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JP5339054B2 - 水処理方法 - Google Patents

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Description

本発明は、浄水処理、工業用水製造などに用いられる水処理方法に関する。
従来より水処理方法の一つとして、有機物の分解、除菌、金属等の除去を行うために、次亜塩素酸ナトリウムなどの塩素系酸化剤やオゾンなどの酸化剤を用いて被処理水を酸化処理する方法が用いられている。
例えば地下水処理に於いては、酸化剤を添加し溶解している金属を一旦酸化析出せしめ、急速ろ過した後、精密ろ過膜もしくは限外ろ過膜などで処理するのが通常である。とりわけ、被処理水が深井戸を水源とする場合、水源が無酸素状態であるため溶存金属が多く精密ろ過膜もしくは限外ろ過膜を用いる場合、前段に急速ろ過が必須となる。そのため、水処理装置が大型化し、設置に大きなスペースが必要となる。また、砂ろ過塔や膜の逆洗を実施する必要があるため、これらの処理設備から多量の排水が発生する欠点がある。
更に、深井戸を水源とし精密ろ過膜もしくは限外ろ過膜により飲料水処理する場合、原水中の硬度成分やシリカなどが処理水中にも大部分残存することになるためスケールによる問題発生も懸念される。
上記した諸問題に対処する例として、特許文献1には、処理工程の前段で多価金属イオンの一部を酸化処理し、析出した固形分を除去した後、得られた1次処理水をナノろ過膜もしくは逆浸透膜を用い高度処理する方法が開示されている。この場合、淡水処理用のナノろ過膜もしくは逆浸透膜は酸化剤に対する耐性を有していないため、原水の供給に際し予め還元剤を注入し残存する酸化剤を除去することが必須となる。加えて、この被処理水を飲料用水として使用する場合、ナノろ過膜もしくは逆浸透膜による水処理後に再度酸化剤である次亜塩素酸ナトリウムを添加し、飲料水中の残留塩素を0.1mg/L以上に保持する如く注入し管理することが必要となる。したがって、多種類の薬剤を複数回繰り返し添加せねばならず、薬液量も増え、コストがかかると共に工程が煩雑となる。
また、原水水質にもよるが、固形分の除去に精密ろ過膜もしくは限外ろ過膜を用いた場合には、通常、1時間程度の通水処理実施後に逆通水を施すことから排水量が増加し、処理水回収率が低下する。
このように、従来の酸化処理を基にした水処理方法では、必要スペース、使用薬液量、多量の排水量など、非効率な面が多く、改良の余地があった。
一方、特許文献2には、汲み上げた地下水を直接固液分離した後、ナノろ過膜もしくは逆浸透膜により処理する方法が開示されている。この方法は、薬液を削減している点で注目に値する。しかしこの方法に拠っても、処理工程において大気下で処理することから酸素の混入を完全に遮断することは難しく、その結果、原水中の鉄などの金属イオンが酸化され、酸化鉄などの金属酸化物の微粒子として析出してしまう。
酸化鉄は、粒径が10nm〜5000nmと分布が広いことで知られているが、酸化鉄の除去に仮に精密ろ過膜もしくは限外ろ過膜を前処理に用いた場合、発生した酸化鉄により、非常に短期間に精密ろ過膜もしくは限外ろ過膜の閉塞が惹起される。また一旦膜閉塞が発生した場合、これらの不溶解性物質は粒径が非常に小さい為、膜の物理的洗浄である逆通水を実施しても、膜差圧は回復せず処理工程に支障を来す結果となる。また、逆通水の頻度を増加させると、処理水の回収率が低下してしまう。
また酸化鉄は、水酸化鉄及びオキシ水酸化鉄と合わせて16種類が知られているが、ベンガラなどに代表されるFeは、薬品に対する溶解性が非常に低く、原水中にこのような不溶性の酸化鉄が含まれていて、精密ろ過膜もしくは限外ろ過膜が閉塞した場合、薬品洗浄を実施しても初期状態への回復が非常に難しい。
以上に説明した通り、現状で開示されている方法では十分な対処が果たされておらず、更に実効有る解決方策が求められている。
特開平11−192482号公報 特開2007−38052号公報
