JP5350579B2 - 連続式溶融めっき用熱延鋼板の材質安定化方法 - Google Patents
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Description
しかし各工程の作業実績は、必ずしも設定・指示された作業条件と正確には一致せず、例えば素材鋼の鋼組成(成分含有量の分析値)と、予め指示された鋼組成(目標成分値)との間には幾分のずれがあり、また熱間圧延の仕上げ温度・巻取り温度、焼鈍処理温度、冷延圧延率、その他の諸条件の作業実績についても、工程のばらつきに起因する設計値からのずれを付随するのが通常である。
製鋼・鋳造、熱間圧延、熱延鋼板のスキンパスミル圧延、および連続式溶融めっきライン内の連続熱処理(以下単に「熱処理」という)の工程を経由して製造される、連続式溶融めっき母材鋼板である熱延鋼板の製品材料特性値の目標値からのずれを低減する方法において、
素材鋼を、質量%で、C:0.080〜0.30%,Si:0.001〜0.040%,Mn:0.10〜2.00%,P:0.030%以下,S:0.030%以下,Al:0.010〜0.100%,N:0.0005〜0.0150%、残部Fe及び不可避不純物からなる低・中炭素鋼とし、
予め過去の操業実績データの解析により、材質影響因子として選ばれた前記素材鋼の成分値、熱間圧延での巻取り温度、熱延鋼板のスキンパスミル圧延の圧延伸び率、スキンパス圧延前の鋼板の板厚、熱処理における加熱温度及び鋼板移送速度と、製品鋼板の材料特性値として選ばれる降伏強さ(YP)との関係式を求めておき、
鋼板の熱処理を行なうに際して、熱処理工程に到るまでの各工程の作業実績値と、これから実施しようとする熱処理の設計加熱温度とをもとに、前記関係式により、製品鋼板の降伏強さ(YP)の予測値を算出し、該予測値と目標値との差を求めると共に、熱処理の加熱温度について、上記の予測値と目標値との差を解消するに必要な温度修正量を算出し、
算出された温度修正量に基づいて、設計加熱温度を修正して鋼板の熱処理を行なうものであり、
前記材質影響因子と、製品鋼板の降伏強さ(YP)との関係式が、下記[A]式で表されるものであることを特徴としている。
(数1)
YP(N/mm 2 )=324+496×(√C−√0.130)+62×(Mn−0.464)+878×(P−0.016)
+9431×(N−0.0021)+778×(Al−0.030)−0.084×(CT−567)
+10×(SKP−4.05)−0.357×(SS−675)−12.26×{√(50/LS×60)
−√(50/49.5×60)}−5.58×{t×(1-SKP/100)−4.228} +m * …[A]
[式中、元素記号(C,Mn,P,N,Al):当該元素のmass%で示される数値、
CT :熱間圧延における巻取り温度(℃)の数値
SKP :スキンパス圧延(めっき前)での伸び率(%)の数値
SS :溶融めっきラインにおける連続熱処理炉での鋼板の板温(℃)の数値
LS :溶融めっきラインの鋼帯移送速度(m/min)の数値
t :鋼板(スキンパス圧延前)の板厚(mm)の数値
m * :製品板厚5.8(mm)未満、設計加熱又は熱処理温度690-720℃及び
C量0.08-0.13%の場合はm * =+12N/mm 2 、それ以外の場合はm * =0]
製鋼・鋳造、熱間圧延、熱延鋼板のスキンパスミル圧延、および連続式溶融めっきライン内の連続熱処理(以下単に「熱処理」という)の工程を経由して製造される、連続式溶融めっき母材鋼板である熱延鋼板の製品材料特性値の目標値からのずれを低減する方法において、
素材鋼を、質量%で、C:0.080〜0.30%,Si:0.001〜0.040%,Mn:0.10〜2.00%,P:0.030%以下,S:0.030%以下,Al:0.010〜0.100%,N:0.0005〜0.0150%、残部Fe及び不可避不純物からなる低・中炭素鋼とし、
