このようなUWB用のローバンド用フィルタおよびハイバンド用フィルタを上下に重ねることによって小型で、非常に広い2つの通過帯域を有するバンドパスフィルタを構成することができる。
しかしながら、さらに薄型化しようとすると、ローバンド用の通過帯域を形成する共振電極とハイバンド用の通過帯域を形成する共振電極との間の電磁気的な結合が強くなり過ぎて良好なフィルタ特性を得るのが困難になる場合があるという問題を有していた。
本発明はこのような従来の技術における問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的は、非常に広い2つの通過帯域を有するとともに、薄型化しても良好なフィルタ特性を得ることができ、かつ、ハイバンド用の通過帯域の高域側に発生する、ローバンド用の共振電極による高調波を抑えて高域側の減衰量を大きくすることできるバンドパスフィルタならびにそれを用いた無線通信モジュールおよび無線通信機器を提供することにある。
本発明のバンドパスフィルタは、複数の誘電体層が積層されてなる積層体と、該積層体を挟んで対向するように配置された接地電極と、前記積層体の第1の層間に一方端と他方端とが互い違いになるように横並びに配置された、それぞれ一方端が接地されて第1の周波数で共振するとともに相互に電磁界結合する帯状の4個以上の第1の共振電極と、前記積層体の前記第1の層間とは異なる第2の層間に相互に電磁界結合するように横並びに配置された、それぞれ一方端が接地されて前記第1の周波数よりも高い第2の周波数で共振する帯状の複数の第2の共振電極と、前記積層体の前記第1の層間と前記第2の層間との間に位置する第3の層間に配置された、前記4個以上の第1の共振電極のうち初段の前記共振電極に沿った形状で対向して電磁界結合するとともに、電気信号が入力される電気信号入力点を有する帯状の第1の入力結合電極と、前記積層体の前記第3の層間に配置された、前記4個以上の第1の共振電極のうち最終段の前記共振電極に沿った形状で対向して電磁界結合するとともに、電気信号が出力される電気信号出力点を有する帯状の第1の出力結合電極と、前記積層体の前記第1の層間と前記第2の層間との間に位置する層間に配置された、前記複数の第2の共振電極のうち初段の前記共振電極に沿った形状で対向して電磁界結合する第2の入力結合電極と、前記積層体の前記第1の層間と前記第2の層間との間に位置する層間に配置された、前記複数の第2の共振電極のうち最終段の第2の共振電極と対向して電磁界結合する第2の出力結合電極とを備え、前記第1の共振電極および前記第2の共振電極は、前記積層体の積層方向から見て互いに直交するように配置されるとともに、前記第2の共振電極の群の幅方向の中心が、前記第1の共振電極の群の長さ方向の端から略1/3の位置に重なることを特徴とするものである。
また、本発明のバンドパスフィルタは、上記構成において、前記積層体の前記第1の層間を間に挟んで前記第3の層間と反対側に位置する第4の層間に配置された、隣り合う4以上の偶数個の前記第1の共振電極からなる第1の共振電極の群を構成する初段の第1の共振電極の前記一方端の近傍で一方端が接地され、前記第1の共振電極の群を構成する最終段の第1の共振電極の前記一方端の近傍で他方端が接地されており、前記初段の第1の共振電極および前記最終段の第1の共振電極の前記一方端側にそれぞれ対向して電磁界結合する第1の共振電極結合導体を備えることを特徴とするものである。
また、本発明のバンドパスフィルタは、上記各構成において、前記積層体の前記第2の層間を間に挟んで前記第3の層間と反対側に位置する第5の層間に配置された、隣り合う4以上の偶数個の前記第2の共振電極からなる第2の共振電極の群を構成する初段の第2の共振電極の前記一方端の近傍で一方端が接地され、前記第2の共振電極の群を構成する最終段の第2の共振電極の前記一方端の近傍で他方端が接地されており、前記初段の第2の共振電極および前記最終段の第2の共振電極の前記一方端側にそれぞれ対向して電磁界結合する第2の共振電極結合導体を備えることを特徴とするものである。
また、本発明のバンドパスフィルタは、上記各構成において、前記積層体の前記第1の層間に平面視で前記第1の共振電極を取り囲むように形成された第1の内部接地電極を備えるとともに、前記積層体の前記第2の層間に平面視で前記第2の共振電極を取り囲むように形成された第2の内部接地電極を備えることを特徴とするものである。
また、本発明のバンドパスフィルタは、上記各構成において、前記第2の入力結合電極は前記第3の層間に配置されて前記第1の入力結合電極と一体化しており、前記第2の出力結合電極は前記第3の層間に配置されて前記第1の出力結合電極と一体化していることを特徴とするものである。
また、本発明のバンドパスフィルタは、上記各構成において、前記第2の入力結合電極は前記第3の層間よりも前記第2の層間に近い層間に配置されて入力側接続導体を介して前記第1の入力結合電極に接続されており、前記第2の出力結合電極は前記第3の層間よりも前記第2の層間に近い層間に配置されて出力側接続導体を介して前記第1の出力結合電極に接続されていることを特徴とするものである。
本発明の無線通信モジュールは、上記各構成のいずれかの本発明のバンドパスフィルタを備えることを特徴とするものである。
本発明の無線通信機器は、上記各構成のいずれかの本発明のバンドパスフィルタを含むRF部と、該RF部に接続されたベースバンド部と、前記RF部に接続されたアンテナとを備えることを特徴とするものである。
