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JP5228797B2 - 液体流路装置 - Google Patents

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JP5228797B2
JP5228797B2 JP2008276468A JP2008276468A JP5228797B2 JP 5228797 B2 JP5228797 B2 JP 5228797B2 JP 2008276468 A JP2008276468 A JP 2008276468A JP 2008276468 A JP2008276468 A JP 2008276468A JP 5228797 B2 JP5228797 B2 JP 5228797B2
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Description

本発明は、例えば血液中の抗原の検出、分析などに好適に使用される平板状の液体流路装置に関する。
近年、医療分野、環境分野などでは、液体試料中の微量成分の検出、分析が頻繁に行われており、その際、例えば医療分野では、基板に流路が形成されたマイクロチップと呼ばれる液体流路装置が使用される場合が多い。
例えば特許文献1には、マイクロチップに形成された液体流路内で、抗体を含有する試薬と血液とを混合、反応させた後、該マイクロチップごと検出装置に供して、抗原抗体反応を検出する技術が記載されている。このマイクロチップにおいては、別途併設されたマイクロポンプの作用により、試薬や血液が送液されるようになっている。
また、例えば特許文献2には、回転可能なディスクの半径方向に流路を複数形成し、この流路の一部にあらかじめ抗体を固定しておき、その後、ディスクを回転させて流路に体液を流通させることによって、抗原抗体反応により体液中の抗原を抗体に捕捉させるディスク状の液体流路装置が開示されている。
特開2007−139500号公報 特開平05−005741号公報
しかしながら、試薬や血液を液体流路中に流通させるために、特許文献1の液体流路装置では別途マイクロポンプを使用する必要があり、特許文献2の液体装置ではディスクを回転させる装置が必要であった。
本発明の目的は、液体を流通させるための装置を別途必要とすることなく、液体を簡便かつ円滑に流路に流通させることのできる液体流路装置を低コストで提供することである。
本発明の液体流路装置は、基板の少なくとも片面に、試料および試薬の少なくとも一方からなる液体が流通する液体流路と、前記液体が溜まる1つ以上の液槽とが形成され、前記基板の前記液体流路と前記液槽とが形成された流路形成面には蓋板が積層した液体流路装置であって、
前記液槽の少なくとも1つは、該液槽内の液体を液槽外に送液する送液手段を有し、該送液手段は、前記液槽に対応する部分の蓋板または前記液槽の底部を外側から押圧する操作により作動することを特徴とする。
本発明の液体流路装置は、前記液体流路の一部を閉止状態から開通状態にする開通手段と、開通状態から閉止状態にする閉止手段とをさらに有し、
前記蓋板は、該蓋板の表面を構成する第1基材層と、該第1基材層の内側に形成された強粘着層と、該強粘着層の内側に形成された第2基材層と、該第2基材層の内側に形成され、前記流路形成面に粘着する弱粘着層とを有し、
前記開通手段では、前記液体流路に第1凸部が形成され、該第1凸部の頂部と前記弱粘着層とが粘着し、かつ、前記強粘着層と前記第2基材層とが離間し、
前記閉止手段では、前記液体流路に第2凸部が形成され、該第2凸部の頂部と前記弱粘着層とが離間し、かつ、前記強粘着層と前記第2基材層との間にはスペーサ部材が介在し、該スペーサ部材と前記強粘着層とが粘着し、
前記送液手段では、前記強粘着層と前記第2基材層との間にはスペーサ部材が介在し、該スペーサ部材と前記強粘着層とが粘着していることが好ましい。
前記基板は、外層と、該外層の内側に積層した中間層と、該中間層の内側に積層した内層とからなり、前記内層には、前記液槽の上部と、前記液体流路と、前記第1凸部と、前記第2凸部とが形成され、前記中間層には、前記液槽の下部が形成されていることが好ましい。
または、前記基板は、外層と、該外層の内側に積層した内層とからなり、前記内層には、前記液槽と、前記液体流路と、前記第1凸部と、前記第2凸部とが形成されていることが好ましい。
前記送液手段が設けられた前記液槽には、該送液手段で送液される液体の逆流を防止する逆流防止手段が設けられていることが好ましい。
また、その場合、逆流防止手段は、前記内層に形成されていることが好ましい。
前記送液手段は、前記液槽の底部を外側から押圧する操作により作動するものである場合、前記底部は、外方に膨出して形成されていることが好ましい。
本発明によれば、液体を流通させるための装置を別途必要とすることなく、液体を簡便かつ円滑に流路に流通させることのできる液体流路装置を低コストで提供できる。
以下、本発明について詳細に説明する。
[第1実施形態例]
図1は第1実施形態例の液体流路装置10Aを概略的に示す平面透視図、図2は図1の液体流路装置10Aの一部を拡大した平面透視図、図3は図2のI−I’線に沿う断面図である。
この液体流路装置10Aは、平板からなる四角形の基板11Aの片面に、試料および試薬の少なくとも一方からなる液体が流通する溝状の液体流路12と、液体流路12の端部や途中において液体が溜まる複数(この例では9)の液槽(14a〜14i)とが形成され、基板11Aの液体流路12と液槽(14a〜14i)とが形成された側の流路形成面12aに、蓋板13が積層して構成されたものである。
