JP5279198B2 - プローブセット、プローブ担体及び検査方法 - Google Patents
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Description
[菌名]
トリコスポロン・アサヒ(Trichosporon asahii)
本発明の第1の目的は、対象となる菌のDNAを正確に同定することのできるプローブセットを提供することである。
下記の(1)から選択される少なくとも1つのプローブと、下記の(2)から選択される少なくとも1つのプローブとを含み、該少なくとも2つのプローブのそれぞれとの反応を示すシグナルを検出するために用いられることを特徴とするプローブセットである。
(1)gttctactacttgacgcaagtcgagt(配列番号1)で表される塩基配列からなるプローブ及びその相補配列からなるプローブ、
(2)ttgggcgtctgcgatttctgatc(配列番号2)で表される塩基配列からなるプローブ及びその相補配列からなるプローブ。
(i)本発明にかかるプローブ担体とサンプルとを反応させる工程と、
(ii)前記サンプル中の核酸と反応した前記プローブ担体上のプローブの反応強度を検出する工程と、
を有することを特徴とするトリコスポロン・アサヒ(Trichosporon asahii)のDNAの検出方法である。
[菌名]
トリコスポロン・アサヒ(Trichosporon asahii)
上記の感染症起炎菌のITS(Internal transcribed spacer)領域のDNA配列そのもの、あるいはサンプルに含まれるITS領域に特有な塩基配列を有する核酸と反応しうるものとしては、以下の各塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを挙げることができる。
(A)gttctactacttgacgcaagtcgagt(配列番号1)で表される塩基配列を有するプローブ、
(B)ttgggcgtctgcgatttctgatc(配列番号2)で表される塩基配列を有するプローブ、
(C)配列番号1の塩基配列の相補配列を有するプローブ、
(D)配列番号2の塩基配列の相補配列を有するプローブ、
(E)配列番号1の塩基配列に、前記プローブとしての機能を保持できる範囲内で、塩基の欠失、置換もしくは付加がなされた変異配列を有するプローブ、
(F)配列番号2の塩基配列に、前記プローブとしての機能を保持できる範囲内で、塩基の欠失、置換もしくは付加がなされた変異配列を有するプローブ、
(G)配列番号1の塩基配列の相補配列に、前記プローブとしての機能を保持できる範囲内で、塩基の欠失、置換もしくは付加がなされた変異配列を有するプローブ、
(H)配列番号2の塩基配列の相補配列に、前記プローブとしての機能を保持できる範囲内で、塩基の欠失、置換もしくは付加がなされた変異配列を有するプローブ。
「検体」とは、検査の対象として取得したものを示す。「試料」とは、検体を調整するなどして、DNAや核酸断片を含む状態にしたものを示す。「サンプル」とは、プローブと反応させる対象を示す。検体を直接プローブと反応させる場合には、「サンプル」には検体が含まれ、検体を調整した試料をプローブと反応させる場合には、「サンプル」には試料が含まれる。
(a)ITS領域検出用に設計されたPCR反応用プライマーを用いて調製された増幅試料。
(b)PCR増幅物を元にさらにPCR反応等を行って調製された試料。
(c)PCR以外の増幅方法により調製された試料。
(d)可視化のために各種標識法により標識された試料。
(i)本発明にかかるプローブ担体とサンプルを反応させる工程。
(ii)プローブ担体上のプローブとサンプル中の核酸との反応強度を検出する工程。
(a)本発明にかかるプローブを固定したプローブ担体とサンプルとを反応させる工程。
(b)プローブ担体上のプローブとサンプル中の核酸との反応強度を検出する工程。
(c)プローブとサンプル中の核酸の反応が検出される場合に、サンプル中の核酸と反応したプローブを特定し、プローブの塩基配列に基づいてサンプル中に含まれる感染症起炎菌DNAを特定する工程。
(1)5' tccgtaggtgaacctgcgg 3' (ITS1;配列番号3)
(2)5' tcctccgcttattgatatgc 3' (ITS4;配列番号4)
