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JP5321104B2 - 空気入りタイヤ - Google Patents

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Description

本発明は、ランフラット走行が可能な空気入りタイヤに関するものである。
空気入りタイヤは、リムに組み付けられ、内部に空気を充填した状態で車両に装着され、内部の空気圧によって車両走行時の荷重を受けるが、パンクなどにより空気入りタイヤの内部の空気が漏出した場合、荷重を受けることが困難になる。つまり、空気入りタイヤの内部の空気が漏出した場合、空気圧によって支持していた荷重をサイドウォール部で支持することになるため、サイドウォール部が大きく変形し、走行が困難になる。
このため、パンク等によって空気が漏出した状態における走行、いわゆるランフラット走行が可能な空気入りタイヤとして、サイドウォールの内側に補強ゴムを配設し、サイドウォールの曲げ剛性を向上させたものが知られている。すなわち、空気入りタイヤに充填された空気が漏出し、大きな荷重がサイドウォールに作用する場合でも、サイドウォールの変形を抑制することで走行を行なうことができる。
ところが、上述のランフラット走行可能な空気入りタイヤでは、ランフラット走行時に、空気入りタイヤの内部の空気圧の低下により、トレッドの地面に接触するタイヤ幅方向中央がタイヤ径方向内側に座屈することで、サイドウォールがタイヤ幅方向内側に変形し、ランフラット走行時の耐久性が低下するおそれがある。
そこで、従来では、ランフラット走行時の耐久性を向上するため、トレッドと、2枚のサイドウォールおよび2つの非伸長性環状ビードを備えたカーカスと、ラジアルプライ構造と、1つまたは2つ以上のサイドウォール補強インサートと、トレッドとラジアルプライ構造との間に位置するベルト構造と、ベルト構造の領域内に位置し、周方向配設された少なくとも1つの圧縮応力支持ベルト補強層と、ラジアルプライ構造の領域内に位置し、周方向に配置された少なくとも1つの引張応力支持ファブリック補強層と、を備え、少なくとも1つの圧縮応力支持ベルト補強層は、タイヤ赤道面に対して20[度]〜85[度]の間に位置合わせされている複数の金属製補強コードを有し、少なくとも1つの引張応力支持ファブリック補強層は、タイヤ赤道面に対して45[度]〜85[度]の間に位置合わせされているアラミド、レーヨン、およびポリエステルを含むグループから選択された高係数材料からなる複数の補強コードを有した空気入りタイヤが知られている(例えば、特許文献1参照)。
この特許文献1の空気入りタイヤは、サイドウォール補強インサートにより、サイドウォールの曲げ剛性を向上させると共に、圧縮応力支持ベルト補強層および引張応力支持ファブリック補強層により、トレッドをタイヤ幅方向に横切って剛性を高め、ランフラット走行時に地面に接触するトレッドの座屈に耐えることで、ランフラット走行時の耐久性の向上を図っている。
特表2002−520207号公報
しかしながら、特許文献1の空気入りタイヤでは、サイドウォール補強インサートにより重量が増した上、圧縮応力支持ベルト補強層および引張応力支持ファブリック補強層によりさらに重量が増してしまい、この空気入りタイヤを装着した車両の燃費を低下させる要因となる。特に、圧縮応力支持ベルト補強層は、金属製補強コードを有するため、空気入りタイヤの重量増加に起因している。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、重量増加を抑えつつ、ランフラット走行時の耐久性を向上することのできる空気入りタイヤを提供することを目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の空気入りタイヤは、タイヤ幅方向両側のサイドウォール部に配置され子午断面が略三日月形状の補強ゴム層と、タイヤ幅方向両側のビード部に配置された各ビードコア間に架け渡される少なくとも1層のカーカス層と、前記カーカス層のタイヤ径方向外側に配置される2層のベルト層と、前記ベルト層のタイヤ径方向外側に配置される2層以上のベルトカバー層とを備えるランフラット走行可能な空気入りタイヤにおいて、前記ベルト層は、タイヤ周方向に対して10[度]以上35[度]以下の範囲で傾くコードを有してなり、前記ベルトカバー層は、タイヤ周方向に対して20[度]以上80[度]以下の範囲で傾く有機繊維コードを有して、各前記ベルトカバー層の各前記有機繊維コードが、タイヤ赤道面を基にタイヤ幅方向で対称となるように配置されていると共に、タイヤ周方向に対する前記有機繊維コードの傾きを、各前記ベルトカバー層のタイヤ径方向への積層順で逆向きに、かつ同じ角度で傾いて配置されている、ことを特徴とする。