予め過去の操業実績データの解析により、材質影響因子として選ばれた前記素材鋼の成分値、熱間圧延での巻取り温度、熱延鋼板のスキンパスミル圧延の圧延伸び率、スキンパス圧延前の鋼板の板厚、熱処理における加熱温度及び鋼板移送速度と、製品鋼板の材料特性値として選ばれる引張強さ(TS)との関係式を求めておき、
鋼板の熱処理を行なうに際して、熱処理工程に到るまでの各工程の作業実績値と、これから実施しようとする熱処理の設計加熱温度とをもとに、前記関係式により、製品鋼板の引張強さ(TS)の予測値を算出し、該予測値と目標値との差を求めると共に、熱処理の加熱温度について、上記の予測値と目標値との差を解消するに必要な温度修正量を算出し、
算出された温度修正量に基づいて、設計加熱温度を修正して鋼板の熱処理を行なうものであり、
前記材質影響因子と、製品鋼板の引張強さ(TS)との関係式が、下記[B]式で表されるものである。
(数2)
TS(N/mm 2 )=439+480×(√C−√0.130)+53×(Mn−0.464)+685×(P−0.016)
+2464×(N−0.0021)+603×(Al−0.030)+0.148×(CT−567)
+5×(SKP−4.05)−0.216×(SS−675)−6.37×{√(50/LS×60)
−√(50/49.5×60)}−0.914×{t×(1−SKP/100)−4.228} …[B]
[式中、元素記号(C,Mn,P,N,Al)、CT、SKP、SS、LS、及びtは前記と同義 ]
[製鋼]−[熱間圧延]−[スキンパス圧延]−[熱処理(連続焼鈍)]−[連続溶融めっき]
上記工程中、「スキンパス圧延」は、熱延鋼板の形状修正等を目的としたスキンパスミルによる軽圧下(伸び率:約1〜10%程度)の調質圧延である。鋼板の熱処理は、連続式溶融めっきライン内の熱処理炉(焼鈍炉)で行われ、熱処理につづいて溶融めっき装置に導入され製品めっき鋼板に仕上げられる。
上記熱延鋼板(めっき母材板)は、溶融めっき工程で材料特性値(機械的性質)が実質的に変動するような熱的・機械的作用を受けないので、製品鋼帯(ここでは溶融めっき鋼板)の材料特性値は、上記熱処理条件により最終的に決定される。なお、溶融めっきの材種は亜鉛又は亜鉛合金めっき(例えばZn-Al-Mg系合金めっき),アルミ又はアルミ合金めっき等である。
製鋼工程から熱処理に到る各工程(前工程)は、製造しようとする鋼板の製品仕様に基づいて決定される作業条件に従って行えばよく、この点は通常の操業法と異ならない。本発明においては、鋼板の熱処理を実施するに際して、その前工程の作業条件(素材鋼成分値,熱延巻取り温度,スキンパス伸び率等)の実績値を収集し、その実績値と、これから行なおうとする熱処理条件(加熱温度,ライン速度等)の設計値をもとに、材質予測式により製品鋼板の材料特性値を計算(予測)する。
・「予測値>上限値」の場合は、当初の設定温度より高温側に修正。
・「下限値>予測値」の場合は、当初の設定温度より低温側に修正。
・「上限値≧予測値≧下限値」の場合は、加熱温度の修正を要せず、予め設定された温度条件で熱処理を実施する。
操業因子の相互交絡とその影響について、二三の例を挙げれば、素材鋼組成に関して、鋼中C%とMn%(いずれも強度を高める作用を有する元素)との間に正の相関がある場合、散布図には強度に対する影響が実際より大きく現れ、またC%とAl%とが負の相関を有するような場合は、Al%の増加で強度が低下するという、事実とは逆の相関が現れることもある。更に、熱延鋼板の巻取り温度について、巻取り温度と鋼中C%との間に正の相関がある場合においては、その温度上昇により製品強度が増加するという不合理な相関が現れ、あるいは熱処理工程のライン速度(鋼板の昇温・加熱保持時間等と関連し材質影響因子と考えられる)の製品材質に対する本来の影響が、他の作業因子の影響を受けて散布図には判然と現れないこともある。
C:0.080〜0.30%,Si:0.001〜0.040%,Mn:0.10〜2.00%,P:0.030%以下,S:0.030%以下,Al:0.010〜0.100%,N:0.0005〜0.0150%、残部:Fe及び不可避不純物。
