本発明に係るパワーデバイス及びパワーデバイス駆動装置の概略構成は、図55に示した構成と同様であり、本発明に係る高圧側駆動部101の主要部の構成は、図56に示した構成と同様であり、本発明に係る高圧側駆動部101の概略レイアウトは、図57に示したレイアウトと同様である。
図55を参照して、パワースイッチングデバイスであるNチャネル絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(以下「IGBT」と称す)51,52は、主電源である高電圧HVをスイッチングする。ノードN30には負荷が接続されている。フリーホイールダイオードD1,D2は、ノードN30に接続された負荷による逆起電圧からIGBT51,52を保護する。
パワーデバイス駆動装置100は、IGBT51,52を駆動し、IGBT51を制御する高圧側制御入力HINと、IGBT52を制御する低圧側制御入力LINとに従って動作する。また、パワーデバイス駆動装置100は、IGBT51を駆動する高圧側駆動部101と、IGBT52を駆動する低圧側駆動部102と、制御入力処理部103とを有している。
ここで、例えばIGBT51,52が同時にオン状態になった場合、IGBT51,52に貫通電流が流れ、負荷に電流が流れなくなり、好ましくない状態になる。制御入力処理部103は、制御入力HIN,LINにより、そのような状態が引き起こされることを防ぐなどの処理を高圧側駆動部101及び低圧側駆動部102に対して行っている。
また、パワーデバイス駆動装置100は、IGBT51のエミッタ電極に接続されたVS端子と、コンデンサC1を介してIGBT51のエミッタ電極に接続されたVB端子と、IGBT51の制御電極に接続されたHO端子と、IGBT52のエミッタ電極に接続されたCOM端子と、コンデンサC2を介してIGBT52のエミッタ電極に接続されたVCC端子と、IGBT52の制御電極に接続されたLO端子と、GND端子とを備えている。ここで、VSは、高圧側駆動部101の基準電位となる高圧側浮遊オフセット電圧である。VBは、高圧側駆動部101の電源となる高圧側浮遊供給絶対電圧であり、図示しない高圧側浮遊電源から供給される。HOは、高圧側駆動部101による高圧側駆動信号出力である。COMは、共通接地である。VCCは、低圧側駆動部102の電源となる低圧側固定供給電圧であり、図示しない低圧側固定供給電源から供給される。LOは、低圧側駆動部102による低圧側駆動信号出力である。GNDは、接地電位である。
コンデンサC1,C2は、高圧側駆動部101及び低圧側駆動部102に供給される電源電圧をパワーデバイスの動作に伴う電位変動に追随させるために設けられている。
以上のような構成により、制御入力HIN,LINに基づくパワーデバイスによる主電源のスイッチングが行われる。
ところで、高圧側駆動部101は、回路の接地電位GNDに対して電位的に浮いた状態で動作するので、高圧側回路へ駆動信号を伝達するためのレベルシフト回路を有する構成となっている。
図56を参照して、スイッチング素子である高耐圧MOS11は、上記したレベルシフト回路の役割を担っている。スイッチング素子である高圧側駆動信号出力用のCMOS回路(以下「CMOS」と称す)12は、pMOSFET及びnMOSFETから成り、高圧側駆動信号HOを出力する。レベルシフト抵抗13は、CMOS12のゲート電位を設定するためのものであり、プルアップ抵抗に相当する役割を果たしている。制御ロジック回路90は、抵抗、インバータ、及びインターロック等によって構成されている。
高耐圧MOS11は、高圧側制御入力HINに従い、CMOS12のスイッチングを行う。CMOS12は、高圧側浮遊供給絶対電圧VBと高圧側浮遊オフセット電圧VSとの間の電圧をスイッチングして高圧側駆動信号出力HOに駆動信号を出力し、外部に接続されたパワーデバイスの高圧側スイッチング素子(IGBT51)を駆動する。
ここで、以降の説明においては、CMOS12及びレベルシフト抵抗13を総合して、「高圧側駆動回路」と称する。
図57を参照して、図56に示したCMOS12及びレベルシフト抵抗13から成る高圧側駆動回路は、高圧島と称される領域R1内に形成されている。また、図56に示した高耐圧MOS11は、領域R2内に形成されている。領域R1,R2の各外周を接地電位GNDに接続されたアルミニウム配線16,17でそれぞれ取り囲むことによって、シールドがなされている。
以下、本発明に係る半導体装置の実施の形態について、詳細に説明する。
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る高圧側駆動部101の構造を示す断面図であり、図57に示したラインB−Bに沿った位置に関する断面図に相当する。図1を参照して、p-基板200の上面内には、p+分離201、n-型不純物領域110、及びn型不純物領域117,121が形成されている。n型不純物領域121の上面内には、pウェル131が形成されている。p+分離201はp-基板200に達しており、p-基板200の電位は、回路上最も低い電位(GND電位又はCOM電位)となっている。また、高耐圧MOS11のn+型ソース領域112の下部にpウェル111が形成されており、pウェル111は、ゲート絶縁膜115aを介してゲート電極116aの下部に達し、高耐圧MOS11のチャネル領域を形成している。さらに、pウェル111の上面内には、ソース電極114に接するようにp+型不純物領域113及びn+型ソース領域112が形成されている。また、n型不純物領域117の上面内には、高耐圧MOS11のドレイン電極119に接するようにn+型ドレイン領域118が形成されている。
高耐圧MOS11のドレイン電極119は、CMOS12を構成するpMOSFET及びnMOSFETの各ゲート電極125,136に接続されており、また、レベルシフト抵抗13を介してpMOSFETのソース電極128及びVB端子に接続されている。
一方、CMOS12が形成されるn型不純物領域121の上面内には、pMOSFETのソース電極128に接するようにp+型ソース領域126及びn+型不純物領域127が形成されており、ドレイン電極123に接するようにp+型ドレイン領域122が形成されている。ドレイン電極123は、HO端子に接続されている。n型不純物領域121の上面上には、ゲート絶縁膜124を介してpMOSFETのゲート電極125が形成されている。
