JP5256689B2 - 加工性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法 - Google Patents
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C:0.05〜0.3%
Cは、オーステナイトを安定化させる元素であり、フェライト以外のマルテンサイトなどの第二相を生成させてTSを上昇させるとともに、TS-Elバランスを向上させるために必要な元素である。C量が0.05%未満では、フェライト以外の第二相の確保が難しくなり、TS-Elバランスが低下する。一方、C量が0.3%を超えると、溶接性が劣化する。したがって、C量は0.05〜0.3%、好ましくは0.08〜0.15%とする。
Siは、鋼を固溶強化して、TS-Elバランスを向上させるのに有効な元素である。こうした効果を得るには、Si量を0.01%以上にする必要がある。一方、Si量が2.5%を超えると、Elの低下や表面性状、溶接性の劣化を招く。したがって、Si量は0.01〜2.5%、好ましくは0.7〜2.0%とする。
Mnは、鋼の強化に有効であり、マルテンサイトなどの第二相の生成を促進する元素である。こうした効果を得るには、Mn量を0.5%以上にする必要がある。一方、Mn量が3.5%を超えると、第二相の過剰な増加や固溶強化によるフェライトの延性劣化が著しくなり、加工性が低下する。したがって、Mn量は0.5〜3.5%、好ましくは1.5〜3.0%とする。
Pは、鋼の強化に有効な元素である。こうした効果を得るには、P量を0.003%以上にする必要がある。一方、P量が0.100%を超えると、粒界偏析により鋼を脆化させ、耐衝撃性を劣化させる。したがって、P量は0.003〜0.100%とする。
Sは、MnSなどの介在物として存在して、耐衝撃性や溶接性を劣化させるため、その量は極力低減することが好ましい。しかし、製造コストの面からS量は0.02%以下とする。
Alは、フェライトを生成させ、TS-Elバランスを向上させるのに有効な元素である。こうした効果を得るには、Al量を0.010%以上にする必要がある。一方、Al量が1.5%を超えると、連続鋳造時のスラブ割れの危険性が高まる。したがって、Al量は0.010〜1.5%とする。
Nは、鋼の耐時効性を劣化させる元素である。特に、N量が0.007%を超えると、耐時効性の劣化が顕著となる。したがって、N量は0.007%以下とするが、少ないほど好ましい。
Cr、Mo、V、Ni、Cuは、焼鈍時における加熱温度からの冷却時にパーライトの生成を抑制し、マルテンサイトなどの生成を促進して鋼を強化させるのに有効な元素である。こうした効果を得るには、Cr、Mo、V、Ni、Cuから選ばれる少なくとも1種の元素の含有量を0.005%にする必要がある。一方、Cr、Mo、V、Ni、Cuのそれぞれの元素の含有量が2.00%を超えると、その効果が飽和し、コストアップを招く。したがって、Cr、Mo、V、Ni、Cuの含有量はそれぞれ0.005〜2.00%とする。
Ti、Nbは、炭窒化物を形成し、鋼を析出強化により高強度化するのに有効な元素である。こうした効果を得るには、Ti、Nbから選ばれる少なくとも1種の元素の含有量を0.01%以上にする必要がある。一方、Ti、Nbのそれぞれの元素の含有量が0.20%を超えると、過度に高強度化し、延性が低下する。したがって、Ti、Nbの含有量はそれぞれ0.01〜0.20%とする。
Bは、オーステナイト粒界からのフェライトの生成を抑制し、マルテンサイト相などの第二相を生成させて高強度化を図る上で有効な元素である。こうした効果を得るには、B量を0.0002%以上にする必要がある。一方、B量が0.005%を超えると、その効果が飽和し、コストアップを招く。したがって、B量は0.0002〜0.005%とする。
Ca、REMは、いずれも硫化物の形態制御により加工性を改善させるのに有効な元素である。このような効果を得るには、Ca、REMから選ばれる少なくとも1種の元素の含有量を0.001%以上にする必要がある。一方、Ca、REMのそれぞれの元素の含有量が0.005%を超えると、鋼の清浄度に悪影響を及ぼす虞がある。したがって、Ca、REMの含有量はそれぞれ0.001〜0.005%とする。
