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JP5269728B2 - 高靭性高熱伝導性硬化性樹脂組成物、その硬化物及びモールド電機機器 - Google Patents

高靭性高熱伝導性硬化性樹脂組成物、その硬化物及びモールド電機機器 Download PDF

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Description

本発明は高靭性高熱伝導性熱硬化性樹脂組成物、その硬化物及び該熱硬化性樹脂組成物で注型、硬化してなるモールド電機機器に係り、特に注型時低粘度で作業性が良好でボイド巻き込みが少なく、硬化後−30℃〜90℃のヒートサイクルが加わった時、硬化物にクラックが発生せず、部分放電開始電圧及び絶縁破壊電圧が高く、しかも、通電稼動時に高熱放散性ゆえに温度上昇が少ない硬化物を与えるモールド用高靭性高熱伝導性熱硬化性樹脂組成物、該熱硬化性樹脂組成物で注型、硬化してなるモールド電機機器、及びそれを組み込んだ電気装置に関する。
発電所から工場施設や一般家庭などに電気を送る場合、送電ロスを少なくするために電圧を上げている。そのような高圧電路に故障が生じた場合、瞬時に故障部を遮断し、電路の切り替えや負荷のオンオフを行い、電流・電圧の変化を監視しているスイッチギア(開閉装置)が、工場、病院やビルなどのあらゆる電気使用事業所の送変電設備に設置され、安定した電力供給に貢献している。スイッチギアの絶縁にはかつて圧縮空気が利用されていたが、後にSFガスへ転向し、最近は、環境問題から真空バルブを利用した熱硬化性樹脂組成物モールド固体絶縁が使用されている。
定格電圧33kVクラス以下の中電圧回路においては、スイッチギアに真空バルブが数多く用いられている。真空バルブは、容器内部の真空絶縁に比べて、外部の沿面が気中絶縁となり絶縁耐力が低いため、熱硬化性樹脂組成物でモールドして絶縁補強されている。熱硬化性樹脂組成物でモールドした従来の真空バルブの一例を図1に示す。図1において真空バルブ1はアルミナセラミック材等からなる絶縁円筒2の両端開口部を固定側端板3、可動側端板4により気密に封止して真空容器5を形成し、固定軸6は固定端板3により真空気密固定され、可動軸7はベローズ8を介して可動側端板4に取り付けられ、真空を保持したまま接点9の開閉が出来るようになっている。接点9が開閉するときに発生するアークを直ちに高真空中で消弧させ、高圧電路に故障が生じた場合、瞬時に故障部の断高電圧回路を遮断する。真空バルブ1は高真空中で接点9を開閉するので遮断に必要な電極開閉距離が短い状態で高電圧回路を遮断できる。このため、絶縁円筒2を短く出来る。このことは真空容器5の外側の沿面距離を短くすることになり、大気中の汚損物(湿気、塵埃)が真空容器5に付着したとき、耐電圧が低下し、外部閃落が発生し易くなる。このことの対策として、真空容器5の外側にエポキシ樹脂組成物モールド硬化物等の絶縁外皮11を注型によって一体に設けている。ところが、モールド硬化物11とアルミナセラミックス(絶縁円筒)2の熱膨張係数が異なるため、モールド硬化/冷却時、あるいはヒートサイクルが加わったとき、両者の間に熱応力が発生し、モールド硬化物にクラックが入る。そこで熱応力によるモールド硬化物のクラックを避けるため、絶縁円筒2とモールド硬化物11との間にシリコーン樹脂等の応力緩和層10が設けられている。このような応力緩和層を絶縁円筒とモールド硬化物の間に設けることは、特許文献7〜9に記載されている。
特開2001-6502号公報 特開平7-278413号公報 特開平8-217957号公報 特開2002-15621号公報 特開2007-56049号公報 特開平10-60085号公報 特開平5-298974号公報 特開平6-231661号公報 特開2008-258021号公報 特許第2853550号公報 特許第2938177号公報 特許第2524011号公報 特許第2680029号公報
「高電圧固体絶縁スイッチギアを実現した高靭性高強度エポキシ樹脂注型技術の開発」『素形材』2007年12月、36‐39頁。
藤井茂良・阪口修・佐藤純一「24/36kV固体絶縁スイッチギア」『東芝レビュー』Vol.59、No.12(2004)、56‐59頁。
(a)上述した従来の真空バルブでは、熱硬化性樹脂組成物のモールド硬化物11に生じるクラック発生、応力緩和層10と熱硬化性樹脂組成物のモールド硬化物11とは低い接着性、モールド後冷却時に応力緩和層10の熱収縮が、熱硬化性樹脂組成物のモールド硬化物11より大きいため、応力緩和層10と熱硬化性樹脂組成物のモールド硬化物11との間に剥離発生などにより、コロナが発生し、絶縁破壊に至るという問題が生じた。
(b)また、真空バルブに高圧電気を通電していると発熱し、熱硬化性樹脂組成物の硬化樹脂は断熱材であるため真空バルブの温度が上昇し、熱硬化性樹脂組成物の硬化樹脂のガラス転移温度や熱変形温度を上廻り、変形や絶縁破壊する危険性が生じた。この問題を解決するために、電気導体の表面積を大きくしたり、また特許文献1に記載されているように、放熱フィンを付けて真空バルブを冷却するする必要があった。
熱硬化性樹脂組成物の硬化樹脂にクラックや剥離が生じる原因として下記(1)〜(4)の4点が挙げられる。
(1)樹脂硬化物の破断歪が小さく、弾性率が大きいため、外部からの歪や熱応力を樹脂の変形で吸収できない。
(2)モールド真空バルブは、アルミナセラミック等の絶縁円筒、銅やアルミ等の電気導体、SUSやアルミ等のコロナシールド、樹脂硬化物等の絶縁及び構造材料から成り立っている。アルミナセラミック材等からなる絶縁円筒の熱膨張係数はシールドや導体である金属、樹脂硬化物に対して3倍以上小さい。熱膨張係数のミスマッチにより、製作時の冷却過程や使用時のヒートサイクル等で大きな熱応力や熱歪が発生し、樹脂硬化物の破断強度や破断歪を上回りクラックや剥離が生じる。
(3)樹脂硬化時に「(a)発熱により部分的に温度が高くなる、また、(b)熱硬化性樹脂組成物が硬化時に収縮する」ため、大きな内部応力が残留する。残留内部応力が樹脂硬化物の破断強度を上回りクラックや剥離が生じる。
(4)モールド金型、絶縁円筒や金属等のエッジ部に応力集中が起こり、その応力が樹脂硬化物の強度を上回り、樹脂硬化物に微細クラックが生じる。樹脂硬化物の靭性が低いため、微細クラックが許容欠陥寸法を上回り、微細クラックが進展し、樹脂硬化物クラックに到る。
前記(1)の対策として硬化物の靭性を向上するため、「1)硬化物中の架橋密度を低下する、2)熱可塑性樹脂、3)エラストマー成分を配合し、柔軟性を付与する、又は、4)ガラスファイバを添加する」等の方法が検討されてきた。1)の方法は網目鎖運動の拘束を弱くして靭性を増加するが、硬化前の樹脂組成物中の樹脂の分子量が大きくなって粘度が上昇し、注型・モールド不良になる傾向にある。又、硬化物の架橋密度の低下は同時に耐熱性や弾性率を大幅に低下させる傾向にあり、モールド時低粘度で、硬化後高靭性、高耐熱性、高熱伝導性の特性を同時に満足することは困難である。2)の方法も高靭性化が不十分なうえに注型・モールド時に粘度が上昇する傾向にある。
3)の方法として、非反応性エラストマー(例えば、NBR、ポリブタジエンやクロロプレンゴム等の液状ゴム、シリコーンオイル、シリコーンゴム、カルボキシル、或は、エポキシ変性の架橋NBR、アクリルゴム、コアシェルゴム、ウレタンゴム、熱可塑性ポリエステルエラストマー等)や反応性エラストマー(カルボキシル変性のブタジエン− アクリロニトリル共重合体CTBN、アミノ変性のブタジエン− アクリロニトリル共重合体ATBN、主鎖にカルボキシル基を含有するNBR、カルボキシル変性ポリブタジエン、液状ポリサルフィッド、変性シリコーンウレタンプレポリマー等)等を熱硬化性樹脂組成物に添加することが知られている。
靭性を発揮させるためには、樹脂硬化物のなかにエラストマー成分を微細に均一に分散させることが肝要であるが、モルフォロジー的に難しい。そのため、3)の方法として主に真空バルブのモールドには特許文献2〜4記載のようにシリコーンゴム、コアシェルゴム(コアである架橋ゴム粒子の表面にシェルとして異種ポリマーをグラフト重合したコアシェルゴム粒子)等のエラストマーを分散させる等の対策がとられている。しかしながら、いずれも硬化前、粘度が上昇したり、硬化後、ゴムの分散が不均一になり、特性がばらついたりする傾向にある。また特許文献5にはレジンに層状シリケート、酸化物粒子及び高誘電率粒子を分散した組成物が開示されているが、層状シリケートが酸化物粒子のスベリを改善する効果は不十分で、組成物の流動性が改善されない。
4)の方法は特許文献6に記載されているようにガラスファイバ(フィラメント)を添加することによって靭性を増加させるものであるが、加圧ゲル化等の方法でモールドする際、ガラスファイバが流れ方向に配向し、配向方向は靭性の増加が認められるが、配向の直角方向は靭性が増加せず、クラックの起点となり、根本的な解決とはならない。
樹脂単独硬化物の熱膨張係数は一般に(60〜200)×10−6/℃である。一方、導体に使われている銅やアルミの熱膨張係数はそれぞれ、17×10−6/℃、23×10−6/℃である。シールドに使われているSUSの熱膨張係数は(16〜17)×10−6/℃である。一方、絶縁筒に使われているアルミナセラミックスの熱膨張係数は7.9×10−6/℃である。即ち、樹脂単独硬化物の熱膨張係数は導体やシールド材の3〜11倍、絶縁筒材の7〜25倍大きい。そのため、樹脂組成物を注型・モールド硬化後、室温まで冷却する過程やヒートサイクル時に熱膨張率のミスマッチにより大きな熱応力、熱歪が発生し、該熱硬化性樹脂組成物の硬化物に剥離やクラックが起こり、真空バルブが絶縁破壊する。従って、熱硬化性樹脂組成物に破砕溶融シリカ(熱膨張係数:0.5×10−6/℃)や破砕結晶質シリカ(熱膨張係数:10×10−6/℃)等の充填材を添加することにより、樹脂硬化物の熱膨張係数を低下させ、熱膨張率のミスマッチによる熱応力の発生を極力少なくす必要がある。
前記(2)の対策として、樹脂そのものの硬化物の熱膨張係数を下げると同時に、充填材を高充填し、熱硬化性樹脂組成物の硬化物の熱膨張係数を金属やアルミナの熱膨張係数に近づける検討がなされた。充填材の添加は、「(1)硬化物が低熱膨張率となり、絶縁筒や導体に熱膨張率が近づく為、熱応力、熱歪が小さくなる。(2)硬化物の硬化収縮が小さくなり、硬化時の残留内部応力が小さくなる。(3)硬化物が高熱伝導率となって熱放散が良くなり、温度分布のムラが少なくなる為、残留内部応力が小さくなる。稼動時の温度上昇が少なくなる。(4)充填材は樹脂そのものより安価なので、モールドのコストが下がる。等の利点がある。前記のように、充填材を添加すると低コストになるうえに、真空バルブ製作及びヒートサイクル時に発生する熱応力、熱歪が小さくなり、真空バルブの信頼性が増す。その為、充填材の添加は、不可欠である。
一方、充填材を添加すると、「(1)´粘度が、上昇して注型しづらくなる。(2)´充填材と樹脂の界面から剥離やクラックが起こりやすくなる。(3)´固く、脆くなる。(4)´充填材がベース熱硬化性樹脂組成物より重いため、充填材の沈降が硬化中に起こり、絶縁層が不均一になる。」等の欠点が生じるため、これらを考慮して用いることが必要である。一般に、平均粒径を小さくすると硬化後の曲げ強さは増加するが硬化前に粘度が上昇し、モールド不良や硬化後の破壊靭性値が低下する傾向にあり、両立が困難である。充填材を多量に添加しても粘度の上昇をできるだけ抑えるために粒径分布を制御する方法が提案されている。特許文献4には、無機充填材として粒径の大きい粒子として結晶性または溶融の球形シリカ及び小径フィラーならびにコアシェルゴムを添加することも提案されている。粘度と強度、靭性の両立の観点から不満足ながら実際に真空バルブモールド用熱硬化性樹脂組成物の充填材として使用されているのは非特許文献1及び2に記載のように2種類以上の粒径分布を有するコストの高い真球状の溶融シリカが用いられている。
前記(3)の対策として、反応基の密度を小さくしたり、硬化温度を低くしたりする等により反応を緩やかに行う方法と、硬化収縮しない有機充填材を多量に添加する方法がある。反応基の密度の減少や充填材の多量添加は、モールド時の粘度を上昇させ、その効果は限られている。また、硬化温度を低くする方法は、硬化時間が長くなるためコストが高くなる欠点がある。
前記(4)に対して特許文献7〜9記載のようにシリコーン等のクッション層や補強材等の付加等の方法が採られている。しかしながら、予めクッション層のモールドや補強材の取り付けが必要であり、コストアップになったり、逆にクッション層とモールド樹脂との界面が剥離し、コロナ発生が多くなったりする問題点が生じる。
また、前記(a)及び(b)の対策を同時に行わなければならないが、同時に満足できずに製品の歩留まりが低かったり、大型になったり、放熱フィンを付けたりせざるを得ない状況にあった。
特許文献10には、非晶質シリカ、無機粉及び粒径1μm以下の球形非晶質シリカ粉を添加した樹脂組成物が開示され、特許文献11には5〜30μmの結晶質シリカと5〜40μmの球状溶融シリカを添加した樹脂組成物が開示されている。特許文献12には0.1〜0.9μmの球状シリカ(A)と3〜24μmの結晶シリカを添加した組成物が、特許文献13にはレジンと絡み合う界面活性剤とフィラーと化学結合する界面活性剤及びフィラーを添加した樹脂組成物が開示されている。
しかし、上記に述べた従来技術では、いずれも(1)〜(4)を同時に解決することはできない。
本発明は前記状況を鑑みてなされたものであり、その目的はコストが低く、注型時低粘度で作業性が良好でボイド巻き込みが少なく、硬化後−30℃〜90℃のヒートサイクルが加わった時硬化物にクラックが発生せず、部分放電電圧及び絶縁破壊電圧が高く、しかも、通電稼動時に高熱放散性ゆえに温度上昇が少ないモールド用熱硬化性樹脂組成物、その硬化物、該熱硬化性樹脂組成物で注型、硬化してなるモールド電機機器及びそれを組み込んだ電気装置を提供することにある。
本発明は、上記目的を達成するため、
1分子当たり2個以上のエポキシ基を有する多官能エポキシ樹脂と、酸無水物硬化剤と、無機充填材と、界面活性剤を含有する熱硬化性樹脂組成物の硬化物であって、前記組成物によりアルミナセラミックをモールドし、室温まで冷却したとき応力安全率が7以上、特に7〜10が好ましく、歪安全率が10以上、特に10〜15が好ましく、許容欠陥寸法が0.1mm以上、特に0.1〜0.3mmが好ましく、前記硬化物の熱伝導率が0.7W/m・K以上、特に0.7〜2.5W/m・Kが好ましいことを特徴とするモールド用高靭性高熱伝導性熱硬化性樹脂組成物の樹脂硬化物を提供する。
また本発明は、上記目的を達成するため、上記の本発明に係るモールド用高靭性高熱伝導性熱硬化性樹脂組成物の樹脂硬化物において、以下のような実施態様を含む。
(1)前記樹脂組成物は曲げ破断歪が1.5%以上、特に1.5〜2.5%が好ましく、熱伝導率が0.7W/m・K以上、特に0.7〜1.5W/m・Kが好ましく、破壊靭性値が2.7MPa・m1/2以上、特に2.7〜6.2MPa・m1/2が好ましい。
(2)前記樹脂組成物の全体に対して、前記無機充填材は55〜71vol%であり、前記無機充填材は平均粒径2〜9μmの破砕結晶質シリカと平均粒径4〜20μmの破砕溶融シリカを含み、該破砕結晶質シリカの平均粒径Xと該破砕溶融シリカの平均粒径Yとの比X/Yが0.1〜2.25である。X/Yは0.3〜1.5が好ましく、より好ましくは0.5〜1.1である。X/Yが0.7〜1.1のときに、最も諸特性に優れた硬化物を与える樹脂組成物が得られる。
(3)前記界面活性剤は、前記無機充填材の0.05〜2wt%であり、かつ前記多官能エポキシ樹脂、硬化剤及び無機充填材と反応する界面活性剤Aと、前記多官能エポキシ樹脂及び硬化剤と反応しないが前記無機充填材と反応する界面活性剤Bであり、
