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JP5303276B2 - 25−ヒドロキシビタミンd不足および欠乏を治療するための方法および製品 - Google Patents

25−ヒドロキシビタミンd不足および欠乏を治療するための方法および製品 Download PDF

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Description

発明の詳細な説明
関連出願の相互参照
本願は、35U.S.C.§119(e)の下で、2005年10月12日に出願された米国仮特許出願第60/725,709号に基づく優先権を主張する。
背景技術
技術分野
本開示は、一般に、25−ヒドロキシビタミンD不足および/または欠乏を治療するための方法および製剤に関する。より具体的には、本開示は、ビタミン(単数または複数)の徐放性、例えば遅延および/または持続放出を有するエルゴカルシフェロールおよび/またはコレカルシフェロールを患者に投与する方法ならびに前記方法を実施するための前記ビタミン(単数または複数)の適切な製剤に関する。
関連技術の簡単な説明
コレカルシフェロールおよびエルゴカルシフェロールは、総称してビタミンDと呼ばれるが、数ある特徴の中で特に血流中のカルシウムおよびリンの正常濃度の維持に寄与する、ビタミンDホルモンの脂溶性セコステロイド前駆体である。
コレカルシフェロールおよびエルゴカルシフェロールは、通常は、ヒト血液中に安定した低い濃度で存在する。非補充食品はビタミンD強化食品を含有するものであってもビタミンD含有量が低いので、食後において血中ビタミンD濃度の上昇はあるとしてもわずかしか起こらない。ヒトのビタミンD供給の大部分は強化食品、日光への暴露、またはダイエタリー・サプリメントに由来し、後者の供給源がますます重要になっている。皮膚の7−デヒドロキシコレステロールはUV放射線によりプレビタミンD3に変換され、これは血中を循環する前に数日間にわたって皮膚内でコレカルシフェロールへの熱変換を受けるので、日光暴露後、血中ビタミンD濃度は、全然ではないにしても徐々にしか上昇しない。それにひきかえ、サプリメント、例えば現在入手可能なサプリメントは、投与量に比例して管腔内、血中および細胞内ビタミンD濃度の顕著な上昇をもたらす。
コレカルシフェロールおよびエルゴカルシフェロールは共に、主に人体の肝臓中に位置する酵素によりプロホルモンに代謝される。コレカルシフェロールはプロホルモン25−ヒドロキシビタミンD3に代謝され、エルゴカルシフェロールは2つのプロホルモン25−ヒドロキシビタミンD2および24(S)−ヒドロキシビタミンD2に代謝される。これら2つの25−水酸化プロホルモンは総称して“25−ヒドロキシビタミンD”(“25(OH)D”)と呼ばれる。コレカルシフェロールおよびエルゴカルシフェロールはまた、肝臓以外で、特定の細胞中、例えば腸上皮細胞中で肝臓中に含まれる酵素と同一または類似の酵素によりプロホルモンに代謝され得る。
いずれの前駆体の濃度を上昇させてもプロホルモンの産生増加が起こる。同様に、前駆体濃度を低下させるとホルモンの産生低下が起こる。コレカルシフェロールおよび/またはエルゴカルシフェロール(“コレカルシフェロール/エルゴカルシフェロール”)の血中濃度の急上昇により、細胞内ビタミンD濃度は一過性に上昇し、プロホルモン産生は促進され、細胞内および血中プロホルモン濃度は上昇しうる。コレカルシフェロールおよび/またはエルゴカルシフェロールの血中濃度の急上昇により、プロホルモンを産生する酵素は飽和し、過剰のビタミンDは異化または分路されて脂肪組織内に長期蓄積がもたらされうる。脂肪組織に蓄積されたビタミンDは、プロホルモンへの将来の変換を受けづらい。現行の経口サプリメントの摂取後におけるビタミンDの管腔内濃度の急上昇により、局所腸上皮細胞におけるビタミンDおよびプロホルモン濃度は直ちに上昇し、それにより、小腸においてカルシウムおよびリン代謝に対する“初回通過”効果が発揮されうる。
ビタミンDプロホルモンは、さらに、腎臓において強力なホルモンに代謝される。プロホルモン25−ヒドロキシビタミンD3はホルモン1α,25−ジヒドロキシビタミンD3(すなわちカルシトリオール)に代謝され、同様に、25−ヒドロキシビタミンD2および24(S)−ヒドロキシビタミンD2は、それぞれ1α,25−ジヒドロキシビタミンD2および1α,24(S)−ジヒドロキシビタミンD2として知られているホルモンに代謝される。血中または細胞内プロホルモン濃度の急上昇は、過剰な腎外ホルモン産生を促進し、カルシウムおよびリン代謝に対する局所副作用を引き起こしうる。このような急上昇はまた、その後のサプリメントのビタミンDからの肝臓のプロホルモン産生を抑制し、腎臓および他の組織においてビタミンDおよび25−ヒドロキシビタミンDの両方の異化作用を促進する場合もある。
血中ビタミンDホルモン濃度は、健常者において一般に1日中一定に保たれるが、より長期間にわたっては、日光暴露における季節変化またはビタミンD摂取量の持続的変化に応じて著しく変化しうる。日光暴露による持続的で適切なビタミンDの供給および、非補充食品を与えられる場合、通常、コレカルシフェロール、エルゴカルシフェロールおよび3つのビタミンDプロホルモンの血中濃度もまた1日中一定である。しかしながら、コレカルシフェロールおよびエルゴカルシフェロールの血中濃度は、現在入手可能なビタミンDサプリメントを投与した後、特にビタミンD欠乏性くる病または骨軟化症を予防するのに必要な量を大きく超えた投与量で投与した後に著しく上昇しうる。
ビタミンDホルモンは、ヒトの健康において、細胞内ビタミンD受容体(VDR)により介在される重要な役割を有している。特に、ビタミンDホルモンは、小腸による食事からのカルシウムの吸収および腎臓によるカルシウムの再吸収を調節することにより血中カルシウム濃度を調節している。ホルモン濃度の過剰は尿カルシウム(高カルシウム尿症)、血中カルシウム(高カルシウム血症)および血中リン(高リン血症)の異常な上昇を引き起こす恐れがある。ビタミンDホルモンはまた、細胞分化および増殖の調節、副甲状腺によるPTH分泌ならびに正常な骨形成および代謝にも関与している。さらにまた、ビタミンDホルモンは筋骨格系、免疫系およびレニン−アンジオテンシン系の正常な機能に必要である。ビタミンDホルモンの多くの他の役割は、ほぼすべてのヒト組織における細胞内VDRの存在が報告されていることに基づいて想定され解明されるであろう。
特定の組織に対するビタミンDホルモンの作用は、これらの組織内における細胞内VDRに対する結合の程度(すなわち占拠の程度)によって決まる。コレカルシフェロールおよびエルゴカルシフェロールは、VDRに対して、ビタミンDホルモンの親和性よりも少なくとも100倍低いと推算される親和性を有する。結果として、生理的濃度のコレカルシフェロールおよびエルゴカルシフェロールは、ビタミンDホルモンへの事前の代謝なしには生物学的作用をほとんど発揮しない。しかしながら、正常濃度よりも10〜1000倍高い範囲の超生理学的濃度のコレカルシフェロールおよびエルゴカルシフェロールはVDRを十分占拠でき、ビタミンDホルモンと同様な作用を発揮し得る。
ビタミンD不足またはビタミンD欠乏(あるいは、ビタミンD低下症)などの状態におけると同様に、ビタミンDが供給不足の場合、ビタミンDプロホルモンの産生は低下する。ビタミンDプロホルモンの低い産生は、25−ヒドロキシビタミンDの低い血中濃度をもたらす。不十分なビタミンD供給は、多くの場合、日焼け止め剤を用いずに日光に低頻度で暴露された個人、慢性的にビタミンD摂取が不十分な個人または脂溶性ビタミン(例えばビタミンD)の腸管吸収が低下した状態を患う個人に生じる。北緯度地方に住んでいる大部分の個人は、ビタミンD供給が不十分であることが最近報告された。治療せずに放置すると、不十分なビタミンD供給は、くる病および骨軟化症を含む重篤な骨障害の原因となる恐れがある。