本発明のバンドパスフィルタによれば、第1の共振電極および第2の共振電極は積層体の積層方向から見て互いに直交するように配置されていることから、積層体の厚みが薄くて第1の共振電極と第2の共振電極とが近接する場合においても、第1の共振電極と第2の共振電極との間に生じる電磁界結合を最小限にすることができるので、第1の共振電極と第2の共振電極との間の電磁界結合が強くなり過ぎることによる通過帯域における通過特性の悪化を防止することができる。
また、第2の共振電極の群の幅方向の中心が、第1の共振電極の群の長さ方向の端部から略1/3の位置に重なることから、ローバンド用の通過帯域を形成する複数の第1の共振電極のうちの半数に対して、3/4波長の共振の電界最大点となる接地端から1/3の位置に第2の共振電極の群が対向することで電界が強められて、この半数の第1の共振電極による3/4波長の共振周波数が低域側にシフトする。一方、残り半数の第1の共振電極にはこのような作用が働かず、これによる3/4波長の共振周波数はシフトしないので、結果として第1の共振電極による3/4波長の共振によって発生する高調波が抑えられ、ハイバンド用の通過帯域より高域側の減衰量が大きいバンドパスフィルタを提供することができる。
また、本発明のバンドパスフィルタによれば、上記構成において、積層体の第1の層間を間に挟んで第3の層間と反対側に位置する第4の層間に配置された、隣り合う4以上の偶数個の第1の共振電極からなる第1の共振電極の群を構成する初段の第1の共振電極の一方端の近傍で一方端が接地され、第1の共振電極の群を構成する最終段の第1の共振電極の一方端の近傍で他方端が接地されており、初段の第1の共振電極および最終段の第1の共振電極の一方端側にそれぞれ対向して電磁界結合する第1の共振電極結合導体を備えるときには、結合の弱い初段の第1の共振電極と最終段の第1の共振電極との間の結合を強めることができるので、第1の共振電極による通過帯域により近い位置の周波数(通過帯域の低域側または高域側)に減衰極を形成することができ、より急峻な減衰特性を有するバンドパスフィルタを提供することができる。
また、本発明のバンドパスフィルタによれば、上記各構成において、積層体の第2の層間を間に挟んで第3の層間と反対側に位置する第5の層間に配置された、隣り合う4以上の偶数個の第2の共振電極からなる第2の共振電極の群を構成する初段の第2の共振電極の一方端の近傍で一方端が接地され、第2の共振電極の群を構成する最終段の第2の共振電極の一方端の近傍で他方端が接地されており、初段の第2の共振電極および最終段の第2の共振電極の一方端側にそれぞれ対向して電磁界結合する第2の共振電極結合導体を備えるときには、結合の弱い初段の第2の共振電極と最終段の第2の共振電極との間の結合を強めることができるので、第2の共振電極による通過帯域により近い位置の周波数(通過帯域の低域側または高域側)に減衰極を形成することができ、より急峻な減衰特性を有するバンドパスフィルタを提供することができる。
また、本発明のバンドパスフィルタによれば、上記各構成において、積層体の第1の層間に平面視で第1の共振電極を取り囲むように形成された第1の内部接地電極を備えるとともに、積層体の第2の層間に平面視で第2の共振電極を取り囲むように形成された第2の内部接地電極を備えるときには、それぞれの内部接地電極が複数の共振電極の周囲を環状に取り囲むことによって、共振電極から発生する電磁波の周囲への漏洩を低減することができる。この効果は、モジュール基板の中の一部の領域に本発明のバンドパスフィルタが形成される場合に、モジュール基板の他の領域への悪影響を防止する上で特に有用である。
また、本発明のバンドパスフィルタによれば、上記各構成において、第2の入力結合電極は第3の層間に配置されて第1の入力結合電極と一体化しており、第2の出力結合電極は前記第3の層間に配置されて第1の出力結合電極と一体化しているときには、第1の入力結合電極と第2の入力結合電極とを接続する接続導体および第1の出力結合電極と第2の出力結合電極とを接続する接続導体が不要であるため、接続導体による損失をなくすことができるとともに単純な構造を備える薄型のバンドパスフィルタを得ることができる。
また、本発明のバンドパスフィルタは、上記各構成において、第2の入力結合電極が第3の層間よりも第2の層間に近い層間に配置されて入力側接続導体を介して第1の入力結合電極に接続されているときには、第1の入力結合電極と初段の第1の共振電極との間隔および第2の入力結合電極と初段の第2の共振電極との間隔を維持したままで、初段の第1の共振電極と初段の第2の共振電極との間隔を広げることが可能になるため、第1の入力結合電極と初段の第1の共振電極との電磁界結合および第2の入力結合電極と初段の第2の共振電極との電磁界結合を弱めることなく、初段の第1の共振電極と初段の第2の共振電極との電磁界結合を弱めることができ、これによって、第1の入力結合電極と初段の第1の共振電極との電磁界結合および第2の入力結合電極と初段の第2の共振電極との電磁界結合をさらに強めることができる。同様に、第2の出力結合電極が第3の層間よりも第2の層間に近い層間に配置されて出力側接続導体を介して第1の出力結合電極に接続されているときには、第1の出力結合電極と最終段の第1の共振電極との間隔および第2の出力結合電極と最終段の第2の共振電極との間隔を維持したままで、最終段の第1の共振電極と最終段の第2の共振電極との間隔を広げることが可能になるため、第1の出力結合電極と最終段の第1の共振電極との電磁界結合および第2の出力結合電極と最終段の第2の共振電極との電磁界結合を弱めることなく、最終段の第1の共振電極と最終段の第2の共振電極との電磁界結合を弱めることができ、これによって、第1の出力結合電極と最終段の第1の共振電極との電磁界結合および第2の出力結合電極と最終段の第2の共振電極との電磁界結合をさらに強めることができる。
