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JP5388273B2 - 車両用シートのバックシートフレーム構造および該構造を有する車両用シート - Google Patents

車両用シートのバックシートフレーム構造および該構造を有する車両用シート Download PDF

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Description

本発明は、車両用シートのバックシートフレーム構造および該構造を有する車両用シートに関し、より詳細には、バックシート上部の車両後方への変形を抑制することが可能な車両用シートのバックシートフレーム構造および該構造を有する車両用シートに関する。
従来から、乗員に作用する衝撃荷重を低減することが可能な車両座席のシートバックフレーム構造が採用されている。たとえば、特許文献1は、その一例を開示する。
この車両座席のシートバックフレーム構造は、ほぼコの字形に一体成形されたシートバックフレームと、このシートバックフレームの左右の縦フレーム間を互いに連結する管体と、この管体に設けられ、車両の後面衝突時、乗員の衝突による衝撃荷重で曲げ変形し得るように偏平された偏平管部とを有する。
このような構成のシートバックフレーム構造によれば、左右の縦フレーム同士を管体で車幅方向に連結することにより、閉断面構造(ボックス構造)とするとともに、偏平管部が衝突の際、縦フレームの曲げ破壊を実質的に抑制するエネルギ吸収部として機能することにより、衝突時の乗員の安全を確保することが可能となる。
しかしながら、このような従来のシートバックフレーム構造には、以下のような技術的問題点が存する。
すなわち、シートバックフレーム構造を閉断面構造(ボックス構造)化するとともにエネルギ吸収部を設けることにより、シートバックフレーム構造の強度あるいは剛性をより向上し、以て衝撃荷重が負荷されるときに車両用シートの構造健全性を維持することは可能となったが、その反面、車両後方への衝撃荷重によりヘッドレストが設置されるバックシートの上部が車両後方側に倒れこむような変形を生じる。
また、通常の車両の運転時、アクセルあるいはブレーキの突然の踏み込み、あるいは凹凸のある路面を走行することに伴い、バックシートの上部が僅かに変形、あるいは振動を引き起こし、これが運転手の乗り心地に悪影響を与えることがある。
このようなバックシートの上部の変形を防止するために、バックシートのサイドフレームを高剛性化するとすれば、バックシート自体の重量の増大化を引き起こし、車両の燃費にも悪影響をおよぼす。

特開平11−32865号公報
以上の技術的問題点に鑑み、本発明の目的は、車両用シートのバックシートの重量増大を生じることなしに、車両の通常運転時には、乗員の頭部を支持するバックシートの上部の微小な変形を防止することにより、乗り心地を確保するとともに、車両の衝突の際、特に車両後方側に衝撃荷重が負荷される場合に、バックシートの大変形を防止することにより、乗員の安全を確保することが可能な車両用シートのバックシートフレーム構造を提供することにある。
上記課題を達成するために、本発明に係る車両用シートのバックシートフレーム構造は、車両用シートのバックシートフレーム構造であって、
クッションシートフレーム構造に対して傾動可能となるように、下端部が該クッションシートフレーム構造の後端部に連結されたバックシートフレーム構造を有し、
該バックシートフレーム構造は、それぞれ上下方向に延設する一対のサイドフレームを有し、
上端が前記一対のサイドフレームの側部で、下端が前記バックシートフレーム構造の回転中心より車両の前部側で、前記バックシートフレーム構造にそれぞれ固定された斜張ワイヤーが、該一対のサイドフレームの両方の側部に設けられ、
該斜張ワイヤーには、前記斜張ワイヤーに発生する初期引張力を調整するための引張力調整手段が設けられている、構成としている。
このような構成の車両用シートのバックシートフレーム構造によれば、上下方向に延設する一対のサイドフレームそれぞれの側部に、車両の前方向に進むにつれて下がる向きに傾斜した斜張ワイヤーがバックシートフレーム構造に設けられ、引張力調整手段によりそれぞれの側部に設けた斜張ワイヤーに発生する初期引張力を調整することにより、通常運転の際、ヘッドレストが設置されるバックシートのフレーム構造の上部に対して常時車両の前方向に初期引張力が負荷されていることから、バックシートのフレーム構造の上部が車両の後方向に微小変形することにより、乗員の乗り心地を損ねることを防止することが可能となる。その一方、衝突時のような非常時の際、たとえば後突のような場合、バックシートに対して車両の後方に向かって衝撃荷重が負荷されるところ、このような衝撃荷重に対して、斜張ワイヤーの引張力が抗することにより、バックシートフレーム構造の大変形を防止することに寄与することも可能である。
以上のように、一対のサイドフレーム自体を高剛性化あるいは高強度化を達成するために重量の増大化を生じさせることなしに、車両の通常運転時には、乗員の頭部を支持するバックシートの上部の微小な変形を防止することにより、乗り心地を確保するとともに、車両の衝突の際、特に車両後方側に衝撃荷重が負荷される場合に、バックシートの大変形を防止することにより、乗員の安全を確保することが可能となる。
また、前記斜張ワイヤーは、車両後方側への荷重が前記バックシートフレーム構造に負荷されたときに、該荷重に基づいて前記バックシートフレーム構造に対して作用するモーメントを軽減するように前記バックシートフレーム構造に対して引張力を作用する一方、外部圧縮力に対して抗しない特性を有するのがよい。
さらに、プーリーが、該一対のサイドフレームの少なくとも一方の側部および前記バックシートフレーム構造にそれぞれ設けられ、前記斜張ワイヤーは、無端状とされ、両プーリー間に掛け渡されるのがよい。
さらにまた、前記引張力調整手段は、ボルトーナット機構からなり、ボルトのナットに対するねじ込み量を調整することにより、初期引張力を調整するのがよい。
加えて、前記クッションシートフレーム構造と前記バックシートフレーム構造との間に、車両用リクライナーが設けられ、前記バックシートが前記クッションシートに対して傾動可能とされ、該車両用リクライナーは、
