JP5119585B2 - 冷間鍛造性に優れた素材の製造方法 - Google Patents
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Description
ここで球状化焼きなまし処理は、パーライトのラメラー組織中の炭化物(セメンタイト)を球状化してこれを細かく分散させるもので、その熱処理のためには長い時間を要する。
ところが従来にあっては通常の球状化焼きなまし処理によっては炭化物が十分に球状化及び分散せず、そのため冷間鍛造加工を高い加工率で行った場合等には加工割れを起こし易い問題が生じていた。
その対策として、球状化焼きなまし処理の際の徐冷時の冷却速度を遅くするなどによって対応しているが、この場合球状化焼きなまし処理に要する時間が更に長時間となり、このことが製造コストを高める大きな要因となっていた。
尚本発明に対する先行技術として下記特許文献1に開示されたものがある。
但しこの特許文献1に開示のものは熱間鍛造温度が800℃以上等製造条件が異なり、本発明のような組織を得ることはできない。
そしてその後の空冷によって変態しフェライト・パーライト粒12となる。
図中14はフェライトを、また16はパーライトを示している。
ところが従来の製造方法においては、この球状化焼きなまし処理によってセメンタイトが十分に球状化して分散せず、このことが冷間鍛造用の素材に十分な変形能を付与できず、冷間鍛造時の割れの原因となっていた。
このときフェライト14,オーステナイト20ともに扁平な形状となる。
この扁平となった粒24は、その後の空冷によってオーステナイト20がパーライト26に変態する。
図において28はその空冷によって変態したパーライト26とフェライト14とから成る扁平なパーライト変態後の粒を表している。
加えてフェライト14が扁平な形状をなしていてラメラーを分断しているため、そのフェライト14による分断によってラメラーの長さはより短くなる。
そのため、その後において焼きなまし処理を行ったとき、ラメラーが短いことによってラメラー組織におけるセメンタイトが良好に球状化して分散し、ラメラー組織をあまり残さない軟らかい粒となって変形抵抗が小さく変形能の高い素材を与える。
或いはまた焼きなまし処理の時間を長くした場合には、従来に増して高い変形能を冷間鍛造用の素材に与えることができる。
C:0.1〜0.6%
冷間鍛造用の素材の組織がフェライト・パーライト組織となるようにC量を0.1〜0.6とする必要がある。
Siはフェライト層の強度確保のために0.03%以上含有させる必要がある。
ただし0.6%を超えて含有させると塑性加工性が低下するので上限を0.6%とする。
Mnはパーライト層のラメラーを微細化させるために0.1%以上含有させる。
ただし1.0%を超えて含有させると塑性加工性が低下するため上限を1.0%とする。
Crは0.1%以上含有させることで強度を確保することができる。
ただし1.5%を超えて含有させると塑性加工性が低下するので上限を1.5%とする。
Moは0.01%以上含有させることで強度を確保することができる。
ただし0.5%を超えて含有させると塑性加工性が低下するため上限を0.5%とする。
Niは0.01%以上含有させることで強度を確保することができる。
ただし3%を超えて含有させると塑性加工性が低下するので上限を3%とする。
Alは0.01%以上含有させることでAlNによる結晶粒微細化の働きを行わせることができる。
ただしその効果は0.5%で飽和するので上限を0.5%とする。
AlNによる結晶粒微細化の働きのため0.003%以上含有させる。
一方0.03%以上含有させようとしても含有させることが困難のため、その上限を0.03%とする。
Tiは0.001以上含有させることで結晶粒を微細化することができる。
ただしその効果は0.01%で飽和するので上限を0.01%とする。
Bは0.0005%以上含有させることで結晶粒を微細化することができる。
ただしその効果は0.0020%で飽和するため上限を0.0020%とする。
Nbは0.01%以上含有させることで結晶粒を微細化することができる。
ただしその効果は0.09%で飽和するので上限を0.09%とする。
オーステナイトを鍛造時に再結晶させず細長い形態とするため、820℃以下で鍛造を行う必要がある。好ましくはオーステナイト組織を分断するフェライトが存在する780℃以下の温度で鍛造を行う。