前記界面活性剤Aは全界面活性剤に対して15〜75wt%であり、前記界面活性剤Bは全界面活性剤に対して25〜85wt%である。
(4)可撓化剤としてコアシェルゴムを、前記樹脂組成物の総重量に対して0.5〜3.5wt%添加する。
(5)前記コアシェルゴムの、コアとシェルの比率(重量%)は40/60〜95/5が好ましい。
(6)滑材を前記破砕結晶質シリカの重量に対して0.5〜7wt%含有する。
(7)前記滑材は粒径1μm以下の球状シリカである。
(8)板状の沈降防止材を含有する。
また本発明は、上記目的を達成するため、端部に固定電極が設けられる固定軸と、前記固定軸に対向して、端部に可動電極が設けられる可動軸を有する真空バルブであって、前記固定電極、固定軸、可動電極及び可動軸を収容する真空容器及び導体を、前記樹脂硬化物で被覆したことを特徴とするモールド真空バルブを提供する。
また本発明は、上記目的を達成するため、巻線と該巻線の内周及び外周にそれぞれ形成された内周絶縁層及び外周絶縁層と、前記巻線の軸方向に端面に形成された端部絶縁層とを備えてなるモールドコイルにおいて、前記内周絶縁層、前記外周絶縁層、前記端部絶縁層、及び前記巻線内部の空間の少なくともいずれか一つを、前記樹脂硬化物で被覆したことを特徴とするモールドコイルを提供する。
また本発明は、上記目的を達成するため、一次巻線及び二次巻線を絶縁樹脂で被覆し、鉄心を装着したモールド形の計器用変成器において、該絶縁樹脂が、前記樹脂硬化物であることを特徴とする計器用変成器を提供する。
また本発明は、上記目的を達成するため、モールド用高靭性高熱伝導性熱硬化性樹脂組成物であって、
1分子当たり2個以上のエポキシ基を有する多官能エポキシ樹脂と、酸無水物硬化剤と、平均粒径2〜9μmの破砕結晶質シリカと平均粒径4〜20μmの破砕溶融シリカを含む無機充填材と、界面活性剤を含み、
前記破砕結晶質シリカと破砕溶融シリカを含む充填材を熱硬化性樹脂組成物の55〜71vol%含み、
前記破砕結晶質シリカと前記破砕溶融シリカの配合割合は、前者が10〜98wt%で残りが後者であり、
前記破砕結晶質シリカの平均粒径Aと破砕溶融シリカの平均粒径Bの比A/Bが0.1〜2.25であることを特徴とするモールド用高靭性高熱伝導性熱硬化性樹脂組成物を提供する。A/Bは0.3〜1.5が好ましく、より好ましくは0.5〜1.1である。沈降防止剤/Bが0.6〜1.1のときに、最も諸特性に優れた硬化物を与える樹脂組成物が得られる。
また本発明は、上記目的を達成するため、上記の本発明に係るモールド用高靭性高熱伝導性熱硬化性樹脂組成物において、以下のような実施態様を含む。
曲げ破断歪が1.5%以上、熱伝導率が0.7W/m・K以上、破壊靭性値が2.7MPa・m1/2以上の硬化物を与えるものである。
(10)アルミナセラミックをモールド硬化し、ガラス転移温度から室温まで冷却したときの応力安全率が7以上、歪安全率が10以上、許容欠陥寸法が0.1mm以上であることを特徴とする硬化物を与えるものである。
(11)可撓化剤としてコアシェルゴムを、前記モールド用高靭性高熱伝導性前記熱硬化性樹脂組成物の総重量に対して0.5〜3.5wt%含有する。
(12)前記多官能エポキシ樹脂が、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAF、ビスフェノールAD、アントラセンジオールまたは/及びナフタレンジオールとエピクロルヒドリンとの反応により得られるいずれかである。
(13)前記無機充填材は平均粒径2〜9μmの破砕結晶質シリカと平均粒径4〜20μmの溶融シリカである。
(14)前記界面活性剤として、エポキシ樹脂、無機充填材、硬化剤と反応する界面活性剤Aと、エポキシ樹脂及び硬化剤と反応しないが、無機充填材と反応する界面活性剤Bを含み、全界面活性剤に対して、前記界面活性剤Aは15〜75wt%、前記界面活性剤Bは25〜85wt%であり、前記界面活性剤は無機充填材に対して0.05〜2wt%である。
(15)前記破砕結晶質シリカと破砕溶融シリカの合計量は、全無機充填材の90wt%以上、好ましくは95%以上である。
また本発明は、上記目的を達成するため、端部に固定電極が設けられる固定軸と、前記固定軸に対向して、端部に可動電極が設けられる可動軸を有する真空バルブであって、前記固定電極、固定軸、可動電極及び可動軸を収容する真空容器及び導体を、前記熱硬化性樹脂組成物でモールドし、硬化した樹脂絶縁体を備えることを特徴とするモールド真空バルブを提供する。
また本発明は、上記目的を達成するため、巻線と該巻線の内周及び外周にそれぞれ形成された内周絶縁層及び外周絶縁層と、前記巻線の軸方向に端面に形成された端部絶縁層とを備えてなるモールドコイルにおいて、前記内周絶縁層、前記外周絶縁層、前記端部絶縁層、及び前記巻線内部の空間の少なくともいずれか一つを、前記高靭性高熱伝導性熱硬化性樹脂組成物でモールド硬化した樹脂絶縁体を備えることを特徴とするモールドコイルを提供する。
また本発明は、上記目的を達成するため、一次巻線及び二次巻線を絶縁樹脂で被覆し、鉄心を装着したモールド型の計器用変成器において、該絶縁樹脂が、前記モールド用高靭性高熱伝導性熱硬化性樹脂組成物の硬化物であることを特徴とする計器用変成器を提供する。
また本発明は、上記目的を達成するため、端部に固定電極が設けられる固定軸と、前記固定軸に対向して、端部に可動電極が設けられる可動軸を有する真空バルブであって、前記固定電極、固定軸、可動電極及び可動軸を収容する真空容器及び導体を熱硬化性樹脂組成物でモールド硬化する固体絶縁の形成方法であって、
予め、(1)(a)1分子当たり2個以上のエポキシ基を有する多官能エポキシ樹脂、(c)無機充填材、及び(d1)前記無機充填材、エポキシ樹脂及びエポキシ樹脂用酸無水物硬化剤と反応する界面活性剤Aを混合したエポキシ樹脂主剤系樹脂組成物Eと、
(2)(b)エポキシ樹脂用酸無水物硬化剤、(c)無機充填材、(d2)多官能エポキシ樹脂及びエポキシ樹脂用酸無水物硬化剤と反応しないが、無機充填材と反応する界面活性剤Bとを混合したエポキシ樹脂硬化剤系組成物Hとを、前記エポキシ樹脂主剤系樹脂組成物Eと前記エポキシ樹脂硬化剤系組成物Hを混合して前記(1)〜(6)のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物を調整し、導体を含む電気的装置の外周をモールド、硬化する固体絶縁の形成方法を提供する。電気的装置としては、真空スイッチ、コイルなどがあり、モールド硬化物は導体と接するか、絶縁物の周囲に接してもよい。
また本発明は、上記目的を達成するため、上記の本発明に係る固体絶縁の形成方法において、以下のような実施態様を含む。
(16)可撓化剤としてコアシェルゴムを前記エポキシ樹脂硬化剤系樹脂組成物Hに混合する。
(17)板状の沈降防止材を、前記エポキシ樹脂硬化剤系樹脂組成物Hに混合する。
(18)滑材を前記エポキシ樹脂硬化剤系樹脂組成物Hに混合する。
本発明のモールド用高靭性高熱伝導性熱硬化性樹脂組成物は、コストが低く、保管時に充填材の沈降が少なく、注型時低粘度で作業性が良く、ボイドが少なく、硬化後高靭性高熱伝導性を示す。また、本発明のモールド用高靭性高熱伝導性熱硬化性樹脂組成物でモールドした樹脂硬化物は応力緩和材を用いなくともクラックの発生がなく、初期及びヒートサイクル後の部分放電開始電圧、絶縁破壊電圧も高く、通電時に温度上昇が少なく、小型軽量化できるという優れた効果がある。本発明による樹脂硬化物を固体絶縁として有する電気装置は、種々の運転条件下で絶縁物に亀裂やクラックが発生せず、高い信頼性を有する。
従来のモールド真空バルブの断面模式図である。 本発明に係るモールド真空バルブの一例を示す断面模式図である。 本発明に係る高靭性高熱伝導性熱硬化性樹脂組成物をリニアモーターカー地上コイルに適用した一例を示す斜視模式図である。 図3AにおけるII−II線部分の拡大断面模式図である。 本発明に係る高靭性高熱伝導性熱硬化性樹脂組成物でモールドした変圧器用モールドコイルの斜視模式図である。 本発明に係る高靭性高熱伝導性熱硬化性樹脂組成物でモールドした変圧器用モールドコイルの斜視模式図である。 図5Aのモールドコイルを組み込んだ変圧器の一例を示す斜視模式図である。 本発明に係る高靭性高熱伝導性熱硬化性樹脂組成物でモールドした計器用変成器の構成の一例を示す平面模式図である。 図6Aのモールドコイルを組み込んだ計器用変成器の構成の一例を示す断面模式図である。
以下、本発明に係る実施の形態について詳細に説明する。ただし、本発明はここで取り上げた実施の形態に限定されるものではない。
以下に、本発明の高靭性高熱伝導性熱硬化性樹脂組成物について、構成物質ごとに説明する。
(多官能エポキシ樹脂)
本発明における多官能エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフエノールA及びビスフエノールFとエピクロルヒドリンとの反応により得られるジグリシジルエーテル、ビスフエノールAのジグリシジルエーテル、ビスフエノールFのジグリシジルエーテル、ナフタレンのジグリシジルエーテル、アントラセンのジグリシジルエーテル、ビフェニルのジグリシジルエーテル、水添加ビスフエノールAのジグリシジルエーテル、水添加ビスフエノールFのジグリシジルエーテル、ブタジエンジエポキサイド、3,4‐エポキシシクロヘキシルメチル‐(3,4‐エポキシ)シクロヘキサンカルボキシレート、ビニルシクロヘキセンジオキサイド、4,4′‐ジ(1,2‐エポキシエチル)ジフェニルエーテル、4,4′‐ジ(1,2‐エポキシエチル)ジフェニルエーテル、4,4′‐(1,2‐エポキシエチル)ビフェニル、2,2′‐ビス(3,4‐エポキシシクロヘキシル)プロパン、レゾルシンのジグリシジルエーテル、フロログリシンのジグリシジルエーテル、メチルフロログルシンのジグリシジルエーテル、ビス(2,3‐エポキシシクロペンチル)エーテル、3‐(3,4‐エポキシ)シクロヘキセン‐5,5‐スピロ(3,4‐エポキシ)‐シクロヘキサン‐m‐ジオキサン、ビス‐(3,4‐エポキシ‐6‐メチルシクロヘキシル)アジペート、N,N′‐m‐フエニレンビス(4,5‐エポキシ‐1,2‐シクロヘキサンジカルボキシイミド、ヘキサヒドロフタル酸のジグリシジルエステル、テトラヒドロフタル酸のジグリシジルエステルなどの2官能エポキシ化合物、パラアミノフエノールのトリグリシジルエーテル、1,3,5‐トリ(1,2‐エポキシエチル)ベンゼン、2,2′,4,4′‐テトラグリシドキシベンゾフエノン、テトラグリシドキシテトラフェニルエタン、フエノールホルムアルデヒドノボラックのポリグリシジルエーテル、クレゾールホルムアルデヒドノボラックのポリグリシジルエーテル、キシレノールホルムアルデヒドノボラツクのポリグリシジルエーテル、ノニルフエノールホルムアルデヒドノボラツクのポリグリシジルエーテル、フェニルフエノールホルムアルデヒドノボラツクのポリグリシジルエーテル、ビスフエノールAホルムアルデヒドノボラツクのポリグリシジルエーテル、ビスフエノールFホルムアルデヒドノボラツクのポリグリシジルエーテル、グリセリンのトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンのトリグリシジルエーテルなどの3以上の官能基を有するエポキシ化合物が用いられる。
多官能エポキシ化合物は前記エポキシ樹脂を単独又は2種以上配合して用いることができる。前記エポキシ樹脂のうち、粘度及び靭性のバランスの観点からビスフエノールA及びビスフエノールFとエピクロルヒドリンとの反応により得られるジグリシジルエーテルでエポキシ当量が160〜190のものが特に好ましい。又、耐侯性を重視する用途には、ヘキサヒドロフタル酸のジグリシジルエステル、水添加ビスフエノールAのジグリシジルエーテルや3,4‐エポキシシクロヘキシルメチル‐(3,4‐エポキシ)シクロヘキサンカルボキシレート等を用いても良い。
(酸無水物硬化剤)
本発明における硬化剤としては、例えば、無水フタル酸、無水イタコン酸、無水コハク酸、無水シトラコン酸、無水アルケニル酸、無水ドデセニルコハク酸、無水マレイン酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水メチルテトラヒドロフタル酸、無水メチルヘキサヒドロフタル酸、無水ピロメリツト酸、無水シクロペンタンテトラカルボン酸,無水ベンゾフエノンテトラカルボン酸、エチレングリコールビストリメリテート,グリセリントリストリメリテート,メチルシクロペンダジエンの無水マレイン酸付加物,無水クロレンデイツク酸、無水アルキル化エンドアルキレンテトラヒドロフタル酸、無水メチル2‐置換ブチニルテトラヒドロフタル酸などの酸無水物、フエノール、クレゾール、キシレノール、ノニルフエノール、フェニルフエノール、ビスフエノールAなどの一種または二種以上の混合物とホルムアルデヒドないしパラホルムアルデヒドとを酸、塩基又は中性塩などを触媒として反応させて得られたノボラック樹脂、ポリ‐p‐ビニルフエノール、ポリアミド、アミンなどが用いられる。このうち、メチルシクロペンタジエンの無水マレイン酸付加物、無水メチルテトラヒドロフタル酸、無水メチルヘキサヒドロフタル酸などのような液状の酸無水物が有用である。
多官能エポキシ樹脂と硬化剤との配合割合は特に制限はない。硬化促進剤が存在するときは多官能エポキシ樹脂に対して0.7〜1.2当量配合することが好ましく、0.98〜1.2当量配合することがより好ましい。
(硬化触媒)
本発明における硬化促進剤としては、多官能エポキシ樹脂と酸無水物との反応を促進するものであれば良い。そのような硬化促進剤としては、例えば、2‐メチルイミダゾール、2‐エチル‐4‐メチルイミダゾール、2‐ウンデシルイミダゾール、2‐ヘプタデシルイミダゾール、2‐フェニルイミダゾール、1‐ベンジル‐2‐メチルイミダゾール、1‐シアノエチル‐2‐メタルイミダゾール、1‐シアノエチル‐2‐エチル‐4‐メチルイミダゾール、1‐シアノエチル‐2‐ウンデシルイミダゾール、2,4‐ジアミノ‐6‐[2‐メチルイミダソリル‐(1)]‐エチル‐s‐トリアジン、2,4‐ジアミノ‐6‐[2‐エチル‐4‐メチルイミダゾイル‐(1)]‐エチル‐s‐トリアジン、2,4‐ジアミノ‐6‐[2‐ウンデシルイミダゾリル‐(1)]エチル‐s‐トリアジン、2‐フェニル4,5‐ジヒドロキシメチルイミダゾ−ル、2‐フェニル4‐メチル‐5‐ヒドロキシメチルイミダゾール、1‐シアノエチル‐2‐フェニル4,5‐ジ(シアノエトキシメチル)イミダゾールなどのイミダゾール、2‐メチルイミダゾリウム・イソシアヌレート、2‐フェニルイミダゾリウム・イソシアヌレートなどのイミダゾールとイソシアヌル酸の塩、1‐シアノエチル‐2‐ウンデシルイミダリウム・トリメリテート、1‐シアノエチル‐2‐フェニルイミダゾリウム・トリメリテートなどのイミダゾールの有機酸塩、2‐エチル‐4‐メチル‐イミダゾール・テトラフェニルボレート、2‐メチルイミダゾール・テトラフェニルボレートなどのイミダゾールボレード、トリエチルアミン、n‐トリプロピルアミン、N‐ベンジルジメチルアミンなどの第三級アミン、N‐メチルモルホリン、N‐メチルピペラジン、1,8‐ジアザービシンロ(5,4,0)‐ウンデセン、テトラメチルブチルグアニジン、トリフェニルホスフイン、テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレートなどがある。又、アミンあるいは4級アンモニウムの有機酸塩、アミンの分子間配位化合物、アミンの分子内配位化合物、アミンとアルデヒド又はケトンとの反応生成物、尿素誘導体及びジシアンジアミド、ヒドラジノ基を有する化合物、ボレート、フエロセン、リン化合物、アミンのマイクロカプセルなどが使用できる。これらの硬化促進剤は単独または混合して用いても良い。硬化促進剤の配合量は、多官能エポキシ樹脂100重量部、硬化剤80〜120重量部に対して0.2〜10重量部加えることが好ましい。
(無機充填材)
