―第1の実施の形態―
図1は、第1の実施の形態における操舵支援装置の一実施の形態の構成を示すブロック図である。操舵支援装置100は、車両に搭載され、ナビゲーション装置101と、理想操舵開始地点演算装置102と、操舵時間演算装置103と、パワーステアリング装置104とを備えている。
ナビゲーション装置101は、自車位置を検出して、自車位置から使用者によって設定された目的地までの経路を演算し、演算して得た経路に従って経路誘導を行う。なお、ナビゲーション装置101は、地図データを有しており、当該地図データには、道路形状に関するデータが含まれており、この地図データに基づいて、自車両前方道路の旋回方向、曲率を取得することができる。また、ナビゲーション装置101は、車速センサを備えており、自車両の車速を検出することもできる。
理想操舵開始地点演算装置102は、ナビゲーション装置301からの出力に基づいて、前方にコーナーが存在すると判定した場合に、以下の演算を行う。理想操舵開始地点演算装置102は、図2に示すように、前方の道路形状が略直線から曲線に移行する場合は、道路形状が直線から曲線に切り替わる地点2aを理想操舵開始地点とする。
なお、直線から曲線に切り替わる地点とは、道路線形に緩和曲線が存在しない場合には、実際に直線と曲線が切り替わる地点とすればよい。道路線形に緩和曲線が存在する場合には、コース中央をトレースするために必要な車体ヨー角を演算した上で、そのヨー角を発生させるために必要な操舵角を演算し、その操舵角が発生し始める地点とすればよい。このように目標車体ヨー角を演算して必要な操舵角を演算する方法については、公知の手法を用いればよいため、説明を省略する。
また、理想操舵開始地点演算装置102は、図3に示すように、前方の道路形状がS字カーブの場合は、道路線形の変曲点3aを理想操舵開始地点とすれば良い。このとき、変曲点が明確に求められない場合には、上述した場合と同様に、目標車体ヨー角を演算し、そのヨー角を実現するために必要な操舵角を演算した上で、操舵角が左右が切り替わる地点を理想操舵開始地点とすれば良い。なお、ここで求めた理想操舵開始地点とは、人間が操舵を開始する必要があることを認知するために要する時間を除外して、ほぼ幾何学的関係によって決定される地点であって、操舵支援を制御を行うための基準地点とするものであり、実際に人間が操舵する際の操舵開始地点とは必ずしも一致しない。
操舵時間演算装置103は、運転者が操舵を開始してから略定常旋回状態に移行するまでの操舵時間を推定する。具体的には、操舵時間演算装置103は、ナビゲーション装置101から前方のコーナーの曲率情報、および車両の車速情報を取り込む。そして、操舵時間演算装置103は、これらの情報に基づいて、車両がコース中央をトレースするために必要な操舵角を算出する。例えば、操舵時間演算装置103は、公知のレーンキープシステムや自動走行システムで用いられている公知の手法を用いて、図4に示す推定操舵角波形4aを上記必要な操舵角として算出する。操舵時間演算装置103は、現在の自車両の車速に基づいて、この必要な操舵角での操舵が発生し始める操舵開始地点4bから、略定常旋回状態に至る地点4cに到達するまでに要する時間を操舵時間4dとして算出する。
パワーステアリング装置104は、理想操舵開始地点演算装置102で演算された理想操舵開始地点に基づいて、パワーステアリングのアシストゲインを変化させることによって、運転者に対してステアリング操舵開始タイミングを報知する。すなわち、操舵開始時期の前後において、パワーステアリングのアシストゲインを変化させてステアリングの操舵性能を変更することによって、運転者に対してステアリング操舵開始タイミングを報知する。なお、パワーステアリングのアシストゲインとは、パワーステアリング装置104が操舵力を補助する割合であって、アシストゲインが高いほど、実際に人間がステアリングを操作するための操作力は小さくなるものとする。
具体的には、パワーステアリング装置104は、車両が理想操舵開始地点演算装置102で演算された理想操舵開始地点よりも時間的・距離的に手前を走行しているときは、パワーステアリングのアシストゲインを減少させて運転者がステアリング(操舵装置)を切り込みづらくしておく。そして、車両が理想操舵開始地点に到達した時点で、パワーステアリングのアシストゲインを増加させ、運転者がステアリングを切り込みやすくする。
すなわち、理想操舵開始地点より前はパワーステアリングのアシストゲインを下げてコーナーの旋回方向への運転者による操舵を妨げるようにし、理想操舵開始地点において、アシストゲインを上げることによって、運転者に前記操舵開始タイミングを提示する。これによって、運転者は、ステアリングが切り込みやすくなった時点がステアリングの操舵開始タイミングであることを把握することができる。
パワーステアリング装置104で実行される処理の具体例を、図5および図6を用いて説明する。なお、図5は、パワーステアリング装置104による処理の流れを示す図であり、図6は、アシストゲインが時系列と共に変化する制御例を道路形状とともに示した図である。また、図6に示す理想操舵開始地点6aは、図2に示した理想操舵開始地点2aおよび図3に示した理想操舵開始地点3aに対応する。
パワーステアリング装置104は、アシストゲイン増加開始地点算出部104a、アシストゲイン減少開始地点算出部104b、アシストゲイン増加終了地点算出部104c、およびアシストゲイン制御パターン算出部104dを機能的に備えている。
アシストゲイン増加開始地点算出部104aは、図6に示すアシストゲイン増加開始地点6bを設定する。このアシストゲイン増加開始地点6bは、運転者が実際にステアリングを操舵開始する地点と略同一地点である。運転者が実際に操舵を開始する地点は、運転者のスキルやコーナーの形状、あるいは車速によって異なるが、実験結果からいかなるコーナー、運転者であっても、自車両が理想操舵開始地点6aに到達する0.3秒前から2.4秒前の範囲内であることが分かっている。
したがって、アシストゲイン増加開始地点算出部104aは、車両が理想操舵開始地点6aに到達する0.3秒前から2.4秒前に自車両が到達していると推定される範囲6e内に、アシストゲイン増加開始地点6bを設定する。ここでは、自車両の車速に基づいて、範囲6e内どの地点にアシストゲイン増加開始地点6bを設定するかを決定する。
アシストゲイン減少開始地点算出部104bは、図6に示すアシストゲイン減少開始地点6cを設定する。アシストゲイン減少開始地点6cは、上述したアシストゲイン増加開始地点6bよりも手前の地点とする。この地点を決定するための目安としては、減少に要する時間6fが、自車両がアシストゲイン増加開始地点6bから理想操舵開始地点6aに到達するまでに要する時間6eの1倍〜3倍となるように設定するのが良い。
アシストゲイン増加終了地点算出部104cは、図6に示すアシストゲイン調整終了地点6dを設定する。具体的には、アシストゲイン増加終了地点算出部104cは、アシストゲイン増加開始地点6bから上述した操舵時間4d経過した後に自車両が到達していることが予想される地点をアシストゲイン調整終了地点6dとする。
アシストゲイン制御パターン算出部104dは、これまでに設定した各地点を基準に、アシストゲインの時間的変化曲線(アシストゲイン曲線)6gを決定する。具体的には、アシストゲイン制御パターン算出部104dは、アシストゲイン減少開始地点6cからアシストゲインが単調減少し、アシストゲイン増加開始地点6bでアシストゲインが最小になるようにする。そして、アシストゲイン増加開始地点6bからアシストゲインが単調増加し、アシストゲイン調整終了地点6dにおけるアシストゲインがアシストゲイン減少開始地点6cにおけるアシストゲインと同じになるようにアシストゲイン曲線6gを決定する。
なお、アシストゲイン減少開始地点6cより手前、およびアシストゲイン調整終了地点6dより後におけるアシストゲインは、通常走行時のアシストゲインに相当する。そして、アシストゲイン増加開始地点6bにおけるアシストゲインの最小値は、通常走行時のアシストゲインの0.7倍程度とする。この倍率は車両の特性によって異なるため、適用する車両に応じて調整する必要がある。
上記アシストゲイン曲線6gの変化点に相当する地点6b〜6dは、いずれも理想操舵開始地点6aを基点とした時間差により規定された地点である。したがって、自車両がアシストゲイン減少開始地点6cを通過した後に車速が変化した場合には、変化後の車速に基づいて、アシストゲイン増加開始地点6bおよびアシストゲイン調整終了地点6dを演算し直す必要がある。
例えば、アシストゲイン減少開始地点6cを通過した後に自車両の車速が上がった場合の具体例について、図7を用いて説明する。この図7においては、車速変化地点7aで運転者がブレーキを踏むなどして自車両が減速した場合を示している。この場合、車速が減少したため、上述した操舵時間4dは長くなり、アシストゲイン増加開始地点は、当初決定した地点6bに対してコーナーに近い側にずれることになる。
よって、アシストゲイン増加開始地点算出部104aは、再度、上述したアシストゲイン増加開始地点の算出104aを行って、減速後の車速に基づいて、上述した範囲6e内で新しいアシストゲイン増加開始地点7bを設定する。また、操舵時間演算装置103は、減速後の車速に基づいて新しい操舵時間7cを算出する。そして、アシストゲイン増加終了地点算出部104cは、上述したアシストゲイン増加終了地点の算出104cを行って、新しい操舵時間7cに基づいて、新しいアシストゲイン調整終了地点7dを設定する。
このように新しいアシストゲイン増加開始地点7bおよび新しいアシストゲイン調整終了地点7dを設定した場合には、それに伴ってアシストゲイン曲線6gを設定し直す必要がある。このため、アシストゲイン制御パターン算出部104dは、新たに設定した各地点に基づいて、上述したアシストゲイン制御パターンの算出処理を再度行って、アシストゲイン曲線6gを設定し直す。
具体的には、元のアシストゲイン曲線6gは、アシストゲイン減少開始地点6cから古いアシストゲイン増加開始地点6bに向けて単調減少するように設定されている。このため、車速変化地点7aで車速の変化を検出してから新しいアシストゲイン増加開始地点7bを設定した場合には、車速変化地点7aから新しいアシストゲイン増加開始地点7bの間の傾きを変化させて、新しいアシストゲイン増加開始地点7bでアシストゲインが最小になるようにし、その後、新しいアシストゲイン調整終了地点7dに向けて単調増加するような新しいアシストゲイン曲線7eを設定する。
あるいは、新しいアシストゲイン曲線7eにおいてもアシストゲイン増加開始地点7bにおいてアシストゲインが最小になっていればよい。このため、古いアシストゲイン増加開始地点6bまでの傾きは変化させず、古いアシストゲイン増加開始地点6bでアシストゲインを最小にした後、新しいアシストゲイン増加開始地点7bまで最小値を維持し、その後、新しいアシストゲイン調整終了地点7dに向けて単調増加するような新しいアシストゲイン曲線7fを設定するようにしてもよい。
