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JP5458983B2 - 光フィルターの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、光フィルターの製造方法に関する。
透過波長を可変にする干渉フィルターが提案されている(特許文献1)。特許文献1の図1に示すように、互いに平行に保持された一対の基板と、この一対の基板上に互いに対向すると共に一定間隔のギャップを有するように形成された一対の反射膜とを備える。一対の反射膜間に入射された光はファブリペロー干渉計と同じ原理で多重反射され、特定波長帯域以外の光は干渉により打ち消され、特定波長帯域の光のみが透過される。一対の反射膜間のギャップを可変することで、この干渉フィルターはバンドバスフィルターとして機能し、エタロンと称されている。
一対の反射膜は、例えば特許文献2に示す誘電体多層膜や、高反射率が確保される金属膜で形成できる。また、一対の基板にはそれぞれ接合膜が形成され、各接合膜はその表面を活性化させて接合される(特許文献3,4)。
特開平11−142752号公報 特開2009−134028号公報 特開2008−116669号公報 特許第4337935号公報
特許文献3の接合方法では、一対の基板は、一対の基板にそれぞれ形成された金属膜(接合膜)を介して固体接合される。しかし、金属膜の固体接合は、表面粗さの影響を受け、接合信頼性に欠ける。
一方、特許文献4の接合方法は、接合膜をオゾンや紫外線で活性化して接合している。この接合膜の活性化工程では、金属または誘電体多層膜で形成された一対の反射膜がダメージを受けて変質または劣化して、反射率が低下してしまう虞があることが判明した。一対の反射膜は、光フィルターが配置される環境によってもオゾンや紫外線の悪影響を受けてしまう。
そこで、本発明の幾つかの態様では、光フィルターの製造時又実使用時にはオゾンまたは紫外線から一対の反射膜を保護して、光フィルター特性を劣化させることがない光フィルターの製造方法を提供することにある。
(1)本発明の一態様に係る光フィルターの製造方法は、
第1反射膜が形成された第1基板に、第1接合膜を形成する工程と、
第2反射膜が形成された第2基板に、第2接合膜を形成する工程と、
前記第1基板の前記第1反射膜の表面を覆って第1バリア膜を形成する工程と、
前記第2基板の前記第2反射膜の表面を覆って第2バリア膜を形成する工程と、
前記第1,第2接合膜の各々に、オゾンまたは紫外線によって活性化エネルギーを付与する工程と、
活性化された前記第1,第2接合膜を接合して、前記第1,第2基板を張り合わせる工程と、
を有し、
前記第1バリア膜は、前記第1接合膜に活性化エネルギーを付与する前に形成され、
前記第2バリア膜は、前記第2接合膜に活性化エネルギーを付与する前に形成されることを特徴とする。
本発明の一態様によれば、第1,第2接合膜にオゾンまたは紫外線によって活性化エネルギーを付与する時に、オゾンまたは紫外線が第1,第2反射膜に入射することを、第1,第2バリア膜により抑制できる。従って、第1,第2反射膜がオゾンまたは紫外線によって変質または劣化することを抑制して、第1,第2反射膜の反射率が低減することを抑制できる。
(2)本発明の一態様では、前記第1バリア膜と前記第1接合膜とは、同一材料により同一工程で成膜され、前記第2バリア膜と前記第2接合膜とは、同一材料により同一工程で成膜されることができる。
こうすると、第1バリア膜を成膜するための工程と、第1接合膜の成膜工程とを同一工程で実施でき、第2バリア膜を成膜するための工程を、第2接合膜の成膜工程とを同一工程でき、第1,第2バリア膜を成膜するための工程を増設する必要がない。第1,第2バリア膜と前記第1,第2接合膜とは、いかなる方法で作製されたものでもよく、例えばプラズマ重合法、CVD法、PVD法のような各種気相成膜法や、各種液相成膜法等により作製することができる。中でも、プラズマ重合法により作製されたものが好ましい。プラズマ重合法によれば、緻密で均質な膜を効率よく作製することができる。
(3)本発明の一態様では、前記第1,第2接合膜及び前記第1,第2バリア膜の各々は、シロキサン結合を有するSi骨格と、前記Si骨格に結合される脱離基と、を含んで形成され、前記第1,第2接合膜に活性化エネルギーを付与する工程では、前記第1,第2接合膜の前記Si骨格より前記脱離基が脱離されて未結合手を形成する工程を含み、前記第1,第2接合膜の接合工程では、活性化された前記第1,第2接合膜の各々の前記未結合手同士を結合させる工程を含むことができる。
こうすると、第1,第2接合膜の接合工程では、活性化された第1,第2接合膜の各々の未結合手同士を結合させて、第1,第2基板を強固に接合できる。第1,第2バリア膜の各々は、シロキサン(Si−O−Si)結合を有するSi骨格と、Si骨格に結合される脱離基とを含んで形成される。シロキサン結合によりガスの通過ルートは遮断されてオゾンガス等に対する高いガスバリア性を有することができる。また、第1,第2バリア膜には未結合手がないので反応性が低く、酸化または硫化し難い性質となる。更に、シロキサン結合はSiO膜のように紫外線の波長帯域を含む200nm以下の波長は吸収する。第1,第2バリア膜は、紫外線を吸収しても励起してエネルギー状態が高くなるだけで、シロキサン結合の結合エネルギーは紫外線による励起エネルギーよりも高いので、状態変化はない。
(4)本発明の他の態様に係る光フィルターは、
第1基板と、
前記第1基板と対向する第2基板と、
前記第1基板に設けられた第1反射膜と、
前記第2基板に設けられ、前記第1反射膜と対向する第2反射膜と、
前記第1基板に設けられた第1接合膜と、
前記第2基板に設けられ、前記第1,第2反射膜間に一定の間隔を設けて前記第1接合膜に接合される第2接合膜と、
前記第1反射膜の表面に形成された第1バリア膜と、
前記第2反射膜の表面に形成された第2バリア膜と、
を有し、
前記第1バリア膜は、オゾンまたは紫外線の透過率が前記第1反射膜よりも低く、
前記第2バリア膜は、オゾンまたは紫外線の透過率が前記第2反射膜よりも低いことを特徴とする。
この光フィルターは、オゾンまたは紫外線が第1,第2反射膜に入射することを、第1,第2バリア膜により抑制できる。従って、第1,第2反射膜がオゾンまたは紫外線によって変質または劣化することを抑制して、第1,第2反射膜の反射率が低減することを抑制できる。よって、光フィルターが紫外線やオゾン雰囲気に晒される実使用時や、第1,第2接合膜にオゾンまたは紫外線によって活性化エネルギーを付与する光フィルターの製造時に、第1,第2反射膜が変質または劣化することを抑制できる。
(5)本発明の他の態様では、前記第1バリア膜は、前記第1反射膜よりも硫化性が低く、前記第2バリア膜は、前記第2反射膜よりも硫化性が低くすることができる。