また、nMOSFETはpウェル131内に形成され、pウェル131の上面内には、nMOSFETのドレイン電極138に接するようにn+型ドレイン領域137が形成され、ソース電極134に接するようにn+型ソース領域133及びp+型不純物領域132が形成されている。ソース電極134はVS端子に接続されており、ドレイン電極138はHO端子に接続されている。pウェル131の上面上には、ゲート絶縁膜135を介してnMOSFETのゲート電極136が形成されている。
p-基板200内には、n型不純物領域121よりも不純物濃度が高いn+型不純物領域(以下「n+埋め込み層」と称す)20が形成されている。n+埋め込み層20は、n型不純物領域121の底面に接して、n型不純物領域121よりも深く形成されている。一例として、n+埋め込み層20の不純物濃度のピーク値は、1017cm-3のオーダーである。
図2の(A)には、従来の半導体装置に関する図61の(A)に対応させて、本実施の形態1に係るCMOS部の簡易な構造を示している。図2の(A)では、説明の都合上、nMOSFETとpMOSFETとの形成箇所の関係が、図1に示した関係とは逆になっている。図2の(A)に示したpMOSバックゲート電極(pBG)は、図1に示したソース電極128に相当する。図2の(B)には、図2の(A)に示したpMOSバックゲート電極の形成箇所に関して、n+型不純物領域127の上面からp-基板200の深さ方向に向かっての不純物濃度プロファイルを示している。図2の(B)と図61の(B)とを比較すると明らかなように、図2の(B)のn+埋め込み層20が形成されている領域では、図61の(B)のn型不純物領域121が形成されている領域よりもn型不純物の不純物濃度が高く、しかも、n+埋め込み層20を形成した場合には、p-基板200内のより深い領域にまでn型不純物が導入されている。
本実施の形態1に係る半導体装置では、n型不純物領域121の底面に接してn+埋め込み層20が形成されているため、n+埋め込み層20が形成されていない従来の半導体装置(図58参照)と比較すると、p-基板200と、n型不純物領域121及びn+埋め込み層20と、pウェル131とから成るpnp構造に起因する寄生pnpバイポーラトランジスタのベース抵抗が低減される。従って、回生期間に高圧側浮遊オフセット電圧VSの負変動が生じた場合であっても、寄生pnpバイポーラトランジスタの動作が抑制される。その結果、p-基板200と、n型不純物領域121及びn+埋め込み層20と、pウェル131と、n+型ソース領域133とから成るpnpn構造に起因する寄生サイリスタの動作開始電圧の絶対値を、従来の半導体装置よりも高めることができ、ひいてはCMOS12のラッチアップ破壊耐量を高めることができる。
以下、この効果について詳細に説明する。図60では従来の半導体装置に関してCMOS部の簡易な構造を示したが、図60に示されているn型不純物領域121の下にn+埋め込み層20を追加形成したものが、本実施の形態1に係る半導体装置の構造に相当する。図3は、n+埋め込み層20が追加形成された図60の構造に関して、VS電極にVS負電圧を印加した場合に、bulk電極、pMOSソース電極、及びnMOSソース電極の各電極を流れる電流の値を示したグラフである。図3によると、VS負電圧が−80V程度の時に、nMOSソース電極を流れる電流は、pMOSソース電極を流れる電流と同程度となっている。
図4は、図3に示したVS負電圧が−52Vの時の電流分布を示した図である。図4によると、VS負電圧が−52Vの時にはnMOSソース電極に電流は流れておらず、p-基板200と、n型不純物領域121及びn+埋め込み層20と、pウェル131と、n+型ソース領域133とから成るpnpn構造に起因する寄生サイリスタは動作していないことが分かる。
図5は、図3に示したVS負電圧が−109Vの時の電流分布を示した図である。図5によると、VS負電圧が−109Vの時にはnMOSソース電極に電流が流れており、上記の寄生サイリスタが動作していることが分かる。
従来の半導体装置ではVS負電圧が−40Vの時に寄生サイリスタが動作していたのに対し(図64参照)、本実施の形態1に係る半導体装置では、VS負電圧が−52Vの時でも寄生サイリスタは動作していない(図4参照)。従って、本実施の形態1に係る半導体装置では、従来の半導体装置よりも寄生サイリスタの動作開始電圧の絶対値が高められていることになる。
図6は、図1に対応させて、本実施の形態1の変形例に係る高圧側駆動部101の構造を示す断面図である。図1に示したn+埋め込み層20の代わりに、n+埋め込み層20よりも不純物濃度が低いn型不純物領域(以下「n埋め込み層」と称す)21が形成されている。一例として、n埋め込み層21の不純物濃度のピーク値は、1015cm-3のオーダーである。n埋め込み層21は、n+埋め込み層20と同様に、n型不純物領域121の底面に接してp-基板200内に形成されている。
図7の(A)には、図2の(A)に対応させて、本実施の形態1の変形例に係るCMOS部の簡易な構造を示している。また、図7の(B)には、図2の(B)に対応させて、図7の(A)に示したpMOSバックゲート電極の形成箇所に関して、n+型不純物領域127の上面からp-基板200の深さ方向に向かっての不純物濃度プロファイルを示している。図7の(B)と図61の(B)とを比較すると、n埋め込み層21を形成した場合には、p-基板200内のより深い領域にまでn型不純物が導入されていることが分かる。
本実施の形態1の変形例に係る半導体装置によれば、n型不純物領域121の底面に接してn埋め込み層21が形成されているため、従来の半導体装置と比較すると、p-基板200と、n型不純物領域121及びn埋め込み層21と、pウェル131とから成るpnp構造に起因する寄生pnpバイポーラトランジスタのベース抵抗が低減される。その結果、上記と同様の理由により、CMOS12のラッチアップ破壊耐量を高めることができる。
実施の形態2.