なお、車両に運転者のステアリング把持状態、車線内における自車位置、および前方に存在する障害物の少なくともいずれかを検出するための機器を搭載しておく。そして、運転者がステアリングから手を放した場合、車両が車線外へはみ出そうになった場合、または前方に障害物を検知し衝突の危険性が生じた場合のいずれかの場合、すなわち車両の危険回避が必要であると判断した場合には、パワーステアリング装置104は、アシストゲインを通常状態に戻すようにすれば、運転者による危険回避行動を妨げないようにすることができる。
以上説明した第1の実施の形態によれば、以下のような作用効果を得ることができる。
(1)理想操舵開始地点演算装置102は、前方の道路形状が略直線から曲線に移行する場合は、道路線形が直線から曲線に切り替わる地点2aを理想操舵開始地点として特定し、パワーステアリング装置104は、理想操舵開始地点演算装置102で演算された理想操舵開始地点に基づいて、パワーステアリングのアシストゲインを変化させることによって、操舵開始タイミングの前後でステアリングの操舵性能を変更するようにした。これによって、運転者は、パワーステアリングのアシストゲインの変化に基づいて、ステアリング操舵開始タイミングを把握し、違和感なくステアリングの操舵を開始することができる。
(2)パワーステアリング装置104は、操舵開始タイミングより前は、パワーステアリングのアシストゲインを下げることによって、コーナーの旋回方向への運転者による操舵を妨げるようにした。これによって、使用者によって操舵開始タイミングより手前の地点で操舵が開始されることを防ぐことができる。
(3)パワーステアリング装置104は、操舵開始タイミング以降は、パワーステアリングのアシストゲインを上げることによって、運転者に操舵開始タイミングを提示するようにした。これによって、操舵開始タイミングで運転者による操舵の開始を促進することができる。
(4)車両の危険回避が必要であると判断した場合には、パワーステアリング装置104は、アシストゲインを通常状態に戻すようにした。これによって、車両の危険回避が必要と判断される場面では、運転者による危険回避行動を妨げないようにすることができる。
―第2の実施の形態―
第2の実施の形態では、第1の実施の形態で上述した理想操舵開始地点を、ドライバの操舵履歴に基づいて算出する場合について説明する。図8は、第2の実施の形態における操舵支援装置の一実施の形態の構成を示すブロック図である。なお、図8においては、第1の実施の形態で上述した図1と同じ構成要素については、同じ符号を付与し、相違点を中心に説明する。操舵支援装置100は、記憶装置105をさらに備えている。
記憶装置105には、ステアリング操舵角信号と車速とが入力されて記憶される。また、ナビゲーション装置101からコーナー曲率を入力して、運転者によって実際に操舵が開始されたタイミング(操舵開始タイミング)の履歴を記憶する。この場合の操舵開始タイミングとしては、コース中央をトレースするために必要な車体ヨー角を演算した上で、そのヨー角を発生させるために必要な操舵角を演算し、その操舵角が発生し始める地点を起点とした時間が記憶される。
操舵開始タイミングは、車速や旋回半径に応じて変化することがあるため、記憶装置105には、図9に示すように、X軸を旋回半径、Y軸を車速、Z軸を操舵開始タイミングとした3次元マップとして記憶を行う。そして、同じようなコーナーを走行するたびに3次元マップ内のデータを更新するようにし、毎回の平均値および、標準偏差も記録しておく。
理想操舵開始地点演算装置102は、ナビゲーション装置101からの出力に基づいて前方にコーナーが存在すると判定した場合に、前方コーナーの曲率と現在の車速とを用いて、記憶装置105に記憶されている操舵開始タイミングの参照を行い、理想操舵開始地点を算出する。この場合の理想操舵開始地点とは、ドライバの平均的操舵開始地点を基準として、それよりもドライバの操舵開始タイミングの標準偏差分だけコーナー寄りの地点とする。操舵時間演算装置103およびパワーステアリング装置104による処理は、第1の実施の形態と同じため、説明を省略する。
以上説明した操舵支援装置100を搭載した車両を用いて、直線路から旋回半径100mの曲線路に向けて車速60km/hで走行する実験を行った結果を図10に示す。図10(a)は、評価指標としてセンタートレース性を用いた場合の実験結果を示している。センタートレース性とは、走行ラインと道路車線中央からのズレ量の絶対値平均値であり、どのくらい車線の中央を走行できているかという性質を示し、0に近いほど良い結果を示す。この図10(a)に示すように、上述した処理を実施しないで走行した場合の実験結果10aと、上述した処理を実施して走行した場合の実験結果10bとを比較すると、上述した処理を実施して走行した場合は、実施しない場合よりもセンタートレース性が23%向上するという結果が得られた。
