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JP5468483B2 - 水銀濃度測定装置および水銀濃度測定方法 - Google Patents

水銀濃度測定装置および水銀濃度測定方法 Download PDF

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Description

本発明は、塩化水銀および炭酸ガスを含有する試料ガス中の水銀濃度を定量する水銀濃度測定装置および水銀濃度測定方法に関する。
ごみ焼却処理場等の焼却施設の排気等に含まれる水銀の濃度を検出する装置として、例えば原子吸光分析法を用いた水銀濃度測定装置が使用されている。このような水銀濃度測定装置は、測定部へ導入した試料ガスに光を照射して特定波長の光の吸収量を検出し、この吸光量に基づいて試料ガスに含まれる水銀の濃度を求める。
上記測定部では、原子状水銀(金属水銀)の吸光量に基づいて水銀濃度の検出を行うため、試料ガス中の水銀濃度を正確に測定するには、試料ガス中に含まれる水銀化合物を原子状水銀に還元する必要がある。このため、上記測定部に試料ガスを導入する導入路には、上記水銀化合物を原子状水銀に還元するための還元部が設けられている。特に、焼却施設等の排気では、上記水銀化合物は主に塩化水銀であり、この塩化水銀を還元するための還元部が設けられる。
この還元部には、種々の還元方式が利用されており、例えば、塩化錫溶液等の液相の還元剤を使用する方式がある。しかしながら、このような液相方式では、還元剤が液体であるため還元剤の交換時の取り扱いに手数を要する上、大量の還元剤の溶液を廃液として処理する必要がある等のメンテナンス性の悪さが問題となる。
この対策として、後掲の特許文献1は、塩化第1錫の皮膜を有する金属錫の粒子からなる固体の還元剤を使用する技術を開示している。この技術では、錫粒子表面の塩化第1錫が塩化水銀の還元に寄与している。塩化水銀を還元することで塩化第1錫の皮膜は消耗されるが、試料ガス中に多量の塩化水素が含まれる場合は、上記錫粒子の表面が塩化水素と反応して新たな塩化第1錫の皮膜が形成される。そのため、長期間の使用が可能であるとされている。しかしながら、近年の焼却施設等の排気中に含まれる塩化水素は低濃度であるため、上記のように塩化水素との反応により塩化第1錫の皮膜を再生して還元能力を持続することができず、結果的に短期間で還元剤を交換しければならないという問題があった。還元剤の交換周期が短いことは、例えば、焼却施設における排気のモニタ等の連続的に水銀濃度を測定する用途では、水銀濃度を測定できない時間が増大することになるため好ましくない。
一方、水銀化合物は800度以上に加熱することで原子状水銀に分解(還元)されることが知られており、導入した試料ガスを800度以上に加熱する還元方式も存在している。しかしながら、この方式では、試料ガスの温度を800度以上に加熱できる高価な加熱炉が必要であり、装置が高価格になるという問題がある。
以上の問題を解決する技術として、後掲の特許文献2がある。当該技術では、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩基性化合物を含有する還元剤を使用し、上記の錫等の還元剤を採用している測定装置や測定方法と比較して、塩化水銀を原子状水銀に還元する還元能力を長期間持続させることができるとされている。
特開2001−33434号公報 特開2005−98713号公報
本願発明者らは、種々のアルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩基性化合物を還元剤とする還元フィルタの還元能力を鋭意研究した結果、塩化水素と塩化水銀のみを含む試料ガスに対して得られた塩化水銀の還元能力および塩化水素吸収能力が使用環境によっては大きく低下するという現象を確認した。