本発明は、金属イオンおよび不溶性物質を含む被処理水(例:地下水)を浄水処理するに際し、砂ろ過等の大型設備を必要とせず、効率的に安定運転が可能な水処理方法を提供することを目的としている。
本発明者等は、上記目的を達成するため鋭意研究した結果、金属イオンおよび不溶性物質を含む被処理水を膜ろ過により固液分離し脱塩処理するに際し、この一連の水処理工程を常時還元雰囲気下(溶存酸素を実質的に除去した状態下)で行うことにより、排水量を削減し、且つ安定的な運転が可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち本発明の水処理方法は、金属イオンおよび不溶性物質を含む被処理水を、プレコート剤(ろ過助剤)を保持した精密ろ過膜もしくは限外ろ過膜により膜ろ過処理して不溶性物質を除去した後、逆浸透膜を用いて脱塩処理する方法であって、前記被処理水としての井戸より汲み上げられる原水に重亜硫酸ナトリウムを添加し、該被処理水中の溶存酸素を実質的に除去し、金属イオンの酸化析出を抑制した状態で、前記膜ろ過処理及び脱塩処理をすることを特徴としている。
上記重亜硫酸ナトリウムは、上記脱塩処理に伴う濃縮水および/または透過水に溶存酸素が実質的に含まれなくなるように添加されることが好ましい。
具体的には、上記重亜硫酸ナトリウムは、該脱塩処理に伴う濃縮水および/または透過水中の溶存酸素濃度を、例えば0.1mg/L以下に保持するように添加する。
上記重亜硫酸ナトリウムは、上記被処理水中の溶存酸素および上記脱塩処理までに新たに溶解する酸素との反応に必要な理論量以上、好ましくは該理論量より過剰に添加されることが好ましい。ここで、重亜硫酸ナトリウムの注入量は、例えば酸素除去に必要な理論量に対し1〜50mg/L過剰に注入してもよい。
ここで対象となる不溶性物質は、特に限定されないが、被処理水として地下水を用いた場合には、例えば、酸化鉄、酸化マンガンなどの金属酸化物、カルシウム化合物、土壌成分、有機物、微生物などが挙げられる。また、金属イオンとしては、鉄、マンガン、カルシウム、マグネシウムなどの金属のイオンが挙げられる。
上記精密ろ過膜もしくは限外ろ過膜は、脱塩処理の前処理として不溶性物質(固形分)の除去を行うものである
ここで、精密ろ過膜もしくは限外ろ過膜は、通水方式(内圧式、外圧式など)、膜素材(有機、無機など)、膜形状などを問わず全て用いることができるが、続く脱塩工程に採用する逆浸透膜の膜閉塞を防止するため、膜孔径が0.1μm以下の膜を用いることが好ましい。
ろ過方式としては酸素の溶解を低減し得るためデッドエンド方式が好ましく、逆通水の頻度は、前ろ過として主として用いる精密ろ過膜もしくは限外ろ過膜の能力及び被処理水性状から適宜決定される。
上記脱塩処理は、被処理水中の金属イオンを除去する処理であり、本発明では逆浸透膜を用い処理することを示すが、膜の形状は問わず、スパイラル式、中空糸式などのいずれの手段をも用いることが出来、除去率、回収率、循環量、被処理水の性状を考慮し決定することが好ましい。
本発明で用いられる重亜硫酸ナトリウムは、溶存酸素を除去し得るものであ。本発明の水処理方法が、飲料水の製造に用いられる場合には、水道用薬品の基準に適合するものを用いることとする
本発明で用いられるプレコート剤(以下、保護剤ともいう)としては、平均粒径0.4〜50μmの微粒子が好ましく、精密ろ過膜もしくは限外ろ過膜に供給する場合には、膜の差圧流量特性を低下させない粒径分布及び注入量を選択することが好ましい。プレコート剤は、有機物もしくは無機物のいずれであってもよく、例えば、カオリン、ゼオライト、アルミナ、けい砂、活性炭、イオン交換樹脂、キレート樹脂、高分子ビーズなどが挙げられる。このようなプレコート剤は、1種類を単独でもしくは2種類以上を組み合わせて用いることが可能である。
また、プレコート剤は、原水性状に応じて適宜選択することが好ましい。その際、水に対する親和性、粒子形状、有機物の吸着能力などといった性状等を考慮し、プレコート剤微粒子の選択及びその混合割合を決定することが好ましい。
