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JP5236786B2 - 内燃機関の可変動弁システム及び可変動弁装置 - Google Patents

内燃機関の可変動弁システム及び可変動弁装置 Download PDF

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Description

本発明は、機関始動時における排気エミッション性能の向上を図り得る内燃機関の可変動弁システム及び可変動弁装置に関する。
従来の内燃機関の可変動弁装置としては、例えば、以下の特許文献1に記載されているものが知られている。
概略を説明すれば、この可変動弁装置は、ハウジング内に隔成された進角側油室や遅角側油室に油圧を選択的に給排して、カムシャフトに連結されたベーンを正逆回転させることによって、吸気弁の開閉時期(バルブタイミング)を機関運転状態に応じて変更するものである。
そして、機関の停止前に、ある程度進角した中間位置に制御しながら前記ベーンをロックピンによって固定してハウジングとベーンとの自由な相対回転を規制して、機関の再始動時に吸気弁と排気弁の適度なバルブオーバーラップを創成する。これによって、冷機始動時の排気エミッション性能など、始動性能を向上させるようになっている。
特開2005−233049号公報
しかしながら、前記従来の内燃機関の可変動弁装置にあっては、車両の急ブレーキやエンジンストップなどの様々な突然の機関停止態様において、前記中間位置では機械的に安定する位置ではないので、前記ロックピンをロック穴に常に確実に係入ロックさせるのは困難となる。したがって、適度な進角側の位置に保持することができず、冷機始動時の排気エミッションの低減効果を十分に得られないおそれがある。
また、別の方策として、冷機始動時に前記進角側油室へ作動油圧を供給して前記ベーンを適度に進角側へ回転させてバルブオーバーラップをやや大きくすることも考えられるが、かかる冷機始動時は作動油の温度が低く油の粘度が高くなっているため、かかる粘性抵抗によって進角側油室へ作動油を速やかに供給することができない。この結果、ベーンとハウジングの相対回転をスムーズに行うことができず、排気エミッションが増加してしまうおそれがある。
本発明は、前記従来の可変動弁装置の技術的課題に鑑みて案出したもので、機関停止時に排気側位相変更機構と吸気側位相変更機構の両方の作動によって適度なバルブオーバーラップを予め機械的に安定的に創成して、冷機始動時における排気エミッションの低減化を確実に図り得る内燃機関の可変動弁システム及び可変動弁装置を提供することを目的としている。
本発明は、燃焼室に直接燃料を噴射する直接噴射式内燃機関に適用される可変動弁装置であって、
吸気弁の開閉タイミングを可変にする吸気側位相変換機構と、
排気弁の開閉タイミングを可変にする排気側位相変換機構と、を備え、
機関を停止するときに、前記吸気側位相変換機構によって前記吸気弁の開閉タイミングが、前記吸気弁と排気弁のバルブオーバーラップをほぼ最大に増加して機械的に保持される第1の位置に変更され、かつ、前記排気側位相変換機構によって前記排気弁の開閉タイミングが、前記バルブオーバーラップがほぼ最小に減少して機械的に保持される第2の位置に変更され、
前記吸気弁の開閉タイミングが前記第1の位置に保持され、かつ、前記排気弁の開閉タイミングが前記第2の位置に保持させているときのバルブオーバーラップは、前記吸気弁の開閉タイミングが最進角で前記排気弁の開閉タイミングが最遅角の場合におけるバルブオーバーラップより小さく、かつ、前記吸気弁の開閉タイミングが最遅角で、前記排気弁の開閉タイミングが最進角の場合におけるバルブオーバーラップよりも大きくなるように設定され、
機関を始動するときに、前記吸気側位相変換機構と排気側位相変換機構によって、前記吸気弁の開閉タイミングを前記第1の位置に保持すると共に、前記排気弁の開閉タイミングを第2の位置に保持することを特徴としている。
この発明によれば、従来技術のように、機関の停止時に機械的に安定しない中間位置に固定したり、機関始動時に作動油圧によって強制的に相対回転させるのではなく、機関の始動前、つまり機関停止時に、予め両方の位相変換機構によって排気弁と吸気弁の適度なバルブオーバーラップを機械的に安定的に創成しておくことによって、機関始動初期から最適なバルブオーバーラップを確保することが可能になるため、排気エミッションを確実かつ効果的に低減することができる。
