本発明の実施の形態について以下に図面を参照して説明する。以下の説明は、本発明の好適な実施の形態を示すものであって、本発明の範囲が以下の実施例の形態に限定されるものではない。以下の説明において、同一の符号が付されたものを実質的に同様の内容を示している。
実施の形態1.
本発明の実施の形態1に係るマスク検査装置について、図1を参照して説明する。図1は、本実施の形態に係るマスク検査装置100の構成を示す図である。図1に示すように、マスク検査装置100は、検査光源130、ハーフミラー101、レンズ102a〜d、均一化光学系103a、b、偏光ビームスプリッタ104、λ/4波長板105、コンデンサーレンズ106、投影レンズ107、二次元センサ109、ミラー111a、b、対物レンズ112、水槽113、純水114を備えている。本実施の形態に係るマスク検査装置100は、マスク基板108a上に形成されたパターン面108cの外側を囲むように配置されたフレーム108dと、これに貼り付けられたペリクル108bとからなる完成したマスクの検査を行うものである。本実施の形態においては、マスク基板108aとしては、屈折率が約1.5608の合成石英を用いることができる。
マスク検査装置100は、検査光源130からの波長193nmのレーザ光L01を照明として用いている。レーザ光L01は、ハーフミラー101に入射して2方向に分割される。そして、分割された一方のレーザ光を透過照明光とし、他方を反射照明光としている。
先ず、透過照明に関して説明する。ハーフミラー101を透過したレーザ光L02はレンズ102aを通って絞られながら進み、均一化光学系103aに入射する。均一化光学系103aは、例えば、複数の光ファイバが束ねられたバンドルファイバである。これによって空間的な光強度分布が均一化されたレーザ光L03が出射され、レンズ102bを通って平行になり、ミラー111bで折り返され、コンデンサーレンズ106に入射する。これによってレーザ光L04のように絞られながら進み、マスク108のパターン面108c内の観察部分を照射する。なお、コンデンサーレンズ106は、マスク108のペリクル108bの直上に配置されている。
次に、反射照明に関して説明する。ハーフミラー101で反射したレーザ光L05は、ミラー111aで反射してレンズ102cを通り、均一化光学系103bに入射する。これによって空間的な光強度分布が均一化されたレーザ光L06が出射し、レンズ102dを通って平行になり、偏光ビームスプリッタ104に入射する。ここで、レーザ光L07はS波であるため、偏光ビームスプリッタ104で反射して、レーザ光L08のように上方に進む。レーザ光L08はλ/4波長板105を通過することで、レーザ光L09は円偏光になる。レーザ光L09は、水槽113の中央部に固定された対物レンズ112に入射し、純水114とマスク108のマスク基板108aを透過して、パターン面108cを下側から照射する。水槽113は、純水114を溜める容器である。
以下に、マスク108のパターン面108c内の観察部を観察する光学系を説明する。透過照明あるいは反射照明によって照明されたパターン面108c内の観察部から発生する光学像のレーザ光L09(すなわち光学情報を空間的強度分布内に含んだレーザ光)は、対物レンズ112から下方に出射する。このレーザ光L09には、マスク108で反射した反射光と、マスク108を透過した透過光とが含まれる。マスク108で反射したレーザ光L09はマスク108に入射するレーザ光L09と反対方向の円偏光になっている。このため、再びλ/4波長板105を通過して今度はP波になる。従って、マスク108のパターン面108cからの反射光は、偏光ビームスプリッタ104を透過する。その結果、反射光は投影レンズ107を通り、二次元光センサ109に当たる。すなわち、パターン面108c内の観察部の像が、対物レンズ112の焦点距離と投影レンズ107の焦点距離との比だけ拡大され、二次元光センサ109上に拡大投影される。また、マスク108を透過したレーザ光L09も対物レンズ112から出射して、同様の光路で二次元光センサ109に入射する。
本実施の形態に係るマスク検査装置100においては、水槽113内には純水114が貯留されている。マスク108は、水槽113の中に、マスク基板108aのパターン面108cと反対側の面が貯留された純水114に接するように載置される。マスク108のパターン面108cと反対側には、対物レンズ112が配置される。すなわち、マスク基板108aのパターン面108cと反対側の面の直下に対物レンズ112が配置される。つまり、対物レンズ112とマスク基板108aとの間には、純水114が満たされている。また、対物レンズ112は、複数のレンズが含まれている。そして、対物レンズ112に含まれるマスク108側の最端レンズとマスク基板108aとの間には、純水114が満たされる。このため、パターン面108cと、対物レンズ112との間に、空気層を形成させることがない。これにより、対物レンズ112とパターン面108cとの間に屈折率約1.44の純水114と、屈折率約1.56のマスク基板108aだけが挟まれる構造になる。このように、本発明によれば、マスク検査にも液浸技術を適用できるようになる。
従って、本実施の形態においては、観察するパターン面108cが石英基板上であるため、検査光源の波長を合成石英の屈折率で割った値を実質波長とする光源で検査した場合まで高めることができる。例えば、光源波長が193nmの場合、合成石英の屈折率は約1.5608であるため、最短の場合、波長約124nmの光源で検査する場合と同等の感度が得られるようになる。ただし、実際には、用いる液体の屈折率に依存し、波長193nmにおける屈折率が1.436の水を用いた場合は、波長134nmの光源で検査する場合と同等の感度になる。これによって、解像度としては、同じ波長の検査光源を用いた従来装置の場合に比べて、パターン面108cに接している合成石英の屈折率に等しい約1.56倍向上させることができる。
なお、もし光源248nmのキセノン水銀ランプを用いた場合、波長248nmにおける合成石英の屈折率は1.5086であるため、本発明を適用することで、実質的に波長約164nmの光源を用いた場合と同等の解像度が得られる。
なお、検査中は、マスク108は水槽113中で平面的に自由に移動できるため、対物レンズ112の中心付近が、パターン面108c内の全面に位置することができるようになっている。これにより、マスク108のほぼ全体を観察することができる。さらに、水槽113と対物レンズ112との間を封止してもよい。これにより、純水114の漏れを防ぐことができる。封止するための封止材としては、ゴムなどの弾性体を用いることができる。
なお、本発明において、対物レンズ112をマスク108の下側に配置する場合、対物レンズ112が大きいならば、マスク基板108aを下側から支えることが難しくなることがある。その場合は、マスク基板108aの上側におけるペリクル108bが貼られている部分の外側を真空吸着によって保持すればよい。
本実施の形態では、対物レンズ112としては、反射屈折型のものが用いられており、焦点距離は約3mmである。一方、投影レンズ107の焦点距離は約300mmであり、その結果、二次元光センサ109上に、パターン面108c内の像が約100倍に拡大されて投影される。なお、二次元光センサ109としては、CCDやTDI等が適する。
実施の形態2.