このようなプレコート剤をろ過膜表面にプレコートする方法としては、従来公知の方法が用いられる。
上記精密ろ過膜もしくは限外ろ過膜の差圧回復方法として、逆通水の頻度を従来の頻度よりも低減し、薬品洗浄の頻度を従来の頻度より増やすことが好ましい。ここで、逆通水とは、通常膜ろ過運転時にはろ過膜の1次側から2次側に通水するが、ろ過膜の2次側から1次側に処理水等を通水することをいう。
ろ過膜として精密ろ過膜もしくは限外ろ過膜を用いた場合、逆通水を1時間ごとに1回行い、薬品洗浄は、数週間から数カ月に1回実施されることが一般的である。ところで、本発明によれば、上述のように、精密ろ過膜もしくは限外ろ過膜への負荷を著しく低減することが可能となるので、逆通水の頻度を低減することが可能となる。また、一方で、薬品洗浄回数を増やしても、例えば、洗浄薬液として溶存酸素除去に用いるのと同じ重亜硫酸ナトリウムを用いれば、すすぎ工程をせず、通水を再開することが可能となるので、薬品洗浄により操作負担が生じない。したがって、逆通水と薬品洗浄の頻度を最適化させることで、排水量を低減させることが可能となり、処理水回収率を向上させることが可能となると共に、メンテナンス回数を低減させることができるので、より長時間の安定運転が可能となる。
精密ろ過膜もしくは限外ろ過膜の逆通水は、被処理水の性状を考慮して通水条件を決めることを基本とするが、被処理水中の溶存酸素を実質的に除去した状態下でのろ過に於いては、3から24時間に1回程度行うのが好ましい。
また、薬品洗浄については、逆通水による差圧回復性と初期差圧から決定することが好ましいが、例えば1から7日間に1回程度実施する。
上記薬品洗浄に、酸および還元剤を含む洗浄薬液を用い、上記精密ろ過膜もしくは限外ろ過膜の1次側に該洗浄薬液を供給し一定時間保持或いは循環させた後、該洗浄薬液を回収し、酸及び還元剤の濃度を調整した後再使用することが好ましい。
該薬品洗浄に用いられる洗浄薬液は、閉塞物により適宜選択することができるが、金属系の閉塞物が多い場合には、還元剤と酸の組み合わせが好ましい。還元剤としては、特に亜硫酸塩もしくは重亜硫酸塩の1種もしくは2種以上を好適に使用することができる。また、溶存酸素を除去するための還元剤と同じ重亜硫酸ナトリウムを用いると、薬品管理の点で好ましい。
また、各種洗浄薬液の濃度及び保持時間は、薬液の種類、得られる洗浄効果などから適宜決定され、特に限定されるものではない。なお、濃度及び保持時間の決定にはろ過膜として使用される精密ろ過膜もしくは限外ろ過膜の薬品耐性も考慮する必要がある。
上記薬品洗浄後、すすぎ工程を実施せず通液を再開することが好ましい。
即ち、次工程にすすぎ液を供給することで、すすぎ排水を削減し水処理回収率を向上出来る。更に、脱塩処理に逆浸透膜を用いるため、該すすぎ液により逆浸透膜の1次側の殺菌及び洗浄を同時に行うことが可能となるので、脱塩処理工程の安定稼働も可能となる。
ここで逆浸透膜にすすぎ液を送液した場合、逆浸透膜の処理水の導電率を監視し、導電率が所定値以上に達した場合、その処理水を中間水槽に返送することが好ましい。
本発明の他の態様は、金属イオンおよび不溶性物質を含む被処理水に重亜硫酸ナトリウムを注入する還元剤注入手段と、重亜硫酸ナトリウム注入後の被処理水から不溶性物質を分離する固液分離装置と、該固液分離装置より得られる1次処理水から金属イオンを分離する、逆浸透膜を備えた脱塩装置と、該脱塩装置より得られる濃縮水および/または透過水の溶存酸素濃度を測定する溶存酸素計とを備え、前記溶存酸素計で測定される溶存酸素濃度に応じて前記重亜硫酸ナトリウムの注入量を制御する水処理システムである。
