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JP5189720B2 - 吹付け工法 - Google Patents

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JP5189720B2 JP2001252704A JP2001252704A JP5189720B2 JP 5189720 B2 JP5189720 B2 JP 5189720B2 JP 2001252704 A JP2001252704 A JP 2001252704A JP 2001252704 A JP2001252704 A JP 2001252704A JP 5189720 B2 JP5189720 B2 JP 5189720B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば、道路、鉄道、及び導水路等のトンネルにおいて、露出した地山面へ吹付けるときに使用する吹付け材料及びそれを用いた吹付け工法に関する。
なお、本発明ではセメントペースト、モルタル、及びコンクリートを総称してセメントコンクリートという。
また、本発明の部や%は特に規定のない限り質量基準である。
【0002】
【従来の技術とその課題】
従来、トンネル掘削等、露出した地山の崩落を防止するために急結剤をコンクリートに配合した急結性吹付けコンクリートの吹付け工法が行われている(特公昭60−4149号公報、特開平09−019910号公報、及び特開平10−087358号公報)。
これらの吹付け工法は、通常、掘削工事現場に設置した計量混合プラントで、セメント、骨材、及び水を混合して吹付けコンクリートを調製し、アジテータ車で運搬し、コンクリートポンプで圧送し、その途中に設けた合流管で、他方から圧送した急結剤と混合し、急結性吹付けコンクリートとして地山面に所定の厚みになるまで吹付ける工法である。
そして、これらの吹付け工法で使用する急結剤としては、カルシウムアルミネートに、アルカリ金属アルミン酸塩やアルカリ金属炭酸塩等を混合したものが使用されていた。
【0003】
しかしながら、最近、地山に付着せずに落下する急結性吹付けコンクリートの量と、吹付けた急結性吹付けコンクリートの量との割合であるリバウンド(跳ね返り)率や粉塵量がより少ない工法が求められるようになった。
また、作業性の面で、カルシウムアルミネートにアルカリ金属アルミン酸塩やアルカリ金属炭酸塩等を混合した急結剤よりもアルカリ性が小さい急結剤が求められるようになった。
【0004】
アルカリ性が小さい急結剤として、硫酸アルミニウムを主成分として懸濁液を使用したものが開発されているが、この懸濁液は粒子が沈降していることが多いため吹付け材料として使用するたびに攪拌等により懸濁液の沈降を防止させる必要があり、作業性が悪く、ホースやポンプなどに詰まりが生じ、また、急結性が小さく、急結性吹付けコンクリートの付着力が小さい場合があるという課題があった。
また、あらかじめ硫酸アルミニウムを懸濁した硫酸アルミニウム懸濁液の市販品は極めて高価であり、経済的でないという課題もあった。
【0005】
本発明者は、前記の課題を種々検討した結果、特定の吹付け材料を使用することにより、低アルカリで、吹付け時の付着性を向上し、リバウンド率を低減し、吹付け時の粉塵量を低減することが可能であるという知見を得て本発明を完成するに至った。
【0006】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明は(1’)増粘剤を含有してなるセメントコンクリートを圧送する途中で、(2’)(2’−1)硫酸アルミニウムと(2’−2)アルキルナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物類含有してなる減水剤と(2’−3)シリカフューム、フライアッシュ、高炉スラグ、ベントナイト、炭酸カルシウム、及びメタカオリンからなる群の1種以上の無機粉末と(2’−4)スラリー水を含有してなる急結剤スラリー混合し吹付けてなる吹付け工法であり、(1’)セメント100部に対して増粘剤0.02〜1部を含有してなるセメントコンクリートを圧送する途中で、(2’)(2’−1)硫酸アルミニウム100部と(2’−2)アルキルナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物類を含有してなる減水剤を、固形分換算で1〜30部と(2’−3)シリカフューム、フライアッシュ、高炉スラグ、ベントナイト、炭酸カルシウム、及びメタカオリンからなる群の1種以上の無機粉末10〜100部と(2’−4)スラリー水150部以上を含有してなる急結剤スラリーを、セメント100部に対して、固形分換算で3〜20部合し吹付けてなる吹付け工法であり、さらに、繊維を混合してなる該吹付け工法であり、硫酸アルミニウムが無水物である該吹付け工法であり、セメントコンクリートの水セメント比が35〜65%であり、セメントコンクリートの吹付け圧力が0.2〜0.6MPaであり、急結剤スラリーの圧送圧力がセメントコンクリートの圧送圧力より0.01〜0.3MPa高い該吹付け工法である。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の吹付け材料は、セメントコンクリート、硫酸アルミニウムスラリー、及び減水剤を含有してなるものである。
【0008】
本発明で使用するセメントとしては、通常用いられる、普通・早強・超早強等の各種ポルトランドセメントや、これらのポルトランドセメントに、高炉スラグ、フライアッシュ、又はシリカを混合した各種混合セメント、さらには、3CaO・SiO2と11CaO・7Al2O3・CaF2を主成分とする超速硬セメントなどが挙げられる。これらの中では、スランプロスが少ない面で、普通ポルトランドセメントが好ましく、繊維の分離防止効果が大きい面で、早強ポルトランドセメントが好ましい。
【0009】
本発明で使用する骨材は、吸水率が低くて、骨材強度が高いものが好ましく、細骨材率や骨材の最大寸法は吹付けできれば特に限定されるものではない。
細骨材としては、川砂、山砂、石灰砂、及び珪砂等が使用可能であり、粗骨材としては、川砂利、山砂利、及び石灰砂利等が使用可能である。
【0010】
本発明で使用するセメントコンクリートの水セメント比(W/C)は、35〜65%が好ましく、40〜60%がより好ましい。35%未満ではセメントコンクリートの粘性が大きくなり、作業性や圧送性が低下する場合があり、65%を超えると強度発現性に悪影響を与える場合がある。
【0011】
本発明において、セメントコンクリートを圧送し、吹付けセメントコンクリートとし、その圧送途中で急結剤スラリーを混合して急結性吹付けセメントコンクリートとする。
【0012】
本発明で使用する硫酸アルミニウムスラリー(以下、急結剤スラリーという)は、硫酸アルミニウムと水を含有するものである。
ここでいう急結剤スラリーとは、液状のものであり、懸濁状、水溶液いずれも含むものである。
本発明において、急結剤スラリーとしては、急結性や吹付け性状を向上できる面で、硫酸アルミニウム水溶液が好ましい
【0013】
硫酸アルミニウムとしては無水物と含水物があるが、本発明ではそのいずれも使用可能である。
硫酸アルミニウム無水物は、空気中の水分により潮解して圧送できない場合があるので、保管場所や添加機の内部では吸水しないようにする必要があり、硫酸アルミニウム含水物は吸水力が弱く、比較的、作業性や溶解性もよい。
硫酸アルミニウム粉末の最大粒子径は3mm以下が好ましく、1mm以下がより好ましい。3mmを超えると水への溶解性が悪くなり、急結性が極端に低下する場合がある。
【0014】
さらに、本発明では初期強度発現性向上の面で、急結剤スラリーにアルカリ金属アルミン酸塩や石膏を添加することも可能である。
【0015】
急結剤スラリー中の水(以下、スラリー水という)の使用量は、硫酸アルミニウム100部に対して、150部以上が好ましく、250〜800部がより好ましい。150部未満では初期強度が低下し、リバウンド率が大きくなる場合がある。
また、スラリー水には、さらに、硫酸アルミニウム、アルミン酸アルカリ、炭酸アルカリ、アミン類、及びコロイダルシリカなどの急結性を向上させる成分を溶解、分散してもよいが、急結性を向上させる成分を使用する場合には、作業性の面から、吹付け材料のpHを10以下にすることが好ましく、pHを7以下にすることがより好ましい。
スラリー水に硫酸アルミニウムを溶解させる場合の濃度は、27%以下が好ましく、3〜20%がより好ましい。27%を超えると硫酸アルミニウムが析出し、ホースやポンプなどに詰まりが生じる場合がある。