この例の液体流路装置10Aは、図1中の上端部側が上方に、下端部側が下方に位置するように立てられただけでも、液体流路12の上流側の端部から下流側の端部に向けて矢印F方向に試料が重力により流通し、その途中で試料に対して各種の処理や試薬との混合がなされ、各種検出、分析に供される測定液が調製される。しかしながら、この例では、詳しくは後述するように、液槽の有する送液手段も併用することによって、液体を簡便かつ円滑に流通させ得るようになっている。
液体流路12の上流側の端部には、投入された試料が溜まる試料投入槽14aが設けられ、この試料投入槽14aの下流には、試料投入槽14aから流通してきた試料に対してろ過処理が施される図示略のフィルタが内蔵されたろ過槽14bが設けられている。
ろ過槽14bの下流には、その内容積が所定量に形成され、ろ過処理された試料を計量できる計量槽14cが設けられている。
計量槽14cの下流には、計量槽14cで計量された試料と、あらかじめ第1試薬槽14eに所定量封入されている液体の第1試薬とが混合される第1混合槽14fが設けられ、第1混合槽14fの下流には、第1混合槽14fで調製された中間調製液と、あらかじめ第2試薬槽14gに所定量封入されている液体の第2試薬とが混合される第2混合槽14hが設けられている。
そして、第2混合槽14hの下流には測定槽14iが設けられ、第2混合槽14hで調製された測定液がここに貯留され、図示略の検出分析手段により、各種成分の検出や分析がなされるようになっている。
なお、この例では、測定槽14iの下流に、測定槽14iと液体流路12により連通した混合機能槽14dが設けられている。詳しくは後述するが、測定槽14i内の測定液を混合機能槽14dに一旦送った後、測定槽14iに返送する混合操作を必要に応じて繰り返すことにより、測定液が十分に攪拌混合され、より検出や分析に適した状態になる。
また、各液槽には、大気と連通する開閉可能な図示略の連通孔が設けられている。
この液体流路装置10Aの蓋板13は、図3に示すように、蓋板13の表面を構成する第1基材層13aと、第1基材層13aの内側に形成された強粘着層13bと、強粘着層13bの内側に形成された第2基材層13cと、第2基材層13cの内側に形成され、流路形成面12aに粘着する弱粘着層13dとを有して構成されている。
第1基材層13aは、表面側から垂直方向(第1基材層13aと垂直に交差する方向)の荷重が加えられた場合には撓み、その後、荷重が取り去られた場合には元に戻る復元力を有する材料からなっている。一方、第2基材層13cは、同様の荷重により容易に撓み、荷重を取り去っても復元しない、すなわち容易に塑性変形する材料からなっている。また、強粘着層13bの粘着力は、弱粘着層13dよりも大きく形成されている。
また、この液体流路装置10Aは、液体流路12の一部を閉止状態から開通状態にする開通手段S1〜S7と、開通状態から閉止状態にする閉止手段T1とを有している。
この例では、開通手段S1〜S7は、試料投入槽14aとろ過槽14bとの間、ろ過槽14bと計量槽14cとの間、計量槽14cと第1混合槽14fとの間、第1混合槽14fと第2混合槽14hとの間、第1試薬槽14eと第1混合槽14fとの間、第2試薬槽14gと第2混合槽14hとの間、第2混合槽14hと測定槽14iとの間の各液体流路12にそれぞれ1ずつ設けられている。
一方、閉止手段T1は、ろ過槽14bと計量槽14cとの間の液体流路12において、開通手段S2よりも下流側に設けられている。
そして、各開通手段S1〜S7においては、図3のS1およびS2を例示して説明すると、液体流路12に第1凸部15が形成され、この第1凸部15の頂部15aと弱粘着層13dとが粘着し、かつ、強粘着層13bと第2基材層13cとが離間している。
よって、各開通手段S1〜S7における液体流路12は、第1凸部15とこれの頂部15aに粘着した弱粘着層13dとにより閉じられ、通常時は閉止状態となっている。ところが、図4に開通手段S1を例に挙げて示すように、この開通手段S1おける第1基材層13aを表面側から矢印Aで示すように押圧して、第1基材層13aに垂直方向の荷重を加えた場合には、図4(a)に示すように、第1基材層13aが撓み、第1基材層13aの内側の強粘着層13bが第2基材層13cに粘着する。そして、その後に荷重を取り去ると、図4(b)に示すように、第1基材層13aはその復元力により元の状態に復元し、その際、第1基材層13aの内側に粘着した強粘着層13bと、強粘着層13bに粘着し、容易に塑性変形可能な第2基材層13cと、第2基材層13cの内側に粘着した弱粘着層13dも第1基材層13aの復元に追従し、持ち上がる。その結果、第1凸部15の頂部15aと弱粘着層13dとの間が新たに離間し、ここを液体が流通できるようになる。
このように開通手段S1〜S7においては、蓋板13を表面側から押圧して垂直方向の荷重を加えた後、この荷重を取り去る押圧操作によって、元々は粘着していた第1凸部15の頂部15aと弱粘着層13dとの間が離間し、その結果、この部分の液体流路12が閉止状態から開通状態となる。
一方、閉止手段T1においては、図3に示すように、液体流路12に第2凸部16が形成され、この第2凸部16の頂部16aと弱粘着層13dとは離間し、かつ、強粘着層13bと第2基材層13cとの間にはスペーサ部材17が介在し、スペーサ部材17と強粘着層13bとが粘着している。
よって、閉止手段T1における液体流路12では、第2凸部16の頂部16aと弱粘着層13dとの間が離間して流路が保たれ、通常時は開通状態となっている。ところが、図5(a)に示すように、閉止手段T1における第1基材層13aを表面側から矢印Bで示すように押圧して、第1基材層13aに垂直方向の荷重を加えた場合には、第1基材層13aが撓み、その結果、蓋板13の内層の弱粘着層13dが第2凸部16の頂部16aに粘着する。そして、その後に荷重を取り去ると、図5(b)に示すように、第1基材層13aはその復元力により元の状態に復元し、その際、第1基材層13aの内側に粘着した強粘着層13bと、強粘着層13bに粘着したスペーサ部材17は、第1基材層13aの復元に追従して持ち上がる。一方、スペーサ部材17と第2基材層13cとの間は粘着していないとともに、第2基材層13cは容易に塑性変形可能であるために、ここで荷重を取り去っても、第2基材層13cと弱粘着層13dは第1基材層13aの復元には追従しない。その結果、第2凸部16の頂部16aと弱粘着層13dとは粘着した状態となって液体流路12を閉止し、液体はここを流通できなくなる。