本発明の無線通信モジュールおよび本発明の無線通信機器によれば、通信帯域の全域に渡って通過する信号の損失が小さい本発明のバンドパスフィルタを送信信号および受信信号の濾波に用いることにより、バンドパスフィルタを通過する受信信号および送信信号の減衰が少なくなるため、受信感度が向上し、また、送信信号および受信信号の増幅度を小さくできるため増幅回路における消費電力が少なくなる。よって受信感度が高く消費電力が少ない高性能な無線通信モジュールおよび無線通信機器を得ることができる。さらに、1つのフィルタで2つの通信帯域をカバーすることができるとともに、薄型化しても良好なフィルタ特性が得られる本発明のバンドパスフィルタを用いることにより、小型で製造コストが低い無線通信モジュールおよび無線通信機器を得ることができる。
本発明のバンドパスフィルタならびにそれを用いた無線通信モジュールおよび無線通信機器について添付の図面を参照しつつ以下に詳細に説明する。
(実施の形態の第1の例)
本例のバンドパスフィルタは、図1〜図3に示す例のように、複数の誘電体層11が積層されてなる積層体10と、積層体10を挟んで対向するように積層体10の下面と上面に配置されて接地される接地電極21と、積層体10の第1の層間に一方端と他方端とが互い違いになるように横並びに配置された、それぞれ一方端が接地されて第1の周波数で共振するとともに相互に電磁界結合して共振器として機能する帯状の複数の第1の共振電極30a,30b,30c,30dと、積層体10の第1の層間とは異なる第2の層間に相互に電磁界結合するように横並びに配置された、それぞれ一方端が接地されて第1の周波数よりも高い第2の周波数で共振する帯状の複数の第2の共振電極31a,31b,31c,31dとを備えている。第1の共振電極30a,30b,30c,30dおよび前記第2の共振電極31a,31b,31c,31dは、積層体10の積層方向から見て互いに直交するように配置されるとともに、第2の共振電極31a,31b,31c,31dからなる第2の共振電極の群の幅方向の中心は、第1の共振電極30a,30b,30c,30dからなる第1の共振電極の群の長さ方向の端から略1/3の位置に重なるように配置されている。
また、本例のバンドパスフィルタは、積層体10の第1の層間と第2の層間との間に位置する第3の層間に配置された、初段の第1の共振電極30aに沿った形状で対向して電磁界結合するとともに電気信号が入力される電気信号入力点45aを有する帯状の第1の入力結合電極40aと、最終段の第1の共振電極30bに沿った形状で対向して電磁界結合するとともに電気信号が出力される電気信号出力点45bを有する帯状の第1の出力結合電極40bと、初段の第2の共振電極31aに沿った形状で対向して電磁界結合する第2の入力結合電極41aと、最終段の第2の共振電極31bに沿った形状で対向して電磁界結合する第2の出力結合電極41bとを備えている。なお、第1の入力結合電極40aと第2の入力結合電極41aとは一体化されており、第1の出力結合電極40bと第2の出力結合電極41bとは一体化されている。第1の入力結合電極40aは誘電体層11を貫通する貫通導体50を介して積層体10の上面に配置された入力端子電極60aに接続されており、第1の出力結合電極40bは誘電体層11を貫通する貫通導体50を介して積層体10の上面に配置された出力端子電極60bに接続されている。よって、第1の入力結合電極40aと貫通導体50との接続点が第1の入力結合電極40aにおける電気信号入力点45aになっており、第1の出力結合電極40bと貫通導体50との接続点が第1の出力結合電極40bにおける電気信号出力点45bになっている。
また、本例のバンドパスフィルタは、積層体10の第1の層間に複数の第1の共振電極30a,30b,30c,30dの周囲を取り囲むように環状に形成され、複数の第1の共振電極30a,30b,30c,30dの一方端が接続された、接地電位に接続される第1の内部接地電極23と、第2の層間に複数の第2の共振電極31a,31b,31c,31dの周囲を取り囲むように環状に形成され、複数の第2の共振電極31a,31b,31c,31dの一方端が接続された、接地電位に接続される第2の内部接地電極24とを備えている。
このような構成を備える本例のバンドパスフィルタは、入力端子電極60aおよび貫通導体50を介して第1の入力結合電極40aに外部回路からの電気信号が入力されると、第1の入力結合電極40aと電磁界結合する初段の第1の共振電極30aが励振されることによって、相互に電磁界結合する複数の第1の共振電極30a,30b,30c,30dが共振し、最終段の第1の共振電極30bと電磁界結合する第1の出力結合電極40bから貫通導体50および出力端子電極60bを介して外部回路に電気信号が出力される。このとき、複数の第1の共振電極30a,30b,30c,30dが共振する第1の周波数を含む第1周波数帯域の信号が選択的に通過するため、これによって第1の通過帯域が形成される。また、同時に、入力端子電極60a,貫通導体50および第1の入力結合電極40aを介して第2の入力結合電極41aにも外部回路からの電気信号が入力されるので、第2の入力結合電極41aと電磁界結合する初段の第2の共振電極31aが励振されることによって、相互に電磁界結合する複数の第2の共振電極31a,31b,31c,31dが共振し、最終段の第2の共振電極31bと電磁界結合する第2の出力結合電極41bから第1の出力結合電極40b,貫通導体50および出力端子電極60bを介して外部回路に電気信号が出力される。このとき、複数の第2の共振電極31a,31b,31c,31dが共振する第2の周波数を含む第2周波数帯域の信号が選択的に通過するため、これによって、第2の通過帯域が形成される。このようにして、本例のバンドパスフィルタは、周波数の異なる2つの通過帯域を有するバンドパスフィルタとして機能する。そして、第1の周波数よりも第2の周波数の方が高いので、第2周波数帯域をUWBにおけるハイバンドの周波数帯域に合わせ、第1周波数帯域をUWBにおけるローバンドの周波数帯域に合わせることでUWB用のバンドパスフィルタとすることができる。