硫酸アルミニウムを溶解したスラリー水を使用する場合、スラリー水に溶解した硫酸アルミニウムを加えた合計を硫酸アルミニウムとする。
【0016】
急結剤スラリーの使用量は、セメント100部に対して、固形分換算で3〜20部が好ましく、5〜15部がより好ましい。3部未満では急結性や初期強度発現性が低下する場合があり、20部を超えると長期強度発現性が低下し、リバウンド率が大きくなり、粉塵量が多くなる場合がある。
【0017】
さらに、本発明では、急結性吹付けセメントコンクリートの付着性向上の面で、減水剤を使用する。
本発明で使用する減水剤は、アルキルナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物類を含有するものである。
【0018】
アルキルナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物類(以下、NSという)としては、吹付けセメントコンクリートの流動性を改善し、増粘剤と混合した場合には瞬間的に増粘し、吹付け時の付着性を向上し、リバウンド率や粉塵量を小さくする性能を有するものであり、液状や粉状のものいずれも使用可能であるが、急結剤スラリーに含有させる場合には液状のものが好ましい。
NSとしては、ナフタレン環にアルキル基が付加されたもの、例えば、メチルナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、エチルナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、プロピルナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、及びブチルナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物等、炭素数1〜4個のアルキル基を有するものが好ましいものとして挙げられる。また、NS、特にメチルナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、及び有機アミン塩も使用可能である。
NSのスルホン化率は、105%以上が好ましく、120%以上がより好ましい。105%未満では、吹付けセメントコンクリートの流動性を改善したり、リバウンド率や粉塵量を低減したりすることができない場合がある。
【0019】
本発明では、吹付けセメントコンクリート側と急結剤スラリー側のいずれか一方又は両方に減水剤を添加することができ、特に限定されるものではないが、吹付けセメントコンクリートの圧送性を向上し、リバウンド率や粉塵量を低減することが可能である面で、吹付けセメントコンクリート側に増粘剤を添加した場合には、急結剤スラリー側に減水剤を添加することが好ましく、増粘剤を使用しない場合や増粘剤を急結剤スラリー側に添加した場合には吹付けセメントコンクリート側に減水剤を添加することが好ましい。
減水剤の使用量は、吹付けセメントコンクリート側に添加する場合、セメント100部に対して、固形分換算で0.1〜3部が好ましく、0.2〜2部がより好ましい。0.1部未満では吹付けセメントコンクリートの流動性を改善したり、増粘剤と混合したときに瞬間的に増粘して吹付け時の付着性を向上したり、リバウンド率や粉塵量を小さくしたりするといった効果が小さい場合があり、3部を超えると強度発現性が低下する場合がある。
また、減水剤を急結剤スラリー側に添加する場合には、硫酸アルミニウム100部に対して、固形分換算で1〜30部が好ましく、3〜15部がより好ましい。1部未満では吹付けセメントコンクリートの流動性を改善したり、増粘剤と混合した時に瞬間的に増粘して吹付け時の付着性を向上したり、リバウンド率や粉塵量を小さくしたりするといった効果が小さい場合があり、30部を超えると強度発現性が低下する場合がある。
【0020】
さらに、本発明では、急結性吹付けセメントコンクリートの付着性を向上する面で、増粘剤を使用することが好ましい。増粘剤と減水剤の併用により、瞬間的に増粘し、急結剤スラリーの使用量を低減し、リバウンド率や粉塵量を著しく低減することが可能である。
本発明で使用する増粘剤は、減水剤と混合したときに瞬時に増粘し、吹付け時の粉塵量を小さくする効果を有するものである。
【0021】