フェライトの面積率:20〜87%
フェライトは、TS-Elバランスを向上させる。TS×El≧19000MPa・%とするには、フェライトの面積率を20%以上、好ましくは50%以上にする必要がある。なお、以下のマルテンサイトと残留オーステナイトの面積率が合計で3%以上および焼戻しマルテンサイトの面積率が10%以上より、フェライトの面積率の上限は87%である。
マルテンサイトや残留オーステナイトは、鋼の強化に寄与するだけでなく、TS-Elバランスを向上させたり、YRを低下させる。このような効果を得るには、マルテンサイトと残留オーステナイトの面積率を合計で3%以上にする必要がある。しかしながら、マルテンサイトと残留オーステナイトの面積率が合計で10%を超えると、伸びフランジ性が低下する。したがって、マルテンサイトと残留オーステナイトの面積率は合計で3〜10%とする。
焼戻しマルテンサイトは、焼戻し前のマルテンサイトに比べて伸びフランジ性への悪影響が少ないため、優れた伸びフランジ性を維持しながら高強度化を図る上で有効な第二相である。このような効果を得るには、焼戻しマルテンサイトの面積率を10%以上にする必要がある。しかしながら、焼戻しマルテンサイトの面積率が60%を超えると、TS×El≧19000MPa・%が得られない。したがって、焼戻しマルテンサイトの面積率は10〜60%とする。
本発明の高強度溶融亜鉛めっき鋼板は、例えば、上記の成分組成を有するスラブを、熱間圧延、冷間圧延を施して冷延鋼板とし、前記冷延鋼板に、750〜950℃の温度域に加熱して10s以上保持した後、750℃から10℃/s以上の平均冷却速度で(Ms点-100℃)〜(Ms点-200℃)の温度域に冷却し、350〜600℃の温度域に再加熱して1〜600s保持する条件で焼鈍を施した後、溶融亜鉛めっきを施すことによって製造できる。
焼鈍時の加熱温度が750℃未満、あるいは保持時間が10s未満では、オーステナイトの生成が不十分となり、その後の冷却で十分な量のマルテンサイトなどの第二相を確保できなくなる。また、加熱温度が950℃を上回るとオーステナイトが粗大化し、冷却時のフェライトの生成が抑制され面積率で20%以上のフェライトが得られなくなる。したがって、焼鈍時の加熱は、750〜950℃の温度域に10s以上保持とする。保持時間の上限は、特に規定しないが、600s以上の保持を行っても、その効果が飽和し、コストアップを招くので、保持時間は600s未満とすることが好ましい。
加熱後は、750℃から10℃/s以上の平均冷却速度で冷却する必要があるが、これは、平均冷却速度が10℃/s未満だと、パーライトが多量に生成し、必要な量の焼戻しマルテンサイト、マルテンサイトおよび残留オーステナイトが得られないためである。冷却速度の上限は、特に規定しないが、鋼板形状が悪化したり、(Ms点-100℃)〜(Ms点-200℃)の冷却停止温度域に冷却を制御することが困難になるため、200℃/s以下とすることが好ましい。冷却の停止温度は、その後の再加熱、溶融亜鉛めっき、めっき相の合金化処理時に生成されるマルテンサイト、残留オーステナイト、焼戻しマルテンサイトの量を制御する本発明で最も重要な条件の一つである。すなわち、冷却停止時にマルテンサイトと未変態オーステナイトの量が決まり、その後の熱処理で、マルテンサイトが焼戻しマルテンサイトになり、未変態オーステナイトがマルテンサイトまたは残留オーステナイトとなって、鋼の強度、TS-Elバランス、伸びフランジ性、YRを左右する。冷却の停止温度が(Ms点-100℃)を超えると、マルテンサイト変態が不十分となり、未変態オーステナイトの量が多くなり、最終的にマルテンサイトと残留オーステナイトの面積率が合計で10%を超え、伸びフランジ性が低下する。一方、冷却の停止温度が(Ms点-200℃)未満では、オーステナイトのほとんどがマルテンサイト変態し、未変態オーステナイトの量が少なくなり、最終的にマルテンサイトと残留オーステナイトの面積率が合計で3%未満となり、TS-Elバランスが劣化したり、YRが増加する。したがって、焼鈍時の冷却は、750℃から10℃/s以上の平均冷却速度で(Ms点-100℃)〜(Ms点-200℃)の温度域に冷却の条件で行う必要がある。
