本発明は、電動モータの作動に応じて駆動輪が駆動される電動車両の駆動装置に関するものである。
近年、自動車の分野では、自動車用モータや各種制御機器の性能の向上に伴い、燃費効率、排気ガスのクリーンさに優れている点に注目して、電動車両の研究、開発が盛んに行われている。ここで、電動車両とは、電動モータによって駆動輪が駆動される車両のことであり、エンジンの代わりに電動モータを駆動源として走行する純電気自動車を含む車両のことである。
電動自動車には、ハイブリッド電気自動車、純電気自動車、燃料電池電気自動車などの各方式がある。さらに、ハイブリッド電気自動車には、パラレルハイブリッド電気自動車とシリーズハイブリッド電気自動車の各方式がある。自動車の中でもとりわけ乗用車や商用車の分野では、すでにパラレルハイブリッドの形式で多数の車種が商品化されている。
図1はシリーズハイブリッド電気自動車の構成例を概略的に示している。
図1に示すように、シリーズハイブリッド電気自動車100は、エンジン110から発電機20までの動力伝達機構30と直列に、発電機20と、発電インバータ40と、駆動インバータ50と、発電インバータ40と駆動インバータ50とを電気的に接続する電源線60と、電動モータ70とを含み、エンジン110の動力を電気エネルギーに変換して電動モータ70を作動させる電源系統80が設けられている。
下記非特許文献1には、一般自動車の分野において、インバータが故障した場合に発電機とインバータの交流電源系統を電気的に直結させるという発明が記載されている。
特許第3463791号公報
自動車の中には、主として被災現場などのオフロード(路外地形)を走行する防災用途のオフロード車がある。かかる防災用オフロード車を、電動車両、とりわけシリーズハイブリッド電気自動車で構成した場合に、問題となる点は、以下のとおりである。
1) きわめて高い信頼性が要求され、走行不能になる事態を回避できること
防災用オフロード車は、環境的に厳しい状況で走行する機会が多く、また重大な使命のために走行する機会が多いことから、故障によって車両が走行不能となる事態は回避される必要がある。
2) 電源系統のコスト低下を図ること
防災用オフロード車は、用途毎に仕様が異なる少量多品種生産の車両であり、量産効果は期待できない。電源系統80を構成する発電機20、電動モータ70等の各部品についても同様であり、少量多品種の専用の部品を設計、製造しなければならないことから、車両のコストは極めて高いものとなる。よって、電源系統80を構成する各部品を低コスト化、共通化する等して、車両の製造コストを低減することが望まれる。
しかしながら、従来のシリーズハイブリッド電気自動車100は、図1に示すように、電源系統80が1つしか存在しないため、電源線60が短絡するなどの故障が起きると、電動モータ70に電力が供給されなくなり、エンジン110が正常であっても車両は走行不能に陥ってしまうという問題が起きるおそれがある。
特に、発電インバータ40、駆動インバータ50は、半導体電力変換装置であり、電磁機械である発電機20、電動モータ70と比較して部品点数が格段に多い。このため、発電インバータ40、駆動インバータ50の作動信頼性は、発電機20、電動モータ70と比較して低くなってしまい、故障率が増大する。よって、発電インバータ40、駆動インバータ50の故障により、電動モータ70に電力が供給されなくなり、エンジン110自体が正常であっても、車両が走行不能に陥る確率が極めて大きくなる。
よって、シリーズハイブリッド電気自動車100を、従来の非電気自動車(全機械式自動車)あるいはパラレルハイブリッド電気自動車と同等の駆動信頼性、走行信頼性まで高めるには、1つしかない電源系統80の個々の部品について、十分にコストをかけて、信頼性高く設計し、生産しなければならない。たとえば、インバータや電動モータ等の電気機器の容量に余裕を持たせる設計を行ったり、電動モータ等の電気機器を冷却するシステムを高性能化する対策がとられる。しかし、このように電源系統80の個々の部品についてコストをかけると、上述したように各部品が元々少量生産で量産効果が期待できないことと相まって、車両の製造コストが一層高まることとなっていた。
以上のように、従来にあっては、防災用オフロード車をシリーズハイブリッド電気自動車で構成した場合に、走行不能になる事態を回避しつつ、電源系統のコストを引き下げるという要求1)、2)を同時に達成することができなかった。
なお、特許文献1記載の発明では、インバータが故障した場合に発電機とインバータの交流電源系統を電気的に直結させることで、車両が走行不能になる事態を回避しているが、
これは単に電動機にかろうじて電源供給できるに過ぎず、故障時において電源系統80の本来の制御性能を維持して走行できるものではない。
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、防災用オフロード車をシリーズハイブリッド電気自動車で構成した場合に 、電源系統80の機能を維持した状態で安定に走行できる状況を保証しつつ、電源系統80のコストを引き下げることができるようにすることを解決課題とするものである。
そこで、第1発明は、
複数の車軸が備えられ、電動モータの作動に応じて左右の駆動輪が駆動される電動車両の駆動装置において、
複数の車軸のうち少なくとも1つの車軸は、左右の駆動輪が連動して駆動される連動駆動軸として構成され、
発電機と、発電インバータと、駆動インバータと、発電インバータと駆動インバータとを電気的に接続する電源線と、電動モータとを含み、エンジンの動力を電気エネルギーに変換して電動モータを作動させる電源系統が、複数、設けられ、
連動駆動軸に、複数の電源系統が並列に連結されていること
を特徴とする。
第2発明は、
複数の車軸が備えられ、電動モータの作動に応じて左右の駆動輪が駆動される電動車両の駆動装置において、
複数の車軸のうち少なくとも2つの車軸は、左右の駆動輪が連動して駆動される連動駆動軸として構成され、
発電機と、発電インバータと、駆動インバータと、発電インバータと駆動インバータとを電気的に接続する電源線と、電動モータと含み、エンジンの動力を電気エネルギーに変換して電動モータを作動させる電源系統が、複数、設けられ、
少なくとも2つの連動駆動軸のそれぞれには、異なる電源系統が連結されていること
を特徴とする。
第3発明は、
複数の車軸が備えられ、電動モータの作動に応じて左右の駆動輪が駆動される電動車両の駆動装置において、
複数の車軸のうち少なくとも1つの車軸は、左右の駆動輪が独立して駆動される独立駆動軸として構成され、
発電機と、発電インバータと、駆動インバータと、発電インバータと駆動インバータとを電気的に接続する電源線と、電動モータとを含み、エンジンの動力を電気エネルギーに変換して電動モータを作動させる電源系統が、複数、設けられ、
独立駆動軸の左右の駆動輪のそれぞれには、異なる複数の電源系統が並列に連結されていること
を特徴とする。
第4発明は、第2発明において、
少なくとも1つの連動駆動軸に、複数の電源系統が並列に連結されていること
を特徴とする。
第5発明は、第1発明において、
複数の車軸のうち少なくとも1つの車軸は、左右の駆動輪が独立して駆動される独立駆動軸として構成され、
独立駆動軸の左右の駆動輪のそれぞれには、異なる複数の電源系統が並列に連結されていること
を特徴とする。
第6発明は、第1発明または第2発明または第3発明において、
複数の電源系統のうち、少なくとも1つの電源系統は、電力を蓄える蓄電手段を含んでいること
を特徴とする。
第7発明は、第4発明において、
連動駆動軸に並列に連結される複数の電源系統の電源線には、共通の蓄電手段であって、電力を蓄える蓄電手段が電気的に接続されていること
を特徴とする。
第8発明は、第5発明において、
独立駆動軸の左右の駆動輪に連結される複数の電源系統の電源線には、共通の蓄電手段であって、電力を蓄える蓄電手段が電気的に接続されていること
を特徴とする。
第9発明は、第1発明から第8発明において、
電動車両は、車軸が2つ設けられた4輪車両であること
を特徴とする。
第10発明は、第1発明において、
電動車両は、前側車軸、後側車軸が連動駆動軸である4輪駆動車両であり、
前側車軸と後側車軸とが連動して駆動されるように、機械的に連結されていること
を特徴とする。
第11発明は、第1発明から第8発明において、
電動車両は、車軸が3つ以上設けられた多軸車両であること
を特徴とする。
第12発明は、
複数の車軸が備えられ、電動モータの作動に応じて左右の駆動輪が駆動される電動車両の駆動装置において、
複数の車軸は、左右の駆動輪が独立して駆動される独立駆動軸として構成され、
発電機と、発電インバータと、駆動インバータと、発電インバータと駆動インバータとを電気的に接続する電源線と、電動モータとを含み、エンジンの動力を電気エネルギーに変換して電動モータを作動させる電源系統が、各独立駆動軸毎に、設けられ、
独立駆動軸の左右の駆動輪のそれぞれには、電源系統を構成する電動モータが個別に連結されていること
を特徴とする。
第13発明は、第1発明または第2発明または第3発明または第12発明において、
2つの電源系統間に電気的に接続され、一方の電源系統から他方の電源系統に電力を供給する電源ブリッジと、
一方の電源系統に比べて他方の電源系統で電力が不足している場合に、一方の電源系統から他方の電源系統に電力が供給されるように電源ブリッジを制御する制御手段と
を備えたことを特徴とする。
第14発明は、第13発明において、
電源ブリッジは、2つの電源系統間で特定の一方向のみに電力を供給するように構成されていること
を特徴とする。
第15発明は、第13発明において、
電源ブリッジは、2つの電源系統間で双方向に電力を供給するように構成されていること
を特徴とする。
第16発明は、第1発明または第2発明または第3発明または第12発明において、
複数の車軸が備えられ、電動モータの作動に応じて左右の駆動輪が駆動される電動車両の駆動装置において、
発電機と、発電インバータと、駆動インバータと、発電インバータと駆動インバータとを電気的に接続する電源線と、電動モータとを含み、エンジンの動力を電気エネルギーに変換して電動モータを作動させる複数の電源系統と、
2つの電源系統それぞれに電気的に接続され、電源系統に電力を供給するとともに、電源系統の電力を蓄える蓄電部と、
電源系統で電力が不足している場合に、蓄電部から電源系統に電力が供給されるように蓄電部を制御するとともに、電源系統で電力に余裕がある場合に、電源系統の電力が蓄電部に蓄えられるように蓄電部を制御する制御手段と
を備えたことを特徴とする。
第17発明は、第13発明において、
2つの電源系統それぞれに電気的に接続され、電源系統に電力を供給るとともに、電源系統の電力を蓄える蓄電部と、
電源系統で電力が不足している場合に、蓄電部から電源系統に電力が供給されるように蓄電部を制御するとともに、電源系統で電力に余裕がある場合に、電源系統の電力が蓄電部に蓄えられるように蓄電部を制御する制御手段と
を備えたことを特徴とする。
第18発明は、第1発明または第2発明または第3発明または第12発明において、
複数の車軸が備えられ、電動モータの作動に応じて左右の駆動輪が駆動される電動車両の駆動装置において、
発電機と、発電インバータと、駆動インバータと、発電インバータと駆動インバータとを電気的に接続する電源線と、電動モータとを含み、エンジンの動力を電気エネルギーに変換して電動モータを作動させる複数の電源系統と、
2つの電源系統それぞれに電気的に接続され、電源系統の電力を補機に供給する補機電源ブリッジと、
補機電源ブリッジに電気的に接続された補機と
を備えたことを特徴とする。
第19発明は、第18発明において、
補機は、回生制動を行うものを含み、
補機電源ブリッジは、補機で回生制動が行われた際に補機で発生した電力を電源系統に供給するように構成されていること
を備えたことを特徴とする。
第20発明は、第13発明において、
2つの電源系統それぞれに電気的に接続され、電源系統の電力が供給されて駆動する補機と、
2つの電源系統それぞれに電気的に接続され、電源系統の電力を補機に供給する補機電源ブリッジと
を備えたことを特徴とする。
第1発明の電動車両100は、図2に示すように、複数の車軸11、12が備えられ、電動モータ70の作動に応じて左右の駆動輪3、4が駆動される。
複数の車軸11、12のうち少なくとも1つの車軸12は、左右の駆動輪3、4が連動して駆動される連動駆動軸として構成されている。
発電機20と、発電インバータ40と、駆動インバータ50と、発電インバータ40と駆動インバータ50とを電気的に接続する電源線60と、電動モータ70とを含み、エンジン110の動力を電気エネルギーに変換して電動モータ70を作動させる電源系統80が、複数(81、82)、設けられている。複数の電源系統81、82は、連動駆動軸12に並列に連結されている。
このため、第1発明によれば、電源系統81で電源線60が短絡する故障が起きたり、発電インバータ40、駆動インバータ50の故障が起きたりして、この電源系統81の電動モータ70に電力が供給されなくなり、電源系統81の電動モータ70によって連動駆動軸12の左右の駆動輪3、4が駆動されなくなったとしても、この電源系統81とは独立した他の電源系統82の電動モータ70には故障なく電力が供給されるので、この電源系統82の電動モータ70によって連動駆動軸12の左右の駆動輪3、4が確実に駆動される。これにより車両100が走行不能に陥る事態を回避できる。
よって、従来のように、1つしかない電源系統80の個々の部品について、十分にコストをかけて、信頼性高く設計し、生産することが不用になる。
また、電源系統80を複数の電源系統81、82とすることで、発電機20、電動モータ70の1個当りの容量を小さくでき部品を小型にできるとともに、車両1台当りで使用される同一仕様の部品、つまり発電機20、電動モータ70といった同一仕様の電気機器の個数が増加して、量産効果が高まる。このように車両一台当りの同一仕様の部品を小型化でき、かつ量産できることから電源系統80(81、82)のコストを引き下げることができる。
このように本第1発明によれば、防災用オフロード車をシリーズハイブリッド電気自動車で構成した場合に、電源系統80の機能を維持した状態で安定に走行できる状況を保証しつつ、電源系統80のコストを引き下げることができる。
第2発明の電動車両100は、図3に示すように、複数の車軸11、12が備えられ、電動モータ70の作動に応じて左右の駆動輪1、2、3、4が駆動される。
複数の車軸11、12のうち少なくとも2つの車軸11、12は、左右の駆動輪が連動して駆動される連動駆動軸として構成されている。
発電機20と、発電インバータ40と、駆動インバータ50と、発電インバータ40と駆動インバータ50とを電気的に接続する電源線60と、電動モータ70とを含み、エンジン110の動力を電気エネルギーに変換して電動モータ70を作動させる電源系統80が、複数(81、82)、設けられている。
少なくとも2つの連動駆動軸11、12のそれぞれには、異なる電源系統81、82が連結されている。
このため、第2発明によれば、電源系統81で電源線60が短絡する故障が起きたり、発電インバータ40、駆動インバータ50の故障が起きたりして、この電源系統81の電動モータ70に電力が供給されなくなり、電源系統81の電動モータ70によって連動駆動軸11の左右の駆動輪1、2が駆動されなくなったとしても、この電源系統81とは独立した他の電源系統82の電動モータ70には故障なく電力が供給されるので、この電源系統82の電動モータ70によって他の連動駆動軸12の左右の駆動輪3、4が確実に駆動される。これにより車両100が走行不能に陥る事態を回避できる。
よって、第2発明によれば、第1発明と同様の作用効果が得られる。
第3発明の電動車両100は、図4に示すように、複数の車軸11、12が備えられ、電動モータ70の作動に応じて左右の駆動輪3、4が駆動される。
複数の車軸11、12のうち少なくとも1つの車軸12は、左右の駆動輪3、4が独立して駆動される独立駆動軸として構成されている。
発電機20と、発電インバータ40と、駆動インバータ50と、発電インバータ40と駆動インバータ50とを電気的に接続する電源線60と、電動モータ70とを含み、エンジン110の動力を電気エネルギーに変換して電動モータ70を作動させる電源系統80が、複数(81、82、83、84)、設けられている。
独立駆動軸12の左駆動輪3には、複数の電源系統81、82が並列に連結され、独立駆動軸12の右駆動輪4には、電源系統81、82とは異なる複数の電源系統83、84が並列に連結されている。
このため、第3発明によれば、左駆動輪3の電源系統81で電源線60が短絡する故障が起きたり、発電インバータ40、駆動インバータ50の故障が起きたりして、この電源系統81の電動モータ70に電力が供給されなくなり、電源系統81の電動モータ70によって左駆動輪3が駆動されなくなったとしても、この電源系統81とは独立した他の電源系統82の電動モータ70には故障なく電力が供給されるので、この電源系統82の電動モータ70によって左駆動輪3が確実に駆動される。同様にして電源系統83が故障したとしても他の電源系統84によって右駆動輪4が確実に駆動される。これにより独立駆動軸12の左右車輪3、4の駆動が確保され車両100が走行不能に陥る事態を回避できる。
よって、第3発明によれば、第1発明と同様の作用効果が得られる。
第4発明では、図5に示すように、少なくとも2つの連動駆動軸11、12のそれぞれに、異なる電源系統81、82が連結された上(第2発明)で、少なくとも1つの連動駆動軸12に、複数の電源系統82、83が並列に連結されている(第1発明)。第4発明によれば、第2発明と同様の作用効果に加えて、第1発明と同様の作用効果が得られる。さらに第4発明によれば、連動駆動軸12に並列に連結された複数の電源系統82、83のいずれかの電源系統82で故障が発生した場合には他の電源系統83によって連動駆動軸12の左右車輪3、4の駆動が確保される。これにより車両100の複数の連動軸11、12の全輪1、2、3、4の駆動を維持することが可能となる。
第5発明では、図6に示すように、複数の電源系統85、86が連動駆動軸11に並列に連結された上(第1発明)で、複数の車軸11、12のうち少なくとも1つの車軸12は、左右の駆動輪3、4が独立して駆動される独立駆動軸として構成されており、独立駆動軸12の左駆動輪3には、複数の電源系統81、82が並列に連結され、独立駆動軸12の右駆動輪4には、電源系統81、82とは異なる複数の電源系統83、84が並列に連結されている(第3発明)。第5発明によれば、第1発明と同様の作用効果に加えて、第3発明と同様の作用効果が得られる。さらに第5発明によれば、連動駆動軸11のいずれかの電源系統85で故障が発生したり、独立駆動軸12のいずれかの電源系統81で故障が発生したとしても、連動駆動軸11の左右車輪1、2の駆動および独立駆動軸12の左右車輪3、4の駆動が確保される。これにより車両100の複数の連動軸11、12の全輪1、2、3、4の駆動を維持することが可能となる。
第6発明では、図2に示すように、複数の電源系統81、82のうち、少なくとも1つの電源系統81、82は、電力を蓄える蓄電手段90を含んで構成されている。本第6発明によれば、蓄電手段90によって電源線60に供給される電源電圧を一定に保つ制御が容易になり、安定した一定範囲の電圧を電動モータ70に印加することができるようになる。また電動車両100でブレーキがかかったときに制動トルクが発生すると、駆動インバータ50は電動モータ70を減速させるために回生制動をかける。このとき電動車両100の運動エネルギーが電力に変換されて、電源線60の電圧値が上昇するとともに、電力が蓄電手段90に蓄積される。このように本第6発明によれば、回生制動をかけることができ、蓄電手段90に電力が蓄積されるためエネルギー効率に優れ燃費を向上させることができる。
第7発明では、図7に示すように、連動駆動軸11に並列に連結される複数の電源系統85、86の電源線65、66には、共通の蓄電手段90であって、電力を蓄える蓄電手段90が電気的に接続されている。本第7発明によれば、第6発明と同様の効果が得られる。さらに、本第7発明によれば、複数の電源系統85、86に蓄電手段90を設ける場合に蓄電手段90を複数の電源系統85、86で共通のものとすることができ、部品の共通化により電源系統80のコストを更に低減させることができる。また電源線65、66で短絡等の重故障が起きない限り、いずれかの電源系統85のインバータの信号処理や制御などの不具合が発生した場合でも他の電源系統86によって連動駆動軸11の左右車輪1、2の駆動が確保される。
