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JP5448555B2 - リチウムイオン二次電池用負極、それを用いたリチウムイオン二次電池、リチウムイオン二次電池用の負極作製用のスラリー、リチウムイオン二次電池用負極の製造方法 - Google Patents

リチウムイオン二次電池用負極、それを用いたリチウムイオン二次電池、リチウムイオン二次電池用の負極作製用のスラリー、リチウムイオン二次電池用負極の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、リチウムイオン二次電池用の負極などに関するものであり、特に、高容量かつ長寿命のリチウムイオン二次電池用の負極に関する。
従来、負極活物質としてグラファイトを用いたリチウムイオン二次電池が実用化されている。また、負極活物質と、カーボンブラック等の導電助剤と、樹脂の結着剤とを混練してスラリーを調製し、銅箔上に塗布・乾燥して、負極を形成することが行われている。
一方、高容量化を目指し、負極活物質として金属、特にシリコン系合金を用いるリチウムイオン二次電池用の負極が開発されている。リチウムイオンを吸蔵して合金化したシリコンは、吸蔵前のシリコンに対して約4倍まで体積が膨張するため、シリコン系合金を負極活物質として用いた負極は、充放電サイクル時に膨張と収縮を繰り返す。
そこで、シリコン系活物質の表面にカーボンナノファイバーを成長させ、その弾性作用により負極活物質粒子の膨張と収縮による歪みを緩和し、サイクル特性を向上させるという非水電解液二次電池用負極が開示されている(例えば、特許文献1を参照)。
特開2006−244984号公報
しかしながら、負極活物質と導電助剤と結着剤とのスラリーを塗布・乾燥して、負極を形成する従来の負極は、負極活物質と集電体とを樹脂の結着剤で結着しており、樹脂の結合力が弱い。また、粉末状の負極活物質を用いている。そのため、充放電時に、負極活物質の微粉化と負極活物質の剥離、負極の亀裂の発生、負極活物質間の導電性の低下などが発生して容量が低下する。それゆえ、サイクル特性が悪く、二次電池の寿命が短いという問題点があった。
また、特許文献1に記載の発明は、負極活物質と集電体とを樹脂で結着するものであり、サイクル特性の劣化は十分には防げなかった。また、カーボンナノファイバーの形成工程があるため、生産性が悪かった。
本発明は、前述した問題点に鑑みてなされたもので、その目的とすることは、高容量と長寿命を実現し、生産性に優れるリチウムイオン二次電池用の負極を得ることである。
前述した目的を達成するために、第1の発明は、金属製の集電体と、前記集電体上に、結着剤で結合している負極活物質と導電助剤と、を有し、前記負極活物質が、ワイヤー形状の負極活物質を含み、金属ナノ粒子を介して、前記負極活物質と前記集電体または前記負極活物質と前記導電助剤とが、金属結合により結合しており、前記負極活物質が、シリコン、スズ、アンチモン、アルミニウム、鉛、ヒ素からなる群より選ばれた少なくとも1種の物質またはそれらの合金を含み、前記導電助剤が、炭素、銅、スズ、亜鉛、ニッケル、銀からなる群より選ばれた少なくとも1種の物質またはそれらの合金を含むことを特徴とするリチウムイオン二次電池用の負極である。なお、第1の発明に記載の「結着剤」とは、集電体上に負極活物質と導電助剤とを結合する物質を広く意味し、後述する樹脂の結着剤9だけでなく、後述する金属ナノ粒子25も含む概念である。
前記第1の発明において、前記金属ナノ粒子の一次粒子の平均粒径は、2〜100nmであることが好ましい。また、前記金属ナノ粒子の金属の量が、前記導電助剤の金属の粉末に対して2〜40重量%であることが好ましい。
前記ワイヤー形状の負極活物質の長さが0.1μm〜2mmであり、前記負極活物質の外径が4nm〜1000nmであることが好ましく、前記ワイヤー形状の負極活物質は、一部が直線状あるいは一部が縮れ形状であることが好ましく、前記導電助剤が、ワイヤー形状の導電助剤を含むことが好ましく、さらに負極活物質の体積膨張を吸収する十分な空隙を有することが好ましい。
また、前記結着剤が金属ナノ粒子であり、前記金属ナノ粒子を介して、前記負極活物質と前記集電体または前記負極活物質と前記導電助剤とが、金属結合により結合していることが好ましい。