増粘剤としては、セルロース類、ポリエチレンオキサイド類、ポリアクリレート類、ポバール類、及びアクリル酸類等の水溶性ポリマーが挙げられ、これらの一種又は二種以上を使用してもよい。これらの中では、NSと混合したときに瞬時に増粘する面で、セルロース類及び/又はアクリル酸類が好ましい。
【0022】
セルロース類としては、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及びヒドロキシエチルエチルセルロースなどの水溶性のセルロース類等が挙げられ、これらの一種又は二種以上が使用可能である。これらの中では、瞬時に増粘する面で、メチルセルロースが好ましい。
【0023】
アクリル酸類としては、ポリアクリルアミド、ポリアクリルアミドとアクリル酸ナトリウムとの共重合物、及びポリアクリルアミド部分加水分解物等が挙げられ、これらの一種又は二種以上が使用可能である。これらの中では、瞬時に増粘する面で、ポリアクリルアミドが好ましい。
【0024】
増粘剤は、吹付けセメントコンクリートの圧送性を向上し、リバウンド率や粉塵量を低減することが可能である面で、吹付けセメントコンクリート側に混合することが好ましい。
増粘剤の使用量は、吹付けセメントコンクリート側に添加する場合、セメント100部に対して、0.001〜1部が好ましく、0.005〜0.3部がより好ましい。0.001部未満では急結性吹付けセメントコンクリートの粘性が小さく、吹付け時にダレが生じ、リバウンド率が大きくなる場合があり、1部を超えると吹付けセメントコンクリートの粘性が大きく、急結性吹付けセメントコンクリートの圧送性に支障を生じ、強度発現性を阻害する場合がある。
また、増粘剤を急結剤スラリー側に添加する場合には、硫酸アルミニウム100部に対して、0.05〜50部が好ましく、0.25〜15部がより好ましい。0.05部未満では急結性吹付けセメントコンクリートの粘性が小さく、吹付け時にダレが生じ、リバウンド率が大きくなる場合があり、50部を超えると急結性吹付けセメントコンクリートの粘性が大きくなり、圧送性に支障を生じ、強度発現性を阻害する場合がある。
【0025】
本発明では、吹付けセメントコンクリートの圧送性を向上し、リバウンド率や粉塵量を低減することが可能となる面で、吹付けセメントコンクリート側に増粘剤を混合し、急結剤スラリー側に減水剤を混合し、両者を合流混合して施工することが好ましい。
【0026】
本発明では、硫酸アルミニウム粉末の吸湿による固化を解消し、急結性吹付けセメントコンクリートの圧送性や強度発現性が向上する面で、無機粉末を使用することが好ましい。
無機粉末としては、シリカフューム、フライアッシュ、高炉スラグ、ベントナイト、炭酸カルシウム、及びメタカオリンなどが挙げられる。これらの中では、急結性吹付けセメントコンクリートの圧送性や強度発現性を向上する面で、シリカフュームが好ましい。
無機粉末の最大粒径は、0.6mm以下が好ましく、0.01μm〜0.15mmがより好ましい。
無機粉末は、吹付けセメントコンクリート側にあらかじめ混合してもよいが、硫酸アルミニウム粉末の吸湿による固化を解消し、急結性吹付けセメントコンクリートの圧送性や強度発現性を向上する面で、急結剤スラリー側に混合することが好ましい。
無機粉末の使用量は、吹付けセメントコンクリート側に添加する場合には、セメント100部に対して、100部以下が好ましく、3〜50部がより好ましく、5〜30部が最も好ましい。100部を超えると吹付けセメントコンクリートの粘性が大きくなり、圧送性が低下する場合がある。
また、無機粉末を急結剤スラリー側に添加する場合は、硫酸アルミニウム100部に対して、200部以下が好ましく、5〜100部がより好ましく、10〜50部が最も好ましい。200部を超えると吹付けセメントコンクリートとの混合性が低下し、短期長期強度発現性が不良となる場合がある。
【0027】
さらに、本発明では、急結性吹付けセメントコンクリートの耐衝撃性や弾性向上の面で、繊維を使用することが好ましい。
本発明で使用する繊維としては、無機質や有機質いずれも使用可能である。
無機質の繊維としては、ガラス繊維、ロックウール、石綿、セラミック繊維、及び金属繊維等が挙げられ、有機質の繊維としては、ビニロン繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリアクリル繊維、セルロース繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリアミド繊維、パルプ、麻、木毛、及び木片等が挙げられる。また、炭素繊維も使用可能である。これらの中では、経済性の面で、金属繊維やビニロン繊維が好ましい。