第8発明では、図8に示すように、独立駆動軸12の左右の駆動輪3、4に連結される複数の電源系統81、82、83、84の電源線61、62、63、64には、共通の蓄電手段90であって、電力を蓄える蓄電手段90が電気的に接続されている。本第8発明によれば、複数の電源系統81、82、83、84に蓄電手段90を設ける場合に蓄電手段90を複数の電源系統81、82、83、84で共通のものとすることができ、部品の共通化により電源系統80のコストを更に低減させることができる。また電源線61、62、63、64で短絡等の重故障が起きない限り、いずれかの電源系統81のインバータの信号処理や制御などの不具合が発生した場合でも他の電源系統82、83、84によって連動駆動軸12の左右車輪3、4の駆動が確保される。
第9発明では、図2ないし図8、図10、図13に例示するように、車軸が2つ(11、12)設けられた4輪車両100に、第1発明ないし第8発明が適用される。
第10発明では、図9に示すように、前側車軸11、後側車軸12が連動駆動軸である4輪駆動車両であり、前側車軸11と後側車軸12とが連動して駆動されるように、機械的に連結された車両に、第1発明が適用される。本第10発明によれば、いずれかの電源系統で故障が発生したとしても、4輪駆動車両100の全車輪1、2、3、4の駆動を確保することができ、4輪駆動車両100の機能を維持できる。
第11発明では、図11、図12に例示するように、車軸が3つ以上設けられた多軸車両、つまり6輪車両、8輪車両等に、第1発明ないし第8発明が適用される。
第12発明の電動車両100は、図22に示すように、複数、たとえば2つの車軸11、12が備えられた4輪車である。
車軸11は、左右の駆動輪1、2が独立して駆動される独立駆動軸として構成されているともに、車軸12は、左右の駆動輪3、4が独立して駆動される独立駆動軸として構成されている。
電源系統80は、2つの電源系統81、82からなる。電源系統81、82は、各独立駆動軸11、12毎に、設けられている。電源系統81は、発電機21と、発電インバータ41と、駆動インバータ51、52と、発電インバータ41と駆動インバータ51、52とを電気的に接続する電源線61と、駆動インバータ51、52それぞれに電気的に接続された電動モータ71、72とを含んで構成されている。電動モータ71、72はそれぞれ左右の駆動輪(前輪)1、2に連結されている。また、電源系統82は、発電機22と、発電インバータ42と、駆動インバータ53、54と、発電インバータ42と駆動インバータ53、54とを電気的に接続する電源線62と、駆動インバータ53、54それぞれに電気的に接続された電動モータ73、74とを含んで構成されている。電動モータ73、74はそれぞれ左右の駆動輪(後輪)3、4に連結されている。このように独立駆動軸11の左右の駆動輪1、2のそれぞれには、電源系統81を構成する電動モータ71、72が個別に連結されているとともに、独立駆動軸12の左右の駆動輪3、4のそれぞれには、電源系統82を構成する電動モータ73、74が個別に連結されている。
このため、たとえば前輪1、2の電源系統81で電源線61が短絡する故障が起きたり、発電インバータ41、駆動インバータ51、52で故障が起きたりして、この電源系統81の電動モータ71あるいは72に電力が供給されなくなり、電源系統81の電動モータ71、72によって前輪の左駆動輪1あるいは右駆動輪2あるいは両駆動輪1、2が駆動されなくなったとしても、この電源系統81とは独立した他の電源系統82の電動モータ73、74には故障なく電力が供給されるので、この電源系統82の電動モータ73、74によって後輪3、4が確実に駆動される。同様にして電源系統82が故障したとしても他の電源系統81によって前輪1、2が確実に駆動される。これにより独立駆動軸11、12の少なくとも一方の左右車輪1、2あるいは3、4の駆動が確保され車両100が走行不能に陥る事態を回避できる。
第13発明の電動車両100は、図23に示すように、複数の車軸11、12が備えられ、電動モータ70(71、72、73、74)の作動に応じて左右の駆動輪1、2、3、4が駆動されるものである。
電動車両100には、発電機21と、発電インバータ41と、駆動インバータ51、52と、発電インバータ41と駆動インバータ51、52とを電気的に接続する電源線61と、電動モータ71、72とを含み、エンジン110の動力を電気エネルギーに変換して電動モータ71、72を作動させる第1の電源系統81と、発電機22と、発電インバータ42と、駆動インバータ53、54と、発電インバータ42と駆動インバータ53、54、55とを電気的に接続する電源線62と、電動モータ73、74とを含み、エンジン110の動力を電気エネルギーに変換して電動モータ73、74を作動させる第2の電源系統82とが設けられている。第1の電源系統81によって前輪1、2が駆動され、第2の電源系統82によって後輪3、4が駆動される。
電源ブリッジ210は、2つの電源系統81、82間に電気的に接続されており、一方の電源系統81から他方の電源系統82に電力を供給する。
制御手段310は、一方の電源系統81に比べて他方の電源系統82で電力が不足している場合に、一方の電源系統81から他方の電源系統82に電力が供給されるように電源ブリッジ210を制御する。
つぎに本発明の作用効果について説明する。図23の電動車両100は、標準仕様の電動車両100にトレーラ199が追加されるとともに、第2の電源系統82に、トレーラ199を駆動するための補機(電源負荷)として駆動インバータ55と電動モータ75が追加された車両であるとする。電動モータ75の定格出力が20kWとする。
ここで比較例として図22に標準仕様の電動車両100を示す。図22に示す電動車両100は、図23に示す電動車両100から、本発明の電源ブリッジ210および制御手段310を取り除いた構成の車両である。
電動車両100は、標準仕様でエンジン110の最大出力が100kWで、発電機21、22の定格出力がそれぞれ50kWであるとする。また標準仕様でエンジン110の最大出力の80%の電力(80kW)が駆動輪1、2、3、4の電動モータ71、72、73、74に供給されると全速力で登坂が可能であるとする。
標準仕様の電動車両100では、トレーラ199がないため、電動車両100が坂道を全力で登坂しているとき、第1の電源系統81においてエンジン110、発電機21を介して前輪1、2の電動モータ71、72にそれぞれ20kW、合計で40kWの電力が供給され、第2の電源系統82においてエンジン110、発電機22を介して後輪3、4の電動モータ73、74にそれぞれ20kW、合計で40kWの電力が供給される。このとき第1の電源系統81、第2の電源系統82それそれで10kWづつ、合計で20kWの電力の余裕がある。
しかし、標準仕様の電動車両100に、20kWのトレーラ199を電動車両100に繋ぎ、第2の電源系統82に、トレーラ199を駆動するために、20kWに相当する駆動インバータ55と電動モータ75を接続したとすると、電動車両100が全速力で登坂しようとするときに、第2の電源系統82では、10kWの過負荷になってしまう。なお、このとき第1の電源系統81には、10kWの電力の余裕がある。このため第2の電源系統82で電圧が急低下するなどの動作不安定が起きるおそれがある。さらには第2の電源系統82で後輪3、4側の電動モータ73、74に電力を安定して供給することができなくなるおそれがある。例えば滑りやすい状況にある登り坂では、前輪1、2がスリップするため後輪3、4で車両全体で発生する駆動力のうち過半数の駆動力を負担しなければならない。上述のように後輪3、4側の第2の電源系統82が過負荷のために後輪3、4側の電動モータ73、74に電力を安定して供給できなくなると、後輪3、4側の電動モータ73、74で登坂に必要な駆動力が得られなくなり、電動車両100が登坂できなくなる事態が予測される。
これに対して、本発明の電動車両100では、上述したトレーラ199が繋がれて登坂走行をしている状況下で、一方の電源系統81(10kWの余裕)に比べて他方の電源系統82(10kWの過負荷)で電力が不足している場合に、10kWの余裕のある一方の電源系統81から、10kWの過負荷の他方の電源系統82に、不足分の電力10kWが供給される。このため後輪3、4側の第2の電源系統82で電力が充足され、後輪3、4側の電動モータ73、74に電力が安定して供給されるようになり、後輪3、4側の電動モータ73、74で登坂に必要な駆動力が得られ、電動車両100は全速力で登坂することができるようになる。
以上のように、本第13発明によれば、大容量の補機(駆動インバータ55、電動モータ75)が一方の電源系統82に接続された場合によって生じる両電源系統81、82間の負荷のアンバランスが抑制され、大容量の補機が追加されたとしても必要十分な駆動力が得られ、電動車両100の機能を維持することができる。
また、電動車両100のエンジン110の最大出力、発電機21、22の定格出力を変更するなど、エンジン、発電機などの基本的な仕様を変更する必要はない。このため本第1発明によれば、防災用オフロード車をシリーズハイブリッド電気自動車で構成した場合に、エンジン、発電機などの基本的な仕様を変更することなく、しかも上述したように走行性能を損なうことなく、大容量の補機を作動させることができるようになる。
第14発明では、電源ブリッジ210は、2つの電源系統81、82間で特定の一方向のみ、例えば図23に示すように、電源系統81から補機(駆動インバータ55、電動モータ75)が追加された電源系統82に電力を供給するように構成されている。
第15発明では、電源ブリッジ210は、2つの電源系統81、82間で双方向に電力を供給するように構成されている。第3発明によれば、2つの電源系統81、82のうちいずれか一方の電源系統81(82)が過負荷となり電力が不足している場合に、他方の電力に余裕のある電源系統82(81)から電力を、過負荷の電源系統81(82)に供給することができる。
第16発明の電動車両100は、図26に示すように、複数の車軸11、12が備えられ、電動モータ70(71、72)の作動に応じて左右の駆動輪1、2、3、4が駆動されるものである。
電動車両100には、発電機21と、発電インバータ41と、駆動インバータ51と、発電インバータ41と駆動インバータ51とを電気的に接続する電源線61と、電動モータ71とを含み、エンジン110の動力を電気エネルギーに変換して電動モータ71を作動させる第1の電源系統81と、発電機22と、発電インバータ42と、駆動インバータ52と、発電インバータ42と駆動インバータ52とを電気的に接続する電源線62と、電動モータ72とを含み、エンジン110の動力を電気エネルギーに変換して電動モータ72を作動させる第2の電源系統82とが設けられている。第1の電源系統81によって前輪1、2が駆動され、第2の電源系統82によって後輪3、4が駆動される。
蓄電部220は、2つの電源系統81、82それぞれに電気的に接続されており、電源系統81、82に電力を供給するとともに、電源系統81、82の電力を蓄えるものである。
制御手段310は、電源系統81、82で電力が不足している場合に、蓄電部220から電源系統81、82に電力が供給されるように蓄電部220を制御するとともに、電源系統81、82で電力に余裕がある場合に、電源系統81、82の電力が蓄電部220に蓄えられるように蓄電部220を制御する。
このように蓄電部220は、2つの電源系統81、82に共通の蓄電手段として構成されている。このため1つのパッケージ化された蓄電部220を、コネクタ251、252を介して電源系統81、82に接続するだけで、電源系統81、82に不足している電力を供給することができるとともに、電力の余裕がある電源系統81、82から電力の供給を受け蓄えることができる。よって、予め各電源系統81、82それぞれに別々の蓄電手段を接続しておく必要がなく、1つの蓄電部220のパッケージを、コネクタ251、252を介して電源系統81、82に接続するだけで、トンネル内走行や夜間走行などの特殊な任務に迅速に対処することができる。これにより特殊な任務以外のときであっても車両の重量の増加を招いたり、車内の場積が狭まるという問題を回避できる。また、蓄電手段を装着する際に取り扱いが容易で、簡易に装着することができる。
以上のように本第16発明によれば、防災用オフロード車をシリーズハイブリッド電気自動車で構成した場合に、大容量の蓄電手段を容易に取り扱え、簡易に装着できるようになり、夜間走行、トンネル内走行などの特殊な任務に迅速に対処できる。
第17発明では、図26に示すように、第13発明の電源ブリッジ210に加え、第16発明の蓄電部220が設けられ、これらが第13発明、第16発明と同じ制御手段310によって制御される。
このため第17発明によれば、第13発明の作用効果が得られるとともに第16発明の作用効果が得られる。
第18発明の電動車両100は、図32に示すように、複数の車軸11、12が備えられ、電動モータ70(71、72)の作動に応じて左右の駆動輪1、2、3、4が駆動されるものである。
電動車両100には、発電機21と、発電インバータ41と、駆動インバータ51、52と、発電インバータ41と駆動インバータ51とを電気的に接続する電源線61と、電動モータ71とを含み、エンジン110の動力を電気エネルギーに変換して電動モータ71を作動させる第1の電源系統81と、発電機22と、発電インバータ42と、駆動インバータ52と、発電インバータ42と駆動インバータ52とを電気的に接続する電源線62と、電動モータ72とを含み、エンジン110の動力を電気エネルギーに変換して電動モータ72を作動させる第2の電源系統82とが設けられている。第1の電源系統81によって前輪1、2が駆動され、第2の電源系統82によって後輪3、4が駆動される。
補機233、234は、補機電源ブリッジ240に電気的に接続されている。補機電源ブリッジ240は、2つの電源系統81、82それぞれに電気的に接続されて、電源系統81、82の電力を補機233、234に供給する。
このように補機233、234は、補機電源ブリッジ240を介して、2つの電源系統81、82から電力が供給されるように構成されている。たとえば1つのパッケージ化された補機電源ブリッジ240を、コネクタ251、252を介して電源系統81、82に接続し、補機電源ブリッジ240に補機233、234を接続するだけで、2つの電源系統81、82のいずれか一方若しくは両方から補機233、234に電力が供給される。よって、搭載される補機に合わせてエンジンの最大出力や発電機の定格出力などを変更したり、予め各電源系統81、82毎に補機を接続しておく必要がなく、1つの補機電源ブリッジ240のパッケージを、コネクタ251、252を介して電源系統81、82に接続し、補機電源ブリッジ240に補機233、234を接続するだけで、大容量の補機の電力需要に対処することができる。これにより予め車両に補機を搭載することによって生じる問題、つまり補機不使用時であっても車両の重量が増加したり車内の場積が狭まるという問題を回避できる。また、補機を装着する際に取り扱いが容易で、簡易に装着することができる。また、2つの電源系統81、82のいずれか一方若しくは両方から補機233、234に電力が供給されるため、電源系統81、82の一方が極端に過負荷になるという問題を回避でき、車両の走行性能を確保することができる。
以上のように本第18発明によれば、防災用オフロード車をシリーズハイブリッド電気自動車で構成した場合に、エンジン、発電機などの基本的な仕様を変更することなく、しかも走行性能を損なうことなく、補機を作動させることができる。さらに、補機の追加搭載時に取り扱いが容易で、簡易に装着でき、災害救援、通信業務などの特殊な用途に迅速に対処することができる。
第19発明では、補機233、234は、回生制動を行うものであって、補機電源ブリッジ240は、補機233、234で回生制動が行われた際に補機233、234で発生した電力を電源系統81、82に供給するように構成されている。第19発明によれば、電源系統81、82から補機233、234に電力を供給するのみならず、補機233、234で発生した電力を電源系統81、82に供給することができる。
第20発明では、図32にすように、第13発明の電源ブリッジ210に加え、第18発明の補機電源ブリッジ240および補機233、234が設けられる。
このため第20発明によれば、第13発明の作用効果が得られるとともに第18発明の作用効果が得られる。
発明を実施するための最良の実施の形態
以下、図面を参照して本発明に係る電動車両の駆動装置の実施の形態について説明する。
ここで、本件明細書に使用される特別な用語について定義するとともに、符号の使用法について説明する。
「電源系統」とは、発電機20と、発電インバータ40と、駆動インバータ50と、発電インバータ40と駆動インバータ50とを電気的に接続する電源線60と、電動モータ70とを含み、エンジン110の動力を電気エネルギーに変換して電動モータ70を作動させる装置をいい、重故障に対処するために共通の蓄電手段を図面通り残した構造で観察する視点においては、自己の電源系統のいずれの箇所で短絡等の故障があったとしてもその故障が他の電源系統に影響を及ぼすことのない装置であり、また軽易な故障に対処するために共通の蓄電手段を仮に取り除いて観察する始点においては、自己の電源系統のいずれの箇所でインバータの信号処理や制御などの不具合があったとしてもその軽故障が他の電源系統に影響を及ぼすことのない装置の意味で使用する。
また、「第1の電源系統ユニット」、「第2の電源系統ユニット」…というときは、複数の「電源系統」の集合体であって、蓄電手段が設けられている場合には、複数の「電源系統」が共通の蓄電手段に電気的に接続されている「電源系統」の集合体の意味で使用する。
「車軸」とは、車両の左右の一対の車輪に対応する仮想的な軸のことである。よって、たとえば図2の車輪1、2のように左右の車輪1、2が独立して駆動されるような場合にも、一点鎖線で示す仮想的な軸を「車軸」(第1車軸)と称するものとする。
「連動駆動軸」とは、車両に設けられた車軸であって、左右車輪に共通する電動モータの駆動力が、ディファレンシャルギヤ、あるいは左右車輪が機械的に直結された軸を介して、左右の車輪に伝達されて、左右の車輪が連動して駆動される車軸の意味で使用する。
「独立駆動軸」とは、車両に設けられた車軸であって、左右車輪個別に設けられた各電動モータの駆動力がそれぞれ左車輪、右車輪に伝達されて、左右の車輪が各電動モータによって個別に駆動される車軸の意味で使用する。
電源系統、発電機、発電インバータ、駆動インバータ、電源線、電動モータ、蓄電手段はそれぞれ、同一車両に搭載される同一部品を区別しないで説明できるとき、あるいは部品を総称するときは、電源系統80、発電機20、発電インバータ40、駆動インバータ50、電源線60、電動モータ70、蓄電手段90とするが、同一車両に搭載される同一部品を区別して説明するときは、一桁目の符号を1、2、3…とする。たとえば、電源系統については、「電源系統81」、「電源系統82」、「電源系統83」…とする。
(第1実施例)
さて、図13は、電動車両100の駆動制御装置の装置構成を示している。なお、実施例では、電動車両100として、シリーズハイブリッド電気自動車として構成された防災用オフロード車を想定する。
同図13に示すように、電動車両100は、複数の電動モータ71、72、73、74、75、76の作動に応じて全ての車輪1、2、3、4が駆動輪として駆動される全輪駆動(4輪駆動)車両である。電動車両100には、第1車軸(前側車軸)11と、第2車軸(後側車軸)12が設けられている。電動車両100の車体101の前側左には、左前駆動輪1が設けられ、同車体101の前側右には、右前駆動輪2が設けられ、同車体101の後側左には、左後駆動輪3が設けられ、同車体101の後側右には、右後駆動輪4が設けられている。
第1車軸11は、ディファレンシャルギヤ102を介して左右の駆動輪1、2が連動して駆動される連動駆動軸として構成されている。
第2車軸12は、左右の駆動輪3、4が独立して駆動される独立駆動軸として構成されている。
電動車両100には、エンジン110から増速機111を介して発電機20までの動力伝達機構30と直列に、電源系統80が設けられている。
電源系統80は、大きくは、第2車軸12に対応して設けられた第1の電源系統ユニット80Aと、第1車軸11に対応して設けられた第2の電源系統ユニット80Bとからなる。
第1の電源系統ユニット80Aは、電源系統81、82、83、84から構成されている。第2の電源系統ユニット80Bは、電源系統85、86から構成されている。
独立駆動軸である第2車軸12の左駆動輪3には、複数(2つ)の電源系統81、82が並列に連結されている。
独立駆動軸である第2車軸12の右駆動輪4には、電源系統81、82とは異なる複数(2つ)の電源系統83、84が並列に連結されている。
