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JP5338257B2 - 延性に優れた高降伏比超高張力鋼板およびその製造方法 - Google Patents

延性に優れた高降伏比超高張力鋼板およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、自動車、電気機器などの産業分野で使用される高張力鋼板、特に、引張強度TSが1180MPa以上の延性に優れた高降伏比超高張力鋼板およびその製造方法に関する。
近年、地球環境保全の観点から、二酸化炭素の排出量低減が喫緊の課題となり、自動車の燃費向上が従来に増して強く求められている。このため、鋼板などの車体材料の高強度化により構成部品の薄肉化を図り、車体を軽量化する対策が活発に検討されている。一般に、鋼板の高張力化はプレス加工性の低下を必然的に招くことから、高い強度と良好な加工性を併せ持つ鋼板が望まれている。このような要求に対して、これまでにフェライトとマルテンサイトの二相組織鋼や変態誘起塑性を利用した残留オーステナイト鋼など、種々の複合組織鋼板が開発され、効果を上げてきた。
しかし、昨今求められる超高張力鋼板においては、TSが1180MPa以上の水準に達しており、従来の複合組織鋼板では、プレス加工による部品の製造に必要な最低限の加工性水準でさえも確保できなくなっている。こうしたTSが1180MPa以上の超高張力鋼板に対する加工性向上の要求が高まる中で、これまで板金素材への適用が少なかった高Mnオーステナイト鋼の超高張力鋼板への適用が検討されている。
高Mnオーステナイト鋼は、室温下でもオーステナイトを主相とし、従来は非磁性鋼あるいは低温用鋼として利用されてきたが、オーステナイト相の双晶誘起塑性によって著しい加工硬化と極めて高い延性を発現することから、この効果を活用した新しいタイプの高延性高張力鋼板が提案されている。例えば、特許文献1には、C:0.15〜0.70wt%、Si:0.10〜3.00wt%、Mn:12〜30wt%、Ti:0.01〜0.10wt%を含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなると共に、CおよびMnの含有量に関し60×Cwt%+Mnwt%≧36wt%を満足し、かつ非金属介在物量に関し清浄度が0.03%以下である鋼塊または鋼片を、1050〜1250℃に加熱後、仕上温度を900℃にして熱間圧延を行う局部変形能に優れた高Mn非磁性鋼の製造方法が開示されている。また、特許文献2には、重量%で、C:1.0%以下、Si:0.01〜2.50%、Mn:10〜30%、sol.Al:0.001〜0.10%、P:0.05%以下、S:0.05%以下を含有し、残部が鉄および不可避不純物からなる鋼組成を有する鋼片を、1100℃以上に加熱後、粗圧延および仕上圧延の総圧下率90%以上で、かつ仕上温度800℃以上、最終板厚が1.1〜5.0mmとなるように連続熱間仕上圧延を終了し、次いで10〜100℃/sの冷却速度にて650℃以下まで冷却後、巻取る加工性に優れた自動車部品用高強度熱延鋼板の製造方法が開示されている。さらに、特許文献3には、質量%で、C:1.00%以下、Mn:7.00〜30.00%、Al:1.00〜10.00%、Si:2.50%超え8.00%以下、Al+Si:3.50%超え12.00%以下、B:0.00%超え0.01%未満、および任意成分として、Ni:8.00%未満、Cu:3.00%未満、N:0.60%未満、Nb:0.30%未満、Ti:0.30%未満、V:0.30%未満、P:0.01%未満を有する冷間成形性に優れた高強度軽量鋼帯または鋼板が開示されている。さらにまた、特許文献4には、重量%で、C:0.5〜0.7%、Mn:17〜24%、Si:3%以下、Al:0.050%以下、S:0.030%以下、P:0.08%以下、N:0.1%以下、そして任意の選択として、Cr:1%以下、Mo:0.40%以下、Ni:1%以下、Cu:5%以下、Ti:0.50%以下、Nb:0.50%以下、V:0.50%以下といった元素のうちの一つまたは複数を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成を有し、再結晶率が75%を超え、炭化物の面積率が1.5%未満で、平均オーステナイト粒径が18μm未満であるTSが900MPa超え、TS×El(El:破断伸び)が45000MPa・%超えのFe-C-Mn系オーステナイト熱延鋼板やTSが950MPa超え、TS×Elが45000MPa・%超えのFe-C-Mn系オーステナイト冷延鋼板が開示されている。