以下、本発明に係る内燃機関の可変動弁装置の実施形態を図面に基づいて詳述する。この実施形態は、いわゆる4サイクルのガソリン機関に適用したものを示している。
まず、本発明における内燃機関の可変動弁装置は、図1〜図5に示すように、クランクシャフト01の駆動プーリ02からタイミングチェーン03を介して回転力が伝達される吸気側タイミングプーリ04及び排気側タイミングプーリ05と、該各タイミングプーリ04,05からそれぞれ駆動回転力が伝達される吸気側カムシャフト06及び排気側カムシャフト07と、を備え、該各カムシャフト06,07には、一気筒当たりそれぞれ2つずつ設けられた図外の吸気弁と排気弁とをバルブスプリングのばね力に抗して開作動させる吸気側カム08,08と排気側カム09,09が設けられている。
また、前記各タイミングプーリ04,05と吸気、排気カムシャフト06,07との間には、機関運転状態に応じて前記各吸気弁と排気弁の開閉タイミングをそれぞれ制御する一方の位相変換機構である排気側位相変更機構(排気VTC)1と他方の位相変換機構である吸気側位相変換機構(吸気VTC)2が設けられている。
前記排気VTC1と吸気VTC2は、それぞれベーンタイプのものであって、基本構造は共通している。まず、排気VTC1の構造を説明すると、図2及び図3に示すように、前記排気カムシャフト07に回転力を伝達する前記タイミングプーリ05と、前記排気カムシャフト07の端部に固定されてタイミングプーリ05に内部に回転自在に収容されたベーン部材3と、該ベーン部材3を油圧によって正逆回転させる油圧回路4とを備えている。
前記タイミングプーリ05は、前記ベーン部材3を回転自在に収容したハウジング5と、該ハウジング5の前端開口を閉塞する円板状のフロントカバー6と、ハウジング5の後端開口を閉塞するほぼ円板状のリアカバー7とから構成され、これらハウジング5及びフロントカバー6,リアカバー7は、4本の小径ボルト8によって排気カムシャフト07の軸方向から一体的に共締め固定されている。
前記ハウジング5は、前後両端が開口形成された円筒状を呈し、内周面の周方向の約90°位置に4つの隔壁であるシュー5aが内方に向かって突設されている。この各シュー5aは、横断面ほぼ台形状を呈し、ほぼ中央位置に前記各ボルト8の軸部が挿通する4つのボルト挿通孔が軸方向へ貫通形成されていると共に、各内端面の高位部位置に軸方向に沿って切欠形成された保持溝内に、コ字形のシール部材9と該シール部材9を内方へ押圧する図外の板ばねが嵌合保持されている。
前記フロントカバー6は、円盤プレート状に形成されて、中央に比較的大径な支持孔6aが穿設されていると共に、外周部に前記ハウジング5の各ボルト挿通孔に対応する位置に図外の4つのボルト孔が穿設されている。
前記リアカバー7は、後端側に前記タイミングチェーンが噛合する歯車部7aが一体に設けられていると共に、ほぼ中央に大径な軸受孔7bが軸方向に貫通形成されている。
前記ベーン部材3は、中央にボルト挿通孔を有する円環状のベーンロータ3aと、該ベーンロータ3aの外周面の周方向のほぼ90°位置に一体に設けられた4つのベーン3bとを備えている。
前記ベーンロータ3aは、前端側の小径筒部が前記フロントカバー6の支持孔6aに回転自在に支持されている一方、後端側の小径な円筒部が前記リアカバー7の軸受孔7bに回転自在に支持されている。
また、ベーン部材3は、前記ベーンロータ3aのボルト挿通孔に軸方向から挿通した固定ボルト9によって排気カムシャフト07の前端部に軸方向から固定されている。
前記各ベーン3bは、その内の3つが比較的細長い長方体形状に形成され、他の1つが比較的大きな台形状に形成されて、前記3つのベーン3bはそれぞれの幅長さがほぼ同一に設定されているのに対して1つのベーン3bはその幅長さが前記3つのものよりも大きく設定されて、ベーン部材3全体の重量バランスが取られている。
また、各ベーン3bは、各シュー5a間に配置されていると共に、各外面の軸方向に形成された細長い保持溝内に前記ハウジング5の内周面に摺接するコ字形のシール部材10及び該シール部材10をハウジング5の内周面方向に押圧する板ばねが夫々嵌着保持されている。また、各ベーン3bの前記排気カムシャフト07の回転方向と同じ側のそれぞれの一側面には、ほぼ円形状の2つの凹溝3cがそれぞれ形成されている。