連動駆動軸である第1車軸11には、複数(2つ)の電源系統85、86が並列に連結されている。
電源系統81は、発電機21と、発電インバータ41と、駆動インバータ51と、発電インバータ41と駆動インバータ51とを電気的に接続する電源線61と、電動モータ71とを含み、エンジン110の動力を電気エネルギーに変換して電動モータ71を作動させる電源系統である。電動モータ71の出力軸は、減速ギヤを介して、あるいは直結にて第2車軸12の左駆動輪3に連結されている。
同様に、電源系統82は、発電機22と、発電インバータ42と、駆動インバータ52と、電源線62と、電動モータ72とを含み、エンジン110の動力を電気エネルギーに変換して電動モータ72を作動させる電源系統である。電動モータ72の出力軸は、減速ギヤを介して、あるいは直結にて第2車軸12の左駆動輪3に連結されている。
同様に、電源系統83は、発電機23と、発電インバータ43と、駆動インバータ53と、電源線63と、電動モータ73とを含み、エンジン110の動力を電気エネルギーに変換して電動モータ73を作動させる電源系統である。電動モータ73の出力軸は、減速ギヤを介して、あるいは直結にて第2車軸12の右駆動輪4に連結されている。
同様に、電源系統84は、発電機24と、発電インバータ44と、駆動インバータ54と、電源線64と、電動モータ74とを含み、エンジン110の動力を電気エネルギーに変換して電動モータ74を作動させる電源系統である。電動モータ74の出力軸は、減速ギヤを介して、あるいは直結にて第2車軸12の右駆動輪4に連結されている。
これら第2車軸12に対応する複数(4つ)の電源系統81、82、83、84の電源線61、62、63、64には、共通の蓄電手段90であって、電力を蓄える蓄電手段90が電気的に接続されている。蓄電手段90は、キャパシタ、バッテリなどで構成されており、電源系統80Aの電源電圧を一定の範囲内に保つ制御を容易に行なうために設けられている。
電源系統85は、発電機25と、発電インバータ45と、駆動インバータ55と、電源線65と、電動モータ75とを含み、エンジン110の動力を電気エネルギーに変換して電動モータ75を作動させる電源系統である。電動モータ75と、第1車軸11の左右駆動輪1、2との間には、電動モータ75の駆動力を左右駆動輪1、2に伝達するディファレンシャルギヤ102が介在されて設けられている。電動モータ75の出力軸は、減速ギヤを介して、あるいは直結にてディファレンシャルギヤ102の入力軸に連結され、ディファレンシャルギヤ102の左右の各出力軸はそれぞれ、左右のファイナルギヤを介して、あるいは直結にて第1車軸11の左駆動輪1、右駆動輪2に連結されている。
同様に、電源系統86は、発電機26と、発電インバータ46と、駆動インバータ56と、電源線66と、電動モータ76とを含み、エンジン110の動力を電気エネルギーに変換して電動モータ76を作動させる電源系統である。電動モータ76の出力軸は、ディファレンシャルギヤ102を介して第1車軸11の左駆動輪1、右駆動輪2に連結されている。
電動モータ71、72の各出力は、合成出力として取り出され、2連(タンデム)式モータとしてあるいは連結ギヤなどを介して合成出力が左後駆動輪3に伝達される。同様に、電動モータ73、74の各出力も合成出力として取り出され、合成出力が右後駆動輪4に伝達される。また、電動モータ75、76の各出力は、合成出力として取り出され、合成出力がディファレンシャルギヤ102の入力軸に伝達される。ディファレンシャルギヤに2つの入力軸を設け、それぞれに電動機を設けてもよい。
図14は、2つの電動モータの各出力を合成して取り出すための装置構成例を示している。電動モータ75、76を代表させて説明する。
2つの電動モータ75、76の各回転軸75F、76Fは、連結ギヤ112により結合されている。連結ギヤ112には出力軸112Eが連結されている。出力軸112Eから2つの電動モータ75、76の各出力を合成した出力が取り出され、ディファレンシャルギヤ102の入力軸102Dに伝達される。
発電機20と電動モータ70の主要部品は同じである。ただし、発電機20は最高効率点近辺の一定回転数で回転するのに対して、電動モータ70は、広い範囲で回転数が変化し効率が悪い条件でも使用する点が異なる。このため、電動モータ70には、発電機20に比べて強力な冷却システム、つまり、たとえば冷却液を電動モータ70の周囲に循環させて電動モータ70を冷却する強制液冷装置を設けることが望ましい。
図15(b)は、エンジン110から増速機111を介して発電機20までの動力伝達機構30の配置関係を例示している。同図15(b)に示すように、エンジン110の出力軸110Eに増速機111の入力軸111Dが直列に連結され、増速機111の出力軸111Eに発電機21の入力軸21Dが直列に連結されている。発電機21の出力軸21Eには発電機22の入力軸22Dが直列に連結されている。以下同様にして、6台の発電機21、22、23、24、25、26が直列に連結されている。
図15(a)は、比較例であり、従来の非電動車両の動力伝達機構30´の配置関係を例示しており、図15(b)と同一縮尺で示している。図15(a)に示すように、エンジン110、トルクコンバータ190、トランスミッション191が直列に連結されて動力伝達機構30´が構成されている。
本実施例によれば、従来の非電動車両の動力伝達機構30´と同じスペースに、電動車両100の動力伝達機構30を配置させることができる。
ただし、図15(b)に示す動力伝達装置30の配置は一例であり、周囲の機械部品との干渉を避けるなどの目的に応じて動力伝達機構30のレイアウトを適宜変更することができる。
たとえば図15(c)に示すように、増速機111に2つの出力軸111E1、111E2を設けて、出力軸111E1に3台の発電機21、22、23を直列に連結するとともに、出力軸111E2に3台の発電機24、25、26を直列に連結する配置構成とすることができる。
また、図15(d)に示すように、増速機111に3つの出力軸111E1、111E2、111E3を設けて、出力軸111E1に2台の発電機21、22を直列に連結するとともに、出力軸111E2に2台の発電機23、24を直列に連結し、出力軸111E3に等速継ぎ手140を介して、2台の発電機25、26を直列に連結する配置構成とすることができる。
図13に示すように、アクセルペダル131は、電動車両100の運転室に設けられており、踏込み操作に応じて踏込み操作量Y(mm)が変化する。アクセルペダル131の踏込み操作量Y(mm)を示す信号は、制御装置132に入力される。
制御装置132は、エンジンコントローラ133、発電インバータ40(41〜46)、蓄電手段90、駆動インバータ50(51〜56)との間で信号の入出力を行い、発電インバータ40(41〜46)、蓄電手段90、駆動インバータ50(51〜56)を制御する。なお、アクセルペダル131の踏込み量が既にエンジンコントローラ133に読み込まれている場合には、制御装置132は、アクセルペダル131の踏込み量のデータをエンジンコントローラ133から通信や計測データとして受け取ることもできる。
エンジンコントローラ133は、制御装置132との間で信号の入出力を行い、エンジン110の回転数を制御する。
発電機21〜26はそれぞれ、電気ケーブル121〜126を介して発電インバータ41〜46それぞれに電気的に接続されている。
電動モータ71〜76はそれぞれ、電気ケーブル151〜156を介して駆動インバータ51〜56それぞれに電気的に接続されている。
第1の電源系統ユニット80Aの発電インバータ41、42、43、44はそれぞれ、電源線61、62、63、64を介して、駆動インバータ51、52、53、54に電気的に接続されている。電源線61、62、63、64は、直流電源線のプラスケーブルであり、シールド線で構成されている。電源線61、62、63、64は共通の蓄電手段90に電気的に接続されている。
すなわち、蓄電手段90のプラス端子90a、マイナス端子90bは、端子ボックス90Cに収容されている。蓄電手段90のプラスケーブル90fはプラス端子90aに電気的に接続され、プラス端子90aは、電源線(直流電源線のプラスケーブル)61、62、63、64それぞれに電気的に接続されている。蓄電手段90のマイナス端子90bは、マイナスケーブル90gを介して車体101の一点にボディアースされている。同様に、発電インバータ41、42、43、44のマイナス端子および駆動インバータ51、52、53、54のマイナス端子はそれぞれ、マイナスケーブル61a、62a、63a、64a、蓄電手段90のマイナス端子90bを介して車体101の一点にボディアースされている。
また、第2の電源系統ユニット80Bの発電インバータ45、46のマイナス端子および駆動インバータ55、56のマイナス端子はそれぞれ、マイナスケーブル65a、66a、端子ボックス90Dのマイナス端子90eを介して車体101の一点にボディアースされている。
エンジン110の回転数は、増速機111によって発電機21〜26の動作に最適な回転数まで上昇される。エンジン110の出力は、増速機111を介して発電機21〜26に伝達される。
発電機21〜26では、発電作用によりエンジン110の出力が電力に変換される。発電された電力は、発電機21〜26それぞれから電気ケーブル121〜126を介して発電インバータ41〜46それぞれに供給される。発電機21〜26で発生した交流電力はそれぞれ、発電インバータ41〜46で直流電力に変換される。発電インバータ41〜46それぞれから直流電力が電源線61〜66に供給される。
(第1の制御例)
制御装置132は、電動車両100が定常走行中は、エンジン110が最大出力を得られる回転数になるように、エンジンコントローラ133に対して指令を与える。これにより電動車両100が定常走行中は、走行負荷にかかわらずエンジン回転数が一定となる。
発電機21〜26は一定の回転数で回転するが、負荷電流に応じて出力電圧Vcが変動するおそれがある。そこで、制御装置132は発電インバータ21〜26を、その出力直流電圧値Vcが規定値V0になるように制御する。これにより、発電インバータ21〜26から、ほぼ一定の直流電圧V0が電源線61〜66に供給される。
第1の電源系統ユニット80Aは、蓄電手段90を備えている。蓄電手段90によって電源線61、62、63、64に供給される電源電圧Vcを一定に保つ制御が容易になり、安定した一定範囲の電圧を電動モータ71、72、73、74に印加することができるようになる。
蓄電手段90の中には、高速応答型の高電圧、大容量のキャパシタが内蔵されている。
第1の電源系統ユニット80Aの電源線61〜64の電圧値は、蓄電手段90の出力電圧値Vcに等しい。
制御装置132は、蓄電手段90の出力電圧Vcが規定値V0よりも低下したときに、発電インバータ41〜44に対して、発電機21〜24の発電量を増やして蓄電手段90の出力電圧Vcを規定値V0に戻すように、指令する。これにより発電インバータ41〜44は発電機21〜24に発電作用を行わせて発電量を増やし、蓄電手段90の出力電圧Vcを規定値V0に戻す。逆に、制御装置132は、蓄電手段90の出力電圧Vcが規定値V0よりも上昇したときに、発電インバータ41〜44に対して、発電機21〜24の発電量を減少ないしは休止させて蓄電手段90の出力電圧Vcを規定値V0に戻すように、指令する。これにより発電インバータ41〜44は発電機21〜24に発電作用を低減させて、蓄電手段90の出力電圧Vcを規定値V0に戻す。
仮に、電動モータ71〜76の回生制動が生じた場合などのように、蓄電手段90の出力電圧Vcが許容できる上限電圧に向かって上昇し続けて、警戒値を越えた場合には、制御装置132は、発電インバータ41〜44に対して発電機21〜24を電動作用させてエンジン110を加速するように指令すると同時に、エンジンコントローラ133に対してエンジン110が加速しないように指令する。これによりエンジン110にエンジンブレーキがかかり、発電機21〜24の回転を妨害するように機能する。これによって蓄電手段90の過充電が回避され、蓄電手段90が過電圧で損傷することを防止できる。
(第2の制御例)
上述したように、第1の電源系統ユニット80Aには、蓄電手段90が備えられており、蓄電手段90によって電源線61、62、63、64に供給される電源電圧Vcを一定に保つ制御が容易になり、安定した一定範囲の電圧を電動モータ71、72、73、74に印加することができる。以下、同様にして第1の電源系統ユニット80Aで、蓄電手段90を電力安定化手段として用いるとともに、第1の電源系統ユニット80Aの1つの発電機21をマスター発電機とし、他の発電機22、23、24をスレーブ発電機とするマスター・スレーブ制御を行なって、さらに効率よく、ほぼ一定範囲の電圧を電動モータ71〜74に供給することができる制御例について説明する。
図16は、マスター発電機21の発電インバータ41の制御の手順をフローチャートにて示す。
第1の制御例と同様にエンジン110は一定回転数に制御されているものとする。
マスター発電機21の発電インバータ41の出力電流Iが制限電流Imax以内であるときには(ステップ201の判断「電流制限内」)、発電インバータ41の直流出力電圧Vcが規定値V0をわずかに超えるように、発電インバータ41の直流出力電圧Vcが制御される(ステップ202)。これに対して発電インバータ41の出力電流Iが制限電流Imaxを超えたときには(ステップ201の判断「過電流」)、発電インバータ41の直流出力電流Iが制限電流Imax内に収まるように発電インバータ41の直流出力電流Iが制御される。これにより、蓄電手段90に蓄積されていた電気エネルギーが負荷である電動モータ71、72、73、74に放出され、蓄電手段90の端子電圧Vcが低下する。このとき、発電インバータ41の直流出力電圧Vcが、たとえ規定値V0よりも低下しても、出力電流Iが制限電流Imax内に収まるように制御される(ステップ203)。
また、電動車両100でブレーキがかかったときに制動トルクが発生すると、駆動インバータ51、52、53、54は電動モータ71、72、73、74を減速させるために回生制動をかける。このとき電動車両100の運動エネルギーが電力に変換されて、電源線61、62、63、64の電圧値Vcが上昇するとともに、電力が蓄電手段90に蓄積される。負荷から電流が回生されて蓄電手段90の端子電圧Vcが規定値V0を超えて上昇した場合には、マスター発電機21の発電インバータ41からは負荷電流Iが発生しなくなる。
図17は、スレーブ発電機22、23、24の発電インバータ42、43、44の制御の手順をフローチャートにて示す。
同図17に示すように、ステップ201と同様に、マスター発電機21の発電インバータ41の出力電流Iが過電流になっているか否かが判断される(ステップ301)。マスター発電機21の発電インバータ41の出力電流Iが過電流になっている場合(ステップ301の判断「過電流」)には、蓄電手段90に蓄積されていた電気エネルギーが負荷である電動モータ71、72、73、74に放出され、蓄電手段90の端子電圧Vcが低下する。そこで、電圧指令値V0と実際の端子電圧Vcとの誤差である電圧降下値Vε=V0−Vcを、各発電インバータ42、43、44の制御入力として、スレーブ発電機22、23、24の発電インバータ42、43、44の出力電圧が電圧指令値V0を超えず、なるべく電圧指令値V0に近い値になるように、各発電インバータ42、43、44が個々の電流制限を越えない範囲で個別に制御される。これにより蓄電手段90の端子電圧Vcが規定値V0になるまで充電される。ただし、各発電インバータ42、43、44の出力電圧がオーバーシュートするのは好ましくない。このため制御則は、単純なPI(比例、積分)制御で十分である。一方で、蓄電手段90の容量が小さい場合には、過負荷により蓄電手段90の端子電圧Vcの電圧降下が急速に進むため好ましくない。このため、各発電インバータ42、43、44の出力電圧がオーバーシュートしない範囲で、制御則に、単純なPID(比例、積分、微分)制御を使用する実施も可能である(ステップ302)。
(第3の制御例)
第2の制御例では、マスター発電機21の発電インバータ41の制御(図16)と、スレーブ発電機22、23、24の発電インバータ42、43、44の制御(図17)とが別々のフローチャートにて平行して行われることを前提として説明した。
この第3の制御例では、同じフローチャートでまとめて、マスター発電機21の発電インバータ41の制御と、スレーブ発電機22、23、24の発電インバータ42、43、44の制御が行なわれる場合について説明する。
図18に示すように、エンジン110は一定回転数で回転しており、4つの発電機21、22、23、24の発電インバータ41、42、43、44には安定した動力が供給されている(ステップ401)。
つぎに、蓄電手段90の端子電圧Vcが規定値V0よりも低下しているか否かが判断される(ステップ402)。この結果、蓄電手段90の端子電圧Vcが規定値V0以上であると判断された場合には(ステップ402の判断「V0以上」)、電動車両100が無負荷あるいは回生制動がかかった状態のときであり、発電インバータ41、42、43、44は動作せず、電流は出力されない。
これに対して、蓄電手段90の端子電圧Vcが規定値V0よりも低下している判断された場合には(ステップ402の判断「V0よりも低下」)、電動車両100が軽負荷の状態のときであり、マスター発電機21の発電インバータ41が動作して、電流が出力される。電圧降下値Vε=V0−Vcを、発電インバータ41の制御入力として発電インバータ41が制御される。これにより蓄電手段90の端子電圧Vcが規定値V0になるまで蓄電手段90が充電される(ステップ403)。
つぎに、マスター発電機21の発電インバータ41の出力電流Iが過電流になっているか否かが判断される(ステップ404)。マスター発電機21の発電インバータ41の出力電流Iが過電流になっている場合(ステップ404の判断「過電流」)には、電動車両100が重負荷の状態のときであり、発電インバータ41の直流出力電流Iが制限電流Imax内に収まるように発電インバータ41の直流出力電流Iが制御される。これにより、蓄電手段90に蓄積されていた電気エネルギーが負荷である電動モータ71、72、73、74に放出され、蓄電手段90の端子電圧Vcが低下する。
そこで、電圧降下値Vε=V0−Vcを、各発電インバータ42、43、44の制御入力として、スレーブ発電機22、23、24の発電インバータ42、43、44の出力電圧が電圧指令値V0を超えず、なるべく電圧指令値V0に近い値になるように、各発電インバータ42、43、44が個々の電流制限を越えない範囲で個別に制御される。これにより蓄電手段90の端子電圧Vcが規定値V0になるまで充電される。(ステップ405)。
以上のように、上記第3の制御例では、第1の電源系統ユニット80Aの蓄電手段90を電源電圧安定化手段として使用し、電動車両100の負荷から電力回生があれば発電を停止し、軽負荷であればマスター発電機21の発電インバータ41だけから電流が出力されて負荷を負い、他の3つのスレーブ発電機22、23、24の発電インバータ42、43、44からは電流が出力されないため、電力ロスを極めて少なくすることができる。しかも、電動車両100が重負荷のときには、マスター発電機21の発電インバータ41に加えて他の3つのスレーブ発電機22、23、24の発電インバータ42、43、44が作動して、全発電インバータ41〜44から電流が出力されるため、重負荷に見合った必要な電力を電動モータ71〜74に供給することができる。
第1の制御例、第2の制御例、第3の制御例のいずれの場合も、第1の電源系統ユニット80Aについては、蓄電手段90が備えられているため、回生制動がかかり、蓄電手段90に電力が蓄積されるためエネルギー効率に優れ燃費を向上させることができる。
一方、第2の電源系統ユニット80Bについては、蓄電手段90を備えていないので、回生制動を行うことはできない。しかし、本発明におけるすべての電源系統には、蓄電手段の有無にかかわらずインバータの電力用半導体の動作に伴う電源波形の乱れを除去するための平滑コンデンサ(図示せず)を備えていることはいうまでもない。
第2の電源系統ユニット80Bでは、発電機25は、対応する電動モータ75のみに電力を供給し、発電機26は、対応する電動モータ76のみに電力を供給する。すなわち、発電インバータ45は規定の電圧V0を発生するように制御され、対応する駆動インバータ55は、その規定電圧V0を、対応する電動モータ75に印加するように制御される。同様に、発電インバータ46は規定の電圧V0を発生するように制御され、対応する駆動インバータ56は、その規定電圧V0を、対応する電動モータ76に印加するように制御される。
電動車両100の後輪3、4側のみならず前輪1、2側についても回生制動を行わせるための装置構成を、図19に示す。