さらに、前記金属ナノ粒子は、銅、スズ、亜鉛、ニッケルおよび銀からなる群より選ばれた少なくとも1種の金属のナノ粒子であり、一次粒子の平均粒径が2nm〜100nmであり、前記金属結合が、前記金属ナノ粒子を焼結することにより形成され、前記集電体と前記負極活物質と前記導電助剤と前記金属ナノ粒子との一部または全部に取り囲まれた空隙を有することが好ましい。
第2の発明は、前記リチウムイオン二次電池用の負極を用いたリチウムイオン二次電池である。
第3の発明は、負極活物質と、導電助剤と、結着剤とが混在してなるスラリーであって、前記負極活物質が、ワイヤー形状の負極活物質を含み、前記結着剤が金属ナノ粒子を含み、前記負極活物質が、シリコン、スズ、アンチモン、アルミニウム、鉛およびヒ素からなる群より選ばれた少なくとも1種の物質またはそれらの合金を含み、前記導電助剤が、炭素、銅、スズ、亜鉛、ニッケル、銀からなる群より選ばれた少なくとも1種の物質またはそれらの合金を含むことを特徴とするリチウムイオン二次電池用の負極作製用のスラリーである。
第4の発明は、負極活物質と導電助剤と結着剤とを混練してスラリーを調製する混練工程と、前記スラリーを集電体に塗布する塗布工程と、前記スラリーを塗布した前記集電体を乾燥する乾燥工程と、を具備し、前記負極活物質が、ワイヤー形状の負極活物質を含み、前記結着剤が金属ナノ粒子を含み、前記集電体が金属製であり、前記負極活物質が、シリコン、スズ、アンチモン、アルミニウム、鉛、ヒ素からなる群より選ばれた少なくとも1種の物質またはそれらの合金を含み、前記導電助剤が、炭素、銅、スズ、亜鉛、ニッケル、銀からなる群より選ばれた少なくとも1種の物質またはそれらの合金を含むことを特徴とするリチウムイオン二次電池用の負極の製造方法である。
また、記乾燥工程後、前記金属ナノ粒子の金属のバルク体の融点(絶対温度)の1/2以下の温度の不活性雰囲気下で前記集電体を加熱する焼結工程をさらに具備することが好ましい。
本発明の特徴は、負極中にワイヤー形状(=線形状、線状)の負極活物質を含んでいれば良く、粒子状の負極活物質が配合されていても、配合されていなくても良い。また、導電助剤はワイヤー形状であっても、粒子状であっても、あるいは粒子が連鎖してストラクチャーを形成していても、それらの単純な混合であっても、凝集体あるいは造粒体であってもよい。
本発明により、高容量と長寿命を実現し、生産性に優れるリチウムイオン二次電池用の負極を得ることができる。
(a)〜(c)本発明の第1の実施の形態に係るリチウムイオン二次電池用の負極1、負極2、負極4を示す図。 本発明の第1の実施の形態に係る造粒体13を示す図。 本発明の第1の実施の形態に係るミキサー15を示す図。 本発明の第1の実施の形態に係るコーター21を示す図。 (a)〜(c)本発明の第2の実施の形態に係る負極23、負極29、負極31を示す図。 (a)、(b)CVD法で製造したシリコン線状体のTEM写真。 (a)、(b)CVD法で製造したシリコン線状体のSEM写真。 (a)、(b)CVD法で製造したシリコン線状体の他のSEM写真。
以下図面に基づいて、本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、各図は各構成要素を模式的に示したもので、実際の縮尺を表すものではない。
本実施形態に係る負極1について説明する。図1(a)は、負極1を示す図である。負極1は、集電体3の上に、導電助剤7と負極活物質5と、結着剤9と、空隙10とを有する。結着剤9は、集電体3、負極活物質5、導電助剤7を結着している。
集電体3は、銅、ニッケル、ステンレスからなる群より選ばれた少なくとも1種の金属からなる箔である。それぞれを単独で用いてもよいし、それぞれの合金でもよい。厚さは4μm〜35μmが好ましく、さらに8μm〜18μmがより好ましい。
負極活物質5は、シリコン、スズ、アンチモン、アルミニウム、鉛、ヒ素からなる群より選ばれた少なくとも1種の物質のワイヤー形状の線状体である。それぞれを単独で用いてもよいし、それぞれの合金や酸化物でもよい。具体的には一酸化シリコン、チタンシリサイド、リンドープシリコン、スズ鉄合金、スズコバルト合金、アンチモンスズ合金、スズ銀合金、インジウムアンチモン合金などを用いることができる。また、線状体は、外径が100nm以下であれば、ナノワイヤー、ナノロッド、ナノウィスカー、ナノチューブ(中空)、ナノファイバー、ナノベルトなどとも呼ばれる。