クッションシートフレーム構造に固定されるベース部材と、
該ベース部材に回動可能に支持され、かつバックシートフレーム構造に固定された回動アームと、
前記ベース部材および前記回動アーム間に介装され、前記ベース部材に形成された凹部側壁により進退自在に案内され、かつ先端に外歯を形成した摺動係止部材と、
前記回動アームに形成した内歯に噛合する係止位置と、内歯から離間する係止解除位置との間で該摺動係止部材を移動させる回動可能なカムと、
該カムを回動させる操作レバーとを有し、
前記回動アームは、内部に円形開口を有する、所定板厚の環状リングからなり、
該環状リングの内周面に沿って前記内歯が設けられ、該環状リングの外周面には、バックシートフレーム構造に固定する複数の取付ブラケット部が設けられ、
さらに、前記環状リングの外周面には、前記斜張ワイヤーの下端を固定するための取付ブラケット部が付設され、
さらに、前記ベース部材と反対側から前記円形開口を塞ぐ蓋板を有し、
前記蓋板の板厚は、前記環状リングの板厚より薄い、のがよい。
さらに、前記バックフレーム構造は、前記一対のサイドフレームの上端同士を連結するアッパーフレームを有し、
前記斜張ワイヤーの上端は、前記一対のサイドフレームと前記アッパーフレームとの重なり連結部に設けられるのがよい。
またさらに、前記一対のサイドフレームの各側部に前記斜張ワイヤーが設けられるのがよい。
加えて、前記斜張ワイヤーは、金属製ワイヤーからなるのがよい。
また、前記斜張ワイヤーは、CFRP製ワイヤーからなるのがよい。
さらにまた、前記斜張ワイヤーの前記下端と前記バックシートの回転中心とを結ぶ線と、前記斜張ワイヤーの前記上端と前記バックシートの回転中心とを結ぶ線とが直交するように、前記斜張ワイヤーを設けるのがよい。
また、前記斜張ワイヤーは、単一ワイヤーからなり、各端には、固定用リングが設けられるのがよい。
加えて、前記一対のサイドフレームは、外郭形状を構成する車両の前後方向に有幅の主側面部、該主側面部の前後縁より内方に立ち上がる張り出しフランジ部とが断面内向きのコ字形状に形成され、該主側面部の幅は、高さ方向に実質的に一定であるのがよい。
上記課題を達成するために、本発明に係る車両用シートは、
請求項1ないし11のいずれか1項に記載の前記車両用シートのフレーム構造全体を覆うように設けられたパッドと、前記車両用シートのフレーム構造および該パッド全体を覆うように設けられた袋状の表皮とを有する構成としている。
このような構成の車両用シートによれば、このような構成の車両用シートのバックシートフレーム構造に対してパッドをあてがうことにより車両用シートとして完成する場合、斜張ワイヤー自体をパッドの中に埋設させることで、車両用シートの外観を損なうことが防止される。
本発明に係る車両用シートのバックシートフレーム構造によれば、上下方向に延設する一対のサイドフレームそれぞれの側部に、車両の前方向に進むにつれて下がる向きに傾斜した斜張ワイヤーがバックシートフレーム構造に設けられ、引張力調整手段によりそれぞれの側部に設けた斜張ワイヤーに発生する初期引張力を調整することにより、通常運転の際、バックシートのフレーム構造の上部に対して常時車両の前方向に初期引張力が負荷されていることから、バックシートのフレーム構造の上部が車両の後方向に微小変形することにより、乗員の乗り心地を損ねることを防止することが可能となる。その一方、衝突時のような非常時の際、たとえば後突のような場合、バックシートに対して車両の後方に向かって衝撃荷重が負荷されるところ、このような衝撃荷重に対して、斜張ワイヤーの引張力が抗することにより、バックシートフレーム構造の大変形を防止することに寄与することも可能である。
本発明に係る車両用シートによれば、このような構成の車両用シートのフレーム構造に対してパッドをあてがうことにより車両用シートとして完成する場合、斜張ワイヤー自体をパッドの中に埋設させることで、車両用シートの外観を損なうことが防止される。
本発明に係る車両用シートの実施形態を図面を参照しながら、自動車のフロントシートに適用される場合を例として、以下に詳細に説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る車両用シートの斜視図である。図2は、本発明の第1実施形態に係る車両用シートの側面図である。図3は、図1の線A−Aに沿う断面図である。図4は、図1のA部詳細図である。図5は、図1の線B−Bに沿う断面図である。図6は、本発明の第1実施形態に係る車両用リクライナーの概略斜視図である。図7は、本発明の第1実施形態に係る車両用リクライナーの側面図である。図8は、図7の線A−Aに沿う断面図である。図9は、本発明の第1実施形態に係る車両用リクライナーの概略分解斜視図である。図10は、本発明の第1実施形態に係る車両用リクライナーの摺動係止部材の概略斜視図である。図11は、本発明の第1実施形態に係る車両用リクライナーによるロック状態を示す概略図である。図12は、本発明の第1実施形態に係る車両用リクライナーによるロック解除状態を示す概略図である。図13は、本発明の第1実施形態に係る車両用シートにおいて、車両前方に向かう衝撃荷重が負荷された際にバックシートフレーム構造に生じるモーメント図である。図14は、本発明の第1実施形態に係る車両用シートにおいて、車両後方に向かう衝撃荷重が負荷された際にバックシートフレーム構造に生じるモーメント図である。
図1および図2に示すように、本発明に係る車両用シート100は、車室フロアに固定され、後に説明する斜張ワイヤー102A,Bを有するクッションシートフレーム構造部104と、下端部106がクッションシートフレーム構造部104の後端部108に対して傾動可能に連結され、後に説明する斜張ワイヤー110A,Bを有するバックシートフレーム構造部112と、バックシートフレーム構造部112とクッションシートフレーム構造部104との間に介在するリクライナー構造部114とを有する車両用シートフレーム構造と、車両用シートフレーム構造全体を覆うように設けられたパッド(図示せず)と、前記車両用シートのフレーム構造および該パッド全体を覆うように設けられた袋状の表皮(図示せず)とを有する。図1には、回転軸線X―Xを示す。なお、図1および図2において、車両の前方は、図中右側である。