この空気入りタイヤによれば、2層のベルト層および少なくとも1層のベルトカバー層は、トレッド部にタイヤ径方向内側に向く荷重が作用した場合でも、タイヤ周方向に対して角度が規定されたコードおよび有機繊維コードの張力により、トレッド部のタイヤ幅方向両側(各補強ゴム層間)をタイヤ幅方向に橋渡しする強度が得られるので、トレッド部のタイヤ幅方向中央がタイヤ径方向内側に座屈する事態を抑える。しかも、この空気入りタイヤによれば、ベルトカバー層に有機繊維コードを適用している。このため、トレッド部のタイヤ径方向内側への座屈を抑える構成を軽量とすることが可能になる。この結果、補強ゴム層を備えてランフラット走行可能な空気入りタイヤにおいて、過度な重量増加を抑えつつランフラット走行時の耐久性を向上できる。しかも、この空気入りタイヤによれば、トレッド部のタイヤ幅方向両側(各補強ゴム層間)をタイヤ幅方向に橋渡しする強度と、トレッド部がタイヤ径方向内側に座屈する際の圧縮力に耐える張力とを十分に得られる。
また、本発明の空気入りタイヤは、互いに積層された前記ベルト層と前記ベルトカバー層とは、タイヤ周方向に対する前記コードの傾きとタイヤ周方向に対する前記有機繊維コードの傾きとを逆向きに配置されていることを特徴とする。
この空気入りタイヤによれば、トレッド部のタイヤ幅方向両側(各補強ゴム層間)をタイヤ幅方向に橋渡しする強度と、トレッド部がタイヤ径方向内側に座屈する際の圧縮力に耐える張力とを十分に得られる。
また、本発明の空気入りタイヤは、前記ベルトカバー層は、タイヤ幅方向最大寸法を、前記ベルト層のタイヤ幅方向最大寸法に対して70[%]以上110[%]以下の範囲に設定されていることを特徴とする。
この空気入りタイヤによれば、トレッド部のタイヤ幅方向両側(各補強ゴム層間)をタイヤ幅方向に橋渡しする強度と、内部に所定の空気圧で空気が充填された通常の使用における高速走行時の耐久性とを向上できる。
また、本発明の空気入りタイヤは、前記ベルトカバー層は、前記有機繊維コードが、ナイロン、ポリエステル、レーヨン、ポリエチレンナフタレート、ポリケトン、アラミド繊維のうちの1種類、または2種類以上の複合繊維からなることを特徴とする。
この空気入りタイヤによれば、低重量でありながら、トレッド部がタイヤ径方向内側に座屈する際の圧縮力に耐える張力を得られる。
また、本発明の空気入りタイヤは、少なくとも1層の前記カーカス層は、各前記ビードコアで折り返された端部が、前記ベルト層のタイヤ径方向内側に配置されていることを特徴とする。
この空気入りタイヤによれば、ランフラット走行可能な空気入りタイヤの剛性を向上できる。
本発明にかかる空気入りタイヤは、重量増加を抑えつつ、ランフラット走行時の耐久性を向上できる。
図1は、本発明の実施の形態にかかる空気入りタイヤの子午断面図である。 図2は、図1に示す空気入りタイヤのベルト層およびベルトカバー層の平面図である。 図3−1は、本発明の実施例にかかる空気入りタイヤの性能試験の結果を示す図表である。 図3−2は、本発明の実施例にかかる空気入りタイヤの性能試験の結果を示す図表である。
以下に、本発明にかかる空気入りタイヤの実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、この実施の形態の構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的同一のものが含まれる。また、この実施の形態に記載された複数の変形例は、当業者自明の範囲内にて任意に組み合わせが可能である。
以下の説明において、タイヤ径方向とは、空気入りタイヤ1の回転軸(図示省略)と直交する方向をいい、タイヤ径方向内側とはタイヤ径方向において回転軸に向かう側、タイヤ径方向外側とは、タイヤ径方向において回転軸から離れる側をいう。また、タイヤ周方向とは、回転軸を中心軸とする周方向である。また、タイヤ幅方向とは、回転軸と平行な方向をいい、タイヤ幅方向内側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面Cに向かう側、タイヤ幅方向外側とは、タイヤ幅方向においてタイヤ赤道面Cから離れる側をいう。また、タイヤ赤道面Cとは、空気入りタイヤ1の回転軸に直交すると共に、空気入りタイヤ1のタイヤ幅の中心を通る平面である。タイヤ幅は、タイヤ幅方向の外側に位置する部分同士のタイヤ幅方向における幅、つまり、タイヤ幅方向においてタイヤ赤道面Cから最も離れている部分間の距離である。
