次に、本発明を実施するための形態について図面と共に説明する。
(第1の実施の形態)
図1及び図2を参照し、本発明の第1の実施の形態に係るエレクトロクロミック表示装置を説明する。
図1は、本施の形態に係るエレクトロクロミック表示装置10の構成を模式的に示す断面図である。また、図2は、図1に示すエレクトロクロミック表示装置10における表示基板11の構成を模式的に示す斜視図である。
ただし、図1及び図2は、本実施の形態に係るエレクトロクロミック表示装置の一例を示すものであり、本実施の形態に係るエレクトロクロミック表示装置は、図1及び図2の構成に限定されない。
最初に、エレクトロクロミック表示装置10の構成について説明する。
図1に示されるように、本実施の形態に係るエレクトロクロミック表示装置10は、表示部1と、光照射部2を有する。表示部1は、表示基板11と、表示基板11に対向されて設けられた対向基板12と、表示基板11と対向基板12とがスペーサ18を介して貼りあわされたセル19を有する。
光照射部2は、表示部1と独立して設けられ、電源部を備えた光照射量制御部23、並びに光照射量制御部23に接続されたLEDドライバ24及びレンズを備えた照射ヘッド25よりなる。また、光照射部2は、表示部1の表示基板11側に設けられ、表示部1の表示基板11側からLED光を照射する。
光照射部2から照射する光として、LED光以外にレーザー光、キセノンランプ光、重水素ランプ光、ハロゲンランプ光、等を用いることができる。照射する光の波長は、視認性の低い可視域外にあることが望ましい。エレクトロクロミック層が光吸収する光の波長が可視域にあると、消色状態においても着色しやすくなり、視認性が低下するおそれがあるためである。特に、好ましい波長範囲は、250nm〜450nmである。照射する光の波長が250nm以下であると、基板材料による光吸収によって光色効率が低下しやすく、また照射する光の波長が450nm以上であると、着色するとともに、照射エネルギーが低下しやすい。更に、後述するナノ構造を有する半導体材料が光吸収する波長に適合させにくくなる。
なお、本発明におけるエレクトロクロミック表示装置は、光照射部を含まず、エレクトロクロミック表示装置の別の装置に含まれる光照射部を用いるものであってもよい。
図1及び図2に示されるように、表示基板11は、表示基板11に形成された第1の表示電極13aと、第1の表示電極13aに接して設けられた第1のエレクトロクロミック層14aと、第1のエレクトロクロミック層14aに接して設けられた絶縁層22と、絶縁層22に接して設けられた第2の表示電極13bと、第2の表示電極13bに接して設けられた第2のエレクトロクロミック層14bと、を有する。表示基板11は、上記の積層構造を支持するための基板である。
第1の表示電極13aは、対向電極15に対する電位を制御し、第1のエレクトロクロミック層14aを発色させるための電極である。
第1のエレクトロクロミック層14aは、ナノ構造を有する半導体材料(以下「ナノ構造半導体材料」という。)17に吸着した第1のエレクトロクロミック化合物16aよりなる。第1のエレクトロクロミック化合物16aは、光の照射(以下、「光照射」という。)により生じるナノ構造半導体材料17の光起電力により、還元反応によって発色する。ナノ構造半導体材料17は、第1のエレクトロクロミック化合物16aを担持するとともに、発消色を高速で行うためのものである。
換言すれば、第1のエレクトロクロミック層14aは、ナノ構造半導体材料17に吸着した第1のエレクトロクロミック化合物16aを含み、第1のエレクトロクロミック層14aが光吸収する波長の光を照射することにより、第1のエレクトロクロミック化合物16aが酸化又は還元され、発色する。
なお、図1において、理想的な状態としてナノ構造半導体材料17に吸着したエレクトロクロミック化合物16aの単分子が吸着した構成が記載されるが、エレクトロクロミック化合物16aが移動しないよう固定されると共に、エレクトロクロミック化合物16aの酸化還元に伴う電子の授受が妨げられないように電気的な接続が確保されていればよい。従って、エレクトロクロミック化合物16aとナノ構造半導体材料17とは混合されて単一層となっていても良い。
絶縁層22は、第1のエレクトロクロミック層14aの設けられた第1の表示電極13aと、第2のエレクトロクロミック層14bの設けられた第2の表示電極13bとが、絶縁されるように隔離するためのものである。
なお、第1の表示電極13aと第2の表示電極13bとの間の電極間抵抗を大きくすることができるのであれば、絶縁層22を設けなくてもよく、例えば第1のエレクトロクロミック層14aの膜厚を大きくすると、それに応じて第1の表示電極13aと第2の表示電極13bとの間の電極間抵抗が大きくなる。
第2の表示電極13bは、第1の表示電極13aと同様に、対向電極15に対する電位を制御し、第2のエレクトロクロミック層14bを発色させるための電極である。
第2のエレクトロクロミック層14bは、第1のエレクトロクロミック層14aと同様に、第2のエレクトロクロミック化合物16bと、第2のエレクトロクロミック化合物16bを担持するナノ構造半導体材料17と、を有する。第2のエレクトロクロミック化合物16bは、第1のエレクトロクロミック化合物16aと同様に、光照射により生じるナノ構造半導体材料17の光起電力により、還元反応によって発色する。ナノ構造半導体材料17は、第2のエレクトロクロミック化合物16bを担持するとともに、発消色を高速で行うためのものである。なお、第2のエレクトロクロミック化合物16bは、第1のエレクトロクロミック化合物16aと異なる色彩に発色する。