負極活物質5、導電助剤7、結着剤9、空隙10が形成する負極活物質の層の厚さは、5〜60μmであり、好ましくは10〜25μmである。
また、負極活物質5の長さは、好ましくは0.1μm〜2mmである。負極活物質5の外径は、好ましくは4nm〜1000nmであり、より好ましくは25nm〜200nmである。負極活物質5の長さが0.1μm以上であれば、負極活物質5の生産性を上げるのには十分な長さであり、負極活物質5の長さが2mm以下であれば、スラリーの塗布が容易である。また、負極活物質5の外径が4nmより太い場合、合成が容易であり、外径が1000nmより細い場合、負極活物質の微粉化を防ぐことができる。負極活物質の外径と長さの測定方法は、SEMによる画像解析により行った。
また、負極活物質5は、直線状、曲線状あるいは三次元的に激しく折れ曲がった縮れ形状を含んでいても良い。線状体の負極活物質5を製造するときは直線状や曲線状、縮れ形状の混合物として得られることがあるが、これらの形状を特別な方法を用いて分離する必要はない。これらの形状は、単独で用いても良いし、混合物のまま用いても良い。
一例として、CVD法で製造したシリコンの線状体のTEM写真とSEM写真を示す。図6は直線状あるいはほぼ直線状のシリコンが折れ曲がった形状をしている。外径は最大で1000nm程度である。図7は、ほぼ直線状のシリコンと曲線状のシリコンの混合物である。外径は10nm〜200nm程度である。図8は、シリコンが三次元的に激しく折れ曲がり縮れ形状が単独のものである。外径は20nm〜150nm程度である。
導電助剤7は、炭素、銅、スズ、亜鉛、ニッケル、銀からなる群より選ばれた少なくとも1種の導電性物質からなる粉末である。炭素、銅、スズ、亜鉛、ニッケル、銀の単体の粉末でもよいし、それぞれの合金の粉末でもよい。例えば、ファーネスブラックやアセチレンブラックなどの一般的なカーボンブラックを使用できる。
結着剤9は、樹脂の結着剤であり、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、スチレンブタジエンゴム(SBR)などのフッ素樹脂やゴム系の有機材料を用いることができる。
負極1は、負極活物質5と導電助剤7が結着剤9により緻密に詰まった状態で集電体3にスラリーを塗布・乾燥して形成された状態ではない。空隙10は、集電体3、負極活物質5、導電助剤7の一部あるいは全てに取り囲まれた空間であり、負極1の体積に対して10%〜80%程度占有する。空隙10の役割は、電解液を浸透させてリチウムイオンを通過させるとともに、充放電に伴う負極活物質5の体積変化を吸収して負極活物質5や導電助剤7の集電体3からの剥離や負極1のクラック発生を未然に防ぐことである。
また、図1(b)に示すように、ワイヤー形状の負極活物質5だけでなく、粒子状の負極活物質6を含んでいてもよい。負極活物質6は、負極活物質5に挙げられた物質と同様の物質で形成されており、粉末またはナノ粒子の負極活物質であり、一次粒子の平均粒径は10nm〜2μm程度である。負極活物質6は、負極活物質5と同じ物質を用いても良いし、異なる物質を用いても良い。さらに、負極活物質6はグラファイトを用いても良い。なお、一次粒子とは、粒子の最小単位であって、それ以上分割されない粒子のことであり、凝集していない状態での粒子のことである。
負極活物質6と、導電助剤7、後述する金属ナノ粒子25と導電助剤27の平均粒径に関して、微粒子は通常は凝集して存在しているので、ここでは一次粒子の平均粒径を指す。粒子の計測は、電子顕微鏡(SEM)の画像情報と動的光散乱光度計(DLS)の体積基準メディアン径を併用する。
負極活物質6や、後述する金属ナノ粒子25の平均粒径は、SEM画像によりあらかじめ粒子形状を確認し、画像解析(例えば、旭化成エンジニアリング製A像くん)で粒径を求めたり、粒子を溶媒に分散してDLS(例えば、大塚電子製DLS−8000)により測定したりすることが可能である。微粒子が十分に分散しており、凝集していなければ、SEMとDLSでほぼ同じ測定結果が得られる。
導電助剤7や、後述する導電助剤27の平均粒径も一次粒子の平均粒径を指す。アセチレンブラックのような高度にストラクチャー形状が発達している場合にも、ここでは一次粒径で平均粒径を定義し、SEM写真の画像解析で平均粒径を求めることができる。