バックシートフレーム構造部112について説明すれば、バックシートフレーム構造部112は、全体として逆U字状をなし、それぞれ上下方向に延びる一対のサイドフレーム118A,Bと、一対のサイドフレーム118A,Bの各々の上端同士を掛け渡すアッパーフレーム120とを有する。
図3に示すように、一対のサイドフレーム118A,Bの各々は、外郭形状を構成する車両の前後方向に有幅の主側面部122と、主側面部122の前後縁より内方に立ち上がる張り出しフランジ部123A,Bとが断面内向きのコ字形状に形成されている。
逆U字状のバックシートフレーム構造部112の内部に形成される開口部には、フラットマット124が張設され、一対のサイドフレーム118A,Bの上部同士を連結するアッパーメンバー125、一対のサイドフレーム118A,Bの下部同士を連結するロアメンバー127が設けられ、さらに、アッパーフレーム120には、ヘッドレスト(図示せず)取り付け用部材129が付設されている。アッパーフレーム120の両下端部は、一対のサイドフレーム118A,Bと同様に、コ字断面に形成され、それぞれ一対のサイドフレーム118A,Bの上部に嵌合して連結されるようにしてある。
斜張ワイヤー110A,Bについて説明すれば、斜張ワイヤー110A,Bは、一対のサイドフレーム118A,Bの各々の主側面部122に付設されている。いずれの斜張ワイヤー102A,Bも同様な構造であるので、その1つについて、以下に説明する。
斜張ワイヤー110の上端は、一対のサイドフレーム118の側部で、下端がバックシートフレーム構造部112の回転中心より車両の前部側で、バックシートフレーム構造112にそれぞれ固定されて、斜めに張設されている。斜めの角度は、想定される衝撃荷重等に応じて適宜設定すればよい。
より詳細には、斜張ワイヤー110の上端は、一対のサイドフレーム118の上端とアッパーフレーム120との嵌合重なり部126に設けられ、一方斜張ワイヤー110の下端は、後に説明するリクライナー構造部114のブラケット部58に設けられる。これにより、斜張ワイヤー110の上端は、構造的に補強された部位に設けることが可能であり、一方斜張ワイヤー110の下端は、リクライナー構造部114のブラケット部を利用して、位置決めすることが可能となる。
特に、斜張ワイヤー110の上端とバックシートフレーム構造部112の回転中心とを結ぶ線と、斜張ワイヤー110の下端とバックシートフレーム構造部112の回転中心とを結ぶ線とがなるべく直交するように、斜張ワイヤー110を位置決めするのが好ましい。
プーリー128A,Bが、一対のサイドフレーム118の側部およびブラケット部58それぞれに設けられ、斜張ワイヤー110は、無端状とされ、両プーリー128A,B間に掛け渡されている。
斜張ワイヤー110の種類および材質は、たとえば衝突の際に車両用シート100に衝撃荷重が負荷された場合に、このような衝撃荷重の一部を負担しつつ、自身が構造健全性を確保できるような強度あるいは剛性を備える限り任意であるが、たとえば金属製あるいはCFRP製が好ましい。
図4に示すように、斜張ワイヤー110には、ワイヤーの初期引張力調整手段に該当するボルトーナット機構130が設けられている。より詳細には、斜張ワイヤー110の各端には、雄ねじが切られたボルト132A,Bが付設され、一方、各端から内方に向かって雌ねじが切られたボア134A,Bを有するナット136が設けられている。各ボルト132を対応するボア134に対して、螺合することにより、ねじ込み量を調節し、それにより、斜張ワイヤー110を両プーリー128A,Bに掛け渡した状態で、ワイヤーの全体長さを調整し、以ってワイヤーに生じる初期引張力を調整できるようにしている。このような構成によれば、ワイヤーの長さを調整するのに、2本のボルト132A,Bを利用して、2か所においてワイヤーの長さを調整することが可能である。
斜張ワイヤー110は、上述のように、車両の前方に進むにつれて下がる向きに斜めに設置されており、ワイヤーに生じる初期引張力により、斜張ワイヤー110の上端を通じて、バックシートフレーム構造部112の上部に対して、常時車両前方に向かう力が負荷されるようにしてある。このことから、ボルト132のねじ込量は、このような車両前方に向かう力を考慮して定めることにより、車両の通常運転時に、バックシートフレーム構造部112の上部が車両後方に微小変形するのを抑制することが可能となっている。
変形例として、斜張ワイヤー110の一端にはボルト132、他端にはナット136を設け、1本のボルト132のナット136に対するねじ込み量を調節することにより、ワイヤーに生じる初期引張力を調節してもよい。
このように、プーリー128A,B間に無端状のワイヤーを掛け渡す構成とすることにより、実質的にサイドフレーム118の各側において、2本の斜張ワイヤー110を設けたことに等しいにも関わらず、ワイヤーの長さを調整するボルトーナット機構130を単一化することが可能である。
なお、このような斜張ワイヤー110の長さ調整は、バックシートフレーム構造112全体にウレタンパッドをあてがう前に行う必要がある。
このような斜張ワイヤー110により、車両後方側への荷重、たとえば衝突の際の衝撃荷重がバックシートフレーム構造部112に負荷されたときに、この荷重に基づいてバックシートフレーム構造部112に対して引張力を作用する一方、車両前方側への荷重による外部から作用する圧縮力に対し抗しない特性を有するようにしてある。
次に、図1及び図2を再び参照して、クッションシートフレーム構造部104について説明すれば、クッションシートフレーム構造部104は、車両の前後方向に延設された一対のサイドフレーム140A,Bと、一対のサイドフレーム140A,Bの後端部108同士を連結するリアフレーム141と、一対のサイドフレーム140A,Bの前端部同士を連結するフロントフレーム142とから概略構成され、これらのフレームにより閉断面構造(ボックス構造)が形成されている。この閉断面構造の開口部には、リアフレーム140とフロントフレーム142との間で車両の前後方向に張設されたクッションバネ143が設けられている。