換言すれば、第2のエレクトロクロミック層14bは、ナノ構造半導体材料17に吸着した第2のエレクトロクロミック化合物16bを含み、第2のエレクトロクロミック層14bが光吸収する波長の光を照射することにより、第2のエレクトロクロミック化合物16bが酸化又は還元され、発色する。
第1の表示電極13aと第2の表示電極13bとの間の電極間抵抗は、対向電極15に対する一方の表示電極の電位を、対向電極15に対する他方の表示電極の電位と独立に制御することができる程度に大きな抵抗にすることが好ましい。第1の表示電極13aと第2の表示電極13bとの間の電極間抵抗は、少なくとも第1の表示電極13a又は第2の表示電極13bの何れかの表示電極のシート抵抗よりも大きいことが好ましい。第1の表示電極13aと第2の表示電極13bとの間の電極間抵抗が、第1の表示電極13a及び第2の表示電極13bの何れかの表示電極のシート抵抗よりも小さい場合、第1の表示電極13a及び第2の表示電極13bの何れかの表示電極に電圧印加をすると、同程度の電圧が他方の表示電極にも印加されてしまうおそれがある。その結果、各表示電極に対応するエレクトロクロミック層を独立に発消色されることができないおそれがある。各表示電極の間の電極間抵抗は、夫々の表示電極のシート抵抗の500倍以上あることが好ましい。
このような良好な絶縁性を確保するためには、各表示電極の間の電極間抵抗は、第1のエレクトロクロミック層14aの厚さを変えて制御することもできるが、第1のエレクトロクロミック層14aに接して設けられる絶縁層22の厚さを変えて制御することもできる。
なお、各表示電極の間の電極間抵抗は、本発明における一の前記表示電極と他の前記表示電極との間の電気抵抗に相当する。
対向基板12は、対向基板12上に形成された対向電極15を有する。対向電極15は、対向電極15に対する第1の表示電極13a又は第2の表示電極13bの電位を制御し、第1のエレクトロクロミック層14a又は第2のエレクトロクロミック層14bを消色させるための電極であり、対向基板12は、対向電極15を支持するためのものである。
セル19は、表示基板11と、対向基板12とが、スペーサ18を介して貼り合わされた構造を有する。セル19の内部には、電解質20が充填される。電解質20は、第1の表示電極13a又は第2の表示電極13bと、対向電極15との間でイオンとして電荷を移動させ、第1のエレクトロクロミック層14a又は第2のエレクトロクロミック層14bの発消色を起こすためのものである。この電解質は第1の表示電極13aと対向電極15との間に満たされることが好ましい。そのため、第1の表示電極13aと対向電極15との間に形成される第2の表示電極13b及び絶縁層22は、電解質を浸透する、すなわち電解質に対して浸透性を有するように形成される。電解質に対して浸透性を有する層は、ナノ粒子表面のような多孔質上に真空成膜を用いて容易に形成することができる。
さらに、絶縁層に電解質機能を有するポリマーを含有させることにより、絶縁層内により多くの電解質を満たすことが可能となり、発消色の反応速度をより向上させることができる。また、ポリマーにより層の密着強度を高めることができる。
電解質20は、ポリマーに担持することも可能である。特に、UV硬化性又は熱硬化性ポリマーと電解質との混合剤を用いることにより、スペーサを介して及びスペーサ無しで表示基板11と貼り合せることで、容易に一体化形成することが可能である。
すなわち、本発明における電解質として機能するポリマーを含むとは、電解質機能を有するポリマーを含有する、あるいは、電解質をポリマーに担持する、ことを含む。
また、セル19中には、白色反射層21が設けられる。白色反射層21は、エレクトロクロミック表示装置10を反射型の表示装置として用いる場合に、白色の反射率を向上させるためのものである。白色反射層21は、白色顔料粒子が分散された電解質20が、セル19中に注入されることによって形成される。或いは、白色反射層21は、白色顔料粒子が分散された樹脂が、対向電極15上に塗布されることによって形成されることもある。又は、白色反射層21は、対向基板12の対向電極15と反対側に設けられてもよい。
次に、本実施の形態に係るエレクトロクロミック表示装置10の多色表示の動作について説明する。
第1のエレクトロクロミック層14a又は第2のエレクトロクロミック層14bは、LEDから照射される光の光量(強度)又は波長に対して発色感度が互いに異なる。発色感度に差を設ける場合には、LEDから照射される光に対するエレクトロクロミック層の光吸収又は還元電位に差を設けることにより、容易に設定することができる。
LEDから照射されるLED光の光量(強度)に対して発色感度が異なる場合には、電極による選択的な消色(選択消色)と組合せることにより、単一のLEDから照射されるLED光により、エレクトロクロミック層を選択的に発色させることができる。すなわち、選択したエレクトロクロミック層が発色するのに必要な光量のLED光を照射し、選択したエレクトロクロミック層よりも発色感度のよいエレクトロクロミック層が発色した場合には、その発色感度のよいエレクトロクロミック層が接している表示電極と対向電極との間に消色駆動する消色電圧を印加することにより消色させる。
3層以上のエレクトロクロミック層を形成している場合には、上記した駆動動作を、感度の悪いエレクトロクロミック層から順に、上記した駆動動作を行って、全ての層のエレクトロクロミック層を選択的に発色することができる。