また、この各ベーン3bの両側と各シュー5aの両側面との間に、それぞれ4つの進角側油室11と遅角側油室12がそれぞれ隔成されている。
前記油圧回路33は、図2に示すように、前記各進角側油室11に対して作動油の油圧を給排する第1油圧通路13と、前記各遅角側油室12に対して作動油の油圧を給排する第2油圧通路14との2系統の油圧通路を有し、この両油圧通路13,14には、供給通路15とドレン通路16とが夫々通路切換用の電磁切換弁17を介して接続されている。前記供給通路15には、オイルパン18内の油を圧送する一方向のオイルポンプ19が設けられている一方、ドレン通路16の下流端がオイルパン18に連通している。
前記第1、第2油圧通路13,14は、円柱状の通路構成部20の内部に形成され、この通路構成部20は、一端部が前記ベーンロータ3aの小径筒部から内部の支持穴3d内に挿通配置されている一方、他端部が前記電磁切換弁17に接続されている。
また、前記通路構成部20の一端部の外周面と支持穴3dの内周面との間には、各油圧通路13,14の一端側間を隔成シールする3つの環状シール部材21が嵌着固定されている。
前記第1油圧通路13は、前記支持穴3dの駆動軸6側の端部に形成された油室13aと、ベーンロータ3aの内部にほぼ放射状に形成されて油室13aと各進角側油室11とを連通する4本の分岐路13bとを備えている。
一方、第2油圧通路14は、通路構成部20の一端部内で止められ、該一端部の外周面に形成された環状室14aと、ベーンロータ3aの内部にほぼL字形状に折曲形成されて、前記環状室14aと各遅角側油室12と連通する第2油路14bとを備えている。
前記電磁切換弁17は、4ポート3位置型であって、内部の弁体が各油圧通路13、14と供給通路15及びドレン通路16とを相対的に切り換え制御するようになっていると共に、前記コントローラ22からの制御信号によって切り換え作動されるようになっている。
このコントローラ22は、機関運転状態を検出すると共に、クランク角センサ23及び吸気カム08のカム角センサ24及び排気カム09のカム角度センサ25からの信号によって各タイミングプーリ04,05と各カムシャフト06、07との相対回転位置を検出している。
そして、前記電磁切換弁17の切り換え作動によって、機関始動時に前記遅角側油室12に作動油を供給し、その後に、進角側油室11に作動油を供給するようになっている。
また、前記ベーン部材3とハウジング5との間には、このハウジング5に対してベーン部材3の回転を拘束及び拘束を解除する固定手段であるロック機構が設けられている。
すなわち、このロック機構は、図2に示すように、前記幅長さの大きな1つのベーン3bと肉厚なリアカバー7との間に設けられ、前記ベーン3bの内部の排気カムシャフト07の軸方向に沿って形成された摺動用穴26と、該摺動用穴26の内部に摺動自在に設けられた有蓋円筒状のロックピン27と、前記リアカバー7に有する固定孔内に固定された横断面カップ状の係合穴構成部28に設けられて、前記ロックピン27のテーパ状先端部27aが係脱する係合穴28aと、前記摺動用穴26の底面側に固定されたスプリングリテーナ29に保持されて、ロックピン27を係合穴28a方向へ付勢するコイルスプリング状のばね部材30とから構成されている。また、前記係合穴28aには、図外の油孔を介して前記遅角側油室12側から油圧が供給されるようになっている。
そして、前記ロックピン27は、前記ベーン部材3が最遅角側に回転した位置(第1の位置)で、先端部27aが前記ばね部材30のばね力によって係合穴28aに係合してタイミングプーリ05と排気カムシャフト07との相対回転をロックする。また、前記遅角側油室12から係合穴28a内に供給された油圧によって、ロックピン27が後退移動して係合穴28aとの係合が解除されるようになっている。
さらに、前記各ベーン3bの一側面と該一側面に対向する各シュー5aの対向面との間には、ベーン部材3を遅角側へ回転付勢する付勢手段である一対のコイルスプリング31がそれぞれ配置されている。