下記の材質予測式[A]及び[B]は、前記方針のもとに熱延鋼板製造工程での要因相互の影響を補正ないし除去しつつ重解析分析を行って得られたものである(後述)。
[YP予測式(A)]
YP(N/mm2)=324+496×(√C−√0.130)+62×(Mn−0.464)+878×(P−0.016)
+9431×(N−0.0021)+778×(Al−0.030)−0.084×(CT−567)
+10×(SKP−4.05)−0.357×(SS−675)−12.26×{√(50/LS×60)
−√(50/49.5×60)}−5.58×{t×(1-SKP/100)−4.228}+m*
[式中、元素記号(C,Mn,P,N,Al):当該元素の含有量(mass%)の数値、
CT :熱間圧延における巻取り温度(℃)の数値
SKP :スキンパス圧延(めっき前)での伸び率(%)の数値
SS :溶融めっきラインにおける熱処理炉での鋼板の板温(℃)の数値
LS :溶融めっきラインの鋼帯移送速度(m/min)の数値
t :鋼板(スキンパス圧延前)の板厚(mm)の数値
m* :製品板厚5.8(mm)未満、設計加熱又は熱処理温度690-720℃及び
C量0.08-0.13%の場合、m*=+12N/mm2、それ以外の場合はm*=0]
[TS予測式(B)]
TS(N/mm2)=439+480×(√C−√0.130)+53×(Mn−0.464)+685×(P−0.016)
+2464×(N−0.0021)+603×(Al−0.030)+0.148×(CT−567)
+5×(SKP−4.05)−0.216×(SS−675)−6.37×{√(50/LS×60)
−√(50/49.5×60)}−0.914×{t×(1−SKP/100)−4.228}
[式中、元素記号(C,Mn,P,N,Al)、CT,SKP,SS,SL及びtは前記と同義]
まず操業実績データの解析にあたり、既知のラボデータとしてスキンパス圧延伸び率(SKP)の影響、及び熱処理(焼鈍)温度の影響に関するデータを利用することとした。図1(a)(b)にスキンパス圧延伸び率(SKP)の影響、及び図2(a)(b)に熱処理(焼鈍)温度(SS)の影響を示す。各図中の「CT」は熱間圧延での巻取り温度である。
図1(a)及び同図(b)より、SKP伸び率1%増加当たり
降伏強さ(YP);+10N/mm2(増加)
引張強さ(TS):+ 5N/mm2(増加)
図2(a)及び同図(b)より、熱処理加熱温度1℃上昇当たり
降伏強さ(YP);−0.357N/mm2(減少)
引張強さ(TS):−0.216N/mm2(減少) である。
また素材鋼成分値(C,Mn,P,N等)については、元素毎の影響を知るために、着目している成分元素以外の成分を固定してデータを抽出し材料特性値(YP,TS)との関係を求め、これを元素毎に繰返すことにより成分系全体の影響度を把握するようにした。材質に対する鋼成分の影響は、固溶強化と析出強化とがあり、両者は材質に及ぼす影響度の回帰曲線が異なるので分けて扱う必要がある。Cの影響度(材質強化量)については、本発明の鋼組成(C量が比較的多い)ではセメンタイト(Fe3C)として析出しているので、転位と析出粒子との関係から考察することにした。Si,Mn,P,N等の固溶強化元素は、よく知られているように含有量と材質強化量は直線(比例)関係として捉えることができる。但しSiに関しては、解析結果から、本発明の低・中炭素鋼では材質変動の実質的な影響はなく、従って前記予測式はSiの項を含まない。
C%と強化量の関係については、析出粒子径が大きい場合のルーピングモデル(Looping Model)と析出粒子径が小さい場合のカッティングモデル(Cutting Model)とが知られている。ルーピングモデルは、析出C量の-1/3乗の逆数と強化量とが直線関係をなし、カッティングモデルは析出C量の平方根(√C)と強化量とが直線関係をなすものである。C量が比較的多く、炭化物粒が大きくなれば、理論的にはルーピングモデルが適用されることになるが、本発明のC量範囲では、どちらのモデル式を適用してもさほどの違いのないことが検証されており、このため予測式の簡素化の観点から、カッティングモデルを適用することとした。