また、図10(b)は、評価指標としてステアリング操舵の乱れを直接評価する指標である操舵速度の標準偏差を用いた場合の実験結果を示している。旋回中に修正操舵が多いと操舵速度の標準偏差は高い値を示すため、標準偏差が低いほど良い結果を示すものである。この図10(b)に示すように、上述した処理を実施しないで走行した場合の実験結果10cと、上述した処理を実施して走行した場合の実験結果10dとを比較すると、上述した処理を実施して走行した場合は、実施しない場合よりも運転の再現性が向上している。このため、本実施の形態の操舵支援装置100を搭載することにより、運転しやすい自動車を提供することができるようになる。
以上説明した第2の実施の形態によれば、第1の実施の形態における作用効果に加えて、以下のような効果を得ることができる。すなわち、運転者の運転履歴に基づいて理想操舵開始地点を算出するようにしたので、運転者に最適な理想操舵開始地点を算出して、操舵開始タイミングを報知することができる。また、運転者に対して運転しやすい自動車を提供することができる。
―第3の実施の形態―
第3の実施の形態では、コーナーに進入する際のステアリングの切り込みタイミングを操舵トルクを付与することによって運転者に教示する場合について説明する。すなわち、操舵開始時期の前後において、ステアリングに付与する操舵トルクを変化させて、ステアリングの操舵性能を変更することによって、運転者に対してステアリングの切り込みタイミングを提示する。
具体的には、ステアリングにこれから旋回するコーナーの旋回方向と反対方向へ(旋回方向へステアリングを動かす際に反力トルクとなる方向へ)誘導トルクを発生させる。すると、運転者は無意識に誘導トルクに抗してバランスをとることになる。本実施の形態では、このような運転者の無意識の動作を利用して、運転者に対して操舵開始タイミングを報知する。
すなわち、操舵開始タイミングとなった時点で、誘導トルクをそれまでとは逆の旋回方向へ変化させることによって,運転者は誘導トルクに抗してバランスをとっていた状態から自然と誘導方向への転舵操作へ移行することができる。このように、本実施の形態によれば、運転者に対して、操舵開始タイミングを明示的に報知することなしに、運転者の無意識の動作を利用して、操舵開始タイミングを報知することができる。
図11(a)は、第3の実施の形態における操舵支援装置の一実施の形態の構成を示すブロック図である。操舵支援装置100は、ナビゲーション装置101と、運転履歴記憶装置106と、トルク発生装置107とを備えている。なお、ナビゲーション装置101については、第1の実施の形態の図1と同様のため、説明を省略する。
運転履歴記憶措置106は、ナビゲーション装置101から出力される自車両の位置、前方道路の旋回方向、曲率と車速、および操舵操作などの運転履歴を記憶するための記憶装置である。トルク発生装置107は、ナビゲーション装置101からの出力に基づいて走行中の道路の道路形状を特定し、自車両の進行方向前方にコーナーが存在すると判定した場合には、上述したように誘導トルクを発生させて操舵開始タイミングを報知する。なお、トルク発生装置107による処理の詳細については、図11(b)により後述する。
ここで、図12を用いて、第3の実施の形態における操舵開始タイミングの報知方法について具体的に説明する。図12に示す例は、車両Aが直線道路を走行中に、車両前方にコーナーが存在する場合に操舵開始タイミングを報知する場合を示している。トルク発生装置107は、コーナー進入前の直線走行時に、そのコーナーの旋回方向と反対方向へステアリングを回転させるようなトルク、すなわち誘導トルク12bを徐々に付与していく。
このとき、運転者は、コーナーの形状(旋回R形状)や自車両のコーナーへの進入位置を視認し、操舵のための身体姿勢準備を行う時間帯12f、および車線内における自車両の位置を確認し、その位置を微修正するか、あるいはステアリングを保持してその位置をキープする時間帯12gにおいては、自身の思い描いた進路を走行するためにステアリングを保舵・微修正することによって無意識のうちに誘導トルク12bに抗するようにバランスをとる。すなわちこの間の運転者による保舵によって発生する保舵トルクは符号12aに示す方向となる。
その後、トルク発生装置107は、報知タイミング12eにおいて、誘導トルク12bを抜く、すなわち誘導トルク12bの大きさを0にするか、あるいは誘導トルク12bの方向をコーナーの旋回方向へ変化させる。これによって、運転者は、保舵トルク12aによってバランスをとっていた誘導トルク12bが抜けるため、自然と旋回方向へステアリングを切り込むことになる。この報知タイミング12eを運転者にとって適当なタイミングとすることによって、運転者は違和感なくそのままコーナーを曲がるための操舵へと移ることができる。
このため、結果として転舵タイミングのばらつきが低減することによって車両挙動のばらつきを低減することができ、運転の再現性を高めることができる。さらに、運転者が操舵開始位置を視認して操舵を行う時間帯12hへ至るまでに、運転者は保舵トルク12aを発生させて誘導トルク12bに抗するようにバランスをとることによって、時間帯12fおよび12gにおける運転者の状態および車両の状態を安定させることができ、旋回操舵に至るアプローチ部分の再現性も高めることができる。また、運転者にとって、操舵の開始タイミングがとりやすく運転のしやすい自動車を提供することができる。
なお、トルク発生装置107は、例えば、運転履歴記憶装置106に記憶されている運転者による過去の操舵開始地点から、その平均地点(平均操舵開始地点)を算出し、自車両がこの平均操舵開始地点に到達した時点を報知タイミング12eとすればよい。