図8は、図1に対応させて、本発明の実施の形態2に係る高圧側駆動部101の構造を示す断面図である。図1に示したn+埋め込み層20の代わりに、n+埋め込み層20よりも不純物濃度が高いn+型不純物領域(以下「n+埋め込み層」と称す)22が形成されている。一例として、n+埋め込み層22の不純物濃度のピーク値は、1018cm-3のオーダーである。n+埋め込み層22は、n+埋め込み層20と同様に、n型不純物領域121の底面に接してp-基板200内に形成されている。
図9の(A)には、図2の(A)に対応させて、本実施の形態2に係るCMOS部の簡易な構造を示している。また、図9の(B)には、図2の(B)に対応させて、図9の(A)に示したpMOSバックゲート電極の形成箇所に関して、n+型不純物領域127の上面からp-基板200の深さ方向に向かっての不純物濃度プロファイルを示している。図9の(B)と図2の(B)とを比較すると、n+埋め込み層22はn+埋め込み層20よりも不純物濃度のピーク値が高いことが分かる。
本実施の形態2に係る半導体装置によれば、n+埋め込み層22は上記実施の形態1に係るn+埋め込み層20よりも高濃度であるため、上記実施の形態1に係る半導体装置と比較すると、CMOS12のラッチアップ破壊耐量をさらに高めることができる。
以下、この効果について詳細に説明する。図10は、図3に対応させて、n+埋め込み層22が追加形成された図60の構造に関して、VS電極にVS負電圧を印加した場合に、bulk電極、pMOSソース電極、及びnMOSソース電極の各電極を流れる電流の値を示したグラフである。図10によると、VS負電圧が−400V程度の時に、nMOSソース電極を流れる電流は、pMOSソース電極を流れる電流と同程度となっている。
図11は、図10に示したVS負電圧が−269Vの時の電流分布を示した図である。図11によると、VS負電圧が−269Vの時にはnMOSソース電極に電流は流れておらず、p-基板200と、n型不純物領域121及びn+埋め込み層22と、pウェル131と、n+型ソース領域133とから成るpnpn構造に起因する寄生サイリスタは動作していないことが分かる。
図12は、図10に示したVS負電圧が−730Vの時の電流分布を示した図である。図12によると、VS負電圧が−730Vの時にはnMOSソース電極に電流が流れており、上記の寄生サイリスタが動作していることが分かる。
上記実施の形態1に係る半導体装置ではVS負電圧が−109Vの時に寄生サイリスタが動作していたのに対し(図5参照)、本実施の形態2に係る半導体装置ではVS負電圧が−269Vの時でも寄生サイリスタは動作していない(図11参照)。従って、本実施の形態2に係る半導体装置では、上記実施の形態1に係る半導体装置よりも寄生サイリスタの動作開始電圧の絶対値が高められている。
実施の形態3.
図13は、図1に対応させて、本発明の実施の形態3に係る高圧側駆動部101の構造を示す断面図である。図1に示したn+埋め込み層20の代わりに、n型不純物領域121よりも不純物濃度が高いn+型不純物領域(以下「n+埋め込み層」と称す)23と、n+埋め込み層23よりも不純物濃度が低いn型不純物領域(以下「n埋め込み層」と称す)24とが形成されている。一例として、n+埋め込み層23の不純物濃度のピーク値は1018cm-3のオーダーであり、n埋め込み層24の不純物濃度のピーク値は1015cm-3のオーダーである。n+埋め込み層23は、n+埋め込み層20と同様に、n型不純物領域121の底面に接してp-基板200内に形成されている。また、n埋め込み層24は、n型不純物領域121の底面に接しつつn+埋め込み層23の周囲を覆って、p-基板200内に形成されている。
図14の(A)には、図2の(A)に対応させて、本実施の形態3に係るCMOS部の簡易な構造を示している。また、図14の(B)には、図2の(B)に対応させて、図14の(A)に示したpMOSバックゲート電極の形成箇所に関して、n+型不純物領域127の上面からp-基板200の深さ方向に向かっての不純物濃度プロファイルを示している。図14の(B)と図9の(B)とを比較すると分かるように、本実施の形態3に係るn+埋め込み層23及びn埋め込み層24は、上記実施の形態2に係るn+埋め込み層22とほぼ同様の不純物濃度プロファイルを有している。従って、本実施の形態3に係る半導体装置は、上記実施の形態2に係る半導体装置と同程度のラッチアップ破壊耐量を有している。
本実施の形態3に係る半導体装置では、高濃度のn+埋め込み層23の周囲を覆って低濃度のn埋め込み層24が形成されており、n埋め込み層24はn型不純物領域121に接触している。また、本実施の形態3に係る半導体装置において、p-基板200とn埋め込み層24との間に逆バイアスの電圧が印加された場合にn埋め込み層24内に拡がる空乏層の幅は、上記実施の形態1において、p-基板200とn+埋め込み層20との間に逆バイアスの電圧が印加された場合にn+埋め込み層20内に拡がる空乏層の幅よりも広い。
従って、本実施の形態3に係る半導体装置によれば、p-基板200と、n型不純物領域121、n+埋め込み層23、及びn埋め込み層24との間に逆バイアスの電圧が印加された場合、n型不純物領域121内に拡がる空乏層と、n埋め込み層24内に拡がる空乏層とが、n埋め込み層24の曲面部において互いに繋がる。しかも、n埋め込み層24内に拡がる空乏層の幅は、n+埋め込み層20内に拡がる空乏層の幅よりも広い。その結果、上記実施の形態1に係る半導体装置よりも電界を効果的に緩和できるため、接合耐圧を高めることができる。
図15は、上記実施の形態1に係る半導体装置におけるp-基板200とn型不純物領域121及びn+埋め込み層20との間の接合耐圧と、本実施の形態3に係る半導体装置におけるp-基板200とn型不純物領域121及びn埋め込み層24との間の接合耐圧とを比較した結果を示すグラフである。図15によると、本実施の形態3に係る半導体装置は、上記実施の形態1に係る半導体装置よりも高い接合耐圧が得られていることが分かる。
実施の形態4.