米国科学アカデミー(National Academy of Sciences)の医学研究所(Institute of Medicine, IOM)は、健常者のためのビタミンDの適性摂取量(Adequate Intake)(AI)は、個人の年齢および性別に応じて、1日当たり200〜600 IUであると結論を下している。Standing Committee on the Scientific Evaluation of Dietary Reference Intakes, Dietary reference intakes: calcium, phosphorus, magnesium, vitamin D, and fluoride, Washington, DC: National Academy Press (1997) を参照のこと(引用により本願に組み込まれる)。ビタミンDのAIは、主として、ビタミンD欠乏性くる病または骨軟化症を予防するのに十分な血清25−ヒドロキシビタミンD濃度(すなわち少なくとも11ng/mL)に基づいて定義された。IOMはまた、より高い投与量には、高カルシウム尿症、高カルシウム血症ならびに、心不整脈、発作ならびに全身性の血管および他の軟組織の石灰化を含む関連後遺症のリスク増加が付随するという根拠に基づいて、1日当たりビタミンD 2,000 IUという許容上限摂取量(Tolerable Upper Intake Level)(UL)を確定した。
現在入手可能な経口ビタミンDサプリメントは、最適の血中25−ヒドロキシビタミンD濃度を達成維持するためには、理想から程遠い。これらの調製物は、通常ビタミンD3400 IU〜5,000 IUまたはビタミンD2 50,000 IUを含有し、消化管中での迅速放出または即時放出のために製剤化される。ビタミンD補充のために多くの場合必要とされるが、長期にわたり高用量で投与された場合、これらの製品は、以下に要約する、顕著で、しばしば厳しい制限を受ける。
高用量の即時放出ビタミンDサプリメントは、血中ビタミンD濃度の顕著な急上昇を引き起こし、そのために、(a)脂肪組織内へのビタミンDの貯蔵が促進され(貯蔵されたビタミンDはその後の25−ヒドロキシビタミンDへの肝臓による変換を受けづらいためこのことは望ましくない);(b)代謝物へのビタミンDの肝異化作用が促進され(24−および/または26−ヒドロキシル化によって、血中25−ヒドロキシビタミンD濃度を上昇させるためには、このことは有用性の低いまたはもはや有用ではない);および(c)ビタミンDの、過剰な細胞内24−または25−ヒドロキシル化(このことは高カルシウム尿症、高カルシウム血症および高リン血症のリスク増加をもたらす)が促進される。
高用量の即時放出ビタミンDサプリメントはまた、血中および細胞内25−ヒドロキシビタミンD濃度の急上昇またはスパイクを引き起こし、そのために、(a)カルシウムおよびリンホメオスタシスの局所異常ならびに高カルシウム尿症、高カルシウム血症および高リン血症のリスク増加をもたらす、ビタミンDホルモンの過剰な腎外産生;(b)腎臓および他の組織における24−および/または26−ヒドロキシル化によるビタミンDおよび25−ヒドロキシビタミンDの両方の異化作用の促進;(c)ビタミンD不足または欠乏の十分な補充を不必要に妨げる、ビタミンDプロホルモンの肝産生のダウンレギュレーション;ならびに(d)VDRへの直接結合により仲介されるカルシウムおよびリンホメオスタシスの局所異常;を促進する。
さらにまた、高用量の即時放出ビタミンDサプリメントは、例えば十二指腸内腔においてビタミンDの超生理学的薬理学的濃度を引き起こし、(a)高カルシウム尿症、高カルシウム血症および高リン血症のリスク増加をもたらす、腸上皮細胞における25−ヒドロキシル化および、カルシウムおよびリンの腸管吸収の局所刺激;(b)全身バイオアベイラビリティの低下を引き起こす、局所腸上皮細胞における24−および26−ヒドロキシル化によるビタミンD異化作用;(c)肝異化作用の上昇をもたらす、主としてキロミクロンによる吸収;を促進する。
特定の個人において、ULを越えるビタミンD補充がしばしば必要となる。しかしながら、高用量の即時放出ビタミンD化合物を投与する問題を考慮すれば、現在入手可能な経口ビタミンDサプリメントは、血中25−ヒドロキシビタミンD濃度を最適濃度に維持するためには十分適しているとはいえない。
概要
本発明の1つの側面は、血中25−ヒドロキシビタミンD濃度を最適濃度(患者に関しては30ng/mL以上と定義される)に安全かつ効果的に回復させ、このような最適濃度に血中25−ヒドロキシビタミンD濃度を維持する方法を提供する。1つの方法は、現在入手可能なビタミンDサプリメントと比較してレシピエントに予期せぬ利点を提供する、十分なコレカルシフェロール、エルゴカルシフェロールまたはこれら2つのビタミンを製剤に含む組み合わせを、被験者、動物またはヒト患者に経口投与することを含む。例えば、本明細書記載の方法を実施することにより、高用量においてさえも血中ビタミンDおよび25−ヒドロキシビタミンDの急上昇(すなわち有害な超生理学的濃度)のリスクを低下させ、長期間にわたって身体に実質的に一定なビタミンD源を供給するビタミンD補充を提供することができる。コレカルシフェロールおよびエルゴカルシフェロールの組み合わせを含めれば、よりさらなる臨床的利点が提供されると期待される。
一実施形態において、コレカルシフェロールおよび/またはエルゴカルシフェロールのある量が徐放性製剤に含有され、治療を必要とするヒトまたは動物に経口投与される。コレカルシフェロールおよび/またはエルゴカルシフェロールのこの徐放性製剤は、1以上の利点、例えばキロミクロンによりリンパ系よりもむしろ血流への直接吸収を促進させ、小腸上部の腸上皮細胞における異化作用を抑制することにより含有コレカルシフェロール/エルゴカルシフェロールのバイオアベイラビリティーを著しく増加させ;十二指腸に対する含有コレカルシフェロール/エルゴカルシフェロールの望ましくない初回通過効果を著しく抑制し;コレカルシフェロール、エルゴカルシフェロールおよび25−ヒドロキシビタミンDの血中濃度における有害な超生理学的急上昇の促進を著しく抑制し;血中25−ヒドロキシビタミンD濃度を最適濃度(患者に関しては30ng/mL以上と定義される)に回復させるために経口投与されたコレカルシフェロール/エルゴカルシフェロールの効果を著しく増強させ;血中25−ヒドロキシビタミンD濃度をこのような最適濃度に維持するために経口投与されたコレカルシフェロール/エルゴカルシフェロールの効果を著しく増強させ;ビタミンD代謝阻害および関連するPTH、カルシウムおよびリンホメオスタシスの異常を著しく抑制し;高カルシウム尿症、高カルシウム血症、高リン血症およびビタミンD毒性を含む、ビタミンD補充に関連する重篤な副作用のリスクを低下させる利点を有することができる。予期される特別な患者群は慢性腎疾患患者群である。ステージ3、4および/または5の慢性腎疾患患者は本発明によって治療できる。
他の側面において、本発明は、コレカルシフェロールおよび/またはエルゴカルシフェロールを含み、胃ならびに小腸の十二指腸および空腸を通過させて回腸における実質的な放出(例えば、遅延放出)を可能にするために製剤化された安定な徐放性組成物を提供する。組成物は胃液中での崩壊を効果的に阻止し、コレカルシフェロールおよび/またはエルゴカルシフェロールが小腸の回腸に到達するまで含有コレカルシフェロールおよび/またはエルゴカルシフェロールの実質的な放出を防止する。本開示組成物は、さらに、コレカルシフェロール/エルゴカルシフェロールおよび25−ヒドロキシビタミンDの両方の血中濃度を最適濃度まで持続的に漸増させこれを維持できるようにデザインされることもできる。
前述の短い説明は、一般に本発明の特徴的な側面の概略を示したものであり、以下に述べるより完全な詳細な説明をよりよく理解するための補助として役立つものである。これらを参考にすれば、本発明は本明細書記載の方法もしくは製造の詳細、化学組成物または用途に限定されるものではないことが明確に理解されるであろう。製造、化学組成物、使用または応用のその他の変形は本発明の代替実施形態として明白であるとみなされるべきである。本発明の特定の適合、組成物の変形ならびに化学的および物理的属性の他の利点およびより完全な認識は、詳細な説明を吟味することにより得られる。