こうすると、第1,第2反射膜が硫化水素などによって硫化されて変質または劣化することを抑制できる。
(6)本発明の他の態様では、前記第1,第2バリア膜は、プラズマ重合法により成膜される前記第1,第2接合膜と同時に形成されるプラズマ重合膜とすることができる。プラズマ重合法によれば、第1,第2バリア膜及び第1,第2接合膜を緻密で均質な膜とすることができる上、成膜工程が増えないので低コストを維持できる。
(7)本発明の他の態様では、前記第1,第2接合膜及び前記第1,第2バリア膜の各々は、プラズマ重合時にシロキサン結合を有するSi骨格と、前記Si骨格に結合される脱離基と、を含み、前記第1,第2接合膜は、活性化エネルギーにより前記Si骨格より前記脱離基が脱離されて形成される未結合手同士が結合されて接合することができる。
第1,第2接合膜は、活性化時の未結合手同士が結合されて、第1,第2基板を強固に接合できる。一方、第1,第2バリア膜の各々は、シロキサン結合によりガスの通過ルートは遮断されて高いガスバリア性を有し、未結合手がないので反応性が低く、シロキサン結合が紫外線を吸収できる。
(8)本発明の他の態様は、上述した光フィルターを含む分析機器を定義している。この種の分析機器としては、被分析対象にて反射、吸収、透過または発光した光を、可変波長の光フィルターに入射させ、光フィルターを透過した各波長の光を受光素子にて受け、受光素子からの信号を演算回路にて演算することで、例えば各波長の強度を測定して、色、ガス中の混合成分等を分析することができる。
(9)本発明の更に他の態様は、上述した光フィルターを含む光機器を定義している。この種の光機器として、例えば光符号分割多重(OCDM:Optical code Division Multiplexing)や波長多重(WDM:Wavelength Division Multiplexing)等の光多重通信システムの送信機を挙げることができる。WDMでは、光パルス信号を構成する光パルスの波長によってチャンネルを識別する。OCDMは、符号化された光パルス信号のパターンマッチングによってチャンネルを識別するが、光パルス信号を構成する光パルスは、異なる波長の光成分を含んでいる。よって、光多重通信システムの送信機では、複数の波長の光を用いる必要があり、本発明の一態様に係る光フィルターを用いれば、単一光源からの光から複数の波長の光を得ることができる。
本発明の一実施形態に係る光フィルター全体の縦断面図である。 図1に示す光フィルターの一部を切断した概略斜視図である。 活性化エネルギー付与前のプラズマ重合膜(第1,第2バリア膜)の構造を模式的に示す模式図である。 活性化エネルギー付与後のプラズマ重合膜の構造を模式的に示す模式図である。 図5(A)〜図5(C)は、第1基板の第1〜第3製造工程をそれぞれ示す図である。 図6(A)〜図6(C)は、第1基板の第4〜第6製造工程をそれぞれ示す図である。 図7(A)〜図7(D)は、第2基板の第1〜第4製造工程をそれぞれ示す図である。 図8(A)〜図8(D)は、第2基板の第5〜第8製造工程をそれぞれ示す図である。 活性前の第1,第2接合膜に活性化エネルギー付与工程を示す図である。 第,1第2基板の接合工程を示す図である。 本発明の更に他の実施形態である分析装置のブロック図である。 図11に示す装置での分光測定動作を示すフローチャートである。 本発明の更に他の実施形態である光機器のブロック図である。
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、以下に説明する本実施形態は特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
1. 光フィルター構造の概要
図1は本実施形態の光フィルター10の全体の縦断面図であり、図2は光フィルター10の一部を切断した概略斜視図である。図1及び図2に示す光フィルター10は、第1基板20と、第1基板10と対向する第2基板30とを含む。本実施形態では、第1基板20を固定基板またはベース基板とし、第2基板30を可動基板またはダイアフラム基板とするが、いずれか一方または双方が可動であれば良い。
第1,第2基板20,30は、それぞれ例えば、ソーダガラス、結晶性ガラス、石英ガラス、鉛ガラス、カリウムガラス、ホウケイ酸ガラス、無アルカリガラスなどの各種ガラスや、水晶などにより形成されている。本実施形態では、各基板20,30の構成材料は合成石英ガラスである。第1,第2基板20,30の各々は、一辺が例えば10mmの正方形に形成され、円状のダイアフラムとして機能する部分の最大直径は例えば5mmである。
第1基板20は、第2基板30と対向する対向面20Aを有し、第2基板30は第1基板20と対向する対向面30Aを有する。本実施形態では、対向面20Aに例えばそれぞれ高さの異なる第1〜第4対向面20A1〜20A4が形成され、対向面30Aは平坦に形成されている。
第1基板20の第1対向面20A1には第1反射膜40が、第2対向面20A2には第1電極60が、第3対向面20A3には第1接合膜100が、第4対向面20A4に互いに絶縁された第1配線層及び中継配線層62Bが形成されている。第2基板30の対向面30Aには、第1反射膜40と対向する第2反射膜50と、第1電極60と対向する第2電極70と、第1接合膜100と対向する第2対向膜110と、中継配線層62Bと対向して、第2配線層72がそれぞれ形成されている。また、第1反射膜100の表面には第1バリア膜120が形成され、第2反射膜110の表面には第2バリア膜130が形成されている。
なお、図1に示すように、第1,第2基板20,30の外周部には、第1電極60を外部と接続するための第1電極取出し部64と、第2電極70を外部と接続するための第2電極取出し部74とが形成されている。第1電極取り出し部64では、第1電極60と導通する第1配線層62が、第1リード線68と接続されている。第2電極取り出し部74では、第2基板30に形成された第2配線層72が、ハンダ等の導電材66を介して第1基板20側の中継配線層62Bと導通され、中継配線層62Bに第2リード線76が接続されている。
ベース基板である第1基板20は、厚みが例えば500μmに形成されるガラス基材をエッチングにより第1〜第4対向面20A1〜20A4が形成される。第1基板20は、第2基板30と対向する対向面20Aのうちの中央の第1対向面20A1に、例えば円形の第1反射膜40が形成されている。第2基板30は、厚みが例えば200μmに形成されるガラス基材をエッチングにより、図2に示すように薄肉の例えばリング状のダイアフラム部32が形成され、その中心に位置は厚肉の反射膜支持部34が形成される。第2基板30は、第1基板20と対向する対向面30Aにて、反射膜支持部34の位置に、第1反射膜40と対向する例えば円形の第2反射膜50が形成されている。