この2つのコイルスプリング31は、それぞれ独立して形成されて互いに並列に形成されていると共に、それぞれの軸方向の長さ(コイル長)は、前記ベーン3bの一側面とシュー5aの対向面との間の長さよりも大きく設定されて、両者とも同一の長さに設定されている。
また、この各コイルスプリング31は、最大圧縮変形時に互いが接触しない軸間距離をもって並設されていると共に、各一端部が各シュー5aの凹溝3cに嵌合する図外の薄板状のリテーナを介して連結されている。
なお、この実施の形態では、排気側における前記ベーン部材3の変換角、つまり最遅角(図3)と最進角(図4)との差θeは、図3、図4に示すように、例えば約15°程度に設定されている。
一方、吸気VTC2は、図5に示すように、排気VTC1と同じであるから、共通の構成個所には同一の符番を付けて具体的な説明を省略する。なお、吸気VTC2による吸気弁の最大遅角側への制御位置(第2の位置)、つまりコイルスプリング31のばね力などによってベーン部材3が図5に示す最大遅角側へ回転制御された位置での開時期(IVO)の変換角θiは、約25°になっている。
以下、排気VTC1の作用を説明する。まず、イグニッションキーをオフして機関を停止させた際に、コントローラ22から電磁切換弁17に対する制御電流の出力が停止されて、弁体がスプリングのばね力に押されて、図2の位置になる。そのため、供給通路15と遅角側の第2油圧通路14とを連通する。したがって、供給油圧により、ベーン部材3は遅角側に回転しようとするが、機関回転数が零に近づくと、オイルポンプ19の油圧が作用せず、供給油圧も零になってしまう。
ここで、ベーン部材3は、排気カムシャフト07に作用する交番トルクなどによる動弁フリクションや前記各コイルスプリング31のばね力によって、図3に示すように、タイミングプーリ05に対して排気カムシャフト07の回転方向(矢印方向)と反対方向の反時計方向に相対回転して安定する。
これによって、ベーン部材3は、最大幅のベーン3bがシュー5aの進角側油室11側の側面に当接した位置(第1の位置)に保持されて、タイミングプーリ05と排気カムシャフト07との相対回転位相が最大遅角側に変換される。
また、同時にこの第1の位置で、ロックピン27の先端部27aが係合穴28a内に係合して前記タイミングプーリ05と排気カムシャフト07との自由な相対回転を規制する。
したがって、機関再始動時のクランキング時のような回転変動の大きい場合であっても、最大遅角(第1の位置)に機械的に安定し、さらにロックピン27で固定されるので、ベーン部材3つまり、排気カムシャフト07の位相を安定にできるだけでなく、そのばたつきを抑制でき、この結果、バルブタイミング制御の不安定化を抑制し良好な始動性や冷機エミッションの低減を確実に得ることができる。
一方、吸気側のVTC2は、図5に示すように、排気側のVTC1と同じく動弁フリクションや各コイルスプリング31のばね力によってベーン部材3の最大幅のベーン3bがシュー5aの進角側油室11側の側面に当接してタイミングプーリ05と吸気カムシャフト06との相対回転位相が最大遅角側に変更保持されると共に、この時点で排気側と同じくロックピン27の先端部が係合穴28に係合して、ベーン部材3がかかる最遅角の回動位置(第2の位置)に安定かつ確実に保持される。これより、吸気行程にある吸気弁の開時期(IVO)がほぼ上死点付近の最遅角位置に保持される。
したがって、図6に示すように、各気筒のうち排気行程にある排気弁の閉時期(EVC)が、クランク角でいえばθe×2だけ遅角した位置、つまり、上死点後、例えば約30°の遅角側の位置になる。
よって、例えば吸気弁とのバルブオーバーラップが約30°といった適度な大きさになる。
したがって、この状態で冷機状態にある機関が始動されると、前記適度なバルブオーバーラップによって、残留ガスが吸気系に逆流して未燃HCガスが再燃焼させたり、残留ガス温度が吸気系を暖め燃料の霧化が促進されて、HCガスの発生を十分に抑制することができる。
また、この時点で、前記バルブオーバーラップを過度に大きくした場合には、燃焼室内で残留ガスである不活性ガスが顕著に増加することから、所望の燃焼トルクを発生できないなどにより、機関回転の不安定化を招き易いが、前記約30°という適度なバルブオーバーラップであることから、機関回転の不安定化を回避しつつ冷機エミッション性能を向上させることができるのである。
