JP5192883B2 - マルチ形空気調和機 - Google Patents
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Description
このようなマルチ形空気調和機は、たとえば、ビル等の多数の部屋(室内機設置箇所)を持つところで用いられるので、室外機と室内機との距離が長くなる。これもあいまって各室内機と室外機とを接続する配管長が長くなるので、封入される冷媒の量が多くなる。
このため、圧縮機側に戻ってくる液冷媒の量も必然的に多くなるので、それが圧縮機まで戻る可能性が多くなる。
また、室内機が多数備えられているので、たとえば、一斉に何台かの室内機がOFFされる、あるいは設定温度に到達する等による室内負荷の急変動、すなわち、低下等があると、液冷媒が室内機にて蒸発させきれない事態がある。このように膨張弁開度とシステムの運転状態とが乖離すると、液冷媒が圧縮機にまで流入する事態となる。
したがって、液冷媒が圧縮機まで戻らないようにするため種々の工夫が提案され、かつ、用いられている。
たとえば、室内負荷の急激な低下が発生すると、膨張弁の開度を絞って液冷媒を室内機にて蒸発させるように制御する。
あるいは、圧縮機の吸入側に気液分離して液冷媒を貯留する大容量のアキュームレータを設置することにより回避する。
このように低圧圧力が急激に低下して所定の圧力値よりも低下すると、圧縮機の故障につながるので、保護のため圧縮機を停止させざるを得ない状況となる。圧縮機が停止されると、冷媒の循環が無くなるので、室内機での空調性能が低下し、室内の快適性が損なわれることとなる。
この場合、室外機内に大きなアキュームレータを設置するスペースを確保しなければならず、室外機を小型コンパクト化する上でのネックとなる。また、アキュームレータを小型化し、あるいは、無くし、コストダウンすることも困難となる。
すなわち、本発明にかかるマルチ形空気調和機は、圧縮機を有する少なくとも1台の室外機に対して、それぞれ冷媒の流量調整および冷媒の減圧膨張用の室内膨張弁を有する複数台の室内機が並列に接続されるとともに運転を制御する制御部を備えているマルチ形空気調和機であって、前記制御部には、前記圧縮機へ吸入される冷媒の圧力である低圧圧力が所定の制御圧力を超えるように、かつ、該低圧圧力が前記制御圧力を超えた場合に前記圧縮機へ流入する液冷媒の量が所定範囲となるように、前記室内膨張弁の開度を制御する安定運転モードが備えられ、該安定運転モードは、その開始条件が満たされていると、低圧が限界圧力未満か否かを判定し、限界圧力未満の場合、前記室内膨張弁を全開として所定時間運転し、低圧が限界圧力以上になると、前記室内膨張弁を全開か否かを判断し、全開の場合は、全開とする前の開度に一定量のパルスを加算した開度として運転し、全開でない場合は、低圧圧力が所定の制御圧力を超えている否かを判定し、所定の制御圧力未満の場合は、前記室内膨張弁を数パルスずつ加算した開度として運転し、低圧圧力を所定の制御圧力以上に保ち、前記安定運転モードでは、前記室内膨張弁の開度を圧力状態に応じて設定された所定時間毎に、圧力状態に応じて設定された所定量ずつ変化させることを特徴とする。
本発明によれば、マルチ形空気調和機の運転が開始され、安定運転モードが開始されると、室内膨張弁の開度は、安定運転モードによって圧縮機へ吸入される冷媒の圧力である低圧圧力が所定の制御圧力を超えるように制御される。すなわち、低圧圧力センサによって測定される低圧圧力が制御圧力よりも低い場合には、安定運転モードは室内膨張弁の開度を開くように調整し、圧縮機に戻る冷媒量を増加させるので、低圧圧力を制御圧力の近傍の大きさとすることができる。
制御圧力を適宜選択することにより、圧縮機の故障につながる低圧圧力となることを抑制できるので、保護のため圧縮機を停止させざるを得ない状況となる事態を防止できる。これによって、室内機での空調性能が低下することはなく、室内の快適性を維持することができる。
圧縮機へ流入する液冷媒の量は、たとえば、圧縮機の下部温度から低圧圧力における冷媒の飽和温度を減算したものであるドーム下過熱度、圧縮機の吸入管温度から低圧圧力における冷媒の飽和温度を減算した吸入過熱度、圧縮機の吐出管温度から高圧圧力における冷媒の飽和温度を減算した吐出過熱度、外気温度、室内機の熱交温度等のいずれか、あるいは、これ以外のものを用いて推定することができる。