第1,第2反射膜40,50は、例えば直径が約3mmの円形状に形成されている。この第1,第2反射膜40,50は、同一材料で同一厚さに形成される。第1,第2反射膜40,50は、例えばAg、Al、SiO、TiO、Ta等の材料をスパッタ法または蒸着法を用いて単層または積層して成膜され、最外表面がAg、Al等の金属膜となるように形成される。第1,第2反射膜40,50は、金属層の単層としてもよいが、例えばTiOとSiOとを交互に積層した誘電体多層膜としても良い。
さらに、第1,第2基板20,30の各対向面20A1,20A2,30Aとは逆側の面にて、第1,第2反射膜40,50に対応する位置に図示しない反射防止膜(AR)を形成することができる。この反射防止膜は、低屈折率膜および高屈折率膜を交互に積層することで形成され、第1,第2基板20,30の界面での可視光の反射率を低下させ、透過率を増大させる。
表面に第1,第2バリア膜120,130が形成された第1,第2反射膜40,50は、図1に示す第1ギャップG1を介して対向配置されている。なお、本実施形態では、第1反射膜40を固定鏡とし、第2反射膜50を可動鏡とするが、上述した第1,第2基板20,30の態様に応じて、第1,第2反射膜40,50のいずれか一方または双方を可動とすることができる。
平面視で第1反射膜40の周囲の位置であって、第1基板20の第1対向面20A1の周囲の第2対向面20A2には、第1電極60が形成されている。同様に、第2基板30の対向面30Aには、第1電極60と対向して第2電極70が設けられている。第1電極60と第2電極70は、図2に示すように例えばリング状に形成され、図1に示す第2ギャップG2を介して、対向配置されている。なお、第1,第2電極60,70の表面は、絶縁膜にて被覆することができる。
本実施形態では、第1基板20の対向面20Aは、第1反射膜40が形成される第1対向面20A1と、平面視で第1対向面20A1の周囲に配置されて、第1電極60が形成される第2対向面20A2とを有する。第1対向面20A1と第2対向面20A2とは同一面であっても良いが、本実施形態では第1対向面20A1と第2対向面20A2との間には段差があり、第2対向面20A2の方が第1対向面20A1よりも第2基板30に近い位置に設定している。これにより、第1ギャップG1>第2ギャップG2の関係が成立する。これに限らず、第1ギャップG1<第2ギャップG2としても良い。
第1,第2電極60,70は、同一材料にて同一厚さに形成される。第1,第2電極60,70は、本実施形態では、酸化錫を不純物としてドープした透明のITO(Indium Tin Oxide:インジウム錫酸化物)を用い、例えば0.1μm程度の厚さにスパッタ法を用いて成膜されている。従って、アクチュエーター部のギャップは、凹部の深さ、電極の厚さ、接合膜の厚さにより決まることになる。ここで、電極部の材料はITOに限定するものではなく、金等の金属を材料に用いてもよいが、本実施形態では、透明であるので放電したかどうかの確認が行い易い等の理由で、ITOを用いることとする。
ここで、一対の第1,第2電極60,70は、第1,第2反射膜40,50間の第1ギャップG1の大きさを可変するギャップ可変駆動部80として機能する。本実施形態のギャップ可変駆動部80は、静電アクチュエーターである。静電アクチュエーター80は、一対の第1,第2電極60,70に電位差が与えられ、それにより生ずる静電引力により一対の第1,第2電極60,70間の第2ギャップG2の大きさを可変し、もって第2基板30を第1基板20に対して相対的に移動させることで、第1,第2反射膜40,50間の第1ギャップG1の大きさを可変している。なお、ギャップ可変駆動部80は、静電アクチュエーターに限らず、圧電素子等にて代替することができる。
2. 接合膜とバリア膜
平面視で第1電極60の周囲の位置であって、第1基板20の第2対向面20A2の周囲の第3対向面20A3には、第1接合膜100が形成されている。同様に、第2基板30の対向面30Aには、第1接合膜100と対向して第2接合膜110が設けられている。
第1バリア膜120は、第1反射膜40の表面を覆って形成され、オゾンまたは紫外線の透過率が第1反射膜40よりも低い材料で形成される。同様に、第2バリア膜130は、第2反射膜50の表面を覆って形成され、オゾンまたは紫外線の透過率が第2反射膜50よりも低い材料で形成される。
ここで、第1,第2接合膜100,110は、オゾンまたは紫外線照射によって活性化エネルギーが付与された後に接合することができる。しかも、第1バリア膜120は少なくとも第1接合膜100に活性化エネルギーを付与する前に、第2バリア膜130は少なくとも第2接合膜110に活性化エネルギーを付与する前に、それぞれ形成することができる。こうすると、第1接合膜100または第2接合膜110にオゾンまたは紫外線照射によって活性化エネルギーを付与する時に、オゾンまたは紫外線が第1反射膜40または第2反射膜50に入射することを抑制できる。このように、第1,第2反射膜40,50は、オゾンや紫外線に晒されることで変質または劣化されて、反射率が低減することを抑制できる。
第1,第2反射膜40,50は、特に高反射膜として金属膜例えばAg,Al等を用いる場合がある。これらの金属膜は耐環境性が弱く、例えば酸素プラズマのオゾンに晒され、あるいは紫外線照射により発生するオゾンに晒されることで、金属酸化膜に変質することがある。さらに、金属膜は紫外線が照射されると光電効果により金属原子がイオン化され、酸化または硫化しやすくなる。一方、第1,第2反射膜40,50として誘電体多層膜を用いても、誘電体多層膜は金属酸化膜などで形成されるために酸素と元々反応し難いが、物理ダメージを受け、あるいは過剰に酸化されて膜質が変化する虞がある。本実施形態では、第1,第2反射膜40,50のこれらの変質や劣化を、第1,第2バリア膜120,130により抑制している。
なお、第1,第2バリア膜120,130の形成時期は必ずしも活性化エネルギー付与工程前に限らない。光フィルター10が紫外線を使用する機器に組み込まれた時でも、オゾンや紫外線から第1,第2反射膜を保護できるからである。このように、光フィルター10の実使用時を考慮して、長期にわたって第1,第2反射膜40,50を保護する観点から言えば、第1,第2バリア膜120,130は、オゾンまたは紫外線の他、耐環境性の強い膜質であることが好ましい。特に、第1,第2バリア膜120,130は、第1,第2反射膜40,50と比較して、硫化水素(HS)等との反応性(硫化性)が低いもの、ハロゲン系との反応性(ハロゲン性)が低いもの、商品としての信頼性の面から耐湿性が高いもの等の他の特性も備えることが好ましい。