図19は、図13の電源系統80に対応する図である。以下、図13と異なる部分について説明する。
第1の電源系統ユニット80Aには、蓄電手段91が設けられており、そのプラス端子91a、マイナス端子91bは、端子ボックス91Cに収容されている。蓄電手段91のプラスケーブル91fはプラス端子91aに電気的に接続され、プラス端子91aは、電源線(直流電源線のプラスケーブル)61、62、63、64それぞれに電気的に接続されている。蓄電手段91のマイナス端子91bは、マイナスケーブル91gを介して車体101の一点にボディアースされている。同様に、発電インバータ41、42、43、44のマイナス端子および駆動インバータ51、52、53、54のマイナス端子はそれぞれ、マイナスケーブル61a、62a、63a、64a、蓄電手段91のマイナス端子91bを介して車体101の一点にボディアースされている。
また、第2の電源系統ユニット80Bには、蓄電手段92が設けられており、そのプラス端子92a、マイナス端子92bは、端子ボックス92Cに収容されている。蓄電手段92のプラスケーブル92fはプラス端子92aに電気的に接続され、蓄電手段92のプラス端子92aは、電源線(直流電源線のプラスケーブル)65、66それぞれに電気的に接続されている。蓄電手段92のマイナスケーブル92gはマイナス端子92bに電気的に接続され、マイナスケーブル92h、蓄電手段91のマイナス端子91bを介して車体101の一点にボディアースされている。同様に、発電インバータ45、46のマイナス端子および駆動インバータ51、52、53、54のマイナス端子はそれぞれ、マイナスケーブル65a、66a、蓄電手段92のマイナス端子92b、マイナスケーブル92h、蓄電手段91のマイナス端子91bを介して車体101の一点にボディアースされている。
この図19に示す装置構成によれば、第1の電源系統ユニット80Aのみならず第2の電源系統ユニット80Bにも蓄電手段92が設けられているため、上述した第2の制御例、第3の制御例で説明したのと同様にして、第1の電源系統ユニット80Aのみならず第2の電源系統ユニット80Bについても、いずれか一台の発電機(たとえば発電機25)をマスター発電機とし、他の発電機26をスレーブ発電機として、同様のマスター・スレーブ制御を行なうことができる。
つぎに、電動モータ71〜76に対応する駆動インバータ51〜56の制御について説明する。
図20は、横軸を車速ないしは電動モータ71、72、73、74、75、76の回転数ωとし、縦軸を電動車両100で発生する牽引力、つまり電動モータ71、72、73、74、75、76で発生する各トルクを合計した全出力トルクTとした場合の両者の関係を示したトルク線図であり、等馬力となる特性のカーブTLを示している。
図20において、TL100は、各回転数ω毎に、出力し得る定格のトルク(100%トルク)を示すトルク線であり、TL50は、各回転数ω毎に、上記定格トルク(100%トルク)の50%に相当するトルクを示すトルク線である。同様にして、各Z%のトルクに相当するトルク線TLzが予め設定されているものとする。
制御装置132は、アクセルペダル131の踏込み操作量Yに比例するZ%のトルクが発生するように、各駆動インバータ51〜56を制御する。各電動モータ71〜76で発生する各トルクを合計したトルクが、Z%のトルクとなるように制御する。
図21は、駆動インバータ51〜56の制御装置の構成例を示している。
図14で前述したように、前輪1、2に対応する2つの電動モータ75、76の各回転軸75F、76Fは、連結ギヤ112により結合されている。このため2つの電動モータ75、76の各回転軸75F、76Fは、ギヤ112の働きにより同一の回転数ω1で回転する。よって、電動モータ75、76のうちいずれかをマスター電動モータ(たとえば電動モータ75)とし他をスレーブ電動モータ(電動モータ76)として、マスター電動モータ75の回転軸75Fの回転数ω1のみを検出すれば、これをスレーブ電動モータ76の回転軸76Fの回転数とみなすことができる。また、電動モータ75、76それぞれで発生するトルクを同一とすると、電動モータ75、76に配分されるトルクT1の1/2のトルクT1/2が各電動モータ75、76それぞれで発生するように駆動インバータ55、56にトルク指令を出力すればよい。
同様に、左後輪3に対応する電動モータ71、72のうちいずれかをマスター電動モータ(たとえば電動モータ71)とし他をスレーブ電動モータ(電動モータ72)として、マスター電動モータ71の回転軸71Fの回転数ω2のみを検出すれば、これをスレーブ電動モータ72の回転軸72Fの回転数とみなすことができる。また、電動モータ71、72それぞれで発生するトルクを同一とすると、電動モータ71、72に配分されるトルクT2の1/2のトルクT2/2が各電動モータ71、72それぞれで発生するように駆動インバータ51、52にトルク指令を出力すればよい。
同様に、右後輪4に対応する電動モータ73、74のうちいずれかをマスター電動モータ(たとえば電動モータ73)とし他をスレーブ電動モータ(電動モータ74)として、マスター電動モータ73の回転軸73Fの回転数ω3のみを検出すれば、これをスレーブ電動モータ74の回転軸74Fの回転数とみなすことができる。また、電動モータ73、74それぞれで発生するトルクを同一とすると、電動モータ73、74に配分されるトルクT3の1/2のトルクT3/2が各電動モータ73、74それぞれで発生するように駆動インバータ51、52にトルク指令を出力すればよい。
アクセルペダル131の踏込み操作量Yが計測されると、制御装置132に入力される。
つぎに、図20に示すトルク線図を用いて、現在のアクセルペダル131の踏込み操作量Yに対応するZ%のトルク線TLzが選択される。
つぎに、関数f1を用いて、回転数ω1、トルク線TLzに対応する所要トルクT1が演算される。
同様に、関数f2を用いて、回転数ω2、トルク線TLzに対応する所要トルクT2が演算される。
同様に、関数f3を用いて、回転数ω3、トルク線TLzに対応する所要トルクT3が演算される。
たとえば、回転数ω1、ω2、ω3が同じ回転数ω0であると仮定し、前輪1、2に対応する電動モータ75、76、左後輪3に対応する電動モータ71、72、右後輪4に対応する電動モータ73、74のそれぞれに同じ大きさのトルクが配分されるものと仮定すると、図20に示すように、トルク線TLz上の、回転数ω0に対応する出力トルク値Tzの1/3のトルクTz/3がそれぞれ、T1、T2、T3として、前輪1、2に対応する電動モータ75、76、左後輪3に対応する電動モータ71、72、右後輪4に対応する電動モータ73、74のそれぞれに配分されることになる。
こうしてトルクT1が求められると、トルクT1の1/2のトルクT1/2に応じたトルク指令が、駆動インバータ55、56それぞれに与えられ、電動モータ75、76それぞれでトルクT1/2が発生する。このようにして、前輪1、2に対応する電動モータ75、76を容易にトルク制御することができる。
同様に、トルクT2が求められると、トルクT2の1/2のトルクT2/2に応じたトルク指令が、駆動インバータ51、52それぞれに与えられ、電動モータ71、72それぞれでトルクT2/2が発生する。このようにして、左後輪3に対応する電動モータ71、72を容易にトルク制御することができる。
同様に、トルクT3が求められると、トルクT3の1/2のトルクT3/2に応じたトルク指令が、駆動インバータ53、54それぞれに与えられ、電動モータ73、74それぞれでトルクT3/2が発生する。このようにして、右後輪4に対応する電動モータ73、74を容易にトルク制御することができる。
以下、上述した第1実施例の作用効果について説明する。
電源系統80のコストについて考察する。
本実施例で想定している防災用オフロード車のような特殊車両は、一般的に大出力が要求され、たとえば、エンジン110の最大出力は300kWである。このため従来のように電源系統80を1つで構成すると、個々の発電機、電動モータ等の電気機器を1個で構成しなければならず、1つの発電機20、1つの電動モータ70には、最大出力300kWの容量が要求される。同様に、1つの発電インバータ40と、1つの駆動インバータ50には、最大出力300kWの容量が要求される。こうした大容量(300kW)の電気機器は、専用品であり新たに開発せざるを得ず、大量生産される一般自動車(ハイブリッド車)で使用される安価な小容量の電気機器を購入して使用することができない。
しかも、本実施例で想定している防災用オフロード車のような特殊車両は、年間生産量が極端に少ない。このため、大容量(300kW)の専用の電気機器を、極端に少量しか開発し生産せざるを得ず、開発費を含めると電気機器の単価は、通常の一般自動車に使用される電気機器の単価の数十倍から数百倍におよぶおそれがある。
ここで、年間生産量が極端に少ない車両では、車両に使用する部品の1個当りの容量を小さくし、車両に使用する部品を同一仕様にして共通化を図り、車両一台当りに使用される同一仕様の部品の個数を増やすことで、部品単価が下がり電源系統80のコストを低下させることができることに着目した。
上述したように、電動車両100の電源系統80を、6つの電源系統81、82、83、84、85、86に分割することで、車両に使用する発電機20の1個当りの容量を最大出力50kW(連続37kW)と小さくでき、車両に使用する発電機20の容量を同一仕様にして共通化を図り、車両一台当りに使用される同一仕様の発電機20の個数を6個に増やすことで、発電機20の部品単価を下げることができる。同様に、電動モータ70の部品単価を下げることができる。しかも、発電機20と電動モータ70は、構成する主要部品が同じであり、発電機20と電動モータ70を構成する主要部品の共通化により更に車両一台当りの同一仕様品の使用量が増加して、量産効果を更に高めることができ、更に部品単価を下げることができる。
同様にして、車両に使用される発電インバータ40を小型(最大出力50kW(連続37kW))にし車両一台当りの発電インバータ40の使用量を増加させることで、発電インバータ40の部品単価を下げることができる。同様に、車両に使用される駆動インバータ50を小型(最大出力50kW(連続37kW))にし車両一台当りの駆動インバータ50の使用量を増加させることで、駆動インバータ50の部品単価を下げることができる。しかも、発電インバータ40と駆動インバータ50は、構成する主要部品が同じであり、発電インバータ40と駆動インバータ50を構成する主要部品の共通化により、更に車両一台当りの同一仕様品の使用量が増加して、量産効果を更に高めることができ、更に部品単価を下げることができる。
また、これら電気機器を小容量にすることで、大量生産される一般自動車(ハイブリッド車)で使用される安価な小容量の電気機器を購入して使用することが可能となる。
さらに電源系統80を構成する電線、端子、コネクタ等についても電流容量が小さくなり、専用の大容量に適合した部品を使用しなくて済み、一般自動車に使用される部品を安価に購入し使用することが可能となる。
以上のように電源系統80を構成する部品を安価に大量生産できたり、一般自動車に使用されている部品を購入することが可能となるため、電源系統80のコストを引き下げることができ、これにより防災用オフロード車等の特殊な電動車両100の製造コストを引き下げることができる。
さらに、本実施例の電動車両100では、電源系統80を、6つの電源系統81、82、83、84、85、86に分割することで、電源系統80の冗長化、多重化を図っている。上述した部品の小型化、使用量増加に加えて、本実施例によれば、冗長化、多重化により電源系統80の故障に対する信頼性が高まるため、個々の部品にコストをかけて開発する必要がなくなり、更に部品単価を上げることができる。
すなわち、本第1実施例では、図13に示すように、複数(2つ)の電源系統85、886が連動駆動軸11に並列に連結されている。このため、本第1実施例によれば、いずれかの電源系統、たとえば電源系統85で電源線65が短絡する故障が起きたり、発電インバータ45、駆動インバータ55の故障が起きたりして、この電源系統85の電動モータ75に電力が供給されなくなり、電源系統85の電動モータ75によって連動駆動軸11の左右の駆動輪1、2が駆動されなくなったとしても、この電源系統85とは独立した他の電源系統86の電動モータ76には故障なく電力が供給されるので、この電源系統86の電動モータ76によって連動駆動軸11の左右の駆動輪1、2が確実に駆動される。これにより電動車両100が走行不能に陥る事態を回避できる。
一方、独立駆動軸12の左右の駆動輪3、4に連結される複数(4つ)の電源系統81、82、83、84の電源線61、62、63、64には、共通の蓄電手段90であって、電力を蓄える蓄電手段90が電気的に接続されている。本第1実施例によれば、複数の電源系統81、82、83、84に蓄電手段90を設ける場合に蓄電手段90を複数の電源系統81、82、83、84で共通のものとすることができ、部品の共通化により電源系統80のコストを更に低減させることができる。
また電源線61、62、63、64で短絡等の動力系統が遮断される重い故障が起きない限り、複数の電源系統81、82、83、84のうちいずれかの電源系統(たとえば電源系統81)でインバータの制御系が停止するなどの軽い故障が発生した場合でも他の電源系統82、83、84によって独立駆動軸12の左右車輪3、4の駆動が確保される。これにより電動車両100が走行不能に陥る事態を回避できる。
以上のとおり、4輪駆動の電動車両100の電源系統で故障が発生したとしても、故障の仕方にもよるが全輪の駆動が確保される。また最悪の故障でも、少なくとも1つの車軸11または12のうちどちらか一方の駆動が確保される。これにより電動車両100が走行不能になる事態を回避でき、電源系統80の信頼性を飛躍的に向上させることができる。よって、従来のように、1つしかない電源系統80の個々の部品について、十分にコストをかけて、信頼性高く設計し、生産することが不用になり、上述した部品の小型化、使用量増加による部品単価低下と相まって、更に部品単価を低下させることができる。
このように本第1実施例によれば、防災用オフロード車をシリーズハイブリッド電気自動車で構成した場合に、電源系統80の機能を維持した状態で安定に走行できる状況を保証しつつ、電源系統80のコストを引き下げることができる。
第1実施例で説明した電源系統80と車軸、駆動輪との関係は、一例であり、以下に説明するように、上記関係を種々変形した実施が可能である。
(第2実施例)
図2は、第2実施例の電動車両100を示す。
同図2に示す電動車両100は、2つの車軸11、12が備えられた4輪車である。
2つの車軸11、12のうち少なくとも1つの車軸12は、左右の駆動輪3、4が連動して駆動される連動駆動軸として構成されている。
電源系統80は、2つの電源系統81、82からなる。2つの電源系統81、82は、連動駆動軸12に並列に連結されている。
このため、一方の電源系統81で電源線60が短絡する故障が起きたり、発電インバータ40、駆動インバータ50の故障が起きたりして、この電源系統81の電動モータ70に電力が供給されなくなり、電源系統81の電動モータ70によって連動駆動軸12の左右の駆動輪3、4が駆動されなくなったとしても、この電源系統81とは独立した他の電源系統82の電動モータ70には故障なく電力が供給されるので、この電源系統82の電動モータ70によって連動駆動軸12の左右の駆動輪3、4が確実に駆動される。これにより電動車両100が走行不能に陥る事態を回避できる。
図2では、4輪車を想定したが、3つ以上の車軸を備えた6輪車、8輪車等に適用してもよい。その場合、3つ以上の車軸のうち少なくとも1つの車軸が連動駆動軸であって、その連動駆動軸に、複数(2つ以上)の電源系統が並列に連結されていればよい。
(第3実施例)
図3は、第3実施例の電動車両100を示す。
同図3に示す電動車両100は、2つの車軸11、12が備えられ、電動モータ70の作動に応じて駆動輪1、2、3、4が駆動される4輪車である。
2つの車軸11、12は、左右の駆動輪が連動して駆動される連動駆動軸として構成されている。
電源系統80は、2つの電源系統81、82からなる。2つの連動駆動軸11、12のそれぞれには、異なる電源系統81、82が連結されている。
このため、電源系統81で電源線60が短絡する故障が起きたり、発電インバータ40、駆動インバータ50の故障が起きたりして、この電源系統81の電動モータ70に電力が供給されなくなり、電源系統81の電動モータ70によって連動駆動軸11の左右の駆動輪1、2が駆動されなくなったとしても、この電源系統81とは独立した他の電源系統82の電動モータ70には故障なく電力が供給されるので、この電源系統82の電動モータ70によって他の連動駆動軸12の左右の駆動輪3、4が確実に駆動される。これにより車両100が走行不能に陥る事態を回避できる。
図3では、4輪車を想定したが、3つ以上の車軸を備えた6輪車、8輪車等に適用してもよい。その場合、3つ以上の車軸のうち少なくとも2つの車軸が連動駆動軸であって、その少なくとも2つの連動駆動軸のそれぞれに、異なる電源系統が連結されていればよい。
(第4実施例)
図4は、第4実施例の電動車両100を示す。
同図4に示す電動車両100は、2つの車軸11、12が備えられた4輪車である。
2つの車軸11、12のうち少なくとも1つの車軸12は、左右の駆動輪3、4が独立して駆動される独立駆動軸として構成されている。
電源系統80は、4つの電源系統81、82、83、84からなる。
独立駆動軸12の左駆動輪3には、2つの電源系統81、82が並列に連結され、独立駆動軸12の右駆動輪4には、電源系統81、82とは異なる2つの電源系統83、84が並列に連結されている。
このため、たとえば左駆動輪3の電源系統81で電源線60が短絡する故障が起きたり、発電インバータ40、駆動インバータ50の故障が起きたりして、この電源系統81の電動モータ70に電力が供給されなくなり、電源系統81の電動モータ70によって左駆動輪3が駆動されなくなったとしても、この電源系統81とは独立した他の電源系統82の電動モータ70には故障なく電力が供給されるので、この電源系統82の電動モータ70によって左駆動輪3が確実に駆動される。同様にして電源系統83が故障したとしても他の電源系統84によって右駆動輪4が確実に駆動される。これにより独立駆動軸12の左右車輪3、4の駆動が確保され車両100が走行不能に陥る事態を回避できる。
図4では、4輪車を想定したが、3つ以上の車軸を備えた6輪車、8輪車等に適用してもよい。その場合、3つ以上の車軸のうち少なくとも1つの車軸が独立駆動軸であって、その少なくとも1つの独立駆動軸の左右の駆動輪のそれぞれに、異なる複数の電源系統が並列に連結されていればよい。
(第5実施例)
図5は、第5実施例の電動車両100を示す。
同図5に示す電動車両100は、2つの車軸11、12が備えられ、電動モータ70の作動に応じて駆動輪1、2、3、4が駆動される4輪車である。
本実施例では、第3実施例と同様に、2つの連動駆動軸11、12のそれぞれに、異なる電源系統81、82、83が連結された上で、第2実施例と同様に、1つの連動駆動軸12に、2つの電源系統82、83が並列に連結されている。
よって本第5実施例によれば、第3実施例と同様の作用効果に加えて、第2実施例と同様の作用効果が得られる。さらに本第5実施例によれば、連動駆動軸12に並列に連結された2つの電源系統82、83のいずれかの電源系統(たとえば電源系統82)で故障が発生した場合には他の電源系統83によって連動駆動軸12の左右車輪3、4の駆動が確保される。これにより電動車両100の2つの連動軸11、12の全輪11、12、13、14の駆動を維持することが可能となり、4輪駆動車の機能を維持できる。
図5では、4輪車を想定したが、3つ以上の車軸を備えた6輪車、8輪車等に適用してもよい。
(第6実施例)
図6は、第6実施例の電動車両100を示す。
同図6に示す電動車両100は、2つの車軸11、12が備えられ、電動モータ70の作動に応じて駆動輪1、2、3、4が駆動される4輪車である。
本実施例では、図6に示すように、第2実施例と同様に、2つの電源系統85、86が連動駆動軸11に並列に連結された上で、第4実施例と同様に、2つの車軸11、12のうち1つの車軸12が、左右の駆動輪3、4が独立して駆動される独立駆動軸として構成されており、独立駆動軸12の左駆動輪3には、2つの電源系統81、82が並列に連結され、独立駆動軸12の右駆動輪4には、電源系統81、82とは異なる2つの電源系統83、84が並列に連結されている。