次に、本発明の実施形態2について、図2を参照して説明する。図2は本実施の形態に係るマスク検査装置200の構成を示す図である。図2に示すように、本実施の形態に係るマスク検査装置200は、検査光源200、ハーフミラー201、レンズ202a〜d、均一化光学系203a、b、偏光ビームスプリッタ204、λ/4波長板205、コンデンサーレンズ206、投影レンズ207、二次元センサ209、ミラー211a、b、対物レンズ212、純水214、純水供給部215、純水吸引部216を備えている。実施の形態1と重複する内容については、説明を省略する。
なお、本実施の形態に係るマスク検査装置200においても、実施の形態1と同様に、マスク基板208a上に形成されたパターン面208cの外側を囲むように配置されたフレーム208dと、これに貼り付けられたペリクル208bとからなる完成したマスクの検査を行うものである。本実施の形態においては、マスク基板208aとしては、屈折率が約1.5608の合成石英を用いた。マスク208は、マスク基板208aのパターン面208cと反対側の面が上になるように配置されている。また、マスク208は、フレーム208dの外側において支持されている。
また、マスク検査装置200でも、波長193nmのレーザ光L21を照明に用いている。レーザ光L21は、ハーフミラー201に入射して2方向に分割される。先ず、反射照明に関して説明する。ハーフミラー201を透過したレーザ光L22はレンズ202aを通って絞られながら進み、均一化光学系203aに入射する。これによって空間的な光強度分布が均一化されたレーザ光L23が出射し、レンズ202bを通って平行になり、偏光ビームスプリッタ204に入射する。ここで、レーザ光L23はS波であるため、偏光ビームスプリッタ204で反射して下方に進み、λ/4波長板205を通過して、円偏光のレーザ光L24が出射する。レーザ光L24は、対物レンズ212に入射し、純水214とマスク208のマスク基板208aを透過して、パターン面208c内の観察部を照射する。
次に、透過照明に関して説明する。ハーフミラー201で反射したレーザ光L25は、ミラー211aで反射してレンズ202cを通り、均一化光学系203bに入射する。これによって空間的な光強度分布が均一化されたレーザ光L26が出射し、レンズ202dを通って平行になり、ミラー211bで折り返され、コンデンサーレンズ206に入射し、マスク208のパターン面208c内の観察部を照射する。なお、コンデンサーレンズ206は、マスク208のペリクル208bの直下に配置している。
マスク208のパターン面208c内の観察部を観察する光学系を説明する。透過照明あるいは反射照明によって照明されたパターン面208cから発生する光学像のレーザ光L24は、対物レンズ212から上方に出射する。このレーザ光L24には、マスク208で反射した反射光と、マスク208を透過した透過光とが含まれる。ここで、マスク208で反射したレーザ光L24は、偏光ビームスプリッタ204で反射した照明用のレーザ光L24と反対方向の円偏光である。このため、再びλ/4波長板205を通過して直線偏光になるが、今度はP波になっている。これにより、マスク208で反射したレーザ光L24は偏光ビームスプリッタ204を透過する。その結果、投影レンズ207を通り、二次元光センサ209に当たる。すなわち、パターン面208c内の観察部の像が、対物レンズ212の焦点距離と投影レンズ207の焦点距離との比だけ拡大され、二次元光センサ209上に拡大投影される。なお、二次元光センサ209としては、実施の形態1と同様、CCDやTDI等が適する。また、マスク208を透過したレーザ光L24も対物レンズ212から出射して、同様の光路で二次元光センサ209に入射する。
本実施の形態に係るマスク検査装置200においては、対物レンズ212とマスク基板208aとの間に満たされる純水214が、純水供給部215から供給され、純水吸引部216から吸引される。これはローカルフィルと呼ばれる方式であり、実施の形態1に示された水槽113が不要になるメリットがある。
また、マスク208のパターン面208cと反対側には、対物レンズ212が配置される。すなわち、マスク基板208aのパターン面208cと反対側の面の直上に対物レンズ212が配置される。つまり、対物レンズ212とマスク基板208aとの間には、純水214が満たされている。このため、パターン面208cと、対物レンズ212との間に、空気層を形成させることがない。これにより、対物レンズ212とパターン面208cとの間に屈折率約1.44の純水114と、屈折率約1.56のマスク基板208aだけが挟まれる構造になる。
従って、実施の形態1において説明したように、本実施の形態においても、検査光源の波長を合成石英の屈折率で割った値を実質波長とする光源で検査した場合まで高めることができる。これによって、解像度としては、同じ波長の検査光源を用いた従来装置の場合に比べて、パターン面108cに接している合成石英の屈折率に等しい約1.56倍向上させることができる。
実施の形態3.
本発明の実施の形態3に係る、マスク検査装置について図3を参照して説明する。図3は、実施の形態3に係る本実施の形態に係るマスク検査装置300の一部の構成を示す図である。本実施の形態において、実施の形態1と異なる点は、マスク検査装置に用いられる液浸部分である。なお、図3において、光学的な基本構成は図1に示した実施の形態1と同じであるため、図示を省略している。図3は、マスク検査装置300の液浸部分の構成を示している。
なお、本実施の形態に係るマスク検査装置300においても、実施の形態1と同様に、マスク基板301a上に形成されたパターン面301cの外側を囲むように配置されたフレーム301dと、これに貼り付けられたペリクル301bとからなる完成したマスクの検査を行うものである。
本実施の形態においては、マスク301のマスク基板301aにおけるパターン面301cと反対側である裏面に純水305を接触させた構成であるが、純水305の供給手法が、実施の形態1のマスク検査装置100とは異なる。図3に示すように、供給用チューブ303の端部に付いている吐出部304から純水305が噴出して、対物レンズ302の先端面とマスク基板301aの下面との間を満たすようになる。また、対物レンズ302の周囲には、流れ落ちる純水を受ける受け皿306が付いており、対物レンズ302の周囲を伝わって流れ落ちる純水305は、この受け皿306内に溜まり、受け皿306の底部に付けられた排出用チューブ307から排出される。
本実施の形態に係るマスク検査装置300では、図1に示したマスク検査装置100とは異なり、水槽113が不要になる。また、マスク検査装置300は、図2に示したマスク検査装置200のように対物レンズ212をマスク208の上側に配置するローカルフィル方式とも異なり、同じローカルフィル方式でも対物レンズ302をマスク301の下側に配置している。
図2に示したマスク検査装置200のように、対物レンズ212をマスク208の上側に配置するローカルフィル方式では、純水を回収する際に、純水をウエハから引き上げるように吸引する必要がある。しかも、純水が周囲に流れ出さないように全てを回収する必要があるが、これらを正確に行える吸引装置を実現するのが困難であった。
これに対して、実施の形態3に係るマスク検査装置300のローカルフィル方式では、対物レンズ302が液浸部分よりも下に配置されることから、積極的に純水を吸引しなくても、ギャップの狭い液浸部分以外に広がろうとした純水305は、自然に流れ落ちる。このため、それを受け止める受け皿306を置いておくだけで純水305は全て回収できるからである。しかも、このように、対物レンズ302を液浸部分よりも下側に配置する方が、装置としては簡単に構成できる。
なお、対物レンズ302に対する吐出部304の取り付け位置は、マスク301のスキャン方向の上流側が好ましい。これにより、吐出部304から放出される純水305が、マスク301自体のスキャンによって、液浸部にスムースに満たされる。
ここで、実施の形態1〜3において用いられる対物レンズ112、212、302について参照して説明する。対物レンズ112、212、302はいずれも、軸対象な反射屈折型の短焦点光学系である。軸対象な反射屈折型を用いた理由としては、レンズの最先端面から観察面までの隔たりであるワークディスタンスが、焦点距離によりも大きくとるように設計・製作することが、全屈折型のレンズに比べて容易だからである。
また、図4に、対物レンズ302の構成の一例が詳細に示される。図4に詳細構造を示した対物レンズ302のように、入射するレーザ光L09は、対物レンズ302の構成要素における凸型反射面312に垂直に入射するため、その反射光は広がって進み、凹型反射面313に当たって、観察面であるマスク基板301aに向かう。つまりマスク基板301aに向かうレーザ光はリング状になっており、マスク基板301aのパターン面301cに当たる際の入射角度分布には、垂直成分が含まれないことになる。
一方、合成石英から成るマスク基板301aと純水305とは、屈折率が僅かに異なるため、これらの境界面で僅かに反射が生じる。その際に、もしもその境界面に垂直にレーザ光が入射するならば、反射光は正反対の方向に戻されることになるため、結果として、その反射光は、マスク検査装置100や200における二次元光センサ109及び209に入射することになり、ゴーストなってしまう。
これに対して、本発明では、軸対象な反射屈折型の対物レンズを用いることから、マスク基板に進むレーザ光に垂直成分がなく、純水との境界面に垂直に入射する成分がない。このため、境界面からの僅かな反射光は、二次元光センサに入射することがなく、ゴーストは発生しない。
以上より、本発明のマスク検査装置で用いる対物レンズとしては、特に構成される光学部品が軸対象の反射屈折型が好ましい。なお、一般的な軸対象な反射屈折型対物レンズは、図4に示したように、少なくとも一つの凸型反射面と、一つの凹型反射面とを有しているものである。例えば、対物レンズとして、CORNING Tropel社製 μCAT Panther UV Micro−Objecitveを用いることができる。具体的には、照明光として波長193nmの光を用いる場合、Panther 193を用いることができる。
図5は、図3に示されたマスク検査装置300の対物レンズ302と純水供給手法が多少異なる対物レンズ302Bを説明するための図である。図5(a)は、対物レンズ302Bの構成を示す図であり、図5(b)は対物レンズ302Bを用いたときの好適なスキャン例を示す図である。図5(a)に示すように、対物レンズ302Bにおける観察面に最も近い最端レンズ321はフラットになっている。この最端レンズ321と、マスク基板301aの裏面との間が純水で満たされる。対物レンズ302Bには、純水を吐出させるための長い形状の吐出部322aと322bとが、最端レンズ321の近傍に設けられている。これら吐出部322a、322bは、最端レンズ321に対して、マスクのスキャン方向側に配置されている。すなわち、2つの吐出部322a、322bはスキャン方向と平行に配置される。