本実施の形態の空気入りタイヤ1は、一般的な乗用車に装着されるタイヤとして好適である。この空気入りタイヤ1は、図1に示すように、トレッド部2を有している。トレッド部2は、ゴム材からなり、空気入りタイヤ1のタイヤ径方向の最も外側で露出し、その表面が空気入りタイヤ1の輪郭となる。このトレッド部2の表面は、空気入りタイヤ1を装着する車両(図示省略)が走行した際に路面と接触する面であるトレッド面21として形成されている。
トレッド面21には、タイヤ周方向に沿って延び、タイヤ赤道面Cと平行な主溝22が複数設けられている。そして、トレッド面21には、これら複数の主溝22により、タイヤ周方向に沿って延び、タイヤ赤道面Cと平行なリブ状の陸部23が複数形成されている。なお、図には明示しないが、トレッド面21には、主溝22に連通しつつタイヤ幅方向に沿って延びる副溝が設けられ、この副溝により陸部23がブロック状に形成されていてもよい。
トレッド部2のタイヤ幅方向両側には、ショルダー部3、各ショルダー部3から順次連続するサイドウォール部4およびビード部5が設けられている。また、この空気入りタイヤ1は、その内部に、カーカス層6、ベルト層7およびベルトカバー層8を含み構成されている。
ショルダー部3は、トレッド部2のタイヤ幅方向両外側の部位である。サイドウォール部4は、空気入りタイヤ1におけるタイヤ幅方向外側に露出したものである。ビード部5は、ビードコア51およびビードフィラー52を有する。ビードコア51は、スチールワイヤであるビードワイヤをリング状に巻くことにより形成され、一対を一組として構成されている。ビードフィラー52は、ビードコア51を補強するためのゴム材であり、カーカス層6の両側端部がビードコア51の位置でタイヤ幅方向外側に折り返されることにより形成された空間であってビードコア51のタイヤ径方向外側に配置される。
カーカス層6は、各タイヤ幅方向端部が、一対のビードコア51でタイヤ幅方向内側からタイヤ幅方向外側に折り返され、かつタイヤ周方向にトロイド状に掛け回されてタイヤの骨格を構成するものである。このカーカス層6は、有機繊維(ナイロン、ポリエステル、レーヨン、ポリエチレンナフタレート、ポリケトン、アラミド繊維など)やスチールなどからなるカーカスコード(図示省略)が、ゴム材で被覆されたものである。カーカスコードは、タイヤ周方向、つまりタイヤ赤道面Cに直交してタイヤ子午方向(ラジアル方向)に沿いつつタイヤ周方向に複数並設されている。なお、カーカスコードの角度は、タイヤ周方向に対する角度が実質的に90[度]であって、タイヤ周方向に対する90度を基準に−5[度]から+5[度]の範囲の角度を含む。
カーカス層6は、少なくとも1層設けられており、図1では2層のカーカス層61,62が設けられた形態を示している。この図1で示す2層のカーカス層61,62においては、タイヤ径方向内側およびタイヤ幅方向内側に配置されたカーカス層61が、ビードコア51の位置で折り返されることによりビードフィラー52を配置する空間をなしている。
なお、図には明示しないが、2層のカーカス層61,62において、タイヤ径方向外側およびタイヤ幅方向外側に配置されたカーカス層62が、ビードコア51の位置で折り返されることによりビードフィラー52を配置する空間をなしていてもよい。また、図には明示しないが、2層のカーカス層61,62は、双方がビードコア51の位置で折り返されることによりビードフィラー52を配置する空間をなしていてもよい。
このカーカス層6のタイヤ径方向内側およびタイヤ幅方向内側には、空気入りタイヤ1における内壁面沿ってインナーライナ9が設けられている。インナーライナ9は、不通気性のもので、その両側端部が各ビード部5の位置でタイヤ幅方向外側に折り返され、かつタイヤ周方向にトロイド状に掛け回されている。そして、サイドウォール部4の内部であって、カーカス層61とインナーライナ9とで画成された領域には、補強ゴム層10が設けられている。
補強ゴム層10は、サイドウォール部4を形成するゴム材料よりも強度が高いゴム材料により形成されている。この補強ゴム層10は、タイヤ子午断面においてサイドウォール部4に沿ってタイヤ幅方向外側に凸となるように湾曲しており、タイヤ径方向外側およびタイヤ径方向内側に向かうに従って、タイヤ幅方向寸法が薄くなっている。このため、補強ゴム層10は、タイヤ子午断面における形状が、略三日月形状に形成されており、タイヤ径方向外側の端部がトレッド部2付近に位置し、タイヤ径方向内側の端部がビード部5近傍に位置している。