本第6実施例によれば、第2実施例と同様の作用効果に加えて、第4実施例と同様の作用効果が得られる。さらに本第6実施例によれば、連動駆動軸11のいずれかの電源系統(たとえば電源系統85)で故障が発生したり、独立駆動軸12のいずれかの電源系統(たとえば電源系統81)で故障が発生したとしても、連動駆動軸11の左右車輪1、2の駆動および独立駆動軸12の左右車輪3、4の駆動が確保される。これにより電動車両100の2つの連動軸11、12の全輪11、12、13、14の駆動を維持することが可能となり、4輪駆動車の機能を維持できる。
図6では、4輪車を想定したが、3つ以上の車軸を備えた6輪車、8輪車等に適用してもよい。
(第7実施例)
上述した第2実施例ないし第6実施例において、複数の電源系統のうち、少なくとも1つの電源系統に、蓄電手段90を含ませるように構成することができる。
たとえば、図2に示す第1実施例において、2つの電源系統81、82のうち、少なくとも1つの電源系統、たとえば電源系統81,82に、蓄電手段90を含ませることができる。本第7実施例によれば、蓄電手段90によって電源線60に供給される電源電圧を一定に保つ制御が容易になり、安定した一定範囲の電圧を電動モータ70に印加することができるようになる。また電動車両100でブレーキがかかったときに制動トルクが発生すると、駆動インバータ50は電動モータ70を減速させるために回生制動をかける。このとき電動車両100の運動エネルギーが電力に変換されて、電源線60の電圧値が上昇するとともに、電力が蓄電手段90に蓄積される。このように本第7実施例によれば、回生制動をかけることができ、蓄電手段90に電力が蓄積されるためエネルギー効率に優れ燃費を向上させることができる。
(第8実施例)
上述した第2実施例、第5実施例、第6実施例において、連動駆動軸に並列に連結される複数の電源系統の電源線に、共通の蓄電手段90を電気的に接続させることができる。
たとえば、図7に示すように、連動駆動軸12に並列に連結される複数の電源系統85、86の電源線65、66に、共通の蓄電手段90を電気的に接続させることができる。
本第8実施例によれば、上述した第7実施例と同様の効果が得られる。さらに、本第8実施例によれば、複数の電源系統85、86に蓄電手段90を設ける場合に蓄電手段90を複数の電源系統85、86で共通のものとすることができ、部品の共通化により電源系統80のコストを更に低減させることができる。また電源線65、66で短絡等の故障が起きない限り、いずれかの電源系統(たとえば電源系統85)で故障が発生した場合でも他の電源系統86によって連動駆動軸11の左右車輪1、2の駆動が確保される。
なお、図7に示す電動車両100において、独立駆動軸12の左右の駆動輪3、4に連結される4つの電源系統81、82、83、84の各電源線に、共通の蓄電手段90を電気的に接続させた構成のものが、前述の第1実施例(図19)に相当する。
(第9実施例)
上述した第4実施例、第6実施例において、独立駆動軸の左右の駆動輪に連結される複数の電源系統の電源線に、共通の蓄電手段90を電気的に接続させることができる。
たとえば、図8に示すように、独立駆動軸12の左右の駆動輪3、4に連結される複数の電源系統81、82、83、84の電源線61、62、63、64に、共通の蓄電手段90を電気的に接続させることができる。
本第9実施例によれば、複数の電源系統81、82、83、84に蓄電手段90を設ける場合に蓄電手段90を複数の電源系統81、82、83、84で共通のものとすることができ、部品の共通化により電源系統80のコストを更に低減させることができる。また電源線61、62、63、64で短絡等の故障が起きない限り、いずれかの電源系統(たとえば電源系統81)で故障が発生した場合でも他の電源系統82、83、84によって連動駆動軸12の左右車輪3、4の駆動が確保される。
(第10実施例)
図9は、第10実施例の電動車両100を示す。
同図9に示す電動車両100は、2つの車軸11、12が備えられ、電動モータ70の作動に応じて左右の駆動輪1、2、3、4が駆動される4輪車である。
前側車軸11、後側車軸12は、連動駆動軸で構成されている。さらに前側車軸11と後側車軸12は、連動して駆動されるように、機械的に連結されている。
電源系統80は、2つの電源系統81、82からなる。2つの電源系統81、82は、前側車軸11、後側車軸12からなる連動駆動軸に並列に連結されている。
本第10実施例によれば、いずれかの電源系統(たとえば電源系統81)で故障が発生したとしても、4輪駆動車両100の全車輪1、2、3、4の駆動を確保することができ、4輪駆動車両100の機能を維持できる。
図9では、4輪車を想定したが、3つ以上の車軸を備えた6輪車、8輪車等に適用してもよい。
(第11実施例)
第11実施例の電動車両100は、図10に示すように、2つの車軸11、12が備えられ、電動モータ71、72、73、74の作動に応じて駆動輪1、2、3、4が駆動される4輪車である。
2つの車軸11、12は、連動駆動軸として構成されている。
電源系統80は、第1の電源系統ユニット80A、第2の電源系統ユニット80Bからなる。第1の電源系統ユニット80Aは、複数の電源系統81、82からなり、第2の電源系統ユニット80Bは、2つの電源系統83、84からなる。電源系統81、82は、連動駆動軸12に並列に連結され、電源系統83、84は、連動駆動軸11に並列に連結されている。
電源系統81、82の各電源線61、62には、共通の蓄電手段91が電気的に接続されている。同様に、電源系統83、84の各電源線63、64には、共通の蓄電手段92が電気的に接続されている。
なお、電源系統81、82の発電機21、22を、1つの発電機で構成してもよく、同様に、電源系統83、84の発電機23、24を、1つの発電機で構成してもよい。なお、その場合でも、発電機1つづつに、発電機の交流出力を直流電力に変換する発電インバータを1つ設ける。
(第12実施例)
第12実施例の電動車両100は、図11(a)に示すように、3つの車軸11、12、13が備えられ、電動モータ70の作動に応じて駆動輪1、2、3、4、5、6が駆動される6輪車である。
3つの車軸、つまり第1車軸11、第2車軸12、第3車軸13は、連動駆動軸として構成されている。
電源系統80は、第1の電源系統ユニット80A、第2の電源系統ユニット80B、第3の電源系統80Cからなる。第1の電源系統ユニット80Aは、電源系統81からなり、第2の電源系統ユニット80Bは、電源系統82からなり、第3の電源系統80Cは、電源系統83からなる。電源系統81は、連動駆動軸13に連結され、電源系統82は、連動駆動軸12に連結され、電源系統83は、連動駆動軸11に連結されている。
図11(a)では、第1の電源系統ユニット80A、第2の電源系統ユニット80B、第3の電源系統80Cを構成する電源系統をそれぞれ1個とし、各連動駆動13、12、11が1個の発電機、1個の電動モータによって駆動されるようにしているが、第1の電源系統ユニット80A、第2の電源系統ユニット80B、第3の電源系統80Cのうちいずれか1つ、またはいずれか2つ、またはすべてを構成する電源系統を複数個とし、連動駆動軸13、12、11のうちいずれか1つ、またはいずれか2つ、またはすべてを複数個の発電機、複数個の電動モータによって駆動されるように構成してもよい。
また、図11(a)では、第1車軸11、第2車軸12、第3車軸13を連動駆動軸としているが、第1車軸11、第2車軸12、第3車軸13のうちいずれか1つ、またはいずれか2つ、またはすべてを独立駆動軸として、左右の駆動輪を異なる電動モータで駆動するようにしてもよい。この場合、1駆動輪当り、2以上の電動モータによって駆動されるように構成することが望ましい。
(第13実施例)
第13実施例の電動車両100は、図11(b)に示すように、3つの車軸11、12、13が備えられ、電動モータ70の作動に応じて駆動輪1、2、3、4、5、6が駆動される6輪車である。
3つの車軸、つまり第1車軸11、第2車軸12、第3車軸13は、連動駆動軸として構成されている。
電源系統80は、第1の電源系統ユニット80A、第2の電源系統ユニット80Bからなる。第1の電源系統ユニット80Aは、電源系統81からなり、第2の電源系統ユニット80Bは、電源系統82、83からなる。電源系統81は、連動駆動軸13に連結され、電源系統82は、連動駆動軸12に連結され、電源系統83は、連動駆動軸11に連結されている。
電源系統82、83の各電源線62、63には、共通の蓄電手段90が電気的に接続されている。
図11(b)では、第1の電源系統ユニット80Aを構成する電源系統を1個とし、連動駆動13が1個の発電機、1個の電動モータによって駆動されるようにしているが、第1の電源系統ユニット80Aを構成する電源系統を複数個とし、連動駆動軸13を複数個の発電機、複数個の電動モータによって駆動されるように構成してもよい。
また、第2の電源系統ユニット80Bを構成する電源系統を複数個とし、連動駆動軸12、11が個々に1個の発電機、1個の電動モータによって駆動されるように構成しているが、第2の電源系統ユニット80Bを構成する電源系統を1個として、両連動駆動12、11併せて1個の発電機、1個の電動モータによって駆動されるように構成してもよい。
また、図11(b)では、第1車軸11、第2車軸12、第3車軸13を連動駆動軸としているが、第1車軸11、第2車軸12、第3車軸13のうちいずれか1つ、またはいずれか2つ、またはすべてを独立駆動軸として、左右の駆動輪を異なる電動モータで駆動するようにしてもよい。この場合、1駆動輪当り、2以上の電動モータによって駆動されるように構成することが望ましい。
(第14実施例)
第14実施例の電動車両100は、図12(a)に示すように、4つの車軸11、12、13、14が備えられ、電動モータ70の作動に応じて駆動輪1、2、3、4、5、6、7、8が駆動される8輪車である。
4つの車軸、つまり第1車軸11、第2車軸12、第3車軸13、第4車軸は、連動駆動軸として構成されている。
電源系統80は、第1の電源系統ユニット80A、第2の電源系統ユニット80B、第3の電源系統80C、第4の電源系統80Cからなる。第1の電源系統ユニット80Aは、電源系統81からなり、第2の電源系統ユニット80Bは、電源系統82からなり、第3の電源系統80Cは、電源系統83からなり、第4の電源系統80Dは、電源系統84からなる。電源系統81は、連動駆動軸14に連結され、電源系統82は、連動駆動軸13に連結され、電源系統83は、連動駆動軸12に連結され、電源系統84は、連動駆動軸11に連結されている。
図12(a)では、第1の電源系統ユニット80A、第2の電源系統ユニット80B、第3の電源系統80C、第4の電源系統80Dを構成する電源系統をそれぞれ1個とし、各連動駆動14、13、12、11が1個の発電機、1個の電動モータによって駆動されるようにしているが、第1の電源系統ユニット80A、第2の電源系統ユニット80B、第3の電源系統80C、第4の電源系統80Dのうちいずれか1つ、またはいずれか2つ、またはいずれか3つ、またはすべてを構成する電源系統を複数個とし、連動駆動軸14、13、12、11のうちいずれか1つ、またはいずれか2つ、またはいずれか3つ、またはすべてを複数個の発電機、複数個の電動モータによって駆動されるように構成してもよい。
また、図12(a)では、第1車軸11、第2車軸12、第3車軸13、第4車軸を連動駆動軸としているが、第1車軸11、第2車軸12、第3車軸13、第4車軸のうちいずれか1つ、またはいずれか2つ、またはいずれか3つ、またはすべてを独立駆動軸として、左右の駆動輪を異なる電動モータで駆動するようにしてもよい。この場合、1駆動輪当り、2以上の電動モータによって駆動されるように構成することが望ましい。
(第15実施例)
第15実施例の電動車両100は、図12(b)に示すように、4つの車軸11、12、13、14が備えられ、電動モータ70の作動に応じて駆動輪1、2、3、4、5、6、7、8が駆動される6輪車である。
4つの車軸、つまり第1車軸11、第2車軸12、第3車軸13、第4車軸14は、連動駆動軸として構成されている。
電源系統80は、第1の電源系統ユニット80A、第2の電源系統ユニット80Bからなる。第1の電源系統ユニット80Aは、電源系統81、82からなり、第2の電源系統ユニット80Bは、電源系統83、84からなる。電源系統81は、連動駆動軸14に連結され、電源系統82は、連動駆動軸13に連結され、電源系統83は、連動駆動軸12に連結され、電源系統84は、連動駆動軸11に連結されている。
電源系統81、82の各電源線61、62には、共通の蓄電手段91が電気的に接続されており、同様に、電源系統83、84の各電源線63、64には、共通の蓄電手段92が電気的に接続されている。
図12(b)では、第1の電源系統ユニット80Aを構成する電源系統を複数個とし、連動駆動軸14、13が個々に1個の発電機、1個の電動モータによって駆動されるように構成しているが、第1の電源系統ユニット80Aを構成する電源系統を1個として、両連動駆動14、13併せて1個の発電機、1個の電動モータによって駆動されるように構成してもよい。なお、本発明では、発電機1つづつに発電インバータ1つが対応し、電動モータ1つづつに駆動インバータ1つが対応して電源系統を構成することは今まで述べたとおりである。
また、図12(b)では、第2の電源系統ユニット80Bを構成する電源系統を複数個とし、連動駆動軸12、11が個々に1個の発電機、1個の電動モータによって駆動されるように構成しているが、第2の電源系統ユニット80Bを構成する電源系統を1個として、両連動駆動12、11併せて1個の発電機、1個の電動モータによって駆動されるように構成してもよい。
また、図12(b)では、第1車軸11、第2車軸12、第3車軸13、第4車軸14を連動駆動軸としているが、第1車軸11、第2車軸12、第3車軸13、第4車軸14のうちいずれか1つ、またはいずれか2つ、またはいずれか3つ、またはすべてを独立駆動軸として、左右の駆動輪を異なる電動モータで駆動するようにしてもよい。この場合、1駆動輪当り、2以上の電動モータによって駆動されるように構成することが望ましい。
以上のように述べた各実施例によれば、防災用オフロード車をシリーズハイブリッド電気自動車で構成した場合に、電源系統80の機能を維持した状態で安定に走行できる状況を保証しつつ、電源系統80のコストを引き下げることができるようになる。
(第16実施例)
図22は、全ての車輪にそれぞれ独立した電動モータが備えられた電動車両100を示している。このような電動車両100を、本明細書では「インホイールモータ」タイプの電動車両と呼ぶものとする。すなわち、車輪とそれを駆動するモータが一対一に対応している場合には、モータを車輪の内側に格納する形式だけでなく、車輪の外に設ける形式をも総称して本願においてはこのように呼ぶものとする。
本実施例では、かかる「インホイールモータ」タイプの電動車両に、前述の第1実施例ないし第15実施例で説明した発明を適用したものである。
図22に示す第16実施例の電動車両100は、2つの車軸11、12が備えられた4輪車である。
車軸11は、左右の駆動輪1、2が独立して駆動される独立駆動軸として構成されているともに、車軸12は、左右の駆動輪3、4が独立して駆動される独立駆動軸として構成されている。
電源系統80は、2つの電源系統81、82からなる。電源系統81、82は、各独立駆動軸11、12毎に、設けられている。電源系統81は、発電機21と、発電インバータ41と、駆動インバータ51、52と、発電インバータ41と駆動インバータ51、52とを電気的に接続する電源線61と、駆動インバータ51、52それぞれに電気的に接続された電動モータ71、72とを含んで構成されている。電動モータ71、72はそれぞれ左右の駆動輪(前輪)1、2に連結されている。また、電源系統82は、発電機22と、発電インバータ42と、駆動インバータ53、54と、発電インバータ42と駆動インバータ53、54とを電気的に接続する電源線62と、駆動インバータ53、54それぞれに電気的に接続された電動モータ73、74とを含んで構成されている。電動モータ73、74はそれぞれ左右の駆動輪(後輪)3、4に連結されている。このように独立駆動軸11の左右の駆動輪1、2のそれぞれには、電源系統81を構成する電動モータ71、72が個別に連結されているとともに、独立駆動軸12の左右の駆動輪3、4のそれぞれには、電源系統82を構成する電動モータ73、74が個別に連結されている。
このため、たとえば前輪1、2の電源系統81で電源線61が短絡する故障が起きたり、発電インバータ41、駆動インバータ51、52で故障が起きたりして、この電源系統81の電動モータ71あるいは72に電力が供給されなくなり、電源系統81の電動モータ71、72によって前輪の左駆動輪1あるいは右駆動輪2あるいは両駆動輪1、2が駆動されなくなったとしても、この電源系統81とは独立した他の電源系統82の電動モータ73、74には故障なく電力が供給されるので、この電源系統82の電動モータ73、74によって後輪3、4が確実に駆動される。同様にして電源系統82が故障したとしても他の電源系統81によって前輪1、2が確実に駆動される。これにより独立駆動軸11、12の少なくとも一方の左右車輪1、2あるいは3、4の駆動が確保され車両100が走行不能に陥る事態を回避できる。
図22では、4輪車を想定したが、3つ以上の車軸を備えた6輪車、8輪車等に適用してもよい。その場合、3つ以上の車軸11、12、13…のすべてが独立駆動軸として構成されており、電源系統81、82、83…は、各独立駆動軸11、12、13毎に、設けられており、独立駆動軸11、12、13…の左右の駆動輪1、2、3、4、5、6…のそれぞれに、電源系統81、82、83…を構成する電動モータ71、72、73、74、75、76…が個別に連結されていればよい。
ところで、防災用オフロード車は、災害救援のみならず、多目的な活用が要求される。このため仕様によっては、走行駆動系のみならず種々の補機(電源負荷)が車体に追加搭載されることになる。しかも、防災用オフロード車に搭載される補機は、エンジンの出力の20〜30%を超える大容量の電源負荷であり、それによって走行性能が低下したり、走行が不能になることが予測される。ここで、大容量の補機とは、通信機材、投光機、路外の不整地でトレーラをモータで駆動するために追加される駆動用インバータなどである。
この場合、追加される補機に合わせて、エンジン、発電機などを大容量量化し大型化して基本的な仕様を変更すれば、走行性能を損なわずに補機を作動させることができる。しかし、防災用オフロード車は、前述したように用途毎に仕様が異なる少量多品種生産の車両であり、量産効果は期待できない。すなわち、補機の有無、搭載される補機の種類に合わせて、エンジンや発電機などの基本的な仕様を変更すると、車両の製造コストが飛躍的に増加することになる。したがって、このような対処方法は避けなければならない。
また、上述の特殊な用途、例えば災害救援、通信業務を想定して、車両に予め補機(災害救援用の給水ポンプ、通信機材)を搭載しておくことは、車両の重量の増加を招くとともに、補機を使用しないときの車内の場積が狭まるという問題が発生する。また、補機を追加する際に取り扱いが容易で、簡易に装着したいとの要請がある。
また、防災用オフロード車は、エンジンを稼動させないで長時間走行することがある。たとえば、トンネル内を走行するときや夜間に走行するときであり、このような状況では、エンジンの稼動を停止して、排気ガスやエンジンの騒音を全く発生させないで走行させたいとの要請がある。この場合、補機は、車両に搭載された発電手段によって作動させる必要がある。しかし、トンネル内走行や夜間走行などの特殊な任務を想定して、予め大容量の発電手段を車両に搭載することは、車両の重量の増加を招くとともに、蓄電手段を使用しないときの車内の場積が狭まるという問題が発生する。また、蓄電手段を装着する際に取り扱いが容易で、簡易に装着したいとの要請がある。
以下では、かかる要請に応えるための実施例について説明する。
(第17実施例)
図23は、第17実施例の電動車両100を示している。
本実施例の電動車両100は、第16実施例と同様の「インホイールモータ」タイプの電動車両である。
同図23に示すように、2つの車軸11、12が備えられ、電動モータ71、72、73、74の作動に応じて左右の駆動輪1、2、3、4が駆動されるものである。
電動車両100には、発電機21と、発電インバータ41と、駆動インバータ51、52と、発電インバータ41と駆動インバータ51、52とを電気的に接続する電源線61と、駆動インバータ51、52それぞれに電気的に接続された電動モータ71、72とを含み、エンジン110の動力を電気エネルギーに変換して電動モータ71、72を作動させる第1の電源系統81と、発電機22と、発電インバータ42と、駆動インバータ53、54と、発電インバータ42と駆動インバータ53、54、55とを電気的に接続する電源線62と、駆動インバータ51、52それぞれに電気的に接続された電動モータ73、74とを含み、エンジン110の動力を電気エネルギーに変換して電動モータ73、74を作動させる第2の電源系統82とが設けられている。第1の電源系統81によって前輪1、2が駆動され、第2の電源系統82によって後輪3、4が駆動される。