また、図1(c)に示すように、粒子状の導電助剤7とワイヤー形状の導電助剤8の両方を用いても良い。導電助剤8は導電性物質のワイヤーであり、導電助剤7に挙げられた導電性物質を用いることができる。導電助剤8は、カーボンファイバー、カーボンナノチューブ、銅ナノワイヤー、ニッケルナノワイヤーなどの外径が300nm以下の線状体を用いることができる。ワイヤー形状の導電助剤8を用いることで、負極活物質5、6や集電体3などと電気的接続が保持しやすくなり集電性能が向上するとともに、ポーラス膜状の負極1に繊維状物質が増え、負極1にクラックが生じにくくなる。導電助剤8は、導電助剤7と同じ導電性物質を用いても良いし、異なる物質を用いても良い。例えば粒子状の導電助剤7として銅粉末を用い、ワイヤー形状の導電助剤8として気相成長炭素繊維(VGCF)を用いることが考えられる。なお、粒子状の導電助剤7を加えずに、ワイヤー形状の導電助剤8のみを用いても良い。
導電助剤8の長さは、好ましくは0.1μm〜2mmである。導電助剤8の外径は、好ましくは4nm〜1000nmであり、より好ましくは25nm〜200nmである。導電助剤8の長さが0.1μm以上であれば、導電助剤8の生産性を上げるのには十分な長さであり、長さが2mm以下であれば、スラリーの塗布が容易である。また、導電助剤8の外径が4nmより太い場合、合成が容易であり、外径が1000nmより細い場合、スラリーの混練が容易である。導電物質8の外径と長さの測定方法は、SEMによる画像解析により行った。
また、図2に示すように、負極活物質5の粒子の表面を、導電性材料11により被覆してもよい。さらに、図2に示すように、導電性材料11により被覆した負極活物質5と導電助剤7を造粒し、造粒体13として負極活物質5を用いてもよい。なお、造粒体13を構成する負極活物質は、ワイヤー形状の負極活物質5と粒子状の負極活物質6の混合物であってもよく、造粒体13を構成する導電助剤は、粒子状の導電助剤7とワイヤー形状の導電助剤8の混合物であっても良い。造粒体13の直径は0.2μm〜10μmであることが好ましい。
導電性材料11としては、炭素、銅、スズ、亜鉛、ニッケル、銀または、これらの合金などが挙げられる。
負極活物質5の導電性材料11の被覆は、CVD法、液相法、焼成法、乾式法を用いて行うことができる。また、ボールミルなどを用いたメカニカルアロイング法により被覆することもできる。これらの方法によれば、負極活物質5の粒子の表面の少なくとも一部に導電性材料11を被覆することができる。
造粒体13の作製は、乾式と湿式の一般的な造粒方法を用いることができるが、例えば、乾式では圧縮とせん断力をかけるメカニカルアロイング法や、気流中で粉体同士を高速で衝突させるハイブリダイゼーション法がある。さらに、湿式では無電解めっき法やスプレードライ法を単独あるいは組み合わせて用いることができる。例えば、負極活物質5にカーボン系の導電性材料11を乾式で被覆させて複合体とし、さらに、導電性材料11や結着剤9を水に分散させてサスペンションとして所定のサイズとなるようにスプレードライ法により造粒する方法がある。また、負極活物質5を硫酸銅溶液に分散させた後、水素化ホウ素ナトリウムなどの還元剤を用いて負極活物質5の表面に銅を析出させて導電性材料の被覆を形成する方法などがある。また、負極活物質をポリビニルアルコール水溶液(PVA水溶液)に分散した後、不活性雰囲気下でPVAを焼成し、炭素で被覆させる方法などもある
炭素の被覆方法としては、例えば、以下のような方法が挙げられる。負極活物質と10%ポリビニルアルコール水溶液を混練後、700℃で3時間、不活性雰囲気下(真空、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気等)で焼成する。ポリビニルアルコール中の炭素が炭化し、酸素と水素は水となって気化し、負極活物質は、炭素で被覆され、導電性が向上する。
次に、負極1の製造方法を説明する。図3に示すように、ミキサー15に、スラリー原料19を投入し、混練してスラリー17を形成する。スラリー原料19は、負極活物質5、導電助剤7、結着剤9、増粘剤、溶媒などである。