なお、各エレクトロクロミック層の間での発色感度の感度差については、好ましい範囲は、LED光が照射される光量(強度)の1.1〜3倍である。感度差が1.1倍以下であると、照射量を制御することが難しく、各エレクトロクロミック層を選択的に発色させることが困難になる。また、感度差が3倍以上あると、照射量の絶対量が大きくなるため、発色感度が低下しやすく、高パワーの光源が必要になる。
一方、LED波長に対する感度差を設定した場合には、エレクトロクロミック層数に対応した数の異なるLED光源を用いることにより、任意のエレクトロクロミック層を選択的に発色させることができる。あるいは、例えば白色LED等の複数の波長の光を含むLED光源を用いることにより、光量(強度)について上記したのと同様に、発色が不要なエレクトロクロミック層が接している表示電極と対向電極との間に消色駆動する消色電圧を印加することにより消色させることによって、任意のエレクトロクロミック層を選択的に発色させることができる。
また、照射する光の強度又は光を照射する時間を連続的に変化させ、エレクトロクロミック化合物の還元量を変化させるような制御を行うことにより、中間色を発色することができる。更に、照射する光の強度又は光を照射する時間を段階的に制御する手段を用いることにより、アナログ的な制御をすることなく、中間色を発色することができる。すなわち、光を光パルスとして照射し、その光パルスの光強度値、パルス幅、及び光パルスを印加する回数を変えることによって、中間色を発色することができる。
このようにエレクトロクロミック化合物を選択的に発色させることにより、第1のエレクトロクロミック層14aのみの発色、第2のエレクトロクロミック層14bのみの発色、第1のエレクトロクロミック層14a及び第2のエレクトロクロミック層14bの両方の発色、の3段階の色に変化させることができ、多色表示が可能である。
例えば、第1のエレクトロクロミック層14a又は第2のエレクトロクロミック層14bとして、レッド、グリーン、ブルー等のうち、異なる2色を発色する2種類のエレクトロクロミック層が用いられることにより、多色表示が可能である。
また、セル19中に白色反射層21が設けられているため、白色の反射率が高く、積層された第1のエレクトロクロミック層14a及び第2のエレクトロクロミック層14bに起因する反射率の低下を補うことができ、視認性に優れた多色表示が可能である。
また、第1のエレクトロクロミック層14a及び第2のエレクトロクロミック層14bが、各々第1のエレクトロクロミック化合物16a、第2のエレクトロクロミック化合物16bをナノ構造半導体材料17に担持した構造を有するため、発消色の応答速度に優れた多色表示が可能である。特に、光照射によりナノ構造半導体材料17又はエレクトロクロミック化合物に結合した電子供与基から直接光起電力をエレクトロクロミック化合物に送るので、電極に発色電位を印加する従来の方法に比べ、高速で発色が可能である。
続けて、本実施の形態に係るエレクトロクロミック表示装置10に用いられる材料について説明する。
最初に、表示基板11及び表示基板11上に形成される各層の材料を説明する。
表示基板11の材料としては、透明な材料であれば特に限定されるものではないが、ガラス基板、プラスチックフィルム等の基板が用いられる。
第1の表示電極13a及び第2の表示電極13bの材料としては、導電性を有する材料であれば特に限定されるものではないが、光の透過性を確保する必要があるため、透明且つ導電性に優れた透明導電性材料が用いられる。これにより、発色させる色の視認性をより高めることができる。透明導電性材料としては、スズをドープした酸化インジウム(以下ITO)、フッ素をドープした酸化スズ(以下FTO)、アンチモンをドープした酸化スズ(以下ATO)等の無機材料を用いることができる。このうち、特に、真空成膜により形成されたインジウム酸化物(以下、In酸化物という)、スズ酸化物(以下、Sn酸化物という)又は亜鉛酸化物(以下、Zn酸化物という)の何れか1つを含む無機材料であることが好ましい。In酸化物、Sn酸化物及びZn酸化物は、スパッタ法により、容易に成膜が可能な材料であると共に、良好な透明性と電気伝導度が得られる材料である。また、特に好ましい材料は、InSnO、GaZnO、SnO、In2O3、ZnOである。
第1のエレクトロクロミック層14a又は第2のエレクトロクロミック層14bに含まれる第1のエレクトロクロミック化合物16a又は第2のエレクトロクロミック化合物16bの材料としては、酸化還元により色の変化を起こす材料が用いられる。このような材料として、ポリマー系、色素系、金属錯体、金属酸化物等の公知のエレクトロクロミック化合物が用いられる。
具体的に、ポリマー系、色素系、のエレクトロクロミック化合物として、アゾベンゼン系、アントラキノン系、ジアリールエテン系、ジヒドロプレン系、スチリル系、スチリルスピロピラン系、スピロオキサジン系、スピロチオピラン系、チオインジゴ系、テトラチアフルバレン系、テレフタル酸系、トリフェニルメタン系、トリフェニルアミン系、ナフトピラン系、ビオロゲン系、ピラゾリン系、フェナジン系、フェニレンジアミン系、フェノキサジン系、フェノチアジン系、フタロシアニン系、フルオラン系、フルギド系、ベンゾピラン系、メタロセン系、ジピリジン系等の低分子系有機エレクトロクロミック化合物、ポリアニリン、ポリチオフェン等の導電性高分子化合物が用いられる。
上記中、特に、好ましくは、一般式(1)