この場合、所定時間および所定量は、対象となるマルチ形空気調整装置の構成等によって適宜選択されることとなるが、所定量については、制御対象の開度範囲の5〜10%とするのが好ましい。また、所定時間については、たとえば、5〜30秒が好ましく、10〜20秒がより好ましい。
上記数値については、一般的なマルチ形空気調和機の据付条件において、室内膨張弁の動作が温度や圧力へ影響が表れるまでに要する時間(試験にて測定)から決定している。下限以下では、温度や圧力へ反応が現れず、次回動作を決定できない。上限は反応が確実に表れる時間で、できるだけ早い時間であることが望ましい。
なお、低圧圧力は変化速度が速いので、所定時間は液冷媒の量のそれよりも短くするのが好ましい。また、所定量についてもより大きくするのが好ましい。
また、大型のアキュームレータを設置する必要がなくなり、アキュームレータの小型化によりコストダウンを図ることができるとともに、室外機の小型コンパクト化を達成することができる。また、アキュームレータをなくすことも可能となる。
本発明によれば、制御圧力よりも低い所定の限界圧力を設定し、安定運転モードは低圧圧力がこの限界圧力を超えて低下すると、室内膨張弁を全開するようにしているので、低圧圧力が急激に低下するような事態であっても圧縮機の故障につながる低圧圧力となることを抑制できる。
本発明によれば、このように条件の厳しい場合でも、液冷媒の戻りを確実に許容される所定量に抑制することができる。
また、大型のアキュームレータを設置する必要がなくなり、アキュームレータの小型化によりコストダウンを図ることができるとともに、室外機の小型コンパクト化を達成することができる。さらに、場合によってアキュームレータをなくすことも可能となる。
図1には、本実施形態に係るマルチ形空気調和機1の冷媒サイクル図が示されている。
マルチ形空気調和機1には、1台の室外機3と、この室外機3から導出されるガス側配管5および液側配管7と、このガス側配管5および液側配管7間に分岐器9を介して並列に接続される複数台の室内機11A,11Bと、が備えられている。
また、室外機3には、室外熱交換器19に外気を送風する室外ファン41が設けられている。
ガス側配管5および液側配管7は、現場での据え付け施工時に、室外機3とそれに接続される室内機11A,11Bとの間の距離に応じてその長さが適宜決定される。
ガス側配管5および液側配管7の途中には、適宜数の分岐器9が設けられ、この分岐器9を介してそれぞれ適宜台数の室内機11A,11Bが接続されている。
これによって、密閉された1系統の冷凍サイクル43が構成されている。
室内機11A,11Bには、冷媒と室内空気とを熱交換させて室内の空調に供する室内熱交換器45と、冷房用の室内電動膨張弁(室内膨張弁;EEVC)47と、室内熱交換器45を通して室内空気を循環させる室内ファン49と、が備えられている。
室内電動膨張弁47は、暖房時、凝縮器として機能する室内熱交換器45の出口における冷媒の過冷却度が一定値となるよう、開度が制御される。
制御部51には、たとえば、安定運転モード53からの指示に応じて各室内電動膨張弁(EEVC)47に対して所定の弁開度を指令する機能を有する膨張弁開度指令部54が設けられている。
圧縮機13の下方には、圧縮機13の本体(ドーム)の外部温度を計測するドーム下温度センサ57が設けられている。
吐出配管37Aには、吐出配管37Aの温度を計測する吐出管温度センサ59と、圧縮機13から吐出される高圧の冷媒ガスの圧力を計測する高圧圧力センサ61と、が設けられている。
室内熱交換器45には、熱交換部材の温度を計測する熱交温度センサ67が設けられている。
圧縮機13により圧縮された高温高圧の冷媒ガスは、吐出配管37Aに吐出される。この冷媒ガスは油分離器15で冷媒中に含まれる潤滑油が分離された後、四方切換弁17によりガス配管37B側に循環される。
ガス配管37Bを通る冷媒ガスは、室外熱交換器19で室外ファン41により送風される外気と熱交換されて凝縮液化され、液冷媒とされる。
この液冷媒は、過冷却コイル21で冷却された後、室外電動膨張弁23を通過し、レシーバ25に一旦貯留されて循環量が調整される。
所定の過冷却度が付与された液冷媒は、液側操作弁35を経て室外機3から液側配管7へと導出される。液側配管7に導出された液冷媒は、分岐器9により各室内機11A,11Bの分岐液配管7A,7Bへと分流される。
室内熱交換器45では、室内ファン49により循環される室内空気と冷媒とが熱交換され、室内空気は冷却されて室内の冷房に供される。