本例のバンドパスフィルタにおいて、帯状の複数の第1の共振電極30a,30b,30c,30dは、電気長が第1の周波数における波長の1/4程度に設定されており、それぞれ一方端が第1の内部接地電極23に接続されて接地されることによって1/4波長共振器として機能する。同様に、帯状の複数の第2の共振電極31a,31b,31c,31dは、電気長が第2の周波数における波長の1/4程度に設定されており、それぞれ一方端が第2の内部接地電極24に接続されて接地されることによって1/4波長共振器として機能する。また、複数の第1の共振電極30a,30b,30c,30dは積層体10の第1の層間にそれぞれの一方端が互い違いになるように横並びに配置されてインターデジタル型に電磁界結合しており、複数の第2の共振電極31a,31b,31c,31dは積層体10の第2の層間にそれぞれの一方端が互い違いになるように横並びに配置されてインターデジタル型に電磁界結合している。磁界による結合と電界による結合とが加算されたインターデジタル型の強い結合によって、通過帯域を形成するそれぞれの共振モードの共振周波数の間隔を、比帯域で10%を超える非常に広い通過帯域幅を得るのに適度なものにすることが容易になる。横並びに配置されたそれぞれの共振電極同士の間隔は小さい方が強い結合が得られるが、間隔を小さくすると製造が困難になるので、例えば、0.05〜0.5mm程度に設定される。
また、本例のバンドパスフィルタにおいて、第1の入力結合電極40aおよび第1の出力結合電極40bの形状寸法は初段の第1の共振電極30aおよび最終段の第1の共振電極30bと同程度に設定されるのが好ましい。また、第1の入力結合電極40aおよび第1の出力結合電極40bと初段の第1の共振電極30aおよび最終段の第1の共振電極30bとの間隔、ならびに第2の入力結合電極41aおよび第2の出力結合電極41bと初段の第2の共振電極31aおよび最終段の第2の共振電極31bとの間隔については、小さくすると結合は強くなるが製造上は難しくなるので、例えば、0.01〜0.5mm程度に設定される。
また、本例のバンドパスフィルタにおいて、第2の入力結合電極41aは帯状であり、初段の第2の共振電極31aに沿って対向するように配置されており、第1の入力結合電極40aと交差して第1の入力結合電極40aと一体化している。よって、第1の入力結合電極40aと第2の入力結合電極41aとが交わる部分は、第1の入力結合電極40aとして機能するとともに第2の入力結合電極41aとしても機能する。また、第2の出力結合電極41bは帯状であり、最終段の第2の共振電極31bに沿って対向するように配置されており、第1の出力結合電極40bと交差して第1の出力結合電極40bと一体化している。よって、第1の出力結合電極40bと第2の出力結合電極41bとが交わる部分は、第1の出力結合電極40bとして機能するとともに第2の出力結合電極41bとしても機能する。
また、本例のバンドパスフィルタによれば、複数の第1の共振電極30a,30b,30c,30dと複数の第2の共振電極31a,31b,31c,31dとは積層体10の積層方向から見て互いに直交するように配置されていることから、積層体10の厚みが薄く複数の第1の共振電極30a,30b,30c,30dと複数の第2の共振電極31a,31b,31c,31dとが近接する場合においても、複数の第1の共振電極30a,30b,30c,30dと複数の第2の共振電極31a,31b,31c,31dとの間に生じる電磁界結合を最小限にすることができるので、複数の第1の共振電極30a,30b,30c,30dと複数の第2の共振電極31a,31b,31c,31dとの間の電磁界結合が強くなり過ぎることによる通過帯域における通過特性の悪化を防止することができる。
また、本例のバンドパスフィルタにおいて、第2の共振電極31a,31b,31c,31dの群の幅方向の中心は、第1の共振電極30a,30b,30c,30dの群の長さ方向の端から略1/3の位置に重なるように配置されているので、第1の共振電極30a,30dに対しては3/4波長共振器としての電界最大点(接地端から1/3の位置)近傍に第2の共振電極31a,31b,31c,31dからなる共振器の群が対向するために、電界が強められて3/4波長の共振周波数が低域側にシフトする。一方、第1の共振電極30b,30cには3/4波長共振器としての電界最大点に第2の共振電極31a,31b,31c,31dの群が対向しないため、3/4波長の共振周波数はシフトしない。結果、第1の共振電極30a,30b,30c,30dによる3/4波長の共振による高調波が抑えられる。この3/4波長の共振による高調波は、第2の共振電極31a,31b,31c,31dによって形成される第2周波数帯域(ハイバンド用の通過帯域)の高域側の近傍で発生するため、不要な信号を除去するための減衰量を確保することが可能となる。このようなことから、第1の共振電極30a,30b,30c,30dの群の長さ方向の端から略1/3の位置とは、図3に示すように、長さLである、接地端が第2の共振電極31a,31b,31c,31dの群に近い第1の共振電極30a,30dの接地端からの距離がL/3である位置の近傍のことである。