また、前記機関始動時には、コントローラ22から各電磁切換弁17、17に対する制御電流によって排気側及び吸気側ともに、オイルポンプ19から圧送された作動油は、それぞれ遅角側油室12,12側に供給されて各ベーン部材3,3を各コイルスプリング31、31のばね力と共に最遅角側へ保持するが、各遅角側油室12,12内の作動油圧が高くなるにつれて、各ロックピン27が係合穴28aから抜け出てベーン部材3,3の自由な回動を許容することになる。
ここで、吸気側の電磁切換弁17にはコントローラ22から継続して通電されて、遅角側油室12に作動油が供給されるため、吸気側のベーン部材3は、コイルスプリング31のばね力と作動油圧によって最遅角側に相対回転位置が保持制御される。したがって、吸気弁の開閉時期は、そのまま継続されて図7に示すように、開時期(IVO)が上死点位置になっていると共に、閉時期(IVC)が下死点よりも十分に遅れた時期に制御される。
一方、排気側の電磁切換弁17には、コントローラ22から切り換え制御電流が出力されて、オイルポンプ19から圧送された作動油が遅角側油室12側に供給される。このため、ベーン部材3は、最遅角側へ相対位置が保持制御される。これによって、排気弁は、図6に示すように、閉時期(EVC)がほぼ上死点後30°に維持制御される。したがって、前述の排気エミッション低減効果が持続するのである。
次に、暖機が進むと、既にロックピンが外れており、低負荷時は図7に示すように制御される。特に、排気側VTCが進角側に制御される。したがって、吸気弁と排気弁のバルブオーバーラップは、ほぼ0になる。このバルブオーバーラップがほぼ0になると、残留ガスが少なく、良好な燃焼状態が得られ燃焼が安定化していることから機関回転の安定化が図れると共に、排気エミッションも良好になる。
次に、例えば機関中負荷領域あるいは低回転高負荷になると、コントローラ22から排気側及び吸気側の各電磁切換弁17,17にそれぞれ切り換え信号が出力されて、排気側電磁切換弁17に対しては通電を遮断して供給通路15と第2油圧通路14とを連通すると共に、第1油圧通路13とドレン通路16を連通する一方、吸気側電磁切換弁17に供給通路15と第1油圧通路13とを連通すると共に、第2油圧通路14とドレン通路16とを連通する。
したがって、排気VTC1では、各遅角側油室12に作動油圧が供給されて、ベーン部材3が最遅角側に相対回転されると共に、吸気VTC2では、各進角側油室11に作動油圧が供給されて、ベーン部材3が最進角側に相対回転する。このため、排気弁の開閉時期は、図8に示す特性となり、前記始動時と同程度の閉時期(EVC)が上死点後、約30°の変換角となり、吸気弁の開閉時期は、図8に示す特性となり、開時期(IVO)が上死点前の約50°の変換角となる。
よって、バルブオーバーラップは、約30°+約50°=約80°の大きく創成されることから、ポンピングロスを低減して燃費を改善することができる。つまり、かかる中負荷領域では、燃焼トルクが大きくなっているので、軽負荷〜低負荷の運転域で発生し易い燃焼の不安定化が少ないので、バルブオーバーラップを大きくすることが可能になるため、前記燃費の改善効果が得られるのである。ここで、必ずしも排気VTC1を最遅角にしなくともよいし、吸気VTC2を最進角にしなくともよい。
以下、前記コントローラ22による前記機関始動時(冷機始動時)における具体的な制御を図9の制御フローチャート図によって説明する。
まず、ステップ1では、イグニッションスイッチがオンになっているか否かを判別し、つまり機関を始動したか否かを判別し、オンになっていない場合は戻るが、オンしたと判別した場合はステップ2に進む。
このステップ2では、クランキング状態であることを認識するが、このクランキング前には、原則的に予め前記排気VTC1と吸気VTC2によって排気弁と吸気弁の開閉時期が前記図6に示す状態に機械的に安定し、さらにロックピン27でベーン部材3が固定保持されている。