ここで、第1,第2接合膜100,110はプラズマ重合法により成膜されるプラズマ重合膜とすることができる。このとき、第1,第2バリア120,130膜は、第1,第2接合膜100,110と同時に形成されるプラズマ重合膜とすることができる。こうすると、第1,第2バリア120,130の成膜工程を第1,第2接合膜100,110の成膜工程と兼用でき、製造プロセスを追加する必要がないので、光フィルター10の低コスト化を維持できる。
第1,第2接合膜100,110及び第1,第2バリア膜120,130の各々は、プラズマ重合時にシロキサン(Si−O−Si)結合を有するSi骨格と、Si骨格に結合される脱離基とを含むことができる。
図3は、そのようなプラズマ重合膜の構造を模式的に示している。図3は、プラズマ重合膜で形成される第1,第2バリア膜120,130の構造を示しており、かつ、プラズマ重合膜で形成される第1,第2接合膜100,110の活性化エネルギー付与前の構造と同一である。そこで、図3について以下では第1,第2バリア膜120,130として説明するが、その説明は第1,第2接合膜100,110の活性化エネルギー付与前の第1,第2接合膜100A,110A(後述の図6(C)及び図8(D)参照)にも適用される。
また、図4は、図3に示す構造を有する活性化エネルギー付与前の第1,第2接合膜100A,110Aを活性化エネルギーによって活性化させた後の第1,第2接合膜100B,110B(後述の図9参照)の構造を示している。
第1,第2バリア膜120,130は図3に示すように、活性化後の第1,第2接合膜100B,110Bは図4に示すように、それぞれシロキサン(Si−O−Si)結合302を含み、例えばランダムな原子構造を有するSi骨格301を有する。図3に示す第1,第2バリア膜120,130は、Si骨格301に結合する脱離基303を有する。一方、図4に示す活性化後の第1,第2接合膜100B,110Bは、Si骨格301から脱離基303が脱離されて活性手(未結合手)304を有する。なお、活性手304には、Si骨格301において終端化されていない結合手(以下、「未結合手」または「ダングリングボンド」とも言う。)と、この未結合手が水酸基(OH基)によって終端化されたものとを含む。
第1,第2バリア膜120,130及び活性化後の第1,第2接合膜100B,110Bは、シロキサン結合302を含みランダムな原子構造を有するSi骨格301の影響によって、変形し難い強固な膜となる。これは、Si骨格301の結晶性が低くなるため、結晶粒界における転位やズレ等の欠陥が生じ難いためであると考えられる。このため、膜自体が接合強度、耐薬品性および寸法精度の高いものとなり、最終的に得られる第1,第2接合膜100,110及び第1,第2バリア膜120,130においても、耐薬品性及び寸法精度が高いものが得られ、第1,第2バリア膜120,130では高い接合強度が得られる。
上述した第1,第2バリア膜120,130の特性も、シロキサン(Si−O−Si)結合302を含むSi骨格301と、Si骨格301に結合する脱離基303とを有する構造から説明できる。つまり、シロキサン(Si−O−Si)結合302によりガスの通過ルートは遮断されて高いガスバリア性を有することができる。また、第1,第2バリア膜120,130は図4に示す未結合手304がないので反応性が低く、酸化または硫化し難い性質となる。さらに、シロキサン(Si−O−Si)結合302はSiO2のように紫外線の波長帯域を含む200nm以下の波長は吸収する。第1,第2バリア膜120,130は、紫外線を吸収しても励起してエネルギー状態が高くなるだけで、シロキサン(Si−O−Si)結合302の結合エネルギーは紫外線による励起エネルギーよりも高いので、状態変化はない。
図3の構造を有する活性化エネルギー付与前の第1,第2接合膜100A,110Aは、活性化エネルギーが付与されると、脱離基303がSi骨格301から脱離し、図4に示すように、活性化後の第1,第2接合膜100B,110Bの表面及び内部に、活性手304が生じるものである。これにより、活性化後の第1,第2接合膜100B,110Bの表面に接着性が発現し、第1,第2接合膜100B,110Bの活性手304のうちの未結合手同士が結合することで、図1に示す接合された第1,第2接合膜100,110となる。活性化された第1接合膜100Bを備えた第1基板20は、活性化された第2接合膜110Bを備えた第2基板30に対して、高い寸法精度で強固に効率よく接合可能なものとなる。
第1,第2バリア膜120,130及び活性化後の第1,第2接合膜100B,110Bは、流動性を有しない固体状のものとなる。このため、従来、流動性を有する液状または粘液状の接着剤に比べて、膜の厚さや形状がほとんど変化しない。これにより、膜の寸法精度は、従来に比べて格段に高いものとなる。さらに、接着剤の硬化に要する時間が不要になるため、短時間で強固な接合が可能となる。
第1,第2バリア膜120,130及び第1,第2接合膜100,110は、特に、膜を構成する全原子からH原子を除いた原子のうち、Si原子の含有率とO原子の含有率の合計が、10〜90原子%程度であることが好ましく、20〜80原子%程度であるのがより好ましい。Si原子とO原子とが、この範囲の含有率で含まれていれば、接合膜31は、Si原子とO原子とが強固なネットワークを形成し、第1,第2バリア膜120,130及び第1,第2接合膜100,110は、膜自体が強固なものとなる。また、第1,第2接合膜100,110は、第1,第2基板20,30を高い接合強度にて接合できることになる。
また、第1,第2バリア膜120,130及び第1,第2接合膜100,110中のSi原子とO原子の存在比は、3:7〜7:3程度であるのが好ましく、4:6〜6:4程度であるのがより好ましい。Si原子とO原子の存在比をこの範囲内になるよう設定することにより、膜の安定性が高くなる。このことによっても、第1,第2接合膜100,110は、第1,第2基板20,30を高い接合強度にて接合できることになる。
なお、第1,第2バリア膜120,130及び第1,第2接合膜100,110中のSi骨格301の結晶化度は、45%以下であるのが好ましく、40%以下であるのがより好ましい。これにより、Si骨格301は十分にランダムな原子構造を含むものとなる。このため、前述したSi骨格301の特性が顕在化する。
また、第1,第2バリア膜120,130及び第1,第2接合膜100,110は、その構造中にSi−H結合を含んでいるのが好ましい。このSi−H結合は、プラズマ重合法によってシランが重合反応する際に重合物中に生じるものであるが、このとき、Si−H結合がシロキサン結合の生成が規則的に行われるのを阻害すると考えられる。このため、シロキサン結合は、Si−H結合を避けるように形成されることとなり、Si骨格301の原子構造の規則性が低下する。このようにして、プラズマ重合法によれば、結晶化度の低いSi骨格301を効率よく形成することができる。
