本発明に用いられるリビングラジカル重合法は、特表2003−500378号公報で開示されるニトロオキサイドラジカルを用いるリビングラジカル重合方法で、各種ビニル系モノマーを制御よく重合できる。当該方法は、一般式(1)で示される特定の重合開始剤を用いてビニル系モノマーを重合し、一般式(2)〜(5)で示されるカルボキシル基、グリシジル基、ヒドロキシル基又はイソシアネート基を有するビニル系モノマーをブロック共重合することで、末端にカルボキシル基、グリシジル基、ヒドロキシル基又はイソシアネート基を有するビニル系重合体が得られる。具体的には以下の工程により、本願発明に係るビニル系重合体を得ることができる。
[1]一般式(1)で示される化合物をリビングラジカル重合開始剤として、一般式(2)で示されるカルボキシル基を含むビニル系モノマーをリビングラジカル重合することにより、末端にカルボキシル基を有するビニル系重合体を製造し、当該ビニル系重合体と、一般式(3)で示されるメタアクリロイル基を有するグリシジル化合物とを反応させる。
[2]一般式(1)で示される化合物をリビングラジカル重合開始剤として、一般式(3)で示されるグリシジル化合物を含むビニル系モノマーをリビングラジカル重合することにより、末端にグリシジル基を有するビニル系重合体を製造し、当該ビニル系重合体と、一般式(2)で示されるメタアクリルロイル基を有するカルボキシル化合物とを反応させる。
[3]一般式(1)で示される化合物をリビングラジカル重合開始剤として、一般式(4)で示されるヒドロキシ基を含むビニル系モノマーをリビングラジカル重合することにより、末端にヒドロキシ基を有するビニル系重合体を製造し、当該ビニル系重合体と、一般式(5)で示されるメタアクリロイル基を有するイソシアネート化合物とを反応させる。
[4]一般式(1)で示される化合物をリビングラジカル重合開始剤として、一般式(5)で示されるイソシアネート基を含むビニル系モノマーをリビングラジカル重合することにより、末端にイソシアネート基を有するビニル系重合体を製造し、当該ビニル系重合体と、一般式(4)で示されるメタアクリロイル基を有するヒドロキシ化合物とを反応させる。
〔式中、R
20は水素原子又はメチル基であり、R
21はあってもなくてもよく、R
21を有する場合は、−C(O)−O−、−OC(O)−、−NH−又は−C
6H
4−であり、
R
22はR
23−O−(R
23は炭素数2〜4のアルキル基)、R
24−C(O)−O−(R
24は炭素数1〜8のアルキル基)、R
25−O−C(O)−R
26−(R
25は炭素数1〜8のアルキル基、R
26は炭素数1〜8のアルキル基)、−C
6H
4−又は−CH
2=CH
2−であり、nは0〜4である。〕
〔式中、R
27は水素原子又はメチル基であり、R
28はあってもなくてもよく、R
28を有する場合は、−C(O)−O−、−OC(O)−、−NH−又は−C
6H
4−であり、
R
29はR
30−O−(R
30は炭素数2〜4のアルキル基)、R
31−C(O)−O−(R
31は炭素数1〜8のアルキル基)、R
32−O−C(O)−R
33−(R
32は炭素数1〜8のアルキル基、R
33は炭素数1〜8のアルキル基)、−C
6H
4−又は−CH
2=CH
2−であり、nは0〜4である。〕
上記工程[1]において、末端にカルボキシル基を有するビニル系重合体と、一般式(3)で示されるメタアクリロイル基を有するグリシジル化合物とのモル比は、1:0.8〜2.0であることが好ましい。
上記工程[2]において、末端にグリシジル基を有するビニル系重合体と、一般式(2)で示されるメタアクリロイル基を有するカルボキシル化合物とのモル比が1:0.8〜2.0であることが好ましい。
上記工程[3]において、末端にヒドロキシル基を有するビニル系重合体と、一般式(5)で示されるメタアクリロイル基を有するイソシアネート化合物とのモル比が1:0.8〜2.0であることが好ましい。
上記工程[4]において、末端にイソシアネート基を有するビニル系重合体と、一般式(4)で示されるメタアクリロイル基を有するヒドロキシ化合物とのモル比が1:0.8〜2.0であることが好ましい。
前記各々のビニル系重合体1に対してメタアクリロイル基を有する化合物が0.8モルより小さい場合は、末端にメタアクリロイル基が導入されていない高分子鎖が存在してしまい、硬化不良の原因となる。また、前記各々のビニル系重合体1に対してメタアクリロイル基を有する化合物が2モルより大きい場合は、メタアクリロイル基を有する化合物が多く残ってしまい、保存安定性が悪くなる。
本発明に用いるリビングラジカル重合は、バッチプロセル、セミバッチプロセス、管式連続重合プロセス、及び連続攪拌槽型プロセス(CSTR)等のどのようなプロセスでも重合できる。これらの重合プロセスの中では、バッチプロセス、セミバッチブロセス及び管式連続重合プロセスが好ましく、バッチプロセスが特に好ましい。重合形式は溶剤を用いないバルク重合、溶剤系の溶液重合でもよい。
また、重合温度は100〜150℃が好ましく、105℃〜135℃であることがより好ましく、110〜125℃であることが特に好ましい。重合温度が100℃未満であると、重合速度が著しく遅くなる。一方、重合温度が150℃より高いとニトロオキサイドラジカルが生長ラジカルをキャップできなくなり、生長ラジカル同士の再結合反応や不均化反応、又は高分子主鎖からの水素引抜反応やバックバイティング反応からのβ分解反応が生じ、リビング重合性を失い、ラジカル重合を制御できなくなる。
本発明で使用する重合溶剤は、有機炭化水素系化合物が好ましい。具体的には、テトラヒドロフラン及びジオキサン等の環状エーテル類、ベンゼン、トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素化合物、酢酸エチル及び酢酸ブチル等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン及びシクロヘキサノン等のケトン類等、オルトギ酸メチル、オルト酢酸メチル、メタノール、エタノール及びイソプロパノール等のアルコール類が例示され、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
溶剤の使用量は、ビニル系モノマー100質量部に対し、0〜200質量部が好ましく、0〜100質量部とすることがより好ましい。特に好ましくは0〜50質量部である。溶剤が多すぎると、溶剤に起因する連鎖移動反応が発生し、分子量制御、分子量分布制御、末端のリビング性等の重合制御が悪くなる。