ステップ3では、排気VTC1と吸気VTC2によって各吸気弁と各排気弁の開閉時期が各コイルスプリング31,31のばね力などによって前記図6に示す特性になっているが、さらに、各VTC1,2によって吸気弁と排気弁の開閉時期を図6に示す特性となるように制御信号を各電磁切換弁17,17に出力する。つまり、それぞれの遅角側油室12,12に作動油を強制的に供給する。なお、各遅角側油室12,12への油圧供給に伴って係合穴28a、28aへ油圧が供給されることからロックピン27,27の係合が解除されて、各ベーン部材3,3の自由な回動が許容されることは前述の通りであるが、その状態でも図6の特性に保持制御されるのである。
ステップ4では、燃料噴射弁や点火栓に制御信号を出力して燃焼室で完爆させる処理を行う。したがって、この完爆時においても、前記吸気弁や排気弁が図6に示す前記特定の開閉時期に維持制御されていることから、前述した冷機始動時の排気エミッション性能の向上が図れる。
次に、ステップ5では、クランク角センサなどから現在の機関回転状態を検出する。続いて、ステップ6では、機関回転が安定化しているか否かを判別し、ここで、安定していると判別した場合は、ステップ7に移行するが、不安定であると判別した場合は、ステップ8に移行する。
このステップ8では、排気VTC1によって進角側油室11に作動油圧を供給して排気弁の閉時期(EVC)を進角制御し、これによって吸気弁との前記バルブオーバーラップを減少させる制御を行う。これにより、燃焼を安定化させて機関回転変動を抑制する。この機関の不安定化は、バルブクリアランスが経時的に縮小し、実質のバルブオーバーラップ期間が増加したり、排気系の抵抗が増加して同一のバルブオーバーラップ量に対する残留ガスが増加することなどに起因して発生する。この場合に、前述のバルブオーバーラップの低減補正により、意図しない残留ガスの増加を抑制し、もって機関の安定性を確保することができるのである。
前記ステップ7では、タイマーによってクランキング開始から所定時間経過したか否かを判別し、所定時間経過していないと判別した場合は、前記ステップ5に戻るが、経過したと判別した場合には、冷機制御が終了したと判断してステップ9に移行する。ここで、前記所定時間というのは、気温や始動前の機関の温度や湿度などによって変化させることも可能である。
このステップ9では、前記排気VTC1と吸気VTC2を、機関運転に応じて予め作られている制御マップに基づいて暖機時及び暖機後の通常制御を行い、その後、リターンする。
このステップ9での通常制御は、例えば中負荷において図8に示す大きなバルブオーバーラップに近いバルブオーバーラップとしてポンピングロスを低減して燃費を向上させたり、あるいは残留ガスが増加する傾向にある暖機アイドルにおいて図7に示すバルブオーバーラップに近い小バルブオーバーラップとし、機関の回転安定性を向上するなどの制御が行われるのである。
ところで、図6に示す機械的に安定するバルブタイミングであるが、前記排気VTC1による排気弁の最大遅角側への変換角θe(約15°)が、吸気VTC2による吸気弁の最大遅角側への変換角θi(約25°)よりも小さいことから、バルブオーバーラップが比較的小さくなる。このため、始動時に適した排気エミッション性能に有利なバルブオーバーラップにできるだけでなく、例えば電気系統の異常などのフェールセーフ時において暖機状態においてもある程度の機関回転の安定化を図れる。
また、機関の始動時には、図6に示すバルブタイミングに機械的に安定していることに加え、前記ロック機構によってベーン部材3の自由な回転が確実に規制されていることから、クランキング時に機関回転の変動があった場合であっても、吸気弁と排気弁の実バルブタイミング(開閉時期)の安定化が図れ、この結果、所望の排気エミッションを確実に低減することができる。
また、この実施の形態では、排気VTC1と吸気VTC2の各ベーン部材3,3をそれぞれコイルスプリング31,31のばね力によって最遅角側へ回転付勢するようになっているため、機関停止時及び始動時に前記バルブオーバーラップを確実に創成することができる。これにより、冷機始動時の排気エミッションの低減化をより確実に得ることができる。
〔第2の実施の形態〕
図10以下は第2の実施の形態を示し、一方の位相変換機構を吸気VTC2とし、他方の位相変換機構を排気VTC1としたもので、前記排気VTC1と吸気VTC2によって各排気弁と各吸気弁の開閉時期を、機関停止時に進角側にそれぞれ機械的に安定するように構成したものである。