図16は、従来の半導体装置に関する図67に対応して、本発明の実施の形態4に係る半導体装置に関し、図59に示した構造のうち高耐圧ダイオード14が形成されている領域の構造を抜き出して詳細に示した断面図である。図16では、説明の都合上、アノードとカソードとの形成箇所の関係が、図59に示した関係とは逆になっている。
図16を参照して、p-基板200の上面内には、p+分離144と、p+分離144に繋がるpウェル144bと、pウェル144bに繋がるn-型不純物領域143と、n-型不純物領域143に繋がるn型不純物領域121とが形成されている。pウェル144bの上面内にはp+型不純物領域144aが形成されており、n型不純物領域121の上面内にはn+型不純物領域141が形成されている。高耐圧ダイオード14はアノード電極145及びカソード電極142を備えており、アノード電極145はp+型不純物領域144aに接続されており、カソード電極142はn+型不純物領域141に接続されている。pウェル144b上には絶縁膜115aを介して電極116aが形成されており、アノード電極145は電極116aにも接続されている。n型不純物領域121上には絶縁膜115bを介して電極116bが形成されており、カソード電極142は電極116bにも接続されている。
n型不純物領域(以下「n埋め込み層」と称す)26が、n型不純物領域121の底面に接してp-基板200内に形成されている。一例として、n埋め込み層26の不純物濃度のピーク値は、1015cm-3のオーダーである。n埋め込み層26の幅L1はn型不純物領域121の幅L2よりも小さく、その結果、n埋め込み層26は、n-型不純物領域143の側面(図16における左側面)よりもアノード電極145側に突出しないように形成されている。
図16に示した構造に関して、アノード電極145とカソード電極142との間に高電圧を印加した時の電界の主なピークは、n型不純物領域121の右下端部箇所でのピークE0と、n埋め込み層26の右下端部箇所でのピークE4となる。
図17は、図16に示したn埋め込み層26の幅L1とn型不純物領域121の幅L2との関係(L1−L2)を横軸にとって、L1−L2と耐圧との相関を示したグラフである。図17に示したグラフによると、L1=L2又はL1>L2の場合には従来の半導体装置(図67参照)よりも耐圧が低下し、一方、L1<L2の場合には従来の半導体装置よりも高い耐圧が得られることが分かる。
図18の(A)には、L1>L2の条件下での、本実施の形態4に係る高耐圧ダイオード部の簡易な構造を示している。また、図18の(B)には、図18の(A)中に矢印で示した箇所に関して、n型不純物領域121の上面からp-基板200の深さ方向に向かっての不純物濃度プロファイルを示している。
図19は、図18の(A)に示した構造に関して、アノード電極145とカソード電極142との間に高電圧を印加した時の電界を示すグラフである。図19には、n-型不純物領域143の上面における電界(Si表面)と、n型不純物領域121の底面とp-基板200との界面における電界(n/p-基板接合深さ)と、n埋め込み層26の底面とp-基板200との界面における電界(n埋め込み/p-基板接合深さ)とを示している。図19を従来の半導体装置に関する図68と比較すると、図18の(A)に示した構造では、従来の半導体装置よりもピークE0が極端に低くなっていることが分かる。しかし、図19に示したグラフによると、ピークE0での電界値よりもピークE4での電界値のほうがはるかに大きい。従って、図18の(A)に示した構造では、電界のピークはn埋め込み層26の右下端部箇所でのピークE4となる。
図20は、図18の(A)に示した構造に関して、アノード電極145とカソード電極142との間に高電圧を印加した時の電位分布(等電位線)及び電流分布を示す図である。図20によると、ピークE4に対応する箇所では、等電位線の曲率が大きく、しかも隣接する等電位線同士の間隔が狭くなっていることが分かる。また、図20を従来の半導体装置に関する図69と比較すると、図20におけるピークE4部分での等電位線同士の間隔は、図69におけるピークE0部分での等電位線同士の間隔よりも狭くなっていることが分かる。従って、図20におけるピークE4部分での電界値は、図69におけるピークE0部分での電界値よりも高くなると推測され、結果として、図18の(A)に示した構造では、従来の半導体装置に対して耐圧の向上が図られていないこととなる。
一方、図21の(A)には、L1<L2の条件下での、本実施の形態4に係る高耐圧ダイオード部の簡易な構造を示している。また、図21の(B)には、図21の(A)中に矢印で示した箇所に関して、n型不純物領域121の上面からp-基板200の深さ方向に向かっての不純物濃度プロファイルを示している。
図22は、図21の(A)に示した構造に関して、アノード電極145とカソード電極142との間に高電圧を印加した時の電界を示すグラフである。図22には、図19と同様に、Si表面での電界と、n/p-基板接合深さでの電界と、n埋め込み/p-基板接合深さでの電界とを示している。図22を図68と比較すると、図21の(A)に示した構造では、従来の半導体装置よりもピークE0がわずかに低くなっていることが分かる。また、図22に示したグラフから明らかなように、ピークE4での電界値はピークE0での電界値にほぼ等しい。
図23は、図21の(A)に示した構造に関して、アノード電極145とカソード電極142との間に高電圧を印加した時の電位分布(等電位線)及び電流分布を示す図である。図23と図69とを比較すると、図21の(A)に示した構造では、従来の半導体装置に比べて、ピークE0部分での等電位線の曲率が非常に小さくなっていることが分かる。これにより、ピークE0部分での電界値が小さくなることが推測される。また、図23と図20とを比較すると、図21の(A)に示した構造では、図18の(A)に示した構造に比べて、ピークE4部分での等電位線の曲率が非常に小さくなっていることが分かる。これにより、ピークE4部分での電界値が小さくなることが推測される。
このように本実施の形態4に係る半導体装置(図21の(A)に示した構造)によれば、図23に示したピークE0部分及びピークE4部分における電界値が、図69に示したピークE0部分における電界値よりも小さくなる。その結果、臨界電界強度に至るアノード−カソード間電圧を、従来の半導体装置よりも高めることができ、半導体装置の高耐圧化を図ることができる。
なお、以上の説明では、高耐圧ダイオードを例にとり本実施の形態4に係る発明について説明したが、本実施の形態4に係る発明は、高耐圧ダイオードに限らず、nチャネル高耐圧MOSFET、pチャネル高耐圧MOSFET、nチャネルIGBT、又はpチャネルIGBTにも適用することが可能である。
また、本実施の形態4に係る発明は、上記実施の形態1〜3に係る発明と組み合わせて適用することも可能である。例えば上記実施の形態1に係る発明と組み合わせる場合は、図1に示したn+埋め込み層20又は図6に示したn埋め込み層21と、図16に示したn埋め込み層26とが、n型不純物領域121の底面において互いに接続されることとなる。
実施の形態5.