図5(a)に示す対物レンズ302Bでは、吐出部322a、322bが2個設けられていることにより、マスクの往復スキャンの方向のどちら側に進む場合でも、2個の吐出部322a、322bのいずれか一方からの純水が、最端レンズ321とマスク基板との間を途切れることなく満たすことができる。また、排出すべき純水は、スキャン方向に直交する2つの方向から排出されるが、純水がスムースに流れ落ちるように、対物レンズ302Bの両側に、緩やかに凹んだカット部323が形成されている。すなわち、カット部223では、対物レンズの鏡筒が切欠かれている。この2つのカット部323は、スキャン方向と垂直な方向に配置される。なお、図5(a)に示される対物レンズ302Bにも、図3に示された対物レンズ302に取りつけられている受け皿306を取り付けてもよい。
一般にマスク基板の形状は一辺152mmの正方形であるが、パターン領域の最大寸法は、132mm×104mmの長方形であるため、マスク基板内におけるパターン領域外は、幅の狭い部分と広い部分とがある。従って、吐出部304を2箇所設けた対物レンズ302Bを用いる場合は、図5(b)に示したように、対物レンズ302Bの中心位置に対して、パターン領域308の長方形の短辺方向に設けるとよい。これによると、対物レンズ302Bのようにパターン領域308の長辺側の端に位置しても、吐出部304がマスク基板301aから外れることがない。また、対物レンズ302B'のようにパターン領域の短辺側の端に位置する場合でも、吐出部304がマスク基板301aから外れることがない。なお、対物レンズ302B、B'の横に描かれた矢印は、対物レンズ302B、B'とマスク基板301aとの相対的な変化を示したものであり、実際には対物レンズは固定されており、マスクをスキャン移動させるものである。
さらにまた、本発明のマスク検査装置に適する別の構造の対物レンズ330の構造を、図6を参照して説明する。図6(a)は対物レンズ330の斜視図であり、同図(b)はその断面図である。対物レンズ330では、図3に示された対物レンズ302Bと同様に、純水を吐出させる吐出部332a、bが2箇所設けられているのは同じである。しかしながら、純水の吸引部333が、2個の吐出部332a、bを囲むようにリング状に設けられている。これにより、吐出部332a、bから噴出した純水が全てこの吸引部333から吸引され、対物レンズ330の外側に飛び出してしまうことがなくなる。このため、図3に示されたような受け皿306は不要である。
また、さらに別の構造の対物レンズ340の構造を、図7を参照して説明する。図7(a)は対物レンズ340の斜視図であり、同図(b)はその断面図である。図7に示すように、対物レンズ340は、図6に示した対物レンズ330と類似しているが、純水の吸引部343の周囲にリング状の空気吐出部345を設けている点で異なる。また、対物レンズ340の外周面には、チューブ接続口346が設けられており、空気吐出部345から空気が放出される。これによれば、吸引部343から吸引し切れずに外側に溢れ出る純水が、対物レンズ340の外側に溢れ出ることを防ぐことができる。
次に、本発明のマスク検査装置における純水の厚みに関して、図8を用いて説明する。図8は図1に示したマスク検査装置100の液浸部周辺のみを描いたものである。図8(a)に示すように、マスク基板108aの厚みをtmaskとし、純水114の厚みをtwaterとする。本発明においては、マスク基板108aの厚みに依らず、tmask+twater=7.00mmを保つように、マスク108と水槽113との間隔が調整されている。例えば、マスク基板108aの厚みが標準の6.35mmの場合、純水114の厚みは0.65mmとなる。また、マスク基板108aの厚みが標準より厚い6.45mmの場合は、純水114の厚みを0.55mmになるように微調整している。
このようにマスク基板108aの厚みと純水114の厚みとの和が、マスクに依らずに一定値(ここでは7.00mm)を保つようにするために、本発明に係るマスク検査装置は、図8(b)又は図8(c)に示すような。純水114の厚みをマスク基板108aの厚みに応じて調整する調整機構を備えている。
図8(b)に示すように、水槽113の縁に取り付けられた測長用の半導体レーザ120を用いて、半導体レーザ120からパターン面108cまでの距離が一定値になるように、マスク基板108aの設置高さを微調整している。なお、半導体レーザ120から出ている矢印は、そのレーザ光を示しており、マスク基板108aの上面での反射光を受光して(ただし受光部周辺は省略してある。)、そこまでの距離を測っている。そして、例えば、水槽113内の純水114の量を調整して、高さを調整する。
以上により、合成石英からなるマスク基板108a内の光学距離と、純水114の光学距離との和が、マスク基板108aの厚みによらず、ほぼ一定になる。これにより、パターン面118cの拡大像の歪みを無視できる程度に低減できるようになる。つまり、対物レンズ112における各レンズ等の設計には、像面であるパターン面108cまでに配置されるマスク基板108aも透明な平行平面基板として考慮する必要がある。通常、マスク基板108aの厚みが一定(通常は6.35mm)として設計するため、厚みが変わると、フォーカスは再調整できるものの、厳密には像の歪みが増えるからである。
あるいは、マスク基板108a内の光学距離と、純水114の光学距離との和を一定に保つための異なる機構として、図8(c)に示す調整機構を設けてもよい。図8(c)に示す調整機構は、対物レンズ112Bのレンズ等を含む鏡筒の外周に配置されている。図8(c)に示すように、対物レンズ112Bでは、半導体レーザ120Bが取り付けられている。半導体レーザ120Bからから出射するレーザ光L10は、集光レンズ121を通ることで絞られながら進み、サファイアから成る三角プリズム122aを通過することで進行方向が曲げられる。なお、三角プリズム122aは純水114に接しており、レーザ光は純水114中とマスク基板108a中を進んで、パターン面108cに大きな入射角で当たる。そのため、レーザ光L11はパターン面108cで全反射する。そして、レーザー光L11は、再び純水114中を通り、三角プリズム122bに入射して進行方向が曲げられ、レーザ光L12のように二分割センサ123に当たる。二分割センサ123からの2つの信号が信号線124を通って、図示されていない制御装置まで導かれる。
図8(c)の例によると、マスク基板108aの厚みと純水114の厚みの和が変化すると、レーザ光L12が二分割センサ123に当たる位置が図8(c)において左右に変化して、2つの信号のバランスの変化として検知される。従って、その信号バランスがマスク基板108aの厚みに依らずに一定値になるように、マスク基板108aを上下方向に微調整すればよい。
なお、上述の例では、マスク基板108aの厚みと純水114の厚みとの和がマスクに依らずに一定になるように、マスク基板108aの設置高さを微調整しているが、さらに歪みを低減させることも可能である。具体的には、マスク基板108aの厚みが基準値より厚い場合に、マスク基板108aの設置高さが僅かに低くなるように調整する。また、マスク基板108aの厚みが基準値より薄い場合に、マスク基板108aの設置高さが僅かに高くなるように調整する。その結果、マスク基板108aの厚みに依らず、マスク基板108a中での光学距離と、純水114中での光学距離との和を完全に一定にできるからである。
例えば、マスク基板108aの厚みが基準値の6.35mmよりも0.05mm厚い6.40mmの場合、マスク基板108aの設置高さを0.004mm下げればよい。また、マスク基板108aの厚みが基準値の6.35mmよりも0.05mm薄い6.30mmの場合、マスク基板108aの設置高さを0.004mm上げればよい。
つまり、合成石英の厚み0.05mmにおける光学距離(すなわち真空中を通過する場合と位相が同等となる距離)は、合成石英の屈折率が波長193nmにおいて1.5608であることから、0.078mmとなる。一方、光学距離が0.078mmとなる場合の純水の厚みは、純水の屈折率が波長193nmにおいて約1.436であることから、0.054mmになる。すなわち、単純に二層の厚みの和が一定になるように、純水の厚みを0.050mm薄くすることは、厳密には約0.004mm厚過ぎてしまう。
以上のように、本発明において、マスク基板の厚みのばらつきを起因とする歪みをさらに低減させるために、マスク基板と液浸としての液体との二層を通過するレーザ光の光学距離が一定になるように、マスク基板の設置高さを微調整してもよい。このようにパターン面108cが上側に設けられ、かつ対物レンズ112が水槽113の下側に配置された状態で、水槽113内におけるパターン面の高さを測定する測定部を設ける。これにより、光路長を調整することができ、パターン面に焦点を合わせることができる。よって、検出感度をより向上することができる。なお、測定部としては、上記以外の構成であってもよい。
ところで、今まで説明した実施の形態では、液浸用の液体として純水が用いられているが、純水以外にフッ素系(フロリナート)の液体を用いてもよい。以下の表に使用可能なフッ素系液体の例とその物性値を示す。
また、ここで、図9を参照して、マスク検査装置によって検査できないデッドスペースを説明する。図9(a)は従来のマスク検査装置を用いた場合のデッドスペースを示しており、同図(b)は本発明におけるマスク検査装置を用いた場合のデッドスペースを示している。図9(a)に示すように、従来のマスク検査装置では、マスク基板401aのパターン面402a側に対物レンズ400aを配置する。このため対物レンズ400aの開口数NAは非常に大きくなった場合、ぺリクル404aを支えるスペーサ403aによって照明光がブロックされてしまう。
図9(b)に示すように、本発明では、マスク基板400b側に対物レンズ401bを配置する。このため、対物レンズ400bのNAが非常に大きくなっても、マスク基板401b上のパターン面402b側において検査できる領域は、ペリクル404bを支えるスペーサ403bによってブロックされて縮小することもない。すなわち、本発明によって、パターン面402bでのデッドスペースが縮小できるようになる。例えば、図2に示すマスク検査装置200において、反射照明を用いることにより、マスク全面を検査することができる。また、コンデンサーレンズ106、206の開口数が対物レンズ112、212よりも小さい場合、デッドスペースを縮小することができる。
実施の形態4.
