
それとは別に、チーグラー・ナッタ系触媒を用いて連続重合によりエラストマー成分を添加するポリプロピレンブロック共重合体が開発されている(例えば特許文献5)が、やはり滅菌後のブリードアウトが発生し、透明性は良くない。一方で、メタロセン系触媒を用いて連続重合によりエラストマー成分を添加するプロピレン−エチレンブロック共重合体からなる水冷インフレーションフィルムが提案されており、40℃条件下でのブリードアウト改良が見られている(例えば特許文献6)が、低温での耐衝撃性が未だ不十分なものであった。また、異質ブレンドを含む医療用フィルムが提案されている(例えば特許文献7)が、低温での耐衝撃性が不十分なものであった。
即ち、耐熱性・透明性・柔軟性・耐衝撃性を十分バランスよく備えた、尚かつ、低コストの輸液バッグ材料が求められているが、満足する材料が見つかっていないのが現状であった。
また、輸液バッグ製袋工程にはスパウト、排出ポート・注入ポートなどの射出部品などとの融着させる工程があり、十分な融着のためにはフィルムを溶融させることが必要である。そのために非常に過酷(高温、高圧、長時間等)なヒートシールがされる。十分な溶融状態ではシールバーに溶融樹脂がくっついてしまい、生産性の悪化は否めない。そこで積層により外層、内層(あるいは中間層)の融点差をつけることにより外層を固体のまま、内層を溶融させる技術が開示されている(例えば文献7)。しかし、内層がポリエチエレン系の樹脂であるため滅菌温度115℃には耐えられるが、121℃滅菌ではフィルム内面同士が融着してしまい、耐熱性は十分ではない。
特開平9−308682 特開平9−99036 特開平9−75444 特開平9−324022 特開2006−307072 特表2008−524391 特開2007−245490
加熱処理用包装袋に必要な性能である透明性、耐熱性、柔軟性などをバランスよく兼ね備えるには、耐熱性を発現するプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体と、透明性を損なわずに柔軟化可能なメタロセン系触媒により得られる特定のエチレン量を添加したプロピレン−エチレンランダム共重合体の組み合わせを用いることが効果的である。また、メタロセン系触媒を用いて得られるポリオレフィンは、低分子量成分、低規則性成分が極めて少ないため、クリーン性に優れており、食品・医療分野に好適であると言える一方で、そのままでは耐低温衝撃性が不十分となる可能性がある。
したがって、本発明は、柔軟性、透明性、耐衝撃性、耐熱性、クリーン性に優れ、且つ、製袋時の過酷なヒートシール条件に耐えられる多層シートおよびそれを用いた加熱処理用包装体を提供することにある。
本発明者らは、上記問題点の解決のために多様な検討、解析を実施し、外層に特定の融解ピーク温度を有するプロピレン系樹脂を配し、中間層に特定の融解ピーク温度を有するプロピレン−α−オレフィン共重合体成分と特定のエチレン含有量を有するプロピレン−エチレンランダム共重合体成分の混合物(この混合物は0℃以下に単一のtanδピークを有する)と、特定の密度とメルトフローレートを有するエチレン−α−オレフィン共重合体と、特定の融解ピーク温度とメルトフローレートを有するプロピレン系樹脂を特定量配合し、さらに内層として、特定のプロピレン系樹脂組成物を用いることにより、上記問題点をバランス良く解決できることを見出した。以上の樹脂組成、層構成により加熱処理用包装体に必要な性能をバランス良く、高水準で得られるとの知見を得て本発明に至った。
すなわち、本発明の第1の発明によれば、外層、中間層および内層の順で有する少なくとも3層からなる多層シートであり、各層が下記の条件を満たすことを特徴とするプロピレン系樹脂多層シートが提供される。
(1)中間層
中間層を構成するプロピレン系樹脂組成物(X)が、下記条件(A−i)〜(A−iii)を満たすプロピレン系樹脂組成物(A)45〜89wt%、下記条件(B−i)〜(B−ii)を満たすエチレン−α−オレフィン共重合体(B)10〜30wt%および下記条件(C−i)〜(C−ii)を満たすプロピレン系樹脂(C)1〜25wt%を含有する。
・プロピレン系樹脂組成物(A):
(A−i)メタロセン系触媒を用いて、第1工程でDSC測定における融解ピーク温度Tm(A1)が125〜135℃のプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体成分(A1)を50〜60wt%、第2工程でエチレン含有量E(A2)が8〜14wt%のプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A2)を50〜40wt%逐次重合することで得られたプロピレン−エチレンブロック共重合体である。
(A−ii)メルトフローレート(MFR(A):230℃、2.16kg)が4〜10g/10分の範囲である。
(A−iii)固体粘弾性測定(DMA)により得られる温度−損失正接(tanδ)曲線において、−60〜20℃の範囲において観測されるガラス転移を表すtanδ曲線のピークが0℃以下に単一のピークを示す。
・エチレン−α−オレフィン共重合体(B)
(B−i)密度が0.860〜0.910g/cmの範囲である。
(B−ii)メルトフローレート(MFR(B):190℃、2.16kg)が0.1〜20g/10分の範囲である。
・プロピレン系樹脂(C):
(C−i)融解ピーク温度Tm(C)が、融解ピーク温度Tm(A1)より6℃以上高温である。
(C−ii)メルトフローレート(MFR(C):230℃、2.16kg)が0.5〜30g/10分の範囲である。
(2)外層
外層を構成するプロピレン系樹脂組成物(Y)は、融解ピーク温度Tm(D)が135〜170℃の範囲であるプロピレン系樹脂(D)を含有する。
(3)内層
内層を構成するプロピレン系樹脂組成物(Z)は、下記条件(G−i)〜(G−ii)を満たすプロピレン系樹脂組成物(G)45〜89wt%、下記条件(H−i)を満たすエチレン−α−オレフィン共重合体(H)10〜30wt%および下記条件(I−i)を満たすプロピレン系樹脂(I)1〜25wt%を含有する。
・プロピレン系樹脂組成物(G)
(G−i)プロピレン系樹脂組成物(G)が、下記条件(G1−i)を満たすプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体(G1)30〜70wt%、下記条件(G2−i)〜(G2−ii)を満たすプロピレン−エチレンランダム共重合体(G2)30〜70wt%を、重合ブレンド法を除く方法で混合して得られたものである。
(G−ii)メルトフローレート(MFR(G):230℃、2.16kg)が0.5〜20g/10分の範囲である。
・・プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体(G1)
(G1−i)融解ピーク温度Tm(G1)が125〜145℃の範囲である。
・・プロピレン−エチレンランダム共重合体(G2)
(G2−i)エチレン含有量E(G2)が7〜17wt%の範囲である。
(G2−ii)メタロセン系触媒を用いて得られる。
・エチレン−α−オレフィン共重合体(H)
(H−i)密度が0.860〜0.910g/cmの範囲である。
・プロピレン系樹脂(I)
(I−i)融解ピーク温度Tm(I)が、融解ピーク温度Tm(G1)より6℃以上高温である。
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、プロピレン系樹脂組成物(G)が、下記条件(G−iii)を満たすものであることを特徴とするプロピレン系樹脂多層シートが提供される。
(G−iii)固体粘弾性測定(DMA)により得られる温度−損失正接(tanδ)曲線において、−60〜20℃の範囲において観測されるガラス転移を表すtanδ曲線のピークが0℃以下に単一のピークを示す。
また、本発明の第3の発明によれば、第1または第2の発明において、プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体(G1)が、メタロセン系触媒を用いて得られたものであることを特徴とするプロピレン系樹脂多層シートが提供される。
また、本発明の第4の発明によれば、第1〜3のいずれかの発明のプロピレン系樹脂多層シートを用いてなる加熱処理用包装体が提供される。
さらに、第5の発明によれば、第4の発明において、加熱処理用包装体が輸液バックであることを特徴とする加熱処理用包装体が提供される。
本発明の多層シートおよびそれを用いた加熱処理用包装体における基本的な要件は、中間層(1)に特定のプロピレン系樹脂組成物(A)と特定のエチレン−α−オレフィン共重合体(B)および特定のプロピレン系樹脂(C)を含有するプロピレン系樹脂組成物(X)を用い、外層(2)には特定のプロピレン系樹脂(D)を主材として用いたプロピレン系樹脂組成物(Y)を用い、内層(3)には、特定のプロピレン系樹脂組成物(Z)を用いることにある。
中間層(1)を構成するプロピレン系樹脂組成物(X)に用いるプロピレン系樹脂組成物(A)は、特定の範囲に融解ピーク温度を示すプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体成分(A1)と、メタロセン触媒を用いて得られ特定のエチレン含有を持つプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A2)を逐次重合により得られるもので、柔軟性が高く、固体粘弾性測定において−60〜20℃の範囲にtanδ曲線のピークとして観測されるガラス転移温度が0℃以下に単一のピークを示すプロピレン−α−オレフィン(エチレン)ブロック共重合体であるので、得られる多層シートに透明性および柔軟性をバランスよく付与させることができる。
また、中間層(1)に配合するエチレン−α−オレフィン共重合体(B)は、密度およびメルトフローレートにより特定されるものであり、得られる多層シートに、透明性を損なわず柔軟性を付与させることができる。
また、中間層(1)には、プロピレン系樹脂(C)をさらに配合するが、この際用いるプロピレン系樹脂(C)は、融解ピーク温度およびメルトフローレートにより特定されるものであり、プロピレン系樹脂組成物(A)よりも融点ピーク温度を6℃以上高くすることにより、得られる多層シートに、ブリードアウトなどの外観不良を起こさずに、厚み変動や界面荒れなどの外観不良、ヒートシール時の薄肉化を抑制する機能を付与させることができる。
外層(2)に用いるプロピレン系樹脂組成物(Y)には、融解ピーク温度により特定されるプロピレン系樹脂(D)が用いられ、ヒートシール時にシールバーに本多層シートが付着してしまうのを防ぎ、製袋適性を付与させることができる。
本発明の多層シートは、さらに内層(3)を、外層(1)、中間層(2)、内層(3)の順で有するが、この内層(3)に用いるプロピレン系樹脂組成物(Z)は、プロピレン系樹脂組成物(G)を主成分とし、プロピレン系樹脂組成物(G)は、特定の範囲に融解ピーク温度を示すプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体(G1)と、メタロセン触媒を用いて得られ特定のエチレン含有量を持つことで柔軟性が高く、透明性を悪化させないプロピレン−α−オレフィン共重合体(G2)を、重合ブレンド法を除く方法で混合して得られたものである。これを用いることにより、得られる多層シートに透明性および柔軟性をバランスよく付与させることができる。
また、プロピレン系樹脂組成物(Z)に用いられるエチレン−α−オレフィン共重合体(H)は、密度により特定されるものであり、得られる多層シートに、透明性を損なわず柔軟性を付与させることができる。
さらに、プロピレン系樹脂組成物(Z)に用いられるプロピレン系樹脂(I)は、融解ピーク温度により特定されるものであり、得られる多層シートに、加熱処理時に内層(3)同士が熱融着するのを防ぐ耐熱性を付与させることができる。
したがって、本発明のプロピレン系樹脂多層シートおよび該多層シートを用いた加熱処理用包装体は、透明性や柔軟性及び耐衝撃性、クリーン性などに優れ、かつ、積層時の厚み変動の低下、界面荒れなどの外観悪化を抑え、加えて、2次加工時の薄肉化を改良したものであるため、レトルト用包装体、輸液バッグ用途に特に好適に使用することができる。
本発明のプロピレン系樹脂多層シートは、中間層(1)にプロピレン系樹脂組成物(X)、外層(2)にプロピレン系樹脂組成物(Y)を用い、さらに内層(3)を、外層(1)、中間層(2)、内層(3)の順で有する少なくとも3層からなる多層シートであり、
、それから得られる加熱処理用包装体である。
以下、本発明のプロピレン系樹脂多層シートの各層構成成分、各層構成成分の製造、加熱処理用包装体について詳細に説明する。
[I]プロピレン系樹脂多層シートの各層構成成分
1.中間層(1)
中間層(1)は、下記のプロピレン系樹脂組成物(A)、エチレン−α−オレフィン共重合体(B)、さらにプロピレン系樹脂(C)を含有したプロピレン系樹脂組成物(X)から形成される。
(1)プロピレン系樹脂組成物(A)
(1−1)プロピレン系樹脂組成物(A)の特性
本発明のプロピレン系樹脂多層シートの中間層(1)のプロピレン系樹脂組成物(X)の一成分として用いられるプロピレン系樹脂組成物(A)(以下、成分(A)ということもある。)は、透明性や、柔軟性、及び、耐衝撃性が高いことが必要である。これらの要求を高い水準で満たすために、成分(A)は、以下の(A−i)〜(A−iii)の条件を満たすことが必要である。
(A−i)基本規定
本発明に用いられる成分(A)は、下記条件(A−i)〜(A−iii)を満たすプロピレン系樹脂組成物(A)である。
(A−i)メタロセン系触媒を用いて、第1工程でDSC測定における融解ピーク温度(Tm(A1))が125〜135℃のプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体成分(A1)を50〜60wt%、第2工程でエチレン含有量(E[A2])が8〜14wt%のプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A2)50〜40wt%を、逐次重合することで得られたものである。
(A−ii)メルトフローレート(MFR(A):230℃、2.16kg)が、4〜10g/10分の範囲である。
(A−iii)固体粘弾性測定(DMA)により得られる温度−損失正接(tanδ)曲線において、−60〜20℃の範囲において観測されるガラス転移を表すtanδ曲線のピークが0℃以下に単一のピークを示す。
上記条件を以下の(i)〜(iv)で詳細に説明する。
(i)プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体成分(A1)の融解ピーク温度(Tm(A1))
共重合体成分(A1)は、プロピレン系樹脂組成物(A)において結晶性を決定する成分である。プロピレン系樹脂組成物(A)の耐熱性を向上させるためには、共重合体成分(A1)の融解ピーク温度Tm(A1)(以下、Tm(A1)ということもある。)が高いことが必要である反面、Tm(A1)が高すぎると柔軟性や透明性が阻害される。また、Tm(A1)が低すぎると耐熱性が悪化し、ヒートシール時に薄肉化が進んでしまう。Tm(A1)は、125〜145℃の範囲にあることが必要であり、好ましくは125〜138℃、より好ましくは128〜135℃である。共重合体成分(A1)は好ましくはメタロセン触媒を用いて製造される。
ここで、融解ピーク温度Tmは、示差走査型熱量計(セイコー社製DSC)で求める値であり、具体的には、サンプル量5.0mgを採り、200℃で5分間保持した後、40℃まで10℃/分の降温スピードで結晶化させ、さらに10℃/分の昇温スピードで融解させたときの融解ピーク温度として求める値である。
(ii)プロピレン系樹脂組成物(A)中に占める共重合体成分(A1)の割合
プロピレン系樹脂組成物(A)中に占める共重合体成分(A1)の割合W(A1)は、プロピレン系樹脂組成物(A)に耐熱性を付与する成分であるが、W(A1)が多過ぎると柔軟性や耐衝撃性及び透明性を充分に発揮することができない。そこで共重合体成分(A1)の割合は、60wt%以下である必要がある。
一方、共重合体成分(A1)の割合が少なくなり過ぎると、Tm(A1)が十分であっても耐熱性が低下し、滅菌、殺菌工程において変形してしまう恐れがあるため、共重合体成分(A1)の割合は50wt%以上でなければならない。
(iii)プロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A2)中のエチレン含有量E[A2]
プロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A2)は、プロピレン系樹脂組成物(A)の柔軟性と耐衝撃性及び透明性を向上させるのに必要な成分であり、メタロセン系触媒を用いて得られる。一般に、プロピレン−エチレンランダム共重合体においてエチレン含有量が増加することで結晶性は低下し、柔軟性向上効果は大きくなるため、共重合体成分(A2)中のエチレン含有量E[A2](以下、E[A2]ということもある。)は、8wt%以上であることが必要である。E[A2]が8wt未満の場合には十分な柔軟性を発揮することが出来ず、好ましくは10wt%以上である。
一方、共重合体成分(A2)の結晶性を下げるためにE[A2]を増加させ過ぎると、共重合体成分(A1)と共重合体成分(A2)の相溶性が低下し、共重合体成分(A2)が共重合体成分(A1)と相溶化せずにドメインを形成するようになる。このような相分離構造において、マトリクスとドメインの屈折率が異なると透明性が急激に低下してしまう。そこで本発明に用いられるプロピレン系樹脂組成物(A)中の共重合体成分(A2)のE[A2]は14wt%以下であることが必要であり、好ましくは12wt%以下である。
(iv)プロピレン系樹脂組成物(A)中に占めるプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A2)の割合
プロピレン系樹脂組成物(A)中に占めるプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A2)の割合W(A2)は、多過ぎると耐熱性が低下するため、W(A2)は、50wt%以下に抑えることが必要である。
一方、W(A2)が少なくなり過ぎると柔軟性と耐衝撃性の改良効果が得られないため、W(A2)は、40wt%以上であることが必要である。
ここで、W(A1)及びW(A2)は、温度昇温溶離分別法(TREF)により求める値であり、また成分(A1)のα−オレフィン含有量α[A1](あるいは、エチレン含有量E[A1])と成分(A2)のエチレン含有量E[A2]は、NMRにより求める値である。
具体的には、次の方法による。
(ア)温度昇温溶離分別法(TREF)によるW(A1)とW(A2)の特定
プロピレン−エチレンランダム共重合体等の結晶性分布を温度昇温溶離分別法(TREF)により評価する手法は、当業者によく知られているものであり、例えば、次の文献などで詳細な測定法が示されている。
G.Glockner,J.Appl.Polym.Sci.:Appl.Polym.Symp.;45,1−24(1990)
L.Wild,Adv.Polym.Sci.;98,1−47(1990)
J.B.P.Soares,A.E.Hamielec,Polymer;36,8,1639−1654(1995)
本発明に用いられる成分(A)は、成分(A1)と成分(A2)各々の結晶性に大きな違いがあり、また、両成分がメタロセン系触媒を用いて製造されると各々の結晶性分布が狭くなっていることから双方の中間的な成分は極めて少なく、双方をTREFにより精度良く分別することが可能である。
本発明においては、具体的には次のように測定を行う。
試料を140℃でo−ジクロロベンゼン(0.5mg/mlBHT入り)に溶解し溶液とする。これを140℃のTREFカラムに導入した後に8℃/分の降温速度で100℃まで冷却し、引き続き4℃/分の降温速度で−15℃まで冷却し、60分間保持する。その後、溶媒である−15℃のo−ジクロロベンゼン(0.5mg/mlBHT入り)を1ml/分の流速でカラムに流し、TREFカラム中で−15℃のo−ジクロロベンゼンに溶解している成分を10分間溶出させ、次に昇温速度100℃/時間にてカラムを140℃までリニアに昇温し、溶出曲線を得る。
得られた溶出曲線において、成分(A1)と成分(A2)は結晶性の違いにより各々の温度T(A1)とT(A2)にその溶出ピークを示し、その差は充分大きいため、中間の温度T(A3)(={T(A1)+T(A2)}/2)においてほぼ分離が可能である。
ここで、T(A3)までに溶出する成分の積算量をW(A2)wt%、T(A3)以上で溶出する部分の積算量をW(A1)wt%と定義すると、W(A2)は、成分(A2)の量と対応しており、T(A3)以上で溶出する成分の積算量W(A1)は、結晶性が比較的高い成分(A1)の量と対応している。
測定に用いた装置、仕様を以下に示す。
(TREF部)
TREFカラム:4.3mmφ×150mmステンレスカラム
カラム充填材:100μm 表面不活性処理ガラスビーズ
加熱方式:アルミヒートブロック
冷却方式:ペルチェ素子(ペルチェ素子の冷却は水冷)
温度分布:±0.5℃
温調器:(株)チノー デジタルプログラム調節計KP1000(バルブオーブン)
加熱方式:空気浴式オーブン
測定時温度:140℃
温度分布:±1℃
バルブ:6方バルブ 4方バルブ
(試料注入部)
注入方式:ループ注入方式
注入量:ループサイズ 0.1ml
注入口加熱方式:アルミヒートブロック
測定時温度:140℃
(検出部)
検出器:波長固定型赤外検出器 FOXBORO社製 MIRAN 1A
検出波長:3.42μm
高温フローセル:LC−IR用ミクロフローセル 光路長1.5mm
窓形状2φ×4mm長丸 合成サファイア窓板
測定時温度:140℃
(ポンプ部)
送液ポンプ:センシュウ科学社製 SSC−3461ポンプ
〔測定条件〕