よって、本発明の検出方法では、上記(1)及び(2)の夫々の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドをプライマーとして含むプライマーセットを用いて、前記検体中の標的核酸をPCR増幅する工程を更に有していてもよい。
以下の実施例では、本発明のプローブを固定したDNAチップの作製について説明する。
真菌検出用プローブとして表1に示す核酸配列を設計した。具体的には、表1中に示す真菌のDNA配列上のITS領域部分より、以下に示したプローブ塩基配列を選んだ。これらのプローブ塩基配列群は、当該菌に対し非常に特異性が高く、十分かつそれぞれのプローブ塩基配列でばらつきのないハイブリダイゼーション感度が期待できるように設計されている。なお、表1に示す各プローブ塩基配列はこれに完全に一致したものに限定される必要はなく、該各プローブ塩基配列を含む20から30程度の塩基長を有するプローブ塩基配列も表1に示す各プローブ塩基配列に含まれるものとする。この場合、表1で規定される塩基配列以外の部分については検出精度に影響のない塩基配列を有していることが必要である。
[2-1.検体増幅用PCRプライマーの準備]
起炎菌検出用の為のDNA上のITS領域増幅用PCRプライマーとして既知のプライマーを利用する。既知のプライマーについて、表2に示す。具体的には、DNA配列上のITS領域部分を特異的に増幅するプライマーセットで、菌種が異なっても同時に増幅することができるように、真菌に共通する領域から設計されている公知のプライマーセットである。
上述の検体増幅用のプライマーのReverse Primerに標識を導入し、標識用のプライマーとした。標識用プライマーについて、表3に示す。
[3-1.ガラス基板の洗浄]
合成石英のガラス基板(サイズ:25mm×75mm×1mm、飯山特殊ガラス社製)を耐熱、耐アルカリ のラックに入れ、所定の濃度に調製した超音波洗浄用の洗浄液に浸した。一晩洗浄液中で浸した後、20分間超音波洗浄を行った。続いて基板を取り出し、軽く純水ですすいだ後、超純水中で20分超音波洗浄をおこなった。次に80℃に加熱した1N水酸化ナトリウム水溶液中に10分間基板を浸した。再び純水洗浄と超純水洗浄を行い、DNAチップ用の石英ガラス基板を用意した。
シランカップリング剤KBM-603(信越シリコーン社製)を、1重量(wt)%の濃度となるように純水中に溶解させ、2時間室温で攪拌した。続いて、先に洗浄したガラス基板をシランカップリング剤水溶液に浸し、20分間室温で放置した。ガラス基板を引き上げ、軽く純水で表面を洗浄した後、窒素ガスを基板の両面に吹き付けて乾燥させた。次に乾燥した基板を120℃に加熱したオーブン中で1時間ベークし、カップリング剤処理を完結させ、基板表面にアミノ基を導入した。次いで、N-マレイミドカプロイロキシスクシイミド(以下EMCSと略す)を、ジメチルスルホキシドとエタノールの1:1混合(容量比)溶媒中に最終濃度が0.3mg/mlとなるように溶解したEMCS溶液を用意した。EMCSは、同仁化学研究所社製のN-マレイミドカプロイロキシスクシイミド(N-(6-Maleimidocaproyloxy)succinimido)である。
実施例1の[1.プローブDNAの準備]で作製した微生物検出用プローブを純水に溶解し、それぞれ、最終濃度(インク溶解時)10μMとなるように分注した後、凍結乾燥を行い、水分を除いた。
グリセリン7.5wt%、チオジグリコール7.5wt%、尿素7.5wt%、アセチレノールEH(川研ファインケミカル社製)1.0wt%を含む水溶液を用意した。続いて、先に用意した2種類のプローブ(表1)の夫々を上記の混合溶媒に規定濃度なるように溶解した。得られたDNA溶液をインクジェットプリンタ(商品名:BJF-850 キヤノン社製)用インクタンクに充填し、印字ヘッドに装着した。
30分間の反応後、100mMのNaClを含む10mMのリン酸緩衝液(pH7.0)により表面に残ったDNA溶液を洗い流し、ガラス基板表面に一本鎖DNAが固定したDNAチップを得た。
以下の実施例では、2 Step PCR法を用いた微生物の検出について説明する。
[1-1. 微生物の培養とDNA抽出]