本発明の実施の形態4に係るマスク検査装置について、図10を参照して説明する。図10は、実施の形態4に係るマスク検査装置500の構成を示す図である。上述の実施の形態1−3では、ArFあるいはKrFリソグラフィで用いられるペリクル付きの普通のマスクを対象としたマスク検査装置であるが、本実施の形態ではペリクルが無いインプリントマスクを検査対象としている。特に、種々のインプリントマスクの中でも、マスクが石英などの透明な光学材から成る場合は、実施の形態1で示したマスク検査装置がそのまま適用できる。図10に示すように、マスク検査装置500は、基本的には、図1に示したArFやKrF用マスクを対象としたマスク検査装置100と同様な構造になっている。
本実施の形態においては、検査光源530からの波長193nmのレーザ光L51を照明に用いている。レーザ光L51は、ハーフミラー501に入射して2方向に分割される。ハーフミラー501を透過したレーザ光L52はレンズ502aを通って絞られながら進み、均一化光学系503aに入射する。これによって空間的な光強度分布が均一化されたレーザ光L53が出射し、レンズ502bを通って平行になり、ミラー511bで折り返され、コンデンサーレンズ506に入射する。これによって、レーザ光L54のように絞られながら進み、インプリントマスク508の上側に配置されたパターン面508c内の観察領域を照射する。
一方、ハーフミラー501で反射したレーザ光L55は、ミラー511aで反射してレンズ502cを通り、均一化光学系503bに入射する。これによって空間的な光強度分布が均一化されたレーザ光L56が出射し、レンズ502dを通って平行になり、偏光ビームスプリッタ504に入射する。ここで、レーザ光L57はS波であるため、偏光ビームスプリッタ504で反射して、レーザ光L58のように上方に進む。レーザ光L58がλ/4波長板505を通過することで、レーザ光L59は円偏光になる。レーザ光L59は、水槽513の中央部に固定された対物レンズ512に入射し、純水514とインプリントマスク508内を通過して、パターン面508cを照射する。なお、本実施の形態のインプリントマスク508は合成石英からなるため、波長193nmのレーザ光は高く透過できる。
以上に述べた透過照明あるいは反射照明によって照明されたパターン面508cから発生する光学像のレーザ光L59は、対物レンズ512から下方に出射する。このレーザ光L59には、マスク508で反射した反射光と、マスク508を透過した透過光とが含まれる。このとき、マスク508で反射したレーザ光L59は、マスク508に入射するレーザ光L59と反対方向の円偏光になっている。このため、マスク508で反射したレーザ光L59は、再びλ/4波長板505を通過して直線偏光になるが、今度はP波になっている。このため、マスク508で反射したレーザ光L59は、偏光ビームスプリッタ504を透過する。その結果、投影レンズ507を通り、二次元光センサ509に当たる。すなわち、パターン面508cの像が、対物レンズ512の焦点距離と投影レンズ507の焦点距離との比だけ拡大され、二次元光センサ509上に拡大投影される。なお、二次元光センサ509としては、やはりCCDやTDI等が適する。また、マスク508を透過したレーザ光59も対物レンズ512から出射して、同様の光路で二次元光センサ509に入射する。
以上のように、パターン寸法が微細なインプリントマスクでも、その基板が透明であれば、本発明のマスク検査装置を適用することができるため、SEM(Scanning Electron Microscope)のような真空を必要とする顕微鏡を用いずとも、高感度の欠陥検査が手軽に行えるようになった。
従来のマスク検査装置では、パターンのトップ面から観察していたため、パターンの測長を行うならば、トップ面のサイズを測ることになっていた。トップ面は通常丸まっているため、精度よく測長することが困難であったからである。しかしながら、本発明では、マスク基板上のパターン面を、マスク基板側から観察するため、パターンのボトム形状を正確に観察できる。その結果、パターンの正確な測長も可能になった。このため、本発明のマスク検査装置では、測長SEMの代わりとしても利用できるようになった。
実施の形態5.
本発明の実施の形態5に係るマスク検査装置について、図11を参照して説明する。図11は、本実施の形態に係るマスク検査装置600の構成を示す図である。本実施の形態に係るマスク検査装置600もまた、実施の形態5と同様に、インプリントマスクを検査対象としている。
マスク検査装置600は、検査光源630からの波長193nmのレーザ光L61を照明に用いている。レーザ光L61は、ハーフミラー601に入射して2方向に分割される。ハーフミラー601を透過したレーザ光L62はレンズ602aを通って絞られながら進み、均一化光学系603aに入射する。これによって空間的な光強度分布が均一化されたレーザ光L63が出射し、レンズ602bを通って平行になり、偏光ビームスプリッタ604に入射する。ここで、レーザ光L63はS波であるため、偏光ビームスプリッタ604で反射して下方に進み、λ/4波長板605を通過して、円偏光のレーザ光L64が出射する。レーザ光L64は、対物レンズ612に入射し、純水614とインプリントマスク608の内部を透過して、反対側に形成されたパターン面608cを照射する。
一方、ハーフミラー601で反射したレーザ光L65は、ミラー611aで反射してレンズ602cを通り、均一化光学系603bに入射する。これによって空間的な光強度分布が均一化されたレーザ光L66が出射し、レンズ602dを通って平行になり、ミラー611bで折り返され、コンデンサーレンズ606に入射し、インプリントマスク608のパターン面608cを照射する。
以上に説明した透過照明あるいは反射照明によって照明されたパターン面608cから発生する光学像のレーザ光L65は、対物レンズ612から上方に出射する。このレーザ光L64には、マスク608で反射した反射光と、マスク608を透過した透過光とが含まれる。マスク608で反射したレーザ光L64はマスク608に入射するレーザ光L64と反対方向の円偏光である。このため、マスク608で反射したレーザ光L64は、再びλ/4波長板605を通過して直線偏光になるが、今度はP波になっている。このため、マスク608で反射したレーザ光L64は、偏光ビームスプリッタ604を透過して、投影レンズ607を通り、二次元光センサ609に当たる。これによって、パターン面608cの像が二次元光センサ609上に拡大投影される。なお、二次元光センサ609としては、前述した実施の形態と同様、CCDやTDI等が適する。また、マスク608を透過したレーザ光L64も対物レンズ612から出射して、同様の光路で二次元光センサ609に入射する。
本実施の形態の特徴としては、対物レンズ612とインプリントマスク608との間に満たされる純水614は、図6に示した対物レンズ330、あるいは図7に示した対物レンズ340と同様に、対物レンズ612自体に設けられた純水供給部と純水吸引部(ただし図示せず。)から供給、吸引される。すなわち、本実施の形態に係るマスク検査装置600は、ローカルフィル方式になっているのが特徴である。その結果、純水614がインプリントマスク608から落ちこぼれることはないため、対物レンズ612をインプリントマスク608の上側に配置させることが可能になっている。つまり、インプリントマスク608のパターン面608cが下側を向いている。これはインプリント露光装置において、ウエハにインプリントする場合と同じ向きである。従って、インプリント露光装置で使用されているインプリントマスクを定期的に検査するために、本実施の形態のマスク検査装置600を利用する場合、インプリントマスク608を反転する必要がない。これによって、インプリント露光装置中にマスク検査装置600を組み込んで、迅速なマスク検査を行うことも可能になる。
また、本実施の形態に示されたインプリントマスク608は、図10に示された通常のインプリントマスク508よりも全体の大きさが4倍大きく、すなわち普通のKrFやArF用マスクと同じ6インチマスクと呼ばれるサイズを利用している。図12に、このインプリントマスクを検査する場合について説明する。図12に示すように、パターン領域615はインプリントマスク608の中央付近のみである。このため、純水614の吐出部616が対物レンズ612に備わってはいるが、対物レンズ612によってパターン領域615内で最も端を観察する場合、すなわち対物レンズ612の最端レンズ618がパターン領域615の端に位置する場合でも、吐出部616や吸引部617がインプリントマスク608から外側にはみ出ることがない。従って、本実施の形態では、対物レンズ612がインプリントマスク608の上側に配置されていても、ローカルフィル方式が適用できる。
実施の形態6.