溶媒:o−ジクロロベンゼン(0.5mg/mlのBHTを含む)
試料濃度:5mg/ml
試料注入量:0.1ml
溶媒流速 :1ml/分
(イ)α[A1](またはE[A1])とE[A2]の特定
各成分のα−オレフィン(好ましくはエチレン)含有量α[A1](好ましくはE[A1])とエチレン含有量E[A2]は、分取型分別装置を用い昇温カラム分別法により各成分を分離し、NMRにより各成分のエチレン(またはα−オレフィン)含有量を求める。
昇温カラム分別法とは、例えば、Macromolecukes 21 314−319(1988)に開示されたような測定方法をいう。具体的には、本発明において以下の方法を用いた。
(ウ)昇温カラム分別
直径50mmで高さ500mmの円筒状カラムにガラスビーズ担体(80〜100メッシュ)を充填し、140℃に保持する。次に、140℃で溶解したサンプルのo−ジクロロベンゼン溶液(10mg/ml)200mlを前記カラムに導入する。その後、該カラムの温度を0℃まで10℃/時間の降温速度で冷却する。0℃で1時間保持後、10℃/時間の昇温速度でカラム温度をT(A3)(TREF測定に得られる)まで加熱し、1時間保持する。なお、一連の操作を通じてのカラムの温度制御精度は±1℃とする。
次いで、カラム温度をT(A3)に保持したまま、T(A3)のo−ジクロロベンゼンを20ml/分の流速で800ml流すことにより、カラム内に存在するT(A3)で可溶な成分を溶出させ回収する。
次に、10℃/分の昇温速度で当該カラム温度を140℃まで上げ、140℃で1時間静置後、140℃の溶媒のo−ジクロロベンゼンを20ml/分の流速で800ml流すことにより、T(A3)で不溶な成分を溶出させ回収する。
分別によって得られたポリマーを含む溶液は、エバポレーターを用いて20mlまで濃縮された後、5倍量のメタノール中に析出される。析出ポリマーを濾過して回収後、真空乾燥器により一晩乾燥する。
(エ)13C−NMRによるエチレン含有量の測定
上記分別により得られた成分(A2)それぞれについてのエチレン含有量E[A2]は、プロトン完全デカップリング法により以下の条件に従って測定した、13C−NMRスペクトルを解析することにより求める。
機種:日本電子(株)製 GSX−400又は同等の装置
(炭素核共鳴周波数100MHz以上)
溶媒:o−ジクロロベンゼン/重ベンゼン=4/1(体積比)
濃度:100mg/ml
温度:130℃
パルス角:90°
パルス間隔:15秒
積算回数:5,000回以上
スペクトルの帰属は、例えばMacromolecules 17 1950 (1984)などを参考に行えばよい。上記条件により測定されたスペクトルの帰属は表1の通りである。表中Sααなどの記号はCarmanら(Macromolecules 10 536(1977))の表記法に従い、Pはメチル炭素、Sはメチレン炭素、Tはメチン炭素をそれぞれ表わす。
Figure 0005487024
以下、「P」を共重合体連鎖中のプロピレン単位、「E」をエチレン単位とすると、連鎖中にはPPP、PPE、EPE、PEP、PEE、及びEEEの6種類のトリアッドが存在し得る。Macromolecules 15 1150 (1982)などに記されているように、これらトリアッドの濃度とスペクトルのピーク強度とは、以下の(1)〜(6)の関係式で結び付けられる。
[PPP]=k×I(Tββ) …(1)
[PPE]=k×I(Tβδ) …(2)
[EPE]=k×I(Tδδ) …(3)
[PEP]=k×I(Sββ) …(4)
[PEE]=k×I(Sβδ) …(5)
[EEE]=k×{I(Sδδ)/2+I(Sγδ)/4} …(6)
ここで[ ]はトリアッドの分率を示し、例えば[PPP]は全トリアッド中のPPPトリアッドの分率である。
従って、[PPP]+[PPE]+[EPE]+[PEP]+[PEE]+[EEE]=1 …(7)
である。また、kは定数であり、Iはスペクトル強度を示し、例えばI(Tββ)はTββに帰属される28.7ppmのピークの強度を意味する。
上記(1)〜(7)の関係式を用いることにより、各トリアッドの分率が求まり、さらに下式によりエチレン含有量が求まる。
エチレン含有量(モル%)=([PEP]+[PEE]+[EEE])×100
なお、本発明のプロピレン−エチレンランダム共重合体には少量のプロピレン異種結合(2,1−結合及び/又は1,3−結合)が含まれ、それにより、表2に示す微小なピークを生じる。
Figure 0005487024
正確なエチレン含有量を求めるにはこれら異種結合に由来するピークも考慮して計算に含める必要があるが、異種結合由来のピークの完全な分離・同定が困難であり、また異種結合量が少量であることから、本発明のエチレン含有量は実質的に異種結合を含まないチーグラー・ナッタ系触媒で製造された共重合体の解析と同じく(1)〜(7)の関係式を用いて求めることとする。
エチレン含有量のモル%から重量%への換算は以下の式を用いて行う。
エチレン含有量(重量%)
=(28×X/100)/{28×X/100+42×(1−X/100)}×100
(ここで、Xはモル%表示でのエチレン含有量である。)
(v)プロピレン系樹脂組成物(A)の製造方法
本発明に用いられるプロピレン系樹脂組成物(A)は、メタロセン系触媒を用いて、第1工程でDSC測定における融解ピーク温度Tm(A1)が125〜135℃の範囲にあるプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体成分(A1)を50〜60wt%、第2工程でエチレン含有量E[A2]が8〜14wt%のプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A2)を50〜40wt%逐次重合することで得られる。メタロセン系触媒を用いて、第1工程で成分(A1)を重合し、第2工程で成分(A2)を逐次重合する具体的方法は、例えば特開2005−132979号公報に記載の方法を用いることが出来、ここで言及したことで同公報の全内容が本明細書に取り込まれたものとする。
(A−ii)プロピレン系樹脂組成物(A)のメルトフローレートMFR(A)
本発明に用いられるプロピレン系樹脂組成物(A)のメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)(以下、MFR(A)ということもある。)は、4〜10g/10分の範囲を取ることが必要である。
MFR(A)は、プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体成分(A1)およびプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A2)に対応する各々のMFR(以下、MFR(A1)およびMFR(A2)ということもある。)の比率によって決定付けられるが、本発明においては、MFR(A)が4〜10g/10分の範囲にあれば、MFR(A1)およびMFR(A2)は、本発明の目的を損ねない範囲で任意である。
MFR(A)が低く過ぎると、成形機スクリュの回転への抵抗が大きくなるために、モータ負荷や先端圧力が上昇するばかりでなく、シートの表面が荒れることで外観を悪化させるといった問題が生じるため、MFR(A)は好ましくは5g/10分以上である。
一方で、MFR(A)が高すぎると、成形が不安定になりやすく、均一なシートを得ることが困難となるため、MFRは好ましくは8g/10分以下である。
ここで、MFRは、JIS K7210に準拠して測定する値である。
(A−iii)温度−損失正接(tanδ)曲線ピーク
本発明に用いられるプロピレン系樹脂組成物(A)は、固体粘弾性測定(DMA)により得られる温度−損失正接(tanδ)曲線において、−60〜20℃の範囲において観測されるガラス転移を表すtanδ曲線のピークが0℃以下に単一のピークを示すことが必要である。
プロピレン系樹脂組成物(A)が相分離構造を取る場合には、プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体成分(A1)に含まれる非晶部のガラス転移温度とプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A2)に含まれる非晶部のガラス転移温度が各々異なるため、ピークは複数となる。この場合には、透明性が顕著に悪化するという問題が生じる。
通常、成分(A2)におけるガラス転移温度は、−60〜20℃の範囲において観測され、相分離構造を取っているかどうかは、本範囲における固体粘弾性測定により得られるtanδ曲線において判別可能であり、シートの透明性を左右する相分離構造の回避は、0℃以下に単一のピークを有することによりもたらされる。
ここで、固体粘弾性測定(DMA)とは、具体的には、短冊状の試料片に特定周波数の正弦歪みを与え、発生する応力を検知することで行う。周波数は1Hzを用い、測定温度は−60℃から段階状に昇温し、サンプルが融解して測定不能になるまで行う。また、歪みの大きさは0.1〜0.5%程度が推奨される。得られた応力から、公知の方法によって貯蔵弾性率G’と損失弾性率G”を求め、これの比で定義される損失正接(=損失弾性率/貯蔵弾性率)を温度に対してプロットすると、0℃以下の温度領域で鋭いピークを示す。一般に0℃以下でのtanδ曲線のピークは非晶部のガラス転移を観測するものであり、本発明では、本ピーク温度をガラス転移温度Tg(℃)として定義する。
(1−2)中間層(1)におけるプロピレン系樹脂組成物(A)の割合
プロピレン系樹脂組成物(A)の中間層(1)に占める割合は、プロピレン系樹脂組成物(A)とエチレン−α−オレフィン共重合体(B)の合計量100wt%に対して、通常60〜90wt%の範囲であり、好ましくは65〜85wt%である。
プロピレン系樹脂組成物(A)の含有量が少なすぎると、良好な柔軟性、透明性が得られにくく、一方で、プロピレン系樹脂組成物(A)の含有量が多くなりすぎると、ヒートシール等の2次加工時の薄肉化がより顕著に発生する恐れがある。
(2)エチレン−α−オレフィン共重合体(B)
(2−1)エチレン−α−オレフィン共重合体(B)の特性
本発明のプロピレン系樹脂多層シートの中間層(1)のプロピレン系樹脂組成物(X)の一成分として用いられるエチレン−α−オレフィン共重合体(B)(以下、成分(B)ということもある。)は、エチレンと、好ましくは炭素数3〜20の、α−オレフィンを共重合して得られる共重合体であって、α−オレフィンとしては、炭素数3〜20のもの、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ヘプテン等を好ましく例示できる。エチレン−α−オレフィン共重合体(B)は、プロピレン系樹脂組成物(X)の透明性、柔軟性を向上させる働きをする成分であって、下記する(B−i)〜(B−ii)の条件を満たすことが必要である。
本発明のプロピレン系樹脂多層シートには、柔軟性、透明性が要求される。透明性については、エチレン−α−オレフィン共重合体(B)の屈折率がプロピレン系樹脂組成物(A)と大きく異なる場合には、得られるシートの透明性が悪化するため、屈折率を合わせることも重要である。屈折率は、密度によって制御可能であり、本発明において要求される透明性を得るには、密度を特定の範囲にすることが重要となる。
また、プロピレン系樹脂組成物(A)の更なる耐低温衝撃性を強化するためにエチレン−α−オレフィン共重合体(B)の添加が必要である。
(B−i)密度
本発明に用いられるエチレン−α−オレフィン共重合体(B)は、密度が0.860〜0.910g/cmの範囲にあることが必要である。
密度が低くなりすぎると、屈折率差が大きくなり透明性が悪化するため、0.860g/cm未満の場合には、本発明に必要な透明性を確保することが出来ない。
一方、密度が高くなりすぎると、結晶性が高くなることで柔軟性が不足するため、0.910g/cm以下であることが必要で、好ましくは0.905g/cm以下、より好ましくは0.900g/cm以下である。
ここで、密度は、JIS K7112に準拠して測定する値である。
(B−ii)エチレン−α−オレフィン共重合体(B)のメルトフローレートMFR(B)
本発明の中間層(1)は、成形性を確保するために適度な流動性を持っていることが必要である。
したがって、エチレン−α−オレフィン共重合体(B)のメルトフローレートMFR(190℃、2.16kg)(以下、MFR(B)ということもある。)が低くすぎると、流動性が不足し、分散不良が生じたりすることで透明性の低下を生じる。そこで、MFR(B)は、0.1g/10分以上であることが必要であり、好ましくは0.5g/10分以上、より好ましくは1.5g/10分以上、特には2g/10分以上である。
一方で、MFR(B)が高すぎると成形が不安定で膜厚変動が生じる。そこで、MFR(B)は、20g/10分以下、10g/10分以下が好ましく、9g/10分以下が特に好ましい。
ここで、MFRは、JIS K7210に準拠して測定する値である。
(2−2)エチレン−α−オレフィン共重合体(B)の製造方法
本発明に用いられるエチレン−α−オレフィン共重合体(B)は、プロピレン系樹脂組成物(A)との屈折率差を小さくするために、密度を低くすることが必要であり、さらに、ベタツキやブリードアウトを抑制するためには結晶性及び分子量の分布が狭いことが望ましい。そこで、エチレン−α−オレフィン共重合体(B)の製造には結晶性及び分子量分布の狭くできるメタロセン系触媒を用いることが望ましい。
以下にメタロセン触媒、重合方法について説明する。
(i)メタロセン系触媒
メタロセン触媒としては、エチレン−α−オレフィン共重合体の重合に用いられる公知の各種触媒を用いることが出来る。
具体的には、特開昭58−19309号、特開昭59−95292号、特開昭60−35006号、特開平3−163088号の各公報などに記載されているメタロセン系触媒を例示できる。
(ii)重合方法
具体的な重合方法としては、これらの触媒の存在下でのスラリー法、気相流動床法や溶液法、あるいは圧力が200kg/cm以上、重合温度が100℃以上での高圧バルク重合法などが挙げられる。好ましい製造法としては高圧バルク重合が挙げられる。
なお、エチレン−α−オレフィン共重合体(B)は、メタロセン系ポリエチレンとして市販されているものの中から適宜選択し使用することもできる。市販品としては、デュポンダウ社製商品名「アフィニティー(AFFINITY)」及び「エンゲージ(ENGAGE)」、日本ポリエチレン社製商品名「カーネル(KERNEL)」、エクソンモービル社製商品名「エグザクト(EXACT)」などが挙げられる。これらの使用において、本発明の要件である密度とMFRを満足するグレードを適宜選択すればよい。
(2−3)中間層構成におけるエチレン−α−オレフィン共重合体(B)の割合
エチレン−α−オレフィン共重合体(B)の中間層構成中に占める割合は、プロピレン系樹脂組成物(A)とエチレン−α−オレフィン共重合体(B)の合計量100wt%に対して、通常10〜40wt%の範囲である。
エチレン−α−オレフィン共重合体(B)の含有量が少なすぎると、耐低温衝撃性の付与が不十分であり、エチレン−α−オレフィン共重合体(B)の含有量が多くなりすぎると、シートの厚みムラを生じ、良好な外観のシートを得ることができない。
そこで、エチレン−α−オレフィン共重合体(B)が中間層構成中に占める割合は、10〜40wt%の範囲にあることが好ましく、10wt%未満の場合には、柔軟性付与が不十分となりやすく、40wt%を超える場合には成形性が不足しやすい。エチレン−α−オレフィン共重合体(B)のより好ましい含有量は、プロピレン系樹脂組成物(A)とエチレン−α−オレフィン共重合体(B)の合計量100wt%に対して、15〜35wt%である。
(3)プロピレン系樹脂(C)
(3−1)プロピレン系樹脂(C)の特性
本発明の中間層のプロピレン系樹脂組成物(X)の一成分として好ましく用いられるプロピレン系樹脂(C)は、成形性、外観不良、薄肉化抑制成分として用いられる。
中間層のプロピレン系樹脂組成物(X)の主成分として用いられるプロピレン系樹脂組成物(A)は、積層シートに高い柔軟性と透明性を付与させるのに極めて有効であるが、そのうちのプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体成分(A1)は比較的低融点の樹脂であるため、高結晶成分が少なく、ヒートシール時の薄肉化等の問題を有している。特にメタロセン触媒を用いて得られるものはシャープな結晶性分布であるため、ことのほか顕著である。
そこで、プロピレン系樹脂組成物(A)の結晶性分布を拡げ、相対的に高結晶成分を増やすそうとすると、必然的に低結晶成分も増し、結果として、それが積層シート表面へのブリードアウトによるべたつき、外観不良といった問題が生じさせるため、透明性が要求される用途には不向きとなる。
高結晶成分の少ないプロピレン系樹脂組成物(A)に対し、プロピレン系樹脂(C)を特定量添加することにより、低結晶成分および低分子量成分の増加なしで、高結晶成分および高分子量成分を増加させることができ、その結果として、ブリードアウトなどの外観不良を起こさずに、厚み変動や界面荒れなどの外観不良、ヒートシール時の薄肉化を抑制する事が可能となる。
プロピレン系樹脂(C)は、以下の(C−i)〜(C−ii)の条件を満たすプロピレン系樹脂であり、好ましくはプロピレン系(共)重合体成分(C1)とプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(C2)からなるプロピレン系樹脂組成物である。
(C−i)融解ピーク温度Tm(C)
プロピレン系樹脂(C)として好ましいのは、その融解ピーク温度(Tm(C))が、前記プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体成分(A1)の前記融解ピーク温度(Tm(A1))より6℃以上高温であるプロピレン系樹脂である。融解ピーク温度を6℃以上高くすることにより、得られる多層シートに、ブリードアウトなどの外観不良を起こさずに、ヒートシール時の薄肉化を抑制する機能を付与させることができる。Tm(C)は、Tm(A1)より、10℃以上、特には20℃以上高いことがさらに好ましい。
成分(C)の具体的な融解ピーク温度Tm(C)の範囲としては、好ましくは150〜170℃の範囲にあり、より好ましくは155〜167℃である。Tm(C)が150℃未満であると高結晶成分が不足し、十分な流動性低下できず、薄肉化抑制効果が得られない恐れがある。Tm(C)が170℃を超えるものは工業的に製造することは難しい。より好ましいTm(C)は、155〜165℃である。
(C−ii)メルトフローレートMFR(C)
また、プロピレン系樹脂(C)は、成形性を確保するために適度な流動性を有することが重要であり、流動性の尺度であるメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg荷重)(以下、MFR(C)ということもある。)が、0.5〜30g/10分の範囲にあることが必要であり、好ましい上限は15g/10分、より好ましくは12g/10分、特に好ましいMFRの範囲としては2.5〜12g/10分である。
MFR(C)が0.5g/10分未満の場合には、分散が悪化し、ゲルやフィッシュアイと呼ばれる外観不良を引き起こしやすい。一方、30g/10分を超える場合には、柔軟性の低下といった物性上の問題を生じやすい。
ここで、MFRは、JIS K7210に準拠して測定する値である。
(3−2)プロピレン系(共)重合体成分(C1)とプロピレン−エチレンランダム共重合体(C2)からなる組成物
プロピレン系樹脂(C)は、下記(C1−i)の条件を満たすプロピレン系(共)重合体成分(C1)と下記(C2−i)の条件を満たすプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(C2)からなる組成物であることがより好ましく、加えて下記(C−iii)の条件を満たすプロピレン系樹脂(C)であることが好ましい。
ここで、プロピレン系(共)重合体成分(C1)は、ポリプロピレン系成分であり、高結晶成分である。プロピレン系(共)重合体成分(C1)(以下、成分(C1)ということもある。)は、プロピレン系樹脂組成物(A)よりも融解ピーク温度が高く、プロピレン系樹脂組成物(A)が融解し、溶融流動を開始する温度では、結晶状態(固体状態)にあり、プロピレン系樹脂組成物(A)の溶融流動を抑制させる作用を有しているため、ヒートシール時の薄肉化を抑制するのに有効な成分である。従って、プロピレン系(共)重合体成分(C1)は、プロピレン系樹脂組成物(A)よりも結晶性が高い共重合体からなるポリプロピレンもしくはプロピレン−エチレン共重合体であることが必要である。しかしながら、プロピレン系(共)重合体成分(C1)の添加により中間層全体の結晶化度が高くなり、その結果、柔軟性が損なわれてしまう。そこで、プロピレン−エチレンランダム共重合体であり、低結晶成分であるプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(C2)(以下、成分(C2)ということもある。)を添加することによって、柔軟性を付与することが積層シート全体の柔軟化に効果的である。つまり、プロピレン−エチレンランダム共重合体成分(C2)は、高結晶成分であるプロピレン系(共)重合体成分(C1)添加による高剛性化を抑制させるのに有効な成分である。
(C1−i)プロピレン系樹脂(C)中の成分(C1)および成分(C2)の比率
プロピレン系樹脂(C)は、プロピレン系(共)重合体成分(C1)の成分比率(以下、W(C1)ということもある。)を40〜70wt%、エチレン−プロピレン共重合体成分(C2)の成分比率(以下、W(C2)ということもある。)を30〜60wt%からなる混合物であっても良いが、エチレン−プロピレン共重合体成分(C2)を均一に細かく分散させる点において、多段重合によって得られるものが好ましい。