同様に、本明細書の術語および用語法は説明目的のためのものであり、限定とみなすべきではないことが理解される。本明細書においては、“含有する”、“有する”および“含む”ならびにそれらの変形の使用は、その後に記載される項目およびそれらの均等物ばかりでなく、追加の項目およびそれらの均等物を含むと解される。
詳細な説明
血中25−ヒドロキシビタミンD濃度を最適濃度(ヒト被験者および患者に関しては30ng/mL以上と定義される)に安全かつ効果的に回復させ、このような最適濃度に血中25−ヒドロキシビタミンD濃度を維持するために、十分なコレカルシフェロール、エルゴカルシフェロールまたはこれら2つのビタミンの任意の組み合わせを用いるビタミンD補充を必要とする被験者、動物またはヒト患者に経口投与するための組成物および方法が本明細書に記載されている。
本明細書において、以下の定義は、当業者が本発明を理解するのを助ける上で有用である。
本明細書において、ビタミンDの血清または血中濃度に関する用語“実質的に一定の”は、徐放性(下記に定義される)製剤の放出挙動が、投薬単位の投与後、場合により少なくとも4時間、12時間、1日間、2日間、3日間、4日間または5日間にわたる、おおよそ10nmol/Lを超えるコレカルシフェロールおよびエルゴカルシフェロールの全血清または血中濃度の上昇を含むべきではないことを意味する。
本明細書において、血清または血中25−ヒドロキシビタミンD濃度に関する用語“実質的に一定の”は、徐放性製剤の放出挙動が、投薬単位の投与後、場合により少なくとも4時間、12時間、1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、1週間、10日または2週間にわたる、それぞれおおよそ3ng/mLを超える全血清または血中25−ヒドロキシビタミンD3および25−ヒドロキシビタミンD2濃度の上昇を含むべきではないことを意味する。
本明細書において、用語“徐放性”および“持続放出”は互換的に使用され、コレカルシフェロール、エルゴカルシフェロールおよび25−ヒドロキシビタミンDの全血清または血中濃度が、長期間、例えば4〜24時間またはそれ以上の間、前投与濃度を維持またはそれを超えて維持されるような速度での投与されたビタミンDの放出を指す。用語“徐放性”は、場合により遅延放出特性を含む。
本明細書において、用語“ビタミンD毒性”は、吐き気、嘔吐、多尿、高カルシウム尿症、高カルシウム血症および高リン血症の1以上を含む、過剰なビタミンD摂取量および過度に上昇したビタミンD血中濃度から来る副作用を指すと解される。
ビタミンDの管腔内、細胞内および血中濃度に関する“超生理学的”は、ビタミンD補充が少なくとも30日間差し控えられたとき、実験室測定により、任意の24時間の間、ビタミンD補充を受けた被験者、動物またはヒト患者において観察される一般に安定な濃度よりも顕著に大きいコレカルシフェロールおよびエルゴカルシフェロールの総濃度を指す。“有害な超生理学的急上昇”は、カルシウムおよびリン代謝に対する局所有害作用、ビタミンDの肝25−ヒドロキシル化の阻害、ビタミンDおよび25−ヒドロキシビタミンDの両方の異化作用の増強、高カルシウム尿症、潜在的心血管後遺症を伴う高カルシウム血症および/または高リン血症をもたらす、過剰な腎外ホルモン産生などの副作用を誘発する、コレカルシフェロールおよび/またはエルゴカルシフェロールまたは25−ヒドロキシビタミンDの局所または血清濃度を指す。
“ビタミンD不足および欠乏”は、一般に濃度30ng/mL未満の血清25−ヒドロキシビタミンDを有するとして定義される(National Kidney Foundationのガイドライン、NKF, Am. J. Kidney Dis. 42:S1-S202 (2003) を参照のこと(参照により本願に組み込まれる))。
本明細書に記載の任意の数値は、低い値から高い値までのすべての値を含むこと、すなわち列挙される最も低い値から最も高い値までのすべての可能な数値の組み合わせが本願において明白に述べられていると考慮されるべきであることもまた特に了解される。例えば、濃度範囲または有益な効果の範囲が1%〜50%と述べられている場合、例えば2%〜40%、10%〜30%または1%〜3%などの値は本明細書に明白に列挙されているものとする。これらは具体的に予期されたものの単なる例に過ぎない。
本開示の1つの側面は、十二指腸に対するビタミンD化合物の望ましくない初回通過効果を免れ;コレカルシフェロール、エルゴカルシフェロールおよび25−ヒドロキシビタミンDの管腔内、細胞内および血中濃度の有害な超生理学的急上昇ならびにその帰結を免れ;ビタミンD補充に伴う重篤な副作用、すなわちビタミンD毒性を免れて、従来得られなかった有効性の濃度で25−ヒドロキシビタミンD不足および欠乏を治療するための、コレカルシフェロールおよび/またはエルゴカルシフェロールの徐放性製剤を含む組成物およびこのような製剤の投与方法(一実施形態において、高用量で)を含む。
徐放性組成物は、UL以上のコレカルシフェロール/エルゴカルシフェロールの濃度を含有するようにデザインされ、長期間、コレカルシフェロール/エルゴカルシフェロールの、徐放性で好ましくは実質的に一定の放出がなされるように調製される。さらにまた、本組成物は、好ましくはヒトまたは動物の消化管の回腸中に遅延放出されるようにデザインされる。実施形態の1つのタイプにおいて、本組成物は体内におけるコレカルシフェロール/エルゴカルシフェロールの実質的に一定の濃度およびより持続性の血中濃度を確実にすることが予期される。時間と共に、コレカルシフェロール/エルゴカルシフェロールの低速で一定の放出を提供することにより、血中、管腔内および細胞内ビタミンD濃度の急上昇、すなわち有害な超生理学的濃度は低減または解消される。
5,000 IUを超え、または7,500 IUを超え、または10,000 IUを超える投与量でビタミンD3を含む組成物が予期される。少なくとも1,500 IU(合わせて)または少なくとも2,000、2,500、3,000、4,000、5,000、6,000、7,000、7,500、8,000、9,000、10,000、11,000、12,000もしくは12,500 IUの投薬単位でコレカルシフェロールおよびエルゴカルシフェロールの組み合わせを含む組成物が予期される。200,000 IU未満または100,000もしくは75,000もしくは50,000 IU未満の投薬単位もまた予期される。
本発明はまた1日1回、1日おきに1回、週3回、週2回、週1回または2週に1回の間隔で投与できることが予期される。各回に投与された累積用量は、1,500IU(コレカルシフェロールおよびエルゴカルシフェロール単独または合わせて)または少なくとも2,000、2,500、3,000、4,000、5,000、6,000、7,000、7,500、8,000、9,000、10,000、11,000、12,000もしくは12,500 IUであることができる。200,000 IU未満または100,000もしくは75,000もしくは50,000 IU未満の投与量もまた予期される。このような投与量は成人のヒトへの使用に好ましい。
任意の比率、例えば、9:1〜1:9のコレカルシフェロールおよびエルゴカルシフェロールを含むことができる。限定するものではないが、1:1、コレカルシフェロール:エルゴカルシフェロール1:1を超えるおよびコレカルシフェロール:エルゴカルシフェロール1:1未満を含む比率は、種々の実施形態に有用であると予期される。
前述の投与量は経口送達形態用に予期される。本明細書記載の方法に従って投与されるビタミンD調製物は、当該技術分野で公知であり、他の選択経路による投与に適した技術に従って製剤化できる。例えば、限定するものではないが錠剤、溶液、粉末剤、懸濁液、クリーム、エアゾールなどを含む、本調製物を含有する任意の薬学的に許容される製剤を使用できる。当該技術分野で既知または予想される任意の薬学的に許容される担体を本製剤に添加することができる。