すなわち、図10〜図12は排気VTC1の構造を示したものであるが、図13に示す吸気VTC2も同じ構造に形成されており、基本的な構造は第1の実施の形態のものと同じであるが、電磁切換弁がスプリングにより図10の位置になっており、機関停止時及び始動時における油圧回路4の供給通路15が第1油圧通路13に連通し、第2油圧通路14が各ドレン通路16に連通している。また、前記第1油圧通路13と連通している各進角側油室11は、前記ロック機構の係合穴28aに連通している。
さらに、各VTC1,2のベーン部材3,3は、各進角側油室11に配置された一対のコイルスプリング31によって常時進角側へ回転付勢されている。この各コイルスプリング31の具体的構成も第1の実施の形態のものと同様であるが、この各コイルスプリング31は、前記動弁フリクションなどに抗してベーン部材3を進角側に付勢しなければならないので、第1の実施の形態のもの比較して大きなばね荷重に設定されている。
また、前記吸気VTC2によるベーン部材3の変換角θiは、図13に示すように、例えば25°に設定されていて、図11に示す排気VTC1によるベーン部材3の変換角θe(例えば15°)よりも大きく設定されている。したがって、デフォルト位置(機関停止時及び機関始動時の位置)のバルブオーバーラップ量は、図14に示すように、例えば50°になっていて、第1の実施の形態のものよりも大きくなっている。
したがって、この機関運転中においては、燃焼室での残留ガスが増加するが、本実施の形態の内燃機関として、燃焼室に直接燃料を噴射する直接噴射式の機関に適用した場合には、かかる直噴式機関では燃焼室内に冷却効果によって高圧縮比が図れるため、この高圧縮比により冷機時の燃焼の安定性が確保できため、さらにバルブオーバーラップ量の限界を高めることができる。したがって、冷機始動時における排気エミッションを十分に低減させることが可能になる。
なぜならば、直噴式機関であると吸気弁が閉じた状態でも燃料を燃焼室に供給することができ、かつ噴射パターンの自由度が大きいので、燃焼を改善する余地が出てくるためである。
また、暖機完了後のアイドリング運転時には、吸気VTC2の制御によって、つまりコントローラ22が電磁切換弁17を切り換え制御して、第1油圧通路13とドレン通路16を連通させ、供給通路15と第2油圧通路14とを連通させて各遅角側油室12内に作動油圧を供給して、ベーン部材3を、図12に示すように、各コイルスプリング31のばね力に抗してタイミングプーリ05の回転方向と反対方向へ回転させて、吸気弁の開閉時期を最遅角側に制御する。一方、排気VTC1は、始動時のままの制御を継続して、排気弁の開閉時期を最進角側に制御する。よって、図15に示すように、排気弁の閉時期(EVC)は、ほぼ上死点位置に維持され、吸気弁の開時期(IVO)もほぼ上死点位置に制御される。これによって、バルブオーバーラップがほぼ0になって、前記図7に示す場合と同様な作用効果が得られる。
また、例えば中負荷、低回転高負荷運転に移行した場合は、今度は排気VTC1によって排気弁の開閉時期を、図16に示すように、最遅角側に制御すると共に、吸気VTC2によって吸気弁の開閉時期を、最進角側に制御する。これによって、排気弁の閉時期(EVC)をクランク軸に対して上死点後、約30°の変換角とし、吸気弁の開時期(IVO)を上死点前、約50°の変換角とし、したがって、バルブオーバーラップ量は約80°となる。よって、この場合も前記図8に示した場合と同様な作用効果が得られる。
以下、図17に示すフローチャートに基づいて本実施の形態におけるコントローラ22の具体的な制御を説明するが、基本的な流れは第1の実施の形態における図9と同じである。異なるところは、機関停止時の場合やステップ13において排気VTC1と吸気VTC2によって排気弁と吸気弁の両方をそれぞれ最進角側に制御して適度なバルブオーバーラップを創成するようになっている点(図13)と、ステップ15において燃焼が不安定と判別された場合にステップ18で吸気弁の閉時期(IVO)を遅角側に補正制御して、バルブオーバーラップ量を低減することとした点である。
他の処理及び判断は図9に示すものと同じであるから説明を省略する。
したがって、この第2の実施の形態も第1の実施の形態と同様に、冷機始動時において適度なバルブオーバーラップの創成によって排気エミッションを確実に低減化することが可能になる。