本発明の実施の形態6に係るマスク検査装置について、図13を参照して説明する。図13は、本実施の形態に係るマスク検査装置700の構成を示す図である。マスク検査装置700は、EUVマスクを検査対象としている。マスク検査装置700では、照明光としての波長193nmのレーザ光L71はS波になっている。このため、検査光源730からのレーザ光L71は、偏光ビームスプリッタ705で反射して下方に進み、λ/4波長板706を通過して円偏光になってから、対物レンズ707を通って、EUVマスク701のパターン面702を照射する。照明されたパターン面702からの光学象が、対物レンズ707を通ってレーザ光L72のように上方に進み、再びλ/4波長板706を通ることで今度はP波となって偏光ビームスプリッタ705を透過し、投影レンズ708を通って、二次元センサ709上に拡大投影される。さらに、マスク701で反射した反射光は、上記の実施の形態と同様に、λ/4波長板706と通過するため、P偏光となる。よって、光の利用効率を向上することができる。
本実施の形態では、EUVマスク701は、高屈折率液体711が入っている水槽710内に置かれている。これにより、EUVマスク701のパターン面702と対物レンズ707との間は、高屈折率液体711で満たされるようになっている。このように水槽710を用いた液浸光学系を利用する理由としては、本実施の形態では凹凸形状を有するパターン面702に高屈折率液体711を接触させるが、その凹凸部に高屈折率液体711が十分染み込むようにする必要があるため、水槽710中にEUVマスク701を浸している。
なお、高屈折率液体711としては屈折率が約1.64の液体が用いられており、その結果、実質的に波長約118nmの光源で検査する場合と同等の高い解像性能が得られるようになった。なお、高屈折率液体711としては、例えば、JSR株式会社が開発した高純度炭素水素系の液体が適する。ただし、本実施の形態でも、高屈折率液体711の代わりに純水を用いてもよい。
以上説明したように、本発明に係るマスク検査装置は、光源として波長193nmのレーザを用いた場合、実質的な検査光源の波長は約124nmになるため、従来装置を用いる場合より約1.56倍も高い感度で欠陥等を検出できるようになる。これによると、検出欠陥の限界は検査光源波長の1/4程度と言われているため、約31nmになる。つまり4倍マスクの場合は、ウエハ上に転写される欠陥サイズ約8nmまで対応できることになるため、リソグラフィ技術の22nm世代だけでなく、16nm世代や11nm世代にも対応できる。あるいはまた、等倍マスクを用いるインプリントマスクの場合は、32nm世代に対応できる。
なお、本発明では、検査が終わったマスクを回収する際に、マスク基板に付いた純水を除去する必要がある。それには、乾燥空気で吹き飛ばしても、あるいは真空吸引装置で引き込んでもよく、さらには発塵の無い材質からなる円筒状スポンジを用いて、マスク基板の裏面を拭いてもよい。これにより、純水をマスクから簡単に除去することができる。
また、本発明のマスク検査装置で高精度な検査を可能にするには、マスク基板の合成石英としては、露光装置のレンズ用に利用されている高品質、すなわち屈折率のバラツキが極力小さい材質を用いるのが好ましい。
さらにまた、マスク自体に以下のような細工を施してもよい。すなわち、液浸用液体として純水を用いる場合、マスク基板である石英との屈折率に僅かながら差があるため、マスク基板の裏面に、反射防止コーティングを施してもよい。また、図1に示したように、マスク108を水槽113中で移動させる場合は、マスク基板108aの周囲に水が付きにくくするために、周囲に疎水性のコーティングを施してもよい。
また、上記の説明では、マスクをUV露光用マスク、又はインプリントマスクとして説明したが、これに限るものでない。すなわち、マスク検査装置により、パターン形成を行なうための露光に用いられるマスクを検査することができる。従って、レチクルも本願のマスクに含まれる。さらに、上記の説明では、検査光源からの光を2分割して、透過照明光、及び反射照明光としたが、これに限られるものではない。例えば、マスク検査装置が、透過照明光源、及び反射照明光源をそれぞれ有していてもよい。さらに、それぞれの実施の形態を適宜組み合わせて用いてもよい。また、透過像、又は反射像を撮像するため、それぞれの光路中に挿入可能なシャッターを配置してもよい。そして、透過像を撮像する場合は、反射照明光の光路中にシャッターを挿入する。また、反射像を撮像する場合は、透過照明光の光路中にシャッターを挿入する。
以下に、本願発明の主な効果について説明する。上記のように、本発明のマスク検査装置は、液浸技術を適用できるように、マスクのパターン面と対物レンズにおける最もマスク基板に近い最端レンズとの間に、空気の層を排除して液体で満たしたものである。これにより、簡便な構成で、分解能(解像度)を向上することができ、欠陥の検出感度を向上することができる。また、パターン面側から透過照明するため、ペリクル付きのマスクに対しての検査が可能となる。実施の形態1〜5に示したように、マスク基板におけるパターン面と反対側である裏面(反パターン面)側に対物レンズを配置することが好ましい。これにより、パターン面に液体が付着するのを防ぐことができる。
さらに、パターン面の観察部分からの像は、マスク基板内を通過させないと対物レンズを通らないが、ArF用やKrF用のマスクのマスク基板は透明な合成石英から成るため、裏面からパターン面を観察することができる。そこで、特にその裏面と対物レンズの最端レンズとの間を液体で満たした液浸光学系を適用できる。しかも、液体が接する裏面は極めてフラットであるため、接触させた液体を除去することも極めて容易であり、検査後に液体がマスク基板から除去しにくくなることはない。
このように、液浸部分がフラットな裏面であることも本発明の特徴である。その理由としては、もしもパターン面を液浸にするならば、パターンの凹凸が存在する部分に液体を流すことになり、特にパターンが密集した部分では、出っ張ったパターンの間には液体が侵入しにくいことから、完全な液浸を実現することが困難になるからである。
なお、本発明で言及する対物レンズの定義としては、マスクパターン内の検査する領域を、像を検出するために用いられる二次元光センサ等に拡大投影する光学系におけるマスクパターン側に配置されるレンズ群のことである。なお、前記拡大投影する光学系とは、対物レンズと、少なくとももう一つのレンズ群あるいはレンズ(本発明では投影レンズと呼ぶ。)で構成される。投影レンズの焦点距離は、対物レンズの焦点距離よりも長くなっており、その結果、拡大投影できるようになっている。
ところで、一般にマスク基板の厚みは、6.35mmと定められているが、実際は±0.1mm程度のバラツキがある。その結果、パターン面内の観察部の像が歪むことがある。その理由としては、本発明で用いられる対物レンズにおける各レンズは、投影光学系内に配置された厚み6.35mmの石英製平行平板が含まれると考慮して設計されるものである。そのため、マスク基板の厚みのバラツキは、対物レンズと観察部との間隔の調整で、フォーカスを合わせることは可能であるが、厚みのバラツキの範囲全体に亘って、歪みを数nm程度以下と無視できるように各レンズを設計することが困難であるからである。
そこで、上記のように、少なくとも検査するマスクごとに、マスク基板と対物レンズにおける先端のレンズとの間に満たす水の厚みを調整できる調整機構を設ける。これによると、マスク基板の厚みにバラツキがあっても、マスク基板の厚みと、マスク基板と水の厚みとの和をほぼ一定にすることができる。
マスク基板である石英の屈折率は、波長193nmにおいて約1.56であり、水の屈折率は約1.44である。これらは、空気の1.0よりも遥かに大きい。これらのことから、マスク基板の厚みがばらついた分を相殺するように、これら2層を合わせた光学距離を、ほとんど変わらないようにできる。よって、焦点位置での観察を行なうことができ、検出感度を向上させることができる。
実施の形態7.