一方、冷媒はガス化され、分岐ガス配管5A,5Bを経て分岐器9に至り、他の室内機からの冷媒ガスとガス側配管5で合流される。
アキュームレータ31では、冷媒ガス中に含まれている液分が分離され、ガス分のみが圧縮機13へと吸入され、この冷媒が圧縮機13において再び圧縮される。
以上のサイクルを繰り返すことによって、冷房運転が行われる。
圧縮機13により圧縮された高温高圧の冷媒ガスは、吐出配管37Aに吐出される。この冷媒ガスは油分離器15で冷媒中に含まれる潤滑油が分離された後、四方切換弁17によりガス配管37D側に循環される。
この冷媒は、ガス側操作弁33、ガス側配管5を経て室外機3から導出され、更に、分岐器9、室内側の分岐ガス配管5A,5Bを経て室内機11A,11Bに導入される。
室内機11A,11Bに導入された高温高圧の冷媒ガスは、室内熱交換器45で室内ファン49によって循環される室内空気と熱交換され、室内空気は加熱されて室内の暖房に供される。
なお、暖房時、室内機11A,11Bでは、凝縮器として機能する室内熱交換器45の出口における冷媒の過冷却度が一定値となるよう、室内電動膨張弁(EEVC)47の開度が制御される。
この液冷媒は、液配管37Cを介して室外電動膨張弁(EEVH)23に至り、ここで断熱膨張され、過冷却コイル21を経て室外熱交換器19に流入する。
室外熱交換器19では、室外ファン41により送風される外気と冷媒とが熱交換され、冷媒は外気から吸熱して蒸発気化される。
アキュームレータ31では、冷媒ガス中に含まれる液分が分離されてガス分のみが圧縮機13へと吸入され、この冷媒は圧縮機13で再び圧縮される。
以上のサイクルを繰り返すことによって、暖房運転が行われる。
ここでは、室内電動膨張弁47の開度は、全開がたとえば、470パルスで、通常の開度制御は20パルスから60パルスの間(すなわち、制御される開度範囲は40パルスである。)行われるものとして説明する。また、初期開度は、たとえば、50パルスに設定されている。
また、低圧圧力LSは、目標とする制御圧力は、たとえば、0.2MPaを、限界圧力は、たとえば、0.1MPaとしている。
この限界圧力は、低圧圧力LSの降下速度によっては圧縮機13へ悪影響を与える可能性が出てくる領域に近づくことになる値として設定されている。この0.1MPaあるいは0.2MPaは例示しているだけであり、マルチ形空気調和機1の構成、使用条件等、種々の状況によって適宜選択される。
開始条件としては、液バックが発生し易い、たとえば、冷房運転で、圧縮機13が起動される場合、あるいは、この条件に、たとえば、低い外気温である等液バックの可能性がある条件を加えてもよい。
そして、安定運転モード53は、低圧圧力LSが0.1MPaを超えているか否かを判断する(ステップS3)。
ステップS3で低圧圧力LSが、0.1MPa以下となる(NO)場合、低圧圧力が降下し、圧縮機13へ悪影響を与える可能性が出てくる領域に近づくと判断し、膨張弁開度指令部54を介して室内電動膨張弁47の開度を全開とする(ステップS4)。
ステップS4で短時間、たとえば、5秒全開されると、ステップS3に戻る。
ステップS6で、室内電動膨張弁47の開度が全開である(YES)場合、すなわち、ステップS4で全開とされている場合、室内電動膨張弁47の開度は、全開とする前の開度に10パルス加算した開度とされ(ステップS7)、ステップS3に戻る。
ここで、10パルス、すなわち、制御される開度範囲の25%に相当する量としているのは、低圧圧力LSが急激に降下する状況下であっても、再び0.1MPaを超えて低下することがないようにするためである。
ステップS8で低圧圧力LSが、0.2MPa以下となる(NO)場合、現在の室内電動膨張弁47の開度に対して、たとえば、3パルス(所定量)加算し、その開度を、たとえば、10秒間(所定時間)指令する(ステップS9)。
なお、この加算量については、制御対象の開度範囲の5〜10%とするのが好ましい。
また、10秒間の指令は、変化速度が速い低圧圧力の変動に十分対応することができる。この継続時間は、たとえば、5〜30秒が好ましく、10〜20秒がより好ましい。たとえば、5秒よりも短くすると開度の加算量とも関連するが、制御圧力を挟んだ変動が大きくなり制御の安定化が損なわれる可能性がある。
たとえば、図4の領域Cのように10秒毎開度が3パルス加算される。ただし、制御される開度範囲の最大値である60パルスに到達すると、図4の領域Dのようにそれ以上とはされず、60パルスを維持する。