スラリー17中の固形分において、負極活物質5は25〜90重量%、導電助剤7は5〜70重量%、結着剤9は1〜10重量%を含む。例えば、負極活物質5を60重量%、導電助剤7は33重量%、結着剤9は2重量%、増粘剤は5重量%である。
ミキサー15は、スラリーの調製に用いられる一般的な混練機を用いることができ、ニーダー、撹拌機、分散機、混合機などと呼ばれるスラリーを調製可能な装置を用いてもよい。また、増粘剤としてはカルボキシメチルセルロース、メチルセルロース等の多糖類等を1種又は2種以上の混合物として用いることが適している。また、溶媒としては水を用いることができる。
次に、図4に示すように、コーター21を用いて、集電体3の片面に、スラリー17を塗布する。コーター21は、スラリーを集電体に塗布可能な一般的な塗工装置を用いることができ、例えばロールコーターやドクターブレードによるコーターである。
その後、70℃程度で乾燥し、厚みを調整するため、ロールプレスを通して、負極1を得る。また、空隙10はスラリー原料19の主要成分となる負極活物質5、6や導電助剤7、8のサイズや配合比率でコントロールすることが可能であるほか、ロールプレスで厚みを調整するときの圧下率やスラリー17の厚み調整により、所望のサイズや量を設定することができる。
次に、本発明の負極1を用いた、リチウムイオン二次電池の製造方法を説明する。
まず、正極活物質、導電助剤、結着剤及び溶媒を混合して正極活物質の組成物を準備する。前記正極活物質の組成物をアルミ箔などの金属集電体上に直接塗布・乾燥し、正極を準備する。なお、前記正極活物質の組成物を別途の支持体上にキャスティングした後、その支持体から剥離して得たフィルムを金属集電体上にラミネーションして正極を製造することも可能である。
前記正極活物質としては、リチウム含有の金属酸化物であって、一般的に使われるものであればいずれも使用可能であり、例えばLiCoO,LiMn2x,LiNi1−xMn2x(x=1,2),Ni1−x−yCoMn(0≦x≦0.5,0≦y≦0.5)などを挙げることができ、さらに具体的には、LiMn,LiMnO,LiNiO,LiFeO,LiFePO,LiFePOF,V,TiS及びMoSなどリチウムの酸化還元が可能な化合物である。
導電助剤としては、カーボンブラックを使用し、結着剤としては、フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレート、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)及びその混合物、スチレンブタジエンゴム系ポリマーを使用し、溶媒としては、N−メチルピロリドン(NMP)、アセトン、水などを使用する。このとき、正極活物質、導電助剤、結着剤及び溶媒の含量は、リチウムイオン二次電池で通常的に使用するレベルである。
セパレータとしては、正極と負極の電子伝導を絶縁する機能を有し、リチウムイオン二次電池で通常的に使われるものであればいずれも使用可能である。特に、電解質のイオン移動に対して低抵抗であり、かつ、電池の高容量の観点から厚みは20ミクロン程度と薄いものが好ましい。代表的なセパレータは、ポリプロピレン(PP)/ポリエチレン(PE)/ポリプロピレン(PP)微多孔膜の3層ラミネート膜となっており、PPとPEは熱可塑性の樹脂でそれぞれ約170℃、約130℃の融点となるように重合度などが材料設計されている。電池内部の温度が130℃を超えるとPE膜が溶融し、微孔が目詰まりしてリチウムイオンが透過できなくなり、電池反応を停止することができる。
電解液としては、炭酸プロピレン、炭酸エチレン、炭酸ジエチル、炭酸エチルメチル、炭酸メチルプロピル、炭酸ブチレン、ベンゾニトリル、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、γ−ブチロラクトン、ジオキソラン、4−メチルオキソラン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、スルホラン、ジクロロエタン、クロロベンゼン、ニトロベンゼン、炭酸ジメチル、炭酸メチルエチル、炭酸ジエチル、炭酸メチルプロピル、炭酸メチルイソプロピル、炭酸エチルプロピル、炭酸ジプロピル、炭酸ジブチル、ジエチレングリコールまたはジメチルエーテルなどの溶媒またはそれらの混合溶媒にLiPF,LiBF,LiSbF,LiAsF,LiClO,LiCFSO,Li(CFSON,LiCSO,LiAlO,LiAlCl,LiN(C2x+1SO)(C2y+1SO)(ただし、x,yは自然数),LiCl,LiIなどのリチウム塩からなる電解質のうち一つまたはそれらを二つ以上混合したものを溶解して使用できる。