本発明の重合に用いるビニル系モノマーとしては、ラジカル重合性があれば特に限定されず、各種のものを用いることができる。例示するならば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸−n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸−n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸−tert−ブチル、(メタ)アクリル酸−n−ペンチル、(メタ)アクリル酸−n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸−n−ヘプチル、(メタ)アクリル酸−n−オクチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸トルイル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸−2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸−3−メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸2−アミノエチル、(メタ)アクリル酸のエチレンオキサイド付加物、(メタ)アクリル酸トリフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2−トリフルオロメチルエチル、(メタ)アクリル酸−2−パーフルオロエチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチル−2−パーフルオロブチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロメチル、(メタ)アクリル酸ジパーフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロメチル−2−パーフルオロエチルメチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロヘキシルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロデシルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロヘキサデシルエチル等の(メタ)アクリル酸系モノマー;スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、クロルスチレン、スチレンスルホン酸及びその塩等のスチレン系モノマー;パーフルオロエチレン、パーフルオロプロピレン、フッ化ビニリデン等のフッ素含有ビニルモノマー;無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸のモノアルキルエステル及びジアルキルエステル;フマル酸、フマル酸のモノアルキルエステル及びジアルキルエステル;マレイミド、メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、ブチルマレイミド、ヘキシルマレイミド、オクチルマレイミド、ドデシルマレイミド、ステアリルマレイミド、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド系モノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル基含有ビニル系モノマー;アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド基含有ビニル系モノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニル等のビニルエステル類;エチレン、プロピレン等のアルケン類;ブタジエン、イソプレン等の共役ジエン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、塩化アリル、アリルアルコール等が挙げられる。これらは、単独で用いても良いし、複数を共重合させても構わない。なお、上記表現形式で例えば(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸又はメタクリル酸を表す。
本発明におけるリビングラジカル重合で共重合するカルボキシル基を有するビニル系モノマーは、一般式(2)で示される。具体的にはアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸、フマル酸、4−カルボキシルスチレン等が挙げられる。
本発明におけるリビングラジカル重合で共重合するグリシジル基を有するビニル系モノマーは、一般式(3)で示される。具体的には、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート等が挙げられる。
本発明におけるリビングラジカル重合で共重合するヒドロキシル基を有するビニル系モノマーは、一般式(4)で示される。具体的には、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ、ジ又はモノ(メタ)アクリレート及びトリメチロールプロパンジ又はモノ(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
本発明におけるリビングラジカル重合で共重合するイソシアネート基を有するビニル系モノマーは、一般式(5)で示される。具体的には、2−エチルイソシアネート(メタ)アクリレート、イソシアネート(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記カルボキシル基を有するビニル系モノマーは、初期から重合系に添加しても良いが、重合率70%〜99%の時点で重合系に添加されるのが好ましい。さらに好ましくは、重合率85%〜98%であり、特に好ましくは同93%〜97%である。重合率70%未満で添加すると、α末端のカルボキシル基と近くなり、架橋点間分子量が短くなるため、優れた力学的特性等を得ることができない。一方、重合率99%を越えて添加すると共重合率が低下し、高分子鎖に導入されない恐れがある。
また、上記ブロック共重合する一般式(2)〜(5)のビニル系モノマーを添加する場合は、他のビニル系モノマーを同時に添加しても良い。
カルボキシル基、グリシジル基、ヒドロキシル基又はイソシアネート基を有するビニル系重合体と、一般式(2)〜(5)で示されるグリシジル基、カルボキシル基、イソシアネート基又はヒドロキシル基を有するメタアクリルモノマーとの反応温度は、40〜110℃であることが好ましい。より好ましくは50〜100℃であり、特に好ましくは60〜90℃である。40℃より低い場合は、反応が遅く、生産効率を著しく悪くする。一方、反応温度が90℃より高い場合は、メタアクリロイル基がビニル系重合体に付加してしまう恐れがある。