このように閉止手段T1においては、蓋板13を表面側から押圧して垂直方向の荷重を加えた後、この荷重を取り去る押圧操作によって、元々は離間していた第2凸部16の頂部16aと弱粘着層13dとの間が粘着して閉塞し、その結果、この部分の液体流路12が開通状態から閉止状態となる。
さらに、この例の液体流路装置10Aでは、計量槽14cと、第1混合槽14fと、第2混合槽14hと、測定槽14iと、混合機能槽14dは、各液槽内の液体を液槽外に送液する送液手段P1〜P5をそれぞれ有している。
これら送液手段P1〜P5のうち、計量槽14cの送液手段P1は、計量槽14c内の液体を下流側、すなわち第1混合槽14fへと送液するものである。同様に、第1混合槽14fの送液手段P2は、第1混合槽14f内の液体を下流側、すなわち第2混合槽14hへと送液するものであり、第2混合槽14hの送液手段P3は、第2混合槽14h内の液体を下流側、すなわち測定槽14iへと送液するものである。また、測定槽14iの送液手段P4は、測定槽14i内の液体を下流側、すなわち混合機能槽14dへと送液するものである。
一方、混合機能槽14dの送液手段P5は、混合機能槽14d内の液体を上流側、すなわち測定槽14iへと返送するものである。
そして、この例では、各送液手段P1〜P5を有する各液槽に対応する部分の蓋板13(各液槽を閉塞する部分の蓋板)においては、強粘着層13bと第2基材層13cとの間は離間しているのではなく、スペーサ部材17が介在して、スペーサ部材17と強粘着層13bとが粘着し、層間が密に構成されている。
そのため、送液手段P1を例に挙げて図6に示すように、この部分の蓋板13を外側から矢印Cで示す方向に押圧した場合(図6(b))、押圧された部分の蓋板13は内側に撓む。その結果、計量槽14cの内容積が小さくなり、計量槽14c内の液体が吐出されて送液され、送液手段P1としての作用が発現するようになっている。ここで仮に、強粘着層13bと第2基材層13cとの間が離間し、スペーサ部材17が介在しておらず、層間が密でないと、この部分の蓋板13を外側から押圧しても、強粘着層13bが第2基材層13cに粘着するだけで、計量槽14cの内容積が小さくならない可能性がある。その場合、送液手段としての作用は発現しない。
また、この例では、このような送液手段P1〜P4がそれぞれ設けられた計量槽14cと、第1混合槽14fと、第2混合槽14hと、測定槽14iとには、図1および図2に示すように、送液手段P1〜P4で送液される液体の上流側への逆流を防止する逆流防止手段G1〜G6も設けられている。そのため、送液手段P1〜P4を作動させた際に、各液槽内の液体は上流側には逆流せず、下流側にのみ送液されるようになっている。
逆流防止手段G1〜G6は、この例では、可撓性のある堰板18から構成されている。例えば、計量槽14cを例示すると、堰板18は、図6および図7に示すように、計量槽14cと計量槽14cの上流側の液体流路12との境界部分において、堰板18の先端18aが下流側に傾くように、基端18bのみが液体流路12の底部に固定されていて、先端18aや両側端は固定されていない。
そのため、図6および図7では図示略のろ過槽から計量槽14cへ液体が送液される場合には、液体は堰板18の先端18aを超えて計量槽14cへと流入することができる。一方、計量槽14cの有する送液手段P1が作動し、計量槽14cの内容積が小さくなった場合には、このような堰板18が配置されているために、図6(b)に示すように、計量槽14c内の液体は下流側にしか送液されず、上流側、すなわちろ過槽側へは逆流しない。
なお、混合機能槽14dは、上述したように、その上流側の測定槽14iとの間で測定液を行き来させることで、測定液を十分に攪拌混合するために設けられたものである。よって、混合機能槽14dには、液体の上流側への逆流を防止する逆流防止手段を設ける必要はない。
この液体流路装置10Aを用いて、測定液を調製する具体的な方法としては、まず、この液体流路装置10Aを試料投入槽14a側が上方に、測定槽14i側が下方に位置するように立てて、液体が重力によって上流側から下流側に流れやすい状態とする。
ついで、試料をシリンジなどにサンプリングし、このシリンジの針を試料投入槽14aに対応する部分の蓋板13に突き刺して、試料投入槽14aに試料を注入する。その後、試料投入槽14aとろ過槽14bとの間に設けられた開通手段S1を上述の押圧操作、すなわち、第1基材層13aを表面側から押圧して荷重を加えた後、取り去る操作で作動させ、この部分の液体流路12を開通状態とし、試料を重力によりろ過槽14bまで導入する。
この際、押圧操作は、作業者が指で第1基材層13aを表面側から押す手動により行ってもよいし、押圧位置がXY座標としてあらかじめプログラムされている押圧装置などを使用して、所定の位置を押すようにしてもよい。
ついで、ろ過槽14bでろ過処理がなされた後、ろ過槽14bと計量槽14cとの間に設けられた開通手段S2を押圧操作で作動させて、この部分の液体流路12を開通状態とし、試料を重力により計量槽14cに導入する。
ついで、計量槽14cにおいて、所定量の試料が溜まって計量された時点で、ろ過槽14bと計量槽14cとの間に設けられた閉止手段T1を押圧操作で作動させて、この部分の液体流路12を閉止状態とする。このようにして、計量槽14cに上流側からの液体がさらに流入するのを停止させてから、計量槽14cの下流に設けられた開通手段S3を押圧操作で作動させて、この部分の液体流路12を開通状態とする。ついで、計量槽14cを閉塞する部分の蓋板13を外側から押圧して、送液手段P1を作動させ、重力の作用と送液手段P1の作用とにより、計量後の試料を第1混合槽14fに導入する。