エチレン−プロピレン共重合体成分(C2)は、低結晶成分であるため、W(C2)が多すぎると、薄肉化抑制効果が得られにくく、W(C2)が少なすぎると柔軟性が損なわれてしまう。ここで、W(C1)、W(C2)は、マテリアルバランスから求めることが出来る。
(C2−i)エチレン含有量(E[C2])
プロピレン−エチレンランダム共重合体成分(C2)は、高結晶成分であるプロピレン系(共)重合体成分(C1)添加による高剛性化を最小限に抑えるために必要な柔軟性付与成分である。そこで、プロピレン−エチレンランダム共重合体成分(C2)は、エチレン含有量(以下、E[C2]ということもある。)で制御されるため、エチレン含有量E[C2]を15〜40wt%にすることが好ましい。
エチレン含有量E[C2]が15wt%未満では、プロピレンと相溶領域であるため少量添加での十分な柔軟性付与効果が得られにくいといった問題が起こりやすく、エチレン含有量が40wt%を超えると、エチレン含有量E[C2]が多くなりすぎ、中間層(1)全体の透明性の悪化が生じやすい。
ここで、E[C2]は、前述の13C−NMRスペクトル法により求める値である。
(C−iii)成分(C)中の成分(C1)と成分(C2)の極限粘度比
プロピレン系樹脂(C)中におけるプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(C2)の135℃のテトラリン中で測定した極限粘度[η]C2(以下、[η]C2ということもある。)は、1.7〜6.5dl/g、好ましくは1.7〜4.0dl/gであり、且つ、同一条件で測定したプロピレン系(共)重合体成分(C1)の極限粘度[η]C1(以下、[η]C1ということもある。)との極限粘度比[η]C2/[η]C1は、0.6〜1.2、特に0.6〜1.1の範囲にあることが好ましい。
[η]C1は、特にシートの成形性などの加工特性に影響し、[η]C2/[η]C1はプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(C2)のプロピレン系(共)重合体成分(C1)中への分散性に影響する。[η]C1が大きすぎると、シートの成形性が悪化しやすく、生産上問題となる。一方[η]C2が小さすぎると、十分な柔軟性が得られにくく、[η]C2が大きすぎると透明性が悪化しやすい。
なお、成分(C1)および成分(C2)を連続的に製造して成分(C)を得る場合、成分(C)中の[η]C2は、直接測定できないため、直接測定可能な[η]C1と成分(C)の極限粘度[η]C(以下、[η]Cということもある。)、ならびにW(C2)から下記式により求める。
[η]C2=
{[η]C−(1−W(C2)/100)[η]C1}/(W(C2)/100)
ここで、連続的に製造するとは、後述する第1段階で成分(C1)を製造し(第1工程)、ついで第2段階で成分(C2)を連続的に製造する(第2工程)ことを意味する。
また、本発明で用いるプロピレン系樹脂(C)において、W(C1)とW(C2)との重量比(W(C2)/W(C1))と前記した量成分の極限粘度比([η]C2/[η]C1)との積([η]C2/[η]C1)×(W(C1)/W(C2))が0.2〜4.5、好ましくは0.6〜4.0の範囲にあることが好ましい。
該重量比と該極限粘度比との積は、成分(C1)中に分散している成分(C2)の分散状態を示し、上記範囲内にあることは、成分(C2)のドメインが成形加工時に流れ方向にドメイン単独で延伸した状態で存在するか、もしくは他のドメインと少なくとも1箇所で連結しているという特定分散構造を示すための必須条件であり、その値が上記の数値範囲内であると得られるシートの透明性、柔軟性が良好となるので好ましい。
(3−3)プロピレン系樹脂(C)の製造方法
プロピレン系樹脂(C)は、上記の諸特性を満足すればいかなる方法で製造しても良い。プロピレン系(共)重合体(C1)とプロピレン−エチレンランダム共重合体(C2)から組成物を製造する場合には、別々に製造されたプロピレン系(共)重合体(C1)とプロピレン−エチレンランダム共重合体(C2)を混合装置を用いてプロピレン系樹脂(C)を製造してもよく、また、第1工程でプロピレン系(共)重合体成分(C1)を製造し、引き続き第2工程でプロピレン系(共)重合体成分(C1)の存在下にプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(C2)を製造して、プロピレン系樹脂(C)を連続的に製造しても良い。
具体的な製造方法としては、特開2006−35516号公報、特開2001−172454号公報に記載されている製造方法を好ましく例示でき、ここでこれらを言及したことで同公報の全内容が本明細書に取り込まれたものとする。
なお、プロピレン系樹脂(C)は市販されているものの中から適宜選択し、使用することもできる。市販品としては、日本ポリプロ社製商品名「ノバテックPP(NOVATECPP)」、日本ポリプロ社製商品名「ニューコン(NEWCON)」、三菱化学社製商品名「ゼラス(ZELAS)」などが挙げられる。これらの使用において本発明での条件である融解ピーク温度、MFR、極限粘度比を満足するグレードを適宜選択すればよい。
(3−4)中間層成分におけるプロピレン系樹脂(C)の割合
プロピレン系樹脂(C)が中間層(1)中に占める割合は、前記したプロピレン系樹脂組成物(A)とエチレン−α−オレフィン共重合体(B)とプロピレン系樹脂(C)の合計100wt%に対して、1〜25wt%の範囲である。プロピレン系樹脂(C)を構成するプロピレン系(共)重合体成分(C1)は、成分(A)よりも融解ピーク温度が高いため、成分(A)が融解する温度でも結晶状態を保つことで、成分(A)が流動するのを抑え、成分(C)を構成するプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(C2)は、高結晶成分である成分(C1)添加で高剛性化するのを最小限に留めるための柔軟性付与効果を持つものである。
このとき、プロピレン系樹脂(C)の量が少なすぎると、高結晶性成分が不足し、十分な薄肉化抑制効果を得ることが出来にくいため、1wt%以上であることが必要であり、好ましくは5wt%以上である。逆に、プロピレン系樹脂(C)の量が多くなりすぎると、柔軟性や透明性等の物性低下が顕著になりやすく、本発明の樹脂組成物に要求される品質を満たすことが出来ないにくいため、25wt%以下であることが必要であり、好ましくは20wt%以下である。
(3−5)中間層における各成分(A)、(B)および(C)の割合
中間層を構成する成分において、プロピレン系樹脂組成物(A)の割合としては、成分(A)〜(C)の合計100wt%に対し、45〜89wt%であり、好ましくは45〜85wt%、より好ましくは50〜80wt%である。また、、エチレン−α−オレフィン共重合体(B)は、同様に成分(A)〜(C)の合計100wt%に対し、10〜30wt%であり、好ましくは15〜25wt%である。
2.外層(2)
本発明の多層シートの外層(2)は、プロピレン系樹脂組成物(Y)から形成される。
(1)プロピレン系樹脂組成物(Y)の特性
本発明のプロピレン系樹脂多層シートの外層(2)として用いられるプロピレン系樹脂組成物(Y)(以下、成分(Y)ということもある。)は、透明性や柔軟性及び、耐熱性、耐衝撃性が優れていることが必要である。多層シートとしての透明性、柔軟性を得るには中間層(1)だけではなく、外層(2)も柔軟化、透明化しなければならない。加えて、外層(2)は、耐熱性も有していなければならず、殺菌、滅菌などの加熱処理でも変形しないこと、2次加工であるヒートシールにおいてヒートシールバーにくっつかないことが必要である。また、加熱処理用包装袋に加工後の落袋試験においてシート基材にノッチ(破壊起点)が発生するのを抑制し、耐衝撃性も併せて必要である。
これらの要求を高い水準で満たすために、プロピレン系樹脂組成物(Y)は、以下の(D−i)の条件を満たすプロピレン系樹脂(D)(以下、成分(D)ということもある。)であることが必要である。
好ましくは、さらに、下記(D−ii)、(D1−i)の条件を満たすプロピレン系(共)重合体成分(D1)(以下、成分(D1)ということもある。)と下記(D2−i)〜(D2−iii)の条件を満たすプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(D2)(以下、成分(D2)ということもある。)からなる組成物であることが好ましい。
また、プロピレン系樹脂(D)は、それ自体で良好な耐衝撃性を有するが、さらに0〜5℃の低温での耐衝撃性を付与するために、下記のエチレン−α−オレフィン共重合体(D3)(以下、成分(D3)ということもある。)を添加してもよい。
(D−i)融解ピーク温度Tm(D)
プロピレン系樹脂(D)の融解ピーク温度Tm(D)は、135〜170℃の範囲にあることが必要であり、好ましくは136〜165℃、より好ましくは136〜163℃である。
Tm(D)が135℃未満であると耐熱性が不十分であり、例えば殺菌、滅菌などの加熱処理を行うと変形してしまう恐れがある。Tm(D)が170℃を超えるものは工業的に製造することは難しい。
(D−ii)メルトフローレートMFR(D)
プロピレン系樹脂(D)は、積層時の界面荒れ、表面荒れを発生せず、また厚み変動などを起こさない易成形性を得るために適度な流動性を有することが必要であり、流動性の尺度であるメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg荷重)(以下、MFR(D)ということもある。)は、4〜15g/10分の範囲にあることが好ましく、より好ましくは4.5〜10g/10分である。
MFR(D)が4g/10分未満の場合には界面荒れ、表面荒れを発生しやすく、外観良好なシートが得られない恐れがある。一方、MFR(D)が15g/10分を超える場合には厚み変動が起こりやすく、成形性に難がある場合が多い。
ここで、MFRは、JIS K7210に準拠して測定する値である。
(2)プロピレン系(共)重合体成分(D1)とプロピレン−エチレンランダム共重合体(D2)からなる組成物
プロピレン系樹脂(D)は、下記(D1−i)の条件を満たすプロピレン系(共)重合体成分(D1)と下記(D2−i)〜(D2−iii)の条件を満たすプロピレン−エチレンランダム共重合体(D2)からなる組成物であることが好ましい。
ここで、成分(D1)は、ポリプロピレン成分であり、高結晶成分である。成分(D1)は、成分(D2)よりも融解ピーク温度が高く、耐熱性を有する成分である。成分(D1)だけであると高剛性であるため、本発明多層シートの柔軟性が損なわれてしまう。そこで、プロピレン−エチレンランダム共重合体であり、低結晶成分である成分(D2)を添加することによって、柔軟性を付与することが、外層(2)の柔軟化に効果的である。つまり成分(D2)は、高結晶成分である成分(D1)によって剛性が高くなるのを抑制させるのに有効な成分である。
(D1−i)プロピレン系樹脂(D)中の成分(D1)の比率
プロピレン系樹脂(D)は、プロピレン系(共)重合体成分(D1)(以下、成分(D1)ということもある。)の成分比率(以下、W(D1)ということもある。)を40〜70wt%、プロピレン−エチレンランダム共重合体成分(D2)(以下、成分(D2)ということもある。)の成分比率(以下、W(D2)ということもある。)を30〜60wt%からなる混合物であっても良いが、成分(D2)を均一に細かく分散させる点において、多段重合によって得られるものが好ましい。
成分(D2)は、低結晶成分であるため、W(D2)が多すぎると、耐熱性が得られにくく、W(D2)が少なすぎると柔軟性付与が十分ではない。
ここで、W(D1)、W(D2)は、マテリアルバランスから求めることが出来る。
(D2−i)エチレン含有量(E[D2])
プロピレン−エチレンランダム共重合体成分(D2)は、高結晶成分である成分(D1)による高剛性化を最小限に抑えるために必要な柔軟性付与成分である。そこで、成分(D2)はエチレン含有量(以下、E[D2]ということもある。)で制御されるため、そのエチレン含有量を15〜40wt%にすることが好ましい。
エチレン含有量が15wt%未満では、プロピレンと相溶領域であるため十分な柔軟性付与効果が得られにくいといった問題が起こり、エチレン含有量が40wt%を超えると、エチレン含有量が多くなりすぎ、中間層(1)全体の透明性の悪化が顕著である。
ここで、E[D2]は、前述の13C−NMRスペクトル法により求める値である。
(D2−ii)極限粘度
プロピレン系樹脂(D)中におけるプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(D2)の135℃のテトラリン中で測定した極限粘度[η](以下、[η]D2ということもある。)は、1.7〜6.5dl/g、好ましくは1.7〜4.0dl/gであり、且つ、同一条件で測定した成分(D1)の極限粘度[η](以下、[η]D1ということもある。)との極限粘度比[η]D2/[η]D1は、0.6〜1.2、特に0.6〜1.1の範囲にあることが好ましい。
[η]D2は、特にシートの成形性などの加工特性に影響し、[η]D2/[η]D1は、成分(D2)の成分(D1)中への分散性に影響する。[η]D2が大きすぎると、シートの成形性が悪化し、生産上問題となる。一方[η]D2が小さすぎると、十分な柔軟性が得られず、[η]D2が大きすぎると透明性が悪化してしまう。
なお、成分(D1)および成分(D2)を連続的に製造してプロピレン系樹脂(D)を得る場合、プロピレン系樹脂(D)中の[η]D2は直接測定できないため、直接測定可能な[η]D1と成分(D)の極限粘度[η]D(以下、[η]Dということもある。)、ならびにW(D2)から下記式により求める。
[η]D2=
{[η]D−(1−W(D2)/100)×[η]D1}/(W(D2)/100)
ここで連続的に製造するとは、後述する第1段階で成分(D1)を製造し(第1工程)、ついで第2段階で成分(D2)を連続的に製造する(第2工程)ことを意味する。
(D2−iii)(D1)と(D2)との重量比と極限粘度比の積
また、本発明で用いるプロピレン系樹脂組成物(D)において、W(D1)とW(D2)との重量比(W(D2)/W(D1))と、前記した量成分の極限粘度比([η]D2/[η]D1)との積([η]D2/[η]D1)×(W(D1)/W(D2))は、好ましくは0.2〜4.5、より好ましくは0.6〜4.0の範囲にある。
該重量比と該極限粘度比との積は、成分(D1)中に分散している成分(D2)の分散状態を示し、上記範囲内にあることは、成分(D2)のドメインが成形加工時に流れ方向にドメイン単独で延伸した状態で存在するか、もしくは他のドメインと少なくとも1箇所で連結しているという特定分散構造を示すための条件であり、その値が上記の数値範囲内であると得られるシートの透明性、柔軟性が良好となる。
(3)プロピレン系樹脂組成物(D)の製造方法
本発明で用いるプロピレン系樹脂(D)は、上記の諸特性を満足すればいかなる方法で製造しても良い。プロピレン系(共)重合体成分(D1)とプロピレン−エチレンランダム共重合体(D2)からなる組成物を製造する場合には、別々に製造されたプロピレン系(共)重合体(D1)とプロピレン−エチレンランダム共重合体(D2)とから混合装置を用いてプロピレン系樹脂(D)を製造しても、プロピレン系(共)重合体成分(D1)を製造し、引き続きプロピレン系(共)重合体成分(D1)の存在下にプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(D2)を製造して、プロピレン系樹脂(D)を連続的に製造しても良い。具体的な製造方法としては、特開2006−35516号公報、特開2001−172454号公報に記載されている製造方法を好ましく例示でき、ここで言及したことで同公報の全内容が本明細書に取り込まれたものとする。
なお、プロピレン系樹脂組成物(D)は、市販されているものの中から適宜選択し、使用することもできる。市販品としては、日本ポリプロ社製商品名「ノバテックPP(NOVATECPP)」、日本ポリプロ社製商品名「ニューコン(NEWCON)」、三菱化学社製商品名「ゼラス(ZELAS)」などが挙げられる。これらの使用において本発明の条件である融解ピーク温度、MFR、極限粘度比を満足するグレードを適宜選択すればよい。
(4)エチレン−α−オレフィン共重合体(D3)
プロピレン系樹脂(D)は、それ自体で良好な耐衝撃性を有するが、さらに0〜5℃の低温での耐衝撃性を付与するために、下記のエチレン−α−オレフィン共重合体(D3)を添加してもよい。
本発明のプロピレン系樹脂多層シートの外層(2)に用いることのできるエチレン−α−オレフィン共重合体(D3)は、エチレンと好ましくは炭素数3〜20のα−オレフィンを共重合して得られる共重合体であって、α−オレフィンとしては、炭素数3〜20のもの、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ヘプテン等を好ましく例示できる。エチレン−α−オレフィン共重合体(D3)は、プロピレン系樹脂組成物(Y)の低温耐衝撃性を向上させる働きをする成分であって、以下の(D3−i)の条件を満たすことが好ましい。
(D3−i)密度
本発明に好適に用いることのできるエチレン−α−オレフィン共重合体(D3)は、密度が0.860〜0.910g/cmの範囲のものであることが好ましい。密度が低くなりすぎると、屈折率差が大きくなり透明性が悪化するため、0.860g/cm未満の場合には、本発明に必要な透明性を確保することが出来にくい。
一方、密度が高くなりすぎると、結晶性が高くなることで低温耐衝撃性付与が不十分たり、また、密度が低くなりすぎる場合と同様、密度が高くなりすぎても屈折率差は大きくなるため、透明性は悪化しやすい。0.905g/cm以下であることがより好ましく、特に好ましくは0.900g/cm以下である。
ここで、密度は、JIS K7112に準拠して測定する値である。
(5)エチレン−α−オレフィン共重合体(D3)の製造方法
本発明に好適に用いることのできるエチレン−α−オレフィン共重合体(D3)は、プロピレン系樹脂(D)との屈折率差を小さくするために、密度を合わせることが必要であり、さらに、ベタツキやブリードアウトを抑制するためには結晶性及び分子量分布が狭いことが望ましい。そこで、エチレン−α−オレフィン共重合体(D3)の製造には結晶性及び分子量分布の狭くできるメタロセン系触媒を用いることが望ましい。
メタロセン触媒としては、エチレン−α−オレフィン共重合体の重合に用いられる公知の各種触媒を用いることが出来、前記エチレン−α−オレフィン共重合体(B)において述べたものと同様のものが使用でき、また具体的な重合方法としては、これらの触媒の存在下でのスラリー法、気相流動床法や溶液法、あるいは圧力が200kg/cm以上、重合温度が100℃以上での高圧バルク重合法などが挙げられる。好ましい製造法としては高圧バルク重合が挙げられる。
なお、エチレン−α−オレフィン共重合体(D3)は、メタロセン系ポリエチレンとして市販されているものの中から適宜選択し使用することもできる。市販品としては、デュポンダウ社製商品名「アフィニティー(AFFINITY)」及び「エンゲージ(ENGAGE)」、日本ポリエチレン社製商品名「カーネル(KERNEL)」、エクソンモービル社製商品名「エグザクト(EXACT)」などが挙げられる。
これらの使用において、本発明の条件である密度を満足するグレードを適宜選択すればよい。
(6)外層(2)におけるプロピレン系樹脂組成物(Y)中の成分割合
本発明に好適に用いることのできるエチレン−α−オレフィン共重合体(D3)を用いる場合、プロピレン系樹脂(D)の外層(2)中に占める割合は、80〜99wt%の範囲であることが好ましく、成分(D3)の外層(2)中に占める割合は1〜20wt%の範囲であることが好ましい。より好ましくは成分(D)の含有量が85〜95wt%、成分(D3)の含有量が5〜15wt%である。
成分(D)の含有量が80wt%未満、即ち成分(D3)の含有量が20wt%以上であると、耐熱性が不十分であり加熱処理工程において変形が生じる恐れがある。成分(D)の含有量が99wt%以上、即ち成分(D3)の含有量が1wt%未満であると、低温耐衝撃性付与効果が不十分である。
3.内層(3)
本発明の多層シートは、内層(3)を、外層(1)、中間層(2)、内層(3)の順で有する少なくとも3層からなる多層シートであり、この内層(3)は、下記のプロピレン系樹脂組成物(Z)から形成される。
(1)プロピレン系樹脂組成物(Z)
多層シートの内層(3)として用いられるプロピレン系樹脂組成物(Z)(以下、成分(Z)ということもある。)は、透明性や柔軟性及び、内面融着を防ぐ耐熱性を有している必要がある。加えて内層(3)は内容物と接するために内容物を汚染しないクリーン性と低温でヒートシール可能な易製袋性も必要である。
さらに、強固なヒートシール強度を得る必要があり、より柔軟性を得るためのプロピレン系樹脂組成物(G)(以下、成分(G)ということもある。)、エチレン−α−オレフィン共重合体(H)(以下、成分(H)ということもある。)およびプロピレン系樹脂(I)(以下、成分(I)ということもある。)からなるプロピレン系樹脂組成物(Z)(以下、成分(Z)ということもある。)を用いる。
内層(3)のプロピレン系樹脂組成物(Z)は、プロピレン系樹脂組成物(G)、エチレン−α−オレフィン共重合体(H)およびプロピレン系樹脂(I)からなる組成物であり、より柔軟なプロピレン系樹脂多層シートを得ることができる。
(2−1)プロピレン系樹脂組成物(G)
プロピレン系樹脂組成物(G)は、透明性や、柔軟性、及び、耐衝撃性が高いことに加え、過熱工程で内面融着を発生しない耐熱性と易製袋性を得るための低温ヒートシール性が必要である。これらの要求を高い水準で満たすために、プロピレン系樹脂組成物(G)は、以下の(G−i)〜(G−ii)の条件を満たすことが必要である。
(G−i)