また、本例のバンドパスフィルタによれば、第2の入力結合電極41aは初段の第1の共振電極30aの長さ方向の中央よりも一方端(接地端)側と対向するように配置されており、第2の出力結合電極41bは最終段の第1の共振電極30bの長さ方向の中央よりも一方端(接地端)側と対向するように配置されているので、第2の入力結合電極41aと初段の第1の共振電極30aとの間の電界による結合を小さくするとともに、第2の出力結合電極41bと最終段の第1の共振電極30bとの電界による結合を小さくすることができるので、第2の入力結合電極41aと初段の第1の共振電極30aとの間および第2の出力結合電極41bと最終段の第1の共振電極30bとの間の不要な電磁界結合が大きくなることに起因するフィルタ特性の悪化を防止することができる。
また、本例のバンドパスフィルタによれば、第2の入力結合電極41aは第3の層間に配置されて第1の入力結合電極40aと一体化しており、第2の出力結合電極41bは第3の層間に配置されて第1の出力結合電極40bと一体化しているので、第1の入力結合電極40aと第2の入力結合電極41aとを接続する接続導体および第1の出力結合電極40bと第2の出力結合電極41bとを接続する接続導体が不要であるため、接続導体による損失をなくすことができるとともに単純な構造を備える薄型のバンドパスフィルタを得ることができる。
また、本例のバンドパスフィルタによれば、初段の第1の共振電極30aの一方端と最終段の第1の共振電極30bの一方端とが互い違いになるように配置されているとともに、初段の第2の共振電極31aの一方端と最終段の第2の共振電極31bの一方端とが互い違いになるように配置されていることから、第1の入力結合電極40aと初段の第1の共振電極30aとの電磁界結合および第1の出力結合電極40bと最終段の第1の共振電極30bとの電磁界結合が充分に強く、且つ対称性を有する構造および回路構成を備えたバンドパスフィルタを得ることができる。
(実施の形態の第2の例)
図4は本発明のバンドパスフィルタの実施の形態の他の例を模式的に示す分解斜視図である。なお、本例においては、前述した第1の例と異なる点のみについて説明し、同様の構成要素については同一の参照符号を用いて重複する説明を省略する。
本例のバンドパスフィルタによれば、積層体10の第1の層間を間に挟んで第3の層間と反対側に位置する第4の層間に配置された、隣り合う4個の第1の共振電極30a,30b,30c,30dからなる第1の共振電極の群を構成する初段の第1の共振電極30aの一方端の近傍で一方端が接地され、第1の共振電極の群を構成する最終段の第1の共振電極30bの一方端の近傍で他方端が接地されており、初段の第1の共振電極30aおよび最終段の第1の共振電極30bの一方端側にそれぞれ対向して電磁界結合する第1の共振電極結合導体71を備えることから、第1の共振電極の群の初段の第1の共振電極30aと最終段の第1の共振電極30bとの間で、第1の共振電極結合導体71を介した誘導性の結合により伝達された信号と、隣り合う第1の共振電極同士の容量性の結合により伝達された信号との間に180°の位相差が生じて互いに打ち消し合う現象を生じさせることができる。これにより、バンドパスフィルタの通過特性において、第1の共振電極30a,30b,30c,30dによって形成される通過帯域の両側近傍において信号が殆ど伝達されない減衰極を形成することができる。
また、積層体10の第2の層間を間に挟んで第3の層間と反対側に位置する第5の層間に配置された、隣り合う4個の第2の共振電極31a,31b,31c,31dからなる第2の共振電極の群を構成する初段の第2の共振電極31aの一方端の近傍で一方端が接地され、第2の共振電極群を構成する最終段の第2の共振電極31bの一方端の近傍で他方端が接地されており、初段の第2の共振電極31aおよび最終段の第2の共振電極31bの一方端側にそれぞれ対向して電磁界結合する第2の共振電極結合導体72とを備えることから、第2の共振電極の群の初段の第2の共振電極31aと最終段の第2の共振電極31bとの間で、第2の共振電極結合導体72を介した誘導性の結合により伝達された信号と、隣り合う第2の共振電極同士の容量性の結合により伝達された信号との間に180°の位相差が生じて互いに打ち消し合う現象を生じさせることができる。これにより、バンドパスフィルタの通過特性において、第2の共振電極31a,31b,31c,31dによって形成される通過帯域の両側近傍において信号が殆ど伝達されない減衰極を形成することができる。
(実施の形態の第3の例)
図5は本発明のバンドパスフィルタの実施の形態の他の例を模式的に示す分解斜視図である。なお、本例においては、前述した第1の例と異なる点のみについて説明し、同様の構成要素については同一の参照符号を用いて重複する説明を省略する。