繊維の長さは、圧送性や混合性等の面で、50mm以下が好ましく、5〜30mmがより好ましい。50mmを超えると圧送性が低下し、圧送管が閉塞する場合がある。
繊維の使用量は、吹付けセメントコンクリート100容量部中、0.1〜3容量部が好ましく、0.4〜1.5容量部がより好ましい。0.1容量部未満では耐衝撃性や弾性が小さい場合があり、3容量部を超えると圧送性が低下する場合があり、また、経済的でない。
【0028】
さらに、本発明では、AE剤等のコンクリート混和剤を使用することにより、急結性吹付けセメントコンクリートの性状を向上させることも可能である。
【0029】
本発明では急結剤スラリーを使用するが、あらかじめ硫酸アルミニウムをスラリー化すると、性状が変化し安定した供給が得られない場合がある。
そのため、本発明では硫酸アルミニウムの圧送中に水を添加し、連続的に硫酸アルミニウムの粉末をスラリー化し、吹付けセメントコンクリートに合流混合することが好ましい。
【0030】
スラリー水の添加場所は特に限定されるものではないが、吹付けセメントコンクリートと合流する直前の場所や合流する場所で添加することが、詰まりが発生しにくいこと、リバウンド率が低下すること、粉塵量が小さくなり、急結性吹付けセメントコンクリートの性状が向上することなどから好ましい。
また、スラリー水と圧縮空気を混合して霧状にすることは、混合性や急結性を向上し、詰まりがなくなる面で好ましい。
【0031】
本発明では圧送空気により、硫酸アルミニウムを圧送する。急結剤圧送装置に使用する圧送空気は水分を除湿したものが好ましい。除湿しないと、圧送空気中の水分により硫酸アルミニウムが徐々に硬化し、時間が経つとホースやミキサーに付着し、閉塞し、連続的に吹付けできない場合がある。
【0032】
本発明の吹付け工法としては、要求される物性、経済性、及び施工性等に応じた種々の吹付け工法が可能である。
【0033】
本発明の吹付け工法としては、乾式吹付け工法も施工可能であるが、粉塵量が多くなる場合があるので、急結剤スラリーを使用する前にあらかじめ水を吹付けセメントコンクリート側に加えて混練りした湿式吹付け工法を使用することが好ましい。
湿式吹付け工法としては、例えば、セメント、細骨材、粗骨材、及び水を加えて混練りし、空気圧送し、途中に合流管であるY字管を設け、その一方から急結剤供給装置により急結剤スラリーを空気圧送し、合流混合して急結性湿式吹付けセメントコンクリートとしたものを吹付ける方法が挙げられる。
【0034】
本発明の吹付け工法において、従来使用の吹付け設備等が使用可能である。通常、吹付け圧力は0.2〜0.6MPaが好ましく、吹付けセメントコンクリート量は4〜20m3/hが好ましい。
【0035】
空気圧送時の急結剤スラリーの圧送圧力は、吹付けセメントコンクリートの圧送圧力より0.01〜0.3MPa程度高いことが好ましい。圧送圧力が低いと配管が詰まり、急結剤が定量的に添加できない場合がある。
【0036】
吹付け設備は吹付けが充分に行われれば特に限定されるものではなく、従来使用の吹付け設備等、例えば、吹付けセメントコンクリートの圧送には、添加機として、アリバー社製商品名「アリバー285」などが、また、急結剤スラリーの圧送には急結剤圧送装置「ナトムクリート」などがそれぞれ使用可能である。
【0037】
【実施例】
以下、実験例に基づき本発明を詳細に説明する。
【0038】
実験例1
W/Cを40%とし、セメントAを100部、細骨材を200部、減水剤を固形分換算で0.5部、及び無機粉末を25部混合し、モルタルを調製した。
一方、硫酸アルミニウム100部とスラリー水150部を混合して急結剤スラリーを調製した。
調製したモルタルと、そのモルタル中のセメント100部に対して、固形分換算で表1に示す量の急結剤スラリーとを混合し、その凝結性状を測定した。結果を表1に併記する。
【0039】
<使用材料>
セメントA:早強ポルトランドセメント、比重3.12
細骨材 :新潟県姫川産、FM2.82、比重2.62
減水剤 :高性能減水剤、メチルナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物、市販品、液状、スルホン化率130%