図5は、当該現象(以下、性能低下現象という。)を示す図である。図5において、横軸は、試料ガスの流入時間に対応する。また、左縦軸は還元効率に対応し、右縦軸は還元フィルタ下流側への塩化水素のリーク量に対応する。図5において、菱形で示すデータが還元効率であり、丸印で示すデータが塩化水素のリーク量である。また、白印が塩化水素と塩化水銀のみを含む試料ガスに対して得られたデータを示しており、黒印は性能低下現象が発生した状態を示している。なお、図5の各データは、ソーダライム(水酸化カルシウム含有量70wt%以上)5gをφ20mmのU字状管に充填して構成した還元フィルタ(温度400度)により取得している。
図5に示すように、上記還元フィルタに、塩化水素と塩化水銀のみを含む試料ガスを導入した場合、試料ガス導入開始から500分程度では、還元フィルタの下流側への塩化水素の流出がなく、また、塩化水銀の還元効率も100%である。これに対し、性能低下現象が発生している状況下(発生原因は後述する)では、試料ガス導入開始から200分程度で、還元フィルタの下流側への塩化水素のリークが始まり、その後、リーク量は、時間とともに急速に増大している。また、塩化水銀の還元効率も、試料ガス導入開始から200分程度で低下が始まり、試料ガス導入開始から500分程度経過すると40%以下にまで低下している。なお、図5に示すデータを取得した2種の試料ガス中に含まれる塩化水素および塩化水銀の量は同一である。
図5に示すデータは、同一構成の還元フィルタであっても、使用環境によりその寿命が著しく低下する場合があることを示している。上述のように、還元フィルタの下流側には、原子状水銀を定量する測定部が配置されており、このような性能低下が発生した還元フィルタでは、測定部に流入する試料ガスに塩化水銀が含まれることになる。したがって、水銀濃度を正確に測定することができない。また、このような状況下において、水銀濃度を正確に測定しようとすると、還元フィルタの還元率が100%、かつ下流側への塩化水素のリークが発生しない時間内において還元フィルタを交換する必要があり、水銀濃度測定装置の停止時間が増大してしまう。
本発明は、上記従来の事情に基づいて提案されたものであって、塩化水銀を含有する試料ガス中の水銀濃度を正確に測定できるとともに、還元剤交換時のメンテナンス性に優れ、還元能力を長期間持続でき、低コストで実現可能な水銀濃度測定装置および水銀濃度測定方法を提供することを目的とする。
本願発明者らは、上記性能低下現象の原因を鋭意研究し、本発明に至った。すなわち、本願発明者らは、上記性能低下現象が発生する原因が、試料ガス中に含まれる炭酸ガス(CO)であることを見出した。塩化水素と塩化水銀を含む試料ガスに濃度が10%程度の炭酸ガスが共存する環境下では、ソーダライムを充填した還元フィルタを使用すると、図5に示すように還元効率が低下する。また、還元効率が低下した状態で炭酸ガスの供給を停止しても、還元効率の上昇は確認できるものの100%には回復しない。当該環境下では、ソーダライムと炭酸ガスとの反応により多量の炭酸カルシウムが生成されており、当該炭酸カルシウムが還元フィルタの主成分になっていると推測される。このように、炭酸ガスが存在する環境下では、任意の塩基性化合物を還元フィルタとして使用することはできないのである。そして、本願発明者らは、アルカリ金属の炭酸塩を主成分とする還元剤が、炭酸ガスが存在する環境下であっても、塩化水銀に対する還元効率を維持し、下流側への塩化水素のリークを防止できる還元フィルタとして有効であることを見出した。
以上の知見のもと、本発明に係る水銀濃度測定装置は、塩化水銀と炭酸ガスを含有する試料ガス中の水銀濃度を連続的に測定する水銀濃度測定装置であって、第1の還元フィルタ、第2の還元フィルタ、ヒータおよび測定部を備える。第1の還元フィルタは、試料ガス導入路に配置され、内部に充填されたアルカリ金属の炭酸塩を主成分とする還元剤により、ヒータによる加熱下で、導入された試料ガス中の塩化水素を除去するとともに、当該試料ガス中の塩化水銀の少なくとも一部を原子状水銀に還元する。第2の還元フィルタは、試料ガス導入路において、第1の還元フィルタの下流側に配置され、第1の還元フィルタを通過した試料ガス中に含まれる塩化水銀を原子状水銀に還元する。測定部は、第2の還元フィルタを通過した試料ガス中に含まれる原子状水銀を定量する。