前述したような正極と負極との間にセパレータを配置して、電池構造体を形成する。このような電池構造体を巻くか、または折って円筒形の電池ケースや角形の電池ケースに入れた後、電解液を注入すれば、リチウムイオン二次電池が完成する。
また、前記電池構造体をバイセル構造で積層した後、それを有機電解液に含浸させ、得られた結果物をポーチに入れて密封すれば、リチウムイオンポリマー電池が完成する。
負極活物質5は、リチウムの吸蔵・脱離で体積が変わるが、負極活物質5がサブミクロンあるいはナノレベルの外径を有するワイヤー形状であるため、負極活物質5が体積変化を起こしても、負極活物質5の微粉化は生じない。例えば、シリコンはリチウムを吸収すると体積が最大で4倍まで膨張するが、シリコンのワイヤー径が太くなったり、曲線部の曲率が変化したり、ワイヤーの長さが変化したりしても空隙10のスペースで吸収され、負極の破壊(集電体からの活物質の剥離や脱落)が回避される。寿命特性に関しては、負極にクラックを生じさせないことが特に重要となる。
第1の実施形態によれば、負極活物質にシリコン系合金を用いているため、炭素系材料を負極活物質として用いる従来の負極に比べて、高容量化が可能である。
また、第1の実施形態によれば、ワイヤー形状の負極活物質を用いているため、負極活物質の体積変化が大きくとも、一次元形状の負極活物質の太さと長さで空隙に吸収される。そのため、負極活物質の微粉化や、負極膜の亀裂の発生、負極活物質と集電体との剥離や脱落、負極活物質間の導電性の低下などの問題点が抑制され、負極の寿命が長くなる。
また、第1の実施形態によれば、スラリーの塗布・乾燥という製造方法でリチウムイオン二次電池用の負極を製造するため、真空系が必要なく、連続的に負極を製造でき、生産性に優れる。
次に、第2の実施形態について説明する。
図5は、第2の実施形態にかかる、負極23、負極29、負極31を示す図である。以下の実施形態で第1の実施形態にかかる負極1と同一の様態を果たす要素には同一の番号を付し、重複した説明は避ける。
図5(a)に示すように、第2の実施形態に係る負極23においては、結着剤9に代えて金属ナノ粒子25を用いる点が第1の実施形態に係る負極1と異なる。
金属ナノ粒子25は、銅、スズ、亜鉛、ニッケル、銀からなる群より選ばれた少なくとも1種の金属のナノ粒子であり、一次粒子の平均粒径は2nm〜100nmであることが好ましい。不活性雰囲気下での焼結により、金属ナノ粒子25は、集電体3と負極活物質5と導電助剤7との接点近傍で金属結合を形成し、負極活物質5と導電助剤7とを集電体3に接合する。また、金属ナノ粒子25の焼結により負極には強固な空隙28が形成され、電解液の浸透や負極活物質の体積変化を緩和し、負極にクラックが発生するのを抑止する役割を担う。
金属ナノ粒子25は、一次粒子の平均粒径が2nm以上であれば、より容易に製造が可能であり、一次粒子の平均粒径が100nm以下であれば、より低温での焼結が可能である。
金属ナノ粒子25は、重量に比べて、表面積が非常に大きいため、表面に存在する原子の比率が高くなり、融点が低下する。例えば、金の融点は1337Kであるが、直径5nmの金ナノ粒子の融点は1100K程度と、約200K低いという報告がある。そのため、金属ナノ粒子25を用いることで、バルク体の金属の融点の1/2以下の温度でも金属ナノ粒子25の表面が活性となり、焼結可能となるため、金属ナノ粒子25と集電体3、負極活物質5または導電助剤7は、金属結合で接合する。
また、図5(b)に示すように、導電助剤7に代えて、導電助剤27を用いても良い。導電助剤27は、銅、スズ、亜鉛、ニッケル、銀からなる群より選ばれた少なくとも1種の金属からなる粉末である。銅、スズ、亜鉛、ニッケル、銀の単体の粉末でもよいし、それぞれの合金の粉末でもよい。導電助剤27の平均粒径は1μm〜10μmであることが好ましい。導電助剤7の一次粒子の平均粒径が1μm以上であれば、負極活物質5が膨張しても負極29にクラックを生じないような強固でより大きな空隙28を持った負極29をより確実に形成可能である。導電助剤27の平均粒径が10μm以下である場合、スラリーがより均一に混練され、均質な厚みの電極が得られる。