図24は、図16に対応して、本発明の実施の形態5に係る半導体装置の構造を示す断面図である。図16に示した構造を基礎として、n埋め込み層26よりも不純物濃度が高いn+型不純物領域(以下「n+埋め込み層」と称す)27が、n埋め込み層26内に形成されている。一例として、n+埋め込み層27の不純物濃度のピーク値は、1018cm-3のオーダーである。n+埋め込み層27の幅L3はn埋め込み層26の幅L1よりも小さく、その結果、n+埋め込み層27は、n埋め込み層26の側面(図24における右側面)よりもアノード電極145側に突出しないように形成されている。
図25は、図24に示したn埋め込み層26の幅L1とn+埋め込み層27の幅L3との関係(L3−L1)を横軸にとって、L3−L1と耐圧との相関を示したグラフである。図25に示したグラフによると、L3<L1の場合には高い耐圧が確保されているが、L3が大きくなってL3−L1の値が大きくなるにつれて、耐圧が急激に低下することが分かる。
図26は、L3=L1の場合の耐圧波形と、L3<L1の場合の耐圧波形とを比較した結果を示すグラフである。図26に示したグラフからも明らかなように、L3<L1とした場合のほうが、L3=L1の場合よりも耐圧が高い。
図27の(A)には、L3=L1の条件下での、本実施の形態5に係る高耐圧ダイオード部の簡易な構造を示している。また、図27の(B)には、図27の(A)中に矢印で示した箇所に関して、n型不純物領域121の上面からp-基板200の深さ方向に向かっての不純物濃度プロファイルを示している。
図28は、図27の(A)に示した構造に関して、アノード電極145とカソード電極142との間に高電圧を印加した時の電界を示すグラフである。図28には、図19と同様に、Si表面での電界と、n/p-基板接合深さでの電界と、n埋め込み/p-基板接合深さでの電界とを示している。図28を従来の半導体装置に関する図68と比較すると、図27の(A)に示した構造では、従来の半導体装置よりもピークE0がわずかに低くなっていることが分かる。しかし、図28に示したグラフによると、ピークE0での電界値よりもピークE4での電界値のほうが大きい。従って、図27の(A)に示した構造では、電界のピークはn埋め込み層26の右下端部箇所でのピークE4となる。
図29は、図27の(A)に示した構造に関して、アノード電極145とカソード電極142との間に高電圧を印加した時の電位分布(等電位線)及び電流分布を示す図である。図29によると、ピークE4に対応する箇所では、等電位線の曲率が大きく、しかも隣接する等電位線同士の間隔が狭くなっていることが分かる。また、図29を従来の半導体装置に関する図69と比較すると、図29におけるピークE4部分での等電位線同士の間隔は、図69におけるピークE0部分での等電位線同士の間隔よりも狭くなっていることが分かる。従って、図29におけるピークE4部分での電界値は、図69におけるピークE0部分での電界値よりも高くなると推測され、結果として、図27の(A)に示した構造では、従来の半導体装置に対して耐圧の向上が図られていないこととなる。
一方、図30の(A)には、L3<L1の条件下での、本実施の形態5に係る高耐圧ダイオード部の簡易な構造を示している。また、図30の(B)には、図30の(A)中に矢印で示した箇所に関して、n型不純物領域121の上面からp-基板200の深さ方向に向かっての不純物濃度プロファイルを示している。
図31は、図30の(A)に示した構造に関して、アノード電極145とカソード電極142との間に高電圧を印加した時の電界を示すグラフである。図31には、図28と同様に、Si表面での電界と、n/p-基板接合深さでの電界と、n埋め込み/p-基板接合深さでの電界とを示している。図31を図68と比較すると、図30の(A)に示した構造では、従来の半導体装置よりもピークE0がわずかに低くなっていることが分かる。また、図31を図28と比較すると、図31におけるピークE4での電界値は、図28におけるピークE4での電界値よりも低くなっていることが分かる。また、図31に示したグラフにおいては、ピークE4での電界値はピークE0での電界値にほぼ等しい。
図32は、図30の(A)に示した構造に関して、アノード電極145とカソード電極142との間に高電圧を印加した時の電位分布(等電位線)及び電流分布を示す図である。図32と図69とを比較すると、図30の(A)に示した構造では、従来の半導体装置に比べて、ピークE0部分での等電位線の曲率が大幅に小さくなっていることが分かる。これにより、ピークE0部分での電界値が小さくなることが推測される。また、図32と図29とを比較すると、図30の(A)に示した構造では、図27の(A)に示した構造に比べて、ピークE4部分での等電位線の曲率が大幅に小さくなっていることが分かる。これにより、ピークE4部分での電界値が小さくなることが推測される。
このように本実施の形態5に係る半導体装置(図30の(A)に示した構造)によれば、図32に示したピークE0部分及びピークE4部分における電界値が、図69に示したピークE0部分における電界値よりも小さくなる。その結果、臨界電界強度に至るアノード−カソード間電圧を、従来の半導体装置よりも高めることができ、半導体装置の高耐圧化を図ることができる。
また、L3<L1の条件を満たすように、n埋め込み層26の内部にn+埋め込み層27が形成されている。従って、p-基板200と、n型不純物領域121、n+埋め込み層27、及びn埋め込み層26との間に逆バイアスの電圧が印加された場合、n型不純物領域121内に拡がる空乏層と、n埋め込み層26内に拡がる空乏層とが、n埋め込み層26の曲面部において互いに繋がる。しかも、n埋め込み層26内に拡がる空乏層の幅は、L3=L1とした場合にn+埋め込み層27内に拡がる空乏層の幅よりも広い。その結果、L3=L1とした場合よりも電界を効果的に緩和できるため、接合耐圧を高めることができる。
さらに、本実施の形態5に係る半導体装置では、n埋め込み層26内にn+埋め込み層27が形成されている。そのため、n+埋め込み層27が形成されていない上記実施の形態4に係る半導体装置と比較すると、p-基板200と、n型不純物領域121、n埋め込み層26、及びn+埋め込み層27と、pウェル131とから成るpnp構造に起因する寄生pnpバイポーラトランジスタのベース抵抗が低減される。従って、回生期間に高圧側浮遊オフセット電圧VSの負変動が生じた場合であっても、寄生pnpバイポーラトランジスタの動作が抑制される。その結果、p-基板200と、n型不純物領域121、n埋め込み層26、及びn+埋め込み層27と、pウェル131と、n+型ソース領域133とから成るpnpn構造に起因する寄生サイリスタの動作開始電圧の絶対値を、上記実施の形態4に係る半導体装置よりも高めることができ、ひいてはCMOS12のラッチアップ破壊耐量を高めることもできる。
なお、以上の説明では、高耐圧ダイオードを例にとり本実施の形態5に係る発明について説明したが、本実施の形態5に係る発明は、高耐圧ダイオードに限らず、nチャネル高耐圧MOSFET、pチャネル高耐圧MOSFET、nチャネルIGBT、又はpチャネルIGBTにも適用することが可能である。
また、本実施の形態5に係る発明は、上記実施の形態1〜3に係る発明と組み合わせて適用することも可能である。例えば上記実施の形態1に係る発明と組み合わせる場合は、図1に示したn+埋め込み層20又は図6に示したn埋め込み層21と、図24に示したn埋め込み層26とが、n型不純物領域121の底面において互いに接続されることとなる。
実施の形態6.