本発明の水処理方法によれば、被処理水に重亜硫酸ナトリウムを添加し、被処理水中の溶存酸素を実質的に除去しているので、被処理水中に含まれる金属イオンの酸化析出を抑制しつつ、膜ろ過及び脱塩処理を行うことが可能となる。したがって、精密ろ過膜もしくは限外ろ過膜に付着し、薬品洗浄等によっても除去し難い膜閉塞の原因となる不溶性物質の量を最小限に留めことが可能となり、精密ろ過膜もしくは限外ろ過膜のメンテナンス回数を低減し、排水量を減らすことが可能となる。また、膜面にプレコート剤を保持することにより、膜差圧の上昇を抑制することが可能であると共に、精密ろ過膜もしくは限外ろ過膜に付着した不溶性物質の除去を容易とすることが可能となる。したがって、安定稼働が可能でかつ水処理回収率を向上し得る水処理方法を提供することが可能となる。
また、従来の酸化処理を基本とする方法では、処理工程に砂ろ過などの大型設備を必要とし、更にナノろ過膜もしくは逆浸透膜を用いる場合には、ナノろ過膜もしくは逆浸透膜に供給する前に酸化剤を除去し、処理後に酸化剤の再度添加が必要となるなど、工程が複雑で薬液量などのコストも高かった。しかし、本発明によれば、大型設備を必要としないため、省スペース化を図ることが可能であり、また、還元処理を基本とするため、薬液量を低減し、処理工程を簡略化することが可能となる。したがって、本発明の方法によれば極めて安価に水質のよい飲料水を安定して得ることが可能となる点で工業的効用は著大であるものと確信する。
以下、本発明の実施の形態を図1に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る水処理方法に好適に用いられる水処理システムの全体の流れを説明するために示したフロー図である。
図1に示すように、この水処理システムは、井戸1より汲み上げられる原水に溶存酸素を除去するために還元剤として重亜硫酸ナトリウムを注入する還元剤注入手段と、不溶性金属成分(例:不溶性金属酸化物)などの不溶性物質を固液分離する膜分離装置(MS)2(以下、固液分離装置ともいう)と、膜分離装置2からの1次処理水を脱塩処理する逆浸透膜(RO)3とを主に備えている。
ここで還元剤注入手段は、還元剤タンクT2及び第1の還元剤ポンプP4から主に構成されている。還元剤の注入量は、逆浸透膜3の濃縮水を排水する濃縮排水ラインL7に設けられた溶存酸素計(DO)4により計測される測定値が常時0mg/L付近となるよう調節される。還元剤注入量の管理方法は、特には限定されないが、例えば、DO計4の測定データを図示せぬ制御部に送り、測定値が所定値(例えば0.1mg/L)を一定時間(例えば120秒間)超えた場合に、還元剤の注入量を増加するよう第1の還元剤ポンプP4に指示するよう構成してもよい。その際、還元剤の増加量は、例えば増加した酸素量に応じた量(反応当量)またはそれを越える値とし、溶存酸素濃度が所定値に戻った際には、還元剤の注入量を初期注入量に戻すよう構成してもよい。また、予め被処理水に含まれる溶存酸素量、本水処理行程で混入する酸素量、酸素との反応以外に消費される還元剤の消費量等のデータを収集し、当該データに基づき必要とされる還元剤の量を算出し、当該計算値以上の還元剤を注入することとしてもよい。
図1に、水処理ラインを破線で示し、薬洗ラインを一点鎖線で示した。水処理ラインは、被処理水中の不溶性物質を膜ろ過により固液分離した後、被処理水中に残存する金属イオンを脱塩処理するラインである。具体的には、図1に示すように、井戸1より汲み上げた地下水(被処理水)を膜分離装置2へ移送し、膜分離後に得られる1次処理水を中間タンクT3を介して逆浸透膜3に移送し、脱塩処理後の透過水を処理水タンクT4に移送するまでのラインをいう。
薬洗ラインは、膜分離装置2の洗浄を行うためのラインであり、具体的には、図1に示すように、薬液タンクT5内に貯留された薬液を薬品供給ラインL10を介して膜分離装置2に移送し、洗浄後の薬液を薬品回収ラインL11を介して再び薬液タンクT5に返送する循環ラインをいう。
なお、上記実施形態では、DO計を濃縮排水ラインL7に設けたが、特に限定するものではなく、逆浸透膜3により分離される透過水及び/または濃縮水の経路(例えば、L5、L6、L12など)のいずれに設けてもよい。なお、還元剤は、膜ろ過前に添加されるが、その後の過程で補充してもよい。以上、本発明について説明したが、本発明はこれら及び後述の実施例に限定されて解釈されるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない限り、当業者の知識に基づいて、種々の変更、修正、改良を加えることは可能である。