プロピレン系樹脂組成物(G)が、下記条件(G1−i)を満たすプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体(G1)30〜70wt%、下記条件(G2−i)〜(G2−ii)を満たすプロピレン−エチレンランダム共重合体(G2)30〜70wt%を、重合ブレンド法を除く方法で混合して得られたものである。
(G−ii)
プロピレン系樹脂組成物(G)のメルトフローレート(MFR(G):230℃、2.16kg)が、0.5〜20g/10分の範囲である。
(G1−i)
プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体(G1)の融解ピーク温度Tm(G1)が、125〜145℃の範囲である。
(G2−i)
プロピレン−エチレンランダム共重合体(G2)のエチレン含有量E(G2)が、7〜17wt%の範囲である。
(G2−ii)
プロピレン−エチレンランダム共重合体(G2)は、メタロセン系触媒を用いて得られる。
プロピレン系樹脂組成物(G)に求められる条件を以下の(i)〜(iv)で詳細に説明する。
(i)プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体(G1)の融解ピーク温度Tm(G1)
プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体(G1)は、プロピレン系樹脂組成物(G)において結晶性を決定する成分である。成分(G)の耐熱性を向上させるためには、プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体(G1)の融解ピーク温度Tm(G1)(以下、Tm(G1)ということもある。)が高いことが必要である反面、Tm(G1)が高すぎるとヒートシール温度が高温化し、易製袋性が損なわれる。また、Tm(G1)が低すぎると耐熱性が悪化し、滅菌工程などの加熱処理時に内面融着を起こしてしまう。そのため、Tm(G1)は、125〜145℃の範囲にあることが必要であり、好ましくは125〜138℃、より好ましくは128〜135℃以下である。
ここで、融解ピーク温度Tmの測定法は、プロピレン系樹脂組成物(A)の説明において前述した通りである。
プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体(G1)は、好ましくはメタロセン触媒を用いて製造される。α−オレフィンとしては、炭素数2、4〜20のもの、例えば、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ヘプテン等を好ましく例示でき、エチレンが特に好ましい。
(ii)プロピレン系樹脂組成物(G)中に占めるプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体(G1)の割合
プロピレン系樹脂組成物(G)中に占める成分(G1)の割合W(G1)は、プロピレン系樹脂組成物(G)に耐熱性を付与する成分であるが、W(G1)が多過ぎると柔軟性や耐衝撃性及び透明性を充分に発揮することができにくい。そこで成分(G1)の割合は、70wt%以下であることが必要であり、好ましくは60wt%以下である。
一方、成分(G1)の割合が少なくなり過ぎると、Tm(G1)が十分であっても耐熱性が低下し、滅菌、殺菌工程において内面融着を発生する恐れがあるため、成分(G1)の割合は30wt%以上であることが必要で、好ましくは50wt%以上である。
(iii)プロピレン−エチレンランダム共重合体(G2)中のエチレン含有量E[G2]
プロピレン−エチレンランダム共重合体(G2)は、成分(G1)の柔軟性と耐衝撃性及び透明性を向上させるのに必要な成分である。一般に、プロピレン−エチレンランダム共重合体においてエチレン含有量が増加することで結晶性は低下し、柔軟性向上効果は大きくなるため、プロピレン−エチレンランダム共重合体(G2)中のエチレン含有量E[G2](以下、E[G2]ということもある。)は、7wt%以上であり、好ましくは8wt%以上である。E[G2]が7wt未満の場合には十分な柔軟性を発揮することが出来にくく、より好ましくは10wt%以上である。
一方、成分(G2)の結晶性を下げるためにE[G2]を増加させ過ぎると、成分(G1)と成分(G2)の相溶性が低下し、成分(G2)が成分(G1)と相溶化せずにドメインを形成するようになる。このような相分離構造において、マトリクスとドメインの屈折率が異なると透明性が急激に低下してしまう。そこで本発明に用いられるプロピレン系樹脂組成物(G)中の成分(G2)のE[G2]は、17wt%以下であり、好ましくは14wt%以下、特に好ましくは12wt%以下である。
(iv)プロピレン系樹脂組成物(G)中に占めるプロピレン−α−オレフィン共重合体(G2)の割合
プロピレン系樹脂組成物(G)中に占める成分(G2)の割合W(G2)は、多過ぎると耐熱性が低下するため、W(G2)は、70wt%以下に抑えることが必要であり、好ましくは50wt%以下である。
一方、W(G2)が少なくなり過ぎると柔軟性と耐衝撃性の改良効果が得られないため、W(G2)は、30wt%以上であることが必要で、好ましくは40wt%以上である。
(2−2)プロピレン系樹脂組成物(G)の特性
・温度−損失正接(tanδ)曲線ピーク(G−ii)
本発明に用いられる成分(G)は、固体粘弾性測定(DMA)により得られる温度−損失正接(tanδ)曲線において、−60〜20℃の範囲において観測されるガラス転移を表すtanδ曲線のピークが0℃以下に単一のピークを示すことが好ましい。固体粘弾性測定の方法は、前記成分(A)のところで説明したのと同様に定義される。
成分(G)が相分離構造を取る場合には、成分(G1)に含まれる非晶部のガラス転移温度と成分(G2)に含まれる非晶部のガラス転移温度が各々異なるため、ピークは複数となる。この場合には、透明性が顕著に悪化するという問題が生じる。
通常、プロピレン−エチレンランダム共重合体におけるガラス転移温度は、−60〜20℃の範囲において観測され、相分離構造を取っているかどうかは、本範囲における固体粘弾性測定により得られるtanδ曲線において判別可能であり、シートの透明性を左右する相分離構造の回避は、0℃以下に単一のピークを有することによりもたらされる。
(2−3)プロピレン系樹脂組成物(G)の製造方法
本発明に用いられるプロピレン系樹脂組成物(G)は、別々に製造されたプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体(G1)とプロピレン−エチレンランダム共重合体(G2)を、重合ブレンド法によらず、混合装置を用いて製造され、例えば、リボンブレンダー、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、ドラムタンブラー、単軸又は二軸スクリュー押出機、コニーダー等を使用して溶融混練する方法等が挙げられる。
プロピレン系樹脂組成物(Z)におけるプロピレン系樹脂組成物(G)の割合
プロピレン系樹脂組成物(G)のプロピレン系樹脂組成物(Z)に占める割合は、成分(G)と成分(H)の合計100wt%に対し、60〜90wt%の範囲であることが好ましく、より好ましくは65〜85wt%である。
成分(G)の含有量が少なすぎると、良好な柔軟性、透明性が得られにくく、成分(G)の含有量が多くなりすぎると、より好ましい耐衝撃性と耐熱性が得られない恐れがある。
(2)エチレン−α−オレフィン共重合体(H)
プロピレン系樹脂組成物(Z)に含有されるエチレン−α−オレフィン共重合体(H)は、エチレンと、好ましくは炭素数3〜20のα−オレフィンを共重合して得られる共重合体であって、α−オレフィンとしては、炭素数3〜20のもの、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ヘプテン等を好ましく例示できる。エチレン−α−オレフィン共重合体(H)は、プロピレン系樹脂組成物(Z)の透明性、柔軟性を向上させる働きをする成分であって、以下の(H−i)の条件を満たすことが好ましい。
本発明に用いられるプロピレン系樹脂組成物(Z)には、柔軟性、透明性が要求される。透明性については、エチレン−α−オレフィン共重合体(H)の屈折率が成分(G)と大きく異なる場合には、得られるシートの透明性が悪化するため、屈折率をあわせることも重要である。屈折率は、密度によって制御可能であり、本発明において要求される透明性を得るには、密度を特定の範囲にすることが重要となる。
また、プロピレン系樹脂組成物(G)は、耐低温衝撃性を更に強化するために、エチレン−α−オレフィン共重合体(H)の添加が必要である。
(H−i)密度
エチレン−α−オレフィン共重合体(H)は、密度が0.860〜0.910g/cmの範囲にあるものを使用する。
密度が低くなりすぎると、屈折率差が大きくなり透明性が悪化するため、0.860g/cm未満の場合には、本発明に必要な透明性を確保することが出来にくい。一方、密度が高くなりすぎると、結晶性が高くなることで柔軟性が不足するため0.910g/cm以下であることが必要で、好ましくは0.905g/cm以下、より好ましくは0.900g/cm以下である。
ここで、密度は、JIS K7112に準拠して測定する値である。
エチレン−α−オレフィン共重合体(H)の製造方法
本発明に用いられるエチレン−α−オレフィン共重合体(H)は、プロピレン系樹脂組成物(G)との屈折率差を小さくするために、密度を低くすることが必要であり、さらに、ベタツキやブリードアウトを抑制するためには結晶性及び分子量分布が狭いことが望ましい。そこで、エチレン−α−オレフィン共重合体(H)の製造には結晶性及び分子量分布の狭くできるメタロセン系触媒を用いることが望ましい。
メタロセン触媒としては、エチレン−α−オレフィン共重合体の重合に用いられる公知の各種メタロセン系触媒を用いることが出来、また具体的な重合方法としては、これらの触媒の存在下でのスラリー法、気相流動床法や溶液法、あるいは圧力が200kg/cm以上、重合温度が100℃以上での高圧バルク重合法などが挙げられる。好ましい製造法としては高圧バルク重合が挙げられる。
なお、エチレン−α−オレフィン共重合体(H)は、メタロセン系ポリエチレンとして市販されているものの中から適宜選択し使用することもできる。市販品としては、デュポンダウ社製商品名「アフィニティー(AFFINITY)」及び「エンゲージ(ENGAGE)」、日本ポリエチレン社製商品名「カーネル(KERNEL)」、エクソンモービル社製商品名「エグザクト(EXACT)」などが挙げられる。
これらの使用において、本発明の条件である密度を満足するグレードを適宜選択すればよい。
プロピレン系樹脂組成物(Z)におけるエチレン−α−オレフィン共重合体(H)の割合
エチレン−α−オレフィン共重合体(H)のプロピレン系樹脂組成物(Z)中に占める割合は、プロピレン系樹脂組成物(G)とエチレン−α−オレフィン共重合体(H)の合計100wt%に対し、40〜10wt%の範囲であることが好ましく、より好ましくは、35〜15wt%である。
エチレン−α−オレフィン共重合体(H)の含有量が少なすぎると、耐低温衝撃性の付与が不十分であり、含有量が多くなりすぎると、シートの厚みムラを生じ、良好な外観のシートを得ることが難しい。そこで、成分(H)が成分(Z)中に占める割合は、成分(G)と成分(H)の合計100wt%に対し、35〜15wt%の範囲にあることが特に好ましく、10wt%未満の場合には、柔軟性付与が不十分となりやすく、40wt%を超える場合には成形性が不足するため、好ましくない。
(3)プロピレン系樹脂(I)
プロピレン系樹脂組成物(Z)に配合されるプロピレン系樹脂(I)は、滅菌工程などの加熱処理工程で発生する恐れのある内面融着を抑制するための成分として用いられる。
プロピレン系樹脂組成物(Z)において、主成分として用いられる上記プロピレン系樹脂組成物(G)は、積層シートに高い柔軟性と透明性を付与させるのに極めて有効であるが、好ましくはメタロセン系触媒により製造され結晶性分布が狭く、高結晶性成分が少ないことに起因する耐熱性に不安が残り、内面融着を発生する可能性が高い。
そこで、成分(G)の結晶性分布を拡げ、相対的に高結晶成分を増やすそうとすると、必然的に低結晶成分も増し、結果として、それが積層シート表面へのブリードアウトによるべたつき、外観不良といった問題が生じさせるため、透明性が要求される用途には不向きとなる。
高結晶成分および高分子量成分の少ない成分(G)に対し、プロピレン系樹脂(I)を特定量添加することにより、低結晶成分および低分子量成分の増加なしで、高結晶成分および高分子量成分を増加させることができ、その結果として、ブリードアウトなどの外観不良を起こさずに、厚み変動や界面荒れなどの外観不良を抑制する事が可能となるので好ましい。また高結晶成分の特定量の添加は結晶性分布を拡げることよりも、内面融着を抑制する耐熱性と低温ヒートシール性のバランスを調整しやすい。
したがって、プロピレン系樹脂(I)は、以下の(I−i)の特定融解ピーク温度を有するプロピレン系樹脂であることが必要であり、好ましくは後記するプロピレン系(共)重合体成分(I1)とプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(I2)からなるプロピレン系樹脂である。
(I−i)融解ピーク温度Tm(I)
プロピレン系樹脂(I)は、その融解ピーク温度(Tm(I))が、前記プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体成分(G1)の融解ピーク温度(Tm(G1))より6℃以上高温であることが必要である。融解ピーク温度を6℃以上高くすることにより、得られる多層シートに、ブリードアウトなどの外観不良を起こさずに、厚み変動や界面荒れなどの外観不良、ヒートシール時の薄肉化を抑制する機能を付与させることができる。Tm(I)は、Tm(G1)より、10℃以上、特には20℃以上高いことが好ましい。
プロピレン系樹脂(I)の具体的な融解ピーク温度Tm(I)としては、150〜170℃の範囲にあることが好ましく、より好ましくは155〜165℃である。
Tm(I)が150℃未満であると高結晶成分が不足し、十分な耐熱性を付与できにくく、Tm(I)が165℃を超えるものは工業的に製造することは難しい。
(I−ii)プロピレン系(共)重合体成分(I1)とプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(I2)からなるプロピレン系樹脂
プロピレン系樹脂(I)は、下記(I1−i)の条件を満たすプロピレン系(共)重合体成分(I1)と下記(I2−i)の条件を満たすプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(I2)からなるプロピレン系樹脂であることが好ましく、加えて下記(I−ii)の条件を満たすプロピレン系樹脂(I)であることが好ましい。
ここで、プロピレン系(共)重合体成分(I1)は、ポリプロピレン成分であり、高結晶成分である。成分(I1)は、前記プロピレン系樹脂組成物(成分(G))よりも融解ピーク温度が高く、成分(G)が融解し、溶融流動を開始する温度では、結晶状態(固体状態)にあり、成分(G)の溶融流動を抑制させる作用を有しているため、滅菌処理などの加熱工程での内面融着を抑制するのに有効な成分である。従って、成分(I1)は、成分(G)よりも結晶性が高い共重合体からなるポリプロピレンもしくはプロピレン−エチレン共重合体であることが必要である。しかしながら、成分(I1)の添加により内層(3)全体の結晶化度が高くなり、その結果、柔軟性が損なわれてしまう。そこで、プロピレン−エチレンランダム共重合体であり、低結晶成分であるプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(I2)(以下、成分(I2)ということもある。)を添加することによって、柔軟性を付与することが積層シート全体の柔軟化に効果的である。
エチレン−α−オレフィン共重合体(成分(H))も同様の効果を得るために添加するが、成分(H)が多すぎると成形性が悪化し、均一な厚みのシートを得るのが難しく、添加量には上限がある。成分(H)だけでは柔軟性を補えきれない場合、成分(I2)の添加が効果的である。つまり成分(I2)は高結晶成分である成分(I1)添加による高剛性化を抑制させるのに有効な成分である。
(I1−i)プロピレン系樹脂(I)中の成分(I1)および成分(I2)の比率
プロピレン系樹脂(I)は、プロピレン系(共)重合体成分(I1)の成分比率(以下、W(I1)ということもある。)を40〜70wt%、エチレン−プロピレン共重合体成分(I2)の成分比率(以下、W(I2)ということもある。)を30〜60wt%からなる混合物であっても良いが、成分(I2)を均一に細かく分散させる点において、多段重合によって得られるものが好ましい。
成分(I2)は、低結晶成分であるため、W(I2)が多すぎると、耐熱性補強効果が得られにくく、W(I2)が少なすぎると柔軟性補強効果が得られにくい。ここで、W(I1)、W(I2)は、マテリアルバランスから求めることが出来る。
(I2−i)エチレン含有量(E[I2])
成分(I2)は、高結晶成分である成分(I1)添加による高剛性化を最小限に抑えるために必要な柔軟性付与成分である。そこで、成分(I2)は、そのエチレン含有量(以下、E[I2]ということもある。)で制御されるため、エチレン含有量E[I2]を15〜40wt%にすることが好ましい。
エチレン含有量が15wt%未満では、ポリプロピレンと相溶領域であるため少量添加での十分な柔軟性付与効果が得られにくいといった問題が起きやすく、エチレン含有量が40wt%を超えると、エチレン含有量が多くなりすぎ内層全体の透明性の悪化しやすい。
(I−ii)プロピレン系樹脂(I)中の成分(I1)と成分(I2)の極限粘度比
プロピレン系樹脂(I)中における成分(I2)の135℃のテトラリン中で測定した極限粘度[η](以下、[η]I2ということもある。)は、好ましくは1.7〜6.5dl/g、より好ましくは1.7〜4.0dl/gであり、且つ、同一条件で測定した成分(I1)の極限粘度[η](以下、[η]I1ということもある。)との極限粘度比[η]I2/[η]I1は、0.6〜1.2、特に0.6〜1.1の範囲にあることが好ましい。
[η]I1は、特にシートの成形性などの加工特性に影響し、[η]I2/[η]I1は成分(I2)の成分(I1)中への分散性に影響する。[η]I1が大きすぎると、シートの成形性が悪化し、生産上問題となりやすい。一方[η]I2が小さすぎると、十分な柔軟性が得られず、[η]I2が大きすぎると透明性が悪化してしまいやすい。
なお、成分(I1)および成分(I2)を連続的に製造してプロピレン系樹脂(I)を得る場合、プロピレン系樹脂(I)中の[η]I2は直接測定できないため、直接測定可能な[η]I1とプロピレン系樹脂(I)の極限粘度[η]I(以下、[η]Iということもある。)、ならびにW(I2)から下記式により求める。
[η]I2=
{[η]I−(1−W(I2)/100)×[η]I1}/(W(I2)/100)
ここで、連続的に製造するとは、後述する第一段階で成分(I1)を製造し(第1工程)、ついで第2段階で成分(I2)を連続的に製造する(第2工程)ことを意味する。
また、本発明で用いるプロピレン系樹脂(I)において、W(I1)とW(I2)との重量比(W(I2)/W(I1))と前記した量成分の極限粘度比([η]I2/[η]I1)との積([η]I2/[η]I1)×(W(I1)/W(I2))は、0.2〜4.5、より好ましくは0.6〜4.0の範囲にあることが好ましい。
該重量比と該極限粘度比との積は、成分(I1)中に分散している成分(I2)の分散状態を示し、上記範囲内にあることは、成分(I2)のドメインが成形加工時に流れ方向にドメイン単独で延伸した状態で存在するか、もしくは他のドメインと少なくとも1箇所で連結しているという特定分散構造を示すための必須条件であり、その値が上記の数値範囲内であると得られるシートの透明性、柔軟性が良好となる。
プロピレン系樹脂(I)の製造方法
本発明で用いるプロピレン系樹脂(I)は、上記の諸特性を満足すればいかなる方法で製造しても良い。プロピレン系(共)重合体(I1)とプロピレン−エチレンランダム共重合体(I2)からなる組成物を製造する場合には、別々に製造されたプロピレン系(共)重合体(I1)とプロピレン−エチレンランダム共重合体(I2)を混合装置を用いて製造してもよく、また、上述したように第1工程でプロピレン系(共)重合体成分(I1)を製造し、引き続き第2工程でプロピレン系(共)重合体成分(I1)の存在下にプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(I2)を製造して、プロピレン系樹脂(I)を連続的に製造しても良い。
なお、プロピレン系樹脂(I)は市販されているものの中から適宜選択し、使用することもできる。市販品としては、日本ポリプロ社製商品名「ノバテックPP(NOVATECPP)」、日本ポリプロ社製商品名「ニューコン(NEWCON)」、三菱化学社製商品名「ゼラス(ZELAS)」などが挙げられる。これらの使用において本発明の条件である融解ピーク温度、MFR、極限粘度比を満足するグレードを適宜選択すればよい。
(5)プロピレン系樹脂組成物(Z)における各成分の割合
プロピレン系樹脂(I)がプロピレン系樹脂組成物(Z)中に占める割合は、前記したプロピレン系樹脂組成物(G)とエチレン−α−オレフィン共重合体(H)とプロピレン系樹脂(I)の合計100wt%に対して、1〜25wt%の範囲である。
プロピレン系樹脂組成物(Z)において、成分(I)を含有する場合の成分(G)、成分(H)の割合は、成分(G)は、成分(G)、(H)および(I)の合計100wt%に対し、45〜89wt%であり、好ましくは45〜85wt%、より好ましくは50〜80wt%である。また、成分(H)は、同様に成分(G)〜(I)の合計100wt%に対し、10〜30wt%、好ましくは15〜25wt%である。