で表されるジピリジン系化合物を含むことがよい。これらの材料は発消色電位が低いため、複数の表示電極を有するエレクトロクロミック表示装置を構成した場合においても、光照射によりナノ構造半導体材料17より生じる還元電位により良好な発色の色値を示す。
更に、一般式(1)のジピリジン系有機材料には、光を吸収する機能(光吸収機能)を有する電子供与性基を付与することにより、還元発色させることができる。
一般に、光吸収機能を有する電子供与性基は、色素増感太陽電池に採用されている色素群などを採用することができる。その色素群の材料としては、例えば、シアニン系、メロシアニン系、スクアリリウム系、フタロシアニン系、ポルフィリン系、トリフェニルアミン系、ビピリジンRu錯体系などが挙げられる。
ナノ構造半導体材料17としては、特に限定されるものではないが、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化アルミニウム(以下アルミナ)、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化ケイ素(以下シリカ)、酸化イットリウム、酸化ホウ素、酸化マグネシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カリウム、チタン酸バリウム、チタン酸カルシウム、酸化カルシウム、フェライト、酸化ハフニウム、酸化タングステン、酸化鉄、酸化銅、酸化ニッケル、酸化コバルト、酸化バリウム、酸化ストロンチウム、酸化バナジウム、アルミノケイ酸、リン酸カルシウム、アルミノシリケート等を主成分とする金属酸化物が用いられる。また、これらの金属酸化物は、単独で用いられてもよく、2種以上が混合され用いられてもよい。電気伝導性等の電気的特性や光学的性質等の物理的特性を鑑みるに、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化鉄、酸化マグネシウム、酸化インジウム、酸化タングステン、から選ばれる一種、もしくはそれらの混合物が用いられたとき、発消色の応答速度に優れた多色表示が可能である。とりわけ、酸化チタンは光照射により生じる還元電位が高いため、発色の応答速度に優れた多色表示が可能である。
ナノ構造半導体材料17は、粒径、粒間の寸法として、ナノスケールの寸法を有する構造を有するものを含む。ナノ構造半導体材料17の形状は、特に限定されるものではないが、第1のエレクトロクロミック化合物16a又は第2のエレクトロクロミック化合物16bを効率よく担持するために、単位体積当たりの表面積(以下、「比表面積」という。)が大きい形状が用いられる。例えば、金属酸化物17が、ナノ粒子の集合体であるときは、大きな比表面積を有するため、より効率的にエレクトロクロミック化合物が担持され、発消色の表示コントラスト比に優れた多色表示が可能である。ナノ構造半導体材料17の比表面積として、特に限定されるものではないが、例えば、100m2/g以上とすることができる。
ナノ構造半導体材料17の好ましい膜厚の範囲は、0.2〜5.0μmである。膜厚が0.2μmよりも薄い場合、発色濃度を得にくくなる。また、膜厚が5.0μmよりも厚い場合、製造コストが増大するとともに、着色によって視認性が低下しやすくなる。
絶縁層22の材料としては、多孔質であればよく特に限定されるものではないが、絶縁性、耐久性及び成膜性に優れた材料を用いることができ、特に、少なくともZnSを含む材料を用いることができる。ZnSは、スパッタ法によって、エレクトロクロミック層にダメージを与えることなく高速に成膜できるという特徴を有する。更に、ZnSを主な成分として含む材料として、ZnO−SiO2、ZnS−SiC、ZnS−Si、ZnS−Ge等を用いることができる。ここで、ZnSの含有率は、絶縁層22を形成した際の結晶性を良好に保つために、約50〜90mol%とすることが好ましい。従って、特に好ましい材料は、ZnS−SiO2(8/2)、ZnS−SiO2(7/3)、ZnS、ZnS−ZnO−In2O3−Ga2O3(60/23/10/7)である。このような絶縁層の材料を用いることにより、薄膜で良好な絶縁効果が得られ、多層化による膜強度低下(すなわち膜のはがれ)を防止することができる。
一方、絶縁層22を多孔質膜にすることは、絶縁層22を粒子膜として形成することによって行うことができる。特にZnS等をスパッタで形成する場合、予め下引き層として粒子膜を形成することによって、ZnS等の多孔質膜を形成することができる。この場合、ナノ構造半導体材料17を粒子膜として形成することもできるが、絶縁層22の一部としてシリカ、アルミナ等を含む多孔質粒子膜を形成することもできる。このような手法を用いて絶縁層22を多孔質膜にすることにより、電解質20が絶縁層22を浸透する、絶縁層22が電界質20に対して浸透性を有することが可能となるため、酸化還元反応に伴う電解質20中のイオンとしての電荷の移動が容易となり、発消色の応答速度に優れた多色表示が可能である。
なお、絶縁層22の膜厚は20〜500nmとすることができ、更に好ましくは50〜150nmの範囲とすることができる。膜厚が20nmよりも薄い場合、絶縁性を得にくくなる。また、膜厚が500nmよりも厚い場合、製造コストが増大すると共に、着色によって視認性が低下する。