本実施例に於いては、地下水(井戸水)にメタケイ酸ソーダ5水塩、カオリン、塩化第一鉄4水和物、塩化マンガン(II)4水和物、シリカ分散剤(GE社製MSI300)、有機物として名糖産業(株)製名糖アップルティー(粉末紅茶)を添加し、pH=6.7〜7.3、シリカ濃度50mg/L、カオリン濃度が50mg/L、鉄濃度1mg/L、マンガン濃度50mg/L、TOC濃度3mg/L、シリカ分散剤濃度が3mg/Lとなるように調製した模擬原水を供給原水として使用した。
本実施例では、図1に示したフローに従い、下記の条件で地下水の飲料水化を行った。
まず、通水を開始するに際し、準備動作として、中間タンクT3に図示せぬ供給ラインより水道水を供給して貯留した後、前処理ポンプP1を稼働させ、保護剤供給ラインL1より、膜分離装置2の1次側に送液を行い、得られたMSの1次処理水を、中間タンクT3に回収し、中間タンクT3とMSとの間を水道水が循環できる状態にした。この循環処理の最中に、必要に応じて保護剤タンクT1から保護剤ポンプP2により保護剤供給ラインL1に保護剤を供給し得る様に設定した。
ここで、膜分離装置2には、ウェルシィ社製限外ろ過膜「ウェルピュアS」を用いた。また、保護剤は、林化成株式会社製含水カオリンASP200(平均粒径0.4μm)を80g/L用い、膜分離装置2を循環通水させた状態で、保護剤を注入し、ろ過膜の1次側に保護層を設け、流量、差圧が変化しないことを確認し実験に供した。
次いで調製した原水は、井戸ポンプP3より原水供給ラインL2を介し膜分離装置2に移送し、その際、原水供給ラインL2に還元剤タンクT2より第1の還元剤ポンプP4を用いて還元剤を注入した。逆浸透膜3による脱塩後の濃縮排水を溶存酸素計4により測定し、得られる測定値に応じて還元剤注入量の管理を行った。ここで、溶存酸素計4は、株式会社堀場アドバンスドテクノ社製工業用溶存酸素計(型名:HD−480、測定方式:ガルバニ電池法、分解能0.01mg/L、繰り返し性±0.5%、直線性±0.5%)を用いた。
得られたMSの処理水は1次処理水送液ラインL3を経て中間タンクT3に貯留した。ここで、膜分離装置2は、膜ろ過流速2.4m/Dayで通水出来る様に設定した。
次いでこの処理水を、中間タンクT3から昇圧ポンプP5により1次処理水供給ラインL4を介し逆浸透膜3に供給し、得られた高度処理水は、導電率計(CD)5により計測を行い、70μS/cm以下の条件で処理水ラインL5を介し処理水タンクT4に貯留し、70μS/cmを越える条件で、処理水循環ラインL12を介し中間タンクT3に返送する様に設定した。
また濃縮水は、一部を、循環ラインL6を通じ昇圧ポンプP5に供給し、残りは、濃縮排水ラインL7を経て排水した。
ここでRO装置3としては、ダウ社製BW30−4040を用い、回収率を75%で処理出来る様に設定した。
膜分離装置2の通液が所定の時間に到達したら、中間タンクT3から1次処理水を昇圧ポンプP5により逆通水ラインL8を経て膜分離装置2の2次側に供給し、その排水は排水ラインL9より排出し得る様に設定した。逆洗条件としては、任意の流量で60秒間逆洗を実施後、通水再開出来る様に設定した。
更に、膜分離装置2の通液が所定の時間に到達したら、薬品洗浄が実施できるように設定した。先ず排水ラインL9より膜分離装置2中の原水を排出し、その後薬液タンクT5から薬液供給ポンプP6により薬品供給ラインL10を経て膜分離装置2の1次側に洗浄薬液を供給する。その際、薬洗ラインに、酸タンクT6から酸ポンプP7により酸を任意の量注入し、還元剤タンクT2から第2の還元剤ポンプP8により任意の量の還元剤を注入することが出来る様に設定した。
この薬液は、薬品回収ラインL11より薬液タンクT5に回収し、任意の時間、薬液を循環出来る様に設定した。
なお、ここで還元剤としては重亜硫酸ナトリウムを20%、酸としてはクエン酸を0.1%で用いた。