10℃/s以上の平均冷却速度で(Ms点-100℃)〜(Ms点-200℃)の温度域に冷却後は、350〜600℃の温度域で1s以上保持の再加熱を行うことにより、冷却時の生成したマルテンサイトが焼戻されて、面積率で10〜60%の焼戻しマルテンサイトが生成し、優れた伸びフランジ性を維持しながら高強度化を達成できる。再加熱温度が350℃未満あるいは保持時間が1s未満では、焼戻しマルテンサイトの面積率が10%未満となって、伸びフランジ性が劣化する。また、再加熱温度が600℃を超えるあるいは保持時間が600sを超えると、冷却時の生成した未変態オーステナイトがパーライトやベイナイトに変態し、最終的にマルテンサイトと残留オーステナイトの面積率が合計で3%未満となり、TS-Elバランスが劣化したり、YRが増加する。したがって、焼鈍時の再加熱は、350〜600℃の温度域に1〜600s保持の条件で行う必要がある。
Claims (8)
- 質量%で、C:0.05〜0.3%、Si:0.01〜2.5%、Mn:0.5〜3.5%、P:0.003〜0.100%、S:0.02%以下、Al:0.010〜1.5%、N:0.007%以下を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有し、かつ、面積率で、フェライトを20〜87%、マルテンサイトと残留オーステナイトを合計で3〜10%、焼戻しマルテンサイトを10〜60%含むミクロ組織を有し、かつ839MPa以上の引張強度を有する加工性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
- さらに、質量%で、Cr:0.005〜2.00%、Mo:0.005〜2.00%、V:0.005〜2.00%、Ni:0.005〜2.00%、Cu:0.005〜2.00%から選ばれる少なくとも1種の元素を含有する請求項1に記載の加工性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
- さらに、質量%で、Ti:0.01〜0.20%、Nb:0.01〜0.20%から選ばれる少なくとも1種の元素を含有する請求項1または2に記載の加工性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
- さらに、質量%で、B:0.0002〜0.005%を含有する請求項1から3のいずれかに記載の加工性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
- さらに、質量%で、Ca:0.001〜0.005%、REM:0.001〜0.005%から選ばれる少なくとも1種の元素を含有する請求項1から4のいずれかに記載の加工性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
- 亜鉛めっきが合金化亜鉛めっきである請求項1から5のいずれかに記載の加工性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
- 請求項1から5のいずれかに記載の成分組成を有するスラブに、熱間圧延、冷間圧延を施して冷延鋼板とし、前記冷延鋼板に、750〜950℃の温度域に加熱して10s以上保持した後、750℃から10℃/s以上の平均冷却速度で(Ms点-100℃)〜(Ms点-200℃)の温度域に冷却し、350〜600℃の温度域に再加熱して1〜600s保持する条件で焼鈍を施した後、溶融亜鉛めっきを施す、面積率で、フェライトを20〜87%、マルテンサイトと残留オーステナイトを合計で3〜10%、焼戻しマルテンサイトを10〜60%含むミクロ組織を有し、かつ839MPa以上の引張強度を有する加工性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
- 溶融亜鉛めっきを施した後、亜鉛めっきの合金化処理を施す請求項7に記載の加工性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
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