一方、第1,第2バリア膜120,130及び第1,第2接合膜100,110中のSi−H結合の含有率が多ければ多いほど結晶化度が低くなるわけではない。具体的には、赤外光吸収スペクトルにおいて、シロキサン結合に帰属するピークの強度を1としたとき、Si−H結合に帰属するピークの強度は、0.001〜0.2程度であるのが好ましく、0.002〜0.05程度であるのがより好ましく、0.005〜0.02程度であるのがさらに好ましい。Si−H結合のシロキサン結合に対する割合がこの範囲内であることにより、原子構造は、相対的に最もランダムなものとなる。このため、Si−H結合のピーク強度がシロキサン結合のピーク強度に対してこの範囲内にある場合、第1,第2バリア膜120,130及び第1,第2接合膜100,110は、耐薬品性及び寸法精度において特に優れ、第1,第2接合膜100,110は接合強度にも優れたものとなる。
また、Si骨格301に結合する脱離基303は、前述したように、Si骨格301から脱離することによって、接合膜31に活性手を生じさせるよう振る舞うものである。したがって、脱離基303には、エネルギーを付与されることによって、比較的簡単に、かつ均一に脱離するものの、エネルギーが付与されない時には、脱離しないようSi骨格
301に確実に結合しているものである必要がある。
かかる観点から、脱離基303には、H原子、B原子、C原子、N原子、O原子、P原子、S原子及びハロゲン系原子、またはこれらの各原子を含み、これらの各原子がSi骨格301に結合するよう配置された原子団からなる群から選択される少なくとも1種で構成されたものが好ましく用いられる。かかる脱離基303は、エネルギーの付与による結合/脱離の選択性に比較的優れている。このため、このような脱離基303は、上記の必要性を十分に満足し得るものとなり、第1,第2接合膜100,110の接着性をより高度なものとすることができる。
なお、上記のような各原子がSi骨格301に結合するよう配置された原子団(基)としては、例えば、メチル基、エチル基のようなアルキル基、ビニル基、アリル基のようなアルケニル基、アルデヒド基、ケトン基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基、ニトロ基、ハロゲン化アルキル基、メルカプト基、スルホン酸基、シアノ基、イソシアネート基等が挙げられる。
これらの各基の中でも、脱離基303は、特にアルキル基であるのが好ましい。アルキル基は化学的な安定性が高いため、アルキル基を含む第1,第2バリア膜120,130は、耐候性及び耐薬品性等のバリア性に優れたものとなる。
ここで、脱離基303がメチル基(−CH3)である場合、その好ましい含有率は、赤外光吸収スペクトルにおけるピーク強度から以下のように規定される。すなわち、赤外光吸収スペクトルにおいて、シロキサン結合に帰属するピークの強度を1としたとき、メチル基に帰属するピークの強度は、0.05〜0.45程度であるのが好ましく、0.1〜0.4程度であるのがより好ましく、0.2〜0.3程度であるのがさらに好ましい。メチル基のピーク強度がシロキサン結合のピーク強度に対する割合がこの範囲内であることにより、メチル基がシロキサン結合の生成を必要以上に阻害するのを防止しつつ、活性化後の第1,第2接合膜100B,110B中に必要かつ十分な数の活性手304が生じるため、活性化後の第1,第2接合膜100B,110Bに十分な接着性が生じる。また、第1,第2バリア膜120,130には、メチル基に起因する十分な耐候性及び耐薬品性等のバリア性が発現する。
このような特徴を有する第1,第2バリア膜120,130及び第1,第2接合膜100,110の構成材料としては、例えば、ポリオルガノシロキサンのようなシロキサン結合を含む重合物等が挙げられる。ポリオルガノシロキサンで構成された膜は、それ自体が優れた機械的特性を有している。また、多くの材料に対して特に優れた接着性を示すものである。従って、ポリオルガノシロキサンで構成された第1,第2接合膜100,110は、特に強い被着力を示し、その結果として、第1,第2基板20,30を強固に接合することができる。
また、ポリオルガノシロキサンは、通常、撥水性(非接着性)を示すが、活性化エネルギーを付与されることにより、容易に有機基を脱離させることができ、親水性に変化し、接着性を発現するが、この非接着性と接着性との制御を容易かつ確実に行えるという利点を有する。
なお、この撥水性(非接着性)は、主に、ポリオルガノシロキサン中に含まれたアルキル基による作用である。従って、ポリオルガノシロキサンで構成された活性化前の第1,第2接合膜100A,110Aは、活性化エネルギーを付与されることにより、表面に接着性が発現すると共に、表面以外の部分においては、前述したアルキル基による作用・効果が得られるという利点も有する。従って、第1,第2バリア膜120,130及び第1,第2接合膜100,110は、耐候性及び耐薬品性に優れたものとなる。
また、ポリオルガノシロキサンの中でも、特に、オクタメチルトリシロキサンの重合物を主成分とするものが好ましい。オクタメチルトリシロキサンの重合物を主成分とする第1,第2接合膜100,110は、接着性に特に優れることから、特に好適である。また、オクタメチルトリシロキサンを主成分とする原料は、常温で液状をなし、適度な粘度を有するため、取り扱いが容易であるという利点もある。
また、第1,第2バリア膜120,130及び第1,第2接合膜100,110の平均厚さは、1〜1000nm程度であるのが好ましく、2〜800nm程度であるのがより好ましい。第1,第2接合膜100,110の平均厚さをこの範囲内とすることにより、寸法精度が著しく低下するのを防止しつつ、第1,第2基板20,30をより強固に接合することができる。すなわち、の平均厚さが下限値を下回った場合は、十分な接合強度が得られないおそれがある一方、平均厚さが上限値を上回った場合は、寸法精度が著しく低下するおそれがある。
さらに、平均厚さが上記範囲内であれば、ある程度の形状追従性が確保される。このため、例えば、第1,第2基板20,30の接合面に凹凸が存在している場合でも、その凹凸の高さにもよるが、凹凸の形状に追従するように第1,第2接合膜100,110を被着させることができる。その結果、第1,第2接合膜100,110は、凹凸を吸収して、その表面に生じる凹凸の高さを緩和することができ、互いの密着性を高めることができる。