次に、対向基板12及び対向基板12上に形成される対向電極15の材料を説明する。対向基板12の材料としては、特に限定されるものではなく、対向電極15の材料としては、導電性を有する材料であれば、特に限定されるものではない。対向基板12として、ガラス基板、プラスチックフィルムが用いられる場合、対向電極15の材料として、ITO、FTO、酸化亜鉛等の透明導電膜、あるいは亜鉛、白金等の導電性金属膜、さらにはカーボンなどが用いられる。これらの透明導電膜又は導電性金属からなる対向電極15は、対向基板12にコーティングされ用いられる。一方、対向電極15として、亜鉛等の金属板が用いられる場合、対向基板12が対向電極15を兼ねる。
さらに、対向電極15の材料が、第1のエレクトロクロミック層14a又は第2のエレクトロクロミック層14bの起こす酸化還元反応と逆の反応を起こす材料である場合、安定した発消色が可能である。すなわち、第1のエレクトロクロミック層14a又は第2のエレクトロクロミック層14bが酸化により発色する場合は還元反応を起こし、第1のエレクトロクロミック層14a又は第2のエレクトロクロミック層14bが還元により発色する場合は酸化反応を起こす材料を対向電極15として用いると、第1のエレクトロクロミック層14a又は第2のエレクトロクロミック層14bにおける発消色の反応は、より安定となる。
次に、セル19を構成する電解質20、白色反射層21の材料を説明する。
電解質20の材料としては、一般的に、支持塩を溶媒に溶解させたものが用いられる。支持塩として、例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等の無機イオン塩、4級アンモニウム塩や酸類、アルカリ類の支持塩を用いることができる。具体的に、LiClO4、LiBF4、LiAsF6、LiPF6、LiCF3SO3、LiCF3COO、KCl、NaClO3、NaCl、NaBF4、NaSCN、KBF4、Mg(ClO4)2、Mg(BF4)2等を用いることができる。また、溶媒として、例えば、プロピレンカーボネート、アセトニトリル、γ−ブチロラクトン、エチレンカーボネート、スルホラン、ジオキソラン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、1,2−ジメトキシエタン、1,2−エトキシメトキシエタン、ポリエチレングリコール、アルコール類、が用いられる。その他、支持塩を溶媒に溶解させた液体状の電解質に特に限定されるものではないため、ゲル状の電解質や、ポリマー電解質等の固体電解質も用いられる。
白色反射層21に含まれる白色顔料粒子の材料としては、例えば、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、シリカ、酸化セシウム、酸化イットリウム等が用いられる。
また、ポリマー電解質に白色顔料粒子を混合することによって、白色反射層を兼ねることもできる。
(第1の実施の形態の変形例)
次に、図3を参照し、第1の実施の形態の変形例について説明する。
図3は、本変形例に係るエレクトロクロミック表示装置10aの構成を模式的に示す断面図である。ただし、以下の文中では、先に説明した部分には同一の符号を付し、説明を省略する場合がある(以下の実施の形態についても同様)。
本変形例に係るエレクトロクロミック表示装置10aは、表示部1aにおいて、表示電極及び表示電極に接して設けられるエレクトロクロミック層が各々3層積層される点で、第1の実施の形態に係るエレクトロクロミック表示装置10と相違する。
一方、本変形例に係るエレクトロクロミック表示装置10aは、光照射部2については、第1の実施の形態と同様である。すなわち、光照射部2は、光照射量制御部23、LEDドライバ24及び照射ヘッド25よりなる。
図3を参照するに、第1の実施の形態において、表示電極及び表示電極に接して設けられるエレクトロクロミック層が各々2層積層されるのと相違し、本変形例に係るエレクトロクロミック表示装置10aは、表示電極及び表示電極に接して設けられるエレクトロクロミック層が各々3層積層される。
すなわち、表示基板11aは、表示基板11aに形成された第1の表示電極13aと、第1の表示電極13aに接して設けられた第1のエレクトロクロミック層14aと、第1のエレクトロクロミック層14aに接して設けられた第1の絶縁層22aと、第1の絶縁層22aに接して設けられた第2の表示電極13bと、第2の表示電極13bに接して設けられた第2のエレクトロクロミック層14bと、第2のエレクトロクロミック層14bに接して設けられた第2の絶縁層22bと、第2の絶縁層22bに接して設けられた第3の表示電極13cと、第3の表示電極13cに接して設けられた第3のエレクトロクロミック層14cと、を有する。
エレクトロクロミック表示装置10aは、上記説明した構造を有することにより、容易に多色表示が可能である。第1の表示電極13a、第2の表示電極13b、第3の表示電極13c、が、第1の絶縁層22a、第2の絶縁層22bを介して隔離して設けられているため、対向電極15に対する第1の表示電極13aの電位、対向電極15に対する第2の表示電極13bの電位、対向電極15に対する第3の表示電極13cの電位、を独立して制御することができる。その結果、第1の表示電極13aに接して設けられた第1のエレクトロクロミック層14a、第2の表示電極13bに接して設けられた第2のエレクトロクロミック層14b、第3の表示電極13cに接して設けられた第3のエレクトロクロミック層14c、を、独立して発消色させることができる。また、第1の実施の形態に係るエレクトロクロミック表示装置10の多色表示の動作と同様の動作を行うことにより、光照射条件との組み合わせで独立して発色させることができる。