YP=495.72×√C%+144.69 R2=0.3456 … [1A]
TS=479.60×√C%+267.67 R2=0.5749 … [1B]
√Cの1ポイント増加当りの影響度 YP:+496N/mm2(増加)
TS:+480N/mm2(増加)
YP=62×Mn%+293.45 R2=0.0525 … [2A]
TS=53×Mn%+415.07 R2=0.1029 … [2B]
Mnの1%増加当りの影響度 YP:+62N/mm2(増加)
TS:+53N/mm2(増加)
[P量の影響]
YP=877.959×P%+309.515 R2=0.104 … [3A]
TS=684.801×P%+430.490 R2=0.104 … [3B]
Pの1%増加当りの影響度 YP:+878N/mm2(増加)
TS:+685N/mm2(増加)
YP=9431.255×N%+306.440 R2=0.056 … [4A]
TS=2464.167×N%+438.401 R2=0.009 … [4B]
Nの1%増加当りの影響度 YP:+9431N/mm2(増加)
TS:+2464N/mm2(増加)
[Al量の影響]
YP=777.93×Al%+304.51 R2=0.0635 … [5A]
TS=602.84×Al%+427.73 R2=0.11 … [5B]
Alの1%増加当りの影響度 YP:+778N/mm2(増加)
TS:+603N/mm2(増加)
熱延巻取り温度は、鋼中の炭化物や、窒化アルミニウム(AlN)析出粒子の大きさ、フリーC量等に影響することから、その温度が低いほど硬質化することが予想されるが、低・中炭素鋼の一般的な巻取り温度(約450〜550℃)およびその後の熱処理温度(約600℃以上)の条件下では材質に及ぼす影響は小さく、その影響度は次式で表される。
YP=−0.0841×CT+370.08 R2=0.0083 … [6A]
TS=−0.148×CT+354.9 R2=0.0695 … [6B]
CT(巻取り温度)の1℃上昇あたり YP:−0.084N/mm2(減少)
TS:+0.148N/mm2(増加)
なお、熱延仕上温度については、解析結果から通常の作業温度範囲(≧Ar3変態点)であれば製品材質への実質的な影響はなく、従って予測式には熱延温度の項は含まれない。
ライン速度(通板速度)は、鋼板の加熱時間および加熱後の冷却速度に関連し、製品材質に影響する。ライン速度の増加(→均熱時間の短縮および加熱後の冷却速度の増加)は、製品の硬質化を伴い、ライン速度の低下はそれと逆の効果として製品の軟質化を伴なう。ライン速度によるこのような材質変動は、鋼板組織の結晶成長および炭化物の成長の遅速、あるいはフリーC量の増減等による影響と考えられるので、反応速度論として時間の平方根で表すことができる。そこで、ライン速度の逆数をとり時間の平方根(√(50/LS×60,sec))として材質変動との関係をみると、両者は直線にのり、その関係は次式で表される(ライン速度はm/minをm/secに換算表示)。
YP=−12.264×√(50/LS×60)+418.34 R2=0.2227 … [6A]
TS=−6.3733×√(50/LS×60)+488.93 R2=0.2227 … [6B]
√(50/LS×60,sec)(ライン速度の逆数の平方根)の1ポイント当りの影響
YP:−12.26N/mm2(減少)
TS:−6.37N/mm2(減少)
製品の降伏強さ(YP)及び引張強さ(TS)のいずれも、荷重を断面積(板厚×板幅)で除した値であるから、板厚の影響は製品にあらわれないようにも思えるが、板厚の厚薄により冷却状況が異なることを考慮すると、これを無視することはできない。その影響度は次式で表される。この相関解析には、降伏強さ(YP)及び引張強さ(TS)として、スキンパス伸び率(SKP)と熱処理温度(SS)の補正に加え、素材鋼成分値(C,Mn,P,N,Al等)、巻取り温度(CT)およびライン速度(LS)の補正を施したデータを使用している。
YP=−5.5757×t+355.26 R2=0.0484 … [7A]