このような第1,第2バリア膜120,130及び第1,第2接合膜100,110は、いかなる方法で作製されたものでもよく、プラズマ重合法、CVD法、PVD法のような各種気相成膜法や、各種液相成膜法等により作製することができるが、これらの中でも、プラズマ重合法により作製されたものが好ましい。プラズマ重合法によれば、緻密で均質な膜を効率よく作製することができる。これにより、プラズマ重合法で作製された第1,第2接合膜100,110は、第1,第2基板20,30を特に強固に接合し得る。さらに、プラズマ重合法で作製された第1,第2接合膜100,110は、活性化エネルギーが付与されて、活性化された状態が比較的長時間にわたって維持される。このため、光フィルター10の製造過程の簡素化、効率化を図ることができる。
3. 光フィルターの製造方法
3.1. 第1基板20の製造工程
図5(A)〜図5(C)及び図6(A)〜図6(C)は、第1基板20の製造工程を示している。先ず、図5(A)に示すように、合成石英ガラス基板の両面を鏡面研磨し、500μmの厚みの第1基板20を作製する。
次に、第1基板20の両面20A,20Bに、厚み例えば50nmのCr膜及びその上に厚み500nmのAu膜からなるマスク層(図5(B)では省略しているが、図7(B)のマスク層140,141と同じ)を形成し、片面20A側のマスク層上にレジスト(図示せず)を塗布し、片面20Aに第1対向面20A1を形成するための凹部22を形成するためのレジストパターニングを施す。その後、レジスト開口部のAu膜をヨウ素とヨウ化カリウムの混合液でエッチングし、Cr膜を硝酸セリウムアンモニウム水溶液でエッチングし、例えばフッ酸水溶液で凹部22を例えば約1.5μmの深さでウェットエッチングする(図5(B)参照)。その後、第1基板20からレジスト及びマスク層を剥離する。
次に、第1基板20の両面20A,20Bにマスク層を形成し、片面20Aのマスク層上にレジスト(図示せず)を塗布し、凹部22が形成された面20Aに、さらに第2,第4対向面20A2,20A4を形成するためのレジストパターニングを施す。その後、レジスト開口部のAu膜とCr膜をエッチングし、例えばフッ酸水溶液で片面20Aを例えば約1μmの深さでウェットエッチングする(図5(C)参照)。これにより、第1基板20の対向面20Aに第2,第4対向面20A2,20A4が同時に形成されると同時に、エッチングされなかった対向面20Aが第3対向面20A3となる。この後、第1基板20からレジスト及びマスク層を剥離する。
次に、第1基板20のエッチングした面にITO膜を例えば0.1μmの厚さでスパッタ法を用い全面成膜する。そのITO膜上にレジストを塗布し、レジストパターニングを施し、例えば硝酸と塩酸の混合液でITO膜をエッチングし、レジストを剥離する。これにより、第1基板20の第2対向面20A2に第1電極60が、第1基板20の第4対向面20A4に第1配線層62が、それぞれ形成される(図6(A)参照)。
次に、第1基板20上の第1反射膜40の形成領域にだけ開口するようなレジストパターニングを施し、反射膜材料をスパッタ法または蒸着法により成膜する。第1反射膜材料は、第2基板20側から例えば厚み50nmのSiO、厚み50nmのTiO、厚み50nmのAgという順番で積層させる。その後レジストを剥離することにより、第1反射膜材料がリフトオフされ、レジストに開口があった領域のみに第1反射膜材料が残り、第1反射膜40が形成される(図6(B)参照)。
次に、第1接合膜100A及び第1バリア膜120を形成すべき領域にだけ開口するようなレジストパターニングを施し、接合膜及びバリア膜を兼ねるプラズマ重合膜をプラズマCVD法により例えば厚み30nmで成膜する。プラズマ重合膜の主材料は、上述したポリオルガノシロキサンが好ましい。プラズマ重合は、一対の電極間に印加される高周波電力の周波数が1〜100kHz、好ましくは10〜60kHz、チャンバー内力が1×10−5〜10Torr、好ましくは1×10−4〜1Torr(133.3×10−4〜133.3Pa)、原料ガス流量が0.5〜200sccm、好ましくは1〜100sccm、キャリアガス流量が5〜750sccm、好ましくは10〜500sccm、処理時間が1〜10分、好ましくは4〜7分である。
その後、レジストを剥離することにより、プラズマ重合膜がリフトオフされ、第1接合膜100A及び第1バリア膜120が形成される(図6(C)参照)。これにより、第1基板20が完成する。
3.2. 第2基板30の製造工程
図7(A)〜図7(D)及び図8(A)〜図8(D)は、第2基板30の製造工程を示している。先ず、成石英ガラス基板の両面を鏡面研磨し、200μmの厚みの第2基板30を作製する(図7(A)参照)。
次に、第2基板30の両面30A,30Bに、厚み例えば50nmのCr膜及びその上に厚み500nmのAu膜からなるマスク層140,142を成膜する(図7(B)参照)。
次に、第2基板30のマスク層140上にレジスト(図示せず)を塗布し、片面30Bにダイアフラム部32(図2参照)を形成するためのレジストパターニングを施す。そして、マスク層140のAu膜をヨウ素とヨウ化カリウムの混合液でエッチングし、マスク層140のCr膜を硝酸セリウムアンモニウム水溶液でエッチングし、パターニングされたマスク層141を形成する(図7(C)参照)。
次に、第2基板30をフッ酸水溶液に浸し、ダイアフラム部32を例えば約150μmエッチングする(図7(D)参照)。ダイアフラム部32の厚みは例えば約50μmとなり、反射膜支持部34を含む厚肉領域は200μmの厚みが残る。
次に、第2基板30の両面30A,30Bに付着しているレジストや、マスク層141,142をそれぞれ剥離する(図8(A)参照)。
次に、第2基板30のエッチング面30Bとは反対の面30Aに、ITO膜を例えば0.1μmの厚さでスパッタ法を用いて成膜する。そのITO膜上にレジストを塗布し、第2電極70及び第2配線層72のためのレジストパターニングを施し、硝酸と塩酸の混合液でITO膜をエッチングする。その後、第2基板30よりレジストを除去する(図8(B)参照)。
次に、第2基板30に第2電極70が形成された片面30Aに、第2反射膜50の形成領域にだけ開口するレジストパターニングを施し、第2反射膜材料をスパッタ法または蒸着法により成膜する。成膜例としては、第2基板30側から厚み50nmのSiO、厚み50nmのTiO、厚み50nmのAgという順番で積層させる。その後レジストを剥離することにより、第2反射膜材料がリフトオフされ、第2反射膜50が形成される(図8(C)参照)。
次に、第2接合膜110A及び第2バリア膜130を形成すべき領域にだけ開口するようなレジストパターニングを施し、接合膜及びバリア膜を兼ねるプラズマ重合膜をプラズマCVD法により例えば厚み30nmで成膜する。プラズマ重合膜の主材料は、上述したポリオルガノシロキサンが好ましい。その後、レジストを剥離することにより、プラズマ重合膜がリフトオフされ、第2接合膜110A及び第2バリア膜130が形成される(図8(D)参照)。これにより、第2基板30が完成する。
3.3. 第1,第2基板の接合工程