特開平5-171273号公報 特開平4-259325号公報 特表2004-521192号公報 特表2006-528278号公報
しかしながら、特許文献1〜4に記載された高強度鋼板では、1180MPa以上のTSが得られない、あるいは1180MPa以上のTSを安定して得ることが困難である。また、自動車の安全性の観点から、衝突時に塑性変形し難くするため高い降伏強度YS、すなわち高い降伏比YR(=YS/TS)も求められているが、特許文献1〜4に記載された高強度鋼板では、1180MPa以上のTSを有する鋼板で0.7以上の高いYRを得ることが困難である。
本発明は、安定して1180MPa以上のTSが得られ、0.7以上の高いYRを有し、かつ延性に優れた高降伏比超高張力鋼板およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、延性に優れた高Mnオーステナイト鋼を用い、TSが1180MPa以上で、0.7以上の高いYRが得られる条件について鋭意検討を重ねたところ、以下のことを見出した。
i)組織全体に占めるオーステナイト相の面積率を95%以上とし、かつ組織全体に占めるアスペクト比が3以上の未再結晶オーステナイト粒の面積率を70%以上、組織全体に占める再結晶オーステナイト粒の面積率を5%以上とすることにより、1180MPa以上のTSと0.7以上の高いYRと優れた延性が安定して得られる。
ii)こうしたミクロ組織を得るには、0.1%以上のMo添加が効果的である。
本発明は、このような知見に基づいてなされたものであり、質量%で、C:0.5〜1.5%、Si:0.1%以下、Mn:10〜25%、P:0.1%以下、S:0.05%以下、Al:0.1%以下、Mo:0.1〜5.0%、N:0.01%以下を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有し、組織全体に占めるオーステナイト相の面積率が95%以上であり、かつ組織全体に占めるアスペクト比が3以上の未再結晶オーステナイト粒の面積率が70%以上、組織全体に占める再結晶オーステナイト粒の面積率が5%以上であるミクロ組織を有することを特徴とする延性に優れた高降伏比超高張力鋼板を提供する。
本発明の超高張力鋼板では、下記の式(1)が満足されることが好ましい。
32≦20×[C]+[Mn]≦36・・・(1)
ただし、[C]、[Mn]はそれぞれC、Mnの含有量(質量%)を表す。
また、さらに、質量%で、Ti:0.05〜0.5%およびNb:0.05〜0.5%のうちから選ばれた少なくとも1種が含有されることが好ましい。
本発明の超高張力鋼板は、上記の成分組成を有する鋼スラブを、1100〜1300℃の加熱温度に再加熱後、800℃以上の仕上温度で熱間圧延し、20℃/s以上の冷却速度で冷却し、600℃以下の巻取温度で巻取って熱延鋼板とし、該熱延鋼板を、酸洗後、30%以上の圧下率で冷間圧延し、550〜750℃の焼鈍温度で15〜600s保持して焼鈍し、10℃/s以上の冷却速度で少なくとも450℃まで冷却する方法により製造できる。
本発明により、安定して1180MPa以上のTSが得られ、0.7以上の高いYRを有し、かつ延性に優れた高降伏比超高張力鋼板を製造できるようになった。特に、本発明の超高張力鋼板は、TS×El≧30GPa・%の優れた強度-延性バランスを有しているので、自動車車体の軽量化に極めて好適であるとともに、各種電気機器の部品などにも適用できる。
以下に、本発明である延性に優れた高降伏比超高張力鋼板およびその製造方法について詳細に説明する。なお、成分の量を表す「%」は、特に断らない限り「質量%」を意味する。
1)成分組成
C:0.5〜1.5%
Cは、オーステナイト相の安定化に必須の元素であり、高強度化にも大きな役割を果たす。しかし、C量が0.5%未満では、オーステナイト相の安定化が不十分で、1180MPa以上のTSや優れた延性が得られない。一方、C量が1.5%を超えると、炭化物の析出によって延性が低下する。そのため、C量は0.5〜1.5%、好ましくは0.5〜1.0%とする。
Si:0.1%以下