上記反応には生産効率を高めるために触媒を用いるのが好ましい。触媒はこれらの反応を早め、メタアクリロイル基に影響を与えないものであれば特に制限はない。カルボキシル基とグリシジル基の反応の触媒としては、トリブチルアンモニウムブロマイドが好ましい。トリブチルアンモニウムブロマイドはメタアクリロイル基の反応に影響を与えず、効果的にカルボキシル基とグリシジル基との反応を早めることが出来る。また、ヒドロキシル基とイソシアネート基の反応の触媒としては、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジアセトアセトナート、ジブチル錫ジエチルヘキサノレート、ジブチル錫ジオクテート、ジブチル錫ジメチルマレート、ジブチル錫ジエチルマレート、ジブチル錫ジブチルマレート、ジブチル錫ジイソオクチルマレート、ジブチル錫ジトリデシルマレート、ジブチル錫ジベンジルマレート、ジブチル錫マレエート、ジオクチル錫ジアセテート、ジオクチル錫ジステアレート、ジオクチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジエチルマレート、ジオクチル錫ジイソオクチルマレート等の4価のスズ化合物類等が挙げられる。
触媒の添加量は、末端にカルボキシル基を有する(メタ)アクリル重合体量に対して0.1〜2質量%であることが好ましく、0.2〜1質量%であることがより好ましく、0.3〜0.5質量%であることが特に好ましい。触媒量が0.1質量%より少ないと、効果が小さく生産性を向上できない。一方、触媒量が2質量%を越えると、後の製品中に沈殿してくるなどの悪影響を及ぼす。
本発明において製造されるメタアクリロイル基を少なくとも1個、分子末端に有するビニル系重合体の分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算で数平均分子量(Mn)が3000〜50000であることが好ましい。より好ましいのは6000〜25000である。Mnが3000より低いと硬化物の架橋密度が高くなりすぎ、硬化物の伸びが著しく小さくなる。Mnが50000より高いと粘度が非常に高くなり、作業性が著しく悪くなる。分子量分布(Mw/Mn)には特に制限はないが、2.0未満(通常1.05以上)が好ましい。より好ましくは1.3〜1.8である。
高分子鎖1本あたりのメタアクリロイル基の個数fは、1.0〜10.0個が好ましい。より好ましくは1.4〜4.0個であり、1.8〜3.5であることが特に好ましい。fは以下のように計算される。
f=高分子中のメタアクリロイル基濃度[mol/kg]/(1000/数平均分子量)
fが1.0個より小さいと、硬化物は架橋密度が小さいため、破断強度が非常に弱いものになる。一方、10.0個より大きい場合には、架橋密度が高すぎ、脆くて伸びない硬化物となる。
本発明において製造される(メタ)アクリロイル基を少なくとも1個、分子末端に有するビニル系重合体は、反応後、残揮発分を取り除く工程を必要とする場合がある。脱溶プロセスとしては、流下式蒸発機、薄膜蒸発機や押出機式乾燥機等の一般に用いられる脱溶プロセスであれば何でもよい。脱溶温度条件は好ましくは250℃以下がよい。より好ましくは170℃以下、特に好ましくは100℃以下である。250℃以下であればリビングラジカル重合末端は解離せず、ポリマーの分解による低分子量物の生成が起きない。一方、250℃を超える場合には、リビング重合末端が解離し、高分子鎖が一部分解し低分子量物が生成される。また、着色も発生するので好ましくない。
本発明のシーリング材組成物は、特に限定されないが、紫外線、可視光線及び電子線等の活性エネルギー線又は熱により硬化させることが好ましい。それぞれの硬化方法により重合開始剤として適切なものを使用する。
活性エネルギー線により硬化させる場合には、光重合開始剤を含有することが好ましい。光重合開始剤としては特に制限はないが、光ラジカル開始剤と光アニオン開始剤が好ましく、特に光ラジカル開始剤が好ましい。具体的には、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル及びベンゾインプロピルエーテル等のベンゾイン;アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−1−オン及びN,N−ジメチルアミノアセトフェノン等のアセトフェノン;2−メチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン及び2−アミルアントラキノン等のアントラキノン;2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン及び2,4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン;アセトフェノンジメチルケタール及びベンジルメチルケタール等のケタール;ベンゾフェノン、メチルベンゾフェノン、4,4'−ジクロロベンゾフェノン、4,4'−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ミヒラーズケトン及び4−ベンゾイル−4'−メチルジフェニルサルファイド等のベンゾフェノン;並びに2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4'−トリメチルペンチルホソフィンオキサイド、カンファーキノン等を挙げることができる。これらの光重合開始剤は単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。更に、アミン類等の増感剤と組み合わせてもよい。
光重合開始剤の添加量は系をわずかに光官能化するだけでよいので、特に制限はないが、ビニル系重合体100質量部に対して、0.01〜50質量部が好ましい。より好ましくは0.1〜30質量部であり、さらに好ましくは0.5〜10質量部である。活性エネルギー線源としては特に限定されないが、その光重合開始剤の性質に応じて、例えば高圧水銀灯、低圧水銀灯、電子線照射装置、ハロゲンランプ、発光ダイオード、半導体レーザー等による光及び電子線の照射が挙げられる。
熱により硬化させる場合には、熱重合開始剤を含有することが好ましい。熱重合開始剤としては特に限定されないが、アゾ系開始剤、過酸化物、過硫酸物、及びレドックス開始剤が含まれる。適切なアゾ系開始剤としては、限定されるわけではないが、2,2′−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2′−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2′−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2′−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、1,1−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2′−アゾビス(2−シクロプロピルプロピオニトリル)、及び2,2′−アゾビス(メチルイソブチレート)等が挙げられる。適切な過酸化物開始剤としては、限定されるわけではないが、過酸化ベンゾイル、過酸化アセチル、過酸化ラウロイル、過酸化デカノイル、ジセチルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、及び過酸化ジクミル等が挙げられる。