まず、Trichosporon asahii株(JCM 1809)を、定法に従って培養した。この微生物培養液から、核酸精製キット(FastPrep FP100A・FastDNA Kit:フナコシ株式会社製)を用いて、DNAの抽出と精製を行った。
回収された微生物(Trichosporon asahii)のDNAは、定法に従って、アガロース電気泳動と260/280nmの吸光度測定を行い、その品質(低分子核酸の混入量、分解の程度)と回収量を検定した。本実施例では、約10μgのDNAが回収され、DNAのデグラデーションやribosomal RNAの混入は認められなかった。回収したDNAは、最終濃度が50ng/μlとなるようにTE緩衝液に溶解し、以下の実施例に使用した。
[2-1.検体の増幅:1st PCR]
検体となる微生物DNAの増幅(1st PCR)反応を以下の表4に示す。増幅反応に際しては、前記(実施例1)の[2-1.検体増幅用PCRプライマーの準備]に示したプライマーセットを用いる。
表5の組成の反応液を以下の図2に示すプロトコールに従って、市販のサーマルサイクラーで増幅反応を行った。標識化反応に際しては、前記(実施例1)の[2-2.標識用PCRプライマーの準備]に示した標識化プライマーを用いる。
上述の(実施例1)における[3.DNAチップの作製]で作製したDNAチップと(実施例2)の[2.検体の増幅と標識化]で作製した標識化検体を用いて検出反応を行った。
BSA(牛血清アルブミンFraction V:Sigma社製)を1wt%となるように100mM NaCl/10mM Phosphate Bufferに溶解した。次に、この溶液に(実施例1)[3.DNAチップの作製]で作製したDNAチップを室温で2時間浸し、ブロッキングを行った。ブロッキング終了後、以下の洗浄液で洗浄を行った後、純水でリンスしてからスピンドライ装置で水切りを行った。
洗浄液:
0.1wt%SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)を含む2×SSC溶液(NaCl 300mM 、Sodium Citrate (trisodium citrate dihydrate, C6H5Na3・2H2O) 30mM、pH7.0)
[3-2.ハイブリダイゼーション]
水切りしたDNAチップをハイブリダイゼーション装置(Genomic Solutions Inc. Hybridization Station)にセットし、以下の表6に示すハイブリダイゼーション溶液を用いて、図3に示すプロトコールに従いハイブリダイゼーション反応を行った。
上記ハイブリダイゼーション反応終了後のDNAチップをDNAチップ用蛍光検出装置(Axon社製、GenePix 4000B)を用いて蛍光測定を行った。その結果、再現性良く、十分なシグナルでTrichosporon asahiiを検出することができた。
以下の表7にTrichosporon asahiiの測定結果を示す。
以上に説明したように、上記実施例によれば、Trichosporon asahiiを検出可能なプローブセットを固定したDNAチップを作製することができた。更に、このDNAチップを用いて、感染症起炎菌を同定することが可能になり、微生物由来のDNAプローブの問題を解決した。すなわち、オリゴヌクレオチドプローブは化学的に大量合成が可能であり、精製や濃度のコントロールが可能である。また、微生物の種による分類を目的に、同じ種は一括検出が可能なプローブセットが提供できた。
以下の実施例では、(実施例1)にて作製したDNAチップを用いた時に、Trichosporon asahii以外の菌では強いハイブリダイゼーションが検出されないことを説明する。
[1-1.微生物の培養とDNA抽出]
(実施例2)と同様に、以下に示す真菌株の培養を行ない、DNAの抽出と精製を行った。菌名の後の()内には、株名を示す。
Candida albicans(JCM1542)
Candida dubliniensis(ATCC MYA-646)
Candida glabrata(JCM 3761)
Candida guilliermondii(ATCC 6260)
Candida intermedia(ATCC 14439)
Candida kefyr(ATCC 42265)
Candida krusei(JCM 1609)