図5に示すように、一対のサイドフレーム140A,Bの各々は、バックシートフレーム構造部112のサイドフレーム118と略同様な構造であり、外郭形状を構成する車両の上下方向に有幅の主側面部144と、主側面部144の上下縁より内方に立ち上がる張り出しフランジ部146A,Bとが断面内向きのコ字形状に形成されている。
斜張ワイヤー102A,Bについて説明すれば、斜張ワイヤー102A,Bは、一対のサイドフレーム140A,Bの各々の側部に付設されている。いずれの斜張ワイヤー102A,Bも同様な構造であるので、その1つについて、以下に説明する。
斜張ワイヤー102の上端は、一対のサイドフレーム140の側部で、下端が上端より車両の前部側で、クッションシートフレーム構造104にそれぞれ固定されて、斜めに張設されている。斜めの角度は、想定される衝撃荷重等に応じて適宜設定すればよい。
より詳細には、斜張ワイヤー102の上端は、後に説明するリクライナー構造部114のブラケット部34に設けられ、一方斜張ワイヤー102の下端は、サイドフレーム140の側部に設けられる。
特に、斜張ワイヤー102の上端とバックシートフレーム構造部112の回転中心とを結ぶ線と、斜張ワイヤー102の下端とバックシートフレーム構造部112の回転中心とを結ぶ線とがなるべく直交するように、斜張ワイヤー102を位置決めするのが好ましい。
プーリー147A,Bが、一対のサイドフレーム140の側部およびブラケット部34それぞれに設けられ、斜張ワイヤー102は、無端状とされ、両プーリー147A,B間に掛け渡されている。
斜張ワイヤー102A,Bの種類および材質は、たとえば衝突の際に車両用シート100に衝撃荷重が負荷された場合に、このような衝撃荷重の一部を負担しつつ、自身が構造健全性を確保できるような強度あるいは剛性を備える限り任意であるが、たとえば金属製あるいはCFRP製が好ましい。
なお、斜張ワイヤー102A,Bにそれぞれ、ボルトーナット機構145A,Bを設けている点については、バックシートフレーム構造112に設けた斜張ワイヤー110A,Bと同様であるので、その説明は省略する。ただし、この場合、ボルトーナット機構145A,Bは、初期引張力の調整手段としてではなく、斜張ワイヤーの長さ調整手段として機能させる点で、ボルトーナット機構130と異なる。すなわち、車両シートに対して荷重が負荷されていない通常の状態において、斜張ワイヤー102A,Bに引張力が発生せず、ワイヤーが弛まない程度にワイヤーの長さを調整してもよいし、あるいは斜張ワイヤー102A,Bに引張力が発生した状態となるようにワイヤーの長さを調整してもよい。
次に、リクライナー構造部114について説明すれば、図6に示すように、リクライナー10は、ドライバー或いは乗員が着座するクッションシートのフレーム構造の各側面と、ドライバー或いは乗員が背もたれるバックシートのフレーム構造の対応する側面との連結部に1基ずつ設けられ、バックシートをクッションシートに対して傾動可能とするように、一対のリクライナー10は、シートの幅方向に延びる連結シャフト12により連結されている。一対のリクライナー10は、同様な構造を有するので、以下では、その1つについて、説明する。
図7ないし図9に示すように、リクライナー10は、バックシートフレーム構造に取り付けられる回動アーム14と、クッションシートフレーム構造に取り付けられるベース部材16と、回動アーム14とベース部材16との間に介在する、カム18およびカム18を挟むように配置される一対の摺動係止部材20と、カム18を回動する操作レバー22とから概略構成され、操作レバー22に固定された枢軸24を中心に、回動アーム14がベース部材16に対して回動自在に保持されている。
図9に示すように、ベース部材16は、鋼製円形板材であり、その中心部に枢軸24が挿通する挿通孔26が形成され、挿通孔26の大きさは、枢軸24の回動に伴ってベース部材16が回動しない程度である。ベース部材16には、挿通孔26の両側に延びる一対の開口28A,Bが設けられている。一対の開口28A,Bの各々は、左右一対の案内側壁30と、これらの案内側壁30の上端および下端に連接された円弧状側壁32とから構成されている。一対の開口28の各々の大きさは、後に説明する一対の摺動係止部材20それぞれが、一対の開口28内で左右一対の案内側壁30に沿って案内されながら半径方向に摺動することが可能なように設けられる。円弧状側壁32の径は、後に説明する回動アーム14の円形開口52の径と同じとなるように設定される。
ベース部材16の回動アーム14が位置する反対側には、ベースブラケット34が一対の開口28を塞ぐように取り付けられ、その中心部に枢軸24が挿通する挿通孔33が形成される一方、このベースブラケット34の下部には、クッションシートCのフレーム構造に固定される取り付け部36が設けられている。この取り付け部36には、貫通孔39が設けられ、ボルト37を貫通孔39および対応するクッションシートCの貫通孔に挿通して、溶接ナット41によりベースブラケット34とクッションシートCとを固定するようにしてある(図8参照)。また、上述のように、このベースブラケット34を利用して、斜張ワイヤー102のプーリーを設けるためのブラケットが付設されている。
ベース部材16の一方の面には、複数の突起面11が設けられる一方、ベースブラケット34の対応する位置には、突起面11と相補形状の開口13が設けられ、突起面11それぞれを開口13に嵌めて、たとえば溶接することにより、ベースブラケット34をベース部材16に対して固定するようにしている。ベース部材16において、案内側壁30と摺動係止部材20との間で荷重伝達経路が構成されるので、ベース部材16の板厚は、このような荷重に耐える強度を有するように設定される。たとえば、ベース部材16の板厚は、3.6mmである。それに対して、ベースブラケット34の板厚は、ベース部材16の板厚より薄く設定される。
摺動係止部材20について説明すれば、摺動係止部材20は一対設けられ、それぞれ、ベース部材16の一対の開口28A,Bの対応する開口内で左右一対の案内側壁30によって案内されながら半径方向に進退自在に配設されている。