本発明における無機充填材は、本発明の熱硬化性樹脂組成物の目的及び用途等に応じて、使用される。平均粒径2〜9μmの破砕結晶質シリカ及び平均粒径4〜20μmの破砕溶融シリカを必須成分として用いる。破砕結晶質シリカ及び破砕溶融シリカ共に、原料を破砕したもので、低コストで、不定形で角ばった形状を有している。この点は球状溶融シリカとは異なる。但し、角ばった形状を持つため、破砕結晶質シリカと破砕溶融シリカの平均粒径の比を適切に選定することが必要で、これが不適切であると、組成物の流動性、無機充填時の充填性が損なわれる可能性がある。
同一化学成分を有する充填材でも、その粒子の大きさ、粒径分布、形状で樹脂の各種特性への影響は大きく異なる。一般に、樹脂組成物の機械強度を向上するためには、繊維状または針状の物質、例えばガラス、アスベスト、珪酸カルシウムなどを使用することが良いとされている。また樹脂組成物の粘度は、充填材の添加量のほかに、充填材の粒度分布、界面活性剤の種類、添加量に大きく依存する。従来、粒径の小さい充填材を添加すると粘度が上昇すると言われ、粒径の比較的大きい充填材を用いていた。しかし粒径が大きいと沈降が生じ易いため、作業性を犠牲にして粒径の小さい充填材を微量添加して粘度を上昇させ、硬化時間を短くする方法が採用されていた。しかしこの方法では、高粘度の為、ボイドが残留し易いうえ、硬化速度が速いゆえに、残留歪が大きいという問題が生じた。そこで沈降が生じず、高粘度にならないために、(式1)で示されるRosin‐Rammlerの式によって粒度分布を制御する試みがなされた。その結果、粒径が80μm以上の粒子をカットし、粒度分布の異なる充填材を適度に混合し、(式1)のn値を0.9以下とできるだけ小さくし、粒度分布を広くすると、沈降を起こさずに粘度が低くできることが見出された。
(Dp)=100exp(−bDp) ・・・(式1)
(Dp):最大粒径から粒径Dpまでの累積重量%
Dp:粒径
b及びn:定数
ここで、粒径が80μm以上をカットしているのは、粒径が80μm以上のものが存在すると沈降が生じ、クラックを発生しやすい為である。本発明者等は粉砕条件の異なる破砕結晶質シリカを混ぜることにより、(式1)のRosin‐Rammlerの式のn値を0.3〜0.9に調整し、粘度を低めることが出来た。また、破砕結晶質シリカの平均粒径が3〜9μm、破砕溶融シリカの平均粒径が3〜15μmであるときに(式1)のRosin‐Rammlerの式のn値を0.3〜0.9に調整することができた。本発明の無機充填材の添加量は、熱硬化性樹脂組成物に対して55〜71vol%が好ましい。無機充填材の添加量が71Vol%を超えると粘度が高くなってボイドが含まれたり、未充填部分が大きくなったりして実質的に使えない。また、充填材の添加量が55vol%を下まわると熱伝導率が低くなり、稼動時の温度が上昇し、短時間に絶縁破壊するようになるからである。
また、本発明者らは、無機充填材を構成する破砕結晶質シリカの平均粒径(X)と破砕溶融シリカの平均粒径(Y)の比(X/Y)は、0.1〜2.25が好ましく、0.3〜1.5がより好ましいことを見出した。
一般的に平均粒径が粗い方が、また、粒度分布が広い方が粘度は低く、細部まで充填しやすくなる。しかし、粗すぎると充填材の沈降が生じて硬化物の特性がばらつき、モールド品の電気特性が悪くなる。破砕結晶質シリカの比重、弾性率はそれぞれ2.65、130GPaである。破砕溶融シリカの比重、弾性率はそれぞれ2.21、78GPaである。破砕結晶質シリカのほうが破砕溶融シリカよりも比重が大きく、沈降が起こりやすいため、平均粒径を大きくすることができない。これが、破砕結晶質シリカと破砕溶融シリカの最大使用平均粒径の違いである。
また、サブミクロンの微粒子が混ざると急速に粘度が上昇する。破砕溶融シリカは溶融時に微粉末が生成しやすいことと、弾性率が結晶質シリカより小さいため細かいものが生成しやすいために最小平均粒径が大きくなっている。
破砕結晶質シリカの平均粒径(X)と破砕溶融シリカの平均粒径(Y)の比(X/Y)が2.25より大きくなることは、即ち、Xが9μmより大きくなるか、Yが4μmよりも小さくなることである。比較的比重が大きく粗い結晶質シリカの粒子が多くなると、大きな粒径の破砕結晶質シリカが沈降し、硬化物の特性がばらつき、モールド品の電気特性が悪くなる。一方、破砕溶融シリカの平均粒径Yが4μmよりも小さくなるとサブミクロンの微粒子の量が多くなり、粘度が上昇し、未充填が起こりやすく、モールド品の電気特性が悪くなる。
(X/Y)が0.1より小さくなることは、即ち、破砕結晶質シリカ粒子が2μmより小さくなるか、破砕溶融シリカの粒径が9μmより大きくなることである。この場合、上記と同様に、破砕結晶質シリカの粒径が2μmよりも小さくなると、サブミクロンの微粒子の量が多くなり、粘度が上昇し、未充填が起こりやすく、モールド品の電気特性が悪くなる。また、破砕溶融シリカの粒径が9μmより大きくなると、沈降し、硬化物の特性がばらつき、モールド品の電気特性が悪くなる。
X/Yが0.3〜1.5の範囲であると、樹脂組成物の流動性が良好で、硬化物の特性も良好である。
その他の無機充填材として、具体的には、無機充填材総量の10wt%以下、好ましくは5wt%以下のアルミナ、アスベスト、アタバルジヤイト、カオリンクレー、火山灰、カーボンブラツク、グラフアイト、珪酸カルシウム、珪藻土、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化鉄、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、スレート粉、セリサイト、ボロンナイトライド、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、タルク、長石粉、二酸化モリブデン、バライト、蛭石、ホワトテイング、マイカ、ロウ石クレー、無水石膏、ベリリア、ムライト、ジルコン、炭化ケイ素、窒化ケイ素、各種金属粉末などがある。このうち、熱伝導率の観点から、アルミニウム各種化合物系、各種金属粉末、ベリリア、炭化ケイ素、ボロンナイトライドなどが好ましい。
(滑材)
本発明者等は、特許文献10に記載されたように、平均粒径0.1〜0.9μmの球状無機充填材が、粗の無機充填材の表面に付着してコロの役目をしてズリ速度が大きいときに流動性が向上したと推定して更に検討を加えた。その結果、平均粒径3〜9μmの破砕結晶質シリカに、破砕結晶質シリカの1/10〜1/100の粒径の球状シリカを0.5〜7wt%付着させると、球状シリカの添加量が多くなるに従い、B型粘度計で測定する様な低ズリ速度において、見かけの粘度は従来から言われているように増加することがわかった。しかし、ズリ速度が大きいとき、即ち、高シェア状態の注型、モールド時に見かけの粘度は球状シリカを添加しないときより低くなり、流動性が増加した。即ち、高シェア状態の加圧ゲル化方式では有利になるということが分かった。又、付着する球状無機充填材の平均粒径が小さいと、微粒子間に働くファンデルワールス力の影響が大きくなりすぎ、かえって粘度が上昇する傾向にあった。逆に、付着する球状充填材の平均粒径が大きすぎると、その添加効果が少なくなる傾向にあった。
また、付着する球状充填材の量が少ないと流動性向上効果が無く、逆に多いと流動性が悪くなる傾向にあった。これは恐らく、付着する球状充填材が粗の無機充填材のコロの役目を果たして、ズリ速度が大きいときに流動性が向上したためであると思われる。本発明の熱硬化性樹脂組成物に、滑材として破砕結晶質シリカの1/10〜1/100の球状シリカを破砕結晶質シリカの0.5〜7wt%添加することは、真空バルブの注型、モールド時の流動性を高めるのに極めて有効であることを見出した。
(沈降防止材)
水和アルミナ、マイカのようなフレーク(薄片)状の無機充填材(沈降防止材)を1〜5wt%添加すると、熱硬化性樹脂の保管状態、或は加熱状態での熱硬化性樹脂組成物中の無機充填材の沈降を防ぐことができる。沈降防止材としては、フレーク状のガラス、タルク、マイカ、クレー、セリサイト、カーボン等が挙げられ、該沈降防止材の寸法には特に制限はないが、成形品の剛性および寸法安定性の面より平均粒子径10〜600μmで、平均形状比(長径/厚み)が2〜120であることが好ましい。
(界面活性剤)
充填材と熱硬化性樹脂組成物の馴染を良くし、充填材と樹脂の界面に生じるクラックを減少させるためには、界面活性剤が不可欠である。本発明における界面活性剤は、無機充填材及び有機マトリックスレジンと化学結合する反応性官能基を有する界面活性剤(本発明において、界面活性剤Aとする)と、無機充填材と化学結合し、有機マトリックスレジンと絡み合う非反応性有機基を有する界面活性剤(本発明において、界面活性剤Bとする)を併用することが低粘度化と高靭性化の両立の観点から好ましい。界面活性剤Aはエポキシ樹脂、無機充填材、硬化剤と反応し、界面活性剤Bは、エポキシ樹脂及び硬化剤と反応しないが無機充填材と反応する。
界面活性剤Aとしては、例えば、(一般式1)で表わされるシラン系界面活性剤がある。
Figure 0005269728
ここでnは2又は3、Rはメチル基又はエチル基、Xは末端にエポキシ基、アミノ基、ビニル基、メルカプト基、メタクリル基などを有する有機基である。以下、後述する一般式についてもn、Rの定義は同様とする。例えば、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β‐メトキシエトキシ)シラン、γ‐メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ‐グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β‐(3,4‐エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N‐β‐(アミノエチル)γ‐アミノプロピルトリメトキシシラン、N‐β‐(アミノエチル)γ‐アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ‐アミノプロピルトリエトキシシラン、N‐フェニルγ‐アミノプロピルトリメトキシシラン、γ‐メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ‐クロロプロピルトリメトキシシラン、γ‐ウレイドプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2‐メトキシエトキシ)シランなどがある。このうち、γ‐グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β‐(3,4‐エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ‐ウレイドプロピルトリエトキシシランが有用である。
界面活性剤Bとしては、無機充填材と化学結合し、有機マトリックスレジンと絡み合う非反応性有機基を有する界面活性剤であれば特に制限はない。例えば、(一般式2)で表わされるシラン系カップリング剤がある。
Figure 0005269728
ここで、R′は長鎖アルキル基、アラルキル基などの有機マトリックスレジンと非反応性の有機基である。以下、後述する一般式についてもR´の定義は同様とする。具体的にはイソロピルトリエトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、ベンゾルトリメトキシシラン、イソプロピルメチルジメトキシシラン、n‐ブチルトリメトキシシラン、n‐ヘキシルトリエトキシシラン、ステアリルトリメトキシシラン、t‐ブチルトリメトキシシラン、n‐デカメチレントリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシランなどがある。
また、例えば、(一般式3)〜(一般式10)で表わされるようなチタネート系界面活性剤がある。
Figure 0005269728
Figure 0005269728
Figure 0005269728
Figure 0005269728
Figure 0005269728
Figure 0005269728
Figure 0005269728
Figure 0005269728
ここで、(一般式3)〜(一般式6)におけるa、bは、a+b=4を満たす。具体的には、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリステアロイルチタネート、イソプロピルトリデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフエート)チタネート、イソプロピルトリ(ラウリル−ミリスチル)チタネート、イソプロピルジ(ラウリル−ミリスチル)メタクリルチタネート、イソプロピル、ラウリル‐ミリスチルジメタクリルチタネート、イソプロピルトリリシノイルチタネート、イソプロピルメタクリルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリメタクリルチタネート、イソプロピルジイソステアロイルアクリルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリアクリルチタネート、イソプロピル‐4‐アミノベンゼンスルホニルジ(ドデシルベンゼンスルホニル)チタネート、イソプロピルジ(アミノベンゾイル)イソステアロイルチタネート、イソプロピルトリキユミルフェニルチタネート、イソプロピルトリ(メトキシフェニル)チタネート、イソプロピルジ(2‐フオミルフェニル)イソステアロイルチタネート、イソプロピルトリ(2‐フオミルフェニル)チタネート、イソプロピルトリ(N, N‐ジメチルエチルアミノ)チタネート、イソプロピルトリ(N‐エチルアミノエチルアミノ)チタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルピロホスフエート)チタネート、イソプロピルトリ(ジブチルプロホスフエート)チタネートなどのモノアルコキシチタネート、テトライソプロピルビス(ジラウリルホスフアイト)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスフアイト)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスフアイト)チタネート、テトラオクチルビス(ジラウリルホスフアイト)チタネート、テトラ(2,2‐ジアリルオキシメチル‐1‐ブチル)ビス(ジトリデシルホスフアイト)チタネートなどのコーデイネートタイプのチタネート、ジイソステアロイルオキシアセテートチタネート、ジ(ジオクチルホスフエート)オキシアセテートチタネート、ジ(ジオクチルホスフエート)オキシアセテートチタネート、ジ(ジオクチルピロホスフエート)オキシアセテートチタネート、ジ(ジブチルプロホスフエート)オキシアセテートチタネート、イソステアロイルメタクリロイルオキシアセテートチタネート、ジメタクリロイルオキシアセテートチタネート、イソステアロイルアクリロイルオキシアセテート、ジアクリロイルオキシアセテートチタネート、ビス(クミルフェニル)オキシアセテートチタネート、4‐アミノフェニルスルホニルドデシルフェニルスルホニルオキシアセテートチタネート、4‐アミノフェニルイソステアロイルオキシアセテートチタネート、ビス(2‐フオミルフエノキシ)オキシアセテートチタネート、ジアンスラロイルオキシアセテートチタネート、ジイソステアロイルエチレンチタネート、ビス(オクチルホスフエート)エチレンチタネート、ジ(ジオクチルピロホスフエート)エチレンチタネート、メタクリロイルイソステアロイルエチレンチタネート、ジメタクリロイルエチレンチタネート、ジアクリロイルエチレンチタネート、4‐アミノフェニルイソステアロイルチタネート、ジアンスラニルエチレンチタネート、4‐アミノフェニルスルホニルドデシルフェニルスルホニルエチレンチタネート、ビス(クミルフエノキシ)イソステアロイルエチレンチタネート、ビス(2‐フオミルフェニル)エチレンチタネートなどのキレートタイプのチタネート、トリイソプロピルイソステアロイルチタネート、トリオクチルイソステアロイルチタネートなどのトリアルコキシチタネートが使用できる。このうち、モノアルコキシシランとモノアルコキシチタネートが特に有用である。