適切な過硫酸物開始剤としては、限定されるわけではないが、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、及び過硫酸アンモニウムが挙げられる。適切なレドックス(酸化還元)開始剤としては、限定されるわけではないが、上記過硫酸物開始剤とメタ亜硫酸水素ナトリウム及び亜硫酸水素ナトリウムのような還元剤との組み合わせ;有機過酸化物と第3級アミンに基づく系、例えば過酸化ベンゾイルとジメチルアニリンに基づく系;並びに有機ヒドロパーオキシドと遷移金属に基づく系、例えばクメンヒドロパーオキシドとコバルトナフテートに基づく系等が挙げられる。他の開始剤としては、限定されるわけではないが、テトラフェニル1,1,2,2−エタンジオールのようなピナコール等が挙げられる。熱重合開始剤としては、アゾ系開始剤及び過酸化物系開始剤からなる群から選ばれるものが好ましい。これらの光重合開始剤は単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明に用いられる熱重合開始剤は触媒的に有効な量で存在し、このような量は、限定はされないが、典型的には、ビニル系重合体100質量部に対して、0.01〜50質量部が好ましい。より好ましくは0.1〜20質量部、さらに好ましくは0.5〜10質量部である。
熱硬化条件は特に限定されないが、その温度は、使用する熱重合開始剤、重合体及び添加される化合物等の種類により異なるが、50℃〜250℃の範囲内が好ましく、70℃〜200℃の範囲内がより好ましい。硬化時間は、使用する重合開始剤、単量体、溶媒、反応温度等により異なるが、通常1分〜24時間の範囲内である。
本発明のシーリング材組成物は、その目的に応じて、重合性のモノマー及び/又はオリゴマーを配合しても構わない。重合性のモノマー及び/又はオリゴマーとしては、ラジカル重合性の基を有する、モノマー及び/又はオリゴマー、あるいは、アニオン重合性の基を有する、モノマー及び/又はオリゴマーが、硬化性の点から好ましい。
前記ラジカル重合性の基としては、(メタ)アクリル基等の(メタ)アクリロイル系基、スチレン基、アクリロニトリル基、ビニルエステル基、N−ビニルピロリドン基、アクリルアミド基、共役ジエン基、ビニルケトン基、塩化ビニル基等が挙げられる。これらの中でも、本発明に使用するビニル系重合体と類似する(メタ)アクリロイル系基を有するものが好ましい。
前記アニオン重合性の基としては、(メタ)アクリル基等の(メタ)アクリロイル系基、スチレン基、アクリロニトリル基、N−ビニルピロリドン基、アクリルアミド基、共役ジエン基、ビニルケトン基等が挙げられる。なかでも、本発明に使用するビニル系重合体と類似する(メタ)アクリロイル系基を有するものが好ましい。
前記モノマーの具体例としては、(メタ)アクリレート系モノマー、環状アクリレート、スチレン系モノマー、アクリロニトリル、ビニルエステル系モノマー、N−ビニルピロリドン、アクリルアミド系モノマー、共役ジエン系モノマー、ビニルケトン系モノマー、ハロゲン化ビニル・ハロゲン化ビニリデン系モノマー、多官能モノマー等が挙げられる。
(メタ)アクリレート系モノマーとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ペンチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸n−ヘプチル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸トルイル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸3−メトキシブチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸2−アミノエチル、γ−(メタクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン、(メタ)アクリル酸のエチレンオキサイド付加物、(メタ)アクリル酸トリフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2−トリフルオロメチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチル−2−パーフルオロブチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロメチル、(メタ)アクリル酸ジパーフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロメチル−2−パーフルオロエチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロヘキシルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロデシルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロヘキサデシルエチル、イソボロニルアクリレート等が挙げられる。
スチレン系モノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン等が挙げられる。ビニルエステル系モノマーとしては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル等が挙げられる。アクリルアミド系モノマーとしては、アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド等が挙げられる。共役ジエン系モノマーとしては、ブタジエン、イソプレン等が挙げられる。ビニルケトン系モノマーとしては、メチルビニルケトン等が挙げられる。ハロゲン化ビニル・ハロゲン化ビニリデン系モノマーとしては、塩化ビニル、臭化ビニル、ヨウ化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニリデン等が挙げられる。
多官能モノマーとしては、トリメチロールプロパントリアクリレート、ネオペンチルグリコールポリプロポキシジアクリレート、トリメチロールプロパンポリエトキシトリアクリレート、ビスフェノールFポリエトキシジアクリレート、ビスフェノールAポリエトキシジアクリレート、ジペンタエリスリトールポリヘキサノリドヘキサクリレート、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレートポリヘキサノリドトリアクリレート、トリシクロデカンジメチロールジアクリレート2−(2−アクリロイルオキシ−1,1−ジメチル)−5−エチル−5−アクリロイルオキシメチル−1,3−ジオキサン、テトラブロモビスフェノールAジエトキシジアクリレート、4,4−ジメルカプトジフェニルサルファイドジメタクリレート、ポリテトラエチレングリコールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート等が挙げられる。