図10に示すように、各々の摺動係止部材20は、その外周側に外歯38が形成されるとともに、その内周側には、カム面40が形成され、さらに両側面47、49は、互いに平行で案内側壁39に対して摺接するようにしている。
カム面40は、従来と同様に、内方に突出する突出係合部42と、突出係合部42に連接し外方に延びる係合凹部44とを有し、突出係合部42および係合凹部44ともに、後に説明するカム18と係合し、それにより、各々の摺動係止部材20の外歯38が、後に説明する回動アーム14に形成した内歯54と噛合する係止位置と、内歯54から離間する係止解除位置との間で、半径方向に進退自在に移動するようにしている。
一対の摺動係止部材20は、ベース部材16と回動アーム14とを重ね合わせた際、回動アーム14の円形開口52とベース部材16の一対の開口28とにより形成されるスペース内に配置され、一対の開口28の案内側壁30により案内されつつ、一対の摺動係止部材20それぞれに設けた外歯38が円形開口52に設けた内歯54と噛み合うことが可能なようにしている。
カム18について説明すれば、図11および図12に示すように、カム18は、一対の摺動係止部材20の間に介在し、中心部に操作レバー22に設けられた枢軸24が挿通する貫通穴17を有する。貫通穴17の大きさは、枢軸24の回動によりカム18が一体でその方向に回動する程度であり、それにより、操作レバー22の回動により、カム18が回動されるようにしてある。カム18の一対の摺動係止部材20各々の対向する面にはそれぞれ、内方に突出する突出係合部42と係合する係合部43と、係合部43に連接し、外方に延びる突出係合部45とが設けられ、カム18の外形は、その中心位置に関して点対称に形成され、その板厚は、後に説明する回動アーム14の板厚より若干薄く設定され、一対の摺動係止部材20とは異なり、回動アーム14の円形開口52内に配置したとき、ベース部材16の一対の開口28に及ばないようにしている。これにより、円形開口52内で自由に回動することが可能となる。
回動アーム14について説明すれば、回動アーム14は鋼製環状リングからなり、内部に円形開口52が設けられている。円形開口52の径は、ベース部材16の円弧状側壁32の径と同一である。円形開口52を構成する環状リングの上下部それぞれについて、その内周面の所定範囲に亘って、摺動係止部材20の外歯38と噛合する内歯54が設けられている。一対の摺動係止部材20それぞれを係止位置に移動させたときの外歯38と内歯54との噛合により、バックシートBとクッションシートCとの間の荷重伝達経路が形成されるので、鋼製環状リングの板厚は、外歯38がこのような荷重に耐える強度を有するように設定される。鋼製環状リングの板厚は、たとえば3.6mmである。なお、鋼製環状リングは、一様な板厚の円形板材をファインブランキングにより打ち抜き加工することにより円形開口52を設けて外歯38を形成すればよい。
回動アーム14の外周部には、バックシートBに取り付けるためのブラケット部56が、外周方向に等角度間隔(90°)を隔てて4つ設けられている。各ブラケット部56には、後に説明するホールドピン62を挿通するための貫通孔63が設けられている。なお、ブラケット部56は、環状リングと一体に形成してもよい。
回動アーム14のベース部材16が位置する反対側には、リッドプレート58が円形開口52を塞ぐように取り付けられ、このリッドプレート58の中心部には、枢軸24が貫通する貫通孔60が設けられる。貫通孔60の大きさは、カム18と同様に、枢軸24の回動によりリッドプレート58が一体でその方向に回動する程度であり、それにより、操作レバー22の回動により、リッドプレート58が回動されるようにしてある。リッドプレート58は、環状リングと同じ径を有する円形薄板であり、その外周部には、回動アーム14と同様に、ブラケット部67が、外周方向に等角度間隔(90°)を隔てて4つ設けられている。各ブラケット部67には、後に説明するホールドピン62が挿通する貫通孔65が、設けられている。これにより、ホールドピン62を回動アーム14の貫通孔63および対応するリッドプレート58の貫通孔65に挿通して、かしめることにより、リッドプレート58を回動アーム14に対して固定し、回動アーム14の円形開口52内に配置される一対の摺動係止部材20、カム18、および後に説明するスプリング64が、円形開口52内に保持されるようにしている。また、図8に示すように、ホールドピン62の肩部をベース部材16の周縁部にあてがうことにより、ベース部材16を固定している。さらにまた、上述のように、このリッドプレート58を利用して、その外周部に、斜張ワイヤー110のプーリー128を設けるためのブラケットが付設されている。
なお、リッドプレート58は、円形開口52に対する蓋として機能するのみであり、強度部材として機能するわけではないので、回動アーム14の板厚が、たとえば3.6mmであるのに対して、リッドプレーの板厚は、0.6mm程度でよい。
図9に示すように、操作レバー22は、一方のリクライナー10の外側に設けられ、一端に貫通孔が設けられ、枢軸24が、この貫通孔を含め、貫通孔33、ベース部材16、カム18、およびリッドプレート58の貫通孔60に挿通することにより、操作レバー22が固定されている。操作レバー22は、円形開口52内に配置された一対のスプリング64により、一定方向に回動するように付勢されている。
一方のリクライナー10の外側には、スパイラルスプリング70がベースブラケット34に対してほぼ平行に隣接して設けられ、一端がバックシートBに固定される一方、他端がベースブラケット34に設けたホルダーブラケット72に固定されることにより、バックシートBをクッションシートCに対して、一定方向に回動するように付勢している。
以上の構成を有する車両用シート100について、図11ないし図14を参照しながら、その作用を以下に説明する。
まず、バックシートBおよびクッションシートCそれぞれにおいて、バックシートフレーム構造部112およびクッションシートフレーム構造部104それぞれにパッドを設ける前に、ボルトーナット機構130およびボルトーナット機構145それぞれのボルトねじ込み量を調節することにより、斜張ワイヤー102および斜張ワイヤー110に生じる初期引張力を調整する。