本発明は、前記各実施の形態の構成に限定されるものではなく、例えば、第1の実施の形態における前記各コイルスプリング31,31は、必ずしも必要ではなく、たとえ存在しない場合でも、動弁フリクションなどによって機関停止時には、各ベーン部材3,3が最遅角側に自動的に回転移動する。但し、第2実施の形態においては、動弁フリクションに抗して各ベーン部材3,3を最進角側に回転させなければならないので、各コイルスプリング31,31は、必須である。
また、第1の実施の形態では、いわゆる直噴式の内燃機関に適用したものではないが、第2の実施の形態と同じくこれに適用することも可能である。
第2の実施の形態では、直噴式内燃機関の適用したものであるが、ポート噴射の内燃機関で吸気2弁にリフト差を設け、燃焼安定性を高めた機関に用いることも可能である。
さらに、前記各実施の形態では、点火栓による着火方式を用いているが、例えば圧縮による着火方式の機関に適用することも可能である。この着火方式では前述した完爆制御において点火制御が含まれなくなるが、点火栓方式と同様に冷機始動時における排気エミッションの低減効果が十分に得られる。
本発明に係る可変動弁装置の実施形態に供される内燃機関の主要構成部材を示す斜視図である。 第1の実施形態に供される排気VTCを示す縦断面図である。 本実施の形態における最遅角制御状態を示す図2のA−A線断面図である。 本実施の形態における最進角制御状態を示す図2のA−A線断面図である。 本実施形態における吸気VTCを示す断面図である。 機関停止時と始動時における吸排気弁の開期間を示す特性図である。 暖機完了後のアイドリング運転時における吸排気弁の開期間を示す特性図である。 中負荷などの運転時における吸排気弁の開期間を示す特性図である。 本実施形態のコントローラによる制御を示すフローチャート図である。 第2の実施形態に供される排気VTCを示す縦断面図である。 本実施の形態における最進角制御状態を示す図10のB−B線断面図である。 本実施の形態における最遅角制御状態を示す図10のB−B線断面図である。 本実施形態における吸気VTCを示す断面図である。 機関停止時と始動時における吸排気弁の開期間を示す特性図である。 暖機完了後のアイドリング運転時における吸排気弁の開期間を示す特性図である。 中負荷などの運転時における吸排気弁の開期間を示す特性図である。 本実施形態のコントローラによる制御を示すフローチャート図である。
04…吸気側タイミングプーリ
05…排気側タイミングプーリ
06…吸気カムシャフト
07…排気カムシャフト
1…排気VTC(排気側位相変換機構)
2…吸気VTC(吸気側位相変更機構)
3…ベーン部材
4…油圧回路
5…ハウジング
22…コントローラ
27…ロックピン
28a…係合穴
31…コイルスプリング

Claims (1)

  1. 燃焼室に直接燃料を噴射する直接噴射式内燃機関に適用される可変動弁装置であって、
    吸気弁の開閉タイミングを可変にする吸気側位相変換機構と、
    排気弁の開閉タイミングを可変にする排気側位相変換機構と、を備え、
    機関を停止するときに、前記吸気側位相変換機構によって前記吸気弁の開閉タイミングが、前記吸気弁と排気弁のバルブオーバーラップをほぼ最大に増加して機械的に保持される第1の位置に変更され、かつ、前記排気側位相変換機構によって前記排気弁の開閉タイミングが、前記バルブオーバーラップがほぼ最小に減少して機械的に保持される第2の位置に変更され、
    前記吸気弁の開閉タイミングが前記第1の位置に保持され、かつ、前記排気弁の開閉タイミングが前記第2の位置に保持させているときのバルブオーバーラップは、前記吸気弁の開閉タイミングが最進角で前記排気弁の開閉タイミングが最遅角の場合におけるバルブオーバーラップより小さく、かつ、前記吸気弁の開閉タイミングが最遅角で、前記排気弁の開閉タイミングが最進角の場合におけるバルブオーバーラップよりも大きくなるように設定され、
    機関を始動するときに、前記吸気側位相変換機構と排気側位相変換機構によって、前記吸気弁の開閉タイミングを前記第1の位置に保持すると共に、前記排気弁の開閉タイミングを第2の位置に保持することを特徴とする内燃機関の可変動弁システム。
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