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JP5121446B2 - ポリヒドロキシアルカノエート樹脂発泡粒子の製造方法 - Google Patents

ポリヒドロキシアルカノエート樹脂発泡粒子の製造方法 Download PDF

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Description

植物由来で、生分解性を有するポリヒドロキシアルカノエート樹脂発泡粒子、および省エネルギーな該発泡粒子の製造方法に関する。
昨今廃棄プラスチックが引き起こす環境問題がクローズアップされるなかで、使用後微生物の働きによって水と二酸化炭素に分解される生分解性プラスチックが注目を集めている。一般的に生分解性プラスチックは、1)ポリヒドロキシアルカノエート(本発明においては特にポリ(3−ヒドロキシアルカノエート)、即ちP3HA)といった微生物生産系脂肪族ポリエステル、2)ポリ乳酸やポリカプロラクトン等の化学合成系脂肪族ポリエステル、3)澱粉や酢酸セルロース等の天然高分子物といった、3種類に大別される。化学合成系脂肪族ポリエステルの多くは嫌気性分解しないため廃棄時の分解条件に制約があり、ポリ乳酸、ポリカプロラクトンは耐熱性に問題がある。また、澱粉は非熱可塑性で脆く耐水性に劣るといった問題がある。一方、P3HAは好気性、嫌気性何れの環境下での分解性にも優れ、燃焼時には有毒ガスを発生せず、耐水性、耐水蒸気透過性に優れ、植物原料を使用した微生物に由来するプラスチックで、架橋処理などせずとも高分子量化が可能であり、地球上の二酸化炭素を増大させない、カーボンニュートラルである、といった優れた特徴を有している。特にP3HAは植物原料由来であるため、二酸化炭素の吸収、固定化効果に着目され、京都議定書にかかわる地球温暖化防止策への寄与効果が期待される。また、P3HAが共重合体の場合、構成するモノマーの組成比を制御することで、融点、耐熱性や柔軟性といった物性を変化させることが可能である。
この様にポリヒドロキシアルカノエートは、植物原料からなり、廃棄物の問題が解決され、環境適合性に優れ、幅広い物性制御が可能なため、包装材料、食器材料、建築・土木・農業・園芸材料、自動車内装材、吸着・担体・濾過材等に応用可能なポリヒドロキシアルカノエートからなる成形体が望まれている。
ところで生分解性プラスチックを使用して、すでに、シート、フィルム、繊維、射出成型品等が国内外で製品化されているが、プラスチック廃棄物の中でも包装容器、緩衝材、クッション材等に多量に用いられている発泡プラスチックは嵩高いために大きな社会問題となっており、その解決が望まれている。このため、生分解性を有するプラスチック発泡体の研究が盛んに行われており、これまで脂肪族ポリエステル系樹脂やデンプンとプラスチックの混合樹脂等の押出発泡体やバッチ式で得られる発泡粒子の検討がなされている。後者に関して、従来検討されている内容としては石油由来の原料から合成して得られた生分解性の脂肪族ポリエステル樹脂を、発泡性を改良するためジイソシアナート反応させ高分子量化し得られる発泡粒子(特開平6−248106号公報)や、架橋処理して得られる発泡粒子(特開平10−324766号公報、特開2001−49021号公報、特開2001−106821号公報および特開2001−288294号公報)がある。
当発明者らも結晶性制御により無架橋の脂肪族ポリエステル樹脂発泡粒子、脂肪族−芳香族ポリエステル樹脂発泡粒子(特開2000−319438号公報、特開2003−321568号公報、特開2004−143269号公報)を検討してきている。また近年、従来検討されてきた生分解性を有する脂肪族ポリエステル系樹脂発泡粒子のなかでも、植物原料由来の脂肪族ポリエステルに注目が高まっており、P3HA樹脂発泡粒子は先に述べた理由からその開発が望まれている。当発明者らはP3HA樹脂においても結晶性制御により発泡粒子を作製している(特開2000−319438号公報)。特開2000−319438号公報によれば、P3HAの一種であるポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシヘキサノエート)(以下、略称PHBH)を使用し、耐圧容器内で水を分散媒とし、イソブタンを発泡剤として2つの融点を有する発泡粒子を得る方法が記載されている。