本発明の実施の形態7に係るマスク検査装置について、図17〜図19を参照して説明する。図17は、本実施の形態に係るマスク検査装置100の構成を示す図である。図18は、本実施の形態の液浸型の対物レンズ112Aの構成を示す図である。同図(a)は対物レンズ112Aを上から(最端レンズ115側から)見た図であり、同図(b)はその断面図である。また、図19は、マスクのパターン領域108eと対物レンズ112Aの相対位置を説明するための図である。同図(a)はマスク108の上面から見た図であり、同図(b)は側面から見た図である。本実施の形態において、図1に示す実施の形態1に係るマスク検査装置100と異なる点は、対物レンズ112の構造である。図17において、図1に示すマスク検査装置と同一の構成要素には同一の符号を付し、説明を省略する。
本発明者らは、上述のとおり、マスク検査装置に液浸技術を適用して感度を約1.5倍程度まで高めることができる液浸型のマスク検査装置を発明した。液浸技術を適用した露光装置とは違って、マスクのパターン面はペリクルと呼ばれる透明な薄膜でカバーされているため、パターン面に直接、純水などの液浸水を接触させることはできない。そこで、本発明者らは、マスクのマスク基板側からパターン面を観察することで、液浸技術を適用できるようにした液浸型のマスク検査装置を発明した。
ところが、上述した液浸型のマスク検査装置では、以下に説明する課題がある。すなわち、図21に示すように、対物レンズ112をマスク108の下側に配置する場合、マスク108を保持するアームの爪と対物レンズ112との干渉(ぶつかり)を避けるために、マスク108で許される最大のパターン面108cの全面を検査することができなかった。
つまり、図21に示したように、152mm角の6インチマスクのパターン領域108eの最大サイズは、132×104mmである。このため、このパターン領域108eの周囲付近を検査しようとすると、液浸型の対物レンズ112のボディー(円筒の場合は外径)が、152mm角のマスク108からはみ出ることになる。一方、マスク基板108aと液浸型対物レンズ112との隙間には液浸水が満たされるが、その間隔は、通常1mm程度と薄いため、この間にアームの爪を入れることもできない。このため、対物レンズ112をマスク108の下側に配置するタイプの液浸型マスク検査装置では、検査できるパターン領域108eが、許される最大サイズより、数十ミリ程度狭くなってしまうことが問題であった。
なお、対物レンズ112が、パターン領域108eの端に近い部分を観察するように配置されると、そのボディーがマスク108からはみ出ることになる要因としては、一般的にマスク検査装置に用いられる対物レンズ112を構成する複数枚のレンズやミラーの外径が、最端レンズよりも大きいからである。例えば、最端レンズの外径が20mm程度であっても、内部には外径50mm程度の大きなレンズやミラーが用いられている。また、他の理由としては、マスク検査装置に用いられる対物レンズ112は、100倍以上の高倍率で観察するために、焦点距離が2〜3mmと非常に短くする必要があるのに対して、ワークディスタンスを7〜8mm程度と、焦点距離よりも大きくする必要があるからである。この結果、例えば、図21に示したような反射屈折型の対物レンズを用いる場合が多く、そこでは、内部に外径50〜60mmのレンズや反射鏡が用いられる。
このような問題を解決すべく、本発明者らは、図17に示す対物レンズ112Aを発明した。図17に示すように、マスク検査装置100は、実施の形態1と同様に、検査光源130、ハーフミラー101、レンズ102a〜d、均一化光学系103a、b、偏光ビームスプリッタ104、λ/4波長板105、コンデンサーレンズ106、投影レンズ107、二次元センサ109、ミラー111a、b、対物レンズ112A、水槽113、純水114を備えている。マスク検査装置100は、検査光源130からの波長193nmのレーザ光L01を照明に用いている。レーザ光L01は、ハーフミラー101に入射して2方向に分割される。
まず、透過照明に関して説明する。ハーフミラー101を透過したレーザ光L02はレンズ102aを通って絞られながら進み、均一化光学系103aに入射する。これによって空間的な光強度分布が均一化されたレーザ光L03が出射され、レンズ102bを通って平行になり、ミラー111bで折り返され、コンデンサーレンズ106に入射する。これによってレーザ光L04のように絞られながら進み、マスク108のパターン面108c内の観察部分を照射する。なお、コンデンサーレンズ106は、マスク108のペリクル108bの直上に配置されている。
次に、反射照明に関して説明する。ハーフミラー101で反射したレーザ光L05は、ミラー111aで反射してレンズ102cを通り、均一化光学系103bに入射する。これによって空間的な光強度分布が均一化されたレーザ光L06が出射し、レンズ102dを通って平行になり、偏光ビームスプリッタ104に入射する。ここで、レーザ光L07はS波であるため、偏光ビームスプリッタ104で反射して、レーザ光L08のように上方に進む。レーザ光L08はλ/4波長板105を通過することで、レーザ光L09は円偏光になる。レーザ光L09は、水槽113の中央部に固定された液浸型対物レンズ112に入射し、純水114とマスク108のマスク基板108aを透過して、パターン面108cを下側から照射する。
マスク108のパターン面108c内の観察部を観察する光学系を説明すると、透過照明あるいは反射照明によって照明されたパターン面108c内の観察部から発生する光学像のレーザ光(すなわち光学情報を空間的強度分布内に含んだレーザ光)は、対物レンズ112から下方に出射するが、そのレーザ光L09は反対方向の円偏光になっているため、再びλ/4波長板105を通過して今度はP波になるため、偏光ビームスプリッタ104を透過する。その結果、投影レンズ107を通り、二次元光センサ109に当たる。すなわち、パターン面108c内の観察部の像が、液浸型対物レンズ112の焦点距離と投影レンズ107の焦点距離との比だけ拡大され、二次元光センサ109上に拡大投影される。
液浸型対物レンズ112Aには、ここでは反射屈折型のものが用いられており、焦点距離は約3mmである。一方、投影レンズ107の焦点距離は約300mmであり、その結果、二次元光センサ109上に、パターン面108c内の像が約100倍に拡大されて投影される。なお、二次元光センサ109としては、CCDやTDI等が適する。
マスク検査装置100では、マスク108の下側に液浸型対物レンズ112Aが配置されており、マスク基板108aと液浸型対物レンズ112Aとの間には、検査中は、液浸水としての純水114が満たされるようになっている。これによって、液浸型対物レンズ112AのNAを1以上に高くでき、同じ波長の通常のドライの検査装置に比べて、感度は約1.5倍向上している。
ここで、液浸型対物レンズ112Aの構造について図18を参照して詳細に説明する。対物レンズ112Aは、ボディー112a、最端レンズ115、純水供給口116a、116b、第一純水吸引口117a、117b、第二純水吸引口118、ドライエアー噴出口119a、119b、段差部140を備えている。
対物レンズ112Aのボディー112aは、略円筒形状である。ボディー112a上面の略中央には、最端レンズ115が設けられている。最端レンズ115のマスクスキャン方向の上流側又は下流側にはそれぞれ純水供給口116a、116bが形成されている。純水114は、純水供給口116aあるいは116bから供給される。純水供給口の116aか116bかどちらから純水を供給するかは、検査中のマスク108のスキャン方向によって決められる。つまり、供給された純水が、マスク108のスキャンによって最端レンズ115の全面をカバーするように、マスク108のスキャンの上流側となる純水供給口の116aあるいは116bから純水114が供給される。
純水供給口116a、116bのスキャン方向の上流側又は下流側には、第一純水吸引口117a、117bがそれぞれ設けられている。純水供給口116a、116bから供給された純水114は、純水吸引口117aあるいは117bのいずれかで吸引される。つまり、純水吸引口117a及び117bは、図示されていない真空吸引装置につながっており、検査中は常に吸引動作を行っている。
第一純水吸引口117a及び第2純水吸引口117bの外側には、これらを囲むように第二純水吸引口118が形成されている。供給された純水114が、純水吸引口117aあるいは117bのいずれかで完全に回収できなかった場合は、これらを囲む大きな吸引口を有する第二純水吸引口118から、吸引し損ねた純水が吸引される。
また、第二純水吸引口118の外側には、ドライエアー噴出口119a、119bがスキャン方向の上流側又は下流側に形成されている。純水がマスク基板108aに付着して、第二純水吸引口118でも吸引しにくい場合は、ドライエアー噴出口119aあるいは119bからドライエアーを噴出させることで、マスク基板108aに付着した純水を吹き飛ばす。これを動作させた場合に、吹き飛ばされた純水は、純水吸引口118から吸引されるようになる。