無機粉末 :シリカフューム、市販品、最大粒径1μm、比重2.2
硫酸アルミニウム:無水物、市販品、最大粒子径0.5mm
【0040】
<測定方法>
凝結性状 :プロクター貫入抵抗試験により測定
【0041】
【表1】
Figure 0005189720
【0042】
実験例2
硫酸アルミニウム100部と、硫酸アルミニウム100部に対して表2に示す量のスラリー水を混合して急結剤スラリーを調製した。
調製した急結剤スラリーを固形分換算で、セメント100部に対して10部、モルタルに混合したこと以外は、実験例1と同様に行った。結果を表2に併記する。
【0043】
【表2】
Figure 0005189720
【0044】
実験例3
各材料の単位量を、水228kg/m3、セメント570kg/m3、細骨材987kg/m3、粗骨材537kg/m3とし、セメント100部に対して、0.005部の増粘剤と、コンクリート100容量部に対して、0.5容量部の繊維とを配合し、スランプ25cm、細骨材率65%、及びW/C40%のコンクリートを調製した。
一方、硫酸アルミニウムを100部、減水剤を固形分換算で10部、無機粉末を25部、及びスラリー水を150部混合して急結剤スラリーを調製した。
調製したコンクリートを吹付け圧力0.45MPa、コンクリート量10m3/hの条件下で圧送し、途中で、圧送圧力0.5MPaの条件下で急結剤圧送機「ナトムクリート」により圧送した急結剤スラリーを、コンクリート中のセメント100部に対して、固形分換算で表3に示す量、合流混合して急結性吹付けコンクリートとし、そのリバウンド率、粉塵量、及び圧縮強度を測定した。結果を表3に併記する。
【0045】
<使用材料>
粗骨材 :新潟県姫川産、最大寸法13mm、比重2.65
増粘剤ア :メチルセルロース、市販品
繊維 :鋼繊維、市販品、長さ30mm、比重7.85
【0046】
<測定方法>
リバウンド率:急結性吹付けコンクリートを幅5.5m×高さ5.5mの馬蹄形模擬トンネル側壁に吹付けた時の、(跳ね返り落下した急結性吹付けコンクリートの量)/(吹付けに使用した急結性吹付けコンクリート全体の量)×100 (%)と(跳ね返り落下した繊維の量)/(吹付けに使用した急結性吹付けコンクリート中の繊維の量)×100 (%)で示す。なお、跳ね返り落下した繊維の量は、跳ね返った急結性吹付けコンクリートから繊維を磁石等により吸引、収集し、繊維に付着したセメントを洗い流し、乾燥後測定した。
粉塵量 :柴田科学器械工業社製デジタル粉塵計を使用し、幅5.5m×高さ5.5mの馬蹄形模擬トンネル中央で、吹付け開始後、吹付け位置から10m後方の高さ1mの位置で粉塵量を測定し、1m3当りの粉塵量を算出した。
圧縮強度 :材齢10分の強度は土木学会基準「引抜き方法による吹付けコンクリートの初期強度試験方法」(JSCE-G 561-1994)に準じて測定し、28日の強度はJIS
A 1107(1993)に準じて測定した。
【0047】
【表3】
Figure 0005189720
【0048】
実験例4
硫酸アルミニウムを100部、減水剤を固形分換算で10部、無機粉末を25部、及び表4に示す量のスラリー水を混合して急結剤スラリーとし、セメント100部に対して、固形分換算で10部混合したこと以外は実験例3と同様に行った。結果を表4に併記する。
【0049】
【表4】
Figure 0005189720
【0050】
実験例5
硫酸アルミニウムを100部、減水剤を固形分換算で10部、無機粉末を25部、及び表5に示す硫酸アルミニウム濃度のスラリー水150部を混合して急結剤スラリーとし、セメント100部に対して、固形分換算で10部混合し、リバウンド率、粉塵量、圧縮強度、及び圧送性を測定したこと以外は実験例3と同様に行った。結果を表5に併記する。
【0051】
<測定方法>
圧送性 :急結性吹付けコンクリートを7m圧送したときの圧送状況を観察した。配管が詰まらない場合を○、詰まり気味の場合を△、配管が詰まってしまう場合を×とした。
【0052】
【表5】
Figure 0005189720
【0053】
実験例6
セメント100部に対して表6に示す量の増粘剤を使用して吹付けコンクリートを調製し、急結剤スラリーを、セメント100部に対して、固形分換算で10部混合して急結性吹付けコンクリートを調製し、リバウンド率とダレを測定したこと以外は実験例3と同様に行った。結果を表6に併記する。