こうして計量後の試料を第1混合槽14fに導入する一方で、第1試薬槽14eと第1混合槽14fとの間の開通手段S4を押圧操作で作動させて第1試薬を第1混合槽14fに導入し、試料と第1試薬とを第1混合槽14fにおいて混合し、中間調製液を調製する。
ついで、第1混合槽14fと第2混合槽14hとの間の開通手段S5を押圧操作で作動させて、この部分の液体流路12を開通状態とし、ついで、送液手段P2を送液手段P1と同様にして作動させ、重力の作用と送液手段P2との作用により、第1混合槽14fで調製された中間調製液を第2混合槽14hに導入する。一方、第2試薬槽14gと第2混合槽14hとの間の開通手段S6を押圧操作で作動させて第2試薬を第2混合槽14hに導入し、中間調製液と第2試薬とを第2混合槽14hにおいて混合し、測定液を調製する。
ついで、第2混合槽14hと測定槽14iとの間の開通手段S7を押圧操作で作動させて、この部分の液体流路12を開通状態とし、ついで、送液手段P3を作動させて、重力の作用と送液手段P3との作用により、第2混合槽14hで調製された測定液を測定槽14iに導入する。
ついで、送液手段P4を作動させて、測定槽14i内の測定液を混合機能槽14dに一旦送液する。その後、送液手段P5を作動させて、混合機能槽14d内の測定液を測定槽14iに返送する。このような混合操作を必要に応じて繰り返して、測定液を十分に攪拌混合した後、この液体流路装置10Aごと検出分析手段に供し、測定槽14i内の測定液について、目的成分の検出や測定を行う。
なお、このように送液手段P1〜P5を作動させ、液体流路装置10Aの液体流路12に液体を流通させる場合には、必要に応じて、各液槽に設けられている図示略の連通孔を適宜開閉して、液体がより円滑に流れるようにすることが好適である。例えば、送液手段P1を作動させるにあたって、計量槽14cに対応する部分の蓋板13を押圧した後、押圧を解除する前に計量槽14cに設けられた連通孔を閉止状態から開通状態とし、その後、押圧を解除することにより、計量槽14c内が減圧状態となって下流に送液された液体が計量槽14cに逆流することを防止できる。
このような液体流路装置10Aによれば、液槽内の液体を送液する送液手段P1〜P5が、計量槽14cと、第1混合槽14fと、第2混合槽14hと、測定槽14iと、混合機能槽14dとにそれぞれ設けられているため、たとえ試料、中間調製液、測定液が粘性を有するなどして、液体流路12を流れ難いものである場合でも、液体を流通させるための装置を別途必要とすることなく、液体を簡便かつ円滑に流通させることができる。
また、この例の送液手段P1〜P5は、液体流路装置10Aの蓋板13を利用した構成であるため、送液手段P1〜P5のための別部材を新たに用意する必要がなく、低コストであるとともに構成もシンプルである。また、送液手段P1〜P5も押圧だけの簡便な操作で作動するため、操作性にも優れる。
さらに、この例では、送液手段P1〜P4がそれぞれ設けられた計量槽14cと第1混合槽14fと第2混合槽14hと測定槽14iとには、逆流防止手段G1〜G6としての堰板18が設けられているため、送液手段P1〜P4を作動させた場合に液体が上流側へと逆流してしまうこともない。
さらにこの例の液体流路装置10Aは、液体流路12を閉止状態から開通状態にする開通手段S1〜S7と、開通状態から閉止状態にする閉止手段T1とを有するため、液体流路12中の液体の流れを制御でき、その結果、精度の高い検出や分析を速やかに行うことができる。
例えば、この例では、計量槽14cの上流には閉止手段T1が設けられ、下流には開通手段S3が設けられている。そのため、計量槽14cで試料を正確かつ速やかに計量して、第1混合槽14fに導入することができる。ここで仮に、計量槽14cの下流に開通手段S3が設けられておらず、この部分の液体流路12が常に開通した状態であると、計量中であっても計量槽14cから試料が連続的に流出してしまい、試料を一定量溜めることができず、計量自体が困難となる。また、計量槽14cの上流に閉止手段T1が設けられていない場合には、一定量の試料を計量槽14cに溜めた後にも、試料投入槽14aに注入された試料の量によっては、ろ過槽14bを経た試料が計量槽14cに流入し続け、やはり、計量自体が困難となる可能性がある。その点、この例のように、計量槽14cの上流に閉止手段T1が設けられていると、ろ過槽14bを経た試料の全量が計量槽14cに完全に流入し終わらなくても、計量槽14cにおいて一定量の試料が計量された時点で閉止手段T1を作動させて、計量槽14cへの試料のさらなる流入を停止することができ、試料を正確かつ速やかに計量することができる。
また、この例では、第1混合槽14fと第2混合槽14hとの間に開通手段S5が設けられ、第2混合槽14hと測定槽14iとの間に開通手段S7が設けられている。そのため、第1混合槽14fおよび第2混合槽14hにおいて、目的の混合や反応が十分に進行してから、これら開通手段S5、S7を開通させ、ついで、送液手段P2、P3を作動させ、中間調製液や測定液をそれぞれ第2混合槽14hや測定槽14iに導入することができる。よって、混合や反応が不十分なことに起因する検出や分析の精度低下を防止することができる。
さらに、この例では、第1試薬槽14eと第1混合槽14fとの間、第2試薬槽14gと第2混合槽14hとの間にも開通手段S4、S6が設けられているため、所望の時点でこれらを開通させて、あらかじめ第1試薬槽14eおよび第2試薬槽14gにそれぞれ封入されている第1試薬および第2試薬を第1混合槽14fや第2混合槽14hに流入させることができる。仮に開通手段S4、S6が設けられていない場合には、液体流路装置10Aの保管時などに、第1試薬および第2試薬が下流側に流れ始めてしまうおそれがある。