Siは、鋼の脱酸のために添加できる元素であり、Si量は0.01%以上とするのが好ましい。しかし、Si量が0.1%を超えると、介在物の増加によって内部欠陥および表面欠陥が増加する。そのため、Si量は0.1%以下とする。
Mn:10〜25%
Mnは、Cと同様にオーステナイト相の安定化に必須の元素である。しかし、Mn量が10%未満では、オーステナイト相の安定化が不十分で、1180MPa以上のTSや優れた延性が得られない。一方、Mn量が25%を超えると、熱間加工性が低下して鋼板の製造性の低下を招く。そのため、Mn量は10〜25%、好ましくは15〜25%とする。
P:0.1%以下
P量が0.1%を超えると、靱性が低下する。そのため、P量は0.1%以下、好ましくは0.05%以下とする。
S:0.05%以下
S量が0.05%を超えると、熱間加工性が低下する。そのため、S量は0.05%以下、好ましくは0.02%以下とする。
Al:0.1%以下
Alは、鋼の脱酸のために添加できる元素であり、Al量は0.01%以上とするのが好ましい。しかし、Al量が0.1%を超えると、介在物の増加によって内部欠陥および表面欠陥が増加する。そのため、Al量は0.1%以下とする。
Mo:0.1〜5.0%
Moは、本発明において最も重要な元素である。Moの添加により、オーステナイト相の再結晶が遅延し、未再結晶オーステナイト粒を主体とするミクロ組織が得られ、高強度および高降伏比が達成される。このような効果を得るためには、Mo量は0.1%以上とする必要がある。一方、Mo量が5.0%を超えると、合金コストの面から経済的に不利となる。そのため、Mo量は0.1〜5.0%、好ましくは0.5〜3.0%、より好ましくは1.0〜3.0%とする。
N:0.01%以下
N量が0.01%を超えると、延性が低下する。そのため、N量は0.01%以下、好ましくは0.005%以下とする。
残部はFeおよび不可避的不純物である。
後述するように、本発明の成分組成では、冷間圧延時にマルテンサイト相が若干量生成する場合があるが、高強度と優れた延性を安定して得るには、こうしたマルテンサイト相の生成を極力抑制することが好ましい。そのために、上記の式(1)を満足するようにCとMn量を制御することが好ましい。
また、以下の理由で、さらに、Ti:0.05〜0.5%およびNb:0.05〜0.5%のうちから選ばれた少なくとも1種が含有されることが好ましい。
Ti、Nb:0.05〜0.5%
TiとNbは、Moと同様に再結晶を抑制する効果が大きく、高強度および高降伏比の達成に有効である。こうした効果を得るには、それぞれの元素の含有量を0.05%以上とすることが好ましい。しかし、それぞれの元素の含有量が0.5%を超えると、延性が大きく低下する。そのため、TiやNb量はそれぞれ0.05〜0.5%とする。
2)ミクロ組織
上述したように、本発明の超高張力鋼板は、組織全体に占める面積率で95%以上のオーステナイト相からなり、オーステナイト相における変形双晶の生成に起因した加工硬化により1180MPa以上のTSが達成される。特に、組織全体に占めるアスペクト比が3以上、好ましくは5以上の未再結晶オーステナイト粒の面積率を70%以上、組織全体に占める再結晶オーステナイト粒の面積率を5%以上とすることにより、1180MPa以上のTSと同時に0.7以上の高いYRと優れた延性が得られる。すなわち、上記したように、本発明の鋼板では、オーステナイト相の双晶誘起塑性に起因する著しい加工硬化により高強度を達成するものであり、TS≧1180MPaとするため、オーステナイト相を組織全体に占める面積率で95%以上とする必要がある。また、本発明においては、YR≧0.7を達成するため、加工硬化組織(未再結晶組織)を活用し、オーステナイト粒の多くをアスペクト比が3以上になるまで加工して変形させておく必要がある。より好ましいアスペクト比は、5以上である。ただし、単に加工硬化させたままでは、鋼板の延性低下が許容できなくなるため、オーステナイト相は面積率で5%以上の再結晶オーステナイト粒が存在する程度に部分再結晶させた組織である必要がある。部分再結晶時には、加工されたオーステナイト粒が回復するとともに、局所的に再結晶が生じ、微細な再結晶粒が形成され、鋼板の延性が復活する。ただし、未再結晶オーステナイト(回復オーステナイト)粒の再結晶が進みすぎると、降伏比が低下するため、アスペクト比が3以上である未再結晶オーステナイト粒は面積率で70%以上とする必要がある。