次に、本実施の形態における操舵支援装置100を搭載した車両を用いて、二人の被験者に直線路から旋回半径70mの右曲線路に向けて車速60km/hで走行する実験を行った結果を図13に示す。
まず、二人の被験者に、図13(a)に示す道路形状のコース13d、すなわち上述したように直線路から旋回半径70mの右曲線路が組み合わされているコース13dを、本実施の形態における発明を適用しない状態で(誘導トルクを発生させず、操舵開始タイミングの報知も行なわずに)車速60km/hで8回ずつ走行してもらい、その際の転舵開始位置をそれぞれ運転履歴記憶装置106へ記録した。
そして、図13(b)に示すように、各被験者ごとに、計測した転舵開始位置の平均値を基準位置として算出し、さらに基準位置の評価指標として、ステアリング操作の乱れを評価するため転舵開始位置のばらつき(標準偏差)を算出した。例えば、図13(a)においては、被験者2の基準位置として、基準位置13aが算出されている。
次に,算出した基準位置13aを用いて本実施の形態における発明を適用した状態で、すなわち(誘導トルクを発生させ、操舵開始タイミングの報知を行なって)、再度、二人の被験者に同じコース13dを車速60km/hで8回ずつ走行してもらった。このとき、トルク発生装置107は、基準位置13aに基づいて、3仕様の誘導トルクを発生させて、それぞれ報知タイミングが異なるようにした。
ここで、被験者2の基準位置に基づいて発生させた3仕様の誘導トルクについて具体的に説明する。まず、トルク発生装置107は、第1の仕様の誘導トルクとして、自車両が基準位置13aより5m手前の地点13cに到達した時点を報知タイミングとするように、誘導トルクが基準位置13aより5m手前(−5m)で最大(ピーク)となるような誘導トルクを発生させる。すなわち、図13(a)に示すように誘導トルクの変化を表す波形が、波形13fとなるように、誘導トルクを発生させる。
また、第2の仕様の誘導トルクとして、自車両が基準位置13aに到達した時点を報知タイミングとするように、誘導トルクが基準位置13aで最大(ピーク)となるような誘導トルクを発生させる。すなわち、図13(a)に示すように誘導トルクの変化を表す波形が、波形13gとなるように、誘導トルクを発生させる。さらに、第3の仕様の誘導トルクとして、自車両が基準位置13aより5m先(+5m)の地点13bに到達した時点を報知タイミングとするように、誘導トルクが基準位置13aより5m先で最大(ピーク)となるような誘導トルクを発生させる。すなわち、図13(a)に示すように誘導トルクの変化を表す波形が、波形13hとなるように、誘導トルクを発生させる。
この結果、図13(b)に示すように、本実施の形態における発明を適用(実施)することによって、非実施の場合と比較して転舵開始位置のばらつきが約80%低減し、かつ誘導トルクのピーク位置を運転者固有の転舵開始位置、すなわち基準位置13aから変更しても運転者に対して転舵開始位置を誘導できることが分かった。
図14に、第3の実施の形態において、トルク発生装置107で発生させる誘導トルクの波形の具体例を示す。なお、トルク発生装置107は、上述したように、ナビゲーション装置101からの出力に基づいて自車両前方のコーナー旋回方向を検出し、検出された旋回方向と反対方向へステアリングを回転させるように誘導トルクを発生させる。
トルク発生装置107で発生させる誘導トルクの波形は、例えば図14(a)〜(e)に示すように様々な形状が考えられる。しかしながら、いずれの形状においても、誘導トルク付与開始地点14aにおける誘導トルクを0とし、そこから誘導トルクを増加させていき、報知タイミングとなる地点14bで誘導トルクを最大(ピーク)にする。そして、その後は誘導トルクを減少させていき、誘導トルク付与終了地点14cで誘導トルクを0にする。
ここで、ピーク時における誘導トルクは、運転者が車両をコントロールすることができる大きさが前提であり、ここで言う車両をコントロールすることができるというのは、車両を1車線内に維持することができるということを意味する。ただし、ステアリングの操舵特性は車両によって異なるため、例えば、直進走行時にステップ状に誘導トルクを発生させた際に、把持しているステアリングが直進時の操舵角に対して±5degより連続して変位してしまうトルク量を上限とすればよい。あるいは、その車両で様々な曲率のコーナーを0.5G走行した際の操舵反力トルクの半分の値をピーク時における誘導トルクとしてもよい。あるいは、直線走行時に一定量のトルクを付与し続けた状態で運転者が手を放した場合に、1車線分進路が逸れるまでに要する時間の下限を車速域ごとに定め、その下限時間のときのトルク量を誘導トルクとしてもよい。また、誘導トルクの波形の横軸は自車両の絶対位置としてあるが、車速を取得して時間軸の波形を距離として扱ってもよい。
次に、図11(b)および図15を用いて、トルク発生装置107による誘導トルク発生方法について説明する。図11(b)に示すように、トルク発生装置107は、運転履歴記憶メモリ106に記録されている運転履歴から求められる平均操舵開始地点と、ナビゲーション装置101から出力される道路形状に基づいて検出される道路の曲率の変化点とに基づいて、誘導トルク付与終了地点14cを算出する。なお、図15に示すように、直線部分と曲率15cの曲線部分からなる道路においては、直線部分と曲線部分の接合部である地点15bが曲率の変化点となる。