また、この例の液体流路装置10Aの開通手段S1〜S7および閉止手段T1は、液体流路12に形成された第1凸部15および第2凸部16と蓋板13とが組み合わされた構成であるため、液体流路12を開通したり閉止したりするための別部材を新たに用意する必要がなく、低コストであるとともに構成もシンプルである。また、開通および閉止の操作も簡便な押圧操作のみで、操作性にも優れる。
なお、以上例示した液体流路装置10Aでは、計量槽14cと、第1混合槽14fと、第2混合槽14fと、測定槽14iと、混合機能槽14dとが送液手段P1〜P5をそれぞれ有する形態とした。しかしながら、これらの全ての液槽が送液手段を有していなくてもよく、また、これら以外の他の液槽が送液手段を有していてもよい。すなわち、試料や試薬の種類、特性などに応じて、どの液槽に送液手段を備えるか適宜決定することができる。例えば、この例では、液体流路装置10Aを用いて測定液を調製する場合には、まず、この液体流路装置10Aを試料投入槽14a側が上方に、測定槽14i側が下方に位置するように立てて、液体が重力によって上流側から下流側に流れやすい状態としたうえで、送液手段P1〜P5をも送液に利用する形態、すなわち、重力の作用と送液手段の作用とを併用して、液体を流通させる形態について例示した。しかしながら、すべての液槽に送液手段を設けることによって、重力を利用しなくても、液体を送液できるように液体流路装置を構成することもできる。
また、液体流路装置10Aでは、9の液槽が形成された形態としたが、液槽の種類、数、配置の順序などは目的に応じて適宜設定できる。
さらに、この例の液体流路装置10Aでは、送液手段P1〜P4が設けられた液槽に配置される逆流防止手段G1〜G6として、堰板18が用いられているが、逆流防止手段の形態には制限はなく、堰板18以外のものであってもよい。また、堰板18を設ける場合においても、2枚以上の堰板18を直列に配置するなどして、逆流防止効果がより得られるようにしてもよいし、堰板18と他の逆流防止手段を併用してもよい。
さらに、逆流防止手段G1〜G6を設ける代わりに、その箇所において、液体流路12を開通状態から閉止状態にする閉止手段を設け、送液手段P1〜P4を作動させる前に閉止手段を作動させることにより、液体が上流側へ逆流することを防ぐようにすることも可能である。
このように閉止手段を逆流防止目的に使用する形態は、例えば、計量槽として、計量槽に連通したオーバーフロー流路とその下流に設けられた廃液槽とからなるオーバーフロー手段が備えられたものを採用した場合などに特に有効である。このような計量槽は、計量槽で一定量を超えた試料がオーバーフローしてオーバーフロー流路を流れ、廃液槽に流入し、その結果、計量槽で一定量の試料を計量することができるようになっている。そのため、計量の際には、計量槽からオーバーフロー流路へスムーズに試料が流れる必要がある。一方、計量槽に備えられた送液手段を作動させ、計量後の試料を下流側に送る場合には、試料が計量槽からオーバーフロー流路に流れ込むことを防止する必要がある。このように、両方向に試料が流れる必要がある箇所には、逆流防止手段を設けることはできない。よって、このような箇所には、閉止手段を設け、必要な場合にのみ、その箇所を閉止状態にできるように構成することが好ましい。
以上説明した液体流路装置10A、10Bにおいて、液体流路12および液槽が形成される基板11Aには、例えば、スチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニル樹脂、PEN樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ABS樹脂、ポリプロピレン樹脂、繊維強化プラスチックなどの樹脂板や、ガラス板が使用できる。これらのなかでも、透明であって、液体流路12を流通する液体の様子を基板11A側から目視することができる点では、ガラス板や、スチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニル樹脂、PEN樹脂、ポリエステル樹脂が好ましい。また、ガラス板よりも破損しにくく取扱性に優れる点では、樹脂板の方が好ましい。
基板11Aの厚さには特に制限はなく、形成される液体流路12の深さなどに応じて決定されればよいが、通常0.5〜7mmである。
液体流路12や液槽は、基板11Aの片面上に、例えばフォトリソグラフィ、射出成形、ブロー成形、接合形成、溶解形成、切削形成、機械加工などの技術により溝状に形成される。
液体流路12の断面形状(流れに対して垂直方向の断面)には特に制限はなく、例えば、半円形状、四角形状、逆三角形状などが挙げられる。液体流路12の幅や深さにも特に制限はなく、求められる液体の流量などに応じて決定されればよいが、幅および深さがそれぞれ10〜5000μmの範囲であれば、小さな流路抵抗で液体を流すことができ、かつ、流通させる液体の量も少量ですむ点で好ましい。
また、液体流路12には、液体を流れやすくするために、液体の種類に応じた表面処理を施すことが好ましい。このような表面処理としては、塗料の塗布処理、プラズマ処理、フレーム処置、薬品処理、生理活性処理、抗体処理などが挙げられる。さらに、液体流路12には、必要に応じて、邪魔板、攪拌板、突起を設けたり、分水形状を形成したりして、流通する液体が均一な混合状態となるようにしてもよい。
各液槽も、形状などには特に制限はなく、各液槽に要求される容積などに応じて適宜形成されればよい。
各堰板は、可撓性を有する樹脂シートなどで形成され、所定の部位に配されてもよいし、液体流路12や液槽を形成する際に基板11Aから一体に形成されたものであってもよい。