図9及び図10は、第1,第2基板20,30の接合工程を示している。図9は、活性化前の第1,第2接合膜100A,110Aに活性化エネルギーを付与する工程を模式的に示している。第1,第2接合膜100A,110Aに活性化エネルギーを付与する方法は種々あるが、ここでは2例について説明する。
一つは、オゾンによる活性化であり、例えばOプラズマ処理を挙げることができる。Oプラズマ処理の場合、O流量が例えば20〜40cc/分、圧力が例えば20〜35Pa、RFパワーが例えば150〜250Wの条件で、プラズマ処理容器内にて第1,第2基板20,30をそれぞれ例えば10〜40秒間ずつ処理する。
他の一つは紫外線(UV)照射によるもので、例えばUV光源として発光波長150〜300nm、好ましくは160〜200nmを用い、活性化前の第1,第2接合膜100A,110Aに、離間距離3〜3000nm、好ましくは10〜1000nmにて、1〜10分例えば数分間紫外線を第1,第2接合膜100A,110Aに照射する。例えば図9に示すように第1,第2基板20,30を積層させ、例えば石英ガラス製の第1基板20及び/または第2基板30を透過させて紫外線を照射してもよい。あるいは第1,第2基板20,30を別々に処理し、活性化前の第1,第2接合膜100A,110Aに直接的に紫外線を照射しても良い。
この活性化エネルギー付与工程では、上述した通り、活性化前の第1,第2接合膜100A,110AのSi骨格301から脱離基303が脱離され、活性化エネルギー付与後の第1,第2接合膜100B,110Bは、活性手304が生じて活性化される。また、活性化エネルギー付与工程では、上述した通り、第1,第2バリア膜120,130が第1,第2反射膜40,50をオゾンまたは紫外線から保護することができる。
活性化エネルギーを与えた後、第1,第2基板20,30のアライメントを行い、図10に示すように第1,第2基板20,30を重ね合わせ、荷重をかける。このとき、上述した通り、活性化エネルギー付与後の第1,第2接合膜100B,110Bの活性手(未結合手)304同士が結合されて、第1,第2接合膜100,110が強固に接合される。それにより、第1,第2基板20,30同士の接合が完了する。この後に、図1に示す第1電極取出し部64と、第2電極70を外部と接続するための第2電極取出し部74とを形成して、光フィルター10が完成する。
4.分析機器
図11は、本発明に係る一実施形態の分析機器の一例である測色器の概略構成を示すブロック図である。
図11において、測色器200は、光源装置202と、分光測定装置203と、測色制御装置204と、を備えている。この測色器200は、光源装置202から検査対象Aに向かって例えば白色光を射出し、検査対象Aで反射された光である検査対象光を分光測定装置203に入射させる。そして、分光測定装置203にて検査対象光を分光し、分光した各波長の光の光量を測定する分光特性測定を実施する。言い換えると、検査対象Aで反射された光である検査対象光を光フィルター(エタロン)10に入射させ、エタロン10から透過した透過光の光量を測定する分光特性測定を実施する。そして、測色制御装置204は、得られた分光特性に基づいて、検査対象Aの測色処理、すなわち、どの波長の色がどの程度含まれているかを分析する。
光源装置202は、光源210、複数のレンズ212(図11には1つのみ記載)を備え、検査対象Aに対して白色光を射出する。また、複数のレンズ212には、コリメーターレンズが含まれており、光源装置202は、光源210から射出された白色光をコリメーターレンズにより平行光とし、図示しない投射レンズから検査対象Aに向かって射出する。
分光測定装置203は、図11に示すように、エタロン10と、受光素子を含む受光部220と、駆動回路230と、制御回路部240と、を備えている。また、分光測定装置203は、エタロン10に対向する位置に、検査対象Aで反射された反射光(測定対象光)を、内部に導光する図示しない入射光学レンズを備えている。
受光部220は、複数の光電交換素子(受光素子)により構成されており、受光量に応じた電気信号を生成する。そして、受光部220は、制御回路部240に接続されており、生成した電気信号を受光信号として制御回路部240に出力する。なお、エタロン10と受光部(受光素子)220とでユニット化して、光フィルターモジュールを構成することができる。
駆動回路230は、エタロン10の第1電極60、第2電極70、及び制御回路部240に接続される。この駆動回路230は、制御回路部240から入力される駆動制御信号に基づいて、第1電極60及び第2電極70間に駆動電圧を印加し、第2基板30を所定の変位位置まで移動させる。駆動電圧としては、第1電極60と第2電極70との間に所望の電位差が生じるように印加されればよく、例えば、第1電極60に所定の電圧を印加し、第2電極70をアース電位としてもよい。駆動電圧としては、直流電圧を用いるのが好ましい。
制御回路部240は、分光測定装置203の全体動作を制御する。この制御回路部240は、図11に示すように、例えばCPU250、記憶部260などにより構成されている。そして、CPU250は、記憶部260に記憶された各種プログラム、各種データに基づいて、分光測定処理を実施する。記憶部260は、例えばメモリーやハードディスクなどの記録媒体を備えて構成され、各種プログラム、各種データなどを適宜読み出し可能に記憶する。
ここで、記憶部260には、プログラムとして、電圧調整部261、ギャップ測定部262、光量認識部263、及び測定部264が記憶されている。なお、ギャップ測定部262は上述の通り省略しても良い。
また、記憶部260には、第1ギャップG1の間隔を調整するために静電アクチュエーター80に印加する電圧値、及びその電圧値を印加する時間を関連付けた電圧テーブルデータ265が記憶されている。
測色制御装置204は、分光測定装置203及び光源装置202に接続されており、光源装置202の制御、分光測定装置203により取得される分光特性に基づく測色処理を実施する。この測色制御装置204としては、例えば汎用パーソナルコンピューターや、携帯情報端末、その他、測色専用コンピューターなどを用いることができる。
そして、測色制御装置204は、図11に示すように、光源制御部272、分光特性取得部270、及び測色処理部271などを備えて構成されている。
光源制御部272は、光源装置202に接続されている。そして、光源制御部272は、例えば利用者の設定入力に基づいて、光源装置202に所定の制御信号を出力し、光源装置202から所定の明るさの白色光を射出させる。
分光特性取得部270は、分光測定装置203に接続され、分光測定装置203から入力される分光特性を取得する。