この方法によればPHBHを発泡させるためにPHBHの融点近くの温度まで加熱をする必要があり、PHBH発泡粒子製造時に多量のエネルギーを消費する。また、得られるPHBH発泡粒子の高温側の融点は、発泡に使用されるPHBH樹脂粒子単独の融点と比較して少なくとも5℃より高温になる。この製造法では熱処理による結晶成分の高秩序化が進むため高温側の融点は高くなると考えられる。融点が高温になると、発泡粒子を使用した金型加熱二次成形時に高温加熱処理を実施する必要があり、エネルギーの使用量が高く、また、金型温度が高温になると成形サイクルが長時間となり生産性に影響するため、融点の低い発泡粒子を得る方法が望まれていた。さらに、二酸化炭素削減目標値を課した京都議定書に対し、2003年8月にロシアで批准に向けた議会審議が承認されたため議定書の発効が確実味をおびてきており、省エネルギー化の工業製造方法は国、および企業の二酸化炭素削減目標値達成の点からも注目度が高い。また一方、従来の製造法では圧力容器内で水を分散媒とするため、配合剤の種類などによっては容器内の水が酸性もしくは、塩基性の熱水になりPHBHが分解、分子量低下する可能性があるため、配合に注意して製造する必要があった。
また、本発明の発泡粒子は金型加熱二次成形せずに粒子単独でも、例えば、ばら状緩衝材としての使用が可能である。また、発泡粒子を、通気性を有するまたは有さない袋状物(好ましくは生分解性を有する袋)に充填することで、形状を自由に変化させることが可能な発泡粒子集合体とすることもでき、該集合体はビーズクッションなどのクッション材、隙間部分に形状を自由に変えて挿入できる緩衝材、一方では吸音材等で優れた性能を発揮でき、また、徐放性の薬剤を混合するなどして薬剤徐放性制御粒子とすることができる。
本発明の課題は、廃棄焼却の際に硫黄酸化物やすすを全く発生せず、窒素酸化物の発生量も大幅に削減出来るエーテルを使用し、植物由来で二酸化炭素固定化に寄与する樹脂を使用した環境適合性に優れた樹脂発泡粒子の製造工程において、取扱が容易で、省エネルギーで経済的な製造方法を提供することである。
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、P3HAに対してエーテル類を発泡剤とした場合に、融点の低い発泡粒子が得られ、融点の制御および生産性が向上することを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明の第一は、微生物から生産される式一般(1):
[−CHR−CH2−CO−O−] (1)
(式中、RはCn2n+1で表されるアルキル基で、n=1〜15の整数である。)
で示される繰り返し単位を有する共重合体(以下、ポリ(3−ヒドロキシアルカノエート):略称P3HA)を含む樹脂粒子と、発泡剤を密閉容器内に導入する工程、該樹脂粒子が軟化し始めるまで加熱した後、密閉容器の一端を解放し、該樹脂粒子を密閉容器の圧力よりも低圧の雰囲気下に放出して該樹脂粒子を発泡させ、発泡粒子を得る工程を含むP3HA樹脂発泡粒子の製造方法であって、発泡剤がジメチルエーテル、ジエチルエーテル、およびメチルエチルエーテルからなる群から選ばれる少なくとも1種であるP3HA樹脂発泡粒子の製造方法に関する。
好ましい実施態様は、P3HAが、n=1および3である繰り返し単位を含むポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシヘキサノエート)である上記のP3HA樹脂発泡粒子の製造方法に関する。より好ましくは、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシヘキサノエート)の共重合成分の組成比が、ポリ(3−ヒドロキシブチレート)/ポリ(3−ヒドロキシヘキサノエート)=99/1〜80/20(モル比)である上記のP3HA樹脂発泡粒子の製造方法、さらに好ましくは、発泡剤がジメチルエーテルであることを特徴とする上記のP3HA樹脂発泡粒子の製造方法、に関する
好ましい実施態様は、P3HA樹脂発泡粒子が示差走査熱量測定法によるDSC曲線において2つ以上の融点を示す結晶構造を有し、その最高温側の融点をTm1としたとき、発泡する前にP3HA樹脂単独体で同様の示差走査熱量測定法により測定した場合の最高温側の融点Tm2が、Tm Tm +5℃であることを特徴とする上記のP3HA樹脂発泡粒子の製造方法に関する。
以下、本発明につき、さらに詳細に説明する。本発明のポリ(3−ヒドロキシアルカノエート))(以下、P3HAとする)とは、一般式(1):