ベルト層7は、2つのベルト層71,72を積層した多層構造をなし、カーカス層6の外周であるタイヤ径方向外側に配置され、トレッド部2においてカーカス層6をタイヤ周方向に覆うものである。この2つのベルト層71,72において、タイヤ径方向内側に配置されたベルト層71、およびタイヤ径方向外側に配置されたベルト層72は、有機繊維(ナイロン、ポリエステル、レーヨン、ポリエチレンナフタレート、ポリケトン、アラミド繊維など)やスチールなどからなるコード71a,72a(図2参照)が、ゴム材で被覆されたもので、該コード71a,72aがタイヤ周方向、つまりタイヤ赤道面Cに対して、所定の角度をつけて配置されている。本実施の形態において、コード71a,72aのタイヤ周方向に対する角度は、10[度]以上35[度]以下の範囲に設定されている。
ベルトカバー層8は、少なくとも1層設けられており、ベルト層7の外周であるタイヤ径方向外側に配置され、トレッド部2においてベルト層7をタイヤ周方向に覆うものである。図1および図2では3層のベルトカバー層81,82,83が設けられた形態を示している。この3層のベルトカバー層81,82,83において、タイヤ径方向最内側に配置されたベルトカバー層81、タイヤ径方向中央に配置されたベルトカバー層82、およびタイヤ径方向最外側に配置されたベルトカバー層83は、ナイロン、ポリエステル、レーヨン、ポリエチレンナフタレート、ポリケトン、アラミド繊維のうちの1種類、または2種類以上の複合繊維からなる有機繊維コード81a,82a,83a(図2参照)が、ゴム材で被覆されたもので、該有機繊維コード81a,82a,83aがタイヤ周方向、つまりタイヤ赤道面Cに対して、所定の角度をつけて配置されている。本実施の形態において、有機繊維コード81a,82a,83aのタイヤ周方向に対する角度は、20[度]以上80[度]以下の範囲に設定され、好ましくは30[度]以上60[度]以下の範囲に設定されている。
なお、ベルトカバー層8(81,82,83)は、自身のタイヤ幅方向寸法とした1枚のベルトをタイヤ周方向に掛け回した構成、または自身のタイヤ幅方向寸法よりも幅狭(例えば10mm幅)のストリップ材をタイヤ周方向に斜めに掛け回した構成のいずれであってもよい。
かかる構成の空気入りタイヤ1は、通常、ビード部5をリムに組み付けた内部に所定の空気圧で空気が充填された状態で車両(図示省略)に装着される。そして、空気入りタイヤ1を装着した車両が走行すると、空気入りタイヤ1のトレッド面21が路面に接触しながら当該空気入りタイヤ1は回転する。車両走行時には、このようにトレッド面21が路面に接触するため、トレッド面21には車両の重量などによる荷重が作用する。
トレッド面21に荷重が作用した場合、荷重の作用の仕方や各部の硬度などに応じて空気入りタイヤ1は弾性変形をするが、空気入りタイヤ1の内部に充填された空気が、空気入りタイヤ1に対して、内部から外側方向に押し広げようとする力を与えている。これにより、空気入りタイヤ1は、トレッド面21に荷重が作用しても、内部に充填された空気による付勢力で過度の変形が抑制される。このため、空気入りタイヤ1は、荷重を受けながら回転することができ、車両の走行を可能にする。
また、空気入りタイヤ1は、内部に充填された空気の空気圧により空気入りタイヤ1は変形し難くなるが、車両の走行時に、例えばトレッド面21に異物が刺さってパンクするなどにより、空気入りタイヤ1の内部の空気が漏出する場合がある。空気入りタイヤ1の内部の空気が漏出すると、空気入りタイヤ1の内部から外側方向への空気による付勢力が低減することになる。
内部の空気が漏出した状態の空気入りタイヤ1では、トレッド面21に荷重が作用した場合、サイドウォール部4に対してタイヤ径方向の荷重が作用する。これにより、サイドウォール部4は、タイヤ径方向に弾性変形し易くなるが、このサイドウォール部4には補強ゴム層10が設けられている。上述したように、補強ゴム層10は、サイドウォール部4を形成するゴム材料よりも強度が高いゴム材料により形成されている。このため、補強ゴム層10は、サイドウォール部4に対してタイヤ径方向の荷重が作用した場合でも、このサイドウォール部4のタイヤ径方向の変形を抑える。この結果、空気入りタイヤ1は、補強ゴム層10により、サイドウォール部4のタイヤ径方向の変形を抑えることで、車両を走行させることができ、空気入りタイヤ1の内部の空気が漏出した状態における走行、いわゆるランフラット走行を可能にする。