なお、本発明において、再結晶オーステナイト粒は、その大部分がアスペクト比が2未満で、粒径が3μm以下の結晶粒であるが、こうした再結晶粒の存在により、アスペクト比が3以上の未再結晶オーステナイト粒は回復状態にあると推察できる。なお、本発明では、熱間圧延後の冷却速度や焼鈍後の冷却速度により炭化物が生成したり、成分組成によっては冷間圧延時に加工誘起変態によりマルテンサイト相が生成したりする場合があるが、それらの面積率が合計で高々5%程度であれば、本発明の目的を損なうことはない。しかし、高強度と優れた延性を安定して得るには、こうした炭化物やマルテンサイト相の生成を極力抑制することが好ましい。
ここで、組織全体に占めるオーステナイト相の面積率は、鋼板の圧延方向平行断面の板厚1/4位置の組織を1000倍ないし5000倍の倍率で数視野SEM観察し、EBSD解析による相同定を併用して画像解析により求めた。また、組織全体に占める未再結晶オーステナイト粒の面積率やそのアスペクト比および組織全体に占める再結晶オーステナイト粒の面積率やその粒径も、同様なSEM観察とEBSD解析を行い、画像解析あるいは実測により求めた。なお、アスペクト比とは、板厚方向の径に対する圧延方向径の比のことである。また、再結晶粒であるか未再結晶粒であるかは、結晶粒形状により判断し、あるいはさらにEBSD解析による粒内の歪量推定を併用して確認した。
3)製造条件
以下に、本発明の超高張力鋼板の好ましい製造条件を示す。なお、本発明の超高張力鋼板の製造方法は下記に限定されるものではない。
鋼スラブの加熱温度:1100〜1300℃
鋼スラブの加熱温度が1300℃を超えると、熱間加工性が低下する上、加熱に要するエネルギーが増大する。一方、加熱温度が1100℃未満になると、熱間圧延時の負荷の増大を招く。そのため、鋼スラブの加熱温度は1100〜1300℃、好ましくは1150〜1250℃とする。なお、鋼スラブの再加熱においては、常温まで冷却した鋼スラブを再加熱してもよいし、鋳造後の冷却途中の温度が高い鋼スラブを再加熱してもよい。
熱間圧延時の仕上温度:800℃以上
熱間圧延時の仕上温度が800℃未満では、再結晶が十分に進展せず、未再結晶粒の残った熱延鋼板となり、その後の冷間圧延での圧延負荷の増大を招く。そのため、熱間圧延時の仕上温度は800℃以上、好ましくは900℃以上とする。また、仕上温度が1000℃を超えると、結晶粒が過度に粗大化しやすくなり、強度や延性が低下する場合があるので、仕上温度は1000℃以下とすることが望ましい。なお、仕上温度を確保するために、エッヂヒーターあるいはバーヒーターなどのシートバー加熱装置を利用することもできる。
熱間圧延後の冷却速度:20℃/s以上
熱間圧延後の冷却速度が20℃/s未満だと、冷却中に鉄炭化物が多量に析出して延性が低下する。そのため、熱間圧延後巻取られるまでの冷却速度は20℃/s以上、好ましくは30℃/s以上とする。
巻取温度:600℃以下
巻取温度が600℃を超えると、巻取り後の徐冷過程で鉄炭化物が多量に生成し、延性の低下を招く。そのため、巻取温度は600℃以下、好ましくは550℃以下とする。
冷間圧延の圧下率:30%以上
冷間圧延によりオーステナイト相の加工硬化を図り、次の焼鈍で未再結晶オーステナイト粒が主体のミクロ組織とし、高強度と高降伏比を達成する。そのためには、冷間圧延の圧下率は30%以上、より望ましくは50%以上とする必要がある。
焼鈍温度および保持時間: 550〜750℃で15〜600s
焼鈍後に、組織全体に占めるアスペクト比が3以上の未再結晶オーステナイト粒の面積率が70%以上で、組織全体に占める再結晶オーステナイト粒の面積率が5%以上であるミクロ組織とするには、冷間圧延後の鋼板を550〜750℃の焼鈍温度で15〜600s保持して焼鈍する必要がある。焼鈍温度が550℃未満や保持時間が15s未満の場合には、回復の進行が遅滞して十分な延性が得られない。一方、焼鈍温度が750℃を超えると、回復と再結晶の進行が過度に起こり、高強度と高降伏比が達成されない。また、焼鈍時間が600sを超えると、鉄炭化物の多量の析出により延性の低下を招くことがある。そのため、焼鈍温度は550〜750℃、より好ましくは600〜700℃、保持時間は15〜600s、より好ましくは30〜300sとする。
焼鈍後の冷却条件:450℃まで10℃/s以上の冷却速度で冷却