[−CHR−CH2−CO−O−] (1)
(式中、RはCn2n+1で表されるアルキル基で、n=1〜15の整数である。)
で示される、3−ヒドロキシアルカノエートよりなる繰り返し構造を有し、かつ微生物から生産される脂肪族ポリエステルである。
本発明におけるP3HAとしては、上記3−ヒドロキシアルカノエートのホモポリマー、または2種以上の組み合わせからなる共重合体、つまりジ−コポリマー、トリ−コポリマー、テトラ−コポリマーなど、またはこれらホモポリマー、コポリマー等から選ばれる2種以上のブレンド物があげられ、中でもn=1の3−ヒドロキシブチレート、n=2の3−ヒドロキシバリレート、n=3の3−ヒドロキシヘキサノエート、n=5の3−ヒドロキシオクタノエート、n=15の3−ヒドロキシオクタデカノエートなどのホモポリマー、またはこれら3−ヒドロキシアルカノエート単位2種以上の組合わせからなる共重合体(ジ−コポリマー、トリ−コポリマー)またはこれらのブレンド物が好ましく使用できる。これらのなかでもP3HAとしては、加熱加工時に使用できる温度領域が比較的広い点から、n=1の3−ヒドロキシブチレートとn=3の3−ヒドロキシヘキサノエートの共重合体であるポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシヘキサノエート)がより好ましく、さらにその組成比としては、3−ヒドロキシブチレート/3−ヒドロキシヘキサノエート=99/1〜80/20(モル比)であることが好ましく、3−ヒドロキシブチレート/3−ヒドロキシヘキサノエート=98/2〜82/18(モル比)であることがより好ましく、3−ヒドロキシブチレート/3−ヒドロキシヘキサノエート=98/2〜85/15(モル比)であることがさらに好ましい。3−ヒドロキシブチレート/3−ヒドロキシヘキサノエート組成比が99/1より大きいと、ホモポリマーであるポリヒドロキシブチレートと融点に差がなく、高温で加熱加工する必要があり、加熱加工時の熱分解による分子量低下が激しく、品質の制御が困難となる傾向がある。また3−ヒドロキシブチレート/3−ヒドロキシヘキサノエート組成比が80/20より小さいと加熱加工時の再結晶化に時間がかかるため生産性が悪くなる傾向がある。
前記P3HAの重量平均分子量(Mw)は、5万以上であることが好ましく、10万以上であることがより好ましい。重量平均分子量が5万未満の場合、本製造法での発泡時の発泡力に樹脂の溶融張力が耐えられず、発泡セルが破泡し、良好な発泡体が得られにくくなる傾向がある。また、重量平均分子量の上限値としては、特に限定されないが、2000万以下であることが好ましく、200万以下であることがより好ましい。前記重量平均分子量は、クロロホルム溶離液を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定でのポリスチレン換算分子量分布測定より得られる重量平均分子量(Mw)をいう。
本発明では、エーテル系発泡剤を用いる。エーテル系発泡剤としては、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、およびメチルエチルエーテルからなる群から選ばれた1種以上のエーテル類を使用することが好ましく、ジメチルエーテルであることがより好ましい。ジメチルエーテルは、硫黄酸化物やすすを全く発生せず、窒素酸化物の発生量も大幅に削減できる、など環境負荷が小さく、ディーゼル自動車用燃料、発電用燃料、LPガス代替燃料等の幅広い用途に使用可能な環境適合性の高い物質として使用され始めている。エーテル類はP3HA樹脂に対して強い可塑性能と発泡力を有しているため比較的低い発泡温度で発泡体が得やすい。通常よく使用される発泡剤であるイソブタンと比較すると、良好な発泡粒子が得られる発泡温度は数十℃程度エーテル系発泡剤を使用した方が低くなり、低温での発泡が可能となる。低温で発泡するためP3HAは融点付近での熱処理を行わないので、低い融点の発泡粒子が得られる。
発泡剤の添加量は目的の発泡粒子の発泡倍率、発泡温度、密閉容器の空間体積などによって異なるが樹脂粒子100重量部に対し、通常2〜10000重量部であることが好ましく、5〜5000重量部であることがより好ましく、10〜1000重量部であることがさらに好ましい。発泡剤が2重量部未満であると充分な発泡倍率が得られない傾向があり、発泡剤が10000重量部をこえても、添加しただけの効果を得られるものでもなく、経済的に無駄となる傾向がある。