この構成では、塩化水銀と炭酸ガスとが共存する試料ガスに対しても、性能低下現象を生じることないため、試料ガス中に塩化水素が含まれていても、長期間にわたって試料ガス中から塩化水素を除去することができる。また、第1の還元フィルタの後段に、第2の還元フィルタを設けているため、第1の還元フィルタにおいて原子状水銀に還元されなかった塩化水銀を確実に還元し測定部へ導入することができる。また、本構成では、第1の還元フィルタにおいて、塩化水素が除去されるため、第2の還元フィルタとして、塩化水素に対する耐性が低いが、使用寿命が長い還元触媒を使用することができる。この還元触媒としては、酸化アルミニウム(活性アルミナ)やモレキュラーシーブスを触媒成分の主剤として含むものを使用することができる。そして、このような還元触媒を利用できる結果、炭酸ガスや塩化水素を含む試料ガスであっても、長期間安定して、連続的に、塩化水銀を原子状水銀に還元することができ、試料ガス中の水銀濃度を正確に測定することができる。
上記アルカリ金属の炭酸塩としては、例えば、炭酸ナトリウム(無水物)を用いることができる。また、炭酸ナトリウム(無水物)は顆粒体であることが好ましい。これにより、第1の還元フィルタ内に充填した際に、充填率を低下させることなく、試料ガスとの接触面積を確保し、かつガス通過抵抗の増大を避けることができ、還元能力および塩化水素除去能力を長期間持続させることができる。なお、ヒータは、第1の還元フィルタを、300〜500度に加熱する構成であることが好ましい。この場合、簡易な加熱炉を採用できるため、装置を低コストで実現することができる。
さらに、他の観点では、本発明は、塩化水銀と炭酸ガスを含有する試料ガス中の水銀濃度を連続的に測定する水銀濃度測定方法を提供することができる。すなわち、本発明に係る水銀濃度測定方法では、まず、試料ガスを加熱下でアルカリ金属の炭酸塩を主成分とする還元剤に接触させることにより、試料ガス中の塩化水素が除去されるとともに、当該試料ガス中の塩化水銀の少なくとも一部が原子状水銀に還元される。次いで、還元剤に接触した試料ガスを還元触媒に接触させることにより、当該試料ガス中に含まれる塩化水銀が原子状水銀に還元される。そして、還元触媒に接触した試料ガス中の原子状水銀が定量される。
本発明によれば、試料ガス中に塩化水素や炭酸ガスが含まれる場合であっても、試料ガス中の水銀濃度を正確に測定することができる。また、塩化水銀を原子状水銀に還元する還元能力および試料ガス中から塩化水素を除去する能力を長期間持続することができる。その結果、第2の還元フィルタとして、長寿命な還元触媒を採用することができ、これらの組み合わせによって、長期間安定して、連続的に、塩化水銀を原子状水銀に還元することができる。
本発明における水銀濃度測定装置の構成を示す概略機能ブロック図 本発明における水銀濃度測定装置が備える還元フィルタを示す図 本発明における水銀濃度測定装置が備える還元フィルタの還元効率の温度依存性を示す図 本発明における水銀濃度測定装置が備える還元フィルタの塩化水素除去能力の温度依存性を示す図 塩基性化合物を含む還元フィルタの性能低下現象を示す図
以下、本発明の実施の形態を図面にしたがって詳細に説明する。図1は、本発明を適用した水銀濃度測定装置を示す概略機能ブロック図である。
図1に示すように、本発明の水銀濃度測定装置は、塩化水銀の還元を行う還元部1と、原子吸光分析法等を適用して試料ガス10中に含まれる原子状水銀の濃度を測定する測定部5を備えている。