次いで、バックシートBをクッションシートCに対してロック状態とする場合、操作レバー22がスプリング64によって付勢され、この状態においては、図11に示すように、カム18の係合部43がそれぞれ、摺動係止部材20のカム面40の突出係合部42に係合する。これにより、摺動係止部材20はそれぞれ、ベース部材16の案内側壁30に沿って案内されながら外方に移動し、外歯38と回動アーム14の内歯54とが噛み合い、回動アーム14のベース部材16に対する回動が規制されたロック状態が維持される。
このようなロック状態において、たとえば衝突事故によりバックシートBに過大な衝撃力が加わった場合、バックシートBから取り付け部36を介して回動アーム14に衝撃力が伝達し、さらに回動アーム14の外歯38と一対の摺動係止部材20の内歯54との噛み合い、一対の摺動係止部材20のカム面40とカム18との係合、さらにカム18に貫通する枢軸24を通じて、ベース部材16に固定されるクッションシートCに荷重が伝達される。このとき、回動アーム14の環状リングの板厚、すなわち外歯38の板厚およびベース部材16の板厚は、このような荷重に耐え得るような強度を有する値に設定していることから、このような衝撃力に係わらず、リクライニング機能を維持することが可能となる。
この場合、回動アーム14には、内部に円形開口52が設けられており、その分、一様な板厚の円形板材をプレス加工していた従来の円形セクタギアに比べ、軽量化を達成することが可能である。一方、環状リングの外周には、バックシートBへの取り付け用の貫通孔63を備えたブラケット部56が周方向に等角度間隔(90°)を隔てて4つ設けられており、その分、重量が増大する。しかしながら、従来の円形セクタギアにおいては、バックシートBへの固定用として突起面が、枢軸24近傍の円周方向に等角度間隔(60°)を隔てて6つ設けられていたが、枢軸24からの距離が長くなる分、負担する荷重を低減することが可能であるから、ブラケット部56の設置数を低減することが可能である。これにより、バックシートBへのブラケット部56についても、従来に比べ重量の低減化を達成することが可能である。
より詳細には、車両の通常運転の際、斜張ワイヤー110A,Bに生じる初期引張力の車両前方に向く力成分により、バックシートフレーム構造部112の上部は、常時車両の前方に引っ張られた状態となっており、これにより、バックシートフレーム構造部112の上部に車両後方側へ微小な変形を起こし、車両の乗り心地を損ねるのを防止することが可能である。
また、図13に示すように、たとえば衝突により車両の前方に向かってバックシートフレーム構造112に衝撃荷重F1が負荷された場合、バックシートフレーム構造部112の一対のサイドフレーム118A,Bそれぞれには、回転中心に近づくにつれて増大する曲げモーメントMが生じる。この場合、下端P2が上端P1より車両前方側に位置するように斜張ワイヤー110A,Bを位置決めし、ワイヤー状であることから、衝撃荷重F1の負荷に伴って斜張ワイヤー110A,Bに圧縮力は生じない。このような曲げモーメントMに耐えるように、一対のサイドフレーム118A,Bそれぞれの断面形状を設定して、断面係数を確保することにより、車両用シート100の構造健全性を維持することが可能である。
一方、図14に示すように、たとえば衝突により車両の後方に向かって、車両の前方に向かう衝撃荷重F1より大きな衝撃荷重F2がバックシートフレーム構造112に負荷された場合、バックシートフレーム構造112の一対のサイドフレーム118A,Bそれぞれには、回転中心に近づくにつれて増大する曲げモーメントが生じる。このとき、一対のサイドフレーム118A,Bそれぞれに付設された斜張ワイヤー110A,Bには、引張力Tが発生して、バックシートフレーム構造部112に対して衝撃荷重F2に伴う曲げモーメントを軽減するように作用する。図14には、斜張ワイヤー110A,Bを設置しない場合に生じる曲げモーメントM2と、斜張ワイヤー110A,Bを設置する場合に生じる曲げモーメントM1とを示す。図14に示すように、斜張ワイヤー110A,Bの上端P1より回転中心に向かって下方の範囲において、M1はM2より小さくなっている。
なお、クッショシートフレーム構造104に設けた斜張ワイヤー102A,Bについても同様な作用を奏する。
これにより、車両の後方に向かうより大きな衝撃荷重に対して一対のサイドフレーム118A,Bの断面形状を設定することなしに、車両の前方に向かう衝撃荷重と車両の後方に向かう衝撃荷重との差分を斜張ワイヤー110A,Bに負担させることにより、必要な強度あるいは剛性を確保しつつ、一対のサイドフレーム118A,Bの重量の低減を達成することが可能であり、特に、従来、車両の前後方向に延びる有幅の主側面部が、高さ方向に回転中心に向って末広状となっているところ、このような末広がり度を低減し、場合により末広がりのテーパをほぼ削除することも可能となる。
なお、バックシートBのクッションシートCに対するロック状態を解除して、バックシートBを回動させる場合、操作レバー22をコイルスプリング64に抗して回動させることにより、カム18も同様に同方向に回動することから、図12に示すように、カム18の係合部43と摺動係止部材20の突出係合部42との係合状態が解除される。このような状態で、バックシートBを傾動させると、それにより回動アーム14が回動して、内歯54から摺動係止部材20に加わる力によって、摺動係止部材20はそれぞれ、内方に摺動し、摺動係止部材20の係合凹部44とカム18の突出係合部45とが係合するに至る。この状態で、内歯54と外歯38との噛合状態が解除される。これにより、ロック状態が解除されて、バックシートBをクッションシートCに対して所望の角度傾動させることが可能となる。バックシートBを所望の角度傾動させたら、操作レバー22の回動を解除することにより、カム18が逆方向に回動し、それにより摺動係止部材20が再び半径方向外方に摺動して、内歯54と外歯38との噛合状態が復活して、ロック状態に復帰する。