プロピレン系樹脂(I)を構成する成分(I1)は、成分(G)よりも融解ピーク温度が高いため、成分(G)が融解する温度でも結晶状態を保つことで、成分(G)が溶融・流動するのを抑える耐熱性付与効果を持たせ、成分(I)を構成する成分(I2)は、高結晶成分である成分(I1)添加で高剛性化するのを最小限に留めるための柔軟性付与効果を持つものである。
このとき、成分(I)の量が少なすぎると、高結晶性成分が不足し、十分な耐熱性付与効果を得ることが出来ないため、成分(G)、(H)および(I)の合計100wt%に対し、1wt%以上であることが必要であり、好ましくは5wt%以上である。逆に、成分(I)の量が多くなりすぎると、柔軟性や透明性等の物性低下が顕著になり、本発明の樹脂組成物に要求される品質を満たすことが出来ないため、25wt%以下であることが必要で、好ましくは20wt%以下である。
(5)プロピレン系樹脂組成物(Z)の特性
プロピレン系樹脂組成物(Z)のメルトフローレートMFR(Z)
また、プロピレン系樹脂組成物(Z)は、積層時の界面荒れ、表面荒れを発生せず、また厚み変動などを起こさない易成形性を得るために適度な流動性を有することが必要であり、流動性の尺度であるメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg荷重)(以下、MFR(Z)ということもある。)が、2〜15g/10分の範囲にあることが好ましく、より好ましくは2.5〜10g/10分である。
MFR(Z)が2g/10分未満の場合には、界面荒れ、表面荒れを発生しやすく、外観良好なシートが得られない恐れがある。一方、MFR(Z)が15g/10分を超える場合には、厚み変動が起こりやすく、成形性に難がある。
ここで、MFRは、JIS K7210に準拠して測定する値である。
内層(3)は内容物と接するために内容物を汚染しないクリーン性と低温でヒートシール可能な易製袋性も必要である。これらの要求を高い水準で満たすために、プロピレン系樹脂組成物(Z)は、温度昇温溶離分別法(TREF)で測定した0℃以下の可溶分(S0)が15wt%以下であるプロピレン系樹脂組成物であることが好ましい。
さらには、0℃以下の可溶分(S0)が14wt%以下であることが好ましく、より好ましくは12wt%以下であり、最も好ましくは12wt%以下である。0℃以下の可溶分(S0)が15wt%より多いと、低結晶成分が多く、内容物を汚染する恐れがあり、クリーン性が必要なレトルト用途、輸液バッグ用途としては不適当である。
0℃以下の可溶分(S0)は、具体的には次のように測定を行う。
試料を140℃でo−ジクロロベンゼン(0.5mg/mlBHT入り)に溶解し溶液とする。これを140℃のTREFカラムに導入した後に8℃/分の降温速度で100℃まで冷却し、引き続き4℃/分の降温速度で−15℃まで冷却し、60分間保持する。その後、溶媒である−15℃のo−ジクロロベンゼン(0.5mg/mlBHT入り)を1ml/分の流速でカラムに流し、TREFカラム中で−15℃のo−ジクロロベンゼンに溶解している成分を10分間溶出させ、次に昇温速度100℃/時間にてカラムを140℃までリニアに昇温し、溶出曲線を得る。
得られた溶出曲線から0℃までに溶出する成分の全量に対する割合S0(重量%)を算出する。用いるカラム、溶媒、温度等の条件は以下の通りである。
カラムサイズ:4.3mmφ×150mm
カラム充填材:100μm表面不活性処理ガラスビーズ
溶媒:オルトジクロロベンゼン
試料濃度:5mg/mL
試料注入量:0.1mL
溶媒流速:1mL/分
検出器:波長固定型赤外検出器 FOXBORO社製 MIRAN 1A
測定波長:3.42μm
4.その他成分(添加剤)
本発明のプロピレン系樹脂多層シートにおける中間層(1)、外層(2)、内層(3)に用いられる各プロピレン系樹脂組成物(X)、(Y)および(Z)は、多層シートとして好適に用いられるため、ブリードアウトなど本発明の効果を著しく損なわない範囲で任意の添加剤を配合する事が出来る。このような任意成分としては、通常のポリオレフィン樹脂材料に使用される酸化防止剤、結晶核剤、透明化剤、滑剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、防曇剤、中和剤、金属不活性剤、着色剤、分散剤、過酸化物、充填剤、蛍光増白剤等を挙げることが出来る。さらに本発明の効果を著しく損なわない範囲で、柔軟性を付与する成分としてエラストマーを配合することができる。
各種添加成分について、以下に詳しく述べる。
(1)酸化防止剤
酸化防止剤として、フェノール系酸化防止剤の具体例としては、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレート、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ペンタエリスリチル−テトラキス{3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート}、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、3,9−ビス[2−{3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌル酸などを挙げることができる。
燐系酸化防止剤の具体例としては、トリス(ミックスド、モノ及びジノニルフェニルホスファイト)、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル−ジ−トリデシル)ホスファイト、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ジ−トリデシルホスファイト−5−t−ブチルフェニル)ブタン、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4´−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチル−5−メチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイトなどを挙げることができる。
硫黄系酸化防止剤の具体例としては、ジ−ステアリル−チオ−ジ−プロピオネート、ジ−ミリスチル−チオ−ジ−プロピオネート、ペンタエリスリトール−テトラキス−(3−ラウリル−チオ−プロピオネート)などを挙げることができる。
これら酸化防止剤は、本目的の効果を損なわない範囲で、1種または2種以上組み合わせて使用することができる。
酸化防止剤の配合量は、各々の樹脂100重量部に対して0.01〜1.0重量部、好ましくは0.02〜0.5重量部、より好ましくは0.05〜0.1重量部、配合量が上記範囲未満では、熱安定性の効果が得られず、樹脂を製造する際に劣化が起こり、ヤケとなってフィッシュアイの原因となる。また、上記範囲を超えるとそれ自体が異物となってフィッシュアイの原因となり好ましくない。
(2)アンチブロッキング剤
アンチブロッキング剤としては、その平均粒子径が通常1〜7μm、好ましくは1〜5μm、さらに好ましくは、1〜4μmのものが使用される。平均粒子径が1μm未満では、得られるシートの滑り性、開口性が劣り好ましくない。一方、7μmを越えると、透明性、傷つき性が著しく劣り好ましくない。ここで平均粒子径は、コールターカウンター計測による値である。
アンチブロッキング剤の具体例として、たとえば無機系のものとしては、合成または天然のシリカ(二酸化珪素)、ケイ酸マグネシウム、アルミノシリケート、タルク、ゼオライト、硼酸アルミニウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、燐酸カルシウム等が使用される。
また、有機系のものとしては、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルシリルセスキオキサン(シリコーン)、ポリアミド、ポリテトラフルオロエチレン、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ベンゾグアナミン・ホルムアルデヒド(ユリア樹脂)、フェノール樹脂等を用いることができる。
特に合成シリカ、ポリメチルメタクリレートが分散性、透明性、耐ブロッキング性、傷つき性のバランスから好適である。
また、アンチブロッキング剤は表面処理されたものを用いてもよく、表面処理剤としては、界面活性剤、金属石鹸、アクリル酸、シュウ酸、クエン酸、酒石酸等の有機酸、高級アルコール、エステル、シリコーン、フッ素樹脂、シランカップリング剤、ヘキサメタリン酸ソーダ、ピロリン酸ソーダ、トリポリリン酸ソーダ、トリメタリン酸ソーダ等の縮合リン酸塩等を用いることができ、特に有機酸処理、なかでもクエン酸処理されたものが好適である。処理方法は特に限定されるものではなく、表面噴霧、浸漬等公知の方法を採用することができる。
アンチブロッキング剤はいかなる形状であってもよく、球状、角状、柱状、針状、板状、不定形状等任意の形状とすることができる。
これらアンチブロッキング剤は、本目的の効果を損なわない範囲で、1種または2種以上組み合わせて使用することができる。
アンチブロッキング剤を配合する場合の配合量は、樹脂100重量部に対して、通常0.01〜1.0重量部、好ましくは0.05〜0.7重量部、より好ましくは0.1〜0.5重量部である。配合量が上記範囲未満では、シートのアンチブロッキング性、滑り性、開口性が劣りやすくなる。上記範囲を超えるとシートの透明性を損ない、また、それ自体が異物となってフィッシュアイの原因となり好ましくない。
(3)スリップ剤
スリップ剤としては、モノアマイド類、置換アマイド類、ビスアマイド類等が挙げられ、1種又は2種以上組み合わせて使用することができる。
モノアマイド類の具体例としては、飽和脂肪酸モノアマイドとして、ラウリン酸アマイド、パルチミン酸アマイド、ステアリン酸アマイド、ベヘニン酸アマイド、ヒドロキシステアリン酸アマイド等が挙げられる。
不飽和脂肪酸モノアマイドとしては、オレイン酸アマイド、エルカ酸アマイド、リシノール酸アマイド等が挙げられる。
置換アマイド類の具体例としては、N−ステアリルステアリン酸アマイド、N−オレイルオレイン酸アマイド、N−ステアリルオレイン酸アマイド、N−オレイルステアリン酸アマイド、N−ステアリルエルカ酸アマイド、N−オレイルパルチミン酸アマイド等が挙げられる。
ビスアマイド類の具体例としては、飽和脂肪酸ビスアマイドとして、メチレンビスステアリン酸アマイド、エチレンビスカプリン酸アマイド、エチレンビスラウリン酸アマイド、エチレンビスステアリン酸アマイド、エチレンビスイソステアリン酸アマイド、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アマイド、エチレンビスベヘニン酸アマイド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アマイド、ヘキサメチレンビスベヘニン酸アマイド、ヘキサメチレンビスヒドロキシステアリン酸アマイド、N,N’−ジステアリルアジピン酸アマイド、N,N’−ジステアリルセパシン酸アマイドなどが挙げられる。
不飽和脂肪酸ビスアマイドとしては、エチレンビスオレイン酸アマイド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アマイド、N,N’−ジオレイルアジピン酸アマイド、N,N’−ジオレイルセパシン酸アマイドなどが挙げられる。
芳香族系ビスアマイドとしては、m−キシリレンビスステアリン酸アマイド、N,N’−ジステアリルイソフタル酸アマイドなどが挙げられる。
これらの中では、特に、脂肪酸アマイドのうち、オレイン酸アマイド、エルカ酸アマイド、ベヘニン酸アマイドが好適に使用される。
スリップ剤を配合する場合の配合量としては、樹脂100重量部に対して、0.01〜1.0重量部、好ましくは0.05〜0.7重量部、より好ましくは0.1〜0.4重量部である。上記範囲未満では開口性や滑り性が劣り易くなる。上記範囲を超えると、スリップ剤の浮き出しが過剰となり、シート表面にブリードし透明性が悪化する。
(4)核剤
核剤の具体例としては、2,2−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)燐酸ナトリウム、タルク、1,3,2,4−ジ(p−メチルベンジリデン)ソルビトールなどのソルビトール系化合物、ヒドロキシ−ジ(t−ブチル安息香酸)アルミニウム、2,2−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)燐酸と炭素数8〜20の脂肪族モノカルボン酸リチウム塩混合物((株)ADEKA製、商品名NA−21)等が挙げられる。
上記核剤を配合する場合の配合量としては、各々の樹脂100重量部に対して、0.0005〜0.5重量部、好ましくは0.001〜0.1重量部、より好ましくは0.005〜0.05重量部である。上記範囲未満では核剤としての効果が得られない。上記範囲を超えると、それ自体が異物となってフィッシュアイの原因となり好ましくない。
また、上記以外の核剤として高密度ポリエチレン樹脂を挙げることができる。高密度ポリエチレン樹脂としては、密度が、0.94〜0.98g/cm、好ましくは、0.95〜0.97g/cmである。密度がこの範囲を外れると透明性改良効果が得られない。高密度ポリエチレン樹脂の190℃メルトフローレイト(MFR)は、5g/10分以上、好ましくは7〜500g/10分、さらに好ましくは、10〜100g/10分である。MFRが5g/10分より小さいときは高密度ポリエチレン樹脂の分散径が充分に小さくならず、それ自体が異物となってフィッシュアイの原因となり好ましくない。また、高密度ポリエチレン樹脂が微分散するためには好ましくは高密度ポリエチレン樹脂のMFRが本発明のプロピレン系樹脂のMFRより大きい方がよい。
核剤として使用する場合、高密度ポリエチレンの配合量としては、樹脂100重量部に対して、0.01〜5重量部、好ましくは0.05〜3重量部、より好ましくは0.1〜1重量部である。上記範囲未満では核剤としての効果が得られない。上記範囲を超えると、それ自体が異物となってフィッシュアイの原因となり好ましくない。
(5)中和剤
中和剤の具体例としては、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ハイドロタルサイト、ミズカラック(水沢化学工業(株)製商品名)などを挙げることができる。
中和剤を配合する場合の配合量は、樹脂100重量部に対して0.01〜1.0重量部、好ましくは0.02〜0.5重量部、より好ましくは0.05〜0.1重量部である。配合量が上記範囲未満では、中和剤としての効果が得られず、押出機内部の劣化樹脂を掻き出してフィッシュアイの原因となる。また、上記範囲を超えるとそれ自体が異物となってフィッシュアイの原因となり好ましくない。
(6)光安定剤
光安定剤としては、ヒンダードアミン系安定剤が好適に使用され、従来公知のピペリジンの2位および6位の炭素に結合している全ての水素がメチル基で置換された構造を有する化合物が特に限定されることなく用いられるが、具体的には以下のような化合物が好ましく用いられる。
具体例としては、琥珀酸ジメチルと1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンとの重縮合物、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、N,N−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン・2,4−ビス[N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ]−6−クロロ−1,3,5−トリアジン縮合物、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)イミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル}イミノ]、ポリ[(6−モルホリノ−s−トリアジン−2,4−ジイル)[(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}]などを挙げることができる。
これらのヒンダードアミン系安定剤は、本目的の効果を損なわない範囲で、1種または2種以上組み合わせて使用することができる。
ヒンダードアミン系安定剤を配合する場合の配合量は、樹脂100重量部に対して0.005〜2重量部、好ましくは0.01〜1重量部、さらに好ましくは0.05〜0.5重量部とするのが望ましい。
ヒンダードアミン系安定剤の含有量が、0.005重量部未満であると、耐熱性、耐老化性等の安定性の向上効果がなく、2重量部より多いとそれ自体が異物となってフィッシュアイの原因となり好ましくない。
(7)帯電防止剤
帯電防止剤としては、従来から静電防止剤または帯電防止剤として使用されている公知のものであれば特に限定されることなく使用でき、例えばアニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤などが挙げられる。
上記アニオン性界面活性剤としては、脂肪酸またはロジン酸セッケン、N−アシルカルボン酸塩、エーテルカルボン酸塩、脂肪酸アミン塩等のカルボン酸塩;スルホコハク酸塩、エステルスルホン酸塩、N−アシルスルホン酸塩等のスルホン酸塩;硫酸化油、硫酸エステル塩、硫酸アルキル塩、硫酸アルキルポリオキシエチレン塩、硫酸エーテル塩、硫酸アミド塩等の硫酸エステル塩;リン酸アルキル塩、リン酸アルキルポリオキシエチレン塩、リン酸エーテル塩、リン酸アミド塩等のリン酸エステル塩などが挙げられる。
上記カチオン性界面活性剤としては、アルキルアミン塩等のアミン塩;アルキルトリメチルアンモニウムクロリド、アルキルベンジルジメチルアンモニウムクロリド、アルキルジヒドロキシエチルメチルアンモニウムクロリド、ジアルキルジメチルアンモニウムクロリド、テトラアルキルアンモニウム塩、N,N−ジ(ポリオキシエチレン)ジアルキルアンモニウム塩、N−アルキルアルカンアミドアンモニウムの塩等の第4級アンモニウム塩;1−ヒドロキシエチル−2−アルキル−2−イミダゾリン、1−ヒドロキシエチル−1−アルキル−2−アルキル−2−イミダゾリン等のアルキルイミダゾリン誘導体;イミダゾリニウム塩、ピリジニウム塩、イソキノリニウム塩などが挙げられる。
上記非イオン性界面活性剤としては、アルキルポリオキシエチレンエーテル、p−アルキルフェニルポリオキシエチレンエーテル等のエーテル形;脂肪酸ソルビタンポリオキシエチレンエーテル、脂肪酸ソルビトールポリオキシエチレンエーテル、脂肪酸グリセリンポリオキシエチレンエーテル等のエーテルエステル形;脂肪酸ポリオキシエチレンエステル、モノグリセリド、ジグリセリド、ソルビタンエステル、ショ糖エステル、2価アルコールエステル、ホウ酸エステル等のエステル形;ジアルコールアルキルアミン、ジアルコールアルキルアミンエステル、脂肪酸アルカノールアミド、N,N−ジ(ポリオキシエチレン)アルカンアミド、アルカノールアミンエステル、N,N−ジ(ポリオキシエチレン)アルカンアミン、アミンオキシド、アルキルポリエチレンイミン等の含窒素形のものなどが挙げられる。
上記両性界面活性剤としては、モノアミノカルボン酸、ポリアミノカルボン酸等のアミノ酸形;N−アルキルアミノプロピオン酸塩、N,N−ジ(カルボキシエチル)アルキルアミン塩等のN−アルキル−β−アラニン形;N−アルキルベタイン、N−アルキルアミドベタイン、N−アルキルスルホベタイン、N,N−ジ(ポリオキシエチレン)アルキルベタイン、イミダゾリニウムベタイン等のベタイン形;1−カルボキシメチル−1−ヒドロキシ−1−ヒドロキシエチル−2−アルキル−2−イミダゾリン、1−スルホエチル−2−アルキル−2−イミダゾリン等のアルキルイミダゾリン誘導体などが挙げられる。
これらの中では、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤が好ましく、中でもモノグリセリド、ジグリセリド、ホウ酸エステル、ジアルコールアルキルアミン、ジアルコールアルキルアミンエステル、アミド等のエステル形または含窒素形の非イオン性界面活性剤;ベタイン形の両性界面活性剤が好ましい。
なお、帯電防止剤としては、市販品を使用することができ、例えば、エレクトロストリッパーTS5(花王(株)製、商標、グリセリンモノステアレート)、エレクトロストリッパーTS6(花王(株)製、商標、ステアリルジエタノールアミン)、エレクトロストリッパーEA(花王(株)製、商標、ラウリルジエタノールアミン)、エレクトロストリッパーEA−7(花王(株)製、商標、ポリオキシエチレンラウリルアミンカプリルエステル)、デノン331P(丸菱油化(株)製、商標、ステアリルジエタノールアミンモノステアレート)、デノン310(丸菱油化(株)製、商標、アルキルジエタノールアミン脂肪酸モノエステル)、レジスタットPE−139(第一工業製薬(株)製、商標、ステアリン酸モノ&ジグリセリドホウ酸エステル)、ケミスタット4700(三洋化成(株)製、商標、アルキルジメチルベタイン)、レオスタットS(ライオン(株)製、商標、アルキルジエタノールアミド)などが挙げられる。
帯電防止剤を配合する場合の配合量は、樹脂100重量部に対して0.01〜2重量部、好ましくは0.05〜1重量部、さらに好ましくは0.1〜0.8重量部、もっとも好ましくは0.2〜0.5重量部である。これら帯電防止剤は、本目的の効果を損なわない範囲で、1種または2種以上組み合わせて使用することができる。帯電防止剤の配合量が、0.01重量部未満では、表面固有抵抗を減らして帯電による障害を防止することができない。2重量部より多いとブリードによるシート表面に粉吹きが発生しやすくなる。
(8)エラストマー
エラストマーとしては、スチレン系エラストマー等が好ましく挙げられ、スチレンとエチレン、プロピレン、1−ブテン、ブタジエン、イソプレンなどとのブロックないしはランダム共重合体もしくはその水添物が好ましく、市販品としては、クラレ社製商品名ハイブラー、JSR社製商品名ダイナロンなどを挙げることができる。