また、ランフラット走行時では、空気入りタイヤ1の内部の空気圧が低下しているため、トレッド面21に作用した荷重により、地面に接触するトレッド部2のタイヤ幅方向中央がタイヤ径方向内側に座屈し易くなるが、このトレッド部2には2層のベルト層7(71,72)および少なくとも1層のベルトカバー層8(81,82,83)が設けられている。上述したように、2層のベルト層7(71,72)は、タイヤ周方向に対して10[度]以上35[度]以下の範囲で傾くコード71a,72aを有してなり、かつベルトカバー層8(81,82,83)は、タイヤ周方向に対して20[度]以上80[度]以下の範囲で傾く有機繊維コード81a,82a,83aを有してなる。このため、2層のベルト層7(71,72)および少なくとも1層のベルトカバー層8(81,82,83)は、トレッド部2にタイヤ径方向内側に向く荷重が作用した場合でも、タイヤ周方向に対して角度が規定されたコード71a,72aおよび有機繊維コード81a,82a,83aの張力により、トレッド部2のタイヤ幅方向両側(各補強ゴム層10間)をタイヤ幅方向に橋渡しする強度が得られるので、トレッド部2のタイヤ幅方向中央がタイヤ径方向内側に座屈する事態を抑える。この結果、空気入りタイヤ1は、2層のベルト層7(71,72)のコード71a,72a、および少なくとも1層のベルトカバー層8(81,82,83)の有機繊維コード81a,82a,83aの張力により、トレッド部2のタイヤ径方向内側への座屈を抑えることで、ランフラット走行時の耐久性を向上することが可能になる。
ここで、ベルト層7(71,72)のコード71a,72aのタイヤ周方向に対する角度が10[度]未満で、かつベルトカバー層8(81,82,83)の有機繊維コード81a,82a,83aのタイヤ周方向に対する角度が20[度]未満であると、トレッド部2のタイヤ幅方向両側(各補強ゴム層10間)をタイヤ幅方向に橋渡しする強度が低下する。一方、ベルト層7(71,72)のコード71a,72aのタイヤ周方向に対する角度が35[度]を超え、かつベルトカバー層8(81,82,83)の有機繊維コード81a,82a,83aのタイヤ周方向に対する角度が80[度]を超えると、トレッド部2がタイヤ径方向内側に座屈する際の圧縮力に耐える張力が低下する。よって、コード71a,72aおよび有機繊維コード81a,82a,83aのタイヤ周方向に対する角度を上記のごとく設定することで、ランフラット走行時の耐久性を向上できる。なお、ベルトカバー層8(81,82,83)の有機繊維コード81a,82a,83aは、タイヤ周方向に対する角度が30[度]以上60[度]以下の範囲に設定されていると、ランフラット走行時の耐久性を向上する上で好ましく、しかも、内部に所定の空気圧で空気が充填された通常の使用において、高速走行時の耐久性および荷重耐久性を向上することが可能になる。
また、かかる構成の空気入りタイヤ1では、ベルトカバー層8(81,82,83)に有機繊維コード81a,82a,83aを適用している。このため、トレッド部2のタイヤ径方向内側への座屈を抑える構成を軽量とすることが可能になる。この結果、補強ゴム層10を備えてランフラット走行可能な空気入りタイヤ1において、過度な重量増加を抑えつつランフラット走行時の耐久性を向上することが可能になる。
また、本実施の形態の空気入りタイヤ1では、図2に示すように、互いに積層されたベルト層72とベルトカバー層81とは、タイヤ周方向に対するコード72aの傾きと、タイヤ周方向に対する有機繊維コード81aの傾きとを逆向きに配置されている。
かかる構成によれば、トレッド部2のタイヤ幅方向両側(各補強ゴム層10間)をタイヤ幅方向に橋渡しする強度と、トレッド部2がタイヤ径方向内側に座屈する際の圧縮力に耐える張力とを十分に得ることが可能になる。
また、本実施の形態の空気入りタイヤ1では、図2に示すように、複数(図2では3層)のベルトカバー層81,82,83は、タイヤ周方向に対する有機繊維コード81a,82a,83aの傾きを、タイヤ径方向への積層順で逆向きに配置されている。
かかる構成によれば、トレッド部2のタイヤ幅方向両側(各補強ゴム層10間)をタイヤ幅方向に橋渡しする強度と、トレッド部2がタイヤ径方向内側に座屈する際の圧縮力に耐える張力とを十分に得ることが可能になる。