供給原水中への還元剤注入量は、濃縮排水の溶存酸素濃度が0mg/Lでほぼ安定保持される状態に管理し給水を実施した。なお、溶存酸素の実測濃度は、処理工程の切り替えに伴う120秒以内の0.1mg/Lを超える瞬間的な溶存酸素濃度の上昇はあったが、1時間毎に算出した平均はいずれも0.02mg/L(瞬間的上昇以外の最大値は0.08mg/L)であった。また、限外ろ過膜の逆通水は、通常運転時(水処理運転時)の通水時間がそれぞれ1、3、6、12、24時間経過した後に実施する条件で評価を実施し、薬品洗浄は、1日毎に実施した。
ここで、実施例1に於いて実施した種々の逆通水間隔における差圧の経時変化を図2に示す。
図2から、通水時間が1、3、6、12、24時間と長くなるにつれ限外ろ過膜の差圧が上昇することが確認できるが、すべての条件に於いても薬品洗浄実施後に、膜差圧が通水初期と同程度の0.02MPa程度に回復していることが確認出来る。
このことから、供給原水から逆通水後の濃縮排水に至るまでの溶存酸素量を0mg/Lに管理し、精密ろ過膜もしくは限外ろ過膜表面に保護層を設けることで、膜差圧の上昇を低減し、逆通水頻度を削減することが可能であることが確認出来た。更に、定常的に薬品洗浄を実施することにより初期差圧に回復させることが出来、この結果により本件発明の効果を証明する事が出来た。尚、本実施例では、薬品洗浄を1日1回(24時間毎に)実施しているが、井戸原水性状と膜差圧上昇程度を考慮し洗浄間隔を延ばすことも可能である。
比較例1
比較例1では、還元剤の注入量を供給原水中の溶存酸素濃度に相当する量とし、RO濃縮排水中の溶存酸素濃度が継続して0.2mg/L以上となる状態を含む溶存酸素の除去が十分とはいえない条件下で通水および再生を実施し、かつ限外ろ過膜の逆通水の頻度を下記とした以外は、実施例1と同様の条件で行った。
尚、この比較例1では、限外ろ過膜に保護剤を保持させ通水を行っている。
また、限外ろ過膜の逆通水は、通水時間が6時間経過した後実施する条件で評価を実施し、薬品洗浄は、1日毎に実施した。
ここで比較例1に於いて実施した限外ろ過膜の差圧経時変化を図3に、濃縮排水中の溶存酸素の経時変化を図4に夫々示す。
図3、図4に示されるように、逆浸透膜3の濃縮排水中の溶存酸素濃度が一旦継続して上昇した状態となった場合、その後に逆通水を行っても限外ろ過膜の差圧をほとんど回復することはできなかった。また、逆通水によっても差圧が解消しないまま運転を継続した場合、限外ろ過膜の差圧が24時間経過後、初期差圧に対して0.12MPa上昇することを確認した。このように、非常に短期間に差圧が上昇することから、薬品洗浄を1日複数回実施する必要があり、その間装置を停止しなければならない。また、想定以上の速度で閉塞が進行するなど、安定運転できないことが分かる。
比較例2
比較例2では、限外ろ過膜に保護剤を保持しない条件下で運転を実施し、限外ろ過膜の逆通水の頻度を下記とした以外は、実施例1に於ける条件と同様に実施した。
また、限外ろ過膜の逆通水は、通常運転の通水時間が6時間経過した後実施する条件で評価を実施し、薬品洗浄は、1日毎に実施した。
ここで比較例2に於いて実施した限外ろ過膜の差圧経時変化を図5に示す。
図5から、逆浸透膜3の濃縮排水中の溶存酸素濃度を0mg/L付近(最大0.62mg/L)に保持した条件下で運転した場合、限外ろ過膜差圧が24時間経過後、初期差圧に対して0.04MPa上昇し、薬品洗浄を行っても0.04MPaまでしか回復しなかった。その後続けて通水を実施すると、37時間後には、膜差圧が0.2MPaを超過した。
この限外ろ過膜は、初回の薬品洗浄後にも通水初期差圧に回復せず10日間の通水後薬品洗浄後には全く膜差圧が回復しない状況となり好ましくない現象となったとこを確認した。
実施例2では、逆通水の頻度を、6時間毎に1回とした以外は、実施例1と同様の条件で行い、評価を行った。
ここで実施例2に於いて実施した限外ろ過膜の差圧経時変化を図6に、逆浸透膜の濃縮排水中の溶存酸素の経時変化を図7に、逆浸透膜の差圧経時変化を図8に、逆浸透膜処理水の導電率の経時変化を図9に、供給原水、限外ろ過膜処理水及び逆浸透膜処理水の水質を表1に夫々示す。なお、水質の測定法は、厚生労働省告示261号に従った。