図33は、従来の半導体装置に関する図70に対応して、本発明の実施の形態6に係る半導体装置に関し、図58に示した構造のうち高耐圧MOS11が形成されている領域の構造を抜き出して示した断面図である。図33では、説明の都合上、ドレイン領域118とソース領域112との形成箇所の関係が、図58に示した関係とは逆になっている。
p-基板200の上面内には、n型不純物領域117とn型不純物領域121とが互いに離間して形成されており、分割リサーフ構造を形成している。n型不純物領域117の上面内には、高耐圧MOS11のドレイン電極119に接するように、n+型ドレイン領域118が形成されている。n型不純物領域121の上面内には、CMOS12を構成するpMOSFETのソース電極(以下「VB電極」と称す)128に接するように、n+型不純物領域127が形成されている。図1に示したように、VB電極128はVB端子に接続されている。
n型不純物領域(以下「n埋め込み層」と称す)29が、n型不純物領域121の底面に接してp-基板200内に形成されている。一例として、n埋め込み層29の不純物濃度のピーク値は、1015cm-3のオーダーである。図33において、n埋め込み層29の幅をL4とし、n型不純物領域121の左側面からn型不純物領域117の左側面までの寸法をL5とすると、L4<L5の条件を満たすように、n埋め込み層29の幅が設定される。その結果、n埋め込み層29はn型不純物領域117に接触しない。但し、幅L4が大きくなってn埋め込み層29がn型不純物領域117に近付くにつれて、VB電極128とドレイン電極119との間の耐圧(分割nウェル間耐圧)が低くなる。従って、設計仕様で定められる所望のVB−ドレイン間耐圧(本実施の形態6では一例として15V程度以上とする)を確保できるように、n埋め込み層29とn型不純物領域117との間隔を決定する必要がある。
図33に示した構造に関して、VB電極128とドレイン電極119との間に15V程度の電圧を印加し、ゲート電極116aに繋がる電極116aaとソース電極114とを短絡して、VB電極128とソース電極114との間(VB−ソース間)に高電圧を印加した時の電界の主なピークは、p-基板200におけるピークE2と、n型不純物領域121の右下端部箇所でのピークE1と、n型不純物領域117の右下端部箇所でのピークE3と、n埋め込み層29の右下端部箇所でのピークE5となる。
図34は、図33に示した幅L4と寸法L5との関係(L4−L5)を横軸にとって、L4−L5とVB−ソース間耐圧との相関を示したグラフである。図34に示したグラフによると、L4−L5の値をゼロより小さくすることで、つまりL4<L5とすることで、従来の半導体装置よりもVB−ソース間耐圧が高まることが分かる。また、L4−L5の値が大きくなるに従ってVB−ソース間耐圧も上昇することが分かる。但し、L4−L5の値が大きくなりすぎると、15V程度の低いVB電位を印加した場合でも、n型不純物領域121から拡がる空乏層とn型不純物領域117から拡がる空乏層とが互いに繋がってしまい、VB−ドレイン間耐圧が15V程度に満たなくなる。そのため、その範囲(図34に示した破線よりも右側の範囲)でのデータはプロットしていない。
図35の(A)には、L4<L5の条件下、かつVB−ドレイン間耐圧が15V程度以上の条件下での、本実施の形態6に係る高耐圧MOS部の簡易な構造を示している。また、図35の(B)には、図35の(A)中に矢印で示した箇所に関して、n型不純物領域121の上面からp-基板200の深さ方向に向かっての不純物濃度プロファイルを示している。
図36は、図35の(A)に示した構造に関して、VB電極128とドレイン電極119との間に15V程度の電圧を印加し、ゲート電極116aに繋がる電極116aaとソース電極114とを短絡して、VB電極128とソース電極114との間に高電圧を印加した時の電界を示すグラフである。図36には、p-基板200の上面における電界(Si表面)と、n型不純物領域121,117とp-基板200との界面における電界(n/p-基板接合深さ)と、n埋め込み層29とp-基板200との界面における電界(n埋め込み/p-基板接合深さ)とを示している。図36と図71とを参照すると、図35の(A)に示した構造では、従来の半導体装置と比較して、ピークE1,E2が大幅に低くなり、ピークE3がわずかに低くなっていることが分かる。また、図36に示したグラフから明らかなように、ピークE5での電界値は、ピークE3での電界値にほぼ等しい。図36におけるピークE3,E5での電界値は、図71におけるピークE2での電界値よりも低い。
図37は、図35の(A)に示した構造に関して、VB電極128とソース電極114との間に高電圧を印加した時の電位分布(等電位線)及び電流分布を示す図である。図37と図72とを比較すると、図35の(A)に示した構造では、n埋め込み層29が追加して形成されていることに起因して、従来の半導体装置に比べてピークE1部分での等電位線の曲率が大幅に小さくなっていることが分かる。その結果、ピークE1部分において互いに隣接する等電位線同士の間隔が拡がり、ピークE1部分での電界値が小さくなる。また、ピークE1部分での等電位線の曲率が小さくなることにより、ピークE2部分において互いに隣接する等電位線同士の間隔が拡がり、その結果、ピークE2部分での電界値が小さくなる。さらに、ピークE2部分で等電位線同士の間隔が拡がることにより、ピークE3部分での等電位線の曲率も小さくなる。そのため、ピークE3部分においても互いに隣接する等電位線同士の間隔が拡がり、ピークE3部分での電界値も小さくなる。
このように本実施の形態6に係る半導体装置によれば、図36に示したピークE3,E5における電界値が、図71に示したピークE2,E3における電界値よりも小さくなる。その結果、臨界電界強度に至るVB−ソース間電圧を、従来の半導体装置よりも高めることができ、半導体装置の高耐圧化を図ることができる。
なお、以上の説明では、nチャネル高耐圧MOSFETを例にとり本実施の形態6に係る発明について説明したが、本実施の形態6に係る発明は、nチャネル高耐圧MOSFETに限らず、pチャネル高耐圧MOSFET、nチャネルIGBT、又はpチャネルIGBTにも適用することが可能である。
また、本実施の形態6に係る発明は、上記実施の形態1〜3に係る発明と組み合わせて適用することも可能である。例えば上記実施の形態1に係る発明と組み合わせる場合は、図1に示したn+埋め込み層20又は図6に示したn埋め込み層21と、図33に示したn埋め込み層29とが、n型不純物領域121の底面において互いに接続されることとなる。
実施の形態7.