本発明におけるP3HAには得られる発泡粒子の要求性能を阻害しない範囲において、各種添加剤を加えても良い。ここで添加剤とは、たとえば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、染料、顔料などの着色剤、可塑剤、滑剤、結晶化核剤、無機充填剤等があげられ、目的に応じて使用できるが、中でも生分解性を有する添加剤が好ましい。添加剤としては、シリカ、タルク、ケイ酸カルシウム、ワラストナイト、カオリン、クレイ、マイカ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化珪素等の無機化合物や、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウムやステアリン酸バリウム等の脂肪酸金属塩、流動パラフィン、オレフィン系ワックス、ステアリルアミド系化合物などがあげられるが、これらに限定された物ではない。また、発泡粒子の気泡径を調節する必要がある場合は気泡調整剤を添加する。気泡調整剤としては、タルク、シリカ、ケイ酸カルシウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、珪藻土、クレー、重曹、アルミナ、硫酸バリウム、酸化アルミニウム、ベントナイト等の無機剤があり、その使用量は樹脂100重量部に対して、通常0.005〜2重量部を添加する。
本発明のP3HA樹脂発泡粒子の製造方法を以下に述べる。本発明のP3HA樹脂発泡粒子は、まず基材樹脂であるP3HA樹脂を押出機、ニーダー、バンバリーミキサー、ロールなどを用いて加熱溶融混錬し、次いで円柱状、楕円柱状、球状、立方体状、直方体状などの本発明の発泡粒子の製造方法に利用しやすい粒子形状に成形したP3HA樹脂粒子を使用する。粒子1個当たりの重量は0.1mg以上であることが好ましく、0.5mg以上がより好ましい。また、上限値は特に限定されないが、10mg以下であることが好ましい。0.1mg未満ではP3HA樹脂粒子自体の製造が困難な場合がある。
こうして得られたP3HA樹脂粒子を、密閉容器内に発泡剤とともに導入する。場合によっては分散剤と分散媒とともに導入する。密閉容器内で該P3HA樹脂粒子の軟化温度以上でかつ完全に非晶状態になる温度(言い換えると粒子同士が溶融、融合してしまう温度)以下まで加熱し、必要で有れば発泡させる温度付近で一定の時間保持した後(保持時間と呼ぶ)、密閉容器の一端を解放し、該P3HA樹脂粒子を密閉容器の圧力よりも低圧の雰囲気下に放出して、P3HA樹脂発泡粒子が製造される。
密閉容器内の温度および圧力は、用いる樹脂粒子や発泡剤の種類によって適宜選択すればよいが、たとえば、用いる樹脂粒子の融点以下の温度で、少なくとも、0.5MPa以上の圧力であることが好ましい。
本発明における製造方法において密閉容器内には熱媒体として水(熱水)などを使用しても良いが、その場合、前述の各種添加剤が水中に溶けだしたときの塩基性や分散剤の影響を考慮する必要がある。中性の熱水以外ではP3HAの加水分解が著しく促進されるおそれがある。よって好ましくは熱媒体として発泡剤であるエーテル類を直接使用したり、添加剤に作用を及ぼさず、経済性、取り扱い性のよい媒体を適宜選択して使用すればよい。分散媒の種類にもよるが、分散剤としては、第3リン酸カルシウム、ピロリン酸カルシウム、カオリン、塩基性炭酸マグネシウム、酸化アルミニウム、塩基性炭酸亜鉛等の無機物と、アニオン界面活性剤たとえば、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ、α−オレフィンスルホン酸ソーダ、ノルマルパラフィンスルフォン酸ソーダ等を組み合わせて使用される。
また、本発明の製造方法で得られたP3HA発泡粒子は、示差走査熱量測定法によるDSC曲線において2つ以上の融点を示す結晶構造を有し、その最高温側の融点をTm1としたとき、発泡する前にP3HA樹脂単独体で同様の示差走査熱量測定法により測定した場合の最高温融点Tm2が、Tm ≦Tm +5℃であることが好ましくい。