TS=−0.9141×t+444.16 R2=0.0084 … [7B]
板厚(t)の1mm増加あたりの影響度 YP:−5.58N/mm2(減少)
TS:−0.914N/mm2(減少)
[製鋼]−[熱間圧延]−[スキンパス圧延]−[熱処理(連続焼鈍)]−[連続溶融めっき]
(1)素材鋼組成(質量%)
C:0.120〜0.152,Si:0.002〜0.010,Mn:0.41〜0.56,P:0.008〜0.025,N:0.0014
〜0.0035,Al:0.014〜0.060,Bal:Fe(及び不可避不純物)
(2)熱間圧延の巻取り温度 :560〜584℃
(3)スキンパスでの圧延伸び率:2〜6%
(4)熱処理(連続式溶融めっきライン内焼鈍炉)
(4.1)ライン通板速度 :29〜85mpm
(4.2)加熱温度 :631〜711℃
(4.3)鋼板の板厚 :3.2〜6.0mm
(5)溶融めっき材種:亜鉛合金(Zn-Mg-Al系合金)めっき
熱処理炉(焼鈍炉)を備えた連続溶融めっきラインに熱延鋼板を投入するに先だって、予測式[A][B]による製品鋼板の材料特性値の計算、予測値と製品材質の目標値との比較、および製品材質の予測値と目標値とにずれがある場合のずれの大きさ(上下限値からの乖離の大きさ)と、そのずれを解消するのに必要な加熱温度の修正量の計算を行なった。なお素材鋼成分値(C,Mn,P,N,Al)、熱延巻取り温度(CT)、スキンパス圧延伸び率(SKP)、板厚(t)はそれぞれの実績値を使用し、熱処理条件(加熱温度SS,ライン速度LS)については、製品仕様に基づく設計値を代入した。
上記計算結果に基づいて熱処理温度を修正再設定したうえ熱処理を行なった。これら一連の計算、判断、指令等はCPUにて行なった。
表1に、上記発明例の鋼板と従来の工程(予測式に基づく加熱温度の修正再設定の操作なし)の鋼板(従来材)について測定された引張強さ(TS)、降伏強さ(YP)及び伸び(El)を示す。また、図5(1)(2)は、表1に示した発明例及び従来材の引張強さ(TS)と降伏強さ(YP)のバランスを示し、図6(1)(2)は、引張強さ(TS)と伸び(El)のバランスを示している(各図とも、(1):発明例,(2):従来材)。
発明例のものは、従来材と比べて強度及び伸び(延性)のばらつきが少なく、引張強さ(TS)と降伏強さ(YP)のバランス、及び引張強さ(TS)と伸び(El)のバランスも良好であり、従来材との差異は歴然である。
発明例 従来材
平均 σ 平均 σ
降伏強さYP(N/mm2) 324 12 332 14
引張強さTS(N/mm2) 438 7 446 10
伸び El(%) 35.2 1.1 35.1 1.2
熱処理温度の昇降温制御は比較的容易であり、また材質に及ぼす熱処理温度の影響は比較的大きいので、熱処理温度の修正再設定の操作のみで、熱処理に到る前工程の作業実績のばらつきによる材質影響の総和を効果的に緩和解消することができ、従って各工程の作業実績と製品材質との相関解析で得られる予測式に基づいて、熱処理温度を修正再設定することにより、製品材料特性値の目標値からのずれが低減解消され、材質のばらつきが少なく、製品仕様を満足する製品鋼板を安定して製造することができる。
Claims (2)
- 製鋼・鋳造、熱間圧延、熱延鋼板のスキンパスミル圧延、および連続式溶融めっきライン内の連続熱処理(以下単に「熱処理」という)の工程を経由して製造される、連続式溶融めっき母材鋼板である熱延鋼板の製品材料特性値の目標値からのずれを低減する方法において、
素材鋼を、質量%で、C:0.080〜0.30%,Si:0.001〜0.040%,Mn:0.10〜2.00%,P:0.030%以下,S:0.030%以下,Al:0.010〜0.100%,N:0.0005〜0.0150%、残部Fe及び不可避不純物からなる低・中炭素鋼とし、
予め過去の操業実績データの解析により、材質影響因子として選ばれた前記素材鋼の成分値、熱間圧延での巻取り温度、熱延鋼板のスキンパスミル圧延の圧延伸び率、スキンパス圧延前の鋼板の板厚、熱処理における加熱温度及び鋼板移送速度と、製品鋼板の材料特性値として選ばれる降伏強さ(YP)との関係式を求めておき、