第1のエレクトロクロミック層14aと、第2のエレクトロクロミック層14b、第3のエレクトロクロミック層14c、は、表示基板11a側に積層して設けられているため、第1のエレクトロクロミック層14a、第2のエレクトロクロミック層14b、第3のエレクトロクロミック層14c、の発消色のパターンにより、第1のエレクトロクロミック層14aのみの発色、第2のエレクトロクロミック層14bのみの発色、第3のエレクトロクロミック層14cのみの発色、第1のエレクトロクロミック層14aと第2のエレクトロクロミック層14bの2層による発色、第1のエレクトロクロミック層14aと第3のエレクトロクロミック層14cの2層による発色、第2のエレクトロクロミック層14bと第3のエレクトロクロミック層14cの2層による発色、第1のエレクトロクロミック層14aと第2のエレクトロクロミック層14bと第3のエレクトロクロミック層14cの3層による発色に変化させることができ、多色表示が可能である。
また、第1のエレクトロクロミック層14a、第2のエレクトロクロミック層14b、第3のエレクトロクロミック層14cとして、イエロー、マゼンダ、シアンに発色するエレクトロクロミック層を用い、第1の表示電極13a、第2の表示電極13b、第3の表示電極13c、の電位を独立に制御することにより、エレクトロクロミック表示装置10aは、フルカラー表示が可能である。
本変形例でも、照射する光の強度又は光を照射する時間を連続的に変化させ、エレクトロクロミック化合物の還元量を変化させるような制御を行うことにより、中間色を発色することができる。更に、照射する光の強度又は光を照射する時間を段階的に制御することにより、アナログ的な制御をすることなく、中間色を発色することができる。すなわち、光を光パルスとして照射し、その光パルスの光強度値、パルス幅、及び光パルスを印加する回数を変えることによって、中間色を発色することができる。
また、印加する電圧と電圧を印加する時間を連続的に変化させ、エレクトロクロミック化合物の還元量を変化させるような制御を行うことにより、中間色を発色することができる。更に、電圧を電圧パルスとして印加し、その電圧パルスの最大電圧値、パルス幅、及び電圧パルスを印加する回数を変えることによって、中間色を発色することができる。
(第2の実施の形態)
次に、図4を参照し、第2の実施の形態について説明する。
図4は、本実施の形態に係るエレクトロクロミック表示装置10bの構成を模式的に示す断面図である。
本実施の形態に係るエレクトロクロミック表示装置10bは、表示電極及び対向電極を有していない点で、第1の実施の形態に係るエレクトロクロミック表示装置10と相違する。
一方、本実施の形態に係るエレクトロクロミック表示装置10bは、光照射部2については、第1の実施の形態と同様である。すなわち、光照射部2は、光照射量制御部23、LEDドライバ24及び照射ヘッド25よりなる。
図4を参照するに、第1の実施の形態において、表示電極及び対向電極を有するのと相違し、本実施の形態に係るエレクトロクロミック表示装置10bは、表示部1bにおいて、表示電極及び対向電極を有していない。
表示基板11bは、表示基板11bに形成された第1のエレクトロクロミック層14aと、第1のエレクトロクロミック層14aに接して設けられた絶縁層22と、絶縁層22に接して設けられた第2のエレクトロクロミック層14bとを有する。
第1のエレクトロクロミック層14aは、ナノ構造半導体材料17に吸着した第1のエレクトロクロミック化合物16aを含み、第1のエレクトロクロミック層14aが光吸収する波長の光を照射することにより、第1のエレクトロクロミック化合物16aが酸化又は還元され、発色する。
また、第2のエレクトロクロミック層14bは、ナノ構造半導体材料17に吸着した第2のエレクトロクロミック化合物16bを含み、第2のエレクトロクロミック層14bが光吸収する波長の光を照射することにより、第2のエレクトロクロミック化合物16bが酸化又は還元され、発色する。
第1のエレクトロクロミック層14a又は第2のエレクトロクロミック層14bは、LEDから照射される光に対するエレクトロクロミック層の光吸収又は還元電位に差を設けることにより、LEDから照射される光の光量(強度)又は波長に対して発色感度が互いに異なるように設定することができる。
LEDから照射されるLED光の光量(強度)又は波長に対して感度差を設定した場合には、エレクトロクロミック層数に対応した数の異なるLED光源を用いることにより、任意のエレクトロクロミック層を選択的に発色させることができる。
本実施の形態でも、照射する光の強度又は光を照射する時間を連続的に変化させ、エレクトロクロミック化合物の還元量を変化させるような制御を行うことにより、中間色を発色することができる。更に、照射する光の強度又は光を照射する時間を段階的に制御することにより、アナログ的な制御をすることなく、中間色を発色することができる。すなわち、光を光パルスとして照射し、その光パルスの光強度値、パルス幅、及び光パルスを印加する回数を変えることによって、中間色を発色することができる。
(表示部の形成)
まず、表示基板として30mm×30mm、厚さ1mmの石英ガラス基板を準備し、このガラス基板上に、酸化チタンナノ粒子分散液(商品名:SP210、昭和タイタニウム社製、平均粒子径:約20nm)をスピンコート法により塗布し、120℃で15分間アニール処理を行うことによって、約1.5μm厚の酸化チタン粒子膜よりなるナノ構造半導体材料を形成した。引続いて、式(2)