本発明のP3HA樹脂発泡粒子の示差走査熱量測定法とは、たとえば、特開昭59−176336号公報、特開昭60−49040号公報などに開示された方法に準拠して行い、示差走査熱量計によって10℃/分の昇温速度で0℃から200℃まで昇温することにより得られるDSC曲線を得ることである。ここで融点とは、昇温する際のDSC曲線における吸熱曲線のピーク温度である。DSC曲線において2つ以上の融点を示す結晶構造を有するようなP3HA樹脂発泡粒子は金型に充填して成形すると、成形条件幅が広く、物性の良好な成形体が得られる。2つの融点の差は、好ましくは2℃以上、さらに好ましくは10℃以上であり、融点の温度差が大きいほど成形性は良好である。また本発明のエーテル類を発泡剤として用いたP3HA樹脂発泡粒子の製造方法によれば、P3HA樹脂粒子はエーテルの可塑化作用により、低温(低熱エネルギー)で発泡可能となり、P3HA樹脂粒子の融点(Tm2)とP3HA樹脂発泡粒子の融点(Tm1)がほとんど同じになり、Tm Tm +5℃となる。本発明のように低温発泡が可能であるということは、低熱エネルギー発泡が可能であることで、省エネルギー化、延いては二酸化炭素削減に繋がり、地球温暖化防止効果が期待される。
このようにして得られた本発明のP3HA樹脂発泡粒子の発泡倍率は、2〜80倍であることが好ましく、5〜60倍であることがより好ましい。発泡倍率が2倍未満であると発泡体の特性である断熱性や軽量化の効果が得られにくい傾向があり、80倍をこえるとごく限られた加熱成形条件でしか成形できない傾向がある。
前記方法で得られたP3HA樹脂発泡粒子は、包装材料、食器材料、建築・土木・農業・園芸材料、自動車内装材、吸着・担体・濾過材等の用途にそのまま使用することも出来、必要で有れば加圧空気で加圧し発泡粒子に内圧を高め、閉鎖しうるが密閉できない金型に充填し、次いで、金型内に水蒸気を導入することで、熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡粒子同士を加熱融着させ熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡粒子の発泡成形体が製造される。
以下に実施例を示し、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。実施例において「部」は重量基準である。なお、本発明で使用した物質は以下の様に略した。
PHBH:ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシヘキサノエート)
HH率:PHBH中のヒドロキシヘキサノエートのモル分率(モル%)
ジメチルエーテル:DME
各実施例におけるP3HA樹脂発泡粒子の物性測定は以下のように行った。
<P3HA樹脂発泡粒子の発泡倍率>
23℃のエタノールの入ったメスシリンダーを用意し、該メスシリンダーに相対湿度50%、23℃、1atmの条件にて7日間放置した500個以上の発泡粒子(発泡粒子群の重量W(g))を金網などを使用して沈め、エタノール水位上昇分より読みとられる発泡粒子群の容積V(cm3)としたときに、樹脂密度ρ(g/cm3)から次式で与えられる。
発泡倍率=V/(W/ρ)
<P3HA樹脂粒子、および発泡粒子の融点、およびそのピーク数、温度差>
示差走査熱量測定は、P3HA樹脂粒子約5mgを精秤し、示差走査熱量計(セイコー電子工業(株)製、SSC5200)にて10℃/分の昇温速度で0℃から200℃まで昇温を実施し、DSC曲線を得、吸熱曲線のピーク温度を融点Tm2とした(複数有る場合は最高温度のピークを選択)。発泡粒子の融点Tm1も同様にして求めた。またピークの数についてもカウントした。
<P3HA樹脂発泡粒子の生産性>
発泡粒子の省エネルギー性について以下の基準で評価した。
○:発泡粒子製造時の耐圧密閉容器の加熱温度が100℃以下
△:発泡粒子製造時の耐圧密閉容器の加熱温度が100℃より大きい
<樹脂の生分解性>
P3HA樹脂発泡粒子を、深さ10cmの土中に埋めて6ヶ月後、形状変化を観察し分解性を以下の基準で評価した。
○:かなりの部分が分解されており形状を確認しにくいほど分解
×:ほとんど形状に変化なく発泡粒子が観察され、分解していない
(実施例1)