また、本実施の形態の空気入りタイヤ1では、図2に示すように、複数(図2では3層)のベルトカバー層81,82,83の有機繊維コード81a,82a,83aは、タイヤ赤道面Cを基にタイヤ幅方向で対称となるように、タイヤ周方向に対し、ベルトカバー層81,82,83の積層順で逆向きに、かつ同じ角度で傾いて配置されていることが好ましい。また、図2に示すように、2層のベルト層71,72のコード71a,72aは、タイヤ赤道面Cを基にタイヤ幅方向で対称となるように、タイヤ周方向に対して相互に逆向きに、かつ同じ角度で傾いて配置されていることが好ましい。
かかる構成によれば、タイヤ赤道面Cを基にタイヤ幅方向で、トレッド部2のタイヤ幅方向両側(各補強ゴム層10間)をタイヤ幅方向に橋渡しする強度と、トレッド部2がタイヤ径方向内側に座屈する際の圧縮力に耐える張力とが均等になるので、ランフラット走行時の操縦安定性と重量バランスとを向上することが可能になる。
また、本実施の形態の空気入りタイヤ1では、図1に示すように、ベルト層7のタイヤ幅方向最大寸法W1に対し、ベルトカバー層8のタイヤ幅方向最大寸法W2を、0.70≦W2/W1≦1.10の範囲に設定されている。すなわち、ベルトカバー層8のタイヤ幅方向最大寸法W2が、ベルト層7のタイヤ幅方向最大寸法W1に対して70[%]以上110[%]以下の範囲に設定されている。
ベルトカバー層8のタイヤ幅方向最大寸法W2が、ベルト層7のタイヤ幅方向最大寸法W1に対して70[%]未満であると、トレッド部2のタイヤ幅方向両側(各補強ゴム層10間)をタイヤ幅方向に橋渡しする強度が低下し、かつ内部に所定の空気圧で空気が充填された通常の使用における高速走行時の耐久性が低下する。一方、ベルトカバー層8のタイヤ幅方向最大寸法W2が、ベルト層7のタイヤ幅方向最大寸法W1に対して110[%]を超えると、内部に所定の空気圧で空気が充填された通常の使用における荷重耐久性が低下する。したがって、かかる構成によれば、トレッド部2のタイヤ幅方向両側(各補強ゴム層10間)をタイヤ幅方向に橋渡しする強度と、内部に所定の空気圧で空気が充填された通常の使用における高速走行時の耐久性とを向上することが可能になる。
また、本実施の形態の空気入りタイヤ1では、ベルトカバー層8(81,82,83)は、有機繊維コード81a,82a,83aが、ナイロン、ポリエステル、レーヨン、ポリエチレンナフタレート、ポリケトン、アラミド繊維のうちの1種類、または2種類以上の複合繊維からなる。
かかる構成によれば、低重量でありながら、トレッド部2がタイヤ径方向内側に座屈する際の圧縮力に耐える張力を得ることが可能になる。特に、アラミド繊維またはアラミド繊維を含む複合繊維であれば、十分な張力を得ることが可能である。
また、本実施の形態の空気入りタイヤ1では、図1に示すように、少なくとも1層のカーカス層6は、各ビードコア51で折り返された端部が、タイヤ径方向内側のベルト層71のタイヤ径方向内側に配置されている。図1で示す2層のカーカス層61,62においては、タイヤ径方向内側およびタイヤ幅方向内側に配置されたカーカス層61が、ビードコア51の位置で折り返され、その端部61aがタイヤ径方向内側のベルト層71のタイヤ径方向内側に配置されている。なお、図には明示しないが、2層のカーカス層61,62において、タイヤ径方向外側およびタイヤ幅方向外側に配置されたカーカス層62が、ビードコア51の位置で折り返される場合、その端部62aがタイヤ径方向内側のベルト層71のタイヤ径方向内側に配置される。また、図には明示しないが、2層のカーカス層61,62において、双方がビードコア51の位置で折り返される場合、カーカス層61の端部61aおよびカーカス層62の端部62aの双方、またはカーカス層61の端部61aかカーカス層62の端部62aの一方がタイヤ径方向内側のベルト層71のタイヤ径方向内側に配置される。
かかる構成によれば、ランフラット走行可能な空気入りタイヤ1の剛性を向上することが可能になる。
また、本実施の形態の空気入りタイヤ1では、ベルトカバー層8のタイヤ幅方向両端側に、周方向補強層11が設けられている。周方向補強層11は、有機繊維(ナイロン、ポリエステル、レーヨン、ポリエチレンナフタレート、ポリケトン、アラミド繊維など)やスチールなどからなる補強コード(図示省略)がゴム材で被覆されたものである。この周方向補強層11は、タイヤ周方向に対して補強コードが0[度]以上10[度]以下の範囲で傾いて配置されるようにタイヤ周方向に巻かれている。なお、周方向補強層11は、幅狭(例えば10mm幅)のストリップ材をタイヤ周方向に螺旋状に巻き着けたものであってもよい。なお、図1では周方向補強層11がベルトカバー層81とベルトカバー層82との間に配置されているが、ベルトカバー層81とベルト層72との間、ベルトカバー層82とベルトカバー層83との間、またはベルトカバー層83のタイヤ径方向外側に配置されていてもよい。