で表される化合物の1wt%2,2,3,3−テトラフロロプロパノール溶液をスピンコート法により塗布し、120℃で10分間アニール処理を行うことによって、酸化チタンナノ粒子に吸着させて、エレクトロクロミック層を形成した。
上記のようにして形成したエレクトロクロミック層の光透過スペクトル測定結果を図5に示す。図5は、ナノ構造半導体材料及びエレクトロクロミック層を形成した表示基板の測定結果を「石英ガラス/酸化チタン/化合物」に示し、ナノ構造半導体材料のみを形成した表示基板の測定結果を「石英ガラス/酸化チタン」に示し、表示基板のみの測定結果を「石英ガラス」に示す。図5における「石英ガラス/酸化チタン」及び「石英ガラス/酸化チタン/化合物」の光透過スペクトル測定結果において、波長が減少するに伴って、略400nm付近から透過率が減少し始め、略350nm以下の波長帯域において透過率が0になる。すなわち、実施例1に係るエレクトロクロミック層は、略400nm以下の波長帯域において、光吸収を有する。
次に、ポリマー電解質として、過塩素酸クロライドをポリエチレングリコール(分子量:200)に10wt%溶解した溶液と、炭酸プロピレンと、UV硬化接着剤(商品名:ロックタイト3301、ヘンケル社製)とを3:4:5で混合した溶液に、白色反射層として酸化チタン粒子(商品名:CR50、石原産業株式会社製)を5wt%添加した分散液を用意し、エレクトロクロミック層表面側に滴下塗布した後、30mm×30mm、厚さ1mmのガラス基板を対向基板として重ね、UV光照射して硬化させることによって貼り合せた。このUV光照射により、エレクトロクロミック層が青色に発色した。この発色は、2日後消色し、白色の表示面となった。
上記操作により、一のエレクトロクロミック層よりなる実施例1に係る表示部1cを得た。
(発色試験)
実施例1に係る表示部1cの表示基板側から、LED光照射装置(商品名:LC−C2、浜松フォトニクス社製)を用いて、照射領域3mmφ、5W/cm2、0.2secのパルス光の条件で、365nmのLED光を照射したところ、照射領域が青色に発色した。
これは、図5の光透過スペクトル測定結果に示すように、実施例1に係る表示部1cのエレクトロクロミック層が略400nm以下の波長において良好な光吸収を有することと一致している。
(表示部の形成)
実施例1において、表示基板面上にITO膜をスパッタ法により約100nmの厚さになるように成膜することによって、第1の表示電極を形成したこと、また、対向基板面上にITO膜をスパッタ法により約100nmの厚さになるように成膜することによって、対向電極を形成したこと、更に、エレクトロクロミック化合物を式(3)
で表される化合物にしたこと以外は同様にして、一のエレクトロクロミック層と電極を有してなる実施例2に係る表示部1dを得た。
(発消色試験)
実施例2に係る表示部1dの表示基板側から、LED光照射装置(商品名:LC−C2、浜松フォトニクス社製)を用いて、照射領域3mmφ、3W/cm
2、0.2secのパルス光の条件で、365nmのLED光を照射したところ、照射領域が緑色に発色した。
更に、照射部ヘッドを移動させて連続照射したところ、線画像が形成された。
次に、表示電極と対向電極間に表示電極がプラスとなるように4.5Vの消色電圧を印加したところ、画像が消色して白色に戻った。
(表示部の形成)
まず、表示基板として30mm×30mm、厚さ1mmのガラス基板を準備し、その上面の25mm×25mmの領域に、ITO膜をスパッタ法により約100nmの厚さになるように成膜することによって、第1の表示電極を形成した。この第1の表示電極の電極端部間のシート抵抗を測定したところ、約200Ωであった。
次に、このように第1の表示電極が形成されたこのガラス基板上に、酸化チタンナノ粒子分散液(商品名:SP210、昭和タイタニウム社製、平均粒子径:約20nm)をスピンコート法により塗布し、120℃で15分間アニール処理を行うことによって、約1.5μm厚の酸化チタン粒子膜よりなるナノ構造半導体材料を形成した。続いて、エレクトロクロミック化合物として、式(3)で表される化合物の1wt%2,2,3,3−テトラフロロプロパノール溶液をスピンコート法により塗布し、120℃で10分間アニール処理を行うことにより、酸化チタンナノ粒子に吸着させて、第1のエレクトロクロミック層を形成した。
次に、このように第1のエレクトロクロミック層が形成されたガラス基板上に、ポリマー電解質として、過塩素酸クロライドをポリエチレングリコール(分子量:200)に10wt%溶解した溶液と、炭酸プロピレンと、UV硬化接着剤(商品名:ロックタイト3301、ヘンケル社製)とを1:34:1.5で混合した溶液をスピンコート法により塗布し、120℃で5分間アニール処理を行うことによって、電解質機能を有するポリマー絶縁層を形成した。続いて、8:2の組成比を有するZnS−SiO2を、スパッタ法により約50nmの膜厚になるように成膜することによって、無機絶縁層を形成した。更に、ZnS−SiO2よりなる無機絶縁層が形成されたガラス基板の表面の20mm×20mmの領域に、ITO膜をスパッタ法により約100nmの厚さになるように成膜することによって、第2の表示電極を形成した。
上記のようにして形成された第2の表示電極の電極端部間のシート抵抗の測定を行った。その結果、電極端部間のシート抵抗は、約200Ωであった。