例えば、単一投薬単位カプセルおよび/または1日量中の、コレカルシフェロール1,500 IUおよびエルゴカルシフェロール1,500 IUの組み合わせが予期される。同様に、単一投薬単位カプセルおよび/または1日量中の、コレカルシフェロール1,000 IUおよびエルゴカルシフェロール1,000 IUの組み合わせならびに単一投薬単位カプセルおよび/または1日量中の、コレカルシフェロール2,000 IUおよびエルゴカルシフェロール2,000 IUの組み合わせが予期される。このような投薬単位カプセルの初期の用法・用量は、例えば、単一投薬単位カプセル中のコレカルシフェロール1,500 IUおよびエルゴカルシフェロール1,500 IUの組み合わせに関して下記の表1に詳細を記したように、ベースラインの血清25(OH)D(ng/ml)[nmol/L]濃度に基づくものであることができる。
表1
Figure 0005303276
25(OH)Dの血清濃度を30ng/mL以上に維持するために、成人患者に対して1日当たりこのようなカプセルを1つ投与することができる。
本組成物は、便利な毎日の経口投与のためにコレカルシフェロールおよび/またはエルゴカルシフェロールが組み込まれた、高度に安定した徐放性医薬組成物を含む。本組成物はまた、好ましくは胃液中での崩壊を効果的に阻止し、本組成物が小腸、より好ましくは小腸の回腸に到達するまで含有コレカルシフェロールおよび/またはエルゴカルシフェロールの実質的な放出を防止する。本開示組成物は、血中25−ヒドロキシビタミンDの最適濃度への回復における卓越した効果およびビタミンDの公知の経口製剤に対する卓越した安全の2つの予期せぬ利点を有しながら、(a)コレカルシフェロールおよび/またはエルゴカルシフェロールおよび(b)25−ヒドロキシビタミンDの両方の血中濃度の漸増とその後の血中濃度の維持をもたらす。複数の実施形態において、本方法は、長期間、例えば少なくとも1ヶ月間、少なくとも3ヶ月間、少なくとも6ヶ月間またはそれ以上にわたって、血中25−ヒドロキシビタミンD濃度を30ng/mL以上に維持するために本明細書記載の製剤を投与することを含むと予期される。
コレカルシフェロール/エルゴカルシフェロールの、制御された実質的に一定の放出形態の調製物は、多くの異なる技術に従って実施できる。例えば、コレカルシフェロール/エルゴカルシフェロールを、固体、半固体または液体のマトリックス(すなわち、注意深く選択された比率の速度調節成分および賦形剤の、マトリックス内の特有の混合物)内に分散させ、コーティング剤で覆うことができる。医薬製剤からのコレカルシフェロール/エルゴカルシフェロールの放出速度および/または部位を調節するために、種々のコーティング技術を使用できる。例えば、コーティングの溶出は、周囲の媒質のpHにより引き起こすことができ、結果として時間と共にコーティングが徐々に溶出し、腸内環境の液にマトリックスが露出される。コーティングが浸透性になった後、コレカルシフェロール/エルゴカルシフェロールはマトリックスの外表面から拡散する。この表面からコレカルシフェロール/エルゴカルシフェロールが使いつくされ枯渇されたとき、崩壊するマトリックスを通して外部溶液に拡散することにより、下にあるたくわえが消耗され始める。
一側面において、本発明記載の製剤は、回腸の内容物にさらされたとき、コレカルシフェロールおよび/またはエルゴカルシフェロールの制御された実質的に一定の放出をもたらす、放出可能または可逆的に成分と結合するマトリックス内のコレカルシフェロールおよび/またはエルゴカルシフェロールを提供する。
コレカルシフェロールおよび/またはエルゴカルシフェロール含有マトリックスは、胃液内で崩壊に抵抗するコーティングで適切におおわれる。ついでコーティングされたコレカルシフェロール/エルゴカルシフェロールの徐放性製剤は、被験者、例えば、動物またはヒト被験者および患者に経口投与される。製剤が小腸の近位部を通過するとき、腸溶コーティングは徐々に透過性となるが、適切な実施形態において、製剤はコレカルシフェロールおよび/またはエルゴカルシフェロール含有マトリックスのまわりに持続する構造を備える。コレカルシフェロールおよび/またはエルゴカルシフェロール含有マトリックスは透過性外套膜を通して回腸内の腸液に著しくさらされるようになり、ついでコレカルシフェロール/エルゴカルシフェロールは、単純拡散および/またはマトリックスの緩慢な崩壊により徐々に放出される。
回腸の内腔にいったん放出されれば、コレカルシフェロール/エルゴカルシフェロールは血流に吸収される。コレカルシフェロール、エルゴカルシフェロールまたはそれらの組み合わせの大部分は、使用される場合、十二指腸および空腸を過ぎた部分で吸収される。これらの小腸近位部は、高い管腔内濃度のビタミンDに応答することができ、その過程で、かなりの量のコレカルシフェロール/エルゴカルシフェロールを異化することができる。回腸までコレカルシフェロール/エルゴカルシフェロールの放出を遅らせることにより、本明細書記載の医薬組成物は、近位腸での初回通過効果を事実上排除し、望ましくない異化作用を緩和する。さらにまた、エルゴカルシフェロールの経回腸吸収は、吸収されたコレカルシフェロール/エルゴカルシフェロールをキロミクロンと比較して血清ビタミンD結合タンパク質(DBP)に振り向けるようにデザインできる本明細書記載の製剤を用いて増加させることができる。DBPに結合しているコレカルシフェロール/エルゴカルシフェロールは肝異化作用をより受けづらいと考えられる。投与されたビタミンDの、血流への吸収前または吸収後の顕著な異化作用により、その全身バイオアベイラビリティは著しく低下する。初回通過効果の排除により、ビタミンD毒性のリスクは低下する。
本発明の一実施形態において、コレカルシフェロールおよび/またはエルゴカルシフェロールの徐放性製剤は、一般に以下の手順に従って製造される。十分な量のコレカルシフェロールおよび/またはエルゴカルシフェロールを最小量のUSP等級無水エタノール(または他の適切な溶媒)に完全に溶解し、適切な量およびタイプの医薬品等級賦形剤と混合して、室温および人体の正常体温の両方で固体または半固体であるマトリックスを作成する。このマトリックスは、胃または小腸上部において完全またはほぼ完全に消化に抵抗し、下位腸において徐々に崩壊する。他のタイプの実施形態において、液体マトリックスを使用できる。
適切な製剤において、マトリックスはコレカルシフェロールおよび/またはエルゴカルシフェロールに結合し、単純拡散および/または緩慢な崩壊による、小腸下部の内腔の内容物中への、4〜8時間またはそれ以上にわたる、コレカルシフェロール/エルゴカルシフェロールの低速で比較的一定の、好ましくは実質的に一定の放出を可能にする。この製剤は、さらに、pH約7.0〜8.0を有する水溶液に部分的に溶解するか、またはコレカルシフェロール/エルゴカルシフェロールの顕著な放出が、この製剤が十二指腸および空腸を通過し終えるまで遅延されるように単に十分に緩慢に溶解する腸溶コーティングを有することができる。
上記のように、コレカルシフェロールおよび/またはエルゴカルシフェロールの徐放性を提供する手段は、ワックスマトリックスシステムおよびEudragit RS/RLシステム(ドイツWeiterstadtのRohm Pharma GmbH製)を含む、約4時間またはそれ以上にわたる活性成分の既知の徐放性デリバリーシステムのいずれかから選択できる。
ワックスマトリックスシステムは親油性マトリックスを提供する。ワックスマトリックスシステムには、密蝋、白蝋、マッコウクジラワックスまたは同様な組成物を利用することができる。活性成分(単数または複数)はワックスバインダー中に分散され、これは腸液中で緩慢に崩壊して徐々に活性成分(単数または複数)を放出する。コレカルシフェロールおよび/またはエルゴカルシフェロールを含侵させたワックスバインダーは、部分架橋軟ゼラチンカプセルに装填される。ワックスマトリックスシステムは、体温で軟化し、腸液中で緩慢に崩壊して活性成分(単数または複数)を徐々に放出するワックスバインダー中に活性成分(単数または複数)を分散させる。体温よりも高いが、軟ゼラチンおよび/または硬ゼラチンカプセルのいずれかの殻を作成するために通常用いられるゼラチン製剤または腸溶コーティングを作成するために用いられる他の製剤の溶融温度よりも低い融点を達成するために、このシステムは適切にはオイルを随意に添加したワックスの混合物を含む。あるいはまた、このシステムは、室温および/または体温で固体、半固体または液体形のままである、オイルを随意に添加したワックスの混合物を含む。