かかる構成によれば、ランフラット走行可能な空気入りタイヤ1の剛性を向上することが可能になる。
また、本実施の形態の空気入りタイヤ1では、図には明示しないが、ビード部5において、ビードフィラー52に沿って有機繊維層が設けられている。有機繊維層は、有機繊維(ナイロン、ポリエステル、レーヨン、ポリエチレンナフタレート、ポリケトン、アラミド繊維など)を平織りまたは簾織りに形成されている。
かかる構成によれば、ビードフィラー52を補強して、ランフラット走行可能な空気入りタイヤ1の剛性を向上することが可能になる。
本実施例では、図3−1および図3−2に示すように、条件が異なる複数種類の空気入りタイヤについて、ランフラット走行耐久性、高速走行耐久性、および荷重耐久性に関する性能試験が行われた。
この性能試験では、タイヤサイズ195/55R16 87Vの空気入りタイヤを、16×6.0Jのリムに組み付けた。
評価方法は、ランフラット走行耐久性では、上記リム組の空気入りタイヤを、前輪駆動の試験車両(排気量1.6リットルクラス)に装着し、右前輪のみを空気圧0[kPa]、残りを空気圧210[kPa]に設定し、テストコース周回路にて時速80[km/h]で走行させて、テストドライバーが空気入りタイヤの故障による異常振動を感じて走行を中止するまでの距離を測定した。このランフラット走行耐久性の試験では、比較例1を基準(100)とした指数評価が行われる。この評価は、数値が大きいほどランフラット走行耐久に優れている。
また、高速走行耐久性では、上記リム組の空気入りタイヤを、ドラム径1700[mm]の室内ドラム試験にて、空気圧を300[kPa]、荷重を最大負荷能力×0.8とし、速度200[km/h]から10[km/h]ずつ10分ごとに増加させて空気入りタイヤが破壊するまで試験を行ない、破損したときの走行距離を測定した。この高速走行耐久性の試験では、比較例1を基準(100)とした指数評価が行われる。この評価は、数値が大きいほど高速走行耐久性に優れている。
また、荷重耐久性では、上記リム組の空気入りタイヤを、ドラム径1700[mm]の室内ドラム試験にて、空気圧を250[kPa]、荷重を最大負荷能力とし、速度80[km/h]で、荷重を10[%]ずつ150[km]走行ごとに増加させて空気入りタイヤが破壊するまで試験を行ない、破損したときの走行距離を測定した。この荷重耐久性の試験では、比較例1を基準(100)とした指数評価が行われる。この評価は、数値が大きいほど荷重耐久性に優れている。
比較例および実施例の空気入りタイヤは、補強ゴム層と、2層のカーカス層と、2層のベルト層とを備える空気入りタイヤである。比較例の空気入りタイヤは、ベルトカバー層が1層で、その有機繊維コードがナイロンからなる。そして、比較例1〜比較例3の空気入りタイヤは、有機繊維コード方向がタイヤ周方向(有機繊維コード角度0[度])に設定されている。さらに、比較例1の空気入りタイヤは、ベルト層に対するベルトカバー層のタイヤ幅方向比が100[%]に、比較例2の空気入りタイヤは、60[%]に、比較例3の空気入りタイヤは、130[%]に設定されている。また、比較例4の空気入りタイヤは、有機繊維コード方向を左下がりで、重なるベルト層のコード方向を右下がりとして、有機繊維コード角度が5[度]に設定され、ベルト層に対するベルトカバー層のタイヤ幅方向比が100[%]に設定されている。また、比較例4の空気入りタイヤは、有機繊維コード方向がラジアル方向(有機繊維コード角度90[度])に設定され、ベルト層に対するベルトカバー層のタイヤ幅方向比が100[%]に設定されている。