界面活性剤Aの配合量が多すぎると耐クラック性が低下する傾向にある。また、界面活性剤Bの配合量が多すぎると、耐熱性が低下する傾向がある。界面活性剤は無機充填材に対して0.05〜2wt%配合することが好ましく、0.1〜1.5wt%配合することがより好ましい。
(可撓化剤)
本発明では、強靭性化や内部応力低減のため、エポキシ樹脂組成物に非反応性エラストマー(例えば、NBR、ポリブタジエンやクロロプレンゴム等の液状ゴム、シリコーンオイル、シリコーンゴム、カルボキシル或はエポキシ変性の架橋NBR、アクリルゴム、コアシェルゴム、ウレタンゴム、熱可塑性ポリエステルエラストマー等)、反応性エラストマー(カルボキシル変性のブタジエン−アクリロニトリル共重合体CTBN、アミノ変性のブタジエン− アクリロニトリル共重合体ATBN、主鎖にカルボキシル基を含有するNBR、カルボキシル変性ポリブタジエン、液状ポリサルフィッド、変性シリコーンウレタンプレポリマー、コアシェルゴム等)及び熱可塑性樹脂粒子等の有機粒子(可撓化剤)を配合することができる。本発明では特に、可撓化剤としてコアシェルゴムを使用することが有用である。ここで、本発明におけるコアシェルゴムとは、中心部と表層部が異なるポリマーからなる球状ポリマー粒子で、コア相と単一のシェル相の二層構造を有するものである。
コアシェルゴムのコアの構成成分としては、特に限定されないが、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n‐プロピル(メタ)アクリレート、n‐ブチル(メタ)アクリレート、i‐ブチル(メタ)アクリレート、2‐エチルヘキシル(メタ)アクリレート、エトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシトリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、4‐ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。好ましくはn‐ブチルアクリレート、エチルアクリレートである。これらの単量体には、2個以上のビニル性官能基を持つ単量体が含まれてもよい。特に限定されないが、エチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブチレングリコールジメタクリレート、ジビニルベンゼン等が挙げられる。好ましくはアリルメタクリレートである。また、ブタジエン‐アクリロニトリル‐スチレン(ABS)、メチルメタクリレート‐ブタジエン‐スチレン(MBS)、メチルメタクリレート‐ブチルアクリレート‐スチレン(MAS)、オクチルアクリレート‐ブタジエン‐スチレン(OABS)、アルキルアクリレート‐ブタジエン‐アクリロニトリル‐スチレン(AABS)、ブタジエン‐スチレン(SBR)及びメチルメタクリレート‐ブチルアクリレート‐シロキサンを始めとするシロキサン等の粒子状弾性体、又はこれらを変性したゴム等が挙げられる。
シェルの構成成分としては、特に限定されないが、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。好ましくはメチルメタクリレート、エチルアクリレートである。単量体には、2個以上のビニル性官能基を持つ単量体が含まれてもよい。特に限定されないがエチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、1,3‐ブチレングリコールジメタクリレート、1,4‐ブチレングリコールジメタクリレート、ジビニルベンゼン等が挙げられる。好ましくはアリルメタクリレートである。エポキシ樹脂との界面接着性を向上させるために、シェル部の構成成分として官能基をもつ単量体を導入することも出来る。官能基の例を挙げると、エポキシ基、水酸基、アミド基、イミド基、アミン基、イミン基、カルボン酸基、無水カルボン酸基等が挙げられる。
コア/シェル層の比率(重量比)は、40/60〜95/5であり、より好ましくは60/40〜85/15である。コア/シェル層の比率が40/60をはずれてコアの比率が低下すると、得られる硬化物の靭性が劣る場合があるため好ましくない。一方、コア/シェル層の比率が95/5をはずれシェル層の比率が低下すると、組成物中で重合体粒子が分散しにくくなり、期待する物性及び真空バルブの電気物性が得られない可能性がある。
以上述べたコアシェルゴムは、エポキシ樹脂中に予め均一に分散された状態で市販されているものを用いることができるが、コアシェルゴム単独で市販されているものを用いる方がエポキシ樹脂組成物を配合する際の自由度が広くできることからより好ましい。コアシェルゴムの市販品としては、例えば、ブタジエン、メタクリル酸アルキル、スチレン共重合物からなる“パラロイド”EXL‐2655(Rohm&Haas社製)、アクリル酸エステル・メタクリル酸エステル共重合体からなる“スタフィロイド”AC‐3355、TΓ‐2122(武田薬品工業(株)製、現在、ガンツ化成株式会社に移管)、アクリル酸ブチル・メタクリル酸メチル共重合物からなる“パラロイド”EXL‐261、D11L‐26ID、EXL‐3387(Rohm&Haas社製)等を使用することができる。
主としてブチルアクリレートから成るコアと、ポリ(メタクリル酸メチル)のシェルとからなるコアシェル粒子を有するコアシェル型パラロイドKM355等を使用することができる。Metablen社から粒径が80〜120ナノメータの主としてポリブタジエンから成るコアを予め形成し、その上にメチルメタアクリレートをベースにしたシェルを形成したコアシェル粒子から成るメタブレンC、E、アクリル系ゴムを使用したメタブレンW、シリコーン・アクリル複合ゴムを使用したメタブレンSの名称で市販されている。架橋シリコーンコアとポリメタクリル酸メチルのシェルから成るコアシェルゴムがジェニオパールの名称で旭化成ワッカーシリコーン社から市販されている。また、ガンツ化成株式会社のゼフィアックF351、スタフィロイドIM−203、IM−401、IM−601、官能基変性コアシェルゴムとしてカネカ社から市販されているカネエースMXなども使用できる。特に、エポキシ樹脂としてエポキシ当量が160〜180である少なくともビスフエノールA、または/及びビスフエノールFとエピクロルヒドリンとの反応により得られる低分子量ジグリシジルエーテルを使用する場合は、コアシェルゴム微粒子を加えることが必須である。コアシェルゴム微粒子は熱硬化性樹脂組成物に対して0.5〜3.5wt%添加することが好ましく、0.65〜3.14wt%添加することがより好ましい
(実験例)
本発明を実験例により具体的に説明するが、本発明は以下の実験例に限定されるものではない。以下実験例および比較例において用いた略号は以下の通りである。なお、以下の実験例は本発明の思想を適用したものを意味し、本発明の範囲外のものを意味するものではない。
(多官能エポキシ樹脂)
E1:ビスフエノールAFのジグリシジルエーテル(エポキシ当量174)
E2:ビスフエノールADのジグリシジルエーテル(エポキシ当量173)
E3:ビスフエノールFのジグリシジルエーテル(エポキシ当量160)
E4:ビスフエノールAのジグリシジルエーテル(エポキシ当量175)
E5:ビスフエノールAFのジグリシジルエーテル(エポキシ当量184)
E6:ビスフエノールAのジグリシジルエーテル(エポキシ当量187)
E7:ビスフエノールFのジグリシジルエーテル(エポキシ当量190)
E8:ビスフエノールAFのジグリシジルエーテル(エポキシ当量192)
E9:ビスフエノールADのジグリシジルエーテル(エポキシ当量203)
E10:ビスフエノールAFのジグリシジルエーテル(エポキシ当量224)
E11:ビスフエノールAFのジグリシジルエーテル(エポキシ当量295)
E12:ビスフエノールADのジグリシジルエーテル(エポキシ当量295)
(酸無水物硬化剤)
H1:無水メチルナジック酸(酸無水物当量178)
H2:メチルテトラヒドロ無水フタル酸(酸無水物当量166)
H3:メチルヘキサヒドロ無水フタル酸(酸無水物当量168)
(無機充填材)
(破砕結晶質シリカ);結晶質シリカ(Crystalline Silica)の頭文字CSを用いて示す
CS‐1:破砕結晶質シリカ、平均粒径23.3μm、粒度累積分布60μm以下100%
CS‐2:破砕結晶質シリカ、平均粒径10.0μm、粒度累積分布60μm以下100%
CS‐3:破砕結晶質シリカ、平均粒径5.0μm、粒度累積分布48μm以下100%
CS‐4:破砕結晶質シリカ、平均粒径1.0μm、粒度累積分布10μm以下100%、1μm以下60%
CS‐5:破砕結晶質シリカ、平均粒径4.5μm、粒度累積分布48μm以下100%
CS‐6:破砕結晶質シリカ、平均粒径5.4μm、粒度累積分布48μm以下100%
CS‐7:破砕結晶質シリカ、平均粒径6.2μm、粒度累積分布48μm以下100%
CS‐8:破砕結晶質シリカ、平均粒径7.1μm、粒度累積分布48μm以下100%
CS‐9:破砕結晶質シリカ、平均粒径8.2μm、粒度累積分布48μm以下100%
(破砕溶融シリカ);溶融シリカ(Molten Silica)の頭文字MSを用いて示す
MS‐1:破砕溶融シリカ、平均粒径30μm、粒度類積分布80μm以下100%、48μm以下80%
MS‐2:破砕溶融シリカ、平均粒径15.1μm、粒度類積分布80μm以下100%、48μm以下85%、
MS‐3:破砕溶融シリカ、平均粒径9μm、粒度類積分布48μm以下100%
MS‐4:破砕溶融シリカ、平均粒径8μm、粒度類積分布48μm以下100%
MS‐5:破砕溶融シリカ、平均粒径5.4μm、粒度累積分布48μm以下100%
MS‐6:破砕溶融シリカ、平均粒径2.5μm、粒度類積分布48μm以下100%
(滑材);滑材(Lubricating Material)の頭文字LMを用いて示す
LM‐1:滑材、球状溶融シリカ、平均粒径0.1μm、粒度累積分布1μm以下100%
LM‐2:滑材、球状溶融シリカ、平均粒径0.55μm、粒度累積分布1μm以下100%
LM‐3:滑材、球状溶融シリカ、平均粒径0.8μm、粒度累積分布1μm以下100%
(沈降防止材);沈降防止材(Precipitation Preventation Material)の頭文字PPを用いて示す
PP1:沈降防止材、板状水酸化アルミニウム、平均粒径0.5μm、粒度累積分布1μm以下60%
(硬化促進剤)
C1:2‐フェニル‐4‐メチル‐5‐ヒドロキシメチルイミダゾール
C2:1‐シアノエチル‐2‐フェニルイミダゾール
C3:1‐シアノエチル‐2‐エチル‐4‐メチノルイミダゾール
C4:1‐シアノエチル‐2‐フェニルイミダゾリウム・トリメリテート
C5:2‐メチルイミダゾール・テトラフエニルボレート
C6:2‐エチル‐4‐メチル‐イミダゾール・テトラフェニルボレート
C7:テトラフエニルホスホニウム・テトラフエニルボレート
(界面活性剤)
1.シラン系界面活性剤A
S1:β‐(3,4‐エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン
S2:γ‐グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
S3:γ‐アミノプロピルトリエトキシシラン
S4:γ‐ウレイドプロピルトリエトキシシラン
S5:γ‐(2‐アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン
2.チタネート系界面活性剤B
T1:イソプロピルトリエトキシシラン
T2:イソプロピルトリイソステアロイルチタネート
T3:イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート
T4:イソプロピルトリオクタノイルチタネート
T5:イソプロピルトリ(ラウリル−ミリスチル)チタネート
T6:テトライソプロピルビス(ジラウリルホスフアイト)チタネート
T7:トリオクチルイソステアロイルチタネート
(可撓化剤)
A1:MBSコア/シェル真球状ゴム パラロイドEXL‐2655
A2:シリコーンコア/メタクリルシェル真球状ゴム GENIOPERL P52 100〜150nm
A3:コアシェルゴム エポキシ基変性PMMA ゼフィアックF301、一次粒子平均径2μm
A4:アクリル共重合体コア/シェル真球状ゴム スタフィロイドIM‐203、一次粒子平均径0.3μm
A5:アクリル共重合体コア/シェル真球状ゴム ゼフィアックF351、一次粒子平均径0.3μm
A6:コアシェルゴム パラロイドEXL‐261
A7:コアシェルゴム パラロイドEXL‐3387
A8:コアシェルゴム パラロイドKM355
A9:コアシェルゴム カネエースMX
また、諸特性の評価は次のように行った。
(ワニスの粘度)
熱硬化性樹脂組成物の高ズリ速度(200Hz)における粘度は、振動式粘度計を用いて測定した。また、低ズリ速度に於ける粘度は、B型粘度計を用いて測定した。
(ポットライフ)
60℃でエポキシ樹脂主剤系樹脂組成物Eとエポキシ樹脂硬化剤系組成物Hを混合し、B型粘度計の粘度が初期の粘度の2倍に達したときの時間をポットライフとした。
(無機充填材を添加した酸無水物硬化剤の沈降の有無)
エポキシ樹脂硬化剤系組成物Hを60℃で12時間保持後に、無機充填材の沈降が生じている場合を充填材添加酸無水物組成物の沈降の有とした。ポットライフの項から分かるように、エポキシ樹脂主剤系樹脂組成物Eとエポキシ樹脂硬化剤系組成物Hを混合すると反応が生じ、短時間で粘度が上昇する。そのため、エポキシ樹脂主剤系樹脂組成物Eとエポキシ樹脂硬化剤系組成物Hを別々に調合、保管し、使用直前に両者を混ぜて使用することを前提としている。そのため、保管時に無機充填材の沈降が起きれば、無機充填材が不均一になり使用できない。尚、エポキシ樹脂主剤系樹脂組成物Eは全実験例において、60℃で12時間保持後に沈降は生じない。
(硬化物の曲げ特性)
硬化物の曲げ強度(σB25℃)、曲げ弾性率(EB25℃)、曲げ破断歪(εB25℃)はJIS K 7171:2008に準拠して求めた。
(硬化物のガラス転移温度、熱膨張係数の測定)
JIS K7197:1991に従い、熱機械分析(TMA)を用いて線膨脹率を測定した。また、線膨張の屈曲点を求め、ガラス転移温度とした。
(硬化物の熱変形温度)
5×12.7×120mmの試験片を切削し、JISK7191:1996に準拠して熱変形温度(荷重たわみ温度)を求めた。
(硬化物の熱伝導率)
熱伝導率は50φ×9mmの大きさに熱硬化性樹脂組成物を注型、硬化した円板を試験片として、DYNATECH R/D COMPANY製TCHM−1型熱伝導度測定装置を用いて測定した。
(硬化物の破壊靭性値の測定)
平面歪み破壊靭性値KICを求める破壊靭性試験はDouble Cantilever法を用い、室温で測定した。真空バルブモールド品の安全率・許容度の尺度として冷却拘束熱応力(σ25℃、)応力安全率(σB25℃/σ25℃)、冷却拘束熱応力(σ−30℃)、応力安全率(σB25℃/σ−30℃)、歪安全率(F25℃)、歪安全率(F−30℃)及び許容欠陥寸法を下記のようにして計算した。
[I]冷却拘束熱応力(σ25℃)=(エポキシ硬化物のガラス転移温度‐25)×(エポキシ硬化物のガラス転移温度以下の熱膨張係数‐真空バルブのアルミナセラミックスの膨張係数)×エポキシ硬化物の弾性率EB25℃÷1000
[II]応力安全率(σB25℃/σ25℃)=エポキシ硬化物の曲げ強度σB25℃÷冷却拘束熱応力σ25℃