トルク発生装置107は、誘導トルクの波形を決めるに当たっては、自車両位置15aが曲率の変化地点15bに到達する前に誘導トルクの付与を終了する必要があることから、誘導トルク付与終了地点14cを曲率の変化点15bよりも手前に設定する。そして、運転履歴に基づいて、運転者に固有の平均操舵開始地点15eを算出し、誘導トルクのピーク地点14bを、曲率の変化点15bよりも手前で、かつ運転者に固有の平均操舵開始地点15eよりも先(奥)に位置するように設定する。
また、誘導トルク付与開始地点14aからピーク地点14bに到達するまでの平均増加速度11aの絶対値は、ピーク地点14bから誘導トルクの付与終了地点14bまでの平均減少速度11bの絶対値以下とし、例えば、平均増加速度11aの絶対値が平均減少速度11bの絶対値の1/5〜1/10となるように設定する。また、誘導トルクのピーク値は、車両ごと、またはドライバごとに設定するようにしてもよい。
なお、トルク発生装置107は、平均操舵開始地点15eを求めた後、平均操舵開始地点15eを算出した地点から所定距離走行するたびに、曲率の変化点15b側へ少しずつピーク地点14bを動かして報知タイミングを調整する。このとき、逐次、運転履歴を参照しながらその動かす量をコントロールしていく。これによって、報知タイミングのばらつきを低減することができるとともに、報知タイミングを運転者の平均的な操舵開始地点に近づけることができ、より運転の再現性を高くすることができる。
また、誘導トルクとして付与するトルク量は、上述したように運転者が車両をコントロールすることができるトルク量を与えることとする。このとき、車両に、運転者のステアリング把持状態、車線内における自車位置、および前方に存在する障害物の少なくともいずれかを検出するための機器を搭載しておく。そして、運転者がステアリングから手を放した場合、車両が車線外へはみ出そうになった場合、または前方に障害物を検知し衝突の危険性が生じた場合のいずれかの場合には、トルク発生装置107は、誘導トルクを付与することをやめるようにすれば、運転者による危険回避行動を妨げないようにすることができる。
以上説明した第3の実施の形態によれば、以下のような作用効果を得ることができる。
(1)トルク発生装置107は、報知タイミング12eまでの間は、ステアリングに対しコーナーの旋回方向とは逆の方向へ駆動トルク(誘導トルク)を付与するようにした。これによって、運転者が、報知タイミング12eより前にコーナーの旋回方向へ操舵することを防ぐことができる。
(2)トルク発生装置107は、報知タイミング12eにおいて、ステアリングに対して付与した誘導トルクを解除するようにした。これによって、運転者は誘導トルクが付与されている間は、無意識のうちに誘導トルク12bに抗するようにバランスをとっているが、この誘導トルクが解除されることによって、自然と旋回方向へステアリングを切り込むようになる。このため、運転者は違和感なくそのままコーナーを曲がるための操舵へと移ることができる。
(3)車両の危険回避が必要であると判断した場合には、トルク発生装置107は、誘導トルクを付与することをやめるようにした。これによって、車両の危険回避が必要と判断される場面では、運転者による危険回避行動を妨げないようにすることができる。
―第4の実施の形態―
第4の実施の形態では、第3の実施の形態と同様に、誘導トルクの大きさを制御して運転者に対して操舵のタイミングを報知する。このとき、第3の実施の形態では、ピーク地点14bにおける誘導トルクを最大にし、そこから誘導トルク付与終了地点14cに向けて誘導トルクを減少させて、誘導トルク付与終了地点14cで0になるように誘導トルクの波形を設定する場合について説明した。
これに対して、第4の実施の形態では、ピーク地点14bから誘導トルク付与終了地点14cに向けて誘導トルクを減少させる途中で減少速度の変化点(誘導トルク減少速度変化点)を設け、その誘導トルク減少速度変化点以降は誘導トルクの減少速度を遅くするように誘導トルクの波形を設定する場合について説明する。例えば、図16に示すように、報知タイミング12eの後、誘導トルクを減少させていく途中に誘導トルク減少速度変化点16aを設けて、この誘導トルク減少速度変化点16aで誘導トルクの減少速度を変化させる。なお、第4の実施の形態では、第3の実施の形態で上述した図11、図13については、第3の実施の形態と同様のため、説明を省略する。
図17は、誘導トルク減少速度変化点を設けた誘導トルクの波形の具体例を示す図である。この図17に示す例では、車両が図17(b)に示すような形状の道路を走行しているときに、進行先にあるコーナーに向けて、上述した誘導トルクを用いた操舵開始タイミングの報知を行なう場合について説明する。なお、図17(a)は、誘導トルクと運転者の保持トルクとの関係を示す図であり、図17(c)は、第3の実施の形態と同様に、誘導トルク減少速度変化点を設けずに設定された誘導トルクの波長を示す図である。そして、図17(d)は、本実施の形態における特徴である誘導トルク減少速度変化点16aを設定した場合の誘導トルクの波長を示す図である。
なお、図17(a)においては、ステアリングにかかる保持トルクと誘導トルクのそれぞれの大きさを矢印を用いて模式的に表した状態図17a〜17fが示されている。これらの状態図においては、矢印の長さが保持トルクおよび誘導トルクの大きさを表している。また、ここでは、図17(c)は、図17(d)との比較のために図示したものであるため、説明を省略する。