試料ガス10は、上記測定部5の排気側に備えた吸引ポンプ6により導入管9を介して吸引され、還元部1を通過した後、上記測定部5内に導入される。
上記還元部1は、内部に還元剤11を充填した第1の還元フィルタ2と、当該第1の還元フィルタ2を外部から加熱するヒータ3と、第1の還元フィルタ2の下流側に接続された第2の還元フィルタ4を備える。
図2は、水銀濃度測定装置が備える第1の還元フィルタ2を示す図である。図2に示すように、加熱された第1の還元フィルタ2を保温する断熱材7が、第1の還元フィルタ2を外部から覆っている。第1の還元フィルタ2は、ヒータ3の加熱に耐え得る材質で、任意の形状に設計すればよいが、図2に示す例では、第1の還元フィルタ2として、石英ガラスからなるU字管を採用している。
図2に示すように、U字管の温度は当該U字管の外壁に取り付けられた温度センサ8で測定されるようになっており、制御部20が、温度センサ8の出力信号に基づいて、U字管の温度を所定の温度に保つようにヒータ3の発熱量を制御する。
また、第1の還元フィルタ2は、U字管の両端に備えた図示しないフランジ等の連結具により、水銀濃度測定装置から取り外すことができるように構成されており、第1の還元フィルタ2に充填する還元剤11を交換できるようになっている。
なお、図示していないが、導入管9および第2の還元フィルタ4も、外部から加熱するヒータと、導入管9および第2の還元フィルタ4を外部から覆う断熱材を備えており、導入管9および第2の還元フィルタ4の温度を所定の温度に保つことができる構成としている。また、導入管9と第1の還元フィルタ2との連結部には、連結後に上記連結具を外部から覆う断熱材を装着して、導入管9および第1の還元フィルタ2の温度が低下しない構成としている。
還元剤11は、アルカリ金属の炭酸塩を主成分とする。このアルカリ金属炭酸塩としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等を使用することができる。炭酸リチウムおよび炭酸ルビジウム、炭酸セシウム等も使用可能であるが、高価であるため、炭酸ナトリウム等と比較すると好ましくない。
また、炭酸ガスが存在する環境下では、アルカリ金属の水酸化物を還元剤として使用すると炭酸ガスとの反応により還元剤中にアルカリ金属の炭酸塩が生成されるため、当該炭酸塩が還元剤の主成分になると同様の作用効果を生じると推測される。しかしながら、アルカリ金属の水酸化物は劇薬であり、潮解性を有するものもあるため、フィルタの交換作業が極めて困難になる。そのため、アルカリ金属の水酸化物の使用は好ましくない。
特に限定されないが、還元剤11は顆粒体であることが好ましい。このように還元剤11として顆粒体を使用すれば、U字管への充填率を低下させることなく、かつ、ガス通過抵抗を増大させることもない。また、還元剤11の表面積を増大できるため、塩化水銀を原子状水銀に還元する還元能力および塩化水素を除去する能力を長期間持続させることができる。また、このような課粒体(固体)の還元剤は、取り扱いが容易であるため、第1の還元フィルタ2の交換作業も簡素化されメンテナンス性も向上する。なお、顆粒体の粒径は、例えば、0.3mm〜1mm程度とすることができる。
なお、上記還元剤11は、少なくとも1種の上述のアルカリ金属の炭酸塩を主成分として含有するものであれば、その組成を特に限定するものではない。
例えば、還元剤11として、炭酸ナトリウム(無水物)を用いた場合、試料ガス10中に含まれる塩化水銀は、第1の還元フィルタ2を通過するときに、原子状水銀に還元される。また、試料ガス10中に含まれる塩化水素は、第1の還元フィルタ2を通過するときに中和される。