蓋板13の表面を構成する第1基材層13aは、その表面側から垂直方向の荷重を加えられた場合には撓み、その後、戻ろうとする復元力を有するものである。このような特性、すなわち、可撓性と復元力とを有する基材であれば、第1基材層13aとして使用でき、その材質や厚みには特に制限はないが、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、ポリイミドなどからなる厚さ50〜500μmのフィルムであれば、第1基材層13aとして使用するのに適切な可撓性と復元力を有するため好ましい。
一方、第2基材層13cは、垂直方向の荷重により容易に撓むものであればよく、復元しないものがさらに好ましい。このような特性を有する基材であれば、第2基材層13cとして使用でき、その材質や厚みには特に制限はないが、アルミニウム箔、銅箔などの金属箔、紙、PET、PEN、PC、ポリイミドなどの樹脂からなる厚さ5〜50μmのフィルムであれば、第2基材層13cとして使用するのに好ましい。紙を使用する場合には、防水処理された紙が好ましく、金属箔を使用する場合には、防錆処理された金属箔が好ましい。
強粘着層13bおよび弱粘着層13dには、従来公知の粘着剤の中から第1基材層13aや第2基材層13cの材質などに応じて適宜選択することができるが、その際、強粘着層13bを形成する粘着剤の粘着力(粘着強度)は、弱粘着層13dを形成する粘着剤の粘着力よりも強いことが必要である。強粘着層13bを形成する粘着剤の粘着力が弱粘着層13dを形成する粘着剤の粘着力以下であると、開通手段S1〜S14において押圧操作をした場合でも、第1凸部15の頂部15aと弱粘着層13dとを離間させることができず、液体流路12を開通できなくなる。強粘着層13bを形成する粘着剤の粘着力は、弱粘着層13dを形成する粘着剤の粘着力よりも0.1N/cm以上大きいことが好ましい。さらには、0.1〜30N/cmの範囲で大きいことが好ましい。強粘着層13bを形成する粘着剤の粘着力が弱粘着層13dを形成する粘着剤の粘着力よりも0.1N/cm以上大きいと、開通手段S1〜S14を確実に作動させることができる。一方、粘着力の差が30N/cmを超えるようにこれらの粘着層を構成することは困難である。
また、そのうえで、強粘着層13bの粘着力を1〜30N/cmの範囲とし、弱粘着層13dの粘着力を0.05〜5N/cmの範囲とすることが好ましい。
強粘着層13bおよび弱粘着層13dに使用する粘着剤としては、例えば、アクリル系、ゴム系、ポリウレタン系、ポリエステル系、シリコン系などが挙げられる。これらのうち、例えば、強粘着層13bにはアクリル系、ゴム系などを使用し、さらに芯材として、不織布、ポリエステル繊維などを含ませてもよい。弱粘着層13dには、アクリル系、シリコン系のものを使用することが好ましい。強粘着層13bと弱粘着層13dとの粘着力の差を上述の好適な範囲とするためには、各粘着剤を構成する樹脂のガラス転移温度を適宜調整したり、粘着剤に粘着付与剤、硬化剤、芯材などの添加剤を加えたり、その添加量を調整したりする方法が挙げられる。
また、強粘着層および弱粘着層の厚さには制限はないが、通常、10〜1000μmである。
なお、ここで「粘着力」とは、JIS Z 0237のステンレス板に対する180度引きはがし粘着力のことである。
スペーサ部材17としては、PET、PEN、PC、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂などの樹脂の他、紙なども使用できる。スペーサ部材17の厚みには特に制限はないが、50〜2000μmの範囲にすると、開通手段S1〜S14の作動前には、強粘着層13bと第2基材層13cとを確実に離間させておくことができ、一方、作動時には、強粘着層13bと第2基材層13cとを確実に粘着させることができる。
[第2実施形態例]
以上説明した第1実施形態例の液体流路装置10Aでは、送液手段P1〜P5として、液槽に対応する部分の蓋板13を外側から押圧する操作により、この部分の蓋板13を撓ませ、その液槽の内容積を小さくすることによって、液体を送液する形態について例示した。第2実施形態例では、蓋板13を外側から押圧する操作の代わりに、液槽の底部を外側から押圧する操作により、液槽の内容積を小さくして、液槽内の液体を送液する形態の送液手段について説明する。
図8は、第1実施形態例と同様に9の液槽を備えた第2実施形態例の液体流路装置10Bについて、送液手段P1’を有する計量槽14cを含む要部について示したものである。
この例では、基板11Bは、外層11eと、その内側に積層した中間層11fと、その内側に積層した内層11gの3層から構成されている。
内層11gには、液槽(この例では計量槽14cのみ図示)の上部と、液体流路12と、第1凸部15と、第2凸部16とが形成されている。
中間層11fには、液槽の下部が形成されている。また、この中間層11fは、液体流路12の底部を構成している。
外層11eは、基板11Bの最も外側に配置され、液槽の底部を構成している。この例では、液槽の底部を矢印C’で示すように外側から押圧する操作により、液槽の底部を構成する外層11eが内側に撓んで、計量槽14cの内容積が小さくなることにより、送液手段P1’が作動するようになっている。
さらにこの例では、図9にも示すように、内層11gに逆流防止手段としての堰板18が形成されている。この例の堰板18は、計量槽14cと計量槽14cの上流側の液体流路12との境界部分において、堰板18の先端18aが下流側に傾くように、基端18bが液体流路12の一方の側壁に固定されていて、先端18aや両側端は固定されていない。
そのため、上流の図示略のろ過槽から計量槽14cへ液体が送液される場合には、液体は堰板18の先端18aを超えて計量槽14cへと流入することができる。一方、計量槽14cの有する送液手段P1’が作動した場合には、堰板18の作用により計量槽14c内の液体は下流側にしか送液されず、上流側へは逆流しない。