図18(b)に示すように、ボディー112aの上側(最端レンズ115側)のスキャン方向に直交する方向の両端には、段差部140が設けられている。すなわち、対物レンズ112Aのボディー112aの形状は、最端レンズ115だけでなく、第二純水吸引口118やドライエアー噴出口119a、119bを含む先端面以外は、カットされて段差が付いている。これが本実施の形態の大きな特徴であり、段差部114を有することで、以下に説明するように、マスクのパターン領域108eの全面をくまなく検査できるようになる。
段差部140の高さは、後述するアームの爪150a、150b、150c、150dの厚みに対応して形成されている。段差部140の高さは、例えば4〜5mm程度とすることができる。ここで、図19を参照して、マスク108のパターン領域108eと対物レンズ112Aとの相対関係について説明する。図19においては、液浸型対物レンズ112Aによってパターン領域108eの左下端部を観察する場合が示されている。
図19に示すように、マスク108は、そのマスク基板108aの4つの角部において、下面からアームの爪150a、150b、150c、150dによって支持されている。図19(a)に示すように、パターン領域108eの左端部を観察する場合、上から見ると、液浸型対物レンズ112Aのボディー112aがマスク108から飛び出している。しかしながら、図19(b)に示すように、横から見ると、液浸型対物レンズ112Aの上面におけるカットされた段差部140に、アームの爪150cが入っている。同様に、マスク108のパターン領域108eの左上、右上、右下端部を観察する場合においても、対物レンズ112Aの段差部140にアームの爪150a、150b、150cが入ることとなる。このため、対物レンズ112Aとアームの爪150とが干渉(ぶつかる)ことがなく、パターン領域108eの最端部まで観察することができる。
ここで、本発明における液浸型対物レンズ112Aの外径に関して、図20を参照して定量的に説明する。図20中の液浸型対物レンズ112Aでは、その最端レンズ115だけを描いてある。液浸型対物レンズ112Aの解像度を左右する特性である開口数NAは、マスク基板108aの屈折率をnm、光軸と最端レンズ115の最も外側に入射する観察点から発生する回折光D1とがなす角度(見込み角)をθmとすると、式(1)で表される。
また、回折光D1はマスク基板108aから純水114中に進む際に屈折する。このとき、純水114の屈折率をnw、屈折角をθwとすると、式(2)が成り立つ。
これらの角度θm及びθw、マスク基板108aの厚みtm、純水114の厚みtwを用いると、最端レンズ115に必要な最小の半径Rが式(3)から求められる。
そこで、例えば、液浸型の高NA露光装置で一般的なNAの値1.3となる液浸型対物レンズ112Aを用いるならば、波長193nmにおけるマスク基板108a(すなわち合成石英)の屈折率1.56077、純水114の屈折率1.436、マスク基板108aの厚みtm=6.35mm、純水114の厚みtw=1.0mmを代入すると、R=11.7mmとなる。これが最端レンズ115に必要な最小半径であるが、レンズ保持として、周囲に2mm程度の余裕が必要である。このため、最端レンズ115の周囲のボディーの外寸法(図でXの大きさのことであり、段差を付けられない部分)を考慮すると、(R+X)の値としては、15mm程度以上が必要になる。この長さ(R+X)は、図19に示されたマスク108のパターン領域108eの外側における幅24mmの部分よりも小さい。従って、対物レンズ112Aをマスク108の下側に配置した場合、段差部140とマスク基板108aとの間隙にアームの爪150a、150cを配置することができる。
従って、本実施の形態のマスク検査装置100では、マスク108のスキャン方向としては、図19中の矢印のように、パターン領域108eの外側における幅24mmの部分の下に、液浸型対物レンズ112の段差部140が位置するような方向になっている。なお、これに対して、もしもパターン領域108eの外側における幅10mmの部分の下に、液浸型対物レンズ112の段差部分が位置するような方向(すなわち、図19でマスク108を左右方向)にスキャンするならば、段差部はマスク108の外側より出てしまい、マスク基板108aの下側にアームの爪を挿入するスペースが無くなってしまう。
以上説明したように、本実施の形態では、対物レンズ112Aのボディー112aに段差部140を設けたことで、液浸型対物レンズ112がパターン領域108eの最端を観察する位置に来ても、アームの爪150a、b、c、dを段差部140に挿入でき、マスク108を支えられるようになった。これにより、液浸型マスク検査装置において、対物レンズをマスクの下側に配置する場合でも、マスクのパターン領域全面を検査することが可能となる。
ここで、図22及び図23を参照して、図17に示されたマスク検査装置100に用いられる液浸型の対物レンズの他の例について説明する。図22は、図18に示された対物レンズ112Aとは構造が異なる対物レンズ112Cを示す図である。図22(a)は対物レンズ112Cを上側から(最端レンズ115側から)見た図であり、同図(b)はその断面図である。図23は、マスク108と対物レンズ112Cの相対位置について示す図である。なお、マスク検査装置の対物レンズ112C以外の構成要素については、図17に示したものと同等であるため説明を省略する。ここでは、対物レンズ112Cに置ける純水の供給と回収に関する構造のみを説明する。図22において、図18に示した対物レンズ112Aと同一の構成要素には同一の符号を付し説明を省略する。
図22に示すように、液浸型対物レンズ112Cの先端面の略中央には、最端レンズ115が形成されている。最端レンズ115の近傍には、マスク108のスキャン方向の上流側に純水供給口116が設けられている。純水供給口116の形状としては、円形の最端レンズ115にきわめて近い位置に配置できるように、横長で、最端レンズ115の外形に沿って丸まった形状となっている。図22に示す例では、対物レンズ112Cに対して、マスクが下方向にスキャンされる。すなわち、対物レンズ112Cは、ブロック矢印で示すように、マスク108に対して相対的に上方向に移動する。その結果、純水供給口116から噴き出る純水は最端レンズ115全面を満たすように流れ出る。
最端レンズ115に接触した純水は、マスク108の移動によって、最端レンズ115から離れ、第一純水吸引口117で吸引される。ただし、第一純水吸引口117で吸引しきれなかった僅かな純水は、第二純水吸引口118から吸引される。この第二純水吸引口118は、第一純水吸引口117と最端レンズ115とを囲むような大きな円弧形状になっている。この第二純水吸引口218によって、マスクのスキャン中でも純水を完全に回収することができる。
本実施例の液浸型対物レンズ112Cは、図18に示された液浸型対物レンズ112Aとは異なり、純水供給口116が1個しか付いていない。そこで、本実施例では、マスク108のスキャン方向が変わる際に、純水吸引口116がマスクに対する液浸型対物レンズ201の移動方向の上流側に常に位置するように、液浸型対物レンズ112C自体が回転するようになっている。すなわち、図23に示すように、対物レンズ112Cの方向が、112Ca→112Cb→112Ccと変化する。
以上のように、本実施例では、液浸型対物レンズ112C自体がマスクのスキャン方向に応じて向きを変えられるように回転可能に取り付けられている。これによって、純水供給口116を1個設ければよく、液浸型対物レンズ112Cにおける純水の供給と吸引の構造が簡素化できる。
さらに本実施例によると、図23に示された112Caや112Ccのように、マスクのスキャン方向と平行な(図では上下の)向きだけでなく、左右や斜めの向きにも設定できる。つまり、マスクを上下のスキャン移動だけでなく、左右や斜めに移動させる間でも、液浸型対物レンズ112Cを液浸動作させることができる。
また、図22に示すように対物レンズ112Cには、ドライエアー噴出口119が設けられている。これにより、純水供給口116から噴き出た純水が、最端レンズ115と反対側に大きく流れ出てしまうことを防ぐことができる。すなわち、純水供給口116から純水を噴出している間に、ドライエアー噴出口119から噴出されたドライエアーによって、純水を押し出すことができる。特に、このようにドライエアーの噴出によって、純水の広がり方を制御できることで、場合によっては、マスクがスキャンせずに停止している間でも、純水供給口116から噴き出た純水が最端レンズ115と反対側に大きく流れ出ないようにすることができる。従って、マスク108を停止させて、特定の部分を観察するレビュー機能を用いる時でも、液浸型対物レンズ118を液浸動作させることも可能になる。
実施の形態8.