【0054】
<使用材料>
増粘剤イ :ポリアクリルアミド、市販品
【0055】
<測定方法>
ダレ :急結性吹付けコンクリートを10分間、幅5.5m×高さ5.5mの馬蹄形模擬トンネルに吹付けた、その後、模擬トンネルの側壁から急結性吹付けコンクリートがダレない場合を○、少しダレた場合を△、かなりダレた場合を×とした。
【0056】
【表6】
Figure 0005189720
【0057】
実験例7
硫酸アルミニウムを100部、減水剤を固形分換算で10部、表7に示す量の無機粉末、及びスラリー水150部からなる急結剤スラリーを、セメント100部に対して、固形分換算で10部使用して圧送性を測定したこと以外は実験例3と同様に行った。結果を表7に併記する。
【0058】
【表7】
Figure 0005189720
【0059】
実験例8
硫酸アルミニウム100部、固形分換算で表8に示す量の減水剤、無機粉末25部、及びスラリー水150部からなる急結剤スラリーを、セメント100部に対して、固形分換算で10部使用したこと以外は実験例3と同様に行った。結果を表8に示す。
【0060】
【表8】
Figure 0005189720
【0061】
実験例9
吹付けセメントコンクリート100容量部中、0.5容量部の繊維を使用して、また、使用しないで吹付けコンクリートを調製し、急結剤スラリーを、セメント100部に対して、固形分換算で10部使用して耐衝撃性を測定したこと以外は、実験例3と同様に行った。
その結果、繊維を使用した場合の耐衝撃性は○であったが、繊維を使用しない場合は×となった。
【0062】
<測定方法>
耐衝撃性 :材齢1時間後の急結性吹付けコンクリートを幅20cm×長さ20cm×厚さ1cmに切り取り、平らにならした標準砂の上に置き、重さ100gの球体を50cmの高さから落下した。落下回数5回以内で破壊せずにひびが入らない場合を○、破壊した場合を×とした。
【0063】
【発明の効果】
本発明の急結剤スラリーはアルカリフリー急結剤スラリーであり、本発明の急結剤スラリーにより、吹付け時の付着性が向上し、リバウンドを低減し、短期・長期の強度発現性が良好な急結性吹付けセメントコンクリートが得られる。
特に、減水剤と増粘剤を併用することにより、急結剤スラリーと吹付けセメントコンクリートの混合時に、急結性吹付けセメントコンクリートが瞬間的に増粘し、急結剤スラリーの使用量を低減し、リバウンド率や粉塵量を著しく低減することが可能である。

Claims (5)

  1. (1’)増粘剤を含有してなるセメントコンクリートを圧送する途中で、(2’)(2’−1)硫酸アルミニウムと(2’−2)アルキルナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物類含有してなる減水剤と(2’−3)シリカフューム、フライアッシュ、高炉スラグ、ベントナイト、炭酸カルシウム、及びメタカオリンからなる群の1種以上の無機粉末と(2’−4)スラリー水を含有してなる急結剤スラリー混合し吹付けてなる吹付け工法。
  2. (1’)セメント100部に対して増粘剤0.02〜1部を含有してなるセメントコンクリートを圧送する途中で、(2’)(2’−1)硫酸アルミニウム100部と(2’−2)アルキルナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物類を含有してなる減水剤を、固形分換算で1〜30部と(2’−3)シリカフューム、フライアッシュ、高炉スラグ、ベントナイト、炭酸カルシウム、及びメタカオリンからなる群の1種以上の無機粉末10〜100部と(2’−4)スラリー水150部以上を含有してなる急結剤スラリーを、セメント100部に対して、固形分換算で3〜20部合し吹付けてなる吹付け工法。
  3. さらに、繊維を混合してなる請求項1〜のうちの1項記載の吹付け工法。
  4. 硫酸アルミニウムが無水物である請求項1〜のうちの1項記載の吹付け工法。
  5. セメントコンクリートの水セメント比が35〜65%であり、セメントコンクリートの吹付け圧力が0.2〜0.6MPaであり、急結剤スラリーの圧送圧力がセメントコンクリートの圧送圧力より0.01〜0.3MPa高い請求項1〜のうちの1項記載の吹付け工法。
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