この例の基板11Bは、図10に示すようにして製造することができる。
まず、内層11gをなすシート11g’を用意し、このシート11g’において、液体流路12に対応する箇所を線状に打ち抜くとともに、液槽の上部に相当する部分を孔状に打ち抜く。また、この際、第1凸部15と第2凸部16となる部分は打ち抜かず、残しておき、その後、第2凸部16の高さが第1凸部15よりも低くなるように、研磨などにより第2凸部の高さを調節しておく。また、この例では、堰板18も内層11gから形成されているため、このシート11g’において堰板18となる部分も打ち抜かずに残しておく。
一方、中間層11fをなすシート11f’を用意し、このシート11f’において、計量槽14cなどの各液槽の下部に対応する箇所を孔状に打ち抜く。
ついで、外層11eをなすシート11e’を用意し、これに中間層11fをなすシート11f’と、内層11gをなすシート11g’を積層し、接着することにより、基板11Bを製造することができる。
各シート11e’、11f’、11g’の材質としては、第1実施形態例で例示した基板11Aの材質の中などから選択することができる。特にシート11e’は、液槽の底部を構成し、送液手段の作動時には外側から押圧されるものであるため、可撓性を有するものを使用する必要がある。
また、シート11g’の厚さは、形成される液体流路12の深さに相当し、シート11g’とシート11f’の厚さの和は液槽の総深さに相当する。よって、液槽や液体流路12に求められる深さを考慮して、これらシート11f’およびシート11g’の厚みを決定する。液槽の深さは、要求される容積などに応じて適宜設定すればよい。また、液体流路12の好適な深さは、第1実施形態例と同様の範囲である。一方、シート11e’は上述のように送液手段の作動時には撓む必要があるため、材質にもよるが、具体的には、20〜300μmとすることが好適である。
なお、基板11Bは、シート11e’とシート11g’とが積層してなり、外層11eと内層11gとの2層から構成されるものであってもよい。この場合、液体流路12と液槽の深さは同じとなる。
また、この形態の液体流路装置10Bにおいて、より送液手段P1’を効果的に作用させるために、図11に示すように、計量槽14cに対応する部分の基板11Bの外層11e、すなわち、計量槽14cの底部を外方に膨出させておいてもよい。このように膨出させておくことによって、送液手段P1’を作動させる際にこの部分を内側に押圧すると、計量槽14cの内容積をより小さくすることができ、その結果、計量槽14c中の液体をより効果的に送液することが可能となる。
このような基板11Bに、第1実施形態例と同様の構成の蓋板13を設けることにより、第2実施形態例の液体流路装置10Bを得ることができる。すなわち、この例でも、図8にも示すように、計量槽14cに対応する部分の蓋板13においては、強粘着層13bと第2基材層13cとの間は離間しているのではなく、スペーサ部材17が介在してスペーサ部材17と強粘着層13bとが粘着し、層間が密に構成されている。そのため、計量槽14cの底部を外側から押圧して撓ませ、送液手段P1’を作動させた際には、計量槽14cの内容積が小さくなり、送液手段としての作用が発現する。ここで仮に、強粘着層13bと第2基材層13cとの間が離間し、スペーサ部材17が介在しておらず、層間が密でないと、計量槽14cの底部を外側から押圧した際に、第2基材層13cと弱粘着層13dとが計量槽14cの内圧により外方に撓んでしまい、計量槽14cの内容積が小さくならず、送液手段としての作用が発現しない可能性がある。
このような液体流路装置10Bにおいては、特に基板11Bが、外層11eと中間層11fと内層11gの3層、または、外層11eと内層11gの2層から構成され、液槽、液体流路12、堰板18、第1凸部15および第2凸部16は、中間層11fを構成するシート11f’や内層11gを構成するシート11g’を打ち抜くことで形成されている。そのため、一枚の平板からなる基板に対して、液槽や液体流路を例えばフォトリソグラフィなどで形成する方法、射出成形などで液槽や液体流路の形成された基板を成形する方法などにくらべて、低い製造コストで簡便に、液槽などを形成でき、大量生産も可能となる。
なお、以上の説明した第1実施形態例および第2実施形態例においては、基板11A、11Bの片面のみに液体流路12が形成された液体流路装置10A、10Bを例示したが、基板11A、11Bの両面に液体流路12が形成されてもよい。
また、各液槽に設けられる、開閉可能な連通孔の形態には制限はなく、蓋板に形成された連通孔に、嵌め込み式のキャップを抜き差しすることで、連通孔を開通、閉止できる形態などでもよいが、液体流路12に設けられる開通手段S1〜S7および閉止手段T1と同様の構成の開通手段と閉止手段とを設けてもよい。
また、第1実施形態例のように、基板11Aを一枚の平板から構成した場合でも、液槽の底部を押圧することで作動する送液手段を液槽に設けてもよいし、第2実施形態例のように、基板11Bを複数層から構成した場合でも、液槽に対応する蓋板13を押圧することで作動する送液手段を液槽に設けてもよい。さらに、以上の説明では、閉止手段および開通手段を備えた液体流路装置を例に挙げたため、蓋板13として、第1基材層13a、強粘着層13b、第2基材層13c、弱粘着層13d、スペーサ部材17から構成されるものを例示したが、送液手段の作動のためには、蓋板13をこのように複数の層から構成する必要はなく、単層からなる蓋板であってもよい。
また、以上の例においては、液体を流通させるために、重力の作用と送液手段の作用とを利用した形態について示したが、さらに、液体流路12、液槽の一部、またはこれらの両方を加熱して液体流路12や液槽内の空気を膨張させたり、液体流路12の一部に酸素吸収剤(酸化しやすい鉄粉など)を封入しておき、液体流路12内の酸素を吸収することで液体流路12内を減圧にしたりして、液体を移動させ、流通させる方法などを併用してもよい。