[III]歪安全率(F25℃)={(エポキシ硬化物のガラス転移温度以下の熱膨張係数−真空バルブのアルミナセラミックスの膨張係数)×(エポキシ硬化物のガラス転移温度−25)}÷エポキシ硬化物の曲げ破断歪εB25℃
[IV]冷却拘束熱応力(σ−30℃)=(エポキシ硬化物のガラス転移温度+30)×(エポキシ硬化物のガラス転移温度以下の熱膨張係数−真空バルブのアルミナセラミックスの膨張係数)×エポキシ硬化物の弾性率EB25℃÷1000
[V]応力安全率(σB25℃/σ−30℃)=エポキシ硬化物の曲げ強度σB25℃÷冷却拘束熱応力σ−30℃
[VI]歪安全率(F−30℃)={(エポキシ硬化物のガラス転移温度以下の熱膨張係数−真空バルブのアルミナセラミックスの膨張係数)×(エポキシ硬化物のガラス転移温度+30)}÷エポキシ硬化物の曲げ破断歪εB25℃
[VII]許容欠陥寸法=(エポキシ硬化物の平面歪み破壊靭性値KIC÷エポキシ硬化物の曲げ強度σB25℃)÷1.26÷π×1000
(モールド真空バルブの部分放電開始電圧、直流絶縁破壊電圧)
モールド真空バルブに高電圧シールドと接地電極を取り付けた状態でSFガス絶縁試験タンクにセットし、外部絶縁のためのSFガスを0.45MPa封入した状態で、500kV試験用変圧器により商用周波(50Hz)の交流電圧を1分以上印加しながら5kVステップで昇圧し、非破壊であることを確認し、部分放電量を測定した。10ピコクーロンの部分放電が発生した電圧を部分放電開始電圧とした。尚、モールド真空バルブの部分放電開始電圧の判定値を25kV以上、直流絶縁破壊電圧の判定値を75kV以上、1250A通電時の温度上昇値の判定値を60℃以下とした。
(1)実験例1〜8(無機充填材に対する破砕結晶質シリカの配合割合の影響)
多官能エポキシ樹脂としてエポキシ当量174のビスフエノールAFのジグリシジルエーテルを用い、無機充填材として破砕結晶質シリカと破砕溶融シリカを用い、その配合割合が樹脂組成物の物性及び真空バルブの電気特性に与える影響を検討した結果を表1に示す。エポキシ当量174のビスフエノールAFのジグリシジルエーテル(E1)100重量部と、表1記載の半分量の平均粒径4.5μmの破砕結晶質シリカ(CS‐5:C−BASE−1;登録商標)及び平均粒径5.4μmの破砕溶融シリカ(MS‐5:ZA−30;登録商標)と、界面活性剤γ‐グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(S2)を混ぜ、よく攪拌しエポキシ樹脂主剤系樹脂組成物Eとした。次に、酸無水物当量168のメチルヘキサヒドロ無水フタル酸(H3)を95.0重量部と、表1記載の半分量の破砕結晶質シリカCS‐5及び破砕溶融シリカMS‐5と、界面活性剤S2と、表1記載の量の可撓化剤である一次粒子平均径0.3μmのアクリル共重合体コア/シェル真球状ゴムゼフィアックF351(A5)と、沈降防止材である板状水酸化アルミニウム(PP‐1:C−3005;登録商標)と、滑材である平均粒径0.1μmの球状溶融シリカ(LM‐1:SO−05H;登録商標)と、界面活性剤であるイソプロピルトリオクタノイルチタネート(T4)と、硬化触媒である1‐シアノエチル‐2‐エチル‐4‐メチノルイミダゾール(C3)を混ぜ、よく攪拌しエポキシ樹脂硬化剤系組成物Hとした。
EとHを別々に60℃で12時間保持し、無機充填材の沈降の有無を観察した。使用直前に、EとHを加温し、両者を混ぜてワニス(熱硬化性樹脂組成物)とした。
ワニスの粘度を、B型粘度計及び振動粘度計で測定した。また、ワニスのポットライフを測定した。次に、ワニスを金型に入れ、130℃で1時間、170℃で5時間保持した。得られた硬化物の曲げ特性、熱膨張係数、ガラス転移温度、熱変形温度、熱伝導率、破壊靭性値を測定した。これらのデータから冷却拘束熱応力、応力安全率、歪安全率、許容欠陥寸法を計算した。これらの結果と60℃に12時間保持したときの無機充填材の沈降の有無の結果を表1に示す。
次に、このワニスを用いて真空バルブを加圧ゲル化方式でモールドし、図2に示すモールド真空バルブを作製した。可動電極側電界集中緩和シールド、固定電極側電界集中緩和シールド、導体用電界集中緩和シールド及び表面導電層はいずれも接地している。図2において、真空バルブ1は、アルミナセラミック材等からなる絶縁円筒2の両端開口部を、固定側端板3、可動側端板4により気密に封止して真空容器5を形成する。固定軸6は固定端板3により真空気密固定され、可動軸7はベローズ8を介して可動側端板4に取り付けられ、真空を保持したまま接点9の開閉が出来るようになっている。接点9が開閉するときに発生するアークは直ちに高真空中で消弧させ、高圧電路に故障が生じた場合、瞬時に故障部の断高電圧回路を遮断する。
真空バルブ1は高真空中で接点9を開閉するので遮断に必要な電極開閉距離が短い状態で高電圧回路を遮断できる。このため、絶縁円筒2を短く出来る。このことは真空容器5の外側の沿面距離を短くすることになり、大気中の汚損物(湿気、塵埃)が真空容器5に付着したとき、耐電圧が低下し、外部閃落が発生し易くなる。このため、真空容器5の外側にエポキシ樹脂組成物モールド硬化物等の樹脂絶縁体11を注型によって一体に設けている。可動電極側電界集中緩和シールド12、固定電極側電界集中緩和シールド13、導体用電界集中緩和シールド14、導体15を真空容器5と共にモールドしている。導体15は、その一方が固定軸6に電気的機械的に接続固定され、他方が接続端子の一部となっており、ブッシング部17にて露出して電気的に接続可能となっている。可動電極側電界集中緩和シールド12は真空容器5の可動側端板4の側に配置され、可動軸7を貫通し、真空容器5と同軸に配置されるアルミやSUS等からなるリング体である。
固定電極側電界集中緩和シールド13は真空容器5の固定側端板3の側に配置され、固定軸6を貫通し、真空容器5と同軸に配置されるアルミやSUS等からなるリング体である。導体用電界集中緩和シールド14は、導体15が貫通した状態であり、かつ、導体15の接続端子側であってブッシング部17の引き出し口付近に配置されるアルミやSUS等からなるリング体である。真空バルブ1の外側表面に導電塗料を塗布し、導電層16を形成し、大地に接続している。可動電極側電界集中緩和シールド12、固定電極側電界集中緩和シールド13、導体用電界集中緩和シールド14はいずれも導電層16と電気的に導通している。このモールド真空バルブのボイドの有無、部分放電開始電圧、直流絶縁破壊電圧、1250A通電時の温度上昇値を測定した。また、−30℃に3時間保持、90℃に3時間保持するヒートサイクルを5サイクル繰り返した後、再び部分放電開始電圧を測定した。それらの結果を表1に併記した。表1は硬化物の熱膨張係数を電解緩和シールドのアルミの熱膨張係数(23×10−6/℃)と一致させるように無機充填材の添加量を調節し、破砕結晶質シリカと破砕溶融シリカの配合割合を変化させている。
Figure 0005269728
表1に示すように、全てのサンプルにおいて、E及びHの沈降は認められなかった。また、初期及びヒートサイクル後のモールド真空バルブの部分放電開始電圧と直流絶縁破壊電圧は、破砕結晶質シリカの含有率が0wt%、即ち破砕溶融シリカのみの場合と、100wt%、即ち、破砕結晶質シリカのみの場合が低く、破砕結晶質シリカと破砕溶融シリカを混合すると高くなっていることが分かる。特に、破砕結晶質シリカの含有率が70〜97wt%の範囲が高くなっている。一方、1250A通電時の温度上昇値は破砕結晶質シリカの配合量が少なくなると高くなっている。破砕溶融シリカのみの場合、温度上昇値は105℃となり雰囲気温度が27℃を超えると樹脂硬化物の熱変形温度を超え、モールド品は変形し始め、実用に耐えない。
応力安全率及び歪安全率は破砕結晶質シリカの含有率が0wt%、即ち、破砕溶融シリカのみの場合最も高く、破砕結晶質シリカが10〜97wt%の範囲ではほぼ同等で、破砕結晶質シリカの含有率が100wt%になると急激に低下している。モールド真空バルブの部分放電開始電圧は、ボイド、剥離や微細クラックが存在しないと100kV以上になるはずで、破砕結晶質シリカの含有率が100wt%のときモールド真空バルブの電気特性が低下するのは応力安全率、歪安全率が低くなるため剥離や微細クラックが生じることが原因であると考えられる。
一方、破砕結晶質シリカの含有率が0wt%のとき、応力安全率、歪安全率が高くなっているのにもかかわらず、モールド真空バルブの電気特性が低下している。これは破砕結晶質シリカの含有率が0wt%になると許容欠陥寸法が小さくなる、即ち、破壊靭性値が小さいことに起因すると考えられる。1250A通電時の温度上昇は熱伝導率に反比例し、熱伝導率が高いほど温度上昇は低くなっている。
(2)実験例9〜15(コアシェルゴムの添加量の影響)
次に、多官能エポキシ樹脂としてエポキシ当量174のビスフエノールAFのジグリシジルエーテルを用い、可撓化剤として一次粒子平均径0.3μmのA5を用い、その添加量が樹脂組成物の物性及び真空バルブの電気特性に与える影響を検討した。多官能エポキシ樹脂E1を100重量部と、表2記載の半分量の破砕結晶質シリカCS‐5及び破砕溶融シリカMS‐5と、界面活性剤S2を混ぜ、よく攪拌し、エポキシ樹脂主剤系組成物Eとした。次いで酸無水物硬化剤H3を95.0重量部と、表2記載の半分量の破砕結晶質シリカCS‐5及び破砕溶融シリカMS‐5と、界面活性剤S2と、表2記載の量の可撓化剤A5と、沈降防止材PP‐1と、滑材LM‐1と、界面活性剤イソプロピルトリオクタノイルチタネート(T4)、硬化触媒1‐シアノエチル‐2‐エチル‐4‐メチノルイミダゾール(C3)を混ぜ、よく攪拌しエポキシ樹脂硬化剤系組成物Hとした。EとHと別々に60℃に12時間保持し、無機充填材の沈降の有無を観察した。使用直前に、EとHを加温し、両者を混ぜてワニス(熱硬化性樹脂組成物)とした。
ワニスの粘度を、B型粘度計及び振動粘度計で測定した。また、ワニスのポットライフを測定した。次に、ワニスを金型に入れ、130℃で1時間、170℃で5時間保持した。得られた硬化物の曲げ特性、熱膨張係数、ガラス転移温度、熱変形温度、熱伝導率、破壊靭性値を測定した。これらのデータから冷却拘束熱応力、応力安全率、歪安全率、許容欠陥寸法を計算した。これらの結果と60℃に12時間保持したときのHの沈降の有無の結果を表2に示す。
Figure 0005269728
次に、このワニスを用いて真空バルブを加圧ゲル化方式でモールドし、図2に示すモールド真空バルブを作製した。このモールド真空バルブのボイドの有無、部分放電開始電圧、直流絶縁破壊電圧、1250A通電時の温度上昇値を測定した。また、−30℃に3時間保持、90℃に3時間保持するヒートサイクルを5サイクル繰り返した後、再び部分放電開始電圧を測定した。それらの結果を表2に併記した。
表2に示すように、E及びHには全て沈降が認められなかった。また、エポキシ樹脂としてエポキシ当量174のビスフエノールAFのジグリシジルエーテルを用いた場合、樹脂組成物に対するコアシェルゴムの配合割合が0〜3.75wt%の範囲において、初期及びヒートサイクル後のモールド真空バルブの部分放電開始電圧と直流絶縁破壊電圧は、上に凸の曲線を描いている。一方、モールド真空バルブの温度上昇値は下に凸の曲線を示している。エポキシ当量174のビスフエノールAFのジグリシジルエーテルを用いた場合、コアシェルゴム無添加を用いることは出来ない。コアシェルゴムの添加量は0.5〜3.5重量%、特に0.65〜3.14wt%が好ましい。コアシェルゴムの添加量が多くなると、硬化前粘度が上昇して注型不良になりがちであると共に、硬化物の弾性率、ガラス転移温度、熱変形温度、熱伝導率が低下し、破断歪及び熱線膨張係数が増加する。それに伴い、応力安全率、歪安全率及び許容欠陥寸法が増加する。
(3)実験例3、16〜23(コアシェルゴムの種類の影響)
多官能エポキシ樹脂として低分子量のエポキシ当量174のビスフエノールAFのジグリシジルエーテルを用いて、コアシェルゴム系可撓化剤の種類が樹脂組成物の物性及び真空バルブの電気物性に与える影響を検討した。多官能エポキシ樹脂E1を100重量部と、表3記載の半分量の破砕結晶質シリカCS‐5及び破砕溶融シリカMS‐5と、界面活性剤S2を混ぜ、よく攪拌しエポキシ樹脂主剤系組成物Eとした。次いで、酸無水物硬化剤H3を95.0重量部と、表1記載の半分量の破砕結晶質シリカCS‐5及び破砕溶融シリカMS‐5と、界面活性剤S2と、表3記載の量の可撓化剤A1〜A4、A6〜A9と、沈降防止材PP‐1と、滑材LM‐1と、界面活性剤T4と、硬化触媒C3を混ぜ、よく攪拌しエポキシ樹脂硬化剤系組成物Hとした。EとHと別々に60℃に12時間保持し、無機充填材の沈降の有無を観察した。使用直前に、EとHを加温し、両者を混ぜてワニス(熱硬化性樹脂組成物)とした。
ワニスの粘度を、B型粘度計及び振動粘度計で測定した。また、ワニスのポットライフを測定した。次に、ワニスを金型に入れ、130℃で1時間、170℃で5時間保持した。得られた硬化物の曲げ特性、熱膨張係数、ガラス転移温度、熱変形温度、熱伝導率、破壊靭性値を測定した。これらのデータから冷却拘束熱応力、応力安全率、歪安全率、許容欠陥寸法を計算した。これらの結果と60℃に12時間保持したときのHの沈降の有無の結果とを表3に示す。
Figure 0005269728
次に、このワニスを用いて真空バルブを加圧ゲル化方式でモールドし、図2に示すモールド真空バルブを作製した。このモールド真空バルブのボイドの有無、部分放電開始電圧、直流絶縁破壊電圧、1250A通電時の温度上昇値を測定した。また、−30℃に3時間保持、90℃に3時間保持するヒートサイクルを5サイクル繰り返した後、再び部分放電開始電圧を測定した。それらの結果を表3に併記した。
実験例16〜23に示すように、E及びHには全て沈降が認められなかった。またコアシェルゴムとして、実験例3で使用したアクリル共重合体コア/シェル真球状ゴムゼフィアックF351(一次粒子平均径0.3μm)の他に、アクリル共重合体コア/シェル真球状ゴムスタフィロイドIM−203(一次粒子平均径0.3μm)、エポキシ基変性PMMAゼフィアックF301(一次粒子平均径2μm)、シリコーンコア/メタクリルシェル真球状ゴムGENIOPERLP52(100〜150nm)、MBSコア/シェル真球状ゴムパラロイドEXL−2655、パラロイドEXL−261、パラロイドEXL−3387、パラロイド KM355、カネエースMX等が適していることが分かった。
(4)実験例3、24〜32(界面活性剤の配合量の影響)
多官能エポキシ樹脂として低分子量のエポキシ当量174のビスフエノールAFのジグリシジルエーテルを用いて、無機充填材及び有機マトリックスレジンと化学結合するシラン系界面活性剤と、無機充填材と化学結合し、有機マトリックスレジンと分子的に絡み合うチタネート系界面活性剤の配合量が、樹脂組成物の物性及び真空バルブの電気物性に与える影響を検討した。エポキシ当量174のビスフエノールAFのジグリシジルエーテル(E1)100重量部と、表4記載の半分量の破砕結晶質シリカCS‐5及び破砕溶融シリカMS‐5と、界面活性剤S2を混ぜ、よく攪拌しエポキシ樹脂主剤系組成物Eとした。次いで、酸無水物硬化剤H3を95.0重量部と、表4記載の半分量の破砕結晶質シリカCS‐5及び破砕溶融シリカMS‐5と、界面活性剤S2と、表4記載の量の沈降防止材PP‐1と、滑材LM‐1と、界面活性剤T4と、硬化触媒C3を混ぜ、よく攪拌し、エポキシ樹脂硬化剤系樹成物Hとした。EとHを別々に60℃に12時間保持し、無機充填材の沈降の有無を観察した。使用直前に、EとHを加温し、両者を混ぜてワニス(熱硬化性樹脂組成物)とした。
ワニスの粘度を、B型粘度計及び振動粘度計で測定した。また、ワニスのポットライフを測定した。次に、ワニスを金型に入れ、130℃で1時間、170℃で5時間保持した。得られた硬化物の曲げ特性、熱膨張係数、ガラス転移温度、熱変形温度、熱伝導率、破壊靭性値を測定した。これらのデータから冷却拘束熱応力、応力安全率、歪安全率、許容欠陥寸法を計算した。これらの結果と60℃に12時間保持したときのHの沈降の有無の結果を表4に示す。