また、図5(c)に示すように、導電助剤27には、さらにカーボン材料33を加えてもよく、負極31は空隙28を有する。添加するカーボン材料33の量は、負極活物質5と導電助剤27と金属ナノ粒子25との合計の10〜70重量%であることが好ましい。添加するカーボン材料33としては、ファーネスブラックやアセチレンブラック、カーボンファイバーなどの一般的なカーボンブラックを使用できる。
導電助剤27と負極活物質5とは、金属ナノ粒子25を介して金属結合で結ばれており、集電体3の上に空隙28の多いポーラス構造の膜を形成している。また、焼結後の25が形成する金属結合は、結着剤9の有機物より強度が高く、負極23、負極29、負極31はクラックが発生しにくく、サイクル特性に優れる。
金属ナノ粒子25の金属の量は、焼結前において導電助剤27の金属の粉末に対して2〜40重量%であることが好ましい。前記範囲において、十分な空隙28を有する好適なポーラス構造を形成可能である。なお、空隙28は、スラリーに配合する原料の粒径やワイヤー径および組成比率により調節が可能であるとともに、スラリーの塗布・乾燥後の負極をロールプレスに通して厚みを調整する際にも好適なポーラス構造を形成することができる。
負極23、負極29、負極31は、結着剤9に代えて金属ナノ粒子25を用い、必要に応じて導電助剤7に代えて導電助剤27やカーボン材料33を用いる点以外は、負極1と同様の工程で製造される。なお、金属ナノ粒子25は、粉末のほかに、酸化防止を目的としたサスペンションの状態でスラリー17に配合してミキサー15で混練してもよい。金属ナノ粒子25を含むサスペンションには水やアルコールなどの溶媒に酸化防止剤や還元剤が添加されていてもよい。
また、負極23、負極29、負極31の製造方法において、スラリーの塗布・乾燥後、不活性雰囲気(真空、窒素、アルゴンなど)下において、焼結工程を有する。焼結温度は、金属ナノ粒子25に用いる金属のバルクでの融点(絶対温度)の半分以下であることが好ましい。仮に、金属ナノ粒子25に銅ナノ粒子を用いる場合には、バルクでの銅の融点が1357Kであるので、焼結温度は、678K(=405℃)である。焼結温度はさらに、350℃以下であることが好ましく、実用的に200℃〜300℃であることがより好ましい。
仮に、金属ナノ粒子25を加えないで導電助剤27のみを焼結した場合、高温にしなければ焼結しない。一方、導電助剤27を加えずに金属ナノ粒子25のみを焼結した場合、空隙の少ない緻密な膜が得られることとなる。
なお、第2の実施形態において、ワイヤー形状の負極活物質5に加えて、粒子状の負極活物質6を加えても良いし、粒子状の導電助剤7に代えて、ワイヤー形状の導電助剤8を用いても良く、粒子状の導電助剤7とワイヤー形状の導電助剤8の混合物を用いても良い。
第2の実施形態によれば、第1の実施形態で得られる効果に加えて、集電体3と導電助剤7や導電助剤27とが、金属ナノ粒子25を介して金属結合で結合しており、負極23、負極29、負極31は多数の空隙28を有するポーラス構造を形成しているため、負極活物質の体積変化が大きくとも体積変化に伴うひずみが吸収され、負極膜に亀裂が入らず、負極活物質と集電体との剥離が抑制されるため、さらに負極の寿命が長い。
また、第2の実施形態によれば、集電体3と導電助剤7や導電助剤27、負極活物質5が金属ナノ粒子を介して金属結合でつながっているため、電極膜の内部抵抗が小さくなり、高率での充放電特性が改善する。
以上、添付図面を参照しながら、本発明にかかるリチウムイオン二次電池用の負極の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到しえることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
1、2………負極
3………集電体
4………負極
5………ワイヤー形状の負極活物質
6………粒子状の負極活物質
7………粒子状の導電助剤
8………ワイヤー形状の導電助剤
9………結着剤
10………空隙
11………導電性材料
13………造粒体
15………ミキサー
17………スラリー
19………スラリー原料
21………コーター