上記還元反応では、還元効率(第1の還元フィルタ2を通過する塩化水銀が原子状水銀に還元される割合)が第1の還元フィルタ2の温度(以下、還元温度という。)に依存して変化する。図3は、炭酸ナトリウムの顆粒体(粒径0.3〜1.0mm)を還元剤11とした場合の還元効率の温度依存性を示す図である。図3において、横軸は還元温度に対応し、縦軸は還元効率に対応する。図3に示すデータは、φ20mmのU字管に炭酸ナトリウムの顆粒体を10gを充填した第1の還元フィルタ2により取得している。この場合、U字管内のガス通過方向における炭酸ナトリウムの顆粒体の充填長は50mm程度になっている。また、試料ガス10は、塩化水素を含む塩化水銀ガス(水銀濃度:170μg/m、塩化水素濃度:1000ppm)を300ml/minの流量で導入している。
図3より、還元温度が450度以上であれば、還元効率が100%であり、試料ガス10中のほぼ全ての塩化水銀を還元できることが理解できる。一方、還元温度が300度では、還元効率が約68%であり、試料ガス10中の一部の塩化水銀が還元される。なお、上記試料ガス10に、図5に示す性能低下現象が発生する炭酸ガス(濃度10%)を添加した場合も、図3に示すデータは変化しない。
また、上記中和反応においても、塩化水素の除去能力は上述の還元温度に依存して変化する。図4は、炭酸ナトリウムの顆粒体(粒径0.3〜1.0mm)を還元剤11とした場合の塩化水素の除去能力の温度依存性を示す図である。還元効率に対応する。ここでは、第1の還元フィルタ2の下流側において、塩化水素計(分解能:1ppm)の指示値がゼロより大きくなる時点(下流側で塩化水素のリークが確認される)までの時間を塩化水素の除去能力として評価している。図4において、横軸は還元温度に対応し、縦軸は塩化水素のリーク開始時間に対応する。
図4に示すデータは、塩化水素除去能力を短時間で評価するため、φ20mmのU字管に炭酸ナトリウムの顆粒体を5gを充填した第1の還元フィルタ2により取得している。この場合、U字管内のガス通過方向における炭酸ナトリウムの顆粒体の充填長は25mm程度になっている。また、試料ガス10は、塩化水素を含む塩化水銀ガス(水銀濃度:170μg/m、塩化水素濃度:1000ppm)を300ml/minの流量で導入している。
図4より、還元温度が450度であれば、1000ppmオーダの比較的高濃度の塩化水素が含まれる上記試料ガスに対しても20時間程度、下流側への塩化水素のリークを防止できることが理解できる。一方、還元温度が300度では、2時間程度で下流側への塩化水素のリークが発生しており、還元温度が300度よりも低くなると、第1の還元フィルタ2において塩化水素を除去することが期待できないと考えられる。なお、上記試料ガス10に、図5に示す性能低下現象が発生する炭酸ガス(濃度10%)を添加した場合も、図4に示すデータは変化しない。
以上より、塩化水素除去能力の観点では、第1の還元フィルタ2の温度は、300度以上であることが好ましい。また、装置の製造コストの観点では、図2に示すような比較的簡易な加熱炉を採用可能とするため、第1の還元フィルタ2の温度は、500度以下であることが好ましい。
なお、還元温度が450度以下になると、塩化水銀の還元効率が100%より小さくなる。しかしながら、本実施形態では、上述のように、第1の還元フィルタ2の下流側に第2の還元フィルタ4を設けているため、第2の還元フィルタ4により第1の還元フィルタ2において還元されなかった塩化水銀を原子状水銀に還元することができる。
また、本実施形態では、第1の還元フィルタ2において試料ガス中の塩化水素を完全に除去することができる。このため、従来、塩化水素が存在する環境下では耐性の問題から採用することが困難であった還元触媒を第2の還元フィルタ4として使用することができる。例えば、還元触媒として、酸化アルミニウム(活性アルミナ)やモレキュラーシーブスを触媒成分の主剤として含むものを使用することができる。当該還元触媒は、長寿命であり、このような第1の還元フィルタ2と第2の還元フィルタ4の組み合わせによって、長期間安定して、連続的に、塩化水銀を原子状水銀に還元することが可能になる。また、第1の還元フィルタ2において、塩化水素が完全に除去されるため、第1の還元フィルタ2の下流側おいて、原子状水銀が塩化水素と反応することがなく、測定部5において、試料ガス10中の水銀濃度を正確に測定することができる。