具体的には、1つの適切な実施形態において、マトリックスのために選択されるワックスは溶融され完全に混合される。望ましい量のオイルは、もしあれば、この時点で添加され、次いで十分に混合される。ついでこの蝋質混合物は、その融点の少し上の温度に徐々に冷却される。エタノールに溶解された望ましい量のコレカルシフェロールおよび/またはエルゴカルシフェロールは溶融マトリックス中に均一に分配され、このマトリックスは軟ゼラチンカプセル中に装填される。充填カプセルは、カプセルシェル中のゼラチンを部分架橋させるために、アセトアルデヒドなどのアルデヒドを含有する溶液で適切な期間処理される。ゼラチン殻は、例えば数週間にわたって次第に架橋を受け、それにより胃および腸上部の内容物中への溶出に抵抗するようになる。適切に構築された場合、経口投与後、このゼラチン殻は徐々に溶解し、回腸に到達するまでには十分に多孔性になり(完全には崩壊しないで)、ワックスマトリックスから小腸下部の内容物中にコレカルシフェロールおよび/またはエルゴカルシフェロールが緩慢に拡散することが可能になる。
価値のある可能性のある他の脂質マトリックスの例は、グリセリド、脂肪酸およびアルコールならびに脂肪酸エステルである。
他の適切な徐放性経口ドラッグデリバリーシステムは、活性成分、コレカルシフェロールおよび/またはエルゴカルシフェロールが寸法25/30メッシュを有する顆粒に形成されたEudragit RL/RSシステムである。ついでこの顆粒は、水不溶性であるが水が緩慢に浸透できる薄いポリマーラッカーで均一にコーティングされる。コーティングを施した顆粒は、選択可能な添加剤、例えば抗酸化剤、安定化剤、バインダー、滑沢剤、加工助剤などと混合することができる。この混合物は、使用前には硬くて乾燥している錠剤に成形し、さらにコーティング処理することができ、あるいはカプセル中に流し込むこともできる。錠剤またはカプセルが飲み込まれ、水性腸液と接触した後、薄いラッカーは膨潤し、腸液による浸透が緩慢に可能になる。腸液がラッカーコーティングを緩慢に浸透するに従って、含有コレカルシフェロールおよび/またはエルゴカルシフェロールは緩慢に放出される。錠剤またはカプセルが小腸を通過する時間まで、すなわち4〜8時間またはそれ以上までには、コレカルシフェロール/エルゴカルシフェロールは緩慢に、しかし完全に放出されていると考えられる。従って、摂取された錠剤は、コレカルシフェロールおよび/またはエルゴカルシフェロールばかりでなく任意の他の活性成分を次々と放出する。
Eudragitシステムは高浸透性ラッカー(RL)および低浸透性ラッカー(RS)を含む。RSは、中性の膨潤性メタクリル酸エステルと少ない割合のトリメチルアンモニオエチルメタクリレートクロリドとに基づき、中性エステル群に対する第四級アンモニウム群のモル比が約1:40である水不溶性皮膜形成剤である。RLはまた、中性のメタクリル酸エステルと小量のトリメチルアンモニオエチルメタクリレートクロリドに基づき、中性エステル群に対する第四級アンモニウム群のモル比が約1:20である水不溶性膨潤性皮膜形成剤である。コーティングの浸透性ひいては薬物放出の時間的経過はRLコーティング剤に対するRSコーティング剤の割合を変えることにより調節することができる。Eudragit RL/RSシステムのさらなる詳説に関しては、Rohm Tech, Inc., 195 Canal Street, Maiden, Mass. 02146 から入手できる技術刊行物を参照できる。同様に、K. Lehmann, D. Dreher "Coating of tablets and small particles with acrylic resins by fluid bed technology", Int. J. Pharm. Tech. & Prod. Mfr. 2(r), 31-43 (1981) を参照のこと(引用により本願に組み込まれる)。
不溶性ポリマーの他の例は、ポリビニルエステル、ポリビニルアセタール、ポリアクリル酸エステル、ブタジエンスチレンコポリマーなどを含む。
コーティングを施した顆粒が錠剤に成形またはカプセルに封入された時点で、錠剤またはカプセルは、pH7.0〜8.0で溶解する腸溶コーティングでコーティング処理することができる。このようなpH依存性腸溶剤の1つには、腸液中で溶解するが胃液中では溶解しないEudragit L/Sがある。胃液による溶出には抵抗するが、小腸エステラーゼの加水分解作用により容易に崩壊するセルロースアセテートフタレート(CAP)などの他の腸溶コーティング剤を使用できる。
特に選ばれた腸溶コーティング剤および徐放性コーティング剤は、4〜8時間またはそれ以上にわたって徐放性で、好ましくは実質的に一定の放出および製剤が回腸に到達するまでの遅延放出を提供できる。さらに、本発明の徐放性組成物は、1日1回投与されるとき、1日1回投与される等しい投与量のコレカルシフェロール/エルゴカルシフェロールの即時放出組成物と比較して、実質的に一定の管腔内、細胞内および血中ビタミンD濃度を適切に提供する。
本剤形はまた、アジュバント、例えば保存アジュバントまたは安定アジュバントを含む。本剤形はまた、他の治療上有効な物質を含むこともでき、あるいは本明細書および請求項に記載の化合物の2以上を混合物で含有することもできる。
好都合には、他の治療剤と共に、コレカルシフェロール、エルゴカルシフェロールまたはそれらの組み合わせは、上記の実施形態に従って経口投与できる。どちらかのビタミンまたはそれらの組み合わせの予期される最低経口投与量は、使用される場合、投薬単位当たり少なくとも200 IU、投薬単位当たり少なくとも500 IU、投薬単位当たり少なくとも1,500 IUおよび投薬単位当たり少なくとも2,000 IUを含む。どちらかのビタミンまたはそれらの組み合わせの予期される最大経口投与量は、使用される場合、投薬単位当たり200,000 IU、投薬単位当たり50,000 IU、投薬単位当たり10,000 IUおよび投薬単位当たり5,000 IUを含む。どちらかのビタミンまたはそれらの組み合わせの予期される経口投与量範囲は、使用される場合、投薬単位当たり200 IU〜投薬単位当たり200,000 IU、投薬単位当たり500 IU〜投薬単位当たり50,000 IU、投薬単位当たり1,500 IU〜投薬単位当たり10,000 IUおよび投薬単位当たり2,000 IU〜投薬単位当たり5,000 IUを含む。好ましくは、本剤形は、前述の投与量が同様に1日当たりIUに相当する値に一致するように連日投与される。本発明の化合物が他の治療剤と組み合わせて投与される場合、投与される組み合わせにおける化合物のそれぞれの割合は、取り組まれる特定の疾病状態によって決まる。例えば、コレカルシフェロールおよび/またはエルゴカルシフェロールと、カルシウム塩(カルシウムサプリメントまたは食物リン酸結合剤として意図された)、ビスホスホネート、カルシウム擬態薬、ニコチン酸、鉄、リン酸結合剤、活性ビタミンDステロール、25−ヒドロキシビタミンD、CYP24発現または活性の阻害剤、血糖および高血圧のコントロール薬ならびに種々の抗腫瘍剤の1以上とを投与することを選択することができる。実際、疾病状態(例えば慢性腎疾患)の治療処置が望ましい結果である場合、高投与量の本発明の化合物が用いられ、予防目的には一般に低投与量が用いられるが、任意の症例において投与される特定の投与量は、当業者に公知なように、投与される特定の化合物、治療される疾患、被験者の状態ならびに薬剤の活性または被験者の反応を修飾する他の関連性のある医学的事実に従って調整されることが理解されなければならない。
コレカルシフェロールおよびエルゴカルシフェロールの組み合わせを徐放性経口ドラッグデリバリーシステムに組み込むことにより、得られた製剤がビタミンD3およびビタミンD2内分泌系の両方を維持するのに有用となり得る。現在入手可能な経口ビタミンDサプリメントは、ちょうど両方の系を維持する。
実施例
本発明は以下の実施例によりさらに詳細に説明されるが、これを本発明の範囲を限定するものと解釈してはならない。
実施例1
徐放性製剤の1つの実施形態