23………負極
25………金属ナノ粒子
27………金属の導電助剤
28………空隙
29………負極
31………負極
33………カーボン材料

Claims (12)

  1. 金属製の集電体と、
    前記集電体上に、結着剤で結合している負極活物質と導電助剤と、を有し、
    前記負極活物質が、ワイヤー形状の負極活物質を含み、
    金属ナノ粒子を介して、前記負極活物質と前記集電体または前記負極活物質と前記導電助剤とが、金属結合により結合しており、
    前記負極活物質が、シリコン、スズ、アンチモン、アルミニウム、鉛およびヒ素からなる群より選ばれた少なくとも1種の物質またはそれらの合金を含み、
    前記導電助剤が、炭素、銅、スズ、亜鉛、ニッケル、銀からなる群より選ばれた少なくとも1種の物質またはそれらの合金を含むことを特徴とするリチウムイオン二次電池用の負極。
  2. 前記金属ナノ粒子の一次粒子の平均粒径が、2〜100nmであることを特徴とする請求項1に記載のリチウムイオン二次電池用の負極。
  3. 前記金属ナノ粒子の金属の量が、前記導電助剤の金属の粉末に対して2〜40重量%であることを特徴とする請求項1に記載のリチウムイオン二次電池用の負極。
  4. 前記ワイヤー形状の負極活物質の長さが0.1μm〜2mmであり、前記負極活物質の外径が4nm〜1000nmであることを特徴とする請求項1に記載のリチウムイオン二次電池用の負極。
  5. 前記ワイヤー形状の負極活物質の少なくとも一部が縮れ形状であることを特徴とする請求項1に記載のリチウムイオン二次電池用の負極。
  6. 前記ワイヤー形状の負極活物質の少なくとも一部が直線状であることを特徴とする請求項1に記載のリチウムイオン二次電池用の負極。
  7. 前記導電助剤が、ワイヤー形状の導電助剤を含むことを特徴とする請求項1に記載のリチウムイオン二次電池用の負極。
  8. 前記金属ナノ粒子は、銅、スズ、亜鉛、ニッケルおよび銀からなる群より選ばれた少なくとも1種の金属のナノ粒子であり、一次粒子の平均粒径が2nm〜100nmであり、
    前記金属結合が、前記金属ナノ粒子を焼結することにより形成され、
    前記集電体と前記負極活物質と前記導電助剤と前記金属ナノ粒子との一部または全部に取り囲まれた空隙を有することを特徴とする請求項に記載のリチウムイオン二次電池用の負極。
  9. 請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池用の負極を用いたリチウムイオン二次電池。
  10. 負極活物質と、導電助剤と、結着剤とが混在してなるスラリーであって、
    前記負極活物質が、ワイヤー形状の負極活物質を含み、
    前記結着剤が金属ナノ粒子を含み、
    前記負極活物質が、シリコン、スズ、アンチモン、アルミニウム、鉛およびヒ素からなる群より選ばれた少なくとも1種の物質またはそれらの合金を含み、
    前記導電助剤が、炭素、銅、スズ、亜鉛、ニッケル、銀からなる群より選ばれた少なくとも1種の物質またはそれらの合金を含むことを特徴とするリチウムイオン二次電池用の負極作製用のスラリー。
  11. 負極活物質と導電助剤と結着剤とを混練してスラリーを調製する混練工程と、
    前記スラリーを集電体に塗布する塗布工程と、
    前記スラリーを塗布した前記集電体を乾燥する乾燥工程と、
    を具備し、
    前記負極活物質が、ワイヤー形状の負極活物質を含み、
    前記結着剤が金属ナノ粒子を含み、
    前記集電体が金属製であり、
    前記負極活物質が、シリコン、スズ、アンチモン、アルミニウム、鉛、ヒ素からなる群より選ばれた少なくとも1種の物質またはそれらの合金を含み、
    前記導電助剤が、炭素、銅、スズ、亜鉛、ニッケル、銀からなる群より選ばれた少なくとも1種の物質またはそれらの合金を含むことを特徴とするリチウムイオン二次電池用の負極の製造方法。
  12. 記乾燥工程後、前記金属ナノ粒子の金属のバルク体の融点(絶対温度)の1/2以下の温度の不活性雰囲気下で前記負極を加熱する焼結工程をさらに具備することを特徴とする請求項11に記載のリチウムイオン二次電池用の負極の製造方法。
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