Figure 0005269728
次に、このワニスを用いて真空バルブを加圧ゲル化方式で図2に示すモールド品を作製した。このモールド真空バルブの外観を観察して、ボイドの有無、部分放電開始電圧、直流絶縁破壊電圧、1250A通電時の温度上昇値を測定した。また、−30℃に3時間保持、90℃に3時間保持するヒートサイクルを5サイクル繰り返した後、再び部分放電開始電圧を測定した。それらの結果を表4に併記する。
表4に示すように、E、Hには全て沈降が認められなかった。また、実験例3及び24〜27の結果から、無機充填材に対する界面活性剤の添加量が低いと、硬化前粘度が高く注型不良やボイドが巻き込まれ易く、硬化後破断歪や破壊靭性値が小さく、応力安全率、ひずみ安全率、許容欠陥寸法が小さく、ヒートサイクル後の部分放電開始電圧も低くなる傾向にある。無機充填材に対する界面活性剤の配合割合は0.5〜10wt%、特に1.2〜5wt%が好ましい。
また、実験例28〜32の結果から、無機充填材と化学結合し、有機マトリックスレジンと分子的に絡み合うチタネート系界面活性剤の配合割合が多くなると、硬化前粘度が低くなり、硬化後破壊靭性値が増加し、曲げ弾性率が下がると共に曲げ破断歪も大きくなる。さらにガラス転移温度及び熱変形温度が低下する。有機マトリックスレジンと分子的に絡み合う界面活性剤が無添加であると、ヒートサイクル後の部分放電開始電圧が小さくなり好ましくない。無機充填材、有機マトリックスレジンと化学結合するシラン系界面活性剤が無添加であると、モールド真空バルブの通電時の温度上昇値は69℃であるが、熱変形温度が低くなるので雰囲気温度が30℃を超えると変形を始めるので好ましくない。有機マトリックスレジンと分子的に絡み合うチタネート系界面活性剤の配合量は25〜85wt%が好ましい。
(5)実験例33〜37(滑材添加量の影響)
多官能エポキシ樹脂として低分子量のエポキシ当量174のビスフエノールAFのジグリシジルエーテルを用いて、滑材の添加量が樹脂組成物の物性及び真空バルブの電気物性に与える影響を検討した。エポキシ当量174のビスフエノールAFのジグリシジルエーテル(E1)を100重量部と、表5記載の半分量の破砕結晶質シリカCS‐5及び破砕溶融シリカMS‐1と、界面活性剤S2を混ぜ、よく攪拌しエポキシ樹脂主剤系組成物Eとした。次いで、酸無水物硬化剤H3を95.0重量部と、表5記載の半分量の破砕結晶質シリカCS‐5及び破砕溶融シリカMS‐1と、界面活性剤S2と、表5記載の量の沈降防止材PP‐1と、滑材LM‐1と、界面活性剤T4と、硬化触媒C3を混ぜ、よく攪拌しエポキシ樹脂硬化剤系組成物Hとした。EとHを別々に60℃で12時間保持し、無機充填材の沈降の有無を観察した。使用直前に、EとHを加温し、両者を混ぜてワニス(熱硬化性樹脂組成物)とした。
ワニスの粘度を、B型粘度計及び振動粘度計で測定した。また、ワニスのポットライフを測定した。次に、ワニスを金型に入れ、130℃で1時間、170℃で5時間保持した。得られた硬化物の曲げ特性、熱膨張係数、ガラス転移温度、熱変形温度、熱伝導率、破壊靭性値を測定した。これらのデータから冷却拘束熱応力、応力安全率、歪安全率、許容欠陥寸法を計算した。これらの結果と60℃に12時間保持したときのHの沈降の有無の結果を表5に示す。
Figure 0005269728
次に、このワニスを用いて真空バルブを加圧ゲル化方式で図2に示すモールド品を作製した。このモールド真空バルブの外観を観察して、ボイドの有無、部分放電開始電圧、直流絶縁破壊電圧、1250A通電時の温度上昇値を測定した。また、−30℃に3時間保持、90℃に3時間保持するヒートサイクルを5サイクル繰り返した後、再び部分放電開始電圧を測定した。それらの結果を表5に併記する。
表5に示すように、E及びHには全て沈降が認められなかった。また、実験例33〜37の結果から、初期及びヒートサイクル後のモールド真空バルブの部分放電開始電圧と直流絶縁破壊電圧は、滑材の添加量に対して上に凸の曲線関係にあることが分かる。硬化前、滑材を添加するとB型粘度計で観察される、シェアのかからない、いわゆる、比較的静止状態に近い粘度は高くなる。一方、振動粘度計で観察されるシェアのかかった、加圧ゲル化に近い粘度は滑材を添加するとサブミクロンの球状である滑材が破砕結晶質シリカCS‐5や破砕溶融シリカMS‐5の表面に付着し、コロの役目を果たして低くなり、細部まで充填されるようになり、ボイド発生が少なくなる。滑材の添加量が多すぎると、コロの効果より粘度上昇の効果の方が強く出るため、ボイドが巻き込まれやすくなる傾向にある。そのため、滑材の添加量に対して上に凸の曲線関係になったものと思われる。滑材の添加量は充填材に対して0.1〜1.5wt%、特に0.11〜1.0wt%の範囲が好ましい。
(6)実験例38〜42(沈降防止材添加量の影響)
多官能エポキシ樹脂として低分子量のエポキシ当量174のビスフエノールAFのジグリシジルエーテルE1を用いて、沈降防止材の添加量が樹脂組成物の物性及び真空バルブの電気物性に与える影響の影響を検討した。エポキシ当量174のビスフエノールAFのジグリシジルエーテル(E1)を100重量部、表5記載の半分量の破砕結晶質シリカCS‐5及び破砕溶融シリカMS‐5、界面活性剤S2を混ぜ、よく攪拌し主剤系樹脂組成物Eとした。次いで、酸無水物硬化剤H3を95.0重量部と、表5記載の半分量の破砕結晶質シリカCS‐5及び破砕溶融シリカMS‐5と、界面活性剤S2と、表5記載の量の沈降防止材PP‐1と、滑材LM‐1と、界面活性剤T4と、硬化触媒C3を混ぜ、よく攪拌し硬化剤系樹脂組成物Hとした。EとHを別々に60℃に12時間保持し、無機充填材の沈降の有無を観察した。使用直前に、主剤Eと主剤Hを加温し、両者を混ぜてワニス(熱硬化性樹脂組成物)とした。
ワニスの粘度を、B型粘度計及び振動粘度計で測定した。また、ワニスのポットライフを測定した。次に、ワニスを金型に入れ、130℃で1時間、170℃で5時間保持した。得られた硬化物の曲げ特性、熱膨張係数、ガラス転移温度、熱変形温度、熱伝導率、破壊靭性値を測定した。これらのデータから冷却拘束熱応力、応力安全率、歪安全率、許容欠陥寸法を計算した。これらの結果と60℃に12時間保持したときのHの沈降の有無の結果とを表5に記した。
次に、このワニスを用いて真空バルブを加圧ゲル化方式で図2に示すモールド品を作製した。このモールド真空バルブの外観を観察して、ボイドの有無、部分放電開始電圧、直流絶縁破壊電圧、1250A通電時の温度上昇値を測定した。また、−30℃に3時間保持、90℃に3時間保持するヒートサイクルを5サイクル繰り返した後、再び部分放電開始電圧を測定した。それらの結果を表5に併記した。
表5の実験例38から分かるように、沈降防止材PP‐1を添加しないHに沈降が生じ、EとHの二液方式は使用不能となる。そのため二液系で保管、使用する場合、Hへの沈降防止材の添加は不可欠である。また、実験例39〜42から、沈降防止材の添加は硬化前の樹脂組成物の粘度を上昇させる傾向にあるため、必要最小限にとどめるべきである。
(7)実験例43〜49(酸無水物硬化剤添加量の影響)
多官能エポキシ樹脂として低分子量のエポキシ当量174のビスフエノールAFのジグリシジルエーテルを用いて、酸無水物硬化剤の添加量が樹脂組成物の物性及び真空バルブの電気物性に与える影響を検討した。エポキシ当量174のビスフエノールAFのジグリシジルエーテル(E1)を100重量部と、表6記載の半分量の破砕結晶質シリカCS‐5及び破砕溶融シリカMS‐5、界面活性剤S2を混ぜ、よく攪拌し主剤系樹脂組成物Eとした。酸無水物硬化剤H3と、表6記載の半分量の破砕結晶質シリカCS‐5及び破砕溶融シリカMS‐5と、界面活性剤S2と、表6記載の量の沈降防止材PP‐1と、滑材LM‐1と、界面活性剤材T4と、硬化触媒C3を混ぜ、よく攪拌し硬化剤系樹脂組成物Hとした。EとHを別々に60℃で12時間保持し、無機充填材の沈降の有無を観察した。使用直前に、主剤Eと主剤Hを加温し、両者を混ぜてワニス(熱硬化性樹脂組成物)とした。
ワニスの粘度を、B型粘度計及び振動粘度計で測定した。また、ワニスのポットライフを測定した。次に、ワニスを金型に入れ、130℃で1時間、170℃で5時間保持した。得られた硬化物の曲げ特性、熱膨張係数、ガラス転移温度、熱変形温度、熱伝導率、破壊靭性値を測定した。これらのデータから冷却拘束熱応力、応力安全率、歪安全率、許容欠陥寸法を計算した。これらの結果と60℃に12時間保持したときのHの沈降の有無の結果とを表6に記した。
Figure 0005269728
次に、このワニスを用いて真空バルブを加圧ゲル化方式で図2に示すモールド品を作製した。このモールド真空バルブの外観を観察して、ボイドの有無、部分放電開始電圧、直流絶縁破壊電圧、1250A通電時の温度上昇値を測定した。また、−30℃に3時間保持、90℃に3時間保持するヒートサイクルを5サイクル繰り返した後、再び部分放電開始電圧を測定した。それらの結果を表6に併記した。
表6に示すように、E及びHには全て沈降が認められなかった。また、初期及びヒートサイクル後のモールド真空バルブの部分放電開始電圧と直流絶縁破壊電圧は(酸無水物硬化剤/エポキシ樹脂)の当量比に対して上に凸の曲線関係にあることが分かる。逆に、モールド真空バルブの温度上昇値は(酸無水物硬化剤/エポキシ樹脂)の当量比に対して下に凸の関係にあることが分かる。(酸無水物硬化剤/エポキシ樹脂)の当量比が小さいと硬化前の樹脂組成物の粘度が高くなり、充填し難くなるうえに、硬化物の線膨張係数が大きくなり、ガラス転移温度が下がり脆くなってくる。一方、(酸無水物硬化剤/エポキシ樹脂)の当量比が大きくなると硬化前粘度が下がり、モールド作業がし易くなる。当量比が大きすぎるとガラス転移温度が下がり、硬く脆くなってくる。(酸無水物硬化剤/エポキシ樹脂)の当量比は0.7〜1.2、特に硬化前低粘度化の観点から0.98〜1.2の範囲が好ましい。
(8)実験例50〜62(酸無水物硬化剤、エポキシ樹脂の種類の影響)
実験例50〜62において酸無水物硬化剤の種類、多官能エポキシ樹脂の種類の影響を検討した。表7及び表8の実験例50〜62に記載の多官能エポキシ樹脂と、表7及び表8の実験例50〜62に記載の半分量の破砕結晶質シリカCS‐5及び破砕溶融シリカMS‐5と、界面活性剤S2を混ぜ、よく攪拌し主剤系樹脂組成物Eとした。次に表7及び表8の実験例50〜62に記載の酸無水物硬化剤と、表7及び表8の実験例50〜62に記載の半分量の破砕結晶質シリカCS‐5及び破砕溶融シリカMS‐5と、界面活性剤S2と、表7及び表8の実験例50〜62に記載の量の沈降防止材PP‐1と、滑材LM‐1と、界面活性剤T4と、硬化触媒C3を混ぜ、よく攪拌し硬化剤系樹脂組成物Hとした。EとHを別々に60℃で12時間保持し、無機充填材の沈降の有無を観察した。使用直前に、主剤Eと主剤Hを加温し、両者を混ぜてワニス(熱硬化性樹脂組成物)とした。ワニスの粘度を、B型粘度計及び振動粘度計で測定した。また、ワニスのポットライフを測定した。次に、ワニスを金型に入れ、130℃で1時間、170℃で5時間保持した。得られた硬化物の曲げ特性、熱膨張係数、ガラス転移温度、熱変形温度、熱伝導率、破壊靭性値を測定した。これらのデータから冷却拘束熱応力、応力安全率、歪安全率、許容欠陥寸法を計算した。これらの結果と60℃に12時間保持したときのHの沈降の有無の結果とを表7及び表8に記した。
Figure 0005269728
Figure 0005269728
次に、このワニスを用いて真空バルブを加圧ゲル化方式で図2に示すモールド品を作製した。このモールド真空バルブの外観を観察して、ボイドの有無、部分放電開始電圧、直流絶縁破壊電圧、1250A通電時の温度上昇値を測定した。また、−30℃に3時間保持、90℃に3時間保持するヒートサイクルを5サイクル繰り返した後、再び部分放電開始電圧を測定した。それらの結果を表7及び表8に併記した。
表7及び表8の実験例60〜62に示すように、E及びHには全て沈降が認められなかった。また、酸無水物硬化剤としては酸無水物であれば特に制限はないが、注型性の観点から低粘度のほうが好ましい。表7及び表8からエポキシ樹脂としてはエポキシ樹脂であれば特に制限はないが、注型性の観点から低粘度のほうが好ましい。
(11)実験例63〜69(エポキシ樹脂の分子量とコアシェルゴムの添加量の関係)
多官能エポキシ樹脂の分子量とコアシェルゴムの関係を検討した。多官能エポキシ樹脂として表8の実験例63〜69記載の多官能エポキシ樹脂と、表8の実験例63〜79記載の半分量の破砕結晶質シリカCS‐5及び破砕溶融シリカMS‐5と、界面活性剤S2を混ぜ、よく攪拌し主剤系樹脂組成物Eとした。酸無水物硬化剤H3を表8の実験例63〜69記載の量と、表8の実験例63〜69記載の半分量の破砕結晶質シリカCS‐5及び破砕溶融シリカMS‐5と、界面活性剤S2と、表8の実験例63〜69記載の量の沈降防止材PP‐1と、滑材LM‐1と、界面活性剤T4と、硬化触媒C3を混ぜ、よく攪拌し硬化剤系樹脂組成物Hとした。EとHを別々に60℃で12時間保持し、無機充填材の沈降の有無を観察した。使用直前に、主剤Eと主剤Hを加温し、両者を混ぜてワニス(熱硬化性樹脂組成物)とした。
ワニスの粘度を、B型粘度計及び振動粘度計で測定した。また、ワニスのポットライフを測定した。次に、ワニスを金型に入れ、130℃で1時間、170℃で5時間保持した。得られた硬化物の曲げ特性、熱膨張係数、ガラス転移温度、熱変形温度、熱伝導率、破壊靭性値を測定した。これらのデータから冷却拘束熱応力、応力安全率、歪安全率、許容欠陥寸法を計算した。これらの結果と60℃に12時間保持したときのHの沈降の有無の結果とを表8に記した。
次に、このワニスを用いて真空バルブを加圧ゲル化方式で図2に示すモールド品を作製した。このモールド真空バルブの外観を観察して、ボイドの有無、部分放電開始電圧、直流絶縁破壊電圧、1250A通電時の温度上昇値を測定した。また、−30℃に3時間保持、90℃に3時間保持するヒートサイクルを5サイクル繰り返した後、再び部分放電開始電圧を測定した。それらの結果を表8に併記した。
表8の実験例63〜69に示すように、E及びHには全て沈降が認められなかった。また、エポキシ樹脂として、ビスフェノールF型、ビスフェノールAF型、ビスフェノールAD型等のジグリシジルエーテルを用いる場合、分子量が大きくなるにつれて硬化前のエポキシ樹脂組成物の粘度が高くなり、硬化後の硬化物の靭性が増加していることが分かる。実験例に示してはいないが、上記群の中にビスフェノールA型を入れても同様の傾向を示す。エポキシ当量が184の実験例63はコアシェルゴムが無添加の場合、硬化物の靭性が不足し、ヒートサイクル後の部分放電開始電圧が低くなり、通電稼動時の温度上昇が100℃を越えるようになり、実用上使用できなくなる。これは、硬化物の靭性が低いため、おそらく剥離やクラック等が発生していることに起因していると思われる。分子量が小さい場合、靭性を増すためコアシェルゴムの添加は不可欠である。一方、実験例64から分かるように分子量が190になるとヒートサイクル後の部分放電開始電圧が55kV以上と高くなっている。即ち、分子量が190以上になると高価なコアシェルゴムの添加が不必要になり、経済上好ましくなくなるが、分子量が高すぎると粘度が上昇し、注型が困難になってくる。分子量としては190〜300程度が好ましい。
(10)実験例3、70〜77(破砕結晶質シリカの粒径の影響)