かかる図23の電動車両100では、図22に示す構成の電動車両100(これを標準仕様と呼ぶ)にトレーラ199が追加されているとともに、第2の電源系統82に、トレーラ199を駆動するための補機(電源負荷)として駆動インバータ55と電動モータ75が追加されている。
電源ブリッジ210は、2つの電源系統81、82間に電気的に接続されており、一方の電源系統81から他方の電源系統82に電力を供給する。
ここで、本明細書における「電源ブリッジ」とは、任意の2つの直流電源系統の間で供給される電力量を電子的に調整する機能を有する装置のことである。このため、例えば、開閉器やブレーカのように機械的な接点を介して2つの直流電源系統を電気的に直結して両電源系統間の電圧を強制的かつ厳密に等しくするものは除かれる。仮に、機械的な接点で電源系統同士を繋ぐと両電源系統の電圧が連動してしまい、片方の電源系統が地絡したり過剰なサージが発生するなどの故障が起きた場合に、異常のない電源系統にも悪影響が及ぶことがあるからである。また、機械的な接点では、制御系に組み込んで高頻度で作動させることによって接点自体が磨耗して劣化し、あるいは重故障時に瞬時に切り離せなくなることが懸念される、そのため本願では、具体的には、電子回路で構成した直流電圧変換器(例えばDC−DCコンバータ)を電源ブリッジとして2つの電源系統の間に介在させることにより、両電源系統の電圧を強制的に合致させることなく、かつ電圧が急変しないように、所要の電力を少なくとも一方の電源系統側に供給できるようなものを使用する。
電源ブリッジ210は、下記の公知のものを使用することができる。
・ 2つの電源系統81、82間で特定の一方向のみ、例えば図23において電源系統81から補機(駆動インバータ55、電動モータ75)が追加された電源系統82に電力を供給する場合には、公知の片方向のみに電力を変換して供給できる片方向DC−DCコンバータを用いて、電源ブリッジ210を構築することができる。
・ 2つの電源系統81、82間で双方向に電力を供給する場合には、公知の双方向に電力を変換して供給できる双方向DC−DCコンバータを用いたり、上記の片方向DC−DCコンバータが互いに逆向きになるように、2つの電源系統81、82間に2つの片方向DC−DCコンバータを接続することで、電源ブリッジ210を構築することができる。
・ また、DC−DCコンバータの代わりに、開閉自在で通電時に明確な電圧降下を生ずるスイッチング素子とリアクトル等を使用して電源回路を構成し、2つの電源系統を厳密に等電位にすることを避けながら、重故障時には2つの電源系統を瞬時に切り離せるようにして、これを電源ブリッジ210とすることもできる。
制御手段310は、一方の電源系統81に比べて他方の電源系統82で電力が不足している場合に、一方の電源系統81から他方の電源系統82に電力が供給されるように電源ブリッジ210を制御する。具体的には、2つの電源系統81、82の一方の電源系統で電力が過剰になったことを検出するともに、他方の電源系統で電力が不足していることを検出し、かかる電源系統の負荷のアンバランスが発生した場合に、電力が過剰になっている電源系統から電力が不足している電源系統に向けて電源ブリッジ210を介して電力が供給されるように電源ブリッジ210を制御するものである。
ただし、2つの電源系統81、82で消費される瞬時の電力消費量の合計が、2つの電源系統81、82の発電能力(定格出力)を超えないことが必要であり、その条件を満たす限り、2つの電源系統81、82のアンバランスを調整することができる。
つぎに本実施例の作用効果について説明する。
図23の電動車両100は、上述したように、標準仕様の電動車両100にトレーラ199が追加されるとともに、第2の電源系統82に、トレーラ199を駆動するための補機(電源負荷)として駆動インバータ55と電動モータ75が追加された車両である。ここで、電動モータ75の定格出力を20kWとする。
ここで比較例として図22に示す標準仕様の電動車両100を挙げる。この図22に示す電動車両100は、図23に示す電動車両100から、本発明の電源ブリッジ210および制御手段310を取り除いた構成の車両である。
電動車両100は、標準仕様でエンジン110の最大出力が100kWで、発電機21、22の定格出力がそれぞれ50kWであるとする。また標準仕様でエンジン110の最大出力の80%の電力(80kW)が駆動輪1、2、3、4の電動モータ71、72、73、74に供給されると全速力で登坂が可能であるとする。
標準仕様の電動車両100では、トレーラ199がないため、電動車両100が坂道を全力で登坂しているとき、第1の電源系統81においてエンジン110、発電機21を介して前輪1、2の電動モータ71、72にそれぞれ20kW、合計で40kWの電力が供給され、第2の電源系統82においてエンジン110、発電機22を介して後輪3、4の電動モータ73、74にそれぞれ20kW、合計で40kWの電力が供給される。このとき第1の電源系統81、第2の電源系統82それそれで10kWづつ、合計で20kWの電力の余裕がある。
しかし、標準仕様の電動車両100に、20kWのトレーラ199を電動車両100に繋ぎ、第2の電源系統82に、トレーラ199を駆動するために、20kWに相当する駆動インバータ55と電動モータ75を接続したとすると、電動車両100が全速力で登坂しようとするときに、第2の電源系統82では、10kWの過負荷になってしまう。なお、このとき第1の電源系統81には、10kWの電力の余裕がある。このため第2の電源系統82で電圧が急低下するなどの動作不安定が起きるおそれがある。さらには第2の電源系統82で後輪3、4側の電動モータ73、74に電力を安定して供給することができなくなるおそれがある。例えば滑りやすい状況にある登り坂では、前輪1、2がスリップするため後輪3、4で車両全体で発生する駆動力のうち過半数の駆動力を負担しなければならない。上述のように後輪3、4側の第2の電源系統82が過負荷のために後輪3、4側の電動モータ73、74に電力を安定して供給できなくなると、後輪3、4側の電動モータ73、74で登坂に必要な駆動力が得られなくなり、電動車両100が登坂できなくなる事態が予測される。
これに対して、本実施例の電動車両100では、上述したトレーラ199が繋がれて登坂走行をしている状況下で、一方の電源系統81(10kWの余裕)に比べて他方の電源系統82(10kWの過負荷)で電力が不足している場合に、10kWの余裕のある一方の電源系統81から、10kWの過負荷の他方の電源系統82に、不足分の電力10kWが供給される。このため後輪3、4側の第2の電源系統82で電力が充足され、後輪3、4側の電動モータ73、74に電力が安定して供給されるようになり、後輪3、4側の電動モータ73、74で登坂に必要な駆動力が得られ、電動車両100は全速力で登坂することができるようになる。
以上のように、本実施例によれば、大容量の補機(駆動インバータ55、電動モータ75)が一方の電源系統82に接続された場合によって生じる両電源系統81、82間の負荷のアンバランスが抑制され、大容量の補機が追加されたとしても必要十分な駆動力が得られ、電動車両100の機能を維持することができる。
また、電動車両100のエンジン110の最大出力、発電機21、22の定格出力を変更するなど、エンジン、発電機などの基本的な仕様を変更する必要はない。このため本第1発明によれば、防災用オフロード車をシリーズハイブリッド電気自動車で構成した場合に、エンジン、発電機などの基本的な仕様を変更することなく、しかも上述したように走行性能を損なうことなく、大容量の補機を作動させることができるようになる。
また、電源ブリッジ210は、2つの電源系統81、82間で特定の一方向のみ、例えば図23に示すように、電源系統81から補機(駆動インバータ55、電動モータ75)が追加された電源系統82に電力を供給するように構成することができる。片方の電源系統だけが電力不足に陥るような場合に適用して好適であり、安価な回路構成とすることができる。
また、電源ブリッジ210は、2つの電源系統81、82間で双方向に電力を供給するように構成することができる。この実施例によれば、2つの電源系統81、82のうちいずれか一方の電源系統81(82)が過負荷となり電力が不足している場合に、他方の電力に余裕のある電源系統82(81)から電力を、過負荷の電源系統81(82)に供給することができる。双方の電源系統81、82のいずれもが状況次第で電力不足に陥る可能性がある場合に適用して好適であり、電源全体の安定性を向上させることができる。
なお、この第17実施例では、第16実施例と同様の「インホイールモータ」タイプの電動車両100に適用される場合を想定して説明したが、前述の第1実施例ないし第15実施例で掲げた構成の電動車両100に適用する実施も当然に可能である。
(第18実施例)
図24は、第18実施例の電動車両100を示す。
同図24に示す電動車両100は、2つの車軸11、12が備えられ、電動モータ71、72の作動に応じて駆動輪1、2、3、4が駆動される4輪車である。
2つの車軸11、12は、左右の駆動輪が連動して駆動される連動駆動軸として構成されている。
電源系統80は、2つの電源系統81、82からなる。2つの連動駆動軸11、12のそれぞれには、異なる電源系統81、82が連結されている。
すなわち、電動車両100には、発電機21と、発電インバータ41と、駆動インバータ51と、発電インバータ41と駆動インバータ51とを電気的に接続する電源線61と、駆動インバータ51に電気的に接続された電動モータ71と、電源線61に電気的に接続された蓄電手段91を含み、エンジン110の動力を電気エネルギーに変換して電動モータ71を作動させる第1の電源系統81と、発電機22と、発電インバータ42と、駆動インバータ52と、発電インバータ42と駆動インバータ52とを電気的に接続する電源線62と、駆動インバータ52それぞれに電気的に接続された電動モータ72と、電源線62に電気的に接続された蓄電手段92を含み、エンジン110の動力を電気エネルギーに変換して電動モータ72を作動させる第2の電源系統82とが設けられている。第1の電源系統81によって前輪1、2が連動して駆動され、第2の電源系統82によって後輪3、4が連動して駆動される。
かかる図24の電動車両100は、図3に示す構成の電動車両100の電源系統81、82にそれぞれ、蓄電手段91、92を付加するとともに、補機231、232を付加したものとして構成されている。
このように第1の電源系統81には、前輪1、2側の電動モータ71を駆動する駆動インバータ51と、補機231が電源負荷として備えられているとともに、第2の電源系統82には、後輪3、4側の電動モータ72を駆動する駆動インバータ52と、補機232が電源負荷として備えられている。
蓄電手段91は、第1の電源系統81の電源負荷の電力消費に増減に比べて発電電力供給の応答が遅い場合に備え、第1の電源系統81の電力供給の応答を早めるために設けられている。同様に、蓄電手段92は、第2の電源系統82の電源負荷の電力消費に増減に比べて発電電力供給の応答が遅い場合に備え、第2の電源系統82の電力供給の応答を早めるために設けられている。
発電機21、22は、永久磁石モータである。発電インバータ41、42はそれぞれ、発電機21、22の出力電圧を安定して直流電圧として電源線61、62に出力する。
発電インバータ41、42の出力電圧および出力電流は、制御手段310に入力される。
電源ブリッジ210は、2つの電源系統81、82間に電気的に接続されている。
電源ブリッジ210は、2つの電源系統81、82間で双方向に電力を供給するように構成されている。片方向DC−DCコンバータ210A、210Bが互いに逆向きになるように、2つの電源系統81、82間にこれら2つの片方向DC−DCコンバータ210A、210Bが接続されることで、電源ブリッジ210が構成されている。片方向DC−DCコンバータ210Aは、第2の電源系統82を電源として第2の電源系統82の電力を変換して第1の電源系統81に電力を供給する。片方向DC−DCコンバータ210Bは、第1の電源系統81を電源として第1の電源系統81の電力を変換して第2の電源系統82に電力を供給する。
制御手段310は、発電インバータ41、42の出力電圧および出力電流に基づいて第1の電源系統81、第2の電源系統82の負荷状態を監視し、いずれか一方の電源系統が基準レベルに比しても電力が不足している状態にあり、他方の電源系統が基準レベルに比して電力に余裕がある状態にある場合に、電力に余裕のある電源系統から電力が不足している電源系統に対して電力が供給されるように、対応する一方の片方向DC−DCコンバータのみに電力を変換させるための電力変換指令を与える。
ただし、蓄電手段91、92に蓄積された電力で、発電能力の不足分を補える場合には、蓄電手段91、92に蓄積された電力を放出することで対処する。たとえば、エンジン110の定格出力を100kW、発電インバータ41、42それぞれの瞬時最大出力を50kWとし、駆動インバータ51、52それぞれの瞬時最大負荷を40kWとし、補機231、232それぞれの瞬時最大負荷を20kWとする。すると、ある瞬間に全ての電源負荷が同時にかかっているとすると、2つの電源系統81、82の負荷の合計は、120kWとなって、瞬時最大発電能力の100kWを超えてしまう。このように同時に全負荷がかかり発電能力を超えた場合には、蓄電手段91、92に蓄積された電力を自動的に放出することで瞬間的な電力需要に応えるようにする。
2つの電源系統81、82のいずれかでそれぞれの蓄電手段91、92に蓄積された電力で補えないほど発電電力が不足した場合には、電源ブリッジ210に電力変換指令を与え両電源系統81、82の負荷のアンバランスを調整して対処する。
また実施例装置は、以上のような対処が可能なように、2つの電源系統81、82の消費電力の合計が2つの電源系統81、82の発電電力の合計および蓄電手段91、92の蓄電電力の合計を超えることがないように設計されているものとする。
以下、図25を参照して制御手段310で行なわれる制御処理手順について説明する。
図25に示すように、まず、第1の電源系統81で発電電力が不足中であるか否かが判断される。すなわち、第1の電源系統81が、蓄電手段91に蓄積された電力で補えないほど発電電力が不足すると、第1の電源系統81の発電インバータ41の直流出力電流が最大値に近づくとともに発電インバータ41の直流出力電圧、つまり第1の電源系統81の電源線61の電圧が規定値よりも低下する。そこで、第1の電源系統81の発電インバータ41の出力電流が最大値に近づくとともに発電インバータ41の出力電圧が規定値よりも低下したか否かを判断することによって、第1の電源系統81で発電電力が不足中であるか否かが判断される(ステップ501)。
つぎに、同様にして、第2の電源系統82の発電インバータ42の出力電流が最大値に近づくとともに発電インバータ42の出力電圧が規定値よりも低下したか否かを判断することによって、第2の電源系統82で発電電力が不足中であるか否かが判断される(ステップ502、ステップ503)。
この結果、第1の電源系統81で発電電力が不足中であり(ステップ501の判断「第1の電源系統は不足」)、かつ第2の電源系統82で発電電力が不足中である(ステップ502の判断「第2の電源系統は不足」)と判断された場合には、異常が発生したとして非常措置をとる。すなわち、前述したように同時に全負荷がかかり発電能力を超えた場合には、蓄電手段91、92に蓄積された電力を自動的に放出することで瞬間的な電力需要に応えることができるように実施例装置は設計されている。したがって、2つの電源系統81、82の両方で発電電力が不足していると判断されている場合は、電源系統81、82を構成する電源負荷、蓄電手段、発電機のいずれかで故障が発生している可能性がある。よって、この場合は、異常発生とみなして、非常措置をとる。例えば通信機材など重要度の高い補機を運用している場合には、補機231あるいは232に電力を優先的に供給するために、「異常警報」を発して運転者に注意を促すとともに、駆動インバータ51あるいは52に供給させる電力を低下させて前輪1、2あるいは後輪3、4の駆動力を自動的に低下させる(ステップ504)。
第1の電源系統81で発電電力が不足中であり(ステップ501の判断「第1の電源系統は不足」)、かつ第2の電源系統82で発電電力に余裕がある(ステップ502の判断「第2の電源系統は余裕あり」)と判断された場合には、第2の電源系統82から第1の電源系統81に電力が供給されるように、電源ブリッジ210に電力変換指令が出力される。すなわち、片方向DC−DCコンバータ210A、210Bのうち、片方向DC−DCコンバータ210Aだけに対して電力変換指令を与えて、第2の電源系統82から第1の電源系統81に電力を供給させる。制御装置310は、第1の電源系統81の電力不足が解消されたと判断されるまで、片方向DC−DCコンバータ210Aの出力電流を、例えばPID制御によって調整する(ステップ505)。
同様に、第1の電源系統81で発電電力に余裕があり(ステップ501の判断「第1の電源系統は余裕あり」)、かつ第2の電源系統82で発電電力が不足中である(ステップ503の判断「第2の電源系統は不足」)と判断された場合には、第1の電源系統81から第1の電源系統82に電力が供給されるように、電源ブリッジ210に電力変換指令が出力される。すなわち、片方向DC−DCコンバータ210A、210Bのうち、片方向DC−DCコンバータ210Bだけに対して電力変換指令を与えて、第1の電源系統81から第2の電源系統82に電力を供給させる。制御装置310は、第2の電源系統82の電力不足が解消されたと判断されるまで、片方向DC−DCコンバータ210Bの出力電流を、例えばPID制御によって調整する(ステップ506)。
第1の電源系統81で発電電力に余裕があり(ステップ501の判断「第1の電源系統は余裕あり」)、かつ第2の電源系統82でも発電電力に余裕がある(ステップ503の判断「第2の電源系統は余裕あり」)と判断された場合には、電源ブリッジ210への電力変換指令の出力はオフにされる。すなわち、片方向DC−DCコンバータ210A、210Bのいずれにも電力変換指令は与えられない(ステップ507)。
なお、この第18実施例では、第3実施例のように各車軸11、12が連動駆動軸となっている電動車両100に適用される場合を想定して説明したが、前述の第1実施例、第2実施例あるいは第4実施例ないし第16実施例で掲げた構成の電動車両100に適用する実施も当然に可能である。
(第19実施例)
図26は、第19実施例の電動車両100を示す。
同図26に示す電動車両100は、図24に示す第18実施例装置に、蓄電部220が設けられ、これらが第18実施例装置と同様の制御手段310によって制御される。
蓄電部220は、2つの電源系統81、82それぞれに電気的に接続されており、電源系統81、82に電力を供給するとともに、電源系統81、82の電力を蓄えるものである。
具体的には、蓄電部220は、蓄電機能部221と、内部バス222と、出力バス223と、片方向DC−DCコンバータ224C1と、片方向DC−DCコンバータ224C2と、通電時に明確な電圧降下を生ずる電子スイッチ225A、225Bと、内蔵コントローラ226と、冷却装置227とから構成されている。
蓄電機能部221は、電力を蓄積する蓄電機能を有する機器、たとえば電池やキャパシタで構成されている。
内部バス222は、蓄電機能部221に電気的に接続され、蓄電機能部221に入出力される直流電流が流れる電気信号線で構成されている。
電子スイッチ225Aの一方の端子は、蓄電部220側のコネクタ251、車体側のコネクタ252を介して第1の電源系統81の電源線61に電気的に接続されている。同様に電子スイッチ225Bの一方の端子は、蓄電部220側のコネクタ251、車体側のコネクタ252を介して第2の電源系統82の電源線62に電気的に接続されている。
電子スイッチ225A、225Bの他方の端子は、出力バス223に電気的に接続されている。電子スイッチ225A、225Bは、内蔵コントローラ226から与えられる投入指令に応じて閉動作する。したがって投入指令が電子スイッチ225Aに与えられると、電子スイッチ225Aが投入されて接点が閉じられ、第1の電源系統81の電源線61と出力バス223が同電位となる。同様に電子スイッチ225Bが投入されると、第2の電源系統82の電源線62と出力バス223が同電位となる。電子スイッチ225A、225Bは、GTO、IGBTなどの半導体部品を使用することができる。