微生物として、Alcaligenes eutrophusにAeromonas caviae由来のPHA合成酵素遺伝子を導入したAlcaligenes eutrophus AC32(受託番号FERM BP−6038(平成8年8月12日に寄託された原寄託(FERM P−15786)より移管)(平成9年8月7日、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター、あて名;日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6))(J.Bacteriol.,179,4821(1997))を用いて原料、培養条件を適宜調整して生産されたPHBH(HH率10モル%のPHBH(Mw=53万))をニーダー付きφ35mm単軸押出成形機(笠松加工製ラボ万能押出機)でシリンダー温度135℃にて溶融混練し、押出機先端に取り付けられた3mmφの小孔ダイより押し出されたストランドを、ペレタイザーでカットして粒重量5mgのPHBH樹脂粒子A(Mw=45万)を作製した。該樹脂粒子A100重量部を、10L耐圧容器に仕込んだ後、発泡剤としてDME200重量部を添加、攪拌し、容器内温度が90℃となるまで昇温(発泡温度とする)後、容器内圧が2.5MPaの状態で1時間保持したのち、耐圧容器下部に設けた小孔ノズルを通して大気圧下に放出発泡し、発泡倍率が10倍で、示差走査熱量測定法によるDSC曲線において2つの融点(133℃(Tm1)、114℃)を示す結晶構造を有するPHBH樹脂発泡粒子Bを得た。また、未発泡のPHBH樹脂粒子Aは示差走査熱量測定法によるDSC曲線において2つの融点(131℃(Tm2)、119℃)を有していた。PHBH発泡粒子BはTm1≦Tm2+5℃の関係を満たす。比較例2と比べて90℃と低温度(低エネルギー)で発泡でき、低温の融点を有する発泡粒子が得られた。また、この樹脂の生分解性は良好であった。結果を表1に示す。
Figure 0005121446
(比較例1)
発泡剤としてイソブタン200重量部、容器内圧が1.6MPaとなった以外は、実施例1と同様にして発泡を試みた。結果、加熱温度90℃では全く発泡しない樹脂粒子Cが得られた。得られた樹脂粒子Cは、示差走査熱量測定法によるDSC曲線において2つの融点(131℃(Tm1)、120℃)を有し、樹脂粒子Aと比較した場合Tm1≦Tm2+5℃の関係は満たすが、イソブタンにはDMEのような可塑化能がないため、樹脂が軟化せず未発泡のPHBH樹脂粒子Cとなった。また、この樹脂の生分解性は良好であった。結果を表1に示す。
(比較例2)
発泡剤としてイソブタン200重量部、加熱温度145℃容器内圧が3.9MPaとなった以外は、実施例1と同様にして発泡粒子Dを得た。発泡粒子Dは発泡倍率が2倍で、示差走査熱量測定法によるDSC曲線において2つの融点(142℃(Tm1)、123℃)を示す結晶構造を有していた。PHBH発泡粒子DはTm1>Tm2+5℃を満たし、実施例1と比べて145℃と高温度(高エネルギー)で発泡させなければ発泡粒子は得られず、その倍率も低かった。また、この樹脂の生分解性は良好であった。結果を表1に示す。
(実施例2)
微生物として、Alcaligenes eutrophusにAeromonas caviae由来のPHA合成酵素遺伝子を導入したAlcaligenes eutrophus AC32(受託番号FERM BP−6038(平成8年8月12日に寄託された原寄託(FERM P−15786)より移管)(平成9年8月7日、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター、あて名;日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6))(J.Bacteriol.,179,4821(1997))を用いて原料、培養条件を適宜調整して生産されたPHBH(HH率7モル%のPHBH(Mw=72万))をニーダー付きφ35mm単軸押出成形機(笠松加工製ラボ万能押出機)でシリンダー温度145℃にて溶融混練し、押出機先端に取り付けられた3mmφの小孔ダイより押し出されたストランドを、ペレタイザーでカットして粒重量5mgのPHBH樹脂粒子E(Mw=57万)を作製した。該樹脂粒子E100重量部を、10L耐圧容器に仕込んだ後、発泡剤としてDME200重量部を添加、攪拌し、容器内温度が100℃となるまで昇温(発泡温度とする)後、容器内圧が3.3MPaの状態で1時間保持したのち、耐圧容器下部に設けた小孔ノズルを通して大気圧下に放出発泡し、発泡倍率が12倍で、示差走査熱量測定法によるDSC曲線において2つの融点(144℃(Tm1)、127℃)を示す結晶構造を有するPHBH樹脂発泡粒子Fを得た。また、未発泡のPHBH樹脂粒子Eは示差走査熱量測定法によるDSC曲線において2つの融点(142℃(Tm2)、128℃)を有していた。PHBH発泡粒子EはTm1≦Tm2+5℃の関係を満たす。比較例4と比べて100℃と低温度(低エネルギー)で発泡でき、低温の融点を有する発泡粒子が得られた。また、この樹脂の生分解性は良好であった。結果を表1に示す。