図38は、図33に対応して、本発明の実施の形態7に係る半導体装置の構造を示す断面図である。図33に示した構造を基礎として、n埋め込み層29よりも不純物濃度が高いn+型不純物領域(以下「n+埋め込み層」と称す)30が、n埋め込み層29内に形成されている。一例として、n+埋め込み層30の不純物濃度のピーク値は、1018cm-3のオーダーである。n+埋め込み層30の幅L6は、n埋め込み層29の幅L4及びn型不純物領域121の幅L7よりも小さい。つまり、n+埋め込み層30は、n埋め込み層29の側面(図38における右側面)及びn型不純物領域121の側面(図38における右側面)よりもn型不純物領域117側に突出しないように形成されている。
図39は、図38に示したn+埋め込み層30の幅L6とn埋め込み層29の幅L4との関係(L6−L4)を横軸にとって、L6−L4と耐圧との相関を示したグラフである。図39に示したグラフによると、L6<L4の場合には高い耐圧が確保されているが、L6が大きくなってL6−L4の値が大きくなるにつれて、耐圧が急激に低下することが分かる。
図40の(A)には、L6<L4の条件下での、本実施の形態7に係る高耐圧MOS部の簡易な構造を示している。また、図40の(B)には、図40の(A)中に矢印で示した箇所に関して、n型不純物領域121の上面からp-基板200の深さ方向に向かっての不純物濃度プロファイルを示している。図40の(B)と図35の(B)とを比較すると、本実施の形態7に係る半導体装置では、n+埋め込み層30を形成したことにより、上記実施の形態6に係る半導体装置に比べて不純物濃度が高くなっていることが分かる。
図41は、図40の(A)に示した構造に関して、VB電極128とドレイン電極119との間に15V程度の電圧を印加し、ゲート電極116aに繋がる電極116aaとソース電極114とを短絡して、VB電極128とソース電極114との間に高電圧を印加した時の電界を示すグラフである。図41には、図36と同様に、Si表面での電界と、n/p-基板接合深さでの電界と、n埋め込み/p-基板接合深さでの電界とを示している。図41と図36とを比較すると分かるように、本実施の形態7に係る半導体装置における電界の特性は、上記実施の形態6に係る半導体装置における電界の特性とほぼ同様である。つまり、上記実施の形態6に係る半導体装置と同様に、本実施の形態7に係る半導体装置によっても、図41に示したピークE3,E5における電界値が、図71に示したピークE2,E3における電界値よりも小さくなる。その結果、臨界電界強度に至るVB−ソース間電圧を、従来の半導体装置よりも高めることができ、半導体装置の高耐圧化を図ることができる。
図42は、図40の(A)に示した構造に関して、VB電極128とソース電極114との間に高電圧を印加した時の電位分布(等電位線)及び電流分布を示す図である。図42と図72とを比較すると、図40の(A)に示した構造では、n埋め込み層29が追加して形成されていることに起因して、従来の半導体装置に比べてピークE1部分での等電位線の曲率が大幅に小さくなっていることが分かる。その結果、ピークE1部分において互いに隣接する等電位線同士の間隔が拡がり、ピークE1部分での電界値が小さくなる。また、ピークE1部分での等電位線の曲率が小さくなることにより、ピークE2部分において互いに隣接する等電位線同士の間隔が拡がり、その結果、ピークE2部分での電界値が小さくなる。さらに、ピークE2部分で等電位線同士の間隔が拡がることにより、ピークE3部分での等電位線の曲率も小さくなる。そのため、ピークE3部分においても互いに隣接する等電位線同士の間隔が拡がり、ピークE3部分での電界値も小さくなる。
このように本実施の形態7に係る半導体装置によれば、L6<L4の条件を満たすように、n埋め込み層29の内部にn+埋め込み層30が形成されている。従って、p-基板200と、n型不純物領域121、n+埋め込み層30、及びn埋め込み層29との間に逆バイアスの電圧が印加された場合、n型不純物領域121内に拡がる空乏層と、n埋め込み層29内に拡がる空乏層とが、n埋め込み層29の曲面部において互いに繋がる。しかも、n埋め込み層29内に拡がる空乏層の幅は、L6=L4とした場合にn+埋め込み層30内に拡がる空乏層の幅よりも広い。その結果、L6=L4とした場合よりも電界を効果的に緩和できるため、接合耐圧を高めることができる。
また、本実施の形態7に係る半導体装置では、n埋め込み層29内にn+埋め込み層30が形成されている。そのため、n+埋め込み層30が形成されていない上記実施の形態6に係る半導体装置と比較すると、p-基板200と、n型不純物領域121、n埋め込み層29、及びn+埋め込み層30と、pウェル131とから成るpnp構造に起因する寄生pnpバイポーラトランジスタのベース抵抗が低減される。従って、回生期間に高圧側浮遊オフセット電圧VSの負変動が生じた場合であっても、寄生pnpバイポーラトランジスタの動作が抑制される。その結果、p-基板200と、n型不純物領域121、n埋め込み層29、及びn+埋め込み層30と、pウェル131と、n+型ソース領域133とから成るpnpn構造に起因する寄生サイリスタの動作開始電圧の絶対値を、上記実施の形態6に係る半導体装置よりも高めることができ、ひいてはCMOS12のラッチアップ破壊耐量を高めることもできる。
なお、以上の説明では、nチャネル高耐圧MOSFETを例にとり本実施の形態7に係る発明について説明したが、本実施の形態7に係る発明は、nチャネル高耐圧MOSFETに限らず、pチャネル高耐圧MOSFET、nチャネルIGBT、又はpチャネルIGBTにも適用することが可能である。
また、本実施の形態7に係る発明は、上記実施の形態1〜3に係る発明と組み合わせて適用することも可能である。例えば上記実施の形態1に係る発明と組み合わせる場合は、図1に示したn+埋め込み層20又は図6に示したn埋め込み層21と、図38に示したn埋め込み層29とが、n型不純物領域121の底面において互いに接続されることとなる。
実施の形態8.
上記実施の形態1〜3に係る発明は、パワーデバイス駆動装置の低圧側駆動部に適用することも可能である。
図43は、本発明の実施の形態8に係る低圧側駆動部102の構造を示す断面図である。図43では、上記実施の形態3に係る発明を低圧側駆動部102に適用した例を示している。pMOSFETのp+型ドレイン領域122及びnMOSFETのn+型ドレイン領域137は、LO端子に接続されている。pMOSFETのp+型ソース領域126は、VCC端子に接続されている。nMOSFETのn+型ソース領域133は、COM端子に接続されている。n+埋め込み層23は、n型不純物領域121の底面に接してp-基板200内に形成されている。また、n埋め込み層24は、n型不純物領域121の底面に接しつつn+埋め込み層23の周囲を覆って、p-基板200内に形成されている。
低圧側駆動部102には、p+型ドレイン領域122、n型不純物領域121、pウェル131、及びn+型ソース領域133から成るpnpn構造に起因する寄生サイリスタが存在している。従って、LO端子にVCC電圧よりも高いサージ電圧が印加されると、LO端子に接続されているp+型ドレイン領域122からn型不純物領域121へホールが流れ込む。そして、そのホール電流がpウェル131内に流れ込むことによって、n型不純物領域121と、pウェル131と、n+型ソース領域133とから成る寄生npnバイポーラトランジスタ、及び、p+型ドレイン領域122と、n型不純物領域121と、pウェル131とから成る寄生pnpバイポーラトランジスタが動作し、上記の寄生サイリスタがラッチアップに至る場合がある。
ところが、本実施の形態8に係る半導体装置によると、n型不純物領域121の底面に接してn+埋め込み層23及びn埋め込み層24が形成されているため、上記の寄生pnpバイポーラトランジスタのベース抵抗が低減される。従って、LO端子にVCC電圧よりも高いサージ電圧が印加された場合であっても、上記の寄生pnpバイポーラトランジスタの動作が抑制され、その結果、上記の寄生サイリスタのラッチアップを抑制することができる。
また、上記実施の形態3に係る発明を低圧側駆動部102に適用した構造(図43)によれば、上記実施の形態3で説明した理由と同様の理由により、上記実施の形態1に係る発明を低圧側駆動部102に適用した構造と比較して、接合耐圧を高めることができる。
実施の形態9.