また、以上の説明では、試料投入槽14aに試料を注入する方法として、シリンジの針を蓋板13に突き刺す方法を例示しているが、例えば、あらかじめ蓋板13に試料注入孔を形成しておき、そこから試料を注入してもよい。その場合、試料注入孔には保護テープを被せておき、シリンジを保護テープに突き刺すことで注入してもよいし、保護テープを剥がして試料注入孔にシリンジを挿入して注入してもよい。
液体流路装置10A、10Bを流通させる試料および試薬としては、特に制限はなく、医療分野、環境分野などで従来より採用されている試料と試薬とを適宜組み合わせて使用することができる。例えば、医療分野おいては、試料として、血液(全血)、血漿、血清、バフィーコート、尿、糞便、唾液、喀痰などの生体由来のもの、ウィルス、細菌、カビ、酵母、動植物の細胞などが挙げられる。また、これらから単離したDNAまたはRNAを用いてもよいし、これらに対して何らかの前処理、希釈などが施されたものを試料としてもよい。試薬としては、試料中に存在する抗原を分析する場合には、それに対する抗体を含有する試薬が好ましい。
また、液体流路装置10A、10Bで調製された測定液の検出分析手段としては、従来公知の光学的手段、電気的手段などを適宜採用することができる。
第1実施形態例の液体流路装置を示す概略平面透視図である。 図1の液体流路装置の一部を拡大した平面透視図である。 図2のI−I’線に沿う断面図である。 図1の液体流路装置において、開通手段が作動する様子を説明する説明図である。 図1の液体流路装置において、閉止手段が作動する様子を説明する説明図である。 図1の液体流路装置において、送液手段が作動する様子を説明する説明図である。 図1の液体流路装置の基板の一部を拡大した斜視図である。 第2実施形態例の液体流路装置において、送液手段が作動する様子を説明する説明図である。 図8の液体流路装置の基板の一部を拡大した斜視図である。 図8の液体流路装置の基板の製造工程を示す概略図である。 第2実施形態例の液体流路装置の基板について、他の形態を示す断面図である。
符号の説明
10A、10B 液体流路装置
11A、11B 基板
11e 外層
11f 中間層
11g 内層
12 液体流路
12a 流路形成面
13 蓋板
13a 第1基材層
13b 強粘着層
13c 第2基材層
13d 弱粘着層
14c 計量槽
15 第1凸部
15a 第1凸部の頂部
16 第2凸部
16a 第2凸部の頂部
17 スペーサ部材
18 堰板
S1〜S14 開通手段
T1〜T2 閉止手段
P1〜P5、P1’ 送液手段
G1〜G6 逆流防止手段

Claims (6)

  1. 基板の少なくとも片面に、試料および試薬の少なくとも一方からなる液体が流通する液体流路と、前記液体が溜まる1つ以上の液槽とが形成され、前記基板の前記液体流路と前記液槽とが形成された流路形成面には蓋板が積層した液体流路装置であって、
    前記液槽の少なくとも1つは、該液槽内の液体を液槽外に送液する送液手段を有し、
    該送液手段は、前記液槽に対応する部分の蓋板または前記液槽の底部を外側から押圧する操作により作動し、
    当該液体流路装置は、前記液体流路の一部を閉止状態から開通状態にする開通手段と、開通状態から閉止状態にする閉止手段とをさらに有し、
    前記蓋板は、該蓋板の表面を構成する第1基材層と、該第1基材層の内側に形成された強粘着層と、該強粘着層の内側に形成された第2基材層と、該第2基材層の内側に形成され、前記流路形成面に粘着する弱粘着層とを有し、
    前記開通手段では、前記液体流路に第1凸部が形成され、該第1凸部の頂部と前記弱粘着層とが粘着し、かつ、前記強粘着層と前記第2基材層とが離間し、
    前記閉止手段では、前記液体流路に第2凸部が形成され、該第2凸部の頂部と前記弱粘着層とが離間し、かつ、前記強粘着層と前記第2基材層との間にはスペーサ部材が介在し、該スペーサ部材と前記強粘着層とが粘着し、
    前記送液手段では、前記強粘着層と前記第2基材層との間にはスペーサ部材が介在し、該スペーサ部材と前記強粘着層とが粘着していることを特徴とする液体流路装置。
  2. 前記基板は、外層と、該外層の内側に積層した中間層と、該中間層の内側に積層した内層とからなり、
    前記内層には、前記液槽の上部と、前記液体流路と、前記第1凸部と、前記第2凸部とが形成され、
    前記中間層には、前記液槽の下部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の液体流路装置。
  3. 前記基板は、外層と、該外層の内側に積層した内層とからなり、
    前記内層には、前記液槽と、前記液体流路と、前記第1凸部と、前記第2凸部とが形成されていることを特徴とする請求項1に記載の液体流路装置。
  4. 前記送液手段が設けられた前記液槽には、該送液手段で送液される液体の逆流を防止する逆流防止手段が設けられていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の液体流路装置。
  5. 前記送液手段が設けられた前記液槽には、該送液手段で送液される液体の逆流を防止する逆流防止手段が設けられ、
    該逆流防止手段は、前記内層に形成されていることを特徴とする請求項2または3に記載の液体流路装置。
  6. 前記送液手段は、前記液槽の底部を外側から押圧する操作により作動し、
    前記底部は、外方に膨出して形成されていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の液体流路装置。
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