図17(d)に示すように、誘導トルク付与開始地点14aからピーク地点14bに向けて誘導トルクが徐々に増加していくと、状態図17a、17bに示すように、ステアリングにかかる誘導トルクの増加に抗するために運転者の保持トルクも増加していく。そして、ピーク地点14bにおいて、誘導トルクが最大になり、その後、誘導トルクが減少し始めた時点においては、状態図17cに示すように、使用者による保持トルクが誘導トルクを上回ってステアリングが切り込まれる。
その後、第3の実施の形態で上述したように、誘導トルク付与終了地点14cで誘導トルクが0になった後は、状態図17dや17fに示すように、ステアリングには使用者による保持トルクのみがかかっている状態になる。これに対して、本実施の形態では、誘導トルク減少速度変化点16aで、誘導トルクの減少速度をゆるやかにして、その後も継続して誘導トルクを付与し続けるため、状態図17eに示すように、未だステアリングには誘導トルクと保持トルクとがかかっている。
このように、誘導トルク減少速度変化点16aで誘導トルクの減少速度をゆるやかに変化させた誘導トルクの波形を設定することにより、次のような効果が得られる。誘導トルク減少速度変化点16aを設けない場合には、操舵に対する応答性が低い車両や、操舵反力と運転者の筋インピーダンスのバランスが悪い車両である場合、または操舵開始タイミング報知前後の誘導トルクの変化量が大きすぎて運転者の筋インピーダンスが下がり過ぎたり、筋インピーダンスにゼロ点ができたりする場合には、コーナーを旋回するための旋回保舵に至るまでの旋回アプローチ時に運転者の筋インピーダンスが安定せず、操舵の精度が下がって旋回保舵量がばらつくという問題があった。
これに対して、誘導トルク減少速度変化点16aを設けて、操舵開始タイミング提示後に誘導トルクを完全に抜かないことによって、運転者の筋インピーダンスが下がりすぎることを防ぐことができ、筋インピーダンスのゼロ点を作らないようにすることができる。すなわち、コーナーを旋回するための旋回保舵に至るまでの旋回アプローチ時にも反力トルクが付与されるため、筋インピーダンスのゼロ点ができず安定し、旋回アプローチ時の操舵の精度を向上させて旋回保舵量のばらつきを低減することができる。
実験結果に基づく具体的な効果としては、図18に示すように、誘導トルク減少速度変化点16aを設けない場合(非実施時)の旋回保舵量のばらつき18aと、誘導トルク減少速度変化点16aを設けた場合(実施時)の旋回保舵量のばらつき18bとを比較すると、実施時は、旋回保舵量のばらつきを38%低減することができた。すなわち、運転者に対する操舵開始タイミングを報知することができるという目的を達成したまま、旋回保舵量のばらつきをすることができた。
なお、図18においては、実施時は、非実施時と比較して平均保舵量自体が増加しているが、これは操舵開始タイミングの提示によって操舵開始タイミングのばらつきが低減されたことを表している。また、ステアリングの切込み初期の操舵速度が増加することによってスムーズにステアリングを切り込むことができる結果、保舵量のばらつきが抑えられたことを表している。
図19に、第4の実施の形態において、トルク発生装置107で発生させる誘導トルクの波形の具体例を示す。なお、トルク発生装置107は、上述したように、ナビゲーション装置101からの出力に基づいて自車両前方のコーナー旋回方向を検出し、検出された旋回方向と反対方向へステアリングを回転させるように誘導トルクを発生させる。
トルク発生装置107で発生させる誘導トルクの波形は、例えば図19(a)〜(e)に示すように様々な形状が考えられる。しかしながら、いずれの形状においても、誘導トルク付与開始地点14aにおける誘導トルクを0とし、そこから誘導トルクを増加させていき、報知タイミングとなる地点14bで誘導トルクを最大(ピーク)にする。そして、その後は誘導トルクを減少させていき、誘導トルク減少速度変化点16aで誘導トルクの減少速度を変化させた後、最終的に誘導トルク付与終了地点14cで誘導トルクを0にする。
ここで、ピーク時における誘導トルクは、運転者が車両をコントロールすることができる大きさが前提であり、ここで言う車両をコントロールすることができるというのは,車両を1車線内に維持することができるということを意味する。ただし、ステアリングの操舵特性は車両によって異なるため、例えば、直進走行時にステップ状に誘導トルクを発生させた際に、把持しているステアリングが直進時の操舵角に対して±5degより連続して変位してしまうトルク量を上限とすればよい。あるいは、その車両で様々な曲率のコーナーを0.5G走行した際の操舵反力トルクの半分の値をピーク時における誘導トルクとしてもよい。
あるいは、直進走行時に一定量のトルクを付与し続けた状態で運転者が手を放した場合に、1車線分進路が逸れるまでに要する時間の下限を車速域ごとに定め、その下限時間のときのトルク量を誘導トルクとしてもよい。また、誘導トルクの波形の横軸は自車両の絶対位置としてあるが、車速を取得して時間軸の波形を距離として扱ってもよい。
次に、図20を用いて、本実施の形態におけるトルク発生装置107による誘導トルク発生方法について説明する。まず、トルク発生装置107は、運転履歴記憶メモリ106に記録されている運転履歴から求められる平均操舵開始地点と、ナビゲーション装置101から出力される道路形状に基づいて検出される道路の曲率の変化点15b(直線部分と曲線部分の接合部に相当する地点)とに基づいて、誘導トルク減少速度変化点16aを設定する。具体的には、トルク発生装置107は、誘導トルク減少速度変化点16aを曲率の変化点15bよりも手前に設定する。