本発明の実施の形態8に係るマスク検査装置について、図24を参照して説明する。図24は、本実施の形態に係るマスク検査装置のマスク固定機構の構成を示す図である。図24(a)は、マスク固定機構を上側から見た図であり、同図(b)は側面から見た図である。
上述のとおり、マスクのマスク基板側からパターン面を観察することで、液浸技術を適用できるようにした液浸型のマスク検査装置を発明した。ところが、上述した液浸型のマスク検査装置では、以下のような他の課題がある。すなわち、図12に示すように、マスク208の上側に対物レンズ212を配置する場合、マスク208のパターン面208cの端の方を観察する際に、液浸水がマスク基板208aからはみ出してしまうと、マスク基板208aの液浸面と反対側に回りこんでしまい、ペリクル208bを濡らしてしまう可能性があるという問題がある。
そこで、本発明のマスク検査装置において、液浸型対物レンズをマスクの上側に配置する構成を実現する場合に有効な手法であるマスク固定機構240に関して、図24を用いて説明する。マスク固定機構240は、L字型固定板241、固定板242a、242b、パッド243a〜243g、アーム244a、244bを有している。
L字型固定板241、固定板242a、242bは、撥水性の高いフッ素樹脂からなる。L字型固定板241のマスク208との接触部には、パッド243a、243b、243cが設けられている。また、固定板242aのマスク208との接触部には、パッド243d、243eが設けられている。さらに、固定板242bのマスク208との接触部には、パッド243f、243gが設けられている。固定板242a、242bの略中央部には、それぞれアーム244a、244bが取り付けられており、移動可能・多少回転可能となっている。パッド243a〜243gは、厚みが約0.1mmと非常に薄くなっている。すなわち、マスク208と、L字型固定板241、固定板242a、242bとの間隙は、約0.1mmとなる。
マスク208を検査するために本発明のマスク検査装置にセットする場合、始めにマスク208は、L字型固定板241に対して、直交する二方向が突き当てられるように配置される。具体的に説明すると、図24でマスク208をL字型固定板241に付いている2つの薄いパッド243b、243cに突き当てるために、固定板242aで下方向に押している。固定板242aにも2箇所に薄いパッド243d、243eが付いており、これらがマスク208に接触する。一方、図24で左右方向にマスク208をL字型固定板241に付いている薄いパッド243a突き当てるために、固定板242bで押している。固定板242bにも2箇所に薄いパッド243f、243gが付いており、これらがマスク208に接触する。
なお、図24(b)に示すように、L字型固定板241や固定板242a、242bの上面の高さは、マスク208におけるマスク基板208aの上面の高さとほぼ同じになっている。従って、液浸型対物レンズ212がマスク208を外れても、L字型固定板241や固定板242a、242bにぶつかることはない。
以上説明したように、L字型固定板241、固定板242a、242bは、撥水性の高いフッ素樹脂からなり、しかもパッド243a〜243gは厚みが約0.1mmと非常に薄くなっている。このため、もしもマスク208上にこぼれた純水がL字型固定板241や固定板242a、242bの上に広がっても、これらのギャップから下に落ちることはない。これによって、マスク208におけるパターン領域の最も周辺部に液浸用対物レンズ212が位置する場合でも、液浸用対物レンズ212から供給される純水214が、マスク208から下にこぼれ落ちることがない。これにより、対物レンズ212から供給される液浸水がマスク208のペリクル208b側まで回り込むのを防止することができる。
ここで、図24に示したマスク固定機構240をより簡素化した他のマスク固定機構250の例を図25に示す。図25に示すように、マスク固定機構250では、マスク208における長方形状のパターン領域208eの短手方向にある2辺のみに、広がった純水を受けるための純水受け板251a、251bが付くようになっている。すなわち、純水受け板251a、251bがマスク208に近接することで、マスク208からはみ出す純水を受け止めるようになっている。純水受け板251aの略中央には、アームが取り付けられており、純水受け板251aでマスク208を下方向に押して純水受け板251bに突き当てている。なお、ここではマスク208を保持するために、四隅にアームの爪253a〜dで固定される。
なお、本実施例のように液浸型対物レンズ212をマスク208の上側に配置する場合、液浸型対物レンズ212の下面に備えられた純水吸引口や第二純水吸引口による吸引によって、純水だけでなく、マスク208自体も吸引されて持ち上がってしまう可能性がある。そこで、本実施例では、図24(b)に示すように、真空吸着管245a、b(実際には4本あり、マスク301の四隅に配置される。)によって、マスク208を下方に引っ張っている。これによってマスク208が持ち上がることはない。
ところで、図24に示すように、対物レンズ212はマスク208の上側に配置されるため、図18及び図22に示すように段差部140を設ける必要がない。その結果、液浸用対物レンズの最端レンズが設けられている下面には、純水の供給口や吸引口を多数設けることができる。ここで、図26を参照して、液浸型対物レンズの他の例について説明する。図26は、本実施の形態で用いられる対物レンズ220の構成を示す図である。
図26に示すように、対物レンズ220の下面の略中央部には、最端レンズ221が設けられている。最端レンズ221の周囲には、4箇所の純水供給口222a〜dが設けられている。また、純水供給口222a〜dの外側には、純水供給口222a〜dに対応して、4箇所の第一純水吸引口232a〜dが設けられている。これら純水供給口222a〜d、第一純水吸引口232a〜dが4箇所設けられることにより、マスク208のスキャン方向が2方向だけでなく、4方向に移動する場合にも対応できるようにしている。すなわち、それぞれの方向の移動の際に、4箇所の純水供給口222a〜dの中で移動の上流側に位置するものから供給し、4箇所の純水吸引口223a〜dの中で移動の下流側に位置するものから吸引するようになっている。また、これら純水供給口222a〜dと純水吸引口223a〜dとを取り囲むように、リング状の第二吸引口224が設けられている。
以上のように、本発明のマスク検査装置において、液浸用対物レンズをマスクの上側に配置する場合は、液浸用対物レンズにおける液浸水の供給口や吸引口を多数設けることができるため、液浸用対物レンズ自体を回転させることなく、マスクの移動方向に対応するものだけを動作させることができる。
ただし、マスクの移動を停止させて特定部を液浸用対物レンズで観察する場合は、これら4個の純水供給口222a〜d全てから少しづつ純水を流すのが好ましい。これによって最端レンズ221の全面に純水を接触させることが容易になる。
これに関して、図27を用いて説明する。図27は、液浸型対物レンズ220によるレビュー時の純水供給動作の説明図である。図27(a)に示すように、マスクを図で上から下にスキャンする場合は、液浸用対物レンズ220における純水供給口222aのみから純水を吐出させている。これによって図で斜線で示した領域が純水で満たされることで、最端レンズ221の全面が純水でカバーされることになる。
一方、マスクの移動を停止させるレビュー等の場合に、もしも純水供給口222aのみから純水を吐出させるならば、図27(b)に示すように、最端レンズ221の一部分しか純水でカバーされない場合がある。これに対して、図27(c)に示すように、4箇所の純水供給口222a〜d全てから純水を吐出させることで、マスク208が停止していても、最端レンズ221の全面が純水でカバーされる。
なお、本発明のような液浸型マスク検査装置における液浸水としては、純水が好ましいが、オゾン水を用いてもよい。オゾン水は、特に、有機物の不純物を分解する能力が高いため、マスク基板上に付着した有機の不純物を、マスク検査中に分解することができる。これによると、マスク検査を行うことで、マスク基板が洗浄され、マスク基板上に発生するヘイズ等の曇りを防止する効果も有する。
以上説明したように、本発明に係るマスク検査装置は、液浸方式による実用的なマスク検査装置が実現されるため、リソグラフィ技術の32〜22nm世代に対応できる。さらにまた、本発明のマスク検査装置では、液浸方式により1以上の高いNAが実現されるため、マスクをスキャンさせずに、マスク内の特定領域を本発明の液浸型対物レンズで観察するレビュー機能によって、マスクを露光装置に装着して露光する場合の光学的シミュレーションを行う場合でも、1以上の高NAで行えるため、液浸型の露光装置で露光する場合の光学的シミュレーションが実現できる。