本例のバンドパスフィルタによれば、第2の入力結合電極41aが第3の層間よりも第2の層間に近い層間Aに配置されているので、第1の入力結合電極40aと初段の第1の共振電極30aとの間隔および第2の入力結合電極41aと初段の第2の共振電極31aとの間隔を維持したままで、初段の第1の共振電極30aと初段の第2の共振電極31aとの間隔を広げることが可能になるため、第1の入力結合電極40aと初段の第1の共振電極30aとの電磁界結合および第2の入力結合電極41aと初段の第2の共振電極31aとの電磁界結合を弱めることなく、初段の第1の共振電極30aと初段の第2の共振電極31aとの電磁界結合を弱めることができ、これによって、第1の入力結合電極40aと初段の第1の共振電極30aとの電磁界結合および第2の入力結合電極41aと初段の第2の共振電極31aとの電磁界結合をさらに強めることができる。
また、本例のバンドパスフィルタによれば、第2の出力結合電極41bが第3の層間よりも第2の層間に近い層間Aに配置されているので、第1の出力結合電極40bと最終段の第1の共振電極30bとの間隔および第2の出力結合電極41bと最終段の第2の共振電極31bとの間隔を維持したままで、最終段の第1の共振電極30bと最終段の第2の共振電極31bとの間隔を広げることが可能になるため、第1の出力結合電極40bと最終段の第1の共振電極30bとの電磁界結合および第2の出力結合電極41bと最終段の第2の共振電極31bとの電磁界結合を弱めることなく、最終段の第1の共振電極30bと最終段の第2の共振電極31bとの電磁界結合を弱めることができ、これによって、第1の出力結合電極40bと最終段の第1の共振電極30bとの電磁界結合および第2の出力結合電極41bと最終段の第2の共振電極31bとの電磁界結合をさらに強めることができる。
また、本例のバンドパスフィルタにおいては、積層体10の下面と第1の層間との間に位置する層間Bに、第1の内部接地電極23に対向する領域と第1の共振電極30a,30b,30c,30dに対向する領域とを有するように配置され、第1の共振電極30a,30b,30c,30dに対向する領域が誘電体層11を貫通する貫通導体50によって第1の共振電極30a,30b,30c,30dの他方端側にそれぞれ接続された共振補助電極32a,32b,32c,32dが、それぞれの第1の共振電極30a,30b,30c,30dに対応して配置されている。
このような構造を備える本例のバンドパスフィルタによれば、共振補助電極32a,32b,32c,32dと第1の内部接地電極23との間に生じる静電容量が、第1の共振電極30a,30b,30c,30dと接地電位との間に生じる静電容量に加算されるため、第1の共振電極30a,30b,30c,30dの長さを短縮することができるので、より小型のバンドパスフィルタを得ることができる。
なお、共振補助電極32a,32b,32c,32dと第1の内部接地電極23との対向部の面積は、必要な静電容量に応じて、例えば、0.01〜3mm2程度に設定される。また、第1の共振補助電極32a,32b,32c,32dと第1の内部接地電極23との間隔は、小さい方が大きな静電容量を生じさせることができるが、製造上は難しくなるので、例えば、0.01〜0.5mm程度に設定される。
なお、このような共振補助電極32a,32b,32c,32dは第2の共振電極31a,31b,31c,31dに対しても同様に設置でき、第2の共振電極31a,31b,31c,31dの長さを短縮することができる。
誘電体層11としては、例えば、アルミナ,ムライト,窒化アルミニウム,BaO−TiO2系,CaO−TiO2系,MgO−TiO2系およびガラスセラミックス等のセラミック材料、あるいは四ふっ化エチレン樹脂(ポリテトラフルオロエチレン:PTFE),四ふっ化エチレン−エチレン共重合樹脂(テトラフルオロエチレン−エチレン共重合樹脂:ETFE),四ふっ化エチレン−パーフルオロアルコキシエチレン共重合樹脂(テトラフルオロエチレン−パーフルテロアルキルビニルエーテル共重合樹脂:PFA)等のフッ素樹脂やガラスエポキシ樹脂,ポリイミド等の有機樹脂材料が用いられる。これらの材料による誘電体層11の形状や寸法(厚みや幅,長さ)は、使用される周波数や用途等に応じて設定される。セラミック材料の場合は、より高周波の信号を伝送することが可能な、Au,Ag,Cu等の低抵抗金属からなる導体材料と同時焼成が可能な低温焼成セラミックスが好ましい。
接地電極21,第1の内部接地電極23,第2の内部接地電極24,第1の共振電極30a〜30d,第2の共振電極31a〜31d,第1の入力結合電極40a,第1の出力結合電極40b,第2の入力結合電極41a,第2の出力結合電極41bおよび共振補助電極32a〜32dは、誘電体層11がセラミック材料からなる場合は、W,Mo,Mo−Mn,Au,Ag,Cu等の金属を主成分とするメタライズ層により形成される。また、誘電体層11が有機樹脂材料からなる場合は、厚膜印刷法,各種の薄膜形成方法,めっき法あるいは箔転写法等により形成した金属層や、このような金属層上にめっき層を形成したもの、例えばCu層,Cr−Cu合金層またはCr−Cu合金層上にNiめっき層およびAuめっき層を被着させたもの,TaN層上にNi−Cr合金層およびAuめっき層を被着させたもの,Ti層上にPt層およびAuめっき層を被着させたもの,Ni−Cr合金層上にPt層およびAuめっき層を被着させたもの等が挙げられる。その厚みや幅は、伝送される高周波信号の周波数や用途等に応じて設定される。