Candida lusitaniae(ATCC 34449)
Candida parapsilosis(JCM 1618)
Candida tropicalis(JCM 1541)
Trichosporon cutaneum(JCM 1462)
Cryptococcus neoformans(ATCC 32045)
Aspergillus fumigatus(JCM 10253)
Aspergillus niger(JCM 10254)
Epidermophyton floccosum(ATCC 52063)
Arthroderma otae(ATCC 28327)
Arthroderma gypseum(ATCC 24163)
Arthroderma benhamiae(ATCC 16781)
Trichophyton rubrum(ATCC 10218)
Trichophyton tonsurans(ATCC 10217)
Trichophyton verrucosum(ATCC 28203)
Trichophyton violaceum(ATCC 28944)
Arthroderma vanbreuseghemii(ATCC 28145)
Arthroderma incurvatum(ATCC 24005)
Trichophyton interdigitale( IFM 55365 )
[1-2. 回収したDNAの検査]
回収されたそれぞれの真菌のDNAは、実施例2に記載のように、回収量を検定した。回収したDNAは、最終濃度50ng/μlとなるようにTE緩衝液に溶解し、以下の実施例に使用した。
[2-1. 検体の増幅: 1st PCR]
検体となる微生物DNAの増幅反応を、前述の(実施例2)における[2-1. 検体の増幅: 1st PCR]と同様の要領で行う。
前記[2-1. 検体の増幅: 1st PCR]にて得た増幅産物を用いて、前述の(実施例2)における[2-2. 標識化反応: 2nd PCR]と同様の要領で、標識化反応を行う。
上述の(実施例1)における[3.DNAチップの作製]で作製したDNAチップと、前記[2.検体の増幅と標識化]で作製した標識化検体を用いて、上述(実施例2)[3. ハイブリダイゼーション]と同様の要領にて、検出反応を行った。
上述の(実施例2)における[4. 微生物の検出(蛍光測定)]と同様の要領にて、蛍光測定を行った。
以下の表8から表32に、それぞれの真菌種ごとの測定結果を示す。
Claims (4)
- 感染症起炎菌であるトリコスポロン・アサヒ(Trichosporon asahii)のDNAを特異的に検出するためのプローブセットであって、
下記の(1)から選択される少なくとも1つのプローブと、下記の(2)から選択される少なくとも1つのプローブとを含み、該少なくとも2つのプローブのそれぞれとの反応を示すシグナルを検出するために用いられることを特徴とするプローブセット。
(1)gttctactacttgacgcaagtcgagt(配列番号1)で表される塩基配列からなるプローブ及びその相補配列からなるプローブ、
(2)ttgggcgtctgcgatttctgatc(配列番号2)で表される塩基配列からなるプローブ及びその相補配列からなるプローブ。 - 請求項1に記載のプローブセットを構成する複数のプローブの各々が担体上に固定され、各プローブが互いに隔離して配置されていることを特徴とするプローブ担体。
- プローブ担体を用いたサンプル中でのトリコスポロン・アサヒ(Trichosporon asahii)のDNAの検出方法において、
(i)請求項2に記載のプローブ担体とサンプルとを反応させる工程と、
(ii)前記サンプル中の核酸と反応した前記プローブ担体上のプローブの反応強度を検出する工程と、
を有することを特徴とするトリコスポロン・アサヒ(Trichosporon asahii)のDNAの検出方法。 - 請求項1に記載のプローブセットを構成する複数のプローブまたは請求項2に記載のプローブ担体と、プローブと標的核酸との反応を検出するための試薬と、を含むことを特徴とするトリコスポロン・アサヒ(Trichosporon asahii)のDNA検出用のキット。
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