以上、このような構成の車両用シート100のフレーム構造によれば、上下方向に延設する一対のサイドフレーム118A,Bそれぞれの側部に、車両の前方向に進むにつれて下がる向きに傾斜した斜張ワイヤー110A,Bがバックシートフレーム構造112に設けられ、引張力調整手段130A,Bによりそれぞれの側部に設けた斜張ワイヤー110A,Bに発生する初期引張力を調整することにより、通常運転の際、ヘッドレストが設置されるバックシートのフレーム構造112の上部に対して常時車両の前方向に初期引張力が負荷されていることから、バックシートのフレーム構造112の上部が車両の後方向に微小変形することにより、乗員の乗り心地を損ねることを防止することが可能となる。 その一方、衝突時のような非常時の際、たとえば後突のような場合、バックシートに対して車両の後方に向かって衝撃荷重が負荷されるところ、このような衝撃荷重に対して、斜張ワイヤー110A,Bの引張力が抗することにより、バックシートフレーム構造112の大変形を防止することに寄与することも可能である。
以上のように、一対のサイドフレーム118A,B自体を高剛性化あるいは高強度化を達成するために重量の増大化を生じさせることなしに、車両の通常運転時には、乗員の頭部を支持するバックシートの上部の微小な変形を防止することにより、乗り心地を確保するとともに、車両の衝突の際、特に車両後方側に衝撃荷重が負荷される場合に、バックシートの大変形を防止することにより、乗員の安全を確保することが可能となる。
このとき、このような構成の車両用シート100のフレーム構造に対してパッドをあてがうことにより車両用シート100として完成する場合、斜張ワイヤー110A,B自体をパッドの中に埋設させることで、車両用シート100の外観を損なうことが防止される。
以下に、本発明の第2実施形態について、図面を参照しながら説明する。図15は、本発明の第2実施形態に係る車両用シートの斜視図である。図16は、本発明の第2実施形態に係る車両用シートの側面図である。図17は、本発明の第2実施形態に係る斜張ワイヤーの図である。
以下の説明において、第1実施形態と同様な要素については、同様な参照番号を付することによりその説明は省略し、本実施形態の特徴部について詳細に説明する。
本実施形態の特徴は、斜張ワイヤー110A,Bおよび102A,Bの構造にあり、より詳細には、第1実施形態においては、プーリー128A,Bおよびプーリー147A,B間に無端状に形成したワイヤーを掛け渡したが、本実施形態においては、単一のワイヤーを採用した点にある。斜張ワイヤー110および102について、特徴は共通であるので、その一方について説明する。
より具体的には、斜張ワイヤー110は、上端が固定リング150Aを介して、一対のサイドフレーム118に設けたピン(図示せず)にリングの開口部を通して固定される一方、下端が固定リング150Bを介して、リクライナー構造部114のブラケット部65に設けたピン(図示せず)にリングの開口部を通して固定され、一対のサイドフレーム118A,Bの各側において、1本のワイヤーが斜めに延設されている。
このような構成の斜張ワイヤー110A,Bによれば、たとえば第1実施形態と同様な衝撃荷重を想定した場合に、第1実施形態においては、プーリー128A,B間で2本の斜張ワイヤー110を設けることに相当するのに対して、本実施形態においては、1本の単一ワイヤーを設けることになることからその分、ワイヤーの太さを太くする必要がある反面、第1実施形態のように、2基のプーリー128A,Bを設置することなしに、ワイヤーを設けることが可能となる。
なお、斜張ワイヤー110A,Bの長さ調整を行うために、ワイヤーの途中にボルトーナット機構130を設け、ボルト132のナット136に対するねじ込み量を調整することにより、斜張ワイヤーに生じる初期引張力を調整する点は、第1実施形態と共通である。
以上、本発明の実施形態を詳細に説明したが、本発明の範囲から逸脱しない範囲内において、当業者であれば、種々の修正あるいは変形が可能である。たとえば、本実施形態においては、バックシートフレーム構造において、一対のサイドフレームの一方の側部には、第1実施形態のように無端状の斜張ワイヤーを設ける一方、第2実施形態のように他方の側部には、単一の斜張ワイヤーを設けてもよい。
また、本実施形態においては、自動車用シートを対象に説明したが、それに限定されることなく、鉄道車両、船、飛行機等一般的な車両に対して適用可能である。また、自動車のシートに対して用いる場合、リアシート、フロントシートのいずれにも適用可能である。
本発明に係る車両用シートのフレーム構造および該構造を有する車両用シートは、たとえば衝突の際に作用する衝撃荷重に対して必要な強度あるいは剛性を確保しつつ、全体重量の低減を達成することから、車両に必要とされる燃料の低減、ひいては二酸化炭素排出量の低減に資する点において有用である。
本発明の第1実施形態に係る車両用シートの斜視図である。 本発明の第1実施形態に係る車両用シートの側面図である。 図1の線A−Aに沿う断面図である。 図1のA部詳細図である。 図1の線B−Bに沿う断面図である。 本発明の第1実施形態に係る車両用シートのリクライナーの概略斜視図である。 本発明の第1実施形態に係る車両用シートのリクライナーの側面図である。 図7の線A−Aに沿う断面図である。 本発明の第1実施形態に係る車両用シートのリクライナーの概略分解斜視図である。 本発明の第1実施形態に係る車両用シートのリクライナーの摺動係止部材の概略斜視図である。 本発明の第1実施形態に係る車両用シートのリクライナーによるロック状態を示す概略図である。 本発明の第1実施形態に係る車両用シートのリクライナーによるロック解除状態を示す概略図である。 本発明の第1実施形態に係る車両用シートにおいて、車両前方に向かう衝撃荷重が負荷された際にバックシートフレーム構造に生じるモーメント図である。 本発明の第1実施形態に係る車両用シートにおいて、車両後方に向かう衝撃荷重が負荷された際にバックシートフレーム構造に生じるモーメント図である。 本発明の第2実施形態に係る車両用シートの斜視図である。 本発明の第2実施形態に係る車両用シートの側面図である。 本発明の第2実施形態に係る斜張ワイヤーの図である。
符号の説明
C クッションシート
B バックシート
10 リクライナー
12 連結シャフト
14 回動アーム
16 ベース部材
18 回動可能なカム
20 摺動係止部材