オリゴマーとしては、ビスフェノールA型エポキシアクリレート樹脂、フェノールノボラック型エポキシアクリレート樹脂、クレゾールノボラック型エポキシアクリレート樹脂、カルボキシル基変性エポキシアクリレート系樹脂等のエポキシアクリレート系樹脂;ポリオール(ポリテトラメチレングリコール、エチレングリコールとアジピン酸のポリエステルジオール、ε−カプロラクトン変性ポリエステルジオール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリカーボネートジオール、水酸基末端水添ポリイソプレン、水酸基末端ポリブタジエン、水酸基末端ポリイソブチレン等)と有機イソシアネート(トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等)から得られたウレタン樹脂を、水酸基含有(メタ)アクリレート{ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート等}と反応させて得られたウレタンアクリレート系樹脂;前記ポリオールにエステル結合を介して(メタ)アクリル基を導入した樹脂;ポリエステルアクリレート系樹脂、ポリ(メタ)アクリルアクリレート系樹脂(重合性の反応基を有するポリ(メタ)アクリル酸エステル系樹脂)等が挙げられる。
上記のうち、(メタ)アクリロイル系基を有する、モノマー及び/又はオリゴマーが好ましい。また、(メタ)アクリロイル系基を有するモノマー及び/又はオリゴマーの数平均分子量は、5000以下であることが好ましい。さらに、表面硬化性の向上や、作業性向上のための粘度低減のために、モノマーを用いる場合には、分子量が1000以下であることが、相溶性が良好であるという理由からさらに好ましい。
重合性モノマー及び/又はオリゴマーの配合量としては特に制限はないが、ビニル系重合体100質量部に対して1〜200質量部であることが好ましく、5〜100質量部であることがより好ましく、10〜50質量部であることが特に好ましい。配合量が前記の範囲内であれば、シーリング材組成物の粘度が低く、硬化性が良好で、硬化物特性が優れるため好ましい。
本発明のシーリング材組成物は補強性シリカを更に含有してもよい。補強性シリカとしては、ヒュームドシリカ、沈降性シリカ、結晶性シリカ、溶融シリカ、ドロマイト、無水ケイ酸、含水ケイ酸等が挙げられる。これらの中でも粒子径が50μm以下であり、比表面積が80m2/g以上のものが補強性の効果から好ましい。なかでも、比表面積(BET吸着法による)が50m2/g以上、通常50〜400m2/g、好ましくは100〜300m2/g程度の超微粉末状のシリカが好ましい。また、表面処理シリカ、例えば、オルガノシラン、オルガノシラザン、ジオルガノシクロポリシロキサン等の有機ケイ素化合物で表面処理されたものは、成形に適した流動性を発現しやすいため更に好ましい。補強性シリカ系のより具体的な例としては、特に限定されないが、ヒュームドシリカの1つである日本アエロジル社のアエロジルや、沈降法シリカの1つである日本シリカ社工業のNipsil等が挙げられる。
この補強性シリカの添加量としては特に制限はないが、ビニル系重合体100質量部に対して0.1〜100質量部、好ましくは0.5〜80質量部、特には1〜50質量部用いることが好ましい。配合量が0.1質量部未満の場合には、補強性の改善効果が充分でないことがあり、100質量部を越えると該シーリング材組成物の作業性が低下したりすることがある。また、本発明の補強性シリカは単独で使用しても良いし、2種以上併用しても良い。
本発明のシーリング材組成物には、物性を調整するために各種の添加剤、例えば、難燃剤、老化防止剤、充填材、可塑剤、硬化性調整剤、物性調整剤、密着性付与剤、貯蔵安定性改良剤、溶剤、ラジカル禁止剤、金属不活性化剤、オゾン劣化防止剤、リン系過酸化物分解剤、滑剤、顔料、発泡剤等を必要に応じて適宜配合してもよい。これらの各種添加剤は単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。また、ビニル系重合体は本来、耐久性に優れた重合体であるので、老化防止剤は必ずしも必要ではないが、従来公知の酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤等を適宜用いることができる。
充填剤の具体的な例としては、フュームドシリカ、沈降性シリカ、無水ケイ酸、含水ケイ酸及びカーボンブラックのような補強性充填材;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイソウ土、焼成クレー、クレー、タルク、酸化チタン、ベントナイト、有機ベントナイト、酸化第二鉄、酸化亜鉛、活性亜鉛華及びシラスバルーンなどのような充填材;石綿、ガラス繊維及びフィラメントのような繊維状充填材が使用できる。これら充填材で強度の高い硬化物を得たい場合には、主にヒュームドシリカ、沈降性シリカ、無水ケイ酸、含水ケイ酸、カーボンブラック、表面処理微細炭酸カルシウム、焼成クレー、クレー及び活性亜鉛華などから選ばれる充填材をビニル重合体100質量部に対して0〜250質量部の範囲で添加すれば好ましい結果が得られる。80〜180質量部の範囲がより好ましい。また、低強度で伸びが大きい硬化物を得たい場合には、主に酸化チタン、炭酸カルシウム、タルク、酸化第二鉄、酸化亜鉛及びシラスバルーンなどから選ばれる充填材を、ビニル系重合体100質量部に対して0〜200質量部の範囲で添加すれば好ましい結果が得られる。80〜150重量部の範囲がより好ましい。これら充填材は1種類で使用してもよいし、2種類以上混合使用してもよい。
可塑剤の具体的な例としては、ジブチルフタレート、ジヘプチルフタレート、ジ(2−エチルヘキシル)フタレート、ジイソデシルフタレート、ブチルベンジルフタレート等のフタル酸エステル類;ジオクチルアジペート、ジオクチルセバケート等の非芳香族二塩基酸エステル類;ジエチレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコールジベンゾエート等のポリアルキレングリコールのエステル類;トリクレジルホスフェート、トリブチルホスフェート等のリン酸エステル類;ポリエリレングリコール、ポリプロピレングリコールあるいはこれらの水酸基を変換したポリエーテル類;塩化パラフィン類;アルキルジフェニル、部分水添ターフェニル等の炭化水素系油、重量平均分子量(Mw)1000〜7000のTg−10℃以下のポリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。可塑剤量は、ビニル系重合体100質量部に対して0〜400質量部の範囲で添加することが好ましく、0〜200質量部であることがより好ましく、0〜100質量部であることが特に好ましい。
密着性付与剤としては、アミノシラン、エポキシシラン、ビニルシラン、メチルシラン類などが用いられてよい。