多官能エポキシ樹脂として低分子量のエポキシ当量174のビスフエノールAFのジグリシジルエーテルを用いて、破砕結晶質シリカの粒径が樹脂組成物の物性及び真空バルブの電気物性に与える影響について検討した。エポキシ当量174のビスフエノールAFのジグリシジルエーテル(E1)を100重量部と、表9記載の半分量の破砕結晶質シリカ及び破砕溶融シリカMS‐5、界面活性剤S2を混ぜ、よく攪拌し主剤系樹脂組成物Eとした。酸無水物硬化剤H3を95.0重量部と、表9記載の半分量の破砕結晶質シリカ及び破砕溶融シリカMS‐5と、界面活性剤S2と、表9記載の量の可撓化剤A5と、沈降防止材PP‐1と、滑材LM‐1と、界面活性剤T4と、硬化触媒C3を混ぜ、よく攪拌し硬化剤系樹脂組成物HとしたEとHを別々に60℃で12時間保持し、無機充填材の沈降の有無を観察した。使用直前に、主剤Eと主剤Hを加温し、両者を混ぜてワニス(熱硬化性樹脂組成物)とした。ワニスの粘度を、B型粘度計及び振動粘度計で測定した。また、ワニスのポットライフを測定した。次に、ワニスを金型に入れ、130℃で1時間、170℃で5時間保持した。得られた硬化物の曲げ特性、熱膨張係数、ガラス転移温度、熱変形温度、熱伝導率、破壊靭性値を測定した。これらのデータから冷却拘束熱応力、応力安全率、歪安全率、許容欠陥寸法を計算した。これらの結果と60℃に12時間保持したときのHの沈降の有無の結果とを表9に記した。
Figure 0005269728
次に、このワニスを用いて真空バルブを加圧ゲル化方式でモールドし、図2に示すモールド真空バルブを作製した。このモールド真空バルブのボイドの有無、部分放電開始電圧、直流絶縁破壊電圧、1250A通電時の温度上昇値を測定した。また、−30℃に3時間保持、90℃に3時間保持するヒートサイクルを5サイクル繰り返した後、再び部分放電開始電圧を測定した。それらの結果を表9に併記した。
表9に示すように、実験例70(破砕結晶質シリカCS‐1:3K−S)と、実験例71(破砕結晶質シリカCS‐2:D)において、沈降防止材を添加しているのにもかかわらずHに沈降が生じ、モールド真空バルブの特性が不安定になっている。又、実験例73に示したように破砕結晶質シリカCS‐4:5Xを用いた場合、硬化前の粘度が高くなり、注型不良となりボイドが存在し、モールド真空バルブの特性が悪くなる(部分放電開始電圧が低い)傾向にある。以上のことから、破砕結晶質シリカの平均粒径は2〜9μm、特に4〜8.5μmが好ましい。
(11)実験例78〜85(無機充填材に対する破砕結晶質シリカの配合割合の影響)
多官能エポキシ樹脂として比較的高分子量のエポキシ当量192のビスフエノールAFのジグリシジルエーテルを用いて、無機充填材として破砕結晶質シリカと破砕溶融シリカを用い、その配合割合が樹脂組成物の物性及び真空バルブの電気物性に与える影響を検討した。エポキシ当量192のビスフエノールAFのジグリシジルエーテル(E8)を100重量部と、表10に記載の半分量の破砕結晶質シリカCS‐5及び破砕溶融シリカMS‐5と、界面活性剤S2を混ぜ、よく攪拌し主剤系樹脂組成物Eとした。次いで、酸無水物硬化剤H3を85.7重量部と、表10に記載の半分量の破砕結晶質シリカCS‐5及び破砕溶融シリカMS‐5と、界面活性剤S2と、表10に記載の量の可撓化剤A5と、沈降防止材PP‐1と、滑材LM‐1と、界面活性剤T4と、硬化触媒C3を混ぜ、よく攪拌し硬化剤系樹脂組成物Hとした。EとHを別々に60℃で12時間保持し、無機充填材の沈降の有無を観察した。使用直前に、主剤Eと主剤Hを加温し、両者を混ぜてワニス(熱硬化性樹脂組成物)とした。
ワニスの粘度を、B型粘度計及び振動粘度計で測定した。また、ワニスのポットライフを測定した。次に、ワニスを金型に入れ、130℃で1時間、170℃で5時間保持した。得られた硬化物の曲げ特性、熱膨張係数、ガラス転移温度、熱変形温度、熱伝導率、破壊靭性値を測定した。これらのデータから冷却拘束熱応力、応力安全率、歪安全率、許容欠陥寸法を計算した。これらの結果と60℃で12時間保持したときのHの沈降の有無の結果とを表10に記した。
Figure 0005269728
次に、このワニスを用いて真空バルブを加圧ゲル化方式でモールドし、図2に示すモールド真空バルブを作製した。このモールド真空バルブのボイドの有無、部分放電開始電圧、直流絶縁破壊電圧、1250A通電時の温度上昇値を測定した。また、−30℃に3時間保持、90℃に3時間保持するヒートサイクルを5サイクル繰り返した後、再び部分放電開始電圧を測定した。それらの結果を表10に併記した。表10は硬化物の熱膨張係数を電解緩和シルールドのアルミの熱膨張係数(23×10−6/℃)と一致させるように無機充填材の添加量を調節し、破砕結晶質シリカと破砕溶融シリカの配合割合を変化させている。
表10に示すように、E及びHには全て沈降が認められなかった。また、初期及びヒートサイクル後のモールド真空バルブの部分放電開始電圧と直流絶縁破壊電圧は、破砕結晶質シリカの含有率が0wt%、即ち、破砕溶融シリカのみの場合と、100wt%、即ち、破砕結晶質シリカのみの場合が低く、破砕結晶質シリカと破砕溶融シリカを混合すると高くなっていることが分かる。特に、破砕結晶質シリカの含有率が70〜97wt%の範囲が高くなっている。一方、1250A通電時の温度上昇値は破砕結晶質シリカの配合量が少なくなると高くなっている。破砕溶融シリカのみの場合、温度上昇値は105℃となり雰囲気温度が27℃を超えると樹脂硬化物の熱変形温度を超え、モールド品は変形し始め、実用に耐えない。応力安全率及び歪安全率は破砕結晶質シリカの含有率が0wt%、即ち、破砕溶融シリカのみの場合最も高く、破砕結晶質シリカが10〜97wt%の範囲ではほぼ同等で、破砕結晶質シリカの含有率が100wt%になると急激に低下している。
モールド真空バルブの部分放電開始電圧は、ボイド、剥離や微細クラックが存在しないと100kV以上になるはずで、破砕結晶質シリカの含有率が100wt%のときモールド真空バルブの電気特性が低下するのは応力安全率、歪安全率が低くなるため剥離や微細クラックが生じてくることが原因と考えられる。一方、破砕結晶質シリカの含有率が0wt%の応力安全率、歪安全率が高くなっているのに拘わらず、モールド真空バルブの電気特性が低下している。これは破砕結晶質シリカの含有率が0wt%になると許容欠陥寸法が小さくなる、即ち、破壊靭性値が小さいことに起因すると考えられる。1250A通電時の温度上昇は熱伝導率と逆相関を示し、熱伝導率が高いほど温度上昇は低くなっている。
(12)実験例86〜92(可撓化剤の添加量の影響)
多官能エポキシ樹脂として高分子量のエポキシ当量192のビスフエノールAFのジグリシジルエーテルを、可撓化剤としてA5を用いて、その配合量が樹脂組成物の物性及び真空バルブの電気物性に与える影響について検討した。エポキシ当量192のビスフエノールAFのジグリシジルエーテルE8を100重量部と、表11の実験例86〜92に記載の半分量の破砕結晶質シリカCS‐5及び破砕溶融シリカMS‐5と、界面活性剤S2を混ぜ、よく攪拌し主剤系樹脂組成物Eとした。次いで、酸無水物硬化剤H3を85.7重量部と、表11の実験例86〜92に記載の半分量の破砕結晶質シリカCS‐5及び破砕溶融シリカMS‐5と、シラン系界面活性剤S2と、表11の実験例86〜92に記載の量の可撓化剤A5と、沈降防止材PP‐1と、滑材LM‐1と、系界面活性剤T4と、硬化触媒C3を混ぜ、よく攪拌し硬化剤系樹脂組成物Hとした。EとHを別々に60℃で12時間保持し、無機充填材の沈降の有無を観察した。使用直前に、EとHを加温し、両者を混ぜてワニス(熱硬化性樹脂組成物)とした。
ワニスの粘度を、B型粘度計及び振動粘度計で測定した。また、ワニスのポットライフを測定した。次に、ワニスを金型に入れ、130℃で1時間、170℃で5時間保持した。得られた硬化物の曲げ特性、熱膨張係数、ガラス転移温度、熱変形温度、熱伝導率、破壊靭性値を測定した。これらのデータから冷却拘束熱応力、応力安全率、歪安全率、許容欠陥寸法を計算した。これらの結果と60℃に12時間保持したときのHの沈降の有無の結果とを表11に記した。
Figure 0005269728
次に、このワニスを用いて真空バルブを加圧ゲル化方式でモールドし、図2に示すモールド真空バルブを作製した。このモールド真空バルブのボイドの有無、部分放電開始電圧、直流絶縁破壊電圧、1250A通電時の温度上昇値を測定した。また、−30℃に3時間保持、90℃に3時間保持するヒートサイクルを5サイクル繰り返した後、再び部分放電開始電圧を測定した。それらの結果を表11に併記した。
表11の実験例86〜92からわかるように、エポキシ樹脂としてエポキシ当量192のビスフエノールAFのジグリシジルエーテルを用いた場合、樹脂組成物に対するコアシェルゴムの配合割合が0〜3.75wt%の範囲では初期及びヒートサイクル後のモールド真空バルブの部分放電開始電圧と直流絶縁破壊電圧は、上に凸の曲線を描き、コアシェルゴムの添加量がゼロ及び多すぎると特性が悪くなっている。一方、モールド真空バルブの温度上昇値は下に凸の曲線を示し、コアシェルゴムの添加量がゼロ及び多すぎると特性が悪くなっている。エポキシ当量192のビスフエノールAFのジグリシジルエーテルを用いた場合、コアシェルゴム無添加でもヒートサイクル後の部分放電電圧が60kVあるのでエポキシ当量174の場合と異なり、用いることは出来る。コアシェルゴムの添加量は0〜3.5重量%、特に0.65〜3.14重量%が好ましい。コアシェルゴムの添加量が多くなると、硬化前粘度が上昇して注型不良になりがちである。硬化後、弾性率、ガラス転移温度、熱変形温度、熱伝導率が低下し、破断歪及び熱線膨張係数が増加している。それに伴い、応力安全率、歪安全率及び許容欠陥寸法が増加している。
(13)実験例93〜95(滑材、沈降防止材、界面活性剤の有無の影響)
多官能エポキシ樹脂としてエポキシ当量192のビスフエノールAFのジグリシジルエーテルを用いて、滑材、沈降防止材、界面活性剤の有無が樹脂組成物の物性及び真空バルブの電気物性に与える影響について検討した。
エポキシ当量192のビスフエノールAFのジグリシジルエーテル(E8)を100重量部と、表11の実験例93〜95に記載の半分量の破砕結晶質シリカCS‐5及び破砕溶融シリカMS‐5と、界面活性剤S2を混ぜ、よく攪拌し主剤系樹脂組成物Eとした。次いで、酸無水物硬化剤H3を85.7重量部と、表11の実験例93〜95に記載の半分量の破砕結晶質シリカCS‐5及び破砕溶融シリカMS‐5と、シラン系界面活性剤S2と、表11の実験例93〜95に記載の量の可撓化剤A5と、沈降防止材PP‐1と、滑材LM‐1と、系界面活性剤T4と、硬化触媒C3を混ぜ、よく攪拌し硬化剤系樹脂組成物Hとした。EとHを別々に60℃で12時間保持し、無機充填材の沈降の有無を観察した。使用直前に、EとHを加温し、両者を混ぜてワニス(熱硬化性樹脂組成物)とした。
ワニスの粘度を、B型粘度計及び振動粘度計で測定した。また、ワニスのポットライフを測定した。次に、ワニスを金型に入れ、130℃で1時間、170℃で5時間保持した。得られた硬化物の曲げ特性、熱膨張係数、ガラス転移温度、熱変形温度、熱伝導率、破壊靭性値を測定した。これらのデータから冷却拘束熱応力、応力安全率、歪安全率、許容欠陥寸法を計算した。これらの結果と60℃に12時間保持したときのHの沈降の有無の結果とを表11に記した。
次に、このワニスを用いて真空バルブを加圧ゲル化方式でモールドし、図2に示すモールド真空バルブを作製した。このモールド真空バルブのボイドの有無、部分放電開始電圧、直流絶縁破壊電圧、1250A通電時の温度上昇値を測定した。また、−30℃に3時間保持、90℃に3時間保持するヒートサイクルを5サイクル繰り返した後、再び部分放電開始電圧を測定した。それらの結果を表11に併記した。
表11の実験例93〜95からわかるように、滑材、沈降防止材、界面活性剤のいすれか一つでも欠けると、真空バルブの電気特性は悪くなっている。特に界面活性剤T4を添加しない実験例95では、硬化物の粘度が高く、真空バルブをモールドしたときボイドが含まれ、電気特性が悪くなった。これらの結果から、樹脂組成物に滑材、沈降防止材、界面活性剤を添加する必要があることがわかる。
(14)実験例3、96〜100(破砕溶融シリカの粒径の影響)
多官能エポキシ樹脂として低分子量のエポキシ当量174のビスフエノールAFのジグリシジルエーテルを用い、破砕溶融シリカの粒径が樹脂組成物の物性及び真空バルブの電気物性に与える影響について検討した。エポキシ当量174のビスフェノールAFのジグリジシルエーテル(E1)を100重量部と、表12記載の半分量の破砕結晶質シリカCS‐5及び破砕溶融シリカと、界面活性剤S2を混ぜ、よく攪拌し主剤系樹脂組成物Eとした。次いで、酸無水物硬化剤H3を95.0重量部と、表12記載の半分量の破砕結晶質シリカCS‐5及び破砕溶融シリカと、界面活性剤S2と、表12記載の量の可撓化剤A5と、沈降防止材PP‐1と、滑材LM‐1と、界面活性剤T4と、硬化触媒C3を混ぜ、よく攪拌し硬化剤系樹脂組成物Hとした。EとHを60℃で12時間保持し、無機充填材の沈降の有無を観察した。使用直前に、主剤Eと主剤Hを加温し、両者を混ぜてワニス(熱硬化性樹脂組成物)とした。
ワニスの粘度を、B型粘度計及び振動粘度計で測定した。また、ワニスのポットライフを測定した。次に、ワニスを金型に入れ、130℃で1時間、170℃で5時間保持した。得られた硬化物の曲げ特性、熱膨張係数、ガラス転移温度、熱変形温度、熱伝導率、破壊靭性値を測定した。これらのデータから冷却拘束熱応力、応力安全率、歪安全率、許容欠陥寸法を計算した。これらの結果と60℃で12時間保持したときのHの沈降の有無の結果とを表12に記した。
次に、このワニスを用いて真空バルブを加圧ゲル化方式でモールドし、図2に示すモールド真空バルブを作製した。このモールド真空バルブのボイドの有無、部分放電開始電圧、直流絶縁破壊電圧、1250A通電時の温度上昇値を測定した。また、−30℃に3時間保持、90℃に3時間保持するヒートサイクルを5サイクル繰り返した後、再び部分放電開始電圧を測定した。それらの結果を表12に併記した。
実験例96において、平均粒径30.0μmの破砕溶融シリカMS‐1(RD−120;登録商標)を用いると、沈降防止材を添加しているのにも拘らず硬化剤系樹脂組成物Hに沈降が生じ、モールド真空バルブの特性が不安定になっている。また、実験例100に示したように平均粒径2.5μmの破砕溶融シリカMS‐6(X;登録商標)を用いた場合、硬化前の粘度が高くなり、注型不良となりボイドが存在し、モールド真空バルブの特性が悪くなる傾向にある。破砕溶融シリカの平均粒径は4〜20μm、特に5〜16μmが好ましい。
(15)実施例101、102(滑材の粒径の影響)
多官能エポキシ樹脂として低分子量のエポキシ当量174のビスフエノールAFのジグリシジルエーテルを用い、滑材の粒径が樹脂組成物の物性及び真空バルブの電気物性に与える影響について検討した。多官能エポキシ樹脂E1を100重量部と、表12の実験例101、102に記載の半分量の破砕結晶質シリカ及び破砕溶融シリカと、界面活性剤S2を混ぜ、よく攪拌し主剤系樹脂組成物Eとした。また、酸無水物硬化剤H3を95.0重量部と、表12の実験例101、102に記載の半分量の破砕結晶質シリカ及び破砕溶融シリカと、界面活性剤S2と、表12記載の量の可撓化剤A5と、沈降防止材PP‐1と、滑材と、界面活性剤T4と、硬化触媒C3を混ぜ、よく攪拌し硬化剤系樹脂組成物Hとした。EとHを別々に60℃で12時間保持し、無機充填材の沈降の有無を観察した。使用直前に、主剤Eと主剤Hを加温し、両者を混ぜてワニス(熱硬化性樹脂組成物)とした。
ワニスの粘度を、B型粘度計及び振動粘度計で測定した。また、ワニスのポットライフを測定した。次に、ワニスを金型に入れ、130℃で1時間、170℃で5時間保持した。得られた硬化物の曲げ特性、熱膨張係数、ガラス転移温度、熱変形温度、熱伝導率、破壊靭性値を測定した。これらのデータから冷却拘束熱応力、応力安全率、歪安全率、許容欠陥寸法を計算した。これらの結果と60℃で12時間保持したときのHの沈降の有無の結果とを表12に記した。
Figure 0005269728