測色処理部271は、分光特性に基づいて、検査対象Aの色度を測定する測色処理を実施する。例えば、測色処理部271は、分光測定装置203から得られた分光特性をグラフ化し、図示しないプリンターやディスプレイなどの出力装置に出力するなどの処理を実施する。
図12は、分光測定装置203の分光測定動作を示すフローチャートである。先ず、制御回路部240のCPU250は、電圧調整部261、光量認識部263、及び測定部264を起動させる。また、CPU250は、初期状態として、測定回変数nを初期化(n=0に設定)する(ステップS1)。なお、測定回変数nは、0以上の整数の値をとる。
この後、測定部264は、初期状態、すなわち、静電アクチュエーター80に電圧が印加されていない状態で、エタロン10を透過した光の光量を測定する(ステップS2)。なお、この初期状態における第1ギャップG1の大きさは、例えば分光測定装置の製造時において予め測定し、記憶部260に記憶しておいてもよい。そして、ここで得られた初期状態の透過光の光量、及び第1ギャップG1の大きさを測色制御装置204に出力する。
次に、電圧調整部261は、記憶部260に記憶されている電圧テーブルデータ265を読み込む(ステップS3)。また、電圧調整部261は、測定回変数nに「1」を加算する(ステップS4)。
この後、電圧調整部261は、電圧テーブルデータ265から、測定回変数nに対応する第1,第2セグメント電極62,64の電圧データ及び電圧印加期間データを取得する(ステップS5)。そして、電圧調整部261は、駆動回路230に駆動制御信号を出力し、電圧テーブルデータ265のデータに従って静電アクチュエーター80を駆動する処理を実施する(ステップS6)。
また、測定部264は、印加時間経過タイミングで、分光測定処理を実施する(ステップS7)。すなわち、測定部264は、光量認識部263により透過光の光量を測定させる。また、測定部264は、測定された透過光の光量と、透過光の波長とを関連付けた分光測定結果を測色制御装置204に出力する制御をする。なお、光量の測定は、複数回または全ての回数の光量のデータを記憶部260に記憶させておき、複数回毎の光量のデータまたは全ての光量のデータの取得後に、まとめて、それぞれの光量を測定してもよい。
この後、CPU250は、測定回変数nが最大値Nに達したか否かを判断し(ステップS8)、測定回変数nがNであると判断すると、一連の分光測定動作を終了する。一方,ステップS8において、測定回変数nがN未満である場合、ステップS4に戻り、測定回変数nに「1」を加算する処理を実施し、ステップS5〜ステップS8の処理を繰り返す。
5.光機器
図13は、本発明に係る一実施形態の光機器の一例である波長多重通信システムの送信機の概略構成を示すブロック図である。波長多重(WDM:Wavelength Division Multiplexing)通信では、波長の異なる信号は干渉し合わないという特性を利用して、波長が異なる複数の光信号を一本の光ファイバー内で多重的に使用すれば、光ファイバー回線を増設せずにデータの伝送量を向上させることができるようになる。
図13において、波長多重送信機300は、光源310からの光が入射される光フィルター10を有し、光フィルター10からは複数の波長λ0,λ1,λ2,…の光が透過される。波長毎に送信器311,312,313が設けられる。送信器311,312,313からの複数チャンネル分の光パルス信号は、波長多重装置321にて1つに合わせられて一本の光ファイバー伝送路331に送出される。
本発明は光符号分割多重(OCDM:Optical Code Division Multiplexing)送信機にも同様に適用できる。OCDMは、符号化された光パルス信号のパターンマッチングによってチャンネルを識別するが、光パルス信号を構成する光パルスは、異なる波長の光成分を含んでいるからである。
以上、幾つかの実施形態について説明したが、本発明の新規事項及び効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるものである。従って、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書または図面において、少なくとも一度、より広義または同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書または図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。
10 光フィルター、20 第1基板、20A1 第1対向面、20A2 第2対向面、20A3 第3対向面、20A4 第4対向面、30 第2基板、30A 対向面、40 第1反射膜、50 第2反射膜、60 第1電極、62 第1配線層、64 第1電極取出し部、68 第1リード線、70 第2電極、72 第2配線層、74 第2電極取出し部、76 第2リード線、80 ギャップ可変駆動部(静電アクチュエーター)、100,110 第1,第2接合膜、100A,110A 活性化前の第1,第2接合膜、100B,110B 活性化後の第1,第2接合膜、120 第1バリア膜、130 第2バリア膜、200 分析機器(測色器)、300 光機器、301 Si骨格、302 シロキサン結合、303 脱離基、304 活性手(未結合手)、G1 第1ギャップ、G2 第2ギャップ

Claims (2)

  1. (a)第1反射膜が形成された第1基板に、第1接合膜を形成する工程と、
    (b)第2反射膜が形成された第2基板に、第2接合膜を形成する工程と、
    (c)前記第1基板の前記第1反射膜の表面を覆って第1バリア膜を形成する工程と、
    (d)前記第2基板の前記第2反射膜の表面を覆って第2バリア膜を形成する工程と、
    (e)前記第1,第2接合膜の各々に紫外線を照射する、或いは前記第1,第2接合膜の各々をオゾンに晒す工程と、
    (f)前記第1,第2接合膜を接合して、前記第1,第2基板を張り合わせる工程と、
    を有し、
    前記第1バリア膜と前記第1接合膜とは、同一材料により同一工程で成膜され、
    前記第2バリア膜と前記第2接合膜とは、同一材料により同一工程で成膜されることを特徴とする光フィルターの製造方法。
  2. 請求項において、
    前記第1,第2接合膜及び前記第1,第2バリア膜の各々は、シロキサン結合を有するSi骨格と、前記Si骨格に結合される脱離基と、を含んで形成され、
    前記工程(e)では、前記第1,第2接合膜の前記Si骨格より前記脱離基が脱離されて未結合手を形成する工程を含み、
    前記工程(f)では、記第1,第2接合膜の各々の前記未結合手同士を結合させる工程を含むことを特徴とする光フィルターの製造方法。
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