そして、使用者による旋回立ち上がりの操舵や、切り返しの操舵を妨げることを防ぐために、トルク発生装置107は、道路線形の曲率が減少する地点20aに自車両位置15aが到達する以前に誘導トルクの付与を終了する。すなわち、誘導トルク付与終了地点14cを設定する。
なお、道路線形の曲率が減少する地点20aは、例えば図21に示すような地点が相当する。すなわち、図21(a)に示すように、曲率が一定であるコーナーの場合には、そのコーナーの終了地点が道路線形の曲率が減少する地点20aとなる。また、図21(b)に示すように、コーナー内で曲率が増加する区間から曲率が減少する区間に変化する地点がある場合には、その曲率が増加から減少に転じる地点が道路線形の曲率が減少する地点20aとなる。また、図21(c)に示すように、コーナーの立ち上がり区間で曲率が増加した後、曲率が一定となり、その後、曲率が減少するようなコーナーの場合には、曲率が減少に転じる地点が道路線形の曲率が減少する地点20aとなる。
また、図20および図21では、トルク発生装置107は、道路線形の曲率が減少する地点20aに自車両位置15aが到達する以前に誘導トルクの付与を終了する例について説明したが、例えば図22に示すように、コーナーの途中で旋回方向が変わる場合には、道路線形の曲率が減少する地点20aか、あるいは旋回方向が変わる地点に自車両位置15aが到達する以前に誘導トルクの付与を終了するようにすればよい。例えば、図22(a)〜(c)に示すように、道路線形の曲率が減少する地点20aか、あるいは旋回方向が変わる地点22aに自車両位置15aが到達する以前に誘導トルクの付与を終了するようにすればよい。
さらに、トルク発生装置107は、運転履歴に基づいて、運転者に固有の平均操舵開始地点15eを算出し、図20に示すように、誘導トルクのピーク地点14bを、曲率の変化点15bよりも手前で、かつ運転者に固有の平均操舵開始地点15eよりも先に位置するように設定する。
また、誘導トルク付与開始地点14aからピーク地点14bに到達するまでの平均増加速度11aの絶対値は、ピーク地点14bから誘導トルク減少速度変化点16aまでの平均減少速度20bの絶対値以下とし、例えば、平均増加速度11aの絶対値が平均減少速度20bの絶対値の1/5〜1/10となるように設定する。また、誘導トルクのピーク値は、車両ごと、またはドライバごとに設定するようにしてもよい。
なお、トルク発生装置107は、平均操舵開始地点15eを求めた後、平均操舵開始地点15eを算出した地点から所定距離走行するたびに、曲率の変化点15b側へ少しずつピーク地点14bを動かして報知タイミングを調整する。このとき、逐次、運転履歴を参照しながらその動かす量をコントロールしていく。これによって、報知タイミングのばらつきを低減することができるとともに、報知タイミングを運転者の平均的な操舵開始地点に近づけることができ、より運転の再現性を高くすることができる。
また、誘導トルクとして付与するトルク量は、上述したように運転者が押さえられる程度のトルク量を与えることとする。このとき、車両に、運転者のステアリング把持状態、車線内における自車位置、および前方に存在する障害物の少なくともいずれかを検出するための機器を搭載しておき、運転者がステアリングから手を放した場合、車両が車線外へはみ出そうになった場合、または前方に障害物を検知し衝突の危険性が生じた場合のいずれかの場合には、誘導トルクを付与することをやめるようにして、運転者による危険回避行動を妨げないようにすることもできる。
以上説明した第4の実施の形態によれば、第3の実施の形態における作用効果に加えて、以下のような効果を得ることができる。すなわち、報知タイミング12eの後、誘導トルクを減少させていく途中に誘導トルク減少速度変化点16aを設けて、この誘導トルク減少速度変化点16aで誘導トルクの減少速度を変化させるようにした。これによって、コーナーを旋回するための旋回保舵に至るまでの旋回アプローチ時にも反力トルクが付与されるため、筋インピーダンスのゼロ点ができず安定し、旋回アプローチ時の操舵の精度を向上させて旋回保舵量のばらつきを低減することができる。
―変形例―
なお、上述した実施の形態の操舵支援装置は、以下のように変形することもできる。
(1)上述した第3および第4の実施の形態では、トルク発生装置107は、ナビゲーション装置101からの出力に基づいて、車両の絶対位置を計測したり、コース情報を得る例について説明した。しかしながら、トルク発生装置101は、例えばステレオカメラを用いて取得した画像を画像処理することによって、前方の道路曲率を推定したり、前方のコーナーに対する車両の相対位置を把握するようにしてもよい。
(2)上述した第1〜第4の実施の形態では、操舵支援装置100を車両に搭載する例について説明した。しかしながら、その他の移動体に搭載するようにしてもよい。
なお、本発明の特徴的な機能を損なわない限り、本発明は、上述した実施の形態における構成に何ら限定されない。
100 操舵支援装置、101 ナビゲーション装置、102 理想操舵開始地点演算装置、103 操舵時間演算装置、104 パワーステアリング装置、105 記憶装置、106 運転履歴記憶装置、107 トルク発生装置