また、溶剤としては、例えばトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、酢酸セロソルブ等のエステル系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン等のケトン系溶剤等が挙げられる。それらの溶剤は重合体の製造時に用いてもよい。
本発明に係るシーリング材組成物は、以上のような成分を含有するが、その製造方法は、特に限定されるものではない。具体的には、攪拌装置、遊星式攪拌装置等を用いて、混合することにより製造することができる。
本発明によるシーリング材組成物は、比較的高温でも貯蔵安定性に優れることから、組成物をより低い粘度で扱うことが可能となり、高温での液状射出成形等に好適である。本発明において、シーリング材組成物を流動させる際には、30℃以上80℃未満の温度で行なうのが好ましいが、40℃以上70℃未満の温度で流動させることがより好ましい。また、本発明においては、シーリング材組成物を30℃以上80℃未満の温度で流動させるとともに、さらに30℃以上で流動させながら硬化反応をおこなうことができる。すなわち本発明のシーリング材組成物を、射出成形(RIM、LIM等)用樹脂として用いることも可能である。
本発明のシーリング材組成物を成形体として用いる場合の成形方法としては、特に限定されず、一般に使用されている各種の成形方法を用いることができる。例えば、注型成形、圧縮成形、トランフファー成形、射出成形、押し出し成形、回転成形、中空成形、熱成形等が挙げられる。特に自動化、連続化が可能で、生産性に優れるという観点から射出成形によるものが好ましい。
本発明のシーリング材組成物を成形体として硬化させた場合には、前記成形体を実質的に破損させずに、脱型することができる。成形体が実質的に破損しないとは、成形体がその役割を果たす程度に良好な表面を有することである。
本発明のシーリング材組成物は、限定はされないが、太陽電池裏面封止材などの電気・電子部品材料、ガスケット、注型材料、人工大理石、各種成形材料、及び網入りガラスや合わせガラス端面(切断部)の防錆・防水用封止材等の様々な用途に利用可能である。更に、本発明のシーリング材組成物から得られたゴム弾性を示す成形体は、ガスケット、パッキン類を中心に広く使用することができる。例えば自動車分野ではボディ部品として、気密保持のためのシール材、ガラスの振動防止材、車体部位の防振材、特にウインドシールガスケット、ドアガラス用ガスケットに使用することができる。エンジン部品としては、エンジンオイル用シール材などに使用することができる。家電分野では、パッキン、Oリングなどに使用できる。具体的には、防水パッキン類、防虫パッキン類、クリーナ用の防振・吸音と空気シール材、電気温水器用の防滴カバー、防水パッキン、ヒータ部パッキン、電極部パッキン、安全弁ダイアフラム、防水パッキン、電磁弁、スチームオーブンレンジ及びジャー炊飯器用の防水パッキン、給水タンクパッキン、吸水バルブ、水受けパッキン、保温ヒータ部パッキン、蒸気吹き出し口シールなど燃焼機器用のオイルパッキン、Oリング、ドレインパッキン、送・吸気パッキン、防振ゴム、給油口パッキン、油量計パッキン、ダイアフラム弁など、音響機器用のスピーカーガスケット、スピーカーエッジ、等が挙げられる。建築分野では、構造用ガスケット(ジッパーガスケット)、防水材、定形シーリング材に使用できる。スポーツ分野では、スポーツ床として全天候型舗装材、体育館床等に使用できる。防振ゴム分野では、自動車用防振ゴム、鉄道車両用防振ゴム、航空機用防振ゴム、防舷材等に使用できる。海洋・土木分野では、構造用材料として、止水板、防水シート等に使用できる。
<ビニル系重合体の合成>
以下に本発明の実施例を合成例、比較例と共に説明するが、本発明の範囲をこれらの実施例に限定するものでないことは言うまでもない。なお、以下において「部」は特に断らない限り質量基準である。
(重合体Aの製造方法) オイルジャケットを備えた容量1リットルの加圧式攪拌層型反応器にアクリル酸ブチル(以下「BA」ともいう。)341質量部、リビングラジカル重合開始剤[式(6)]17.0質量部、酢酸ブチル341質量部からなる混合液を仕込み、混合液は窒素バブリングで十分に脱気された。ジャケット温度を112℃に上昇させ重合反応を開始し、反応液温度が112℃に保たれるようジャケット温度は調整された。2時間後にBAの重合率は74%であった。冷却後、反応液を抜き出し、減圧度0.3kPa、80℃で5時間かけ蒸発機で減圧乾燥し、約220質量部の重合体を得た。得られた重合体の性状はMw8600、Mn6230、Mw/Mn1.38であった。次にオイルジャケットを備えた容量1リットルの加圧式攪拌層型反応器にPBA重合体215質量部、BA45質量部、メタクリル酸(以下「MAA」ともいう。)6質量部、酢酸ブチル221質量部からなる混合液を仕込み、混合液は窒素バブリングで十分に脱気された。ジャケット温度を112℃に上昇させ、重合反応を開始し、反応液温度が112℃に保たれるようジャケット温度は調整された。6時間後にBAの重合率は96%、MAAの重合率は98%であった。反応液温度を85℃まで冷却し、そこへ4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル(以下「4HBAGE」ともいう。)23質量部、テトラブチルアンモニウムブロミド(以下「TBAB」ともいう。)9質量部を加え、85℃のまま8時間反応させた。この時点での4HBAGEの反応率は97%であった。冷却後、反応液を抜き出し、減圧度0.3kPa、80℃で5時間かけ蒸発機で減圧乾燥し、約220質量部の重合体を得た。重合体の性状はMw13150、Mn7460、Mw/Mn1.76、E型粘度(25℃)68900mPa・sであった。重合体の高分子鎖1本あたりのアクリロイル基数fは2.6個であった。
(重合体Bの製造方法) オイルジャケットを備えた容量1リットルの加圧式攪拌層型反応器にBA348質量部、リビングラジカル重合開始剤[式(6)]4.1質量部、酢酸ブチル348質量部からなる混合液を仕込み、混合液は窒素バブリングで十分に脱気された。ジャケット温度を112℃に上昇させ重合反応を開始し、反応液温度が112℃に保たれるようジャケット温度は調整された。3時間後にBAの重合率は71%であった。冷却後、反応液を抜き出し、減圧度0.3kPa、80℃で5時間かけ蒸発機で減圧乾燥し、約220質量部の重合体を得た。得られた重合体の性状はMw26280、Mn18910、Mw/Mn1.39であった。次にオイルジャケットを備えた容量1リットルの加圧式攪拌層型反応器にPBA重合体212質量部、BA14質量部、MAA2質量部、酢酸ブチル220質量部からなる混合液を仕込み、混合液は窒素バブリングで十分に脱気された。ジャケット温度を112℃に上昇させ、重合反応を開始し、反応液温度が112℃に保たれるようジャケット温度は調整された。6時間後にBAの重合率は81%、MAAの重合率は99%であった。反応液温度を85℃まで冷却し、そこへ4HBAGE6.8質量部、TBAB2.7質量部を加え、85℃のまま8時間反応させた。この時点での4HBAGEの反応率は96%であった。冷却後、反応液を抜き出し、減圧度0.3kPa、80℃で5時間かけ蒸発機で減圧乾燥し、約220質量部の重合体を得た。重合体の性状はMw30500、Mn18150、Mw/Mn1.81、E型粘度(25℃)132500mPa・sであった。重合体の高分子鎖1本あたりのアクリロイル基数fは2.6個であった。