なお、導入管9および第2の還元フィルタ4は、塩化水銀が吸着されない温度である160度以上に加熱されており、内壁面等への塩化水銀の吸着に起因する測定誤差が発生することもない。特に限定されないが、上記構成では、導入管9の温度は180度程度に設定されている。また、第2の還元フィルタ4の温度は、還元触媒の触媒能に応じて適宜設定(例えば、300〜500度)すればよいが、上記構成では、第1の還元フィルタ2と同一の温度に設定されている。
以上説明したように、本実施形態によれば、試料ガス中に塩化水素や炭酸ガスが含まれる場合であっても、試料ガス中の水銀濃度を正確に測定することができる。また、塩化水銀を原子状水銀に還元する還元能力および試料ガス中から塩化水素を除去する能力を長期間持続することができ、長期間安定して、連続的に、塩化水銀を原子状水銀に還元することができる。
なお、上述した実施形態は本発明の技術的範囲を制限するものではなく、既に記載したもの以外でも、本発明の範囲内で種々の変形や応用が可能である。例えば、上記実施形態では、導入管9を備える構成としたが、例えば、焼却施設の煙突から試料ガスを直接サンプリングして測定を行う場合は、第1の還元フィルタを直線状の管で構成し、当該還元フィルタの上流端を直接煙突内に挿入する構成としてもよい。
本発明は、還元剤交換時のメンテナンス性に優れ、還元能力を長期間持続でき、かつ、低コストで実現可能であり、焼却施設の排気をはじめとする試料ガス中に含まれる水銀濃度の測定に有用である。
1 還元部
2 第1の還元フィルタ
3 ヒータ
4 第2の還元フィルタ
5 測定部
10 試料ガス
11 還元剤(塩化水素吸収剤)

Claims (6)

  1. 塩化水銀と炭酸ガスを含有する試料ガス中の水銀濃度を連続的に測定する水銀濃度測定装置であって、
    試料ガス導入路に配置され、内部に充填されたアルカリ金属の炭酸塩を主成分とする還元剤により、加熱下で、導入された試料ガス中の塩化水素を除去するとともに、当該試料ガス中の塩化水銀の少なくとも一部を原子状水銀に還元する第1の還元フィルタと、
    前記第1の還元フィルタを加熱するヒータと、
    前記試料ガス導入路において、前記第1の還元フィルタの下流側に配置され、前記第1の還元フィルタを通過した試料ガス中に含まれる塩化水銀を原子状水銀に還元する第2の還元フィルタと、
    前記第2の還元フィルタを通過した試料ガスが導入され、当該試料ガス中に含まれる原子状水銀を定量する測定部と、
    を備えたことを特徴とする水銀濃度測定装置。
  2. 前記炭酸塩が炭酸ナトリウムである請求項1記載の水銀濃度測定装置。
  3. 前記炭酸ナトリウムが顆粒体である請求項2記載の水銀濃度測定装置。
  4. 前記ヒータは、前記第1の還元フィルタを、300〜500度に加熱する請求項1から3のいずれか1項に記載の水銀濃度測定装置。
  5. 前記第2の還元フィルタは、酸化アルミニウムまたはモレキュラーシーブスを触媒成分の主剤として含む、請求項1から4のいずれか1項記載の水銀濃度測定装置。
  6. 塩化水銀と炭酸ガスを含有する試料ガス中の水銀濃度を連続的に測定する水銀濃度測定方法であって、
    試料ガスを加熱下でアルカリ金属の炭酸塩を主成分とする還元剤に接触させることにより、試料ガス中の塩化水素を除去するとともに、当該試料ガス中の塩化水銀の少なくとも一部を原子状水銀に還元するステップと、
    前記還元剤に接触した試料ガスを還元触媒に接触させることにより、当該試料ガス中に含まれる塩化水銀を原子状水銀に還元するステップと、
    上記還元触媒に接触した試料ガス中の原子状水銀を定量するステップと、
    を有することを特徴とする水銀濃度測定方法。
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