黄色精製蜜蝋および分留ココナッツ油を1:1の比率で混合し、均一な混合物が得られるまで連続して撹拌しながら75℃に加熱する。ワックス混合物を均質化しながらおおよそ45℃に冷却する。1:1の比率のコレカルシフェロールおよびエルゴカルシフェロールを無水エタノールに溶解し、均質化を続けながら、このエタノール溶液を溶融ワックス混合物に加える。加えるエタノールの量は、1〜2容量%の範囲である。混合物が均一になるまで混合を続ける。軟ゼラチンカプセルに均一な混合物が装填される。カプセルを直ちに洗浄し、加工滑沢剤(単数または複数)を除去し、ゼラチンシェルを架橋させるためにアセトアルデヒド水溶液に短時間浸漬する。アセトアルデヒド溶液の濃度および浸漬時間は、近赤外分光光度計による測定で望ましい程度に架橋が達成されるように選択する。出来上がったカプセルを洗浄し、乾燥し、包装する。
実施例2
イヌにおける薬物動態試験
20頭の雄のビーグル犬を2つの同等の群に無作為に分割し、続く30日間、サプリメントのビタミンDを投与しない。この期間の終わりに、群#1の各イヌに、実施例1で開示した徐放性製剤と同様な徐放性製剤に調製されたエルゴカルシフェロール10,000 IUを含有する単一の軟ゼラチンカプセルを投与する。他の群(群#2)における各イヌに中鎖トリグリセリドオイルに溶解したエルゴカルシフェロール10,000 IUを含有する単一の即時放出軟ゼラチンカプセルを投与する。すべてのイヌは、投与前に少なくとも8時間絶食させる。投与後、各イヌから0、0.5、1、1.5、2、3、4、6、9、15、24、36および72時間目に採血する。エルゴカルシフェロールおよび25−ヒドロキシビタミンDの含有濃度について採取した血液を分析し、処置群に関してデータを分析する。群#1におけるイヌは、エルゴカルシフェロールおよび25−ヒドロキシビタミンDの平均血中濃度において、群#2におけるイヌよりも、緩慢な上昇および低い最大値(Cmax)を示す。しかしながら、群#1におけるイヌは、群#1におけるCmaxがより低いにもかかわらず、群#2におけるイヌよりも、エルゴカルシフェロールおよび25−ヒドロキシビタミンD2の平均血中濃度のより長期の上昇を示す。投与前のバックグラウンド濃度(t=0の時点で記録)で補正した平均曲線下面積(AUC)は、エルゴカルシフェロールおよび25−ヒドロキシビタミンDの両方に関して群#1の方がかなり大きい。これらの手順により、本明細書記載の製剤中のエルゴカルシフェロールのイヌへの投与は、即時放出のために(中鎖トリグリセリドオイル中に)製剤化されたエルゴカルシフェロールの同一量の投与後よりもずっと徐々に上昇し、より安定に維持される、エルゴカルシフェロールおよび25−ヒドロキシビタミンDの血中濃度をもたらすことが明らかとなる。群#1におけるエルゴカルシフェロールの血中濃度のより大きなAUCは、本明細書記載のように製剤化されたエルゴカルシフェロールのバイオアベイラビリティーが顕著に改善されたことを明らかにする。群#1における血中25−ヒドロキシビタミンD濃度のより大きなAUCは、本明細書記載のように製剤化されたエルゴカルシフェロールはより効率的に25−ヒドロキシビタミンDに変換されることを明らかにする。この差異は、より高いバイオアベイラビリティーおよび異化クリアランスの減少に基づくと考えられる。本明細書記載の製剤の使用による、エルゴカルシフェロールおよび25−ヒドロキシビタミンDの血中濃度における投与後“スパイク”の排除または抑制により、CYP24の誘導が抑制され、それにより25−ヒドロキシビタミンDの好ましくない異化作用が抑制されると予期される。このように、本発明の組成物および方法により示される利点の1つは、例えば組織中のmRNAまたはタンパク質濃度により測定される、循環CYP24または肝臓、腎臓もしくは腸におけるCYP24の誘導の低下であることができる。
さらにまた、エルゴカルシフェロールの経回腸吸収は、吸収されたエルゴカルシフェロールをキロミクロンと比較して血清ビタミンD結合タンパク質(DBP)に振り向けるようにデザインできる本明細書記載の製剤を用いて増加させることができる。DBPに結合しているエルゴカルシフェロールは、肝異化作用からさらに保護されていると考えられる。さらにまた、全部で10,000 IUのエルゴカルシフェロールおよびコレカルシフェロールの混合物は、10,000 IUのエルゴカルシフェロールまたはコレカルシフェロール単独よりも異化作用を受けずらいと期待される。特定の理論に拘束されることを意図しないが、この期待は、エルゴカルシフェロールおよびコレカルシフェロールと関連する異なる代謝経路および異化経路ならびに、ビタミン間の投与量を分割すること(かつ好ましくは徐放性製剤を用いること)は、CYP24および他の異化酵素から両方のビタミンを保護するのに役立つことができることに基づいている。
実施例3
健常ボランティアにおける薬物動態試験
年齢18〜24歳の健常な非肥満成人16名が、二重盲検法を用いてエルゴカルシフェロールの2製剤の継続的な投与を受ける、11週薬物動態試験に参加する。製剤の1つ(製剤#1)は、実施例1で開示した徐放性製剤と同様な徐放性製剤に調製されたエルゴカルシフェロール50,000 IUを含有する軟ゼラチンカプセルである。他の製剤(製剤#2)は、中鎖トリグリセリドオイルに溶解したエルゴカルシフェロール50,000 IUを含有する、同じ外観の即時放出軟ゼラチンカプセルである。試験開始に先立って60日間、すべての被験者は他のビタミンDサプリメントの摂取をやめ、これを試験終了まで続ける。試験の1、3および5日目に、治療前ベースライン値を確定するために、すべての被験者は朝の空腹時の血液サンプルを提供する。8日目の朝に、被験者はさらなる空腹時の血液サンプル(t=0)を提供し、2つの処置群の1つに無作為に割り付けられる。朝食をとる前に、どちらの群にも単一試験カプセルを投与する。1つの群には製剤#1のカプセルを投与し、他の群には製剤#2のカプセルを投与する。投与後0.5、1、1.5、2、3、4、6、8、10、12、15、24、36、48、72および108時間目に各被験者から採血する。70日目の朝に、被験者は朝の空腹時の血液サンプル(t=0)を提供し、朝食をとる前に他の試験製剤の単一カプセルを投与される。投与後0.5、1、1.5、2、3、4、6、8、10、12、15、24、36、48、72および108時間目に各被験者から血液を再度採取する。エルゴカルシフェロールおよび25−ヒドロキシビタミンDの含有濃度に関してすべての採取した血液を分析し、ベースライン値の補正後に処置製剤に関してデータを分析する。製剤#1は、エルゴカルシフェロールおよび25−ヒドロキシビタミンDの平均血中濃度において、製剤#2よりも緩慢な上昇および低い(Cmax)をもたらすことが見いだされる。しかしながら、製剤#1はまた、記録されるCmaxが低いにもかかわらず、製剤#2と比較して、エルゴカルシフェロールおよび25−ヒドロキシビタミンD2の平均血中濃度のより長期的な上昇をもたらす。製剤#1の投与後、平均AUCはエルゴカルシフェロールおよび25−ヒドロキシビタミンDの両方に関してかなり大きい。これらの手順により、本発明記載の製剤中のエルゴカルシフェロールの健常なヒト成人への投与は、即時放出のために(中鎖トリグリセリドオイル中に)製剤化されたエルゴカルシフェロールの同一量の投与後よりもずっと徐々に上昇し、より安定に維持される、エルゴカルシフェロールおよび25−ヒドロキシビタミンDの血中濃度をもたらすことを明らかにできる。製剤#1によるビタミンD投与後の血中濃度に関するAUCがより大きいことにより、本明細書記載のとおり製剤化されたエルゴカルシフェロールのバイオアベイラビリティーがより優れていることが明らかになる。製剤#1後の25−ヒドロキシビタミンDの血中濃度に関するAUCがより大きいことにより、本明細書記載のとおり製剤化されたエルゴカルシフェロールは、より効率的に25−ヒドロキシビタミンDに変換されることが明らかになる。
実施例4
ビタミンD不足である健常な成人男性ボランティアにおける有効性試験