[II]プロピレン系樹脂多層シート各層構成樹脂組成物の製造
本発明のプロピレン系樹脂多層シートにおける中間層(1)を構成するプロピレン系樹脂組成物(X)は、上述したプロピレン系樹脂組成物(A)、エチレン−α−オレフィン共重合体(B)、所望によりプロピレン系樹脂(C)、および必要に応じて他の添加剤をヘンシェルミキサー、Vブレンダー、リボンブレンダー、タンブラーブレンダー等で混合後、単軸押出機、多軸押出機、ニーダー、バンバリミキサー等の混練機により混練する方法により得られる。
本発明のプロピレン系樹脂多層シートにおける外層(2)を構成するプロピレン系樹脂組成物(Y)は、上述したプロピレン系樹脂(D)、および必要に応じて他の添加剤をヘンシェルミキサー、Vブレンダー、リボンブレンダー、タンブラーブレンダー等で混合後、単軸押出機、多軸押出機、ニーダー、バンバリミキサー等の混練機により混練する方法により得られる。
本発明のプロピレン系樹脂多層シートにおける内層(3)を構成するプロピレン系樹脂組成物(Z)は、上記プロピレン系樹脂組成物(G)、エチレン−α−オレフィン共重合体(H)およびプロピレン系樹脂(I)とのプロピレン系樹脂組成物(Z)に、必要に応じて他の添加剤をヘンシェルミキサー、Vブレンダー、リボンブレンダー、タンブラーブレンダー等で混合後、単軸押出機、多軸押出機、ニーダー、バンバリミキサー等の混練機により混練する方法により得られる。
また、上述した各樹脂組成物の各成分は同時に混合してもよいし、一部をマスターバッチとした上で、混合混練してもよい。
[III]プロピレン系樹脂多層シート
本発明のプロピレン系樹脂多層シートは、上記プロピレン系樹脂組成物を用い公知の方法で製造することができる。例えば、Tダイ、サーキュラーダイを用いた押出成形等の公知の技術によって製造する。
本発明のプロピレン系樹脂多層シートは、柔軟性、透明性、耐衝撃性、耐熱性、クリーン性に優れ、厚みムラ、界面荒れなどの外観不良による透明性悪化を抑制でき、かつ、ヒートシールなどの2次加工において薄肉化を抑制できるために力学的強度の保持や、低温ヒートシール性に優れるため生産性の向上が図れるため、殺菌や滅菌などの加熱処理工程が必要な加熱処理用包装袋、特に輸液バッグ等に好適である。
本発明のプロピレン系樹脂多層シートは、加熱処理後も優れた柔軟性を有していることを特徴としており、柔軟性の尺度である引張弾性率が、330MPa以下であることが望ましい。引張弾性率が300MPa以下、好ましくは280MPa以下であると、ごわごわ感がなくなるため、触感が良く、高級感を醸し出すことが出来るという点で非常に優れている。
本発明のプロピレン系樹脂多層シートは、優れた透明性を有しており、透明性の尺度であるヘイズ(Haze)が加熱処理後で20%以下、好ましくは18%以下、好ましくは15%以下であると、内容物を明瞭に見せることができ、内容物に異物が入っていないかどうか確認可能であるという点で非常に優れている。
本発明のプロピレン系樹脂多層シートは、耐衝撃性、とりわけ0〜5℃の低温での耐衝撃性が優れており、低温衝撃性の尺度である低温落袋試験において100cmの高さから落としても破袋しないという優れた耐衝撃性を有し、運搬工程、保存工程などで万が一落としても破袋せず、製品として使用可能であるという点で優れている。好ましくは150cmから落としても破袋せず、より好ましくは200cmから落としても破袋しないものである。
また、本発明のプロピレン系樹脂多層シートは、優れた耐熱性を有しており、121℃前後の加熱処理を行っても変形、内面融着を押さないという優れた耐熱性を有している。変形したものは外観が悪く、製品価値が下がってしまい、内面融着したものは内容物を排出する際に排出を妨げる可能性があるため、製品として用いることはできない。
また、本発明のプロピレン系樹脂多層シートは優れたクリーン性を有しており、内容物と接する内層(3)において内容物を汚染する可能性がある低分子量成分、低規則性成分が極めて少ないメタロセン触媒を用いて得られるプロピレン系樹脂組成物を使用することが望ましい。
さらに、本発明のプロピレン系樹脂多層シートは、優れた低温ヒートシール性を有しており、生産性向上を図れるという点で非常に優れている。ヒートシール圧力3.4kgf/cm、ヒートシール時間5秒の条件においてヒートシール強度が3000gf/10mm以上になる温度が、ヒートシール温度145℃以下、より好ましくは140℃以下という優れたヒートシール性を有している。
以下において、本発明をより具体的にかつ明確に説明するために、本発明を実施例及び比較例との対照において説明し、本発明の構成要件の合理性と有意性を実証するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例、比較例で用いた物性測定法、特性評価法、樹脂材料は以下の通りである。
1.樹脂物性の測定方法
(1)MFR:プロピレン系樹脂組成物(A)、プロピレン系樹脂(C)、プロピレン系樹脂(D)、プロピレン系樹脂組成物(G)、プロピレン系樹脂(I)は、JIS K7210 A法 条件Mに従い、試験温度:230℃、公称荷重:2.16kg、ダイ形状:直径2.095mm 長さ8.00mmで測定した。
エチレン−α−オレフィン共重合体(B)、エチレン−α−オレフィン共重合体(H)は、JIS K7210 A法 条件Dに従い、試験温度:190℃、公称荷重:2.16kg、ダイ形状:直径2.095mm 長さ8.00mmで測定した。
(2)密度:MFR測定時に得られた押出ストランドを用い、JIS K7112 D法に準拠して密度勾配管法で測定した。
(3)融解ピーク温度:セイコー社製DSCを用い、試料5.0mgを採り、200℃で5分間保持した後、40℃まで10℃/分の降温速度で結晶化させ、さらに10℃/分の昇温速度で融解させたときの融解ピーク温度を測定した。
(4)固体粘弾性測定
試料は、下記条件により射出成形した厚さ2mmのシートから、10mm幅×18mm長×2mm厚の短冊状に切り出したものを用いた。装置はレオメトリック・サイエンティフィック社製のARESを用いた。周波数は1Hzである。測定温度は−60℃から段階状に昇温し、試料が融解して測定不能になるまで測定を行った。歪みは0.1〜0.5%の範囲で行った。
〔試験片の作成〕
規格番号:JIS−7152(ISO294−1)
成形機:東芝機械製EC−20射出成形機
成形機設定温度:ホッパ下から 80,80,160,200,200,200℃
金型温度:40℃
射出速度:200mm/秒(金型キャビティー内の速度)
保持圧力:20MPa
保圧時間:40秒
金型形状:平板(厚さ2mm 幅40mm 長さ80mm)
(5)W(A1)、W(A2)、E[A1]、E[A2]、W(G1)、W(G2)、E(G1)、E(G2):前述の方法で測定した。
(6)プロピレン系樹脂組成物(Z)の0℃可溶分(S0):
前述の方法で測定した。
2.プロピレン系樹脂多層シートの評価方法
(1)耐熱性(外観)
円筒状になっているプロピレン系樹脂多層シートを流れ方向に210mmの大きさに切り出し、切り出した一方をヒートシール(ヒートシール条件:圧力3.4kgf/cm、時間5秒、温度160℃、テスター産業社製ヒートシーラー)して袋状にした。ついで、その中に純水を500ml充填し、もう一辺をインパルスシーラーを用いてヒートシールして密封した。ヒートシールとヒートシールの間の距離は200mmとなるようにシールした。
このようにして得られたサンプル袋を、高温高圧調理殺菌試験機(日阪製作所製、RCS−40RTGN型)の中に入れた後、加圧し、121℃まで雰囲気温度を上昇させて、その温度を30分間保持した。その後、約40℃まで冷却し、該サンプル袋を試験機から取り出した。(以下、この殺菌処理をした多層シート(サンプル袋)を「加熱処理後多層シート」ということもある。)
加熱処理後多層シートの耐熱性評価は以下の基準で行った。
△:変形、しわ、内面融着を起こしており、使用不可。
○−:やや変形しているが、使用可能なレベル。
○:変形、しわ、内面融着を起こしておらず、良好な状態。
(2)透明性(HAZE)
JIS K7136−2000に準拠し、加熱処理後積層シートの透明性をヘイズメータで測定した。得られた値が小さいほど透明性がよいことを意味し、この値が20%以下であると内容物確認しやすく、ディスプレイ効果を得る点で優れており、18%以下が好ましく、15%以下が特に好ましい。
(3)柔軟性(引張弾性率)
JIS K−7127−1989に準拠し、下記の条件にて、加熱処理後積層シートの流れ方向(MD)についての引張弾性率を測定した。得られた値が小さいほど柔軟性に優れていることを意味し、この値が330MPa以下であると触感のよい手触りで高級感を得る点で優れており、300MPa以下が好ましく、280MPa以下が特に好ましい。
サンプル長さ:150mm
サンプル幅:15mm
チャック間距離:100mm
クロスヘッド速度:1mm/min
(4)低温耐衝撃性(累積落袋試験)
水を詰めたままの加熱処理後多層シート(2個)を4℃で48時間状態調整後、その温度で50cmから鉄板の上に2回落とし、破袋しなければ100cmから2回落とし、それでも破袋しなければ150cmから2回、それでも破袋しなければ200cmから2回落下させ評価した。100cmから落としても破袋しないことが望ましく、好ましくは150cmから落としても破袋せず、より好ましくは200cmから落としても破袋しないものである。なお、破袋しなかったものを○、破袋したものを×とした。
(5)易製袋性(低温ヒートシール性:ヒートシール強度)
円筒状になっているプロピレン系樹脂多層シートを流れ方向に100mmの大きさに切り出し、切り出した一方をヒートシール(ヒートシール条件:圧力3.4kgf/cm、時間5秒、温度125〜160℃を5℃刻み)を行い、袋状にし、23℃、50%RH雰囲気下で24時間状態調整した。ついで、その中に純水を500ml充填し、もう一辺をインパルスシーラーを用いてヒートシールし密封した。
このようにして得られたサンプル袋を、高温高圧調理殺菌試験機(日阪製作所製、RCS−40RTGN型)の中に入れた後、加圧し、121℃まで雰囲気温度を上昇させて、その温度を30分間保持した。その後、約40℃まで冷却し、該サンプル袋を試験機から取り出した。その後、水を抜き、ヒートシール部を10mm幅の短冊状に切り出し、万能型試験機(テンシロン万能試験機、オリエンテック社製)を用いて、剥離速度500mm/minで剥離試験を行い、積層シートのヒートシール強度を求めた。
得られたこの数値が高い程、積層シート同士が強固にヒートシールしており、この数値が3,000gf/10mm以上であると加熱処理用包装袋に充分に使用可能である。
また、3,000gf/10mm以上のヒートシール強度を保有できるヒートシール温度が低温であるほど生産性が向上し、易製袋性が優れていることを意味する。好ましくは145℃以下であり、より好ましくは140℃である。
3.使用樹脂
(1)中間層用プロピレン系樹脂組成物(A)
(1−1)下記の製造例(A−1)〜(A−17)により逐次重合で得られた樹脂(PP(A−1)〜PP(A−17))を用いた。
(製造例A−1)
(i)予備重合触媒の調製
(珪酸塩の化学処理)
10リットルの撹拌翼の付いたガラス製セパラブルフラスコに、蒸留水3.75リットル、続いて濃硫酸(96%)2.5kgをゆっくりと添加した。50℃で、さらにモンモリロナイト(水澤化学社製ベンクレイSL;平均粒径=25μm 粒度分布=10〜60μm)を1kg分散させ、90℃に昇温し、6.5時間その温度を維持した。50℃まで冷却後、このスラリーを減圧濾過し、ケーキを回収した。このケーキに蒸留水を7リットル加え再スラリー化後、濾過した。この洗浄操作を、洗浄液(濾液)のpHが、3.5を越えるまで実施した。回収したケーキを窒素雰囲気下110℃で終夜乾燥した。乾燥後の重量は707gであった。
(珪酸塩の乾燥)
先に化学処理した珪酸塩は、キルン乾燥機により乾燥を実施した。仕様及び乾燥条件は以下の通りである。
回転筒:円筒状 内径50mm 加温帯550mm(電気炉) かき上げ翼付き回転数:2rpm 傾斜角:20/520 珪酸塩の供給速度:2.5g/分 ガス流速:窒素 96リットル/時間 向流乾燥温度:200℃(粉体温度)
(触媒の調製)
撹拌および温度制御装置を有する内容積16リットルのオートクレーブを窒素で充分置換した。乾燥珪酸塩200gを導入し、混合ヘプタン1160ml、さらにトリエチルアルミニウムのヘプタン溶液(0.60M)840mlを加え、室温で攪拌した。1時間後、混合ヘプタンにて洗浄し、珪酸塩スラリーを2,000mlに調製した。次に、先に調製した珪酸塩スラリーにトリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液(0.71M/L)9.6mlを添加し、25℃で1時間反応させた。平行して、(r)−ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル}]ジルコニウム2,180mg(0.3mM)と混合ヘプタン870mlに、トリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液(0.71M)33.1mlを加えて、室温にて1時間反応させた混合物を、珪酸塩スラリーに加え、1時間攪拌後、混合ヘプタンを追加して5,000mlに調製した。
(予備重合/洗浄)
続いて、槽内温度を40℃昇温し、温度が安定したところでプロピレンを100g/時間の速度で供給し、温度を維持した。4時間後プロピレンの供給を停止し、さらに2時間維持した。
予備重合終了後、残モノマーをパージし、撹拌を停止させ約10分間静置後、上澄みを2,400mlデカントした。続いてトリイソブチルアルミニウム(0.71M/L)のヘプタン溶液9.5ml、さらに混合ヘプタンを5,600ml添加し、40℃で30分間撹拌し、10分間静置した後に、上澄みを5,600ml除いた。さらにこの操作を3回繰り返した。最後の上澄み液の成分分析を実施したところ有機アルミニウム成分の濃度は、1.23mM/L、Zr濃度は8.6×10−6g/Lであり、仕込み量に対する上澄み液中の存在量は0.016%であった。続いて、トリイソブチルアルミニウム(0.71M/L)のヘプタン溶液を170ml添加した後に、45℃で減圧乾燥を実施した。触媒1g当たりポリプロピレンを2.0g含む予備重合触媒が得られた。
この予備重合触媒を用いて、以下の手順に従ってプロピレン−エチレンブロック共重合体の製造を行った。
(ii)第一重合工程
攪拌羽根を有する横型反応器(L/D=6、内容積100リットル)を十分に乾燥し、内部を窒素ガスで十分に置換した。ポリプロピレン粉体床の存在下、回転数30rpmで攪拌しながら、反応器の上流部に上記の方法で調整した予備重合触媒を(予備重合パウダーを除いた固体触媒量として)0.568g/hr、トリイソブチルアルミニウムを15.0mmol/hrで連続的に供給した。反応器の温度を65℃、圧力を2.1MPaGに保ち、且つ反応器内気相部のエチレン/プロピレンモル比が0.07、水素濃度が100ppmになるように、モノマー混合ガスを連続的に反応器内に流通させ、気相重合を行った。反応によって生じた重合体パウダーは、反応器内の粉体床量が一定になるように、反応器下流部より連続的に抜き出した。この時、定常状態になった際の重合体抜き出し量は10.0kg/hrであった。
第一重合工程で得られたプロピレン−エチレンランダム共重合を分析したところ、MFRは6.0g/10分、エチレン含有量は2.2wt%であった。
(iii)第二重合工程
攪拌羽根を有する横型反応器(L/D=6、内容積100リットル)に、第一工程より抜き出したプロピレン−エチレン共重合体を連続的に供給した。回転数25rpmで攪拌しながら、反応器の温度を70℃、圧力を2.0MPaGに保ち、且つ反応器内気相部のエチレン/プロピレンモル比が0.453、水素濃度が330ppmになるように、モノマー混合ガスを連続的に反応器内に流通させ、気相重合を行った。反応によって生じた重合体パウダーは、反応器内の粉体床量が一定になるように、反応器下流部より連続的に抜き出した。この時、重合体抜き出し量が17.9kg/hrになるように活性抑制剤として酸素を供給し、第二重合工程での重合反応量を制御した。活性は31.429kg/g−触媒であった。
こうして得られたプロピレン系樹脂組成物PP(A−1)の各種分析結果を、表3に示す。
(製造例A−2〜9)
重合条件を表3に示すように変えた以外は(製造例A−1)と同様の製法で触媒調整及び重合を行った。
反応終了後、得られたポリマーの各種分析を行った。得られたプロピレン系樹脂組成物PP(A−2)〜PP(A−9)の各種分析結果を表3に示す。これらは成分(A)として本発明の要件を全て満たすものである。
(製造例A−10〜17)
重合条件を表4に示すように変えた以外は(製造例A−1)と同様の製法で触媒調整及び重合を行った。
反応終了後、得られたポリマーの各種分析を行った。得られたプロピレン系樹脂組成物PP(A−10)〜PP(A−17)の各種分析結果を表4に示す。これらは成分(A)として本発明の要件を満たさないものである。
Figure 0005487024
Figure 0005487024
(2)中間層用エチレン−α−オレフィン共重合体(B)
下記製造例(B−1)〜(B−6)で得られた樹脂PE(B−1)〜PE(B−6)および市販品の後記PE(B−7)〜PE(B−8)を使用した。
(製造例B−1)
エチレンとヘキセン−1の共重合体を製造した。触媒の調製は、特表平7−508545号公報(触媒系の調製)に記載された方法で実施した。即ち、錯体ジメチルシリレンビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ハフニウムジメチル2.0ミリモルに、トリペンタフルオロフェニルホウ素を上記錯体に対して等倍モル加え、トルエンで10リットルに希釈して触媒溶液を調製した。
内容積1.5リットルの撹拌式オートクレーブ型連続反応器にエチレンと1−ヘキセンとの混合物を1−ヘキセンの組成が73重量%となるように供給し、反応器内の圧力を130MPaに保ち、127℃で反応を行った。1時間あたりのポリマー生産量は約2.5kgであった。
反応終了後、得られたポリマーの各種分析を行った。得られたエチレン−α−オレフィン共重合体PE(B−1)の各種分析結果を表5に示す。
(製造例B−2〜6)
重合時の1−ヘキセンの組成と重合温度を表5に示すように変えた以外は製造例(B−1)と同様の製法で触媒調整及び重合を行った。
反応終了後、得られたポリマーの各種分析を行った。
使用した市販品は以下のとおりである。
B−7:市販品 日本ポリエチレン社製商品名「KERNEL KF283」
(メタロセン触媒によるエチレン−α−オレフィン共重合体)
B−8:市販品 日本ポリエチレン社製商品名「KERNEL KJ640T」
(メタロセン触媒によるエチレン−αオレフィン共重合体)
PE(B−1)〜PE(B−8)の各種分析結果を表5に示す。
PE(B−1)〜PE(B−6)は、成分(B)として本発明の要件を全て満たすものである。
一方、PE(B−7)、PE(B−8)は、成分(B)として本発明の要件を満たさないものである。
Figure 0005487024
(3)中間層用プロピレン系樹脂(C)
下記製造例(C−1)〜(C−5)で得られた樹脂(PP(C−1)〜PP(C−5)を使用した。PP(C−1)〜PP(C−4)は単段重合によって得たホモポリプロピレン、PP(C−5)は多段重合によって得たブロック共重合ポリプロピレンである。
また、以下の市販品のポリプロピレン樹脂を使用した。
(C−6)日本ポリプロ社製商品名「WINTEC WFW4」
(単段重合によって得たランダムポリプロピレン)
(C−7)日本ポリプロ社製商品名「WINTEC WFX4」
(単段重合によって得たランダムポリプロピレン)
(C−8)日本ポリプロ社製商品名「ノバテックPP SA06A」
(単段重合によって得たホモポリプロピレン)
MFRおよびTmを表6に示した。
(製造例C−1)
(i)固体成分(A)の製造
撹拌装置を備えた容量10Lのオートクレーブを充分に窒素で置換し、精製したn−ヘプタン2Lを導入した。更に、MgClを250g、Ti(O−n−Bu)を1.8L添加して、95℃で2hr反応を行った。反応生成物を40℃に冷却し、メチルハイドロジェンポリシロキサン(20センチストークスのもの)を500ml添加した。40℃で5hr反応を行った後、析出した固体生成物を精製したn−ヘプタンで充分に洗浄した。
次いで、精製したn−ヘプタンを導入して、上記固体生成物の濃度が200g/Lとなる様に調整した。ここに、SiClを300ml添加して、90℃で3hr反応を行った。反応生成物を精製したn−ヘプタンで充分に洗浄し、反応生成物の濃度が100g/Lとなる様に精製したn−ヘプタンを導入した。ここへ、フタル酸ジクロライド30mlを精製したn−ヘプタン270mlに混合した液を添加し、90℃で1hr反応を行った。反応生成物を精製したn−ヘプタンで充分に洗浄し、反応生成物の濃度が200g/Lとなる様に精製したn−ヘプタンを導入した。ここへ、TiClを1L添加し、95℃で3hr反応を行った。反応生成物を精製したn−ヘプタンで充分に洗浄し、固体成分(A)のスラリーを得た。このスラリーの一部をサンプリングして乾燥した。分析したところ、固体成分(A)のTi含有量は2.5wt%であった。
(ii)固体触媒成分(B)の調製
次に、撹拌装置を備えた容量20Lのオートクレーブを充分に窒素で置換し、上記固体成分(A)のスラリーを固体成分(A)として100g導入した。精製したn−ヘプタンを導入して、固体成分(A)の濃度が20g/Lとなる様に調整した。ここに、トリメチルビニルシランを25ml、(t−Bu)(Me)Si(OEt)を25ml、EtAlのn−ヘプタン希釈液をEtAlとして50g添加し、30℃で2hr反応を行った。反応生成物を精製したn−ヘプタンで充分に洗浄し、得られたスラリーの一部をサンプリングして乾燥した。分析したところ、固体成分にはTiが2.1wt%、(t−Bu)(Me)Si(OEt)が6.1wt%含まれていた。