一方、実施例1〜実施例5の空気入りタイヤは、ベルトカバー層が1層で、その有機繊維コードがナイロンからなり、有機繊維コード方向を左下がりで、重なるベルト層のコード方向を右下がりとして、ベルト層に対するベルトカバー層のタイヤ幅方向比が100[%]に設定されている。そして、実施例1の空気入りタイヤは、有機繊維コード角度が20[度]に、実施例2の空気入りタイヤは、30[度]に、実施例3の空気入りタイヤは、45[度]に、実施例4の空気入りタイヤは、60[度]に、実施例5の空気入りタイヤは、80[度]に設定されている。また、実施例6〜実施例10の空気入りタイヤは、ベルトカバー層が2層で、その有機繊維コードがナイロンからなり、有機繊維コード方向をタイヤ径方向内側が左下がりで、タイヤ径方向外側が右下がりとし、重なるベルト層のコード方向を右下がりでとして、ベルト層に対するベルトカバー層のタイヤ幅方向比が100[%]に設定されている。そして、実施例6の空気入りタイヤは、有機繊維コード角度が20[度]に、実施例7の空気入りタイヤは、30[度]に、実施例8の空気入りタイヤは、45[度]に、実施例9の空気入りタイヤは、60[度]に、実施例10の空気入りタイヤは、80[度]に設定されている。また、実施例11〜実施例15の空気入りタイヤは、ベルトカバー層が1層で、その有機繊維コードがナイロン/アラミド複合繊維からなり、有機繊維コード方向を左下がりで、重なるベルト層のコード方向を右下がりとして、ベルト層に対するベルトカバー層のタイヤ幅方向比が100[%]に設定されている。そして、実施例11の空気入りタイヤは、有機繊維コード角度が20[度]に、実施例12の空気入りタイヤは、30[度]に、実施例13の空気入りタイヤは、45[度]に、実施例14の空気入りタイヤは、60[度]に、実施例15の空気入りタイヤは、80[度]に設定されている。
図3−1および図3−2の試験結果に示すように、実施例1〜実施例15の空気入りタイヤでは、高速走行耐久性および荷重耐久性を維持または向上させながら、ランフラット走行耐久性が向上していることが分かる。
以上のように、本発明にかかる空気入りタイヤは、重量増加を抑えつつ、ランフラット走行時の耐久性を向上することに適している。
1 空気入りタイヤ
2 トレッド部
21 トレッド面
22 主溝
23 陸部
3 ショルダー部
4 サイドウォール部
5 ビード部
51 ビードコア
52 ビードフィラー
6(61,62) カーカス層
61a,62a 端部
7(71,72) ベルト層
71a,72a コード
8(81,82,83) ベルトカバー層
81a,82a,83a 有機繊維コード
9 インナーライナ
10 補強ゴム層
11 周方向補強層
C タイヤ赤道面

Claims (5)

  1. タイヤ幅方向両側のサイドウォール部に配置され子午断面が略三日月形状の補強ゴム層と、タイヤ幅方向両側のビード部に配置された各ビードコア間に架け渡される少なくとも1層のカーカス層と、前記カーカス層のタイヤ径方向外側に配置される2層のベルト層と、前記ベルト層のタイヤ径方向外側に配置される2層以上のベルトカバー層とを備えるランフラット走行可能な空気入りタイヤにおいて、
    前記ベルト層は、タイヤ周方向に対して10[度]以上35[度]以下の範囲で傾くコードを有してなり、
    前記ベルトカバー層は、タイヤ周方向に対して20[度]以上80[度]以下の範囲で傾く有機繊維コードを有して、各前記ベルトカバー層の各前記有機繊維コードが、タイヤ赤道面を基にタイヤ幅方向で対称となるように配置されていると共に、タイヤ周方向に対する前記有機繊維コードの傾きを、各前記ベルトカバー層のタイヤ径方向への積層順で逆向きに、かつ同じ角度で傾いて配置されている、
    ことを特徴とする空気入りタイヤ。
  2. 互いに積層された前記ベルト層と前記ベルトカバー層とは、タイヤ周方向に対する前記コードの傾きとタイヤ周方向に対する前記有機繊維コードの傾きとを逆向きに配置されていることを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
  3. 前記ベルトカバー層は、タイヤ幅方向最大寸法を、前記ベルト層のタイヤ幅方向最大寸法に対して70[%]以上110[%]以下の範囲に設定されていることを特徴とする請求項1または2に記載の空気入りタイヤ。
  4. 前記ベルトカバー層は、前記有機繊維コードが、ナイロン、ポリエステル、レーヨン、ポリエチレンナフタレート、ポリケトン、アラミド繊維のうちの1種類、または2種類以上の複合繊維からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
  5. 少なくとも1層の前記カーカス層は、各前記ビードコアで折り返された端部が、前記ベルト層のタイヤ径方向内側に配置されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
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