次に、このワニスを用いて真空バルブを加圧ゲル化方式でモールドし、図2に示すモールド真空バルブを作製した。このモールド真空バルブのボイドの有無、部分放電開始電圧、直流絶縁破壊電圧、1250A通電時の温度上昇値を測定した。また、−30℃に3時間保持、90℃に3時間保持するヒートサイクルを5サイクル繰り返した後、再び部分放電開始電圧を測定した。それらの結果を表12に併記した。
表12の実験例101及び102から、平均粒径がサブミクロン(0.1μm、0.55μm)の球形溶融シリカでも滑剤として利用できることがわかった。
(16)実験例109(リニアモーターカー用推進コイルの作製)
本発明の実験例3の高靭性高熱伝導性熱硬化性樹脂組成物を用いて作製したリニアモーターカー用推進コイルを図3A及び図3Bに示す。図3Aはコイルの斜視模式図で、図3Bは、図3AのII‐II線に沿った断面模式図である。
熱硬化性樹脂組成物の硬化物21を加圧ゲル化法によりガラス裏打ちプリプレグマイカテープ20を巻回し、加熱加圧硬化したAl素線導体19にモールドし、リニアモーターカー用推進コイル18を作製した。本発明の高圧コイル注型用熱硬化性樹脂組成物は硬化前低粘度であるため作業性に優れ、ボイドが無く、また、クラックも生ぜず、電気的、機械的特性が優れていた。また、高熱伝導性であるため稼動時に温度上昇も少なかった。
(17)実験例110(変圧器用モールドコイルの作製)
本発明の実験例4の高靭性高熱伝導性熱硬化性樹脂組成物を用いて作製した変圧器用モールドコイルの斜視模式図を図4に示す。変圧器用モールドコイル23は、内外周をそれぞれプリプレグ絶縁物25、27で絶縁して内周絶縁層24、外周絶縁層26を形成し、コイル内部に本発明の実験例4の熱硬化性樹脂組成物の硬化物28を巻線29の内部と内外周間に流し込み、加熱硬化することにより作製した。これを鉄芯に組み込みモールド変圧器を作製した。稼動時に温度上昇も少なく、従来の変圧器よりも優れた特性を示した。
(18)実験例111(変圧器用モールドコイル及びモールド変圧器の作製)
本発明の実験例3の高靭性高熱伝導性熱硬化性樹脂組成物を用いて変圧器用モールドコイル及びモールド変圧器を作製した。作製した変圧器用モールドコイルの斜視模式図を図5Aに、それを組み込んだモールド変圧器の模式図を図5Bに示す。変圧器用モールドコイル32は、外周絶縁層34の表面の端子の周囲にリブを形成して絶縁距離を得るようにしたものである。36は巻き始め側の端子、37は巻き終わり側の端子、38はタップ切り換え用端子である。端子36、37の周辺には、それぞれそれらを囲むようにリブ39、40が設けられている。リブ39、40のモールドコイル32の表面から突出高さは端子36、37の突出高さより小さく設けられ、リード線接続時の障害とならないよう構成される。この関係はタップ切り替え用端子38の突出高さとリブ41の突出高さについても同様である。モールドコイル32は鉄心42に嵌挿され、端子36には一次側電源接続用端子43が、端子37には接続バー44が、タップ端子38にはタップ接続バー45がそれぞれ接続されている。なお、二次端子46は二次端子で単相二線式二次出力が得られるように接続されている。
変圧器用モールドコイル32は、内側絶縁層33と外周絶縁層34の間、及び端部絶縁層35は本発明の高靭性高熱伝導性熱硬化性樹脂組成物でモールドされている。本発明の高靭性高熱伝導性熱硬化性樹脂組成物は硬化前高シェアにおいて低粘度となるため、細部までモールドされている。また、高靭性高熱伝導性であるため、クラックを発生せず、稼動時に温度上昇も少なく、装置の小型化が可能である。
本発明においては前述のように絶縁筒または導体との間に緩衝層を設けることは、層間の剥離や電気的、機械的特性の低下につながるので好ましくなく、これを設けないことが好ましい。
(19)実験例112(計器用変成器の作製)
一次巻線及び二次巻線を巻いた鉄芯を金型に入れ、本発明の実験例3の高靭性高熱伝導性熱硬化性樹脂組成物でモールド、硬化し、6.6kV三相3線式高圧需要家の受電設備に使用される計器用変成器を作製した。作製した計器用変成器の平面模式図を図6Aに、横から見た断面模式図を図6Bに示す。モールド硬化物(絶縁外皮)47は、図示していない一次巻線及び二次巻線を重ねた状態で本発明の実施例3の高靭性高熱伝導性熱硬化性樹脂組成物に代表される絶縁樹脂をモールド、硬化して形成されたものであり、一次端子48、二次端子49及び鉄心挿入窓50が一体に形成されている。本発明の高靭性高熱伝導性熱硬化性樹脂組成物は硬化前高シェアにおいて低粘度となるため、細部までモールドされている。また、高靭性高熱伝導性であるため、クラックを発生せず、稼動時に温度上昇も少なく、装置の小型化が可能である。
1…真空バルブ、2…絶縁円筒、3…固定側端板、4…可動側端板、5…真空容器、6…固定軸、7…可動軸、8…ベローズ、9…接点、10…応力緩和層、11…モールド硬化物(絶縁外皮)、12…可動電極側電界集中緩和シールド、13…固定電極側電界集中緩和シールド、14…導体用電界集中緩和シールド、15…導体、16…表面導電層、17…ブッシング、18…コイル、19…導体、20…ガラス裏打ちプリプレグマイカテープ、21…熱硬化性樹脂組成物の硬化物、22…端子、23…変圧器用モールドコイル、24…内周絶縁層、25…プリプレグ絶縁物、26…外周絶縁層、27…プリプレグ絶縁物、28…熱硬化性樹脂組成物の硬化物、29…巻線、30…口出し線、31…口出し線、32…変圧器用モールドコイル、33…内周絶縁層、34…外周絶縁層、35…端部絶縁層、36…巻き始め側の端子、37…巻き終わり側の端子、38…タップ切り替え用端子、39…リブ、40…リブ、41…リブ、42…鉄心、43…一次側電源接続用端子、44…接続バー、45…タップ接続バー、46…二次端子、47…モールド硬化物(絶縁外皮)、48…一次端子、49…二次端子、50…鉄芯挿入窓

Claims (23)

  1. 1分子当たり2個以上のエポキシ基を有する多官能エポキシ樹脂と、酸無水物硬化剤と、無機充填材と、界面活性剤を含有する熱硬化性樹脂組成物の硬化物であって、前記熱硬化性樹脂組成物の前記無機充填材の含有量は、前記熱硬化性樹脂組成物の全体に対して、55〜71vol%であり、前記無機充填材は平均粒径2〜9μmの破砕結晶質シリカと平均粒径4〜20μmの破砕溶融シリカを含み、該破砕結晶質シリカの平均粒径Xと該破砕溶融シリカの平均粒径Yとの比X/Yが0.1〜2.25であり、前記熱硬化性樹脂組成物によりアルミナセラミックをモールドし、室温まで冷却したとき応力安全率が7以上、歪安全率が10以上、許容欠陥寸法が0.1mm以上で、前記熱硬化性樹脂組成物の硬化物の熱伝導率が0.7〜2.5W/m・Kであることを特徴とするモールド用高靭性高熱伝導性熱硬化性樹脂組成物の樹脂硬化物。
    (ただし、応力安全率は、応力安全率(σB25℃/σ25℃)=エポキシ硬化物の曲げ強度σB25℃÷冷却拘束熱応力σ 25℃ 定義される物性値であり、歪安全率は、歪安全率(F25℃)={(エポキシ硬化物のガラス転移温度以下の熱膨張係数−真空バルブのアルミナセラミックスの膨張係数)×(エポキシ硬化物のガラス転移温度−25)}÷エポキシ硬化物の曲げ破断歪ε B25℃ 定義される物性値であり、許容欠陥寸法は、許容欠陥寸法=(エポキシ硬化物の平面歪み破壊靭性値K IC ÷エポキシ硬化物の曲げ強度σB25℃÷1.26÷π×1000で定義される物性値である。)
  2. 曲げ破断歪が1.5%以上、熱伝導率が0.7W/m・K以上、破壊靭性値が2.7MPa・m1/2以上の特性を有することを特徴とする請求項1に記載のモールド用高靭性高熱伝導性熱硬化性樹脂組成物の樹脂硬化物。
  3. 前記界面活性剤は、前記無機充填材の0.05〜2wt%であり、かつ前記多官能エポキシ樹脂、硬化剤及び無機充填材と反応する界面活性剤Aと、前記多官能エポキシ樹脂及び硬化剤と反応しないが前記無機充填材と反応する界面活性剤Bであり、
    前記界面活性剤Aは全界面活性剤に対して15〜75wt%であり、前記界面活性剤Bは全界面活性剤に対して25〜85wt%であることを特徴とする請求項1または2に記載のモールド用高靭性高熱伝導性熱硬化性樹脂組成物の樹脂硬化物。
  4. 可撓化剤としてコアシェルゴムを、前記モールド用高靭性高熱伝導性熱硬化性樹脂組成物の総重量に対して0.5〜3.5wt%添加することを特徴とする請求1〜3のいずれかに記載のモールド用高靭性高熱伝導性熱硬化性樹脂組成物の樹脂硬化物。
  5. 前記コアシェルゴムは、コアとシェルの比率(重量%)が40/60〜95/5であることを特徴とする請求項4に記載のモールド用高靭性高熱伝導性熱硬化性樹脂組成物の樹脂硬化物。
  6. 滑材を前記破砕結晶質シリカの重量に対して0.5〜7wt%含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のモールド用高靭性高熱伝導性熱硬化性樹脂組成物の樹脂硬化物。
  7. 前記滑材は粒径1μm以下の球状シリカである請求項6に記載のモールド用高靭性高熱伝導性熱硬化性樹脂組成物の樹脂硬化物。
  8. 更に板状の沈降防止材を含有することを特徴とする請求項1に記載のモールド用高靭性高熱伝導性熱硬化性樹脂組成物の樹脂硬化物。
  9. 端部に固定電極が設けられる固定軸と、前記固定軸に対向して、端部に可動電極が設けられる可動軸を有する真空バルブであって、前記固定電極、固定軸、可動電極及び可動軸を収容する真空容器及び導体を、請求項1〜8のいずれかに記載の樹脂硬化物で被覆したことを特徴とするモールド真空バルブ。
  10. 巻線と該巻線の内周及び外周にそれぞれ形成された内周絶縁層及び外周絶縁層と、前記巻線の軸方向に端面に形成された端部絶縁層とを備えてなるモールドコイルにおいて、前記内周絶縁層、前記外周絶縁層、前記端部絶縁層、及び前記巻線内部の空間の少なくともいずれか一つを、請求項1〜8のいずれかに記載の樹脂硬化物で被覆したことを特徴とするモールドコイル。
  11. 一次巻線及び二次巻線を絶縁樹脂で被覆し、鉄心を装着したモールド形の計器用変成器において、該絶縁樹脂が、請求項1〜8のいずれかに記載の樹脂硬化物であることを特徴とする計器用変成器。
  12. モールド用高靭性高熱伝導性熱硬化性樹脂組成物であって、1分子当たり2個以上のエポキシ基を有する多官能エポキシ樹脂と、酸無水物硬化剤と、平均粒径2〜9μmの破砕結晶質シリカと平均粒径4〜20μmの破砕溶融シリカを含む無機充填材と、界面活性剤を含み、前記破砕結晶質シリカと破砕溶融シリカを含む充填材を熱硬化性樹脂組成物の55〜71vol%含み、前記破砕結晶質シリカと前記破砕溶融シリカの配合割合は、前者が10〜98wt%で残りが後者であり、前記破砕結晶質シリカの平均粒径Xと破砕溶融シリカの平均粒径Yの比X/Yが0.1〜2.25であることを特徴とするモールド用高靭性高熱伝導性熱硬化性樹脂組成物。
  13. 曲げ破断歪が1.5%以上、熱伝導率が0.7W/m・K以上、破壊靭性値が2.7MPa・m1/2以上の硬化物を与えるものであることを特徴とする請求項12に記載のモールド用高靭性高熱伝導性熱硬化性樹脂組成物。
  14. アルミナセラミックをモールド硬化し、ガラス転移温度から室温まで冷却したときの応力安全率が7以上、歪安全率が10以上、許容欠陥寸法が0.1mm以上である硬化物を与えるものであることを特徴とする請求項12に記載のモールド用高靭性高熱伝導性熱硬化性樹脂組成物。(ただし、応力安全率は、応力安全率(σB25℃/σ25℃)=エポキシ硬化物の曲げ強度σB25℃÷冷却拘束熱応力σ 25℃ 定義される物性値であり、歪安全率は、歪安全率(F25℃)={(エポキシ硬化物のガラス転移温度以下の熱膨張係数−真空バルブのアルミナセラミックスの膨張係数)×(エポキシ硬化物のガラス転移温度−25)}÷エポキシ硬化物の曲げ破断歪ε B25℃ 定義される物性値であり、許容欠陥寸法は、許容欠陥寸法=(エポキシ硬化物の平面歪み破壊靭性値K IC ÷エポキシ硬化物の曲げ強度σB25℃÷1.26÷π×1000で定義される物性値である。)
  15. 可撓化剤としてコアシェルゴムを、前記モールド用高靭性高熱伝導性前記熱硬化性樹脂組成物の総重量に対して0.5〜3.5wt%添加することを特徴とする請求項12に記載のモールド用高靭性高熱伝導性熱硬化性樹脂組成物。
  16. 前記多官能エポキシ樹脂が、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAF、ビスフェノールAD、アントラセンジオール、ナフタレンジオールからなる群から選ばれた少なくとも1種とエピクロルヒドリンとの反応により得られるものであり、前記無機充填材は平均粒径2〜9μmの破砕結晶質シリカと平均粒径4〜20μmの破砕溶融シリカであり、前記界面活性剤として、エポキシ樹脂、無機充填材、硬化剤と反応する界面活性剤Aと、エポキシ樹脂及び硬化剤と反応しないが、無機充填材と反応する界面活性剤Bを含み、全界面活性剤重量に対して、前記界面活性剤Aは15〜75wt%、前記界面活性剤Bは25〜85wt%であり、前記界面活性剤は無機充填材重量に対して0.05〜10wt%であることを特徴とする請求項12に記載のモールド用高靭性高熱伝導性熱硬化性樹脂組成物。
  17. 端部に固定電極が設けられる固定軸と、前記固定軸に対向して、端部に可動電極が設けられる可動軸を有する真空バルブであって、前記固定電極、固定軸、可動電極及び可動軸を収容する真空容器及び導体を、請求項12〜16のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物でモールドし、硬化した樹脂絶縁体を備えることを特徴とするモールド真空バルブ。
  18. 巻線と該巻線の内周及び外周にそれぞれ形成された内周絶縁層及び外周絶縁層と、前記巻線の軸方向に端面に形成された端部絶縁層とを備えてなるモールドコイルにおいて、前記内周絶縁層、前記外周絶縁層、前記端部絶縁層、及び前記巻線内部の空間の少なくともいずれか一つを、請求項12〜16のいずれかに記載の高靭性高熱伝導性熱硬化性樹脂組成物でモールド硬化した樹脂絶縁体を備えることを特徴とするモールドコイル。
  19. 一次巻線及び二次巻線を絶縁樹脂で被覆し、鉄心を装着したモールド形の計器用変成器において、該絶縁樹脂が、請求項12〜16のいずれかに記載のモールド用高靭性高熱伝導性熱硬化性樹脂組成物の硬化物であることを特徴とする計器用変成器。
  20. 端部に固定電極が設けられる固定軸と、前記固定軸に対向して、端部に可動電極が設けられる可動軸を有する真空バルブであって、前記固定電極、固定軸、可動電極及び可動軸を収容する真空容器及び導体を熱硬化性樹脂組成物でモールド硬化する固体絶縁の形成方法であって、予め、(1)(a)1分子当たり2個以上のエポキシ基を有する多官能エポキシ樹脂、(c)無機充填材、及び(d1)前記無機充填材、エポキシ樹脂及びエポキシ樹脂用酸無水物硬化剤と反応する界面活性剤Aを混合したエポキシ樹脂主剤系樹脂組成物Eと、(2)(b)エポキシ樹脂用酸無水物硬化剤、(c)無機充填材、(d2)多官能エポキシ樹脂及びエポキシ樹脂用酸無水物硬化剤と反応しないが、無機充填材と反応する界面活性剤Bとを混合したエポキシ樹脂硬化剤系組成物Hとを、前記エポキシ樹脂主剤系樹脂組成物Eと前記エポキシ樹脂硬化剤系組成物Hを混合して請求項12〜16のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物を調整し、導体を含む電気的装置の外周をモールド、硬化する固体絶縁の形成方法。
  21. 可撓化剤としてコアシェルゴムを前記エポキシ樹脂硬化剤系樹脂組成物Hに混合することを特徴とする請求項20に記載の固体絶縁の形成方法。
  22. 板状の沈降防止材を前記エポキシ樹脂硬化剤系樹脂組成物Hに混合することを特徴とする請求項20に記載の固体絶縁の形成方法。
  23. 滑材を前記エポキシ樹脂硬化剤系樹脂組成物Hに混合することを特徴とする請求項20に記載の固体絶縁の形成方法。
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