片方向DC−DCコンバータ224C1、224C2は互いに逆向きになるように、内部バス222と出力バス223の間を電気的に接続されている。片方向DC−DCコンバータ224C1は、内部バス222を直流電圧を電源として内部バス222の電力を変換して出力バス223に電力を供給する。片方向DC−DCコンバータ224C2は、出力バス223の直流電圧を電源として出力バス223の電力を変換して内部バス222に電力を供給する。片方向DC−DCコンバータ224C1、224C2は、内蔵コントローラ226から出力される電力変換指令によって動作する。片方向DC−DCコンバータ224C1が動作すると、蓄電機能部221に蓄積された電力が内部バス222、片方向DC−DCコンバータ224C1、出力バス223、電子スイッチ225Aまたは/および電子スイッチ225Bを介して第1の電源系統81または/および第2の電源系統82に供給される。また、片方向DC−DCコンバータ224C2が動作すると、第1の電源系統81または/および第2の電源系統82の電力が、電子スイッチ225Aまたは/および電子スイッチ225B、出力バス223、片方向DC−DCコンバータ224C2、内部バス222を介して蓄電機能部221に供給される。
冷却装置227は、蓄電部220内の電力を利用して蓄電機能部221などの発熱体を冷却する。これにより蓄電部220における発熱体が過熱することが防止され、蓄電部220を正常に動させることができる。
内蔵コントローラ226は、内部バス222の電圧、出力バス223の電圧、蓄電機能部221の蓄積電力残量、冷却装置227による発熱体の冷却温度、片方向DC−DCコンバータ224C1、224C2の出力電流および出力電圧等を監視し、冷却装置227、片方向DC−DCコンバータ224C1、224C2、電子スイッチ225A、225Bを制御する。内蔵コントローラ226は、制御手段310との間で信号の授受を行い、制御手段310から与えられる放電指令あるいは充電指令に応じて、電子スイッチ225A、225Bに投入指令を与えるとともに、片方向DC−DCコンバータ224C1、224C2に電力変換指令を与える。
制御手段310は、電源ブリッジ210を制御するとともに、内蔵コントローラ226を介して蓄電部220の動作を制御する。すなわち、制御手段310は、電源系統81、82で電力が不足している場合に、蓄電部220から電源系統81、82に電力が供給されるように蓄電部220を制御するとともに、電源系統81、82で電力に余裕がある場合に、電源系統81、82の電力が蓄電部220に蓄えられるように蓄電部220を制御する。
蓄電部220は、上述の蓄電機能部221等が内蔵され、可搬性のある筐体のパッケージとして構成されている。筐体の外側にはコネクタ251が設けられている。コネクタ251を電動車両100の車体側のコネクタ252に接続するという容易な作業だけで、蓄電部220を電動車両100の車体に装着することができる。内蔵コントローラ226と制御手段310を結ぶ信号線にもコネクタを設けることができるのはいうまでもない。
さて、上述の第18実施例では、2つの電源系統81、82の消費電力の合計が2つの電源系統81、82の発電電力の合計および蓄電手段91、92の蓄電電力の合計を超えることがないように設計されていることを前提とし、その前提から外れた場合には、異常が発生したとして非常措置をとることとした(図25のステップ504)。
しかし、防災用オフロード車は、エンジン110を稼動させないで長時間走行することがある。たとえば、トンネル内を走行するときや夜間に走行するときであり、このような状況では、エンジン110の稼動を停止して、排気ガスやエンジンの騒音を全く発生させないで走行させたいとの要請がある。この場合、既存の電動車両100であれば、既存の蓄電手段91、92によって電力需要を賄うことになるが、エンジン110の稼動を停止しての長時間の電力需要には、蓄電手段91、92の蓄電電力だけでは到底賄うことができない。
そこで、本実施例では、上述の第18実施例と異なり、2つの電源系統81、82の消費電力の合計が2つの電源系統81、82の発電電力の合計および蓄電手段91、92の蓄電電力の合計を超える可能性があることを想定し、そのような場合には、異常が発生したとして非常措置をとるのではなく、蓄電部220に蓄積された電力を放電し電源系統81、82に供給することで対処するようにしている。また、逆に電源系統81、82の電力に余裕がある場合には、電源系統81、82の電力を蓄電部220に供給し蓄電部220を充電し、蓄電部220に蓄積される電力を補充するようにしている。
以下、図27、図28、図29を参照して制御手段310および蓄電部220の内蔵コントローラ226で行なわれる制御処理手順について説明する。
図27に示すように、ステップ601、ステップ602、ステップ603、ステップ605、ステップ606では、図25のステップ501、ステップ502、ステップ503、ステップ505、ステップ506と同様の処理が行われる。以下では、重複する説明は適宜省略し、図25のステップ504、ステップ507に対応する図27のステップ604、ステップ607の処理を中心に説明する。
すなわち、第1の電源系統81で発電電力が不足中であり(ステップ601の判断「第1の電源系統は不足」)、かつ第2の電源系統82で発電電力が不足中である(ステップ602の判断「第2の電源系統は不足」)と判断された場合には、制御手段310は、蓄電部220の内蔵コントローラ226に対して放電指令を与える(ステップ604)。
ステップ604以下の処理は、図28に示される。
まず、制御手段310は、蓄電部220の内蔵コントローラ226に対して放電指令を与える(ステップ701)。
内蔵コントローラ226に放電指令が与えられると、これを受けて内蔵コントローラ226は、片方向DC−DCコンバータ224C1に電力変換指令を与える。また出力バス223の出力電圧と内部バス222の出力電圧を入力し、片方向DC−DCコンバータ224C1の入力電源電圧と出力電圧の現在値を認識する。さらに、第1の電源系統81の電源線61の電圧と第2の電源系統81の電源線61の電圧を入力する。第1の電源系統81の電源線61の電圧と第2の電源系統81の電源線61の電圧のデータは、制御手段310を介して内蔵コントローラ226に送られる。ここで、前回の制御ステップで行われた電子スイッチ225A、225Bの閉動作は維持されている。たとえば前回の制御ステップで電子スイッチ225Aのみが閉じられ蓄電部220から電源系統81への放電動作が行なわれたのであれば、電子スイッチ225Aのみが閉じられたままとなっている。また制御をはじめて行なうのであれば、電子スイッチ225A、225Bは両方とも開かれている(ステップ702)。
つぎに、内蔵コントローラ226は、第1の電源系統81の電源線61の電圧と第2の電源系統81の電源線61の電圧を比較し、どちらの電源系統の電圧が低いかを判断する(ステップ703)。
第1の電源系統81の電圧が第2の電源系統82の電圧よりも低い場合には(ステップ703の判断「第1の電源系統が低電圧」)、第1の電源系統81の電力不足を解消するために第1の電源系統81に蓄電機能部221の蓄積電力を供給すべく、電子スイッチ225Aだけに投入指令が与えられる。これにより電子スイッチ225Aが投入される。この結果、蓄電機能部221に蓄積された電力が放電され電子スイッチ225Aを介して第1の電源系統81に供給される。他方の電子スイッチ225Bを同時に投入しない理由は、電子スイッチ225Bを同時に投入すると、第2の電源系統82から第1の電源系統81への電力の流れが生じ、第2の電源系統82の電力不足が生じる場合があるので、これを避けるためである。
なお、電子スイッチ225Aの投入後、後段のステップ707の処理によって第1の電源系統81の電力不足が解消され、第1の電源系統81の蓄電手段91が充電されて電源線61の電圧が上昇して、第1の電源系統81の電圧と第2の電源系統82の電圧が等しくなれば、つぎの制御サイクルでは、下記のステップ705の処理が実行されることになる(ステップ704)。
第1の電源系統81の電圧と第2の電源系統82の電圧がほぼ同じである(電圧差が誤差範囲内に収まっている)場合には(ステップ703の判断「両電源系統の電圧がほぼ同じ」)、電子スイッチ225Aおよび電子スイッチ225Bの両方に投入指令が与えられる。これにより電子スイッチ225Aおよび電子スイッチ225Bが同時に投入される。これは、第1の電源系統81の電圧と第2の電源系統82の電圧との電圧差が誤差範囲内、例えば電子スイッチ225A、225Bにおける電圧降下に相当する電圧に比して十分に小さい電圧差であるならば、電子スイッチ225Aおよび電子スイッチ225Bを同時に投入したとしても、電子スイッチ225A、225Bにおける電圧降下に阻まれて、第1の電源系統81と第2の電源系統82との間で電力の流れは生じないからである。電子スイッチ225Aおよび225Bの同時投入により蓄電機能部221に蓄積された電力が放電され電子スイッチ225A、225Bを介して第1の電源系統81および第2の電源系統82に供給される。
なお、電子スイッチ225Aおよび225Bの同時投入後、後段のステップ707の処理によって第1の電源系統81(あるいは第2の電源系統82)の電力不足が解消され、第1の電源系統81の蓄電手段91(あるいは第2の電源系統82の蓄電手段92)が充電されて電源線61(あるいは電源線62)の電圧が上昇して、電子スイッチ225A、225Bの電圧降下分の電圧値の範囲で第1の電源系統81の電圧と第2の電源系統82の電圧との間で電圧差が大きくなってくる場合がある。その場合には、つぎの制御サイクルでは、上記のステップ704の処理または下記のステップ706の処理が実行されることになる(ステップ705)。
第2の電源系統82の電圧が第1の電源系統81の電圧よりも低い場合には(ステップ703の判断「第2の電源系統が低電圧」)、第2の電源系統82の電力不足を解消するために第2の電源系統82に蓄電機能部221の蓄積電力を供給すべく、電子スイッチ225Bだけに投入指令が与えられる。これにより電子スイッチ225Bが投入される。この結果、蓄電機能部221に蓄積された電力が放電され電子スイッチ225Bを介して第2の電源系統82に供給される。他方の電子スイッチ225Aを同時に投入しない理由は、電子スイッチ225Aを同時に投入すると、第1の電源系統81から第2の電源系統82への電力の流れが生じ、第1の電源系統81の電力不足が生じる場合があるので、これを避けるためである。
なお、電子スイッチ225Bの投入後、後段のステップ707の処理によって第2の電源系統82の電力不足が解消され、第2の電源系統82の蓄電手段92が充電されて電源線62の電圧が上昇して、第1の電源系統81の電圧と第2の電源系統82の電圧が等しくなれば、つぎの制御サイクルでは、上記のステップ705の処理が実行されることになる(ステップ706)。
上記ステップ704あるいはステップ705あるいはステップ706の処理後、片方向DC−DCコンバータ224C1は、その出力電流が所定の制限電流値を超えない範囲で、その出力電圧が、制御開始の初期電圧から僅かな電圧分ΔV(V)だけ上昇するように制御するためのステップ707を加えてもよい。電圧上昇分ΔVは、たとえば下記式、
ΔV=K1|Va−Vb|+Vc
に示すように、第1の電源系統81の電圧値Vaと第2の電源系統82の電圧値Vbの差に絶対値に対し比例係数K1を乗算したものに、固定値Vcを加算したものとして設定することができる。また第1の電源系統81の電圧値Vaと第2の電源系統82の電圧値Vbの電圧差の時間微分や積分を考慮して、電圧上昇分ΔVを定めてもよい(ステップ707)。
内蔵コントローラ226は、蓄電機能部221の蓄積電力の残量を監視している。蓄電機能部221の蓄積電力の残量が基準レベル以下となり、蓄積電力が不足していると判断された場合には、片方向DC−DCコンバータ224C1に対する電力変換指令は解除されて、蓄電機能部221から電源系統81、82への電力供給が停止される。
図27のステップ605では、図25のステップ505と同様に第2の電源系統82の電力が電源ブリッジ210を介して第1の電源系統81に供給されることになる。このとき電子スイッチ225A、225Bには投入指令を与えないように制御手段310から内蔵コントローラ226に指令が与えられる。この結果、蓄電部220と電源系統81、82は電気的に遮断され、電源ブリッジ210を介してのみ第1の電源系統81に電力が供給されることになる。これによって第1の電源系統81の電力不足を第2の電源系統82の電力によって補うことができれば、つぎの制御ステップも同じステップ605に移行され同じ処理が行われることになる。しかし、ステップ605の処理の結果、第2の電源系統82についても電力が不足した場合には、つぎの制御ステップでは、ステップ604に移行されて、蓄電部220と電源系統81、82が電気的に接続され、蓄電部220の蓄積電力によって電源系統81、82の電力不足が解消されることになる(ステップ605)。
図27のステップ606では、図25のステップ506と同様に第1の電源系統81の電力が電源ブリッジ210を介して第2の電源系統82に供給されることになる。このとき電子スイッチ225A、225Bには投入指令を与えないように制御手段310から内蔵コントローラ226に指令が与えられる。この結果、蓄電部220と電源系統81、82は電気的に遮断され、電源ブリッジ210を介してのみ第2の電源系統82に電力が供給されることになる。これによって第2の電源系統82の電力不足を第1の電源系統81の電力によって補うことができれば、つぎの制御ステップも同じステップ606に移行され同じ処理が行われることになる。しかし、ステップ606の処理の結果、第1の電源系統81についても電力が不足した場合には、つぎの制御ステップでは、ステップ604に移行されて、蓄電部220と電源系統81、82が電気的に接続され、蓄電部220の蓄積電力によって電源系統81、82の電力不足が解消されることになる(ステップ606)。
さて、上述したように、内蔵コントローラ226は、蓄電機能部221の蓄積電力の残量を監視している。蓄電機能部221の蓄積電力の残量が基準レベル以下となり、蓄積電力が不足する可能性がある判断された場合には、内蔵コントローラ226は、充電指令を与えるように制御手段310に要求する。制御手段310は、この要求を受けると、第1の電源系統81および第2の電源系統82の両方で電力に余裕があるとの条件が成立したこと(ステップ601の判断「第1の電源系統は余裕あり」かつステップ603の判断「第2の電源系統は余裕あり」)をもって、内蔵コントローラ226に充電指令を与える。
この場合、第1の電源系統81と第2の電源系統82の間には電源ブリッジ210があるため、両方の電源系統81、82の電力を蓄電部220に充電させることも可能である。ただし以下では、説明を簡単にするために、より大きな余裕のある方の電源系統の電力を用いて蓄電部220に充電させる制御について説明する。
すなわち、第1の電源系統81で発電電力に余裕があり(ステップ601の判断「第1の電源系統は余裕あり」)、かつ第2の電源系統82でも発電電力に余裕がある(ステップ603の判断「第2の電源系統は余裕あり」)と判断された場合には、制御手段310は、蓄電部220の内蔵コントローラ226に対して充電指令を与える(ステップ607)。
ステップ607以下の処理は、図29に示される。
まず、制御手段310は、蓄電部220の内蔵コントローラ226に対して充電指令を与える(ステップ801)。
内蔵コントローラ226に充電指令が与えられると、これを受けて内蔵コントローラ226は、片方向DC−DCコンバータ224C2に電力変換指令を与える。また出力バス223の出力電圧と内部バス222の出力電圧を入力し、片方向DC−DCコンバータ224C1の入力電源電圧と出力電圧の現在値を認識する。さらに、第1の電源系統81の電源線61の電圧と第2の電源系統81の電源線61の電圧を入力する。第1の電源系統81の電源線61の電圧と第2の電源系統81の電源線61の電圧のデータは、制御手段310を介して内蔵コントローラ226に送られる。ここで、前回の制御ステップで行われた電子スイッチ225A、225Bの閉動作は維持されている。たとえば前回の制御ステップで電子スイッチ225Aのみが閉じられ電源系統81から蓄電部220への充電動作が行なわれたのであれば、電子スイッチ225Aのみが閉じられたままとなっている。また制御をはじめて行なうのであれば、電子スイッチ225A、225Bは両方とも開かれている(ステップ802)。
つぎに、内蔵コントローラ226は、第1の電源系統81の電源線61の電圧と第2の電源系統81の電源線61の電圧を比較し、どちらの電源系統の電圧が高いかを判断する(ステップ803)。
第1の電源系統81の電圧が第2の電源系統82の電圧よりも高い場合には(ステップ803の判断「第1の電源系統が高電圧」)、より電力の余裕のある第1の電源系統81から蓄電機能部221に電力を供給すべく、電子スイッチ225Aだけに投入指令が与えられる。これにより電子スイッチ225Aが投入される。この結果、第1の電源系統81の電力が電子スイッチ225Aを介して蓄電機能部221に供給され、蓄電機能部221が充電される。他方の電子スイッチ225Bを同時に投入しない理由は、電子スイッチ225Bを同時に投入すると、第1の電源系統81から第2の電源系統82への電力の流れが生じ、第1の電源系統81の電力余裕が減少するので、これを避けるためである。
なお、電子スイッチ225Aの投入後、後段のステップ807の処理によって第1の電源系統81の電力余裕が減少し、第1の電源系統81の電圧と第2の電源系統82の電圧が等しくなれば、つぎの制御サイクルでは、下記のステップ805の処理が実行されることになる(ステップ804)。
第1の電源系統81の電圧と第2の電源系統82の電圧がほぼ同じである(電圧差が誤差範囲内に収まっている)場合には(ステップ803の判断「両電源系統の電圧がほぼ同じ」)、電子スイッチ225Aおよび電子スイッチ225Bの両方に投入指令が与えられる。これにより電子スイッチ225Aおよび電子スイッチ225Bが同時に投入される。これは、第1の電源系統81の電圧と第2の電源系統82の電圧との電圧差が誤差範囲内、例えば電子スイッチ225A、225Bにおける電圧降下に相当する電圧に比して十分に小さい電圧差であるならば、電子スイッチ225Aおよび電子スイッチ225Bを同時に投入したとしても、電子スイッチ225A、225Bにおける電圧降下に阻まれて、第1の電源系統81と第2の電源系統82との間で電力の流れは生じないからである。電子スイッチ225Aおよび225Bの同時投入により第1の電源系統81および第2の電源系統82の電力が電子スイッチ225A、225Bを介して蓄電機能部221に供給され、蓄電機能部221が充電される。
なお、電子スイッチ225Aおよび225Bの同時投入後、後段のステップ807の処理によって第1の電源系統81(あるいは第2の電源系統82)の電力余裕が減少され、電子スイッチ225A、225Bの電圧降下分の電圧値の範囲で第1の電源系統81の電圧と第2の電源系統82の電圧との間で電圧差が大きくなってくる場合がある。その場合には、つぎの制御サイクルでは、上記のステップ804の処理または下記のステップ806の処理が実行されることになる(ステップ805)。
第2の電源系統82の電圧が第1の電源系統81の電圧よりも高い場合には(ステップ803の判断「第2の電源系統が高電圧」)、より電力の余裕のある第2の電源系統82から蓄電機能部221に電力を供給すべく、電子スイッチ225Bだけに投入指令が与えられる。これにより電子スイッチ225Bが投入される。この結果、第2の電源系統82の電力が電子スイッチ225Bを介して蓄電機能部221に供給され、蓄電機能部221が充電される。他方の電子スイッチ225Aを同時に投入しない理由は、電子スイッチ225Aを同時に投入すると、第2の電源系統82から第1の電源系統81への電力の流れが生じ、第2の電源系統82の電力余裕が減少するので、これを避けるためである。
なお、電子スイッチ225Bの投入後、後段のステップ807の処理によって第2の電源系統82の電力余裕が減少し、第1の電源系統81の電圧と第2の電源系統82の電圧が等しくなれば、つぎの制御サイクルでは、上記のステップ805の処理が実行されることになる(ステップ806)。
上記ステップ804あるいはステップ805あるいはステップ806の処理後、片方向DC−DCコンバータ224C2は、その出力電流が所定の制限電流値を超えない範囲で、かつ、蓄電機能部221が充電電流に耐えられる範囲内で、その出力電流が、制御開始の初期電流から僅かな電流分ΔI(A)だけ上昇するように制御される(ステップ807)。