上記で得られた固体成分を用いて、以下の手順により予備重合を行った。上記のスラリーに精製したn−ヘプタンを導入して、固体成分の濃度が10g/Lとなる様に調整した。スラリーを10℃に冷却した後、EtAlのn−ヘプタン希釈液をEtAlとして10g添加し、150gのプロピレンを2hrかけて供給した。プロピレンの供給が終わった後、更に30min反応を継続した。次いで、気相部を窒素で充分に置換し、反応生成物を精製したn−ヘプタンで充分に洗浄した。得られたスラリーをオートクレーブから抜き出し、真空乾燥を行って固体触媒成分(B)を得た。この固体触媒成分(B)は、固体成分1gあたり1.2gのポリプロピレンを含んでいた。分析したところ、この固体触媒成分(B)のポリプロピレンを除いた部分には、Tiが1.6wt%、(t−Bu)(Me)Si(OEt)が5.5wt%含まれていた。
(iii)重合
内容積200Lの攪拌式オートクレーブ内をプロピレンで充分に置換し、精製したn−ヘプタンを80L導入した。70℃に昇温した後、EtAlのn−ヘプタン希釈液をEtAlとして1.5g、水素5.0NL、および前記固体触媒成分(B)0.25g(ただし予備重合ポリマーは除く)を導入した。75℃に昇温した後、圧力が0.7MPaGになるようにプロピレンを供給し、重合を開始した。重合中は圧力を維持するようにプロピレンの供給を継続した。3時間後に、ブタノール1Lを加えて重合を停止した。残プロピレンをパージし、充分窒素で置換した。得られたスラリーは遠心分離機でろ過後、乾燥機で乾燥し、PP(C−1)を得た。
(製造例C−2〜C−4)
重合の際に用いる水素の量を変更した以外は製造例C−1と同様に実施して、PP(C−2)〜PP(C−4)を得た。結果を表6に示す。
(製造例C−5)
(i)固体成分触媒の製造
窒素置換した内容積50lの攪拌機付反応槽に脱水および脱酸素したn−ヘプタン20リットルを導入し、次いで塩化マグネシウム4モルとテトラブトキシチタン8モルとを導入して95℃で2時間反応させた後、温度を40℃に下げ、メチルヒドロポリシロキサン(20センチストークスのもの)480mlを添加して更に3時間反応させた後、反応液を取り出し、生成した固体成分をn−ヘプタンで洗浄した。
続いて、前記と同様の攪拌機付反応槽に脱水および脱酸素したn−ヘプタン15lを導入し、次いで固体成分をマグネシウム原子換算で3モルを加え、更に四塩化珪素8モルをn−ヘプタン25mlに加えた混合液を30℃で30分間かけて導入して、温度を90℃に昇温して、1時間反応させた後、反応液を取り出し、生成した固体成分をn−ヘプタンで洗浄した。
更に、前記と同様の攪拌機付反応槽に脱水および脱酸素したn−ヘプタン5lを導入し、次いで上で得られた四塩化珪素処理したチタン含有固体成分250gと、1,5−ヘキサジエン750g、t−ブチルーメチルージメトキシシシラン130ml、ジビニルジメチルシラン10ml、トリエチルアルミニウム225gをそれぞれ導入して30℃で2時間接触させた後、反応液を取り出し、n−ヘプタンで洗浄して固体成分触媒を得た。
得られた固体成分触媒は、1,5−ヘキサジエンの予備重合量がチタン含有固体成分あたり、2.97gであった。
(ii)プロピレン/プロピレン−エチレンの2段重合
内容積550lの第1段反応器に、温度70℃で加圧下(70℃においては約3.2MPaになる)において、プロピレンとトリエチルアルミニウムおよび、重合生成速度が20kg/時間となるような量の前記固体成分触媒とを連続的に供給し、更に分子量調整剤として水素をやはり連続的に供給して、液相中で第1段階の重合を実施した。
続いて、プロピレンパージ槽を経由して、生成重合体を内容積1900lの第2段反応器に導入し、温度60℃で圧力3.0MPaになるように、目的とする共重合体の組成割合に応じたプロピレンとエチレンとを連続的に供給し、更に分子量調整剤として水素を連続的に供給するとともに、活性水素化合物(エタノール)を、第1段階で供給した固体成分触媒中のチタン原子に対して200倍モルで、トリエチルアルミニウムに対して2.5倍モルになるように供給して、気相中で重合を実施し、生成重合体を連続的にベッセルに移した後、水分を含んだ窒素ガスを導入して反応を停止させた(第2段階重合)。
得られたPP(C−5)の分析結果を表6に示す。プロピレン−エチレン共重合体中のエチレン含有量は前述した方法で測定した。
PP(C−1)〜(C−5)は、プロピレン系樹脂(C)として本発明に規定する要件を満たすものである。一方、PP(C−6)〜(C−8)は、プロピレン系樹脂(C)として本発明に規定する要件を満たさないものである。
Figure 0005487024
(4)外層(2)用プロピレン系樹脂(D)
下記の市販のプロピレン−エチレンランダム共重合体および下記製造例(D−2)〜(D−4)で得られた樹脂を用いた。MFR、Tmを表7に示した。
(D−1):日本ポリプロ社製商品名「WINTEC WFW4」
(D−5):日本ポリプロ社製商品名「WINTEC WFX4」
(D−2)〜(D−3):下記した単段重合によって製造されたチーグラー・ナッタ触媒系ホモポリプロピレン
(D−4):下記した多段重合によって製造されたブロック共重合ポリプロピレン
(製造例D−2)
(i)固体成分(A)の製造
撹拌装置を備えた容量10Lのオートクレーブを充分に窒素で置換し、精製したn−ヘプタン2Lを導入した。更に、MgClを250g、Ti(O−n−Bu)を1.8L添加して、95℃で2hr反応を行った。反応生成物を40℃に冷却し、メチルハイドロジェンポリシロキサン(20センチストークスのもの)を500ml添加した。40℃で5hr反応を行った後、析出した固体生成物を精製したn−ヘプタンで充分に洗浄した。
次いで、精製したn−ヘプタンを導入して、上記固体生成物の濃度が200g/Lとなる様に調整した。ここに、SiClを300ml添加して、90℃で3hr反応を行った。反応生成物を精製したn−ヘプタンで充分に洗浄し、反応生成物の濃度が100g/Lとなる様に精製したn−ヘプタンを導入した。ここへ、フタル酸ジクロライド30mlを精製したn−ヘプタン270mlに混合した液を添加し、90℃で1hr反応を行った。反応生成物を精製したn−ヘプタンで充分に洗浄し、反応生成物の濃度が200g/Lとなる様に精製したn−ヘプタンを導入した。ここへ、TiClを1L添加し、95℃で3hr反応を行った。反応生成物を精製したn−ヘプタンで充分に洗浄し、固体成分(A)のスラリーを得た。このスラリーの一部をサンプリングして乾燥した。分析したところ、固体成分(A)のTi含有量は2.5wt%であった。
(ii)固体触媒成分(B)の調製
次に、撹拌装置を備えた容量20Lのオートクレーブを充分に窒素で置換し、上記固体成分(A)のスラリーを固体成分(A)として100g導入した。精製したn−ヘプタンを導入して、固体成分(A)の濃度が20g/Lとなる様に調整した。ここに、トリメチルビニルシランを25ml、(t−Bu)(Me)Si(OEt)を25ml、EtAlのn−ヘプタン希釈液をEtAlとして50g添加し、30℃で2hr反応を行った。反応生成物を精製したn−ヘプタンで充分に洗浄し、得られたスラリーの一部をサンプリングして乾燥した。分析したところ、固体成分にはTiが含2.1wt%、(t−Bu)(Me)Si(OEt)が6.1wt%含まれていた。
上記で得られた固体成分を用いて、以下の手順により予備重合を行った。上記のスラリーに精製したn−ヘプタンを導入して、固体成分の濃度が10g/Lとなる様に調整した。スラリーを10℃に冷却した後、EtAlのn−ヘプタン希釈液をEtAlとして10g添加し、150gのプロピレンを2hrかけて供給した。プロピレンの供給が終わった後、更に30min反応を継続した。次いで、気相部を窒素で充分に置換し、反応生成物を精製したn−ヘプタンで充分に洗浄した。得られたスラリーをオートクレーブから抜き出し、真空乾燥を行って固体触媒成分(B)を得た。この固体触媒成分(B)は、固体成分1gあたり1.2gのポリプロピレンを含んでいた。分析したところ、この固体触媒成分(B)のポリプロピレンを除いた部分には、Tiが1.6wt%、(t−Bu)(Me)Si(OEt)が5.5wt%含まれていた。
(iii)重合
内容積200Lの攪拌式オートクレーブ内をプロピレンで充分に置換し、精製したn−ヘプタンを80L導入した。70℃に昇温した後、EtAlのn−ヘプタン希釈液をEtAlとして1.5g、水素5.0NL、および前記固体触媒成分(B)0.25g(ただし予備重合ポリマーは除く)を導入した。75℃に昇温した後、圧力が0.7MPaGになるようにプロピレンを供給し、重合を開始した。重合中は圧力を維持するようにプロピレンの供給を継続した。3時間後に、ブタノール1Lを加えて重合を停止した。残プロピレンをパージし、充分窒素で置換した。得られたスラリーは遠心分離機でろ過後、乾燥機で乾燥し、PP(D−2)を得た。
(製造例D−3)
重合の際に用いる水素の量を変更した以外は製造例D−2と同様に実施して、PP(D−3)を得た。結果を表9に示す。
(製造例D−4)
(i)固体成分触媒の製造
窒素置換した内容積50lの攪拌機付反応槽に脱水および脱酸素したn−ヘプタン20リットルを導入し、次いで塩化マグネシウム4モルとテトラブトキシチタン8モルとを導入して95℃で2時間反応させた後、温度を40℃に下げ、メチルヒドロポリシロキサン(20センチストークスのもの)480mlを添加して更に3時間反応させた後、反応液を取り出し、生成した固体成分をn−ヘプタンで洗浄した。
続いて、前記と同様の攪拌機付反応槽に脱水および脱酸素したn−ヘプタン15lを導入し、次いで固体成分をマグネシウム原子換算で3モルを加え、更に四塩化珪素8モルをn−ヘプタン25mlに加えた混合液を30℃で30分間かけて導入して、温度を90℃に昇温して、1時間反応させた後、反応液を取り出し、生成した固体成分をn−ヘプタンで洗浄した。
更に、前記と同様の攪拌機付反応槽に脱水および脱酸素したn−ヘプタン5lを導入し、次いで上で得られた四塩化珪素処理したチタン含有固体成分250gと、1,5−ヘキサジエン750g、t−ブチル−メチル−ジメトキシシシラン130ml、ジビニルジメチルシラン10ml、トリエチルアルミニウム225gをそれぞれ導入して30℃で2時間接触させた後、反応液を取り出し、n−ヘプタンで洗浄して固体成分触媒を得た。
得られた固体成分触媒は、1,5−ヘキサジエンの予備重合量がチタン含有固体成分あたり、2.97gであった。
(ii)プロピレン/プロピレン−エチレンの2段重合
内容積550lの第1段反応器に、温度70℃で加圧下(70℃においては約3.2MPaになる)において、プロピレンとトリエチルアルミニウムおよび、重合生成速度が20kg/時間となるような量の前記固体成分触媒とを連続的に供給し、更に分子量調整剤として水素をやはり連続的に供給して液相中で第1段階の重合を実施した。
続いて、プロピレンパージ槽を経由して、生成重合体を内容積1900lの第2段反応器に導入し、温度60℃で圧力3.0MPaになるように、目的とする共重合体の組成割合に応じたプロピレンとエチレンとを連続的に供給し、更に分子量調整剤として水素を連続的に供給するとともに、活性水素化合物(エタノール)を、第1段階で供給した固体成分触媒中のチタン原子に対して200倍モルで、トリエチルアルミニウムに対して2.5倍モルになるように供給して気相中で重合を実施し、生成重合体を連続的にベッセルに移した後、水分を含んだ窒素ガスを導入して反応を停止させた(第2段階重合)。
得られたPP(D−4)の分析結果を表9に示す。プロピレン−エチレン共重合体中のエチレン含有量は前述した方法で測定した。
PP(D−1)〜PP(D−4)は、成分(D)として本発明における要件を全て満たすものである。一方、PP(D−5)は、成分(D)として本発明における要件を満たさないものである。
Figure 0005487024
(5)外層(2)用の成分Dに配合されるエチレン−α−オレフィン共重合体(D3)
下記製造例(D3−1)で得られた樹脂、および市販品であるエチレン−α−オレフィン共重合体(D3−2)として日本ポリエチレン社製商品名カーネル(KERNEL)KF283を用いた。各種分析結果を表8に示す。
(製造例D3−1)
エチレンとヘキセン−1の共重合体を製造した。触媒の調製は、特表平7−508545号公報(触媒系の調製)に記載された方法で実施した。即ち、錯体ジメチルシリレンビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ハフニウムジメチル2.0ミリモルに、トリペンタフルオロフェニルホウ素を上記錯体に対して等倍モル加え、トルエンで10リットルに希釈して触媒溶液を調製した。
内容積1.5リットルの撹拌式オートクレーブ型連続反応器にエチレンと1−ヘキセンとの混合物を1−ヘキセンの組成が73重量%となるように供給し、反応器内の圧力を130MPaに保ち、127℃で反応を行った。1時間あたりのポリマー生産量は約2.5kgであった。
反応終了後、得られたポリマーの各種分析を行った。得られたエチレン−α−オレフィン共重合体PE(D3−1)の各種分析結果を表8に示す。
Figure 0005487024
(6)内層(3)用プロピレン系樹脂組成物(Z)
(6−1)ブレンドによる内層用プロピレン系樹脂組成物(G)
プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体(G1)として、下記<G1>のプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体(G1−1)〜(G1−5)を、プロピレン−α−オレフィン共重合体(G2)として、下記<G2>のプロピレン−エチレンランダム共重合体(G2−1)〜(G2−3)を使用した。
<G1>
G1−1:市販品 日本ポリプロ社製商品名「WINTEC WFW4」
(メタロセン触媒によるプロピレン−エチレンランダム共重合体)
G1−2:下記製造例G1−2により製造した。
G1−3:市販品 日本ポリプロ社製商品名「NOVATEC PP FW4B」
(チーグラ・ナッタ触媒によるプロピレン−α−オレフィン共重合体)
G1−4:市販品 ダウケミカル社製商品名「VERSIFY3000」
(メタロセン触媒によるプロピレン−エチレンランダム共重合体)
G1−5:下記製造例G1−5により製造した。
<G2>
G2−1:市販品 エクソンモービルケミカル社製商品名「VISTAMAXX3000」 (メタロセン触媒によるプロピレン−エチレンランダム共重合体)
G2−2:市販品 ダウケミカル社製商品名「VERSIFY3000」
(メタロセン触媒によるプロピレン−エチレンランダム共重合体)
G2−3:市販品 ライオンデルバゼル社製商品名「ADFLEX X100G」
(チーグラ・ナッタ触媒によるプロピレン−エチレンランダム共重合体)
製造例(G1−2)
(i)遷移金属化合物の合成
〔(r)−ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル}]ジルコニウム〕の合成は、特開平10−226712号公報の実施例に従って実施した。
(ii)珪酸塩の化学処理
10リットルの撹拌翼の付いたガラス製セパラブルフラスコに、蒸留水3.75リットル、続いて濃硫酸(96%)2.5kgをゆっくりと添加した。50℃で、さらにモンモリロナイト(水澤化学社製ベンクレイSL;平均粒径=25μm、粒度分布=10μm〜60μm)を1kg分散させ、90℃に昇温し、6.5時間その温度を維持した。50℃まで冷却後、このスラリーを減圧ろ過し、ケーキを回収した。このケーキに蒸留水を7リットル加え再スラリー化後、ろ過した。この洗浄操作を、洗浄液(ろ液)のpHが、3.5を越えるまで実施した。
回収したケーキを窒素雰囲気下110℃で終夜乾燥した。乾燥後の重量は707gであった。
(iii)珪酸塩の乾燥
先に化学処理した珪酸塩は、キルン乾燥機により乾燥を実施した。仕様、乾燥条件は以下の通りである。
回転筒:円筒状、内径50mm、加温帯550mm(電気炉)、かき上げ翼付き
回転数:2rpm、傾斜角:20/520、珪酸塩の供給速度:2.5g/分、ガス流速:窒素、96リットル/時間、向流、乾燥温度:200℃(粉体温度)
(iv)触媒の調製
内容積1リットルの攪拌翼のついたガラス製反応器に上記のようにして得られた乾燥珪酸塩20gを導入し、混合ヘプタン116ml、さらにトリエチルアルミニウムのヘプタン溶液(0.60M)84mlを加え、室温で攪拌した。1時間後、混合ヘプタンにて洗浄し、珪酸塩スラリーを200mlに調製した。
次に、上記のようにして調整された珪酸塩スラリーにトリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液(0.71M/L)0.96mlを添加し、25℃で1時間反応させた。平行して、〔(r)−ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル}]ジルコニウム〕を218mg(0.3mmol)と混合ヘプタンを87mlに、トリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液(0.71M)を3.31ml加えて、室温にて1時間反応させた混合物を、珪酸塩スラリーに加え、1時間攪拌後、混合ヘプタンを追加して500mlに調製した。
(v)予備重合/洗浄
続いて、窒素で十分置換を行った内容積1.0リットルの攪拌式オートクレーブに、先に調製した珪酸塩/メタロセン錯体スラリーを導入した。温度が40℃に安定したところでプロピレンを10g/時間の速度で供給し、温度を維持した。4時間後プロピレンの供給を停止し、さらに2時間維持した。
予備重合終了後、残モノマーをパージし、撹拌を停止させ約10分間静置後、上澄みを240mlデカントした。続いてトリイソブチルアルミニウム(0.71M/L)のヘプタン溶液0.95ml、さらに混合ヘプタンを560ml添加し、40℃で30分間撹拌し、10分間静置した後に、上澄みを560ml除いた。さらにこの操作を3回繰り返した。最後の上澄み液の成分分析を実施したところ有機アルミニウム成分の濃度は、1.23ミリモル/リットル、Zr濃度は8.6×10−6g/Lであり仕込量に対する上澄み液中の存在量は0.016%であった。
続いて、トリイソブチルアルミニウム(0.71M/L)のヘプタン溶液17.0ml添加した後に、45℃で減圧乾燥を実施した。この操作により固体触媒成分1g当たりポリプロピレンが2.0gを含む予備重合触媒が得られた。
(vi)重合
内容積200リットルの攪拌式オートクレーブ内をプロピレンで十分に置換した後、十分に脱水した液化プロピレン45kgを導入した。これにトリイソブチルアルミニウム・n−ヘプタン溶液500ml(0.12mol)、エチレン0.32kg、水素2.5リットル(標準状態の体積として)を加え、内温を30℃に維持した。次いで、メタロセン系重合触媒を1.90g(固体触媒成分として)アルゴンで圧入して重合を開始させ、40分かけて70℃に昇温し、60分間その温度を維持した。ここでエタノール100mlを添加して反応を停止させた。残ガスをパージし、ポリプロピレン重合体20.3kgを得た。この操作を5回繰り返し、プロピレン−エチレンランダム共重合体PP(G1−2)を得た。
この樹脂のMFRは7g/10分、エチレン含有量は0.75mol%、融点は142℃であった。
製造例(G1−5)
(i)固体成分(A)の製造
撹拌装置を備えた容量10Lのオートクレーブを充分に窒素で置換し、精製したn−ヘプタン2Lを導入した。更に、MgClを250g、Ti(O−n−Bu)を1.8L添加して、95℃で2hr反応を行った。反応生成物を40℃に冷却し、メチルハイドロジェンポリシロキサン(20センチストークスのもの)を500ml添加した。40℃で5hr反応を行った後、析出した固体生成物を精製したn−ヘプタンで充分に洗浄した。
次いで、精製したn−ヘプタンを導入して、上記固体生成物の濃度が200g/Lとなる様に調整した。ここに、SiClを300ml添加して、90℃で3hr反応を行った。反応生成物を精製したn−ヘプタンで充分に洗浄し、反応生成物の濃度が100g/Lとなる様に精製したn−ヘプタンを導入した。ここへ、フタル酸ジクロライド30mlを精製したn−ヘプタン270mlに混合した液を添加し、90℃で1hr反応を行った。反応生成物を精製したn−ヘプタンで充分に洗浄し、反応生成物の濃度が200g/Lとなる様に精製したn−ヘプタンを導入した。ここへ、TiClを1L添加し、95℃で3hr反応を行った。反応生成物を精製したn−ヘプタンで充分に洗浄し、固体成分(A)のスラリーを得た。このスラリーの一部をサンプリングして乾燥した。分析したところ、固体成分(A)のTi含有量は2.5wt%であった。
(ii)固体触媒成分(B)の調製
次に、撹拌装置を備えた容量20Lのオートクレーブを充分に窒素で置換し、上記固体成分(A)のスラリーを固体成分(A)として100g導入した。精製したn−ヘプタンを導入して、固体成分(A)の濃度が20g/Lとなる様に調整した。ここに、トリメチルビニルシランを25ml、(t−Bu)(Me)Si(OEt)を25ml、EtAlのn−ヘプタン希釈液をEtAlとして50g添加し、30℃で2hr反応を行った。反応生成物を精製したn−ヘプタンで充分に洗浄し、得られたスラリーの一部をサンプリングして乾燥した。分析したところ、固体成分にはTiが2.1wt%、(t−Bu)(Me)Si(OEt)が6.1wt%含まれていた。
上記で得られた固体成分を用いて、以下の手順により予備重合を行った。上記のスラリーに精製したn−ヘプタンを導入して、固体成分の濃度が10g/Lとなる様に調整した。スラリーを10℃に冷却した後、EtAlのn−ヘプタン希釈液をEtAlとして10g添加し、150gのプロピレンを2hrかけて供給した。プロピレンの供給が終わった後、更に30min反応を継続した。次いで、気相部を窒素で充分に置換し、反応生成物を精製したn−ヘプタンで充分に洗浄した。得られたスラリーをオートクレーブから抜き出し、真空乾燥を行って固体触媒成分(B)を得た。この固体触媒成分(B)は、固体成分1gあたり1.2gのポリプロピレンを含んでいた。分析したところ、この固体触媒成分(B)のポリプロピレンを除いた部分には、Tiが1.6wt%、(t−Bu)(Me)Si(OEt)が5.5wt%含まれていた。