(重合体Cの製造方法) オイルジャケットを備えた容量1リットルの加圧式攪拌層型反応器にBA153質量部、アクリル酸エチル(以下「EA」ともいう。)152質量部、アクリル酸エチル−2−メトキシ(以下「C1」ともいう。)35質量部、リビングラジカル重合開始剤[式(6)]20.6質量部、酢酸ブチル240質量部からなる混合液を仕込み、混合液は窒素バブリングで十分に脱気された。ジャケット温度を112℃に上昇させ重合反応を開始し、反応液温度が112℃に保たれるようジャケット温度は調整された。1.5時間後にBAの重合率は81%、EAの重合率は84%、C1の重合率が82%であった。冷却後、反応液を抜き出し、減圧度0.3kPa、80℃で5時間かけ蒸発機で減圧乾燥し、約320質量部の重合体を得た。得られた重合体の性状はMw7360、Mn5400、Mw/Mn1.36であった。次にオイルジャケットを備えた容量1リットルの加圧式攪拌層型反応器に重合体241質量部、メタクリル酸ブチル(以下「BMA」ともいう。)63質量部、MAA8質量部、酢酸ブチル265質量部からなる混合液を仕込み、混合液は窒素バブリングで十分に脱気された。ジャケット温度を112℃に上昇させ、重合反応を開始し、反応液温度が112℃に保たれるようジャケット温度は調整された。6時間後にBMAの重合率は88%、MAAの重合率は87%であった。反応液温度を85℃まで冷却し、そこへ4HBAGE39.5質量部、TBAB11.6質量部を加え、85℃のまま8時間反応させた。この時点での4HBAGEの反応率は96%であった。冷却後、反応液を抜き出し、減圧度0.3kPa、80℃で5時間かけ蒸発機で減圧乾燥し、約220質量部の重合体を得た。重合体の性状はMw12710、Mn7570、Mw/Mn1.68、E型粘度(25℃)241700mPa・s、重合体の組成はBA/EA/C1=43/47/10(wt)(NMRにより算出)であった。重合体の高分子鎖1本あたりのアクリロイル基数fは3.0個であった。
(重合体Dの製造方法) オイルジャケットを備えた容量1リットルの加圧式攪拌層型反応器にBA159質量部、EA157質量部、C1 37質量部、リビングラジカル重合開始剤[式(6)]5.4質量部、酢酸ブチル240質量部からなる混合液を仕込み、混合液は窒素バブリングで十分に脱気された。ジャケット温度を112℃に上昇させ重合反応を開始し、反応液温度が112℃に保たれるようジャケット温度は調整された。5時間後にBAの重合率は84%、EAの重合率は86%、C1の重合率が85%であった。冷却後、反応液を抜き出し、減圧度0.3kPa、80℃で5時間かけ蒸発機で減圧乾燥し、約320質量部の重合体を得た。得られた重合体の性状はMw25300、Mn19320、Mw/Mn1.31であった。次にオイルジャケットを備えた容量1リットルの加圧式攪拌層型反応器に重合体260質量部、BMA19質量部、MAA2.3質量部、酢酸ブチル290質量部からなる混合液を仕込み、混合液は窒素バブリングで十分に脱気された。ジャケット温度を112℃に上昇させ、重合反応を開始し、反応液温度が112℃に保たれるようジャケット温度は調整された。6時間後にBMAの重合率は69%、MAAの重合率は66%であった。反応液温度を85℃まで冷却し、そこへ4HBAGE 8.9質量部、TBAB3.5質量部を加え、85℃のまま8時間反応させた。この時点での4HBAGEの反応率は96%であった。冷却後、反応液を抜き出し、減圧度0.3kPa、80℃で5時間かけ蒸発機で減圧乾燥し、約220質量部の重合体を得た。重合体の性状はMw28420、Mn19380、Mw/Mn1.47、E型粘度(25℃)295400mPa・s、重合体の組成はBA/EA/C1=44/47/9(wt)(NMRにより算出)であった。重合体の高分子鎖1本あたりのアクリロイル基数fは3.0個であった。
(重合体Eの製造方法) オイルジャケットを備えた容量1リットルの加圧式攪拌層型反応器にBA341質量部、リビングラジカル重合開始剤[式(6)]17.0質量部、酢酸ブチル341質量部からなる混合液を仕込み、混合液は窒素バブリングで十分に脱気された。ジャケット温度を112℃に上昇させ重合反応を開始し、反応液温度が112℃に保たれるようジャケット温度は調整された。2時間後にBAの重合率は74%であった。冷却後、反応液を抜き出し、減圧度0.3kPa、80℃で5時間かけ蒸発機で減圧乾燥し、約220質量部の重合体を得た。得られた重合体の性状はMw8600、Mn6230、Mw/Mn1.38であった。次にオイルジャケットを備えた容量1リットルの加圧式攪拌層型反応器に重合体191質量部、BMA44質量部、MAA 5質量部、酢酸ブチル160質量部からなる混合液を仕込み、混合液は窒素バブリングで十分に脱気された。ジャケット温度を112℃に上昇させ、重合反応を開始し、反応液温度が112℃に保たれるようジャケット温度は調整された。6時間後にBMAの重合率は71%、MAAの重合率は75%であった。反応液温度を85℃まで冷却し、そこへメタクリル酸グリシジルエーテル(以下「GMA」ともいう。)16質量部、TBAB 9質量部を加え、85℃のまま8時間反応させた。この時点でのGMAの反応率は99%であった。冷却後、反応液を抜き出し、減圧度0.3kPa、80℃で5時間、蒸発機で減圧乾燥し、約220質量部の重合体を得た。重合体の性状はMw12090、Mn7760、Mw/Mn1.56、E型粘度(25℃)66000mPa・sであった。重合体の高分子鎖1本あたりのアクリロイル基数fは2.8個であった。
(重合体Fの製造方法) 1リットルのセパラブルフラスコにリビングラジカル重合開始剤[式(6)]9.3質量部、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(以下「HDDA」ともいう。)2.7質量部、エタノール28質量部からなる混合液を仕込み、75℃、2時間反応させた。反応後、エタノールを真空ポンプで減圧にすることで系外に除去した。そこへBA156質量部、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル(以下「EHGE」ともいう。)3.8質量部、TBAB 4.2質量部、酢酸ブチル67質量部からなる混合液を仕込み、112℃で6時間反応させた。この時点でBAの重合率は61%で、EHGEの反応率は92%であった。冷却後、反応液を抜き出し、減圧度0.3kPa、80℃で5時間、蒸発機で減圧乾燥し、約152質量部の重合体を得た。重合体の性状はMw109890、Mn8370、Mw/Mn1.31であった。次に1リットルのフラスコに重合体150質量部、BMA51質量部、GMA 10.2質量部、酢酸ブチル138質量部からなる混合液を仕込み、混合液は窒素バブリングで十分に脱気された。ジャケット温度を112℃に上昇させ、重合反応を開始し、反応液温度が112℃に保たれるようジャケット温度は調整された。6時間後にBMAの重合率は72%、MAAの重合率は78%であった。反応液温度を85℃まで冷却し、そこへアクリル酸(以下「AA」ともいう。)5.2質量部を加え、85℃のまま8時間反応させた。この時点でのAAの反応率は99%であった。冷却後、反応液を抜き出し、減圧度0.3kPa、80℃で5時間、蒸発機で減圧乾燥し、約140質量部の重合体を得た。重合体の性状はMw13400、Mn8100、Mw/Mn1.65、E型粘度(25℃)84000mPa・sであった。重合体の高分子鎖1本あたりのアクリロイル基数fは2.5個であった。