図44には、図2の(A)に対応させて、本発明の実施の形態9に係る半導体装置におけるCMOS部の簡易な構造を示す断面図である。本実施の形態9に係る半導体装置では、上記実施の形態1に係る半導体装置におけるn+埋め込み層20の代わりに、n+埋め込み層20よりも高濃度のn+型不純物領域(以下「n+埋め込み層」と称す)31が形成されている。一例として、n+埋め込み層31の不純物濃度のピーク値は、1018cm-3のオーダーである。
n+埋め込み層31は、pウェル131の上面内に形成されているn+型ソース領域133の下方を完全に覆いつつ、n型不純物領域121の底面に接してp-基板200内に形成されている。図44に示した例では、n+埋め込み層31の幅をXとし、pウェル131の幅をYとすると、X>Yの関係が成り立っている。
図60では従来の半導体装置に関してCMOS部の簡易な構造を示したが、図60に示したn型不純物領域121の下にn+埋め込み層31を追加形成したものが、本実施の形態9に係る半導体装置の構造に相当する。図45は、n+埋め込み層31が追加形成された図60の構造に関して、VS電極にVS負電圧を印加した場合の、図44に示した幅Xと幅Yとの関係(X−Y)と、寄生pnpnサイリスタの動作開始電圧との相関を示したグラフである。この寄生pnpnサイリスタは、p-基板200と、n型不純物領域121及びn+埋め込み層31と、pウェル131と、n+型ソース領域133とから成るpnpn構造に起因する寄生サイリスタである。図45に示したグラフの横軸はX−Yの値であり、縦軸は、寄生pnpnサイリスタが動作を開始した時のVS負電圧の値を−1倍した値(つまりVS負電圧の絶対値)である。
図45に示したグラフによると、X−Yの値が大きくなるほど、寄生pnpnサイリスタが動作を開始するVS負電圧の絶対値も大きくなることが分かる。つまり、n+埋め込み層31の幅Xが大きくなるほど、高圧側浮遊オフセット電圧VSの負変動に対するCMOS12のラッチアップ耐量が向上することが分かる。
図46は、n+埋め込み層31が追加形成された図60の構造に関して、VS電極にVS負電圧を印加した場合に、bulk電極、pMOSソース電極、及びnMOSソース電極の各電極を流れる電流の値を示したグラフである。図46によると、VS負電圧が−150V程度の時に、nMOSソース電極を流れる電流は、pMOSソース電極を流れる電流と同程度となっている。
図47は、図46に示したVS負電圧が−140Vの時の電流分布を示した図である。図47によると、VS負電圧が−140Vの時にはnMOSソース電極に電流は流れておらず、上記の寄生pnpnサイリスタは動作していないことが分かる。
図48は、図46に示したVS負電圧が−150Vの時の電流分布を示した図である。図48によると、VS負電圧が−150Vの時にはnMOSソース電極に電流が流れており、上記の寄生pnpnサイリスタが動作していることが分かる。
上記の通り、n+埋め込み層31の幅Xが大きくなるほど、高圧側浮遊オフセット電圧VSの負変動に対するCMOS12のラッチアップ耐量が向上する。しかし、幅Xを大きくしすぎると、ウェハ表面にnMOS等の能動素子を形成できない領域(無効領域)が増加し、結果としてチップサイズが大きくなってコストの上昇を招く。
図49に示した例では、n+埋め込み層31の幅Xが大きく、n+埋め込み層31はpウェル131の右側面よりも大きく右側に突出している。その結果、無効領域が増加し、チップサイズは大きくなる。
一方、図50に示した例では、n+埋め込み層31の幅Xが比較的小さく、n+埋め込み層31は、pウェル131の下方にのみ形成され、pウェル131の右側面を越えて右側には形成されていない。この場合、図49に示した構造よりも無効領域が減少するため、チップサイズも小さくなる。しかも、pウェル131の下方にn+埋め込み層31が形成されているということは、pウェル131内に形成されるn+型ソース領域133の下方はn+埋め込み層31によって確実に覆われているため、ラッチアップ耐量の向上という効果は維持されている。
図51には、図44に示した構造との比較のために、図44に示したn+埋め込み層31の代わりにn+埋め込み層32を形成した構造を示している。n+埋め込み層32は、n型不純物領域121の底面に接するように形成されているが、nMOSFETのn+型ソース領域133の下方を覆っておらず、pMOSFETのp+型ソース領域126やゲート領域の下方を覆っている。
図52は、n+埋め込み層32が追加形成された図60の構造に関して、VS電極にVS負電圧を印加した場合に、bulk電極、pMOSソース電極、及びnMOSソース電極の各電極を流れる電流の値を示したグラフである。図52によると、VS負電圧が−40V程度の時に、nMOSソース電極を流れる電流は、pMOSソース電極を流れる電流と同程度となっている。
図53は、図52に示したVS負電圧が−17Vの時の電流分布を示した図である。図53によると、VS負電圧が−17Vの時にはnMOSソース電極に電流は流れておらず、上記の寄生pnpnサイリスタは動作していないことが分かる。
図54は、図52に示したVS負電圧が−40Vの時の電流分布を示した図である。図54によると、VS負電圧が−40Vの時にはnMOSソース電極に電流が流れており、上記の寄生pnpnサイリスタが動作していることが分かる。
図52〜54の結果を考察すると、n+埋め込み層32を追加形成した場合であっても、n+埋め込み層32が形成されていない従来の半導体装置(図61参照)と同程度のラッチアップ耐量しか得られず、n+埋め込み層32を追加形成は有効ではないことがいえる。
つまり、pMOSFETのp+型ソース領域126やゲート領域の下方をn+埋め込み層32によって覆うのではなく、pウェル131の上面内に形成されているn+型ソース領域133の下方をn+埋め込み層31によって覆うのが効果的であり、これにより、高圧側浮遊オフセット電圧VSの負変動に対するCMOS12のラッチアップ耐量の向上を図ることができる。