(iii)重合
内容積200Lの攪拌式オートクレーブ内をプロピレンで充分に置換し、精製したn−ヘプタンを80L導入した。70℃に昇温した後、EtAlのn−ヘプタン希釈液をEtAlとして1.5g、水素5.0NL、および前記固体触媒成分(B)0.25g(ただし予備重合ポリマーは除く)を導入した。75℃に昇温した後、圧力が0.7MPaGになるようにプロピレンを供給し、重合を開始した。重合中は圧力を維持するようにプロピレンの供給を継続した。3時間後に、ブタノール1Lを加えて重合を停止した。残プロピレンをパージし、充分窒素で置換した。得られたスラリーは遠心分離機でろ過後、乾燥機で乾燥し、PP(G1−5)を得た。
PP(G1−1)〜PP(G1−5)、PP(G2−1)〜PP(G2−3)の各種分析結果を表9および表10に示す。
PP(G1−4)、PP(G1−5)およびPP(G2−2)、PP(G2−3)は成分(G)として本発明に規定する要件を満たさないものである。
Figure 0005487024
Figure 0005487024
(6−2)ブレンドによる成分(G)の製造
プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体(G1)として、上記<G1>のプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体(G1−1)〜(G1−5)と、プロピレン−エチレンランダム共重合体(G2)として、上記<G2>のプロピレン−エチレンランダム共重合体(G2−1)〜(G2−3)を、下記の表13〜14に記載の組成割合になるように計量し、ヘンシェルミキサーにて撹拌混合し、プロピレン系樹脂組成物(G)として、PP(G−1)〜PP(G−13)を得た。
上記組成物(G)の各種分析結果を下記表11〜12に示す。
PP(G−1)〜PP(G−13)のうち、PP(G−1)〜PP(G−13)は、本発明に規定する要件を満たすが、PP(G−7)〜PP(G−13)は、要件を満たすものではない。
Figure 0005487024
Figure 0005487024
(6−2)内層(3)用プロピレン系樹脂組成物(Z)に含有されるエチレン−α−オレフィン共重合体(H)
下記製造例(H−1)〜(H−4)で得られたエチレン−α−オレフィン共重合体PE(H−1)〜PE(H−4)と、下記の市販品のエチレン−α−オレフィン共重合体PE(H−5)を用いた。
PE(H−5):市販品 日本ポリエチレン社製商品名「KERNEL KF283」
(メタロセン触媒によるエチレン−α−オレフィン共重合体)
(製造例H−1)
エチレンとヘキセン−1の共重合体を製造した。触媒の調製は、特表平7−508545号公報(触媒系の調製)に記載された方法で実施した。即ち、錯体ジメチルシリレンビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ハフニウムジメチル2.0ミリモルに、トリペンタフルオロフェニルホウ素を上記錯体に対して等倍モル加え、トルエンで10リットルに希釈して触媒溶液を調製した。
内容積1.5リットルの撹拌式オートクレーブ型連続反応器にエチレンと1−ヘキセンとの混合物を1−ヘキセンの組成が73重量%となるように供給し、反応器内の圧力を130MPaに保ち、127℃で反応を行った。1時間あたりのポリマー生産量は約2.5kgであった。
反応終了後、得られたポリマーの各種分析を行った。得られたエチレン−α−オレフィン共重合体PE(H−1)の各種分析結果を表15に示す。
(製造例H−2〜4)
重合時の1−ヘキセンの組成と重合温度を表15に示すように変えた以外は製造例(H−1)と同様の製法で触媒調整及び重合を行った。
反応終了後、得られたポリマーの各種分析を行った。得られたエチレン−α−オレフィン共重合体PE(H−2)〜PE(H−4)、およびPE(H−5)の各種分析結果を表13に示す。
PE(H−1)〜PE(H−4)は、エチレン−α−オレフィン共重合体(H)として本発明において好ましいとされる要件を全て満たすものである。一方、PE(H−5)は、エチレン−α−オレフィン共重合体(H)として本発明に規定する要件を満たさないものである。
Figure 0005487024
(6−3)内層(3)用プロピレン系樹脂組成物(Z)に含有されるプロピレン系樹脂(I)
下記製造例(I−1)〜(I−3)で得られた樹脂PP(I−1)〜(I−3)および下記の市販品を使用した。(PP(I−1)、PP(I−2)は、単段重合によって得たホモポリプロピレン、PP(I−3)は、多段重合によって得たブロック共重合ポリプロピレンである。
PP(I−4):日本ポリプロ社製商品名「WINTEC WFW4」
(単段重合によって得たプロピレン−エチレンランダム共重合体)
PP(I−5):日本ポリプロ社製商品名「WINTEC WFX4」
(単段重合によって得たプロピレン−エチレンランダム共重合体)
これらのもののMFR、Tmを表14に示した。
(製造例I−1)
(i)固体成分(A)の製造
撹拌装置を備えた容量10Lのオートクレーブを充分に窒素で置換し、精製したn−ヘプタン2Lを導入した。更に、MgClを250g、Ti(O−n−Bu)を1.8L添加して、95℃で2hr反応を行った。反応生成物を40℃に冷却し、メチルハイドロジェンポリシロキサン(20センチストークスのもの)を500ml添加した。40℃で5hr反応を行った後、析出した固体生成物を精製したn−ヘプタンで充分に洗浄した。
次いで、精製したn−ヘプタンを導入して、上記固体生成物の濃度が200g/Lとなる様に調整した。ここに、SiClを300ml添加して、90℃で3hr反応を行った。反応生成物を精製したn−ヘプタンで充分に洗浄し、反応生成物の濃度が100g/Lとなる様に精製したn−ヘプタンを導入した。ここへ、フタル酸ジクロライド30mlを精製したn−ヘプタン270mlに混合した液を添加し、90℃で1hr反応を行った。反応生成物を精製したn−ヘプタンで充分に洗浄し、反応生成物の濃度が200g/Lとなる様に精製したn−ヘプタンを導入した。ここへ、TiClを1L添加し、95℃で3hr反応を行った。反応生成物を精製したn−ヘプタンで充分に洗浄し、固体成分(A)のスラリーを得た。このスラリーの一部をサンプリングして乾燥した。分析したところ、固体成分(A)のTi含有量は2.5wt%であった。
(ii)固体触媒成分(B)の調製
次に、撹拌装置を備えた容量20Lのオートクレーブを充分に窒素で置換し、上記固体成分(A)のスラリーを固体成分(A)として100g導入した。精製したn−ヘプタンを導入して、固体成分(A)の濃度が20g/Lとなる様に調整した。ここに、トリメチルビニルシランを25ml、(t−Bu)(Me)Si(OEt)を25ml、EtAlのn−ヘプタン希釈液をEtAlとして50g添加し、30℃で2hr反応を行った。反応生成物を精製したn−ヘプタンで充分に洗浄し、得られたスラリーの一部をサンプリングして乾燥した。分析したところ、固体成分にはTiが2.1wt%、(t−Bu)(Me)Si(OEt)が6.1wt%含まれていた。
上記で得られた固体成分を用いて、以下の手順により予備重合を行った。上記のスラリーに精製したn−ヘプタンを導入して、固体成分の濃度が10g/Lとなる様に調整した。スラリーを10℃に冷却した後、EtAlのn−ヘプタン希釈液をEtAlとして10g添加し、150gのプロピレンを2hrかけて供給した。プロピレンの供給が終わった後、更に30min反応を継続した。次いで、気相部を窒素で充分に置換し、反応生成物を精製したn−ヘプタンで充分に洗浄した。得られたスラリーをオートクレーブから抜き出し、真空乾燥を行って固体触媒成分(B)を得た。この固体触媒成分(B)は、固体成分1gあたり1.2gのポリプロピレンを含んでいた。分析したところ、この固体触媒成分(B)のポリプロピレンを除いた部分には、Tiが1.6wt%、(t−Bu)(Me)Si(OEt)が5.5wt%含まれていた。
(iii)重合
内容積200Lの攪拌式オートクレーブ内をプロピレンで充分に置換し、精製したn−ヘプタンを80L導入した。70℃に昇温した後、EtAlのn−ヘプタン希釈液をEtAlとして1.5g、水素5.0NL、および前記固体触媒成分(B)0.25g(ただし予備重合ポリマーは除く)を導入した。75℃に昇温した後、圧力が0.7MPaGになるようにプロピレンを供給し、重合を開始した。重合中は圧力を維持するようにプロピレンの供給を継続した。3時間後に、ブタノール1Lを加えて重合を停止した。残プロピレンをパージし、充分窒素で置換した。得られたスラリーは遠心分離機でろ過後、乾燥機で乾燥し、PP(I−1)を得た。
(製造例I−2)
重合の際に用いる水素の量を変更した以外は製造例I−1と同様に実施して、PP(I−2)を得た。結果を表14に示す。
(製造例I−3)
(i)固体成分触媒の製造
窒素置換した内容積50lの攪拌機付反応槽に脱水および脱酸素したn−ヘプタン20リットルを導入し、次いで塩化マグネシウム4モルとテトラブトキシチタン8モルとを導入して95℃で2時間反応させた後、温度を40℃に下げ、メチルヒドロポリシロキサン(20センチストークスのもの)480mlを添加して更に3時間反応させた後、反応液を取り出し、生成した固体成分をn−ヘプタンで洗浄した。
続いて、前記と同様の攪拌機付反応槽に脱水および脱酸素したn−ヘプタン15lを導入し、次いで固体成分をマグネシウム原子換算で3モルを加え、更に四塩化珪素8モルをn−ヘプタン25mlに加えた混合液を30℃で30分間かけて導入して、温度を90℃に昇温して、1時間反応させた後、反応液を取り出し、生成した固体成分をn−ヘプタンで洗浄した。
更に、前記と同様の攪拌機付反応槽に脱水および脱酸素したn−ヘプタン5lを導入し、次いで上で得られた四塩化珪素処理したチタン含有固体成分250gと、1,5−ヘキサジエン750g、t−ブチルーメチルージメトキシシシラン130ml、ジビニルジメチルシラン10ml、トリエチルアルミニウム225gをそれぞれ導入して30℃で2時間接触させた後、反応液を取り出し、n−ヘプタンで洗浄して固体成分触媒を得た。
得られた固体成分触媒は、1,5−ヘキサジエンの予備重合量がチタン含有固体成分あたり、2.97gであった。
(ii)プロピレン/プロピレン−エチレンの2段重合
内容積550lの第1段反応器に、温度70℃で加圧下(70℃においては約3.2MPaになる)において、プロピレンとトリエチルアルミニウムおよび、重合生成速度が20kg/時間となるような量の前記固体成分触媒とを連続的に供給し、更に分子量調整剤として水素をやはり連続的に供給して、液相中で第1段階の重合を実施した。
続いて、プロピレンパージ槽を経由して、生成重合体を内容積1900lの第2段反応器に導入し、温度60℃で圧力3.0MPaになるように、目的とする共重合体の組成割合に応じたプロピレンとエチレンとを連続的に供給し、更に分子量調整剤として水素を連続的に供給するとともに、活性水素化合物(エタノール)を、第1段階で供給した固体成分触媒中のチタン原子に対して200倍モルで、トリエチルアルミニウムに対して2.5倍モルになるように供給して、気相中で重合を実施し、生成重合体を連続的にベッセルに移した後、水分を含んだ窒素ガスを導入して反応を停止させた(第2段階重合)。
得られたPP(I−3)の分析結果を表14に示す。プロピレン−エチレン共重合体中のエチレン含有量は前述した方法で測定した。
PP(I−1)〜(I−3)は、プロピレン系樹脂(I)として本発明に規定する要件を全て満たすものである。一方、PP(I−4)、(I−5)は、プロピレン系樹脂(I)として本発明に規定する要件を満たさないものである。
Figure 0005487024
(実施例および比較例)
(1―i)中間層(1)用コンパウンド
中間層を形成するためのプロピレン系樹脂組成物(X)として、後記各表に示したプロピレン系樹脂組成物(成分(A))、エチレン−α−オレフィン共重合体(成分(B))、成分(C)としてのプロピレン系樹脂PP(成分(C))等を、各表に記載の割合になるように計量して得たプロピレン系樹脂組成物(X)を、ヘンシェルミキサーに投入後、さらにプロピレン系樹脂組成物(X)100重量部に対し、下記酸化防止剤1を0.07重量部、下記酸化防止剤2を0.07重量部および下記中和剤を0.01重量部添加し、充分に撹拌混合し、コンパウンドを得た。
・酸化防止剤1:テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製商品名イルガノックス1010)
・酸化防止剤2:トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製商品名イルガホス168)
・中和剤:ステアリン酸カルシウム(日東化成工業(株)製商品名Ca−St)
(1−ii)外層(2)用コンパウンド
外層を形成するためのプロピレン系樹脂組成物(Y)として、後記各表に示したプロピレン系樹脂(成分(D))を単独、または、成分(D)に、エチレン−α−オレフィン共重合体(成分(D3))、その他成分(成分(他))を、各表に記載の割合でドライブレンドしてコンパウンドを得た。
(1−iii)内層(3)用コンパウンド
内層を形成するためのプロピレン系樹脂組成物(Z)を構成するプロピレン系樹脂組成物(成分(G))、エチレン−α−オレフィン共重合体(成分(H))、プロピレン系樹脂(成分(I))として、後記各表に示した成分(G)、(H)、(I)、その他を、後記各表に記載の割合でドライブレンドしてコンパウンドを得た。
(2)造粒
得られた各コンパウンドを、スクリュー口径30mmの池貝製作所製PCM二軸押出機にて、スクリュー回転数200rpm、吐出量10kg/hr、押出機温度190℃で溶融混練し、ストランドダイから押し出された溶融樹脂を冷却水槽で冷却固化させながら引き取り、ストランドカッターを用いてストランドを直径約2mm、長さ約3mmに切断することで原料ペレットを得た。
(3)積層シートの製造
得られた各原料ペレットを、中間層用押出機として、口径50mmの単軸押出機、外層用および内層用の押出機として、口径40mmの単軸押出機を用いてマンドレル口径100mm、Lip幅3.0mmのサーキュラーダイから設定温度200℃にて押出し、水冷して、10m/minの速度で成形し、層比1(外層)/8(中間層)/1(内層)で厚み200μmの筒状成形体を得た。次に、得られた筒状成形体の片側サイドをカッターで切り積層シートとした後、該積層シートを23℃、50%RHの雰囲気下において24時間以上状態調整した。
得られた積層シートの物性を評価した。評価結果を以下の表に示す。
本発明の構成を満たす実施例の積層シートは、透明性、柔軟性、耐熱性、耐衝撃性、ヒートシール性、クリーン性および2次加工適正に優れるものであった。
Figure 0005487024
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なお、上記実施例29および30における外層の欄の「7125」は、クラレ社製スチレン系エラストマー商品名「ハイブラー7125」である。
(実施例1〜31について)
本願範囲内で得られた上記実施例のプロピレン系樹脂多層シートは、柔軟性、透明性、耐熱性、低温衝撃性、低温ヒートシール性、クリーン性に優れていた。
Figure 0005487024
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(比較例1〜27について)
本願範囲外より得られる上記比較例のプロピレン系樹脂多層シートは、柔軟性に乏しいため、空気孔を開けなければ内溶液を排出しにくかったり、触感を悪くしたりする。また、透明性が悪化し、内容物を確認し難い。耐熱性を十分に保てず、滅菌工程において内面融着を発生させたり、アバタ模様(斑点状の模様)やしわ等が発生し、外観を悪くする。満足な低温衝撃性が得られず、低温運搬、保管時の落下等により割れが起こり易くなる。低温ヒートシール性を十分に得ることができず、生産性を悪くしたり、高温ヒートシール処理を必要とするためエネルギー効率が悪くなったり、という問題を抱えていた。
本発明のプロピレン系樹脂多層シートは、柔軟性、透明性、耐熱性、低温耐衝撃性、低温ヒートシール性、クリーン性に優れ、多層成形時に界面荒れ等の外観不良、厚み変動が発生しにくいといった2次加工適正に富み、過酷なヒートシール条件においても、溶融樹脂が流れ、薄肉化する現象が生じにくいために、破袋強度に優れるプロピレン系樹脂多層シートであり、それを用いた加熱処理用包装袋は、輸液バッグやレトルト包装袋用途に極めて有用である。

Claims (5)

  1. 外層、中間層および内層の順で有する少なくとも3層からなる多層シートであり、各層が下記の条件を満たすことを特徴とするプロピレン系樹脂多層シート。
    (1)中間層
    中間層を構成するプロピレン系樹脂組成物(X)が、下記条件(A−i)〜(A−iii)を満たすプロピレン系樹脂組成物(A)45〜89wt%、下記条件(B−i)〜(B−ii)を満たすエチレン−α−オレフィン共重合体(B)10〜30wt%および下記条件(C−i)〜(C−ii)を満たすプロピレン系樹脂(C)1〜25wt%を含有する。
    ・プロピレン系樹脂組成物(A):
    (A−i)メタロセン系触媒を用いて、第1工程でDSC測定における融解ピーク温度Tm(A1)が125〜135℃のプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体成分(A1)を50〜60wt%、第2工程でエチレン含有量E(A2)が8〜14wt%のプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A2)を50〜40wt%逐次重合することで得られたプロピレン−エチレンブロック共重合体である。
    (A−ii)メルトフローレート(MFR(A):230℃、2.16kg)が4〜10g/10分の範囲である。
    (A−iii)固体粘弾性測定(DMA)により得られる温度−損失正接(tanδ)曲線において、−60〜20℃の範囲において観測されるガラス転移を表すtanδ曲線のピークが0℃以下に単一のピークを示す。
    ・エチレン−α−オレフィン共重合体(B)
    (B−i)密度が0.860〜0.910g/cmの範囲である。
    (B−ii)メルトフローレート(MFR(B):190℃、2.16kg)が0.1〜20g/10分の範囲である。
    ・プロピレン系樹脂(C):
    (C−i)融解ピーク温度Tm(C)が、融解ピーク温度Tm(A1)より6℃以上高温である。
    (C−ii)メルトフローレート(MFR(C):230℃、2.16kg)が0.5〜30g/10分の範囲である。
    (2)外層
    外層を構成するプロピレン系樹脂組成物(Y)は、融解ピーク温度Tm(D)が135〜170℃の範囲であるプロピレン系樹脂(D)を含有する。
    (3)内層
    内層を構成するプロピレン系樹脂組成物(Z)は、下記条件(G−i)〜(G−ii)を満たすプロピレン系樹脂組成物(G)45〜89wt%、下記条件(H−i)を満たすエチレン−α−オレフィン共重合体(H)10〜30wt%および下記条件(I−i)を満たすプロピレン系樹脂(I)1〜25wt%を含有する。
    ・プロピレン系樹脂組成物(G)
    (G−i)プロピレン系樹脂組成物(G)が、下記条件(G1−i)を満たすプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体(G1)30〜70wt%、下記条件(G2−i)〜(G2−ii)を満たすプロピレン−エチレンランダム共重合体(G2)30〜70wt%を、重合ブレンド法を除く方法で混合して得られたものである。
    (G−ii)メルトフローレート(MFR(G):230℃、2.16kg)が0.5〜20g/10分の範囲である。
    ・・プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体(G1)
    (G1−i)融解ピーク温度Tm(G1)が125〜145℃の範囲である。
    ・・プロピレン−エチレンランダム共重合体(G2)
    (G2−i)エチレン含有量E(G2)が7〜17wt%の範囲である。
    (G2−ii)メタロセン系触媒を用いて得られる。
    ・エチレン−α−オレフィン共重合体(H)
    (H−i)密度が0.860〜0.910g/cmの範囲である。
    ・プロピレン系樹脂(I)
    (I−i)融解ピーク温度Tm(I)が、融解ピーク温度Tm(G1)より6℃以上高温である。
  2. プロピレン系樹脂組成物(G)が、下記条件(G−iii)を満たすものであることを特徴とする請求項1に記載のプロピレン系樹脂多層シート。
    (G−iii)固体粘弾性測定(DMA)により得られる温度−損失正接(tanδ)曲線において、−60〜20℃の範囲において観測されるガラス転移を表すtanδ曲線のピークが0℃以下に単一のピークを示す。
  3. プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体(G1)が、メタロセン系触媒を用いて得られたものであることを特徴とする請求項1または2に記載のプロピレン系樹脂多層シート。
  4. 請求項1ないし3のいずれか1項に記載のプロピレン系樹脂多層シートを用いてなる加熱処理用包装体。
  5. 加熱処理用包装体が輸液バックであることを特徴とする請求項4に記載の加熱処理用包装体。
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