22 操作レバー
24 枢軸
26 挿通孔
28 一対の開口
30 案内側壁
32 円弧状側壁
34 ベースブラケット
38 外歯
40 カム面
42 突出係合部
44 係合凹部
52 円形開口
54 内歯
58 リッドプレート
62 ホールドピン
64 スプリング
70 スパイラルスプリング
100 車両用シート
102 斜張ワイヤー
104 クッションシートフレーム構造
106 下端部
108 後端部
110 斜張ワイヤー
112 バックシートフレーム構造
114 リクライナー構造部
116 車両用シートフレーム構造部
118 一対のサイドフレーム
120 アッパーフレーム
122 主側面部
124 フラットマット
126 嵌合重なり部
128 プーリー
130 ボルト-ナット機構
132 ボルト
134 ボア
136 ナット
140 一対のサイドフレーム
141 リアフレーム
142 フロントフレーム
144 クッションバネ
146 主側面部
148 フランジ部

Claims (13)

  1. 車両用シートのバックシートフレーム構造であって、
    クッションシートフレーム構造に対して傾動可能となるように、下端部が該クッションシートフレーム構造の後端部に連結されたバックシートフレーム構造を有し、
    該バックシートフレーム構造は、それぞれ上下方向に延設する一対のサイドフレームを有し、
    上端が前記一対のサイドフレームの側部で、下端が前記バックシートフレーム構造の回転中心より車両の前部側で、前記バックシートフレーム構造にそれぞれ固定された斜張ワイヤーが、該一対のサイドフレームの両方の側部に設けられ、
    該斜張ワイヤーには、前記斜張ワイヤーに対して通常運転時に発生する初期引張力を調整するための引張力調整手段が設けられ、
    前記斜張ワイヤーは、車両前方側への衝撃荷重と車両後方側への衝撃荷重との差分を負担するように、前記バックシートフレーム構造の前側にのみ設けられる、ことを特徴とする車両用シートのバックシートフレーム構造。
  2. 前記斜張ワイヤーは、車両後方側への荷重が前記バックシートフレーム構造に負荷されたときに、該荷重に基づいて前記バックシートフレーム構造に対して作用するモーメントを軽減するように前記バックシートフレーム構造に対して引張力を作用する一方、外部圧縮力に対して抗しない特性を有する、請求項1に記載の車両用シートのバックシートフレーム構造。
  3. プーリーが、該一対のサイドフレームの少なくとも一方の側部および前記バックシートフレーム構造にそれぞれ設けられ、前記斜張ワイヤーは、無端状とされ、両プーリー間に掛け渡される、請求項1に記載の車両用シートのバックシートフレーム構造。
  4. 前記初期引張力調整手段は、ボルト-ナット機構からなり、ボルトのナットに対するねじ込み量を調整することにより、初期引張力を調整する、請求項1に記載の車両用シートのバックシートフレーム構造。
  5. 前記クッションシートフレーム構造と前記バックシートフレーム構造との間に、車両用リクライナーが設けられ、前記バックシートが前記クッションシートに対して傾動可能とされ、該車両用リクライナーは、
    クッションシートに固定されるベース部材と、
    該ベース部材に回動可能に支持され、かつバックシートに固定された回動アームと、
    前記ベース部材および前記回動アーム間に介装され、前記ベース部材に形成された凹部側壁により進退自在に案内され、かつ先端に外歯を形成した摺動係止部材と、
    前記回動アームに形成した内歯に噛合する係止位置と、内歯から離間する係止解除位置との間で該摺動係止部材を移動させる回動可能なカムと、
    該カムを回動させる操作レバーとを有し、
    前記回動アームは、内部に円形開口を有する、所定板厚の環状リングからなり、
    該環状リングの内周面に沿って前記内歯が設けられ、該環状リングの外周面には、バックシートに固定する複数の取付ブラケット部が設けられ、
    前記斜張ワイヤーの下端は、該複数の取付ブラケット部のいずれかに固定され、
    さらに、前記ベース部材と反対側から前記円形開口を塞ぐ蓋板を有し、
    前記蓋板の板厚は、前記環状リングの板厚より薄い、
    請求項1に記載の車両用シートのバックシートフレーム構造。
  6. 前記バックフレーム構造は、前記一対のサイドフレームの上端同士を連結するアッパーフレームを有し、
    前記斜張ワイヤーの上端は、前記一対のサイドフレームと前記アッパーフレームとの重なり連結部に設けられる、請求項1に記載の車両用シートのバックシートフレーム構造。
  7. 前記一対のサイドフレームの各側部に前記斜張ワイヤーが設けられる、請求項1に記載の車両用シートのバックシートフレーム構造。
  8. 前記斜張ワイヤーは、金属製ワイヤーからなる、請求項1に記載の車両用シートのバックシートフレーム構造。
  9. 前記斜張ワイヤーは、CFRP製ワイヤーからなる、請求項1に記載の車両用シートのバックシートフレーム構造。
  10. 前記斜張ワイヤーの前記下端と前記バックシートの回転中心とを結ぶ線と、前記斜張ワイヤーの前記上端と前記バックシートの回転中心とを結ぶ線とが直交するように、前記斜張ワイヤーを設ける、請求項1に記載の車両用シートのバックシートフレーム構造。
  11. 前記斜張ワイヤーは、単一ワイヤーからなり、各端には、固定用リングが設けられる、請求項1に記載の車両用シートのバックシートフレーム構造。
  12. 前記一対のサイドフレームは、外郭形状を構成する車両の前後方向に有幅の主側面部と、該主側面部の前後縁より内方に立ち上がる張り出しフランジ部とが断面内向きのコ字形状に形成され、該主側面部の幅は、高さ方向に実質的に一定である、請求項1に記載の車両用シートのバックシートフレーム構造。
  13. 請求項1ないし12のいずれか1項に記載の前記車両用シートのバックシートフレーム構造全体を覆うように設けられたパッドと、前記車両用シートのバックシートフレーム構造および該パッド全体を覆うように設けられた袋状の表皮とを有することを特徴とする車両用シート。
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