Figure 0005339054
図6、図7から、溶解性及び不溶性金属成分を含む井戸原水を直接限外ろ過処理しても溶存酸素を0mg/L付近(最大0.02mg/L)に保持し、限外ろ過膜の表面に保護剤を保持する条件下で運転を実施することで限外ろ過膜差圧を抑制し安定運転できることが分かる。
この連続運転でも限外ろ過膜の差圧は、薬品洗浄後に通水初期差圧に回復し、3か月間の通水期間、安定運転が可能であり、3ヶ月後の最後に薬品洗浄を実施した後の初期差圧は、0.02MPaと通水開始直後と同程度であることを確認した。
また、図8、図9、表1から後段の処理に用いられる逆浸透膜3の膜差圧及びRO処理水の水質が一定であること、及び溶解性の各種イオン及び有機物が除去され、水道法の基準を満たしていることから飲用水処理に適用することが可能であることが確認された。
更に、薬品洗浄後のすすぎ液を逆浸透膜に供給してもRO処理水の最大導電率は、70μS/cmであることを確認し、最低20μS/cm、平均32μS/cmの処理水が安定して得られることを確認した。
これらは、井戸原水を直接限外ろ過もしくは精密ろ過することが出来、安定して処理可能なシステムおよび装置を提供するもので、この結果により本件発明の効果を証明する事が出来た。
図1は、本発明の水処理方法の一実施形態を示すフロー図である。 図2は、実施例1における限外ろ過膜の差圧の経時変化を示すグラフである。 図3は、比較例1における限外ろ過膜の差圧の経時変化を示すグラフである。 図4は、比較例1における濃縮水中の溶存酸素の経時変化を示すグラフである。 図5は、比較例2における限外ろ過膜の差圧の経時変化を示すグラフである。 図6は、実施例2における限外ろ過膜の差圧の経時変化を示すグラフである。 図7は、実施例2における濃縮水中の溶存酸素の経時変化を示すグラフである。 図8は、実施例2における逆浸透膜の差圧の経時変化を示すグラフである。 図9は、実施例2における逆浸透膜の導電率の経時変化を示すグラフである。
符号の説明
1 井戸
2 膜分離装置(MS)
3 逆浸透膜(RO)
4 溶存酸素計(DO)
5 導電率計(CD)
L1 保護剤供給ライン
L2 原水供給ライン
L3 1次処理水送液ライン
L4 1次処理水供給ライン
L5 処理水ライン
L6 循環ライン
L7 濃縮排水ライン
L8 逆通水ライン
L9 排水ライン
L10 薬品供給ライン
L11 薬品回収ライン
L12 処理水循環ライン
P1 前処理ポンプ
P2 保護剤ポンプ
P3 井戸ポンプ
P4 第1の還元剤ポンプ
P5 昇圧ポンプ
P6 薬液供給ポンプ
P7 酸ポンプ
P8 第2の還元剤ポンプ
T1 保護剤タンク
T2 還元剤タンク
T3 中間タンク
T4 処理水タンク
T5 薬液タンク
T6 酸タンク

Claims (3)

  1. 金属イオンおよび不溶性物質を含む被処理水を、プレコート剤を保持した精密ろ過膜もしくは限外ろ過膜により膜ろ過処理して不溶性物質を除去した後、逆浸透膜を用いて脱塩処理する方法であって、
    前記被処理水としての井戸より汲み上げられる原水に重亜硫酸ナトリウムを添加し、該被処理水中の溶存酸素を実質的に除去し、金属イオンの酸化析出を抑制した状態で、前記膜ろ過処理及び脱塩処理をすることを特徴とする水処理方法。
  2. 前記重亜硫酸ナトリウムが、前記脱塩処理に伴う濃縮水および/または透過水に溶存酸素が実質的に含まれなくなるように添加されることを特徴とする請求項1に記載の水処理方法。
  3. 前記重亜硫酸ナトリウムが、前記被処理水中の溶存酸素および前記脱塩処理までに新たに溶解する酸素との反応に必要な理論量以上添加されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の水処理方法
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