内蔵コントローラ226は、蓄電機能部221の蓄積電力の残量を監視している。蓄電機能部221の蓄積電力の残量が基準レベル以上となり、蓄積電力が満充電に近づいているあるいは満充電に達したと判断された場合には、片方向DC−DCコンバータ224C2に対する電力変換指令は解除されて、電源系統81、82から蓄電機能部221への電力供給が停止される。
以上のように本実施例の蓄電部220は、2つの電源系統81、82に共通の蓄電手段として構成されている。このため1つのパッケージ化された蓄電部220を、コネクタ251、252を介して電源系統81、82に接続するだけで、電源系統81、82に不足している電力を供給することができるとともに、電力の余裕がある電源系統81、82から電力の供給を受け蓄えることができる。よって、予め各電源系統81、82それぞれに別々の蓄電手段を接続しておく必要がなく、1つの蓄電部220のパッケージを、コネクタ251、252を介して電源系統81、82に接続するだけで、トンネル内走行や夜間走行などの特殊な任務に迅速に対処することができる。これにより特殊な任務以外のときであっても車両の重量の増加を招いたり、車内の場積が狭まるという問題を回避できる。また、蓄電手段を装着する際に取り扱いが容易で、簡易に装着することができる。
以上のように本実施例によれば、防災用オフロード車をシリーズハイブリッド電気自動車で構成した場合に、大容量の蓄電手段を容易に取り扱え、簡易に装着できるようになり、夜間走行、トンネル内走行などの特殊な任務に迅速に対処できる。
なお、実施例では、電源ブリッジ210に加え、蓄電部220が設けられた構成を想定して説明したが、電源ブリッジ210の配設を省略する実施も可能である。
なお、また、この第19実施例では、第3実施例のように各車軸11、12が連動駆動軸となっている電動車両100に適用される場合を想定して説明したが、前述の第1実施例、第2実施例あるいは第4実施例ないし第16実施例で掲げた構成の電動車両100に適用する実施も当然に可能である。
(第20実施例)
第19実施例では、片方向DC−DCコンバータを用いて蓄電部220を構成するようにしたが、図30に示すように、電子スイッチ225A、225Bの一方の端子をそれぞれ第1の電源系統81の電源線61、第2の電源系統82の電源線62に電気的に接続するとともに、電子スイッチ225A、225Bの他方の端子をそれぞれ双方向DC−DCコンバータ224の一方の端子に電気的に接続し、双方向DC−DCコンバータ224の他方の端子を蓄電機能部221に電気的に接続して、蓄電部220を構成してもよい。
(第21実施例)
第19実施例、第20実施例では、電子スイッチ225A、225Bを用いて蓄電部220を構成しているが、電子スイッチ225A、225Bを用いることなく蓄電部220を構成する実施も可能である。
図31では、電源ブリッジ210が備えられていない構成の装置を示している。
すなわち、第1の電源系統81の電源線61、第2の電源系統82の電源線62それぞれに、双方向DC−DCコンバータ224D1、224D2の一方の端子が電気的に接続されるとともに、双方向DC−DCコンバータ224D1、224D2の他方の端子がそれぞれ、蓄電機能部221に電気的に接続されて、蓄電部220が構成されている。
(第22実施例)
図32は、第22実施例の電動車両100を示す。
同図32に示す電動車両100は、図24に示す第18実施例装置に、補機電源ブリッジ240と、補機233、234が設けられる。
補機電源ブリッジ240は、2つの電源系統81、82それぞれに電気的に接続され、電源系統81、82の電力を補機233、234に供給する。
補機233、234は、補機電源ブリッジ240に電気的に接続されている。補機233、234は、交流電源負荷である。
補機電源ブリッジ240は、補機インバータ241A、241Bと、電力変換トランス242と、内蔵コントローラ243とから構成されている。
補機インバータ241Aは、第1の電源系統81の電源線61に電気的に接続されているとともに、電力変換トランス242の1次巻線242aに電気的に接続されている。
補機インバータ241Bは、第2の電源系統82の電源線62に電気的に接続されているとともに、電力変換トランス242の2次巻線242bに電気的に接続されている。補機インバータ241A、241Bは、電圧型のインバータである。
補機インバータ241Aは、補機電源ブリッジ240側のコネクタ251、車体側のコネクタ252を介して第1の電源系統81の電源線61に電気的に接続されている。同様に補機インバータ241Bは、補機電源ブリッジ240側のコネクタ251、車体側のコネクタ252を介して第2の電源系統82の電源線62に電気的に接続されている。
補機233、234は、電力変換トランス242の3次巻線242cに電気的に接続されている。
電力変換トランス242は、1次巻線242a、2次巻線242b、3次巻線242cが備えられ、三相交流の電圧の変換を行う。
内蔵コントローラ243は、補機インバータ241A、241Bの出力電圧および補機233、234の負荷状態(例えば負荷電流や力率)を監視している。内蔵コントローラ243は、制御手段310との間で信号の授受を行う。
制御手段310は、内蔵コントローラ243から得られた情報に基づいて、エンジン110のトルクを制御するとともに発電インバータ41、42の出力電圧を制御する。
内蔵コントローラ243は、補機インバータ241A、241Bの出力電圧および補機233、234の負荷状態に基づいて、補機インバータ241A、241Bの出力電圧を制御する。
電力変換トランス242は、出力周波数をAC60HzとAC50Hzのいずれかに切り替えることが可能であり、例えば3相440Vで瞬時最大の有効電力として100kWを出力することができるよう、負荷の力率を考慮して大きめの皮相電力を想定して容量を選定する。
補機電源ブリッジ240は、上述の電力変換トランス242等が内蔵され、可搬性のある筐体のパッケージとして構成されている。筐体の外側にはコネクタ251が設けられている。よって、補機電源ブリッジ240のコネクタ251を電動車両100の車体側のコネクタ252に接続するという容易な作業だけで、補機電源ブリッジ240を電動車両100の車体に装着することができる。内蔵コントローラ243と制御手段310の間の信号線にもコネクタがあることは言うまでもない。
補機233は、例えば被災地に仮設した非常用飲料水の給水ポンプであり、AC440Vで3相60kWの電力を消費する。ただし、回生制動は行われない。補機234は、例えば非常用仮設昇降機の駆動モータであり、AC440V、3相40kWの電力を消費する。補機234は、回生制動を行い、20kWの電力を回生する。よって、給水ポンプを最大出力60kWで駆動中に、昇降機を最大出力40kWで上昇させれば、合計で100kWの電源負荷となる。
以下では、補機233、234に電力を供給するときの動作について説明する。
第1の電源系統81の電源線61の直流電力は、補機インバータ241Aにより電力変換トランス242の1次巻線242aに3相交流電力として出力される。電力変換トランス242は電圧の変換を行い、3次巻線242cにAC440Vの3相交流電力を出力し、補機233、234に電力を供給する。同様に、第2の電源系統82の電源線62の直流電力は、補機インバータ241Bにより電力変換トランス242の2次巻線242bに3相交流電力として出力される。電力変換トランス242は電圧の変換を行い、3次巻線242cにAC440Vの3相交流電力を出力し、補機233、234に電力を供給する。
制御手段310は、補機233、234の負荷が大きい場合には、エンジン110のスロットル量を大きくしてエンジントルクを増加させ、補機233、234の負荷が小さい場合には、エンジン110のスロットル量を小さくしてエンジントルクを減少させるようにエンジントルクを制御する。また、制御手段310は、エンジントルクの変動によって発電インバータ41、42の出力電圧が変動しないように、発電インバータ41、42の出力電圧を制御する。このようにして補機233、234の電力負荷の変動に伴う電力需要の変動に対処することができる。ただし、第1の電源系統81の電源負荷の電力消費に増減に比べて発電電力供給の応答が遅い場合には、蓄電手段91に蓄積された電力が第1の電源系統81の電源線61に供給されて、第1の電源系統81の電力供給の応答が早められる。同様に、第2の電源系統82の電源負荷の電力消費に増減に比べて発電電力供給の応答が遅い場合には、蓄電手段92に蓄積された電力が第2の電源系統82の電源線62に供給されて、第2の電源系統82の電力供給の応答が早められる。さらに、上述した実施例の蓄電部220を追加して、蓄電部220から電力を供給することにより、過渡的な電力需要の急増に対して電力供給の応答を早めることができる。
内蔵コントローラ243は、補機インバータ241Aの負荷を、補機インバータ241Bの負荷よりも大きくして補機233、234に電力を供給する場合には、補機インバータ241Aの出力電圧を補機インバータ241Bの出力電圧よりも増加させるとともに補機インバータ241Aの出力電流を、補機インバータ241Aの出力電流と補機インバータ241Bの出力電流の平均値よりも増加させるように調整する。これにより第1の電源系統81側から、より大きくの電力を取り出して補機233、234に電力を供給させることができる。
同様に、補機インバータ241Bの負荷を、補機インバータ241Aの負荷よりも大きくして補機233、234に電力を供給する場合には、補機インバータ241Bの出力電圧を補機インバータ241Aの出力電圧よりも増加させるとともに補機インバータ241Bの出力電流を、補機インバータ241Aの出力電流と補機インバータ241Bの出力電流の平均値よりも増加させるように調整する。これにより第2の電源系統82側から、より大きくの電力を取り出して補機233、234に電力を供給させることができる。
同様にして、補機インバータ241Aの負荷と補機インバータ241Bの負荷を同程度に調整することができる。これにより、第1の電源系統81と第2の電源系統82の負荷バランスを調整しつつ、電源系統81、82の電力を補機233、234に供給することができる。ただし、この制御によって、第1の電源系統81と第2の電源系統82の負荷バランスがとれない場合には、電源ブリッジ210を作動させ、電源ブリッジ210を介して第1の電源系統81と第2の電源系統82の間で電力を供給することにより負荷バランスをとることができる。
さて、本実施例では、給水ポンプを最大出力60kWで駆動中に、昇降機を制動で降下させると、20kWの電力を回生することができる。しかし、負荷233、234全体としては40kWの電源負荷となる。したがって、本実施例では、電源系統81、82から補機電源ブリッジ240を介して補機233、234に電力が供給されるのみで、補機233、234から補機電源ブリッジ240を介して電源系統81、82に電力が回生される現象は発生しない。
ただし、電源系統81、82に電力が回生される補機233、234を選択する実施も当然可能である。補機233、234から補機電源ブリッジ240を介して電源系統81、82に電力が回生される場合には、発電インバータ41、42をモータ作用させてエンジン110を逆駆動することで、エンジンブレーキの効果で回生エネルギーを熱エネルギーとして消費させることができる。また電源系統81、82に電力が回生される場合には、回生した電力で上述の実施例で説明した蓄電部220を充電することができる。これにより電源負荷から回生されたエネルギーが吸収され電源系統81、82を安定化させることができる。
このように本実施例では、補機233、234は、補機電源ブリッジ240を介して、2つの電源系統81、82から電力が供給されるように構成されている。このため、1つのパッケージ化された補機電源ブリッジ240を、コネクタ251、252を介して電源系統81、82に接続し、補機電源ブリッジ240に補機233、234を接続するだけで、2つの電源系統81、82のいずれか一方若しくは両方から補機233、234に電力が供給される。よって、搭載される補機に合わせてエンジンの最大出力や発電機の定格出力などを変更したり、予め各電源系統81、82毎に補機を接続しておく必要がなく、1つの補機電源ブリッジ240のパッケージを、コネクタ251、252を介して電源系統81、82に接続し、補機電源ブリッジ240に補機233、234を接続するだけで、大容量の補機の電力需要に対処することができる。これにより予め車両に補機を搭載することによって生じる問題、つまり補機不使用時であっても車両の重量が増加したり車内の場積が狭まるという問題を回避できる。また、補機を装着する際に取り扱いが容易で、簡易に装着することができる。また、2つの電源系統81、82のいずれか一方若しくは両方から補機233、234に電力が供給されるため、電源系統81、82の一方が極端に過負荷になるという問題を回避でき、車両の走行性能を確保することができる。
以上のように本第実施例によれば、防災用オフロード車をシリーズハイブリッド電気自動車で構成した場合に、エンジン、発電機などの基本的な仕様を変更することなく、しかも走行性能を損なうことなく、補機を作動させることができる。さらに、補機の追加搭載時に取り扱いが容易で、簡易に装着でき、災害救援などの特殊な用途に迅速に対処することができる。
さて、上述の実施例では、補機233、234として災害救援用の給水ポンプなどを想定し、比較的長い期間電力需要が増加し長期間電力を供給しなければならない場合を想定した。しかし、補機の種類によっては、車両走行中に瞬間的に電力需要が大きくなったり、給水ポンプほど長期間にならないまでも、車両走行中にやや長めの期間の間電力需要が増大することがある。この場合の対処方法について説明する。
1)瞬間的な電力需要の増加に対して
たとえばディジタル通信機やレーダのように0.1秒以下の瞬時の間大電力を消費する補機の場合には、0.1秒以下の瞬時の電力需要に対して高速に応答することができる大型の電源用平滑コンデンサで対処できる。なお、かかる高速応答は、通常の電池や蓄電用キャパシタでは得ることができない。大型の電源用平滑コンデンサは、通常、電源安定化のために電源系統81、82に設けられている。このため、電源系統81、82に既に設けられている既存のものを利用することができ、新たに機器を設置する必要がない。ただし、大型の電源用平滑コンデンサに蓄えられた電気エネルギーを放電して0.1秒以下の瞬時の間に補機に電力を供給する場合、第1の電源系統81と第2の電源系統82の負荷電流のアンバランスが問題になる。これについては、電源ブリッジ210を作動させて両電源系統81、82の負荷のバランスを調整することで対処できる。なお、瞬間的な電力需要増加の継続時間0.1秒の間に、電源ブリッジ210を複数回の制御サイクルで動作させるために、電源ブリッジ210の制御周期は、継続時間0.1秒に比べて十分短い時間、例えば0.01秒以下にすることが望ましい。
2)やや長めの電力需要の増加に対して
たとえばトレーラの車輪を電動モータで駆動する場合には、数秒間から数十分にわたって補機の電力需要が増加する。この場合には、電源ブリッジ210を作動させて両電源系統81、82の負荷のバランスを調整するとともに、両電源系統81、82に蓄電部220を接続して蓄電部220に蓄積された電力によって補機の電力需要に対処することが考えられる。
なお、実施例では、電源ブリッジ210に加え、補機電源ブリッジ240および補機233、234が設けられた構成を想定して説明したが、電源ブリッジ210の配設を省略する実施も可能である。
なお、また、この第22実施例では、第3実施例のように各車軸11、12が連動駆動軸となっている電動車両100に適用される場合を想定して説明したが、前述の第1実施例、第2実施例あるいは第4実施例ないし第16実施例で掲げた構成の電動車両100に適用する実施も当然に可能である。
(第23実施例)
さて、上述の第22実施例では、補機223、224が交流電源負荷である場合を想定して補機電源ブリッジ240を構成しているが、補機223、224が直流電源負荷である場合にも同様に、補機電源ブリッジ240を構成することができる。
図33は、補機223、224が直流電源負荷である場合の補機電源ブリッジ240の構成例を示している。
すなわち、第1の電源系統81の電源線61、第2の電源系統82の電源線62それぞれに、双方向DC−DCコンバータ244D1、244D2の一方の端子が電気的に接続されるとともに、双方向DC−DCコンバータ244D1、244D2の他方の端子がそれぞれ、補機233、234に電気的に接続されて、補機電源ブリッジ240が構成されている。第1の電源系統81の電源線61、第2の電源系統82の電源線62の直流電力はそれぞれ、双方向DC−DCコンバータ244D1、244D2を介して補機233、234に供給される。補機233、234が回生制動を行う機器であるならば、補機233、234の制動により発生した電力が双方向DC−DCコンバータ244D1、244D2それぞれを介して第1の電源系統81の電源線61、第2の電源系統82の電源線62に直流電力として供給される。
双方向DC−DCコンバータ244D1、244D2それぞれの出力電流を調整することにより、第1の電源系統81と第2の電源系統82の負荷のバランスを調整することができる。
補機233、234が回生制動を行わない電力消費専用の機器であるならば、2つの双方向DC−DCコンバータ244D1、244D2に代えて、補機233、244側に向けてのみ電力を供給できる2つの片方向DC−DCコンバータを使用することができる。この場合も、2つの片方向DC−DCコンバータそれぞれの出力電流を調整することにより、第1の電源系統81と第2の電源系統82の負荷のバランスを調整することができる。
図1はシリーズハイブリッド電気自動車の構成例を概略的に示した図である。
図2は、第2実施例の電動車両の構成図である。
図3は、第3実施例の電動車両の構成図である。
図4は、第4実施例の電動車両の構成図である。
図5は、第5実施例の電動車両の構成図である。
図6は、第6実施例の電動車両の構成図である。
図7は、第8実施例の電動車両の構成図である。
図8は、第9実施例の電動車両の構成図である。
図9は、第10実施例の電動車両の構成図である。
図10は、第11実施例の電動車両の構成図である。
図11(a)は、第12実施例の電動車両の構成図で、図11(b)は、第13実施例の電動車両の構成図である。
図12(a)は、第14実施例の電動車両の構成図で、図12(b)は、第15実施例の電動車両の構成図である。
図13は、第1実施例の電動車両の構成図である。
図14は、2つの電動モータの各出力を合成して取り出すための装置構成例を示した図である。
図15(b)、(c)、(d)は、実施例の動力伝達機構の配置関係を例示した図で、図15(a)は、比較例の伝達機構の配置関係を例示した図である。
図16は、マスター発電機の発電インバータの制御の手順を示したフローチャートである。
図17は、スレーブ発電機の発電インバータの制御の手順を示したフローチャートである。
図18は、マスター発電機の発電インバータの制御と、スレーブ発電機の発電インバータの制御とを併せた制御手順を示したフローチャートである。
図19は、図13に示した構成の変形例を示した図である。
図20は、等馬力となる特性のカーブを示した図である。
図21は、駆動インバータの制御装置の構成例を示した図である。
図22は、第16実施例の電動車両の構成図である。
図23は、第17実施例の電動車両の構成図である。
図24は、第18実施例の電動車両の構成図である。
図25は、第18実施例の制御手段で行なわれる制御処理手順のフローチャートである。
図26は、第19実施例の電動車両の構成図である。
図27は、第19実施例の制御手段および蓄電部の内蔵コントローラで行なわれる制御処理手順のフローチャートである。
図28は、第19実施例の制御手段および蓄電部の内蔵コントローラで行なわれる制御処理手順のフローチャートである。
図29は、第19実施例の制御手段および蓄電部の内蔵コントローラで行なわれる制御処理手順のフローチャートである。
図30は、第20実施例の蓄電部の構成図である。
図31は、第21実施例の蓄電部の構成図である。
図32は、第22実施例の電動車両の構成図である。
図33は、第23実施例の補機電源ブリッジの構成図である。
符号の説明
1、2、3、4、5、6、7、8 駆動輪、100 電動車両、102 ディファレンシャルギヤ、 110 エンジン、 70、71、72、73、75、76、77 電動モータ、80、80A、80B、80C、80D、81〜86 電源系統、132 制御装置