(重合体Gの製造方法) オイルジャケットを備えた容量1リットルの加圧式攪拌層型反応器にBA396質量部、リビングラジカル重合開始剤[式(6)]11.8質量部、EHGE4.8質量部、TBAB5.4質量部、酢酸ブチル170質量部からなる混合液を仕込み、混合液は窒素バブリングで十分に脱気された。ジャケット温度を112℃に上昇させ重合反応を開始し、反応液温度が112℃に保たれるようジャケット温度は調整された。6時間後にBAの重合率は84%であった。そこへ、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(以下「HEMA」ともいう。)4.0質量部を添加し、112℃のまま6時間反応させた。この時点でBAの重合率95%、HEMAの重合率は93%であった。反応液温度を85℃まで冷却し、そこへ2−エチルイソシアネートアクリレート(以下「AOI」ともいう。)8.7質量部を加え、85℃のまま8時間反応させた。この時点でのAOIの反応率は96%であった。冷却後、反応液を抜き出し、減圧度0.3kPa、80℃で5時間かけ蒸発機で減圧乾燥し、約380質量部の重合体を得た。重合体の性状はMw15300、Mn10200、Mw/Mn1.50、E型粘度(25℃)201000mPa・sであった。重合体の高分子鎖1本あたりのアクリロイル基数fは1.7個であった。
(重合体Hの製造方法) オイルジャケットを備えた容量1リットルの加圧式攪拌層型反応器にBA341質量部、リビングラジカル重合開始剤[式(7)]18.6質量部、酢酸ブチル341質量部からなる混合液を仕込み、混合液は窒素バブリングで十分に脱気された。ジャケット温度を112℃に上昇させ重合反応を開始し、反応液温度が112℃に保たれるようジャケット温度は調整された。2時間後にBAの重合率は70%であった。冷却後、反応液を抜き出し、減圧度0.3kPa、80℃で5時間かけ蒸発機で減圧乾燥し、約210質量部の重合体を得た。得られた重合体の性状はMw8000、Mn5900、Mw/Mn1.36であった。次にオイルジャケットを備えた容量1リットルの加圧式攪拌層型反応器にPBA重合体215質量部、BA45質量部、MAA6質量部、酢酸ブチル221質量部からなる混合液を仕込み、混合液は窒素バブリングで十分に脱気された。ジャケット温度を112℃に上昇させ、重合反応を開始し、反応液温度が112℃に保たれるようジャケット温度は調整された。6時間後にBAの重合率は90%、MAAの重合率は92%であった。反応液温度を85℃まで冷却し、そこへ4HBAGE22質量部、TBAB8質量部を加え、85℃のまま8時間反応させた。この時点での4HBAGEの反応率は99%であった。冷却後、反応液を抜き出し、減圧度0.3kPa、80℃で5時間かけ蒸発機で減圧乾燥し、約210質量部の重合体を得た。重合体の性状はMw13250、Mn7290、Mw/Mn1.82、E型粘度(25℃)70020mPa・sであった。重合体の高分子鎖1本あたりのアクリロイル基数fは2.6個であった。
(重合体Iの製造方法) オイルジャケットを備えた容量2リットルの加圧式攪拌層型反応器にBA49質量部、酢酸ブチル500質量部からなる混合液を仕込み、混合液は窒素バブリングで十分に脱気された。次いで、重合開始剤としてアゾビスイソバレロニトリル(以下「AIVN」ともいう。)0.65質量部添加し、重合を開始し、引き続き、BA530質量部、AA8.1質量部、AIVN6.5質量部、酢酸ブチル150質量部からなる混合溶液を4時間にわたり反応器へ連続供給し、反応器内の反応温度が80℃に一定に保てるように外温を制御した。同温度で送液終了後、AIVN 0.65質量部を添加し、1時間熟成した。BAの反応率は97%、AAの反応率は98%であった。そこに、4HBAGE17質量部、TBAB6.5質量部を加え、80℃で6時間反応させた。この時点での4HBAGEの反応率は96%であった。冷却後、反応液を抜き出し、減圧度0.3kPa、80℃で5時間かけ蒸発機で減圧乾燥し、約550質量部の重合体を得た。重合体の性状はMw76000、Mn19600、Mw/Mn3.90、E型粘度(25℃)500000mPa・sであった。重合体の高分子鎖1本あたりのアクリロイル基数fは2.7個であった。
(重合体Jの製造方法) オイルジャケットを備えた容量1リットルの加圧式攪拌層型反応器に2−ヒドロキシエチルジスルフィド75質量部を仕込み、ジャケット温度を内温が100℃になるように上昇させた。次いで、AIVN0.9質量部をBA64質量部に溶解させたものを30分にわたり反応器へ連続供給し、反応器内の反応温度が100℃に一定に保たれるように外温を制御した。その後、同温度でさらに30分反応させた。この時点でBAの反応率は98%であった。続いて、この溶液を分液コートに移し、トルエン100質量部を添加し、よく振り混ぜた後、しばらく静置し、2相分離した下層(2−ヒドロキシスルフィド)を除去し、トルエン層をエバポレーションにより減圧乾燥した。得られた重合物50質量部を酢酸ブチル50質量部に溶解し、その溶液をフラスコに入れ、AOI 2質量部、TBAB1.1質量部を加え、85℃のまま8時間反応させた。この時点でのAOIの反応率は96%であった。冷却後、反応液を抜き出し、減圧度0.3kPa、80℃で5時間かけ蒸発機で減圧乾燥し、約50質量部の重合体を得た。重合体の性状はMw34000、Mn7700、Mw/Mn4.4、E型粘度(25℃)88000mPa・sであった。重合体の高分子鎖1本あたりのアクリロイル基数fは1.7個であった。
重合体A及びCを用いて表2に示す組成物を作製した。配合量の単位は質量部である。これらの組成物を型枠に充填し、150℃、5分間硬化させることにより、ゴム状の硬化物が得られた。
表2における略号は以下のものを示す。
・IBXA:イソボロニルアクリレート
・ナイパーBW:ベンゾイルパーオキサイド、日本油脂社製
得られた硬化物について、ゲル分率の測定をおこなった(表2)。ただし、ゲル分率は、硬化物の未硬化部分抽出前と抽出後の硬化物の重量比により求めた。未硬化部分の抽出は、硬化物をトルエンに浸漬することにより行った。