鋼板の熱処理を行なうに際して、熱処理工程に到るまでの各工程の作業実績値と、これから実施しようとする熱処理の設計加熱温度とをもとに、前記関係式により、製品鋼板の降伏強さ(YP)の予測値を算出し、該予測値と目標値との差を求めると共に、熱処理の加熱温度について、上記の予測値と目標値との差を解消するに必要な温度修正量を算出し、
算出された温度修正量に基づいて、設計加熱温度を修正して鋼板の熱処理を行なうものであり、
前記材質影響因子と、製品鋼板の降伏強さ(YP)との関係式が、下記[A]式で表される熱延鋼板の材質安定化方法。
(数1)
YP(N/mm 2 )=324+496×(√C−√0.130)+62×(Mn−0.464)+878×(P−0.016)
+9431×(N−0.0021)+778×(Al−0.030)−0.084×(CT−567)
+10×(SKP−4.05)−0.357×(SS−675)−12.26×{√(50/LS×60)
−√(50/49.5×60)}−5.58×{t×(1-SKP/100)−4.228} +m * …[A]
[式中、元素記号(C,Mn,P,N,Al):当該元素のmass%で示される数値、
CT :熱間圧延における巻取り温度(℃)の数値
SKP :スキンパス圧延(めっき前)での伸び率(%)の数値
SS :溶融めっきラインにおける連続熱処理炉での鋼板の板温(℃)の数値
LS :溶融めっきラインの鋼帯移送速度(m/min)の数値
t :鋼板(スキンパス圧延前)の板厚(mm)の数値
m * :製品板厚5.8(mm)未満、設計加熱又は熱処理温度690-720℃及び
C量0.08-0.13%の場合はm * =+12N/mm 2 、それ以外の場合はm * =0] - 製鋼・鋳造、熱間圧延、熱延鋼板のスキンパスミル圧延、および連続式溶融めっきライン内の連続熱処理(以下単に「熱処理」という)の工程を経由して製造される、連続式溶融めっき母材鋼板である熱延鋼板の製品材料特性値の目標値からのずれを低減する方法において、
素材鋼を、質量%で、C:0.080〜0.30%,Si:0.001〜0.040%,Mn:0.10〜2.00%,P:0.030%以下,S:0.030%以下,Al:0.010〜0.100%,N:0.0005〜0.0150%、残部Fe及び不可避不純物からなる低・中炭素鋼とし、
予め過去の操業実績データの解析により、材質影響因子として選ばれた前記素材鋼の成分値、熱間圧延での巻取り温度、熱延鋼板のスキンパスミル圧延の圧延伸び率、スキンパス圧延前の鋼板の板厚、熱処理における加熱温度及び鋼板移送速度と、製品鋼板の材料特性値として選ばれる引張強さ(TS)との関係式を求めておき、
鋼板の熱処理を行なうに際して、熱処理工程に到るまでの各工程の作業実績値と、これから実施しようとする熱処理の設計加熱温度とをもとに、前記関係式により、製品鋼板の引張強さ(TS)の予測値を算出し、該予測値と目標値との差を求めると共に、熱処理の加熱温度について、上記の予測値と目標値との差を解消するに必要な温度修正量を算出し、
算出された温度修正量に基づいて、設計加熱温度を修正して鋼板の熱処理を行なうものであり、
前記材質影響因子と、製品鋼板の引張強さ(TS)との関係式が、下記[B]式で表される熱延鋼板の材質安定化方法。
(数2)
TS(N/mm 2 )=439+480×(√C−√0.130)+53×(Mn−0.464)+685×(P−0.016)
+2464×(N−0.0021)+603×(Al−0.030)+0.148×(CT−567)
+5×(SKP−4.05)−0.216×(SS−675)−6.37×{√(50/LS×60)
−√(50/49.5×60)}−0.914×{t×(1−SKP/100)−4.228} …[B]
[式中、元素記号(C,Mn,P,N,Al)、CT、SKP、SS、LS、及びtは前記と同義 ]
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