誘電体層11,接地電極21,第1の内部接地電極23,第2の内部接地電極24、第1の共振電極30a〜30d,第2の共振電極31a〜31d,第1の入力結合電極40a,第1の出力結合電極40b,第2の入力結合電極41a,第2の出力結合電極41bおよび共振補助電極32a〜32dの形成は、周知の方法を用いればよい。例えば誘電体層11がガラスセラミックスから成る場合であれば、まずそれら誘電体層11となるガラスセラミックスのグリーンシートを準備し、グリーンシート上にスクリーン印刷法によりAg等の導体ペーストを所定形状で印刷塗布して接地電極21,第1の内部接地電極23,第2の内部接地電極24,第1の共振電極30a〜30d,第2の共振電極31a〜31d,第1の入力結合電極40a,第1の出力結合電極40b,第2の入力結合電極41a,第2の出力結合電極41bおよび共振補助電極32a〜32dの各電極パターンを形成する。次に、これらの電極パターンが形成されたグリーンシートを重ねて圧着するなどして積層体を作製し、この積層体を850〜1000℃で焼成することにより形成する。その後、外表面に露出している導体層上には、NiめっきおよびAuめっき等のめっき皮膜を形成する。誘電体層1aが有機樹脂材料から成る場合であれば、例えば有機樹脂シート上に接地電極21,第1の内部接地電極23,第2の内部接地電極24、第1の共振電極30a〜30d,第2の共振電極31a〜31d,第1の入力結合電極40a,第1の出力結合電極40b,第2の入力結合電極41a,第2の出力結合電極41bおよび共振補助電極32a〜32dの各電極パターン形状に加工したCu箔を転写し、Cu箔が転写された有機樹脂シートを積層して接着剤で接着することによって形成する。
接地電位に接続される接地電極21,第1の内部接地電極23および第2の内部接地電極24を互いに接続する接続導体は、それらの間に位置する誘電体層11内に形成された貫通導体または誘電体層11の端面に形成された端面導体の形態で形成することによって、積層されたそれら誘電体層11の内部に形成するバンドパスフィルタの設計自由度が向上するとともに、より小型で高性能なバンドパスフィルタとすることができる。
貫通導体50は、誘電体層11がガラスセラミックス等のセラミックスから成る場合には、貫通導体50は、例えば前述の製造方法において接地電極21,第1の内部接地電極23,第2の内部接地電極24,第1の共振電極30a〜30d,第2の共振電極31a〜31d,第1の入力結合電極40a,第1の出力結合電極40b,第2の入力結合電極41a,第2の出力結合電極41bおよび共振補助電極32a〜32dの各電極パターンを形成する前に、グリーンシートに金型加工やレーザー加工によってあらかじめ形成しておいた貫通孔内に導体ペーストを印刷法等によって充填することで形成することができ、端面導体は、例えば第1の共振電極30a〜30dの電極パターンの接地端を端面に露出させたグリーンシート積層体を形成した後、同様の導体ペーストをグリーンシート積層体の側面に印刷することによって形成することができる。また、端面導体は、グリーンシートに第1の共振電極30a〜30dの列の幅程度の貫通孔を形成しておき、第1の共振電極30a〜30dの電極パターンの接地端をこの貫通孔に接するように形成した後、グリーンシートの積層前または積層後に導体ペーストを貫通孔の内面に印刷し、または貫通孔に充填して、貫通孔の部分で切断することによっても形成することができる。誘電体層11が樹脂系材料から成る場合も同様に、グリーンシートに代えて有機樹脂シートを用い、導体ペーストの印刷やめっきによって貫通孔内に貫通導体を形成したり、薄膜法等によって側面導体を形成したりすればよい。第1の共振電極30a〜30dの電極パターンの接地端を積層体の側面に露出させるには、第1の共振電極30a〜30dの電極パターンの接地端がグリーンシート(あるいは有機樹脂シート)の端部に位置するように形成したり、第1の共振電極30a〜30dの電極パターンを形成したグリーンシート(有機樹脂シート)を積層した後に、第1の共振電極30a〜30dの電極パターンの接地端が側面に露出するように積層体を切断したりすればよい。
具体的には、UWBの規格に用いられるような、通過帯域の中心周波数が3.9GHzのローバンド用バンドパスフィルタと、通過帯域の中心周波数が7.65GHzのハイバンド用バンドパスフィルタを重ねた本例のようなバンドパスフィルタは、図5に示すような形態であれば、例えば誘電体層1aとして比誘電率が7.5のガラスセラミックスを用い、接地電極21,第1の内部接地電極23,第2の内部接地電極24,第1の共振電極30a〜30d,第2の共振電極31a〜31d、第1の入力結合電極40a,第1の出力結合電極40b,第2の入力結合電極41a、第2の出力結合電極41bおよび共振補助電極32a〜32dおよび貫通導体50にCuメタライズを用いることによって得られる。比誘電率が7.5のガラスセラミックスは、例えば、ガラス成分としてPbO,B2O3,SiO2,Al2O3,ZnOおよびアルカリ土類金属酸化物を主成分とする結晶化ガラスが50質量%と、フィラー成分としてアルミナが50質量%とからなるものを用いればよい。
このとき、誘電体層11の寸法は、3.8mm×5.0mmで厚みを上から順に、150μm,50μm,25μm,25μm,125μmとする。接地電極21は、寸法を3.8mm×5.0mmとする。第1の層間の第1の内部接地電極23は外寸を3.8mm×5.0mmで内寸(開口の寸法)を3.1mm×3.65mmとする。この開口内に寸法が0.175mm×3.4mmの第1の共振電極30a〜30dを順に0.08mm,0.095mm,0.08mmの間隔で横並びに整列し、各接地端を第1の内部接地電極23に接続して、各開放端と第1の内部接地電極23との間隔が0.25mmとなり、共振器電極30aおよび30bと第1の内部接地電極23との間隔が1.0725mmとなるように配置する。また、第2の層間の第2の内部接地電極24は外寸を3.8mm×5.0mmで内寸(開口の寸法)を3.1mm×3.79mmとする。