血清25−ヒドロキシビタミンDの最適濃度(30ng/mLを超える)への回復における3つの異なるビタミンD製剤の効果を、ビタミンD不足と診断された健常な非肥満男性の23日間試験で試験する。製剤の1つ(製剤#1)は、コレカルシフェロール1,250 IUおよびエルゴカルシフェロール1,250 IUの混合物を含み本明細書記載のように調製される、ビタミンD 2,500 IUを含有する軟ゼラチンカプセルである。第2の製剤(製剤#2)は、中鎖トリグリセリドオイルに溶解したエルゴカルシフェロール50,000 IUを含有する、同じ外観の即時放出軟ゼラチンカプセルである。第3の製剤(製剤#3)は、中鎖トリグリセリドオイルに溶解したコレカルシフェロール50,000 IUを含有する、同様に同じ外観の即時放出軟ゼラチンカプセルである。合計100名の健常な白人およびアメリカ黒人の男性がこの試験に参加する。全員年齢30〜45であり、血清25−ヒドロキシビタミンD濃度15〜29ng/mL(両端を含む)を有する。すべての被験者は、試験開始に先立って60日間他のビタミンDサプリメントの摂取をやめ、これを試験終了まで続ける。この試験の1日目および2日目に、血清25−ヒドロキシビタミンDの治療前ベースライン値を確定するために、すべての被験者は朝の空腹時の血液サンプルを提供する。3日目の朝に、被験者はさらなる空腹時の血液サンプル(t=0)を提供し、4つの処置群の1つに無作為に割り付けられ、朝食をとる前に単一試験カプセルを投与される。群#1の被験者はそれぞれ製剤#1の単一カプセルを投与され、群#2および#3の各被験者は、それぞれ製剤#2および製剤#3の単一カプセルを投与される。群#4の被験者はマッチングプラセボカプセルを投与される。群#1の被験者は、それぞれ、4日目から22日目の朝の朝食前に製剤#1のさらなるカプセルを投与されるが、群#2、#3および#4の被験者はさらなるカプセルを投与されない。群#1、#2および#3の被験者は、試験期間を通して総量50,000 IUのビタミンDを投与される。処置群にかかわらず、4、5、6、10、17および23日目(すなわち投与開始後1、2、3、7、14および20日目)に、各被験者から朝の空腹時の血液サンプルを採取する。ビタミンDおよび25−ヒドロキシビタミンDの含有濃度に関してすべての採取した血液を分析し、ベースラインの補正後、処置群に関してデータを分析する。全4処置群の被験者は、1日目から3日目までに採取された空腹時の血液サンプルの分析に基づいて、平均ベースライン血清全ビタミンD濃度おおよそ8〜10nmol/Lおよびベースライン血清25−ヒドロキシビタミンD濃度おおよそ16〜18ng/mLを示す。群#4(対照群)の被験者は、試験期間を通して平均血清ビタミンDまたは平均血清25−ヒドロキシビタミンDのいずれにおいても有意な変化を示さない。群#1の被験者は、試験期間中おおよそ2〜5nmol/Lの範囲で血清ビタミンDの平均上昇を示し、平均血清25−ヒドロキシビタミンDは着実に上昇し、23日目にはおおよそ37ng/mLに達する。これとは著しく異なり、群#2および#3の被験者は投与の24時間後までに25nmol/Lを超える血液のビタミンDの平均上昇を示し、次いでこれは次の週を通してベースラインの方に減少し、試験の終了のかなり前にベースラインに達する。群#2の被験者は、投与後、最初の数日間は平均血清25−ヒドロキシビタミンDの上昇を示し、これは25ng/mLより少し大きい最大値に達し、その後急速に低下する。試験終了までには、血清25−ヒドロキシビタミンDは群#2のベースラインよりも著しく低下している。群#3の被験者は、投与後、最初の2週間まで平均血清25−ヒドロキシビタミンDの継続的な上昇を示し、その後これは徐々に漸進的に低下する。試験終了までに平均血清25−ヒドロキシビタミンDは30ng/mL以下になっており、治療前ベースラインよりもわずかおおよそ11ng/mL高いだけになる。この試験からのデータにより、本明細書記載のように製剤化され、1日当たり2,500 IUの1日量を20日間投与する、ビタミンD 50,000 IUの投与は、経口ビタミンD補充療法に関して現在のところNKFおよび他の指導的な専門家により推奨されている、単回投与で投与されるエルゴカルシフェロールまたはコレカルシフェロールのいずれかの50,000 IUの即時放出製剤よりも、25−ヒドロキシビタミンDの低い血清濃度を最適濃度に回復させるのに実質的により効果的であることを明らかにすることができる。
実施例5
ビタミンD欠乏を示す健常な閉経後ボランティアにおける有効性および安全性に関する試験
血清25−ヒドロキシビタミンDの最適濃度(30ng/mLを超える)への回復における2つの異なるビタミンD製剤の有効性および安全性を、ビタミンD不足と診断された健常な非肥満閉経期の女性の1年試験で試験する。製剤の1つ(製剤#1)は、コレカルシフェロール1,000 IUを含有する、実施例1記載の徐放性製剤と同様な徐放性製剤に調製される軟ゼラチンカプセルである。第2の製剤(製剤#2)は、中鎖トリグリセリドオイルに溶解したエルゴカルシフェロール1,000 IUを含有する、同じ外観の即時放出軟ゼラチンカプセルである。合計350名の健常な白人、アジア人、ラテンアメリカ人およびアメリカ黒人の女性が本試験に参加する。全員少なくとも閉経後5年であり、血清25−ヒドロキシビタミンD濃度15ng/mL未満を有する。登録に先立って、血清カルシウム、血漿インタクトPTH、血清25−ヒドロキシビタミンDおよび24時間尿カルシウム排泄の治療前ベースライン値を確定するために、すべての被験者は、少なくとも1週間離れた、朝の空腹時の血液サンプル2つおよび24時間尿採取物2つを提供する。1日目の朝に、被験者は7つの処置群のうちの1つに無作為に割り付けられ、2つの試験調製物またはマッチングプラセボを連日投与される。処置群のうちの3つは、それぞれ1日当たり製剤#1の1、2または4カプセルを自己投与し、他の3群は、それぞれ1日当たり製剤#2の1、2または4カプセルを自己投与する。残った処置群は1日当たり1つのプラセボカプセルを自己投与する。すべての投与は、朝、朝食前に行う。血清カルシウム、血漿インタクトPTH、血清25−ヒドロキシビタミンDおよび24時間尿カルシウム排泄の測定のために、年4回、さらなる空腹時の血液サンプルおよび24時間尿採取物を各被験者から得る。試験を通じて、すべての被験者は、栄養士の継続的指導の下に、元素カルシウム1日摂取量おおよそ1,000〜1,500mg(自己選択食および、必要に応じてカルシウムサプリメントから)を厳守する。試験の終わりに、適切なベースライン値の補正後に、処置群および試験製剤に関して検査データの分析を行う。全7群は、血清25−ヒドロキシビタミンD(範囲:10.7ng/mL〜11.9ng/mL)、血漿インタクトPTH(範囲:45.3pg/mL〜52.1pg/mL)、血清カルシウム(範囲:9.15mg/dL〜9.31mg/dL)および24時間尿カルシウム(範囲:55mg/日〜64mg/日)に関して、同等の平均ベースライン値を有する。試験期間を通じて、プラセボ(対照)群において、検査平均値のいずれにおいても有意な変化は見られない。製剤#1を投与される3つの処置群および製剤#2を投与される3つの処置群における被験者は、投与の最初の6ヶ月の間、血清25−ヒドロキシビタミンD濃度の漸増を示し、その後定常状態濃度に達する。試験の終わりにおける、1日量に対する血清25−ヒドロキシビタミンDの平均上昇の分析は、両方の製剤に関して近線形直接用量応答関係を示す。しかしながら、製剤#1に関する用量応答関係の勾配は製剤#2に関するものよりも著しく大きい。6、9および12ヶ月目における、1日量に対する血漿インタクトPTHの平均変化の分析は、製剤#1の最高投与量においてよりも、製剤#2の最高投与量においての方がインタクトPTHがより低下するという、両方の製剤に関する非線形逆相関関係を明らかにする。ビタミンDを投与されるすべての処置群において、平均血清カルシウムおよび平均24時間尿カルシウムはベースラインから著しく上昇し、製剤#2の高投与量において、製剤#1の同等の投与量におけるよりも著しく高い。250mgを超える24時間尿カルシウムで定義される高カルシウム尿症発作および9.5mg/dLを超える血清カルシウムで定義される高カルシウム血症は、製剤#1の最高投与量と比較して、製剤#2の最高投与量で処置した被験者において著しく多く観察される。この試験からのデータは、製剤#1は、製剤#2よりも血清25−ヒドロキシビタミンDを上昇させる上でより効果的であり、製剤#1はカルシウムおよびPTH代謝に関連した副作用を引き起こすことがかなり少ないことを示すことができる。
実施例6