焼鈍後の冷却速度が10℃/s未満では、冷却中の450℃以上の高温域で鉄炭化物が多量に析出して延性が低下する。そのため、焼鈍温度から少なくとも450℃まで10℃/s以上の冷却速度で冷却する必要がある。
本発明の鋼を溶製するには、転炉、電気炉どちらも使用可能である。こうして溶製された鋼は、造塊-分塊圧延または連続鋳造によりスラブとされる。必要に応じて、各種予備処理や二次精錬、スラブの表面手入などを実施することが好ましい。また、焼鈍については、連続焼鈍設備で実施することが、生産性の観点から好ましい。焼鈍後の鋼板には、各種めっきを施しても、本発明の効果が損なわれることはない。焼鈍後あるいはめっき処理後の鋼板には、形状矯正や表面粗度の調整のための調質圧延を施すこともできる。さらに、本発明の鋼板には、塗装、被覆などの各種表面処理を施すこともできる。
表1に示す成分組成の鋼No.A〜Jのスラブを、表2に示す熱延条件にて熱間圧延して板厚3mmの熱延鋼板とし、酸洗後、表2に示す圧下率で冷間圧延して冷延鋼板とし、表2に示す焼鈍条件にて焼鈍を行い、鋼板No.1〜19を作製した。そして、上記の方法により、ミクロ組織を調査し、組織全体に占めるオーステナイト相の面積率、組織全体に占めるアスペクト比3以上の未再結晶オーステナイト粒の面積率および再結晶オーステナイト粒の面積率を求めた。また、圧延方向に沿ってJIS Z 2201に規定された13B号試験片を採取し、JIS Z 2241に規定された方法に準拠して、引張試験を実施し、YS、TS、YR、El、TS×Elを求めた。なお、TS×El≧30GPa・%の場合に、延性に優れた超高張力鋼板と判定した。
結果を表3に示す。本発明例の鋼板はいずれも、オーステナイト相の面積率が95%以上、アスペクト比が3以上の未再結晶オーステナイト粒の面積率が70%以上、再結晶オーステナイト粒の面積率が5%以上であるミクロ組織を有しており、TSが1180MPa以上、降伏比が0.7以上、TS×El≧30GPa・%である延性に優れた高降伏比超高張力鋼板であることがわかる。
Figure 0005338257
Figure 0005338257
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Claims (4)

  1. 質量%で、C:0.5〜1.5%、Si:0.1%以下、Mn:10〜25%、P:0.1%以下、S:0.05%以下、Al:0.1%以下、Mo:0.1〜5.0%、N:0.01%以下を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有し、組織全体に占めるオーステナイト相の面積率が95%以上であり、かつ組織全体に占めるアスペクト比が3以上の未再結晶オーステナイト粒の面積率が70%以上、組織全体に占める再結晶オーステナイト粒の面積率が5%以上であるミクロ組織を有することを特徴とする延性に優れた高降伏比超高張力鋼板。
  2. 下記の式(1)を満足することを特徴とする請求項1に記載の延性に優れた高降伏比超高張力鋼板;
    32≦20×[C]+[Mn]≦36・・・(1)
    ただし、[C]、[Mn]はそれぞれC、Mnの含有量(質量%)を表す。
  3. さらに、質量%で、Ti:0.05〜0.5%およびNb:0.05〜0.5%のうちから選ばれた少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の延性に優れた高降伏比超高張力鋼板。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の成分組成を有する鋼スラブを、1100〜1300℃の加熱温度に再加熱後、800℃以上の仕上温度で熱間圧延し、20℃/s以上の冷却速度で冷却し、600℃以下の巻取温度で巻取って熱延鋼板とし、該熱延鋼板を、酸洗後、30%以上の圧下率で冷間圧延し、550〜750℃の焼鈍温度で15〜600s保持して焼鈍し、10℃/s以上の冷却速度で少なくとも450℃まで冷却することを特徴とする、組織全体に占めるオーステナイト相の面積率が95%以上であり、かつ組織全体に占めるアスペクト比が3以上の未再結晶オーステナイト粒の面積率が70%以上、組織全体に占める再結晶オーステナイト粒の面積率が5%以上であるミクロ組織を有する延性に優れた高降伏比超高張力鋼板の製造方法。
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