この開口内に寸法が2.87mm×0.175mmの第2の共振電極31a〜31dを順に0.075mm,0.11mm,0.075mmの間隔で横並びに整列し、各接地端を第2の内部接地電極24に接続して、各開放端と第2の内部接地電極24との間隔が0.23mmとなり、共振器電極31aと第2の内部接地電極24との間隔が0.815mm、共振器電極31dと第2の内部接地電極24との間隔が2.015mmとなるように配置する。第2の共振電極31a〜31dの群の中心は、第1の共振電極30a、30dの接地端から1.225mmの位置で重なる。第1の内部接地電極23と第2の内部接地電極24と積層体10の上下面の接地電極21とは、外周部に配列した直径0.1mmの貫通導体(図5には図示せず)で接続する。第3の層間の第1の入力結合電極40aは寸法が0.15mm×4.1mmであり、第1の共振電極30aと平面視で0.15mm×3.4mmの範囲で重なるように配置し、0.2mm×0.2mmの外部入力端子電極60aと直径0.1mmの貫通導体50で接続する。第1の出力結合電極40bも同様に、寸法が0.15mm×4.1mmであり、第1の共振電極30bと平面視で0.15mm×3.4mmの範囲で重なるように配置し、0.2mm×0.2mmの外部出力端子電極60bと直径0.1mmの貫通導体50で接続する。層間Aの第2の入力結合電極41aは寸法が1.735mm×0.175mmであり、第2の共振電極31aと1.735mm×0.175mmの範囲で重なるように配置し、第1の入力結合電極40aと直径0.1mmの貫通導体50で接続する。第2の出力結合電極41bも同様に、寸法が1.735mm×0.175mmであり、第2の共振電極31bと1.735mm×0.175mmの範囲で重なるように配置し、第1の出力結合電極40bと直径0.1mmの貫通導体50で接続する。層間Bの共振補助電極32a、32bは0.2mm×0.5mmおよび0.28mm×0.31mmの2つの矩形を接続した凸型で、第1の内部接地電極23と0.28mm×0.31mmの範囲で重なり、共振補助電極32c、32dは0.2mm×0.5mmおよび0.35mm×0.39mmの2つの矩形を接続した凸型で、第1の内部接地電極23と0.35mm×0.39mmの範囲で重なる。第1の共振電極30a〜30dの開放端部と平面視で0.2mm×0.175mmの範囲で重なるように配置し、重なる部分の中心で直径0.1mmの貫通導体50により接続する。
このような例の本発明のバンドパスフィルタのフィルタ特性は、図6の線図に実線の特性曲線で示すようなものとなる。また、このような例の本発明のバンドパスフィルタによるフィルタ特性に対して、共振器電極31aと第2の内部接地電極24との間隔および共振器電極31dと第2の内部接地電極24との間隔が共に1.415mmとなるように配置して、第2の共振電極31a〜31dの群の中心が、第1の共振電極30a、30dの接地端から1.825mmの位置で重なるようにしたバンドパスフィルタのフィルタ特性は、図6に破線の特性曲線で示すようなものとなる。図に示す線図において、縦軸は挿入損失(単位:dB)を、横軸は周波数(単位:GHz)を示す。
図6に示すフィルタ特性から、本発明のバンドパスフィルタのフィルタ特性は、積層体10の厚みが0.375mmと非常に薄いにもかかわらず、2つの非常に広い通過帯域の全体に渡って良好にインピーダンスが整合されて、平坦で低損失な優れたものであることが分かる。また、第2の共振電極の群の幅方向の中心が、第1の共振電極群の長さ方向の端部から略1/3の位置に重なるように配置されていることで、略1/2の位置に重なるように配置したものにおいて12GHz付近に現れる第1の共振電極の3/4波長の共振による高域の不要な通過帯域が形成されにくくなる(高調波が抑えられる)ので、ハイバンドの通過帯域より高域側の減衰量が大きい減衰特性を有することが分かる。
(実施の形態の第4の例)
図7は本発明のバンドパスフィルタを用いた無線通信モジュール80および無線通信機器85の構成例を示すブロック図である。
本発明の無線通信モジュール80は、例えば、ベースバンド信号が処理されるベースバンド部81と、ベースバンド部81に接続されベースバンド信号の変調後および復調前のRF信号が処理されるRF部82とを備えている。RF部82には前述の本発明のバンドパスフィルタ821が含まれており、ベースバンド信号が変調されてなるRF信号または受信したRF信号における通信帯域以外の信号をバンドパスフィルタ821によって減衰させている。具体的な構成としては、ベースバンド部81にはベースバンドIC811が配置され、RF部82にはバンドパスフィルタ821とベースバンド部81との間にRFIC822が配置されている。なお、これらの回路間には別の回路が介在していてもよい。そして、無線通信モジュール80のバンドパスフィルタ821にアンテナ84を接続することによってRF信号の送受信がなされる本発明の無線通信機器85が構成される。
このような構成を有する本例の無線通信モジュール80および無線通信機器85によれば、通信に使用する周波数帯域の全域に渡って入力インピーダンスが良好に整合されて通過する信号の損失が小さい本発明のバンドパスフィルタ821を送信信号および受信信号の濾波に用いることにより、バンドパスフィルタ821を通過する受信信号および送信信号の減衰が少なくなるため、受信感度が向上し、また、送信信号および受信信号の増幅度を小さくできるため増幅回路における消費電力が少なくなる。よって、受信感度が高く消費電力が少ない高性能な無線通信モジュール80および無線通信機器85を得ることができる。