年齢18〜24歳の健常な非肥満成人16名が、二重盲検法を用いて2製剤の継続的な投与を受ける薬物動態試験に参加する。製剤の1つは、徐放性製剤に調製されたコレカルシフェロール1,500 IUおよびエルゴカルシフェロール1,500 IUの組み合わせを含有する軟ゼラチンカプセル(製剤#1)である。他の製剤は、中鎖トリグリセリドオイルに溶解したコレカルシフェロール1,500 IUおよびエルゴカルシフェロール1,500 IUの組み合わせを含有する同じ外観の即時放出軟ゼラチンカプセル(製剤#2)である。試験開始に先立って60日間、被験者は他のビタミンDサプリメントの摂取をやめ、これを試験終了まで続ける。試験の1、3および5日目に、治療前ベースライン値を確定するために、すべての被験者は朝の空腹時の血液サンプルを提供する。8日目の朝に、被験者はさらなる空腹時の血液サンプル(t=0)を提供し、2つの処置群の1つに無作為に割り付けられる。朝食をとる前に、どちらの群にも単一試験カプセルを投与する。1つの群には製剤#1のカプセルを投与し、他の群には製剤#2のカプセルを投与する。投与後0.5、1、1.5、2、3、4、6、8、10、12、15、24、36、48、72および108時間目に各被験者から採血する。コレカルシフェロール、エルゴカルシフェロールおよび25−ヒドロキシビタミンDの含有濃度に関してすべての採取した血液を分析し、ベースライン値の補正後に処置製剤に関してデータを分析する。
慢性腎疾患患者におけるビタミンD低下症の予防と治療のための徐放性製剤(血清全25−ヒドロキシビタミンDを目標値(≧30ng/mL)に回復する)の有効性および安全性を2ヶ月試験で試験する。合計100名の健常な白人およびアメリカ黒人の男性がこの試験に参加する。全員年齢30〜45であり、血清25−ヒドロキシビタミンD濃度15〜29ng/mL(両端を含む)を有する。すべての被験者は、試験開始の前に60日間他のビタミンDサプリメントの摂取をやめ、これを試験終了まで続ける。この試験の1日目および2日目に、血清25−ヒドロキシビタミンDの治療前ベースライン値を確定するために、すべての被験者は朝の空腹時の血液サンプルを提供する。3日目の朝に、被験者はさらなる空腹時の血液サンプル(t=0)を提供し、4つの処置群の1つに無作為に割り付けられ、朝食をとる前に単一試験カプセルを投与される。群#1の被験者はそれぞれ製剤#1の単一カプセルを投与され、群#2の被験者はそれぞれ製剤#2の単一カプセルを投与される。群#1の被験者は、それぞれ、4日目から22日目の朝の朝食前に製剤#1のさらなるカプセルを投与されるが、群#2の被験者はさらなるカプセルを投与されない。処置群にかかわらず、4、5、6、10、17および23日目(すなわち投与開始後1、2、3、7、14および20日目)に、各被験者から朝の空腹時の血液サンプルを採取する。ビタミンDおよび25−ヒドロキシビタミンDの含有濃度に関してすべての採取した血液を分析し、ベースラインの補正後、処置群に関してデータを分析する
本明細書に記載のすべての特許、出版物および引用文献は、引用により本願に組み込まれる。本開示および組み込まれた特許、出版物および引用文献との間に矛盾が存在する場合、本開示が支配する。

Claims (26)

  1. コレカルシフェロールおよびエルゴカルシフェロールを含む遅延または持続放出経口医薬製剤であって、患者の回腸に到達するまでコレカルシフェロールおよびエルゴカルシフェロールの実質的な放出を遅らせる、前記医薬製剤。
  2. 実質的に一定速度でコレカルシフェロールおよびエルゴカルシフェロールを放出する、請求項1記載の医薬製剤。
  3. 少なくとも4時間にわたって実質的に一定速度でコレカルシフェロールおよびエルゴカルシフェロールを放出する、請求項2記載の医薬製剤。
  4. コレカルシフェロールおよびエルゴカルシフェロールを全部で少なくとも500 IU含む、請求項1から3のいずれか1項記載の医薬製剤。
  5. コレカルシフェロールおよびエルゴカルシフェロールを全部で少なくとも1,500 IU含む、請求項1から4のいずれか1項記載の医薬製剤。
  6. コレカルシフェロールおよびエルゴカルシフェロールを全部で少なくとも2,000 IU含む、請求項1から5のいずれか1項記載の医薬製剤。
  7. コレカルシフェロールおよびエルゴカルシフェロールを全部で50,000 IU未満含む、請求項1から6のいずれか1項記載の医薬製剤。
  8. コレカルシフェロールおよびエルゴカルシフェロールを全部で10,000 IU以下含む、請求項1から7のいずれか1項記載の医薬製剤。
  9. コレカルシフェロールおよびエルゴカルシフェロールを全部で5,000 IU以下含む、請求項1から8のいずれか1項記載の医薬製剤。
  10. コレカルシフェロールおよびエルゴカルシフェロールを全量で500 IU〜50,000 IU含む、請求項1から3のいずれか1項記載の医薬製剤。
  11. コレカルシフェロール1,500 IUおよびエルゴカルシフェロール1,500 IUを含む、請求項1から3のいずれか1項記載の医薬製剤。
  12. 腸溶コーティングをさらに含む、請求項から10のいずれか1項記載の医薬製剤。
  13. 腸溶コーティングが7.0〜8.0のpHで少なくとも部分的に溶解する請求項12記載の医薬製剤。
  14. カルシウム擬態薬をさらに含む、請求項1から13のいずれか1項記載の医薬製剤。
  15. コレカルシフェロールおよび/またはエルゴカルシフェロールの徐放性製剤の製造方法であって、望ましい量のコレカルシフェロールおよび/またはエルゴカルシフェロールを最小量のUSP等級無水エタノールに溶解し、前記溶液と1以上の医薬品等級賦形剤とを混合して、胃内で実質的に消化に対して抵抗性であって下位腸で徐々に崩壊するマトリックスを形成させることを含む前記製造方法。
  16. 25-ヒドロキシビタミンDの血清濃度が30ng/ml未満である25-ヒドロキシビタミンD不足または欠損の治療用である、請求項1〜14のいずれか1項記載の医薬製剤。
  17. コレカシルフェロールおよびエルゴカルシフェロールの全血清濃度を少なくとも2日間の間10nmol/l以下の量で上昇させる、請求項16記載の医薬製剤。
  18. 25−ヒドロキシビタミンD3および25−ヒドロキシビタミンD2の全血清濃度を、少なくとも2日間にわたって3ng/mL以下の量で上昇させる、請求項16または17のいずれか1項記載の医薬製剤。
  19. コレカルシフェロールおよびエルゴカルシフェロールが1日あたり全部で少なくとも500 IU投与されるように用いられることを特徴とする、請求項16〜18のいずれか1項記載の医薬製剤。
  20. コレカルシフェロールおよびエルゴカルシフェロールが1日あたり全部で少なくとも1,500 IU投与されるように用いられることを特徴とする、請求項19記載の医薬製剤。
  21. コレカルシフェロールおよびエルゴカルシフェロールが1日あたり全部で少なくとも2,000 IU投与されるように用いられることを特徴とする、請求項20記載の医薬製剤。
  22. コレカルシフェロールおよびエルゴカルシフェロールが1日あたり全部で少なくとも50,000 IU以下の量で投与されるように用いられることを特徴とする、請求項16〜18のいずれか1項記載の医薬製剤。
  23. コレカルシフェロールおよびエルゴカルシフェロールが1日あたり全部で少なくとも10,000 IU以下の量で投与されるように用いられることを特徴とする、請求項22記載の医薬製剤。
  24. コレカルシフェロールおよびエルゴカルシフェロールが1日あたり全部で少なくとも5,000 IU以下の量で投与されるように用いられることを特徴とする、請求項23記載の医薬製剤。
  25. コレカルシフェロールおよびエルゴカルシフェロールが1日あたり全部で500 IU〜50,000 IUの量で投与されるように用いられることを特徴とする、請求項16〜18のいずれか1項記載の医薬製剤。
  26. 1日あたり1,500 IUのコレカルシフェロールおよび1,500 IUのエルゴカルシフェロールが投与されるように用いられることを特徴とする、請求項16〜18のいずれか1項記載の医薬製剤。
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