(比較例3)
発泡剤としてイソブタン200重量部、容器内圧が1.9MPaとなった以外は、実施例2と同様にして発泡を試みた。結果、加熱温度100℃では全く発泡しない樹脂粒子Gが得られた。得られた樹脂粒子Gは、示差走査熱量測定法によるDSC曲線において2つの融点(143℃(Tm1)、125℃)を有し、樹脂粒子Eと比較した場合Tm1≦Tm2+5℃の関係は満たすが、イソブタンにはDMEのような可塑化能がないため、樹脂が軟化せず未発泡のPHBH樹脂粒子Gとなった。また、この樹脂の生分解性は良好であった。結果を表1に示す。
(比較例4)
発泡剤としてイソブタン200重量部、加熱温度158℃容器内圧が4.7MPaとなった以外は、実施例1と同様にして発泡粒子Hを得た。発泡粒子Hは発泡倍率が5倍で、示差走査熱量測定法によるDSC曲線において2つの融点(157℃(Tm1)、123℃)を示す結晶構造を有していた。PHBH発泡粒子HはTm1>Tm2+5℃となり、実施例2と比べて158℃と高温度(高エネルギー)で発泡させなければ発泡粒子は得られず、その倍率も低かった。また、この樹脂の生分解性は良好であった。結果を表1に示す。
(実施例3)
実施例1で得られたPHBH発泡粒子、0.07〜0.10MPa(ゲージ圧:115〜120℃相当)の水蒸気をとともに金型に導入し発泡粒子同士を加熱、融着させ型内発泡成形体を得ることができた。
本発明により、上述の化学合成系脂肪族ポリエステルや澱粉などの天然物高分子で達成が困難な、耐熱性、耐水性に優れた、環境適合性に優れた植物由来の樹脂発泡粒子を得ることが出来る。また、廃棄時に好気性、嫌気性何れの環境下でも微生物などの作用により分解し、地球上の炭素循環系に還る組成物、成形体が得られる。さらには地球上の二酸化炭素を積極的に固定化して得られる植物由来の組成物、成形体であり地球温暖化防止が期待できる。さらには、発泡粒子製造工程に関して取扱が容易で経済的な製造方法を提供できる。

Claims (5)

  1. 微生物から生産される一般式(1):
    [−CHR−CH2−CO−O−] (1)
    (式中、RはCn2n+1で表されるアルキル基で、n=1〜15の整数である。)
    で示される繰り返し単位を有する共重合体ポリ(3−ヒドロキシアルカノエート)を含む樹脂粒子と、発泡剤を密閉容器内に導入する工程、該樹脂粒子が軟化し始めるまで加熱した後、密閉容器の一端を解放し、該樹脂粒子を密閉容器の圧力よりも低圧の雰囲気下に放出して該樹脂粒子を発泡させ、発泡粒子を得る工程を含むポリ(3−ヒドロキシアルカノエート)樹脂発泡粒子の製造方法であって、
    発泡剤がジメチルエーテル、ジエチルエーテルおよびメチルエチルエーテルからなる群より選ばれる少なくとも1種であるポリ(3−ヒドロキシアルカノエート)樹脂発泡粒子の製造方法。
  2. ポリ(3−ヒドロキシアルカノエート)が、n=1および3である繰り返し単位を含むポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシヘキサノエート)である請求項1記載のポリ(3−ヒドロキシアルカノエート)樹脂発泡粒子の製造方法。
  3. ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシヘキサノエート)の共重合成分の組成比が、ポリ(3−ヒドロキシブチレート)/ポリ(3−ヒドロキシヘキサノエート)=99/1〜80/20(モル比)である請求項2記載のポリ(3−ヒドロキシアルカノエート)樹脂発泡粒子の製造方法。
  4. 発泡剤がジメチルエーテルである請求項1〜3の何れか1項に記載のポリ(3−ヒドロキシアルカノエート)樹脂発泡粒子の製造方法。
  5. ポリ(3−ヒドロキシアルカノエート)樹脂発泡粒子が示差走査熱量測定法によるDSC曲線において2つ以上の融点を示す結晶構造を有し、その最高温側の融点をTm1としたとき、発泡する前にポリ(3−ヒドロキシアルカノエート)樹脂単独体で同様の示差走査熱量測定法により測定した場合の最高温側の融点Tm2が、Tm Tm +5℃であることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載のポリ(3−ヒドロキシアルカノエート)樹脂発泡粒子の製造方法
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