ステップS10で、ドーム下SHが20秒間継続して20℃以上となっている、たとえば、図4の領域Eの状態である(YES)と判定した場合、冷媒量が不足気味であると判断し、室内電動膨張弁47の開度を開ける方向とする。
この場合、室内電動膨張弁47の開度が60パルス未満であるかを判定する(ステップS11)。
20秒が経過すると、ステップS3に戻り、上記を繰り返す。
たとえば、図4の領域Eのように20秒毎開度が3パルス加算される。
ステップS11で開度が60パルス以上である(NO)、すなわち、60パルスである場合、この開度を保持し(ステップS13)、ステップS3に戻り、上記を繰り返す。
ステップS14で、ドーム下SHが20秒間継続して10℃以下となっている(YES)と判定した場合、予期以上の液冷媒が圧縮機13に吸入されている可能性があると判断し、室内電動膨張弁47の開度を絞る方向とする。
これは、たとえば、図3の過熱度変化軌跡KKのような状態である。
この場合、室内電動膨張弁47の開度が20パルスを超えているかを判定する(ステップS15)。
20秒が経過すると、ステップS3に戻り、上記を繰り返す。
ステップS15で開度が20パルス以上である(NO)、すなわち、20パルスである場合、この開度を保持し(ステップS17)、ステップS3に戻り、上記を繰り返す。
ただし、制御される開度範囲の最小値である20パルスに到達すると、図3の領域Hのようにそれ以下とはされず、20パルスを維持する。
領域Hの最後で、低圧圧力LSが0.2MPaよりも小さくなったので、ステップS9によって開度が3パルス加算されて23パルスとなっている。
また、20秒間の指令は、ステップS9よりも長くされているが、これは液冷媒の量的変化は、低圧圧力の変化速度よりも穏やかであるので、制御の安定化を考慮したものである。また、この観点から、加減算する開度をステップS9よりも小さくするようにしてもよい。
これにより、保護のため圧縮機13を停止させざるを得ない状況となる事態を防止できるので、室内機での空調性能が低下することはなく、室内の快適性を維持することができる。
また、大型のアキュームレータを設置する必要がなくなり、アキュームレータの小型化によりコストダウンを図ることができるとともに、室外機3の小型コンパクト化を達成することができる。また、制御の精度を向上すれば、アキュームレータをなくすことも可能となる。
たとえば、上記実施形態では、室外機3に並列に接続される室内機11A,11Bの台数について、2台以上であれば何台であってもよく、特に制限されるものではない。
また、室外機3の台数は1台以上であれば何台であってもよく、特に制限されるものではない。
さらに、上記実施形態で例示されている具体的な時間や温度等の数値は、一例を示すものにすぎず、それに限定されるものでないことは言うまでもない。
3 室外機
11A,11B 室内機
13 圧縮機
47 室内電動膨張弁
51 制御部
53 安定運転モード
Claims (2)
- 圧縮機を有する少なくとも1台の室外機に対して、それぞれ冷媒の流量調整および冷媒の減圧膨張用の室内膨張弁を有する複数台の室内機が並列に接続されるとともに運転を制御する制御部を備えているマルチ形空気調和機であって、
前記制御部には、前記圧縮機へ吸入される冷媒の圧力である低圧圧力が所定の制御圧力を超えるように、かつ、該低圧圧力が前記制御圧力を超えた場合に前記圧縮機へ流入する液冷媒の量が所定範囲となるように、前記室内膨張弁の開度を制御する安定運転モードが備えられ、
該安定運転モードは、その開始条件が満たされていると、低圧が限界圧力未満か否かを判定し、限界圧力未満の場合、前記室内膨張弁を全開として所定時間運転し、低圧が限界圧力以上になると、前記室内膨張弁を全開か否かを判断し、全開の場合は、全開とする前の開度に一定量のパルスを加算した開度として運転し、全開でない場合は、低圧圧力が所定の制御圧力を超えている否かを判定し、所定の制御圧力未満の場合は、前記室内膨張弁を数パルスずつ加算した開度として運転し、低圧圧力を所定の制御圧力以上に保ち、
前記安定運転モードでは、前記室内膨張弁の開度を圧力状態に応じて設定された所定時間毎に、圧力状態に応じて設定された所定量ずつ変化させることを特徴とするマルチ形空気調和機。 - 前記安定運転モードは、前記室外機が冷房運転を行うとともに前記圧縮機が起動される場合に行われることを特徴とする請求項1に記載のマルチ形空気調和機。
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