本発明では820℃以下の温度で鍛造を行うことで効果を発揮するが、その鍛造加工時の温度が低い場合には変形抵抗が高くなるため、加工しにくくなる温度の200℃以上の温度で鍛造を行う。
パーライト組織のラメラーが分断されて炭化物が球状化し易くなるようにするため、0.3以上のひずみが必要である。ここでひずみは真ひずみで、下記により定義される。
ひずみ=絶対値|ln(加工後の長さ/加工前の長さ)|
820℃以下で塑性加工されているため、加工ひずみが残留して硬い。この加工ひずみを除去するためには690℃以上に加熱する。
一方焼なまし温度が780℃よりも高い場合には、球状化した炭化物がオーステナイトに固溶する。組織がオーステナイト単層とならないようにするために本発明では750℃以下の温度で焼なましを行う。
表1に示す化学組成の鋼材にて鍛造により直径33mmの丸棒を製造した。
次いでφ24×50mmの丸棒試験片に機械加工後、減面率20%(ひずみ0.2),30%(ひずみ0.4),65%(ひずみ1.1)にて表2に示す各種鍛造温度で前方押出(鍛造加工)を実施した。
その後図2に示す条件で焼なまし処理を行い、引張り試験片に加工した。そしてその試験片を用いて引張り試験を実施した。
一方図2(ロ)は、押出材を表2に示す各種焼なまし温度まで昇温させた後その温度に5時間保持し、その後650℃まで1時間当り20℃の冷却速度で徐冷してその後空冷を行うもので、表2中SAで表してある。
表2には鍛造温度,焼なまし処理のパターン,焼なまし温度等と併せて引張り試験の結果、詳しくは引張り強さと絞り値が併せて示してある。
また比較例Bでは同じく鍛造温度が1150℃と高く、そのためその後において焼なまし処理を施しても引張り強さが高い値を保持するとともに絞り値が低く、変形能が不十分である。
比較例Cは比較例Bと同じ鋼5を用いて比較例Bと同じ1150℃で鍛造を実施し、その後に図2(ロ)のSAの焼なまし処理を施しているが、同様に引張り強さの値が高くまた絞り値も低い値であって、変形能が不十分である。
一方比較例Fは同じ鋼5を用い、且つ本発明で規定するひずみ0.3より大きいひずみを加えて鍛造加工を行っているにも拘わらず、その後の焼なまし温度が本発明の上限値である750℃を超えて高い温度であるため、引張り強さ,絞りの値がともに悪く、変形能が不十分である。
他方比較例Gでは、本発明の鍛造加工,焼なましの条件を満たしているものの、用いた鋼8のC含有量が本発明の上限値である0.6%よりも高いため、引張り強さ,絞り値ともに悪く、変形能が不十分である。
本発明例において、LA処理したものとSA処理したものとの比較から明らかなように、SA処理したものはLA処理したものに比べて引張り強さが低い値を、また絞り値が高い値を示しており、LA処理したものに比べて高い変形能を示している。
即ち、本発明では従来の球状化焼なまし処理であるSA処理よりも低い温度で且つ処理時間を短くした場合でも、冷間鍛造用の素材に対して十分な変形能を付与することができるとともに、かかるLA処理に替えてSA処理を施した場合には、更に優れた冷間鍛造性を素材に付与することができる。
Claims (2)
- 質量%でC:0.1〜0.6%,Si:0.03〜0.6%,Mn:0.1〜1.0%,Cr:0.1〜1.5%,Mo:0.01〜0.5%,Ni:0.01〜3%,Al:0.01〜0.5%,N:0.003〜0.03%を含有した鋼材を200℃以上820℃以下の温度で且つひずみ0.3以上で鍛造加工し、その後690℃以上750℃以下の温度で焼きなましすることを特徴とする素材を製造する方法であり、冷間鍛造加工において変形抵抗が小さく、高い変形能を有し、冷間鍛造性に優れた特性を有する素材の製造方法。
- 請求項1の各成分に加えて更に質量%でTi:0.001〜0.01%,B:0.0005〜0.0020%,Nb:0.01〜0.09%の1種若しくは2種以上を含有した鋼材を200℃以上820℃以下の温度で且つひずみ0.3以上で鍛造加工し、その後690℃以上750℃以下の温度で焼きなましすることを特徴とする素材を製造する方法であり、冷間鍛造加工において変形抵抗が小さく、高い変形能を有し、冷間鍛造性に優れた特性を有する素材の製造方法。
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