次に、このように第2の表示電極までが形成されたガラス基板上に、酸化チタンナノ粒子分散液(商品名:SP210、昭和タイタニウム社製、平均粒子径:約20nm)をスピンコート法により塗布し、120℃で15分間アニール処理を行うことによって、約1.5μmの酸化チタン粒子膜よりなるナノ構造半導体材料を形成した。続いて、エレクトロクロミック化合物として、式(2)で表される化合物の1wt%2,2,3,3−テトラフロロプロパノール溶液をスピンコート法により塗布し、120℃で10分間アニール処理を行うことにより、酸化チタンナノ粒子に吸着させて、第2のエレクトロクロミック層を形成した。ここで、第1の表示電極と第2の表示電極との間の抵抗測定を行った。その結果は、40MΩ以上であり、良好な絶縁特性であった。
更に、上記のようにして形成したエレクトロクロミック層の光透過スペクトル測定結果を図6に示す。図6における光透過スペクトル測定結果において、波長が減少するに従って、略400nm付近から透過率が減少し始め、略350nm以下の波長帯域において透過率が0になる。すなわち、実施例3に係るエレクトロクロミック層は、略400nm以下の波長帯域において、光吸収を有する。
一方、先ほどのガラス基板とは別に30mm×30mmのガラス基板を準備し、その上面の全面に、酸化スズよりなる透明導電性薄膜を成膜することによって、対向電極を形成した。更に、この酸化スズよりなる透明導電性薄膜が全面に形成されたガラス基板の上面に、熱硬化性の導電性カーボンインクとしてCH10(商品名:十条ケミカル社製)に酢酸2エトキシエチルを25wt%添加して調製した溶液をスピンコート法により塗布し、120℃5分間アニール処理を行うことによって、対向電極を形成した。
更にその上に、過塩素酸クロライドをポリエチレングリコール(分子量:200)に10wt%溶解した溶液と、炭酸プロピレンと、UV硬化接着剤(商品名:ロックタイト3301、ヘンケル社製)とを3:4:5で混合した溶液に、白色反射層として酸化チタン粒子(商品名:CR50、石原産業株式会社製)を40wt%添加した分散液を用意し、スピンコート法により塗布し、120℃15分間アニール処理を行うことによって、白色反射層を形成した。
次に、ポリマー電解質として、過塩素酸クロライドをポリエチレングリコール(分子量:200)に10wt%溶解した溶液と、炭酸プロピレンと、UV硬化接着剤(商品名:ロックタイト3301、ヘンケル社製)とを3:4:5で混合した溶液を用意し、第2のエレクトロクロミック層表面側に滴下塗布した後、対向基板の白色反射面側と重ね、UV光照射して硬化させることによって貼り合せた。このUV光照射により、エレクトロクロミック層が黒色に発色した。この発色は、2日後消色し、白色の表示面となった。
上記操作により、実施例3に係る表示部1eを得た。
(発消色試験−1)
実施例3に係る表示部1eの表示基板側から、LED光照射装置(商品名:LC−C2、浜松フォトニクス社製)を用いて、照射領域3mmφ、7W/cm2、0.5secのパルス光の条件で、365nmのLED光を照射したところ、第1のエレクトロクロミック層と第2のエレクトロクロミック層とがともに発色し、照射領域が黒色に発色した。
更に、照射部ヘッドを移動させて連続照射したところ、黒色線画像を形成した。
これは、図6の光透過スペクトル測定結果に示すように、実施例3に係る表示部1eのエレクトロクロミック層が略400nm以下の波長において良好な光吸収を有することと一致している。
次に、第2の表示電極と対向電極との間に、第2の表示電極がプラスになるように4.5Vの消色電圧を印加したところ、第2のエレクトロクロミック層が消色して、緑色線画像になった。これは、第1のエレクトロクロミック層による緑色の発色である。
次に、前述と同様に黒色線画像を形成した後、第1の表示電極と対向電極との間に、第1の表示電極がプラスとなるように4.5Vの消色電圧を印加したところ、第1のエレクトロクロミック層が発色して、青色線画像になった。これは、第2のエレクトロクロミック層による青色の発色である。
上記駆動操作により、黒色、緑色、青色の個別表示が可能である。
(発消色試験−2)
実施例3に係る表示部1eの表示基板側から、LED光照射装置(商品名:LC−C2、浜松フォトニクス社製)を用いて、照射領域3mmφ、7W/cm2、0.5secのパルス光の条件で、365nmのLED光を照射したところ、第1のエレクトロクロミック層と第2のエレクトロクロミック層がともに発色し、照射領域が黒色に発色した。
更に、照射部ヘッドを移動させて連続照射したところ、黒色線画像を形成した。
次に、第1の表示電極と対向電極との間に、第1の表示電極がプラスになるように4.5Vの消色電圧を印加したところ、第1のエレクトロクロミック層が消色して、青色線画像になった。これは、第2のエレクトロクロミック層による青色の発色である。
更に、新たに照射領域3mmφ、2W/cm2、0.5secのパルス光の条件で、385nmのLED光を照射したところ、第1のエレクトロクロミック層のみが消色して、照射領域が緑色に発色した。さらに照射部ヘッドを移動させて連続照射したところ、緑色線画像を形成した。
更に、新たに照射領域3mmφ、7W/cm2、0.5secのパルス光の条件で、385nmのLED光を照射したところ、第1のエレクトロクロミック層と第2のエレクトロクロミック層とがともに発色し、照射領域が黒色に発色した。
更に、照射部ヘッドを移動させて連続照射したところ、黒色線画像を形成した。
上記駆動操作により、黒色、緑色、青色の同時表示が可能である。
以上、本発明の好ましい実施の形態について記述したが、本発明はかかる特定の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。