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JP5177726B2 - 皮膚貼付用粘着剤組成物、および皮膚貼付用粘着テープもしくはシート - Google Patents

皮膚貼付用粘着剤組成物、および皮膚貼付用粘着テープもしくはシート Download PDF

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JP5177726B2
JP5177726B2 JP2000265365A JP2000265365A JP5177726B2 JP 5177726 B2 JP5177726 B2 JP 5177726B2 JP 2000265365 A JP2000265365 A JP 2000265365A JP 2000265365 A JP2000265365 A JP 2000265365A JP 5177726 B2 JP5177726 B2 JP 5177726B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は医療衛生分野で外用用途に使用される皮膚貼付用粘着剤組成物およびこれを用いた皮膚貼付用粘着テープもしくはシートに関するものであり、詳しくは救急絆創膏や巻絆、パッド付き大型絆創膏、ドレッシング材などに好適に使用されるものである。
【0002】
【従来の技術】
皮膚面に貼付して使用する皮膚貼付用粘着テープもしくはシートは、通常、基材フィルムの片面に粘着剤層を設けてなるものであり、該粘着剤層を介して適用すべき皮膚面に貼着使用される。
【0003】
このような皮膚貼付用粘着テープやシートに用いる粘着剤は、一般にゴム系粘着剤とアクリル系粘着剤に大別される。
【0004】
ゴム系粘着剤は天然ゴムやイソプレンゴム、スチレン/イソプレン/スチレン系ゴムなどのゴム成分に、粘着付与剤や軟化剤などを配合して粘着剤組成物としており、皮膚面に対して優れた接着力を有するものである。しかしながら、この粘着剤は通常、疎水性が高く、透湿性が低いので、貼付中に皮膚面からの発汗などによって皮膚面が蒸れて皮膚刺激を生起したり、夏場や入浴時などの多量の発汗時には皮膚接着力が急激に低下する恐れがある。
【0005】
一方、アクリル系粘着剤は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分単量体とし、これに共重合性の各種単量体を共重合させることによって、目的に応じた特性をバランス良く有する粘着剤を調製することが可能であり、粘着特性の制御が比較的容易なものである。ところが、アクリル系粘着剤は粘着剤組成物に親水性を付与したり、高透湿性を付与したりすることが比較的容易である反面、ゴム系粘着剤のような皮膚面に対する接着性を強接着にすることが難しく、また、上記ゴム系粘着剤のように夏場や入浴時の発汗に対する皮膚接着力の低下の問題を解決するまでに至っていないのが実情である。
【0006】
つまり、現在市販されている皮膚貼付用粘着剤およびそれを用いた粘着テープもしくはシートは、比較的乾燥した皮膚面に対しては優れた接着力を有するが、皮膚面からの発汗によって接着力が著しく低下することを免れず、発汗に対しても満足できる皮膚接着性を維持できるものが得られていないのが実情である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記従来技術の問題点を解決するためになされたものであって、夏場やスポーツ時、入浴時などの皮膚面からの発汗が多い環境下でも実用的に充分な皮膚接着性を維持することができ、しかも数日間にわたる皮膚貼付でも剥がれやずれがほとんど生じることがない皮膚貼付用粘着テープもしくはシートを得るべく検討を重ねた結果、特定の組成からなるアクリル系共重合体に、特定のカルボン酸エステルを含有させ、不溶分の量を特定の範囲に調整してなる粘着剤組成物を用いることによって、上記問題点を解決できることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル40〜80重量%、アルコキシ基含有エチレン性不飽和単量体10〜60重量%、カルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体1〜10重量%を含む単量体混合物から得られるアクリル系共重合体100重量部と、室温で液状またはペースト状のカルボン酸エステル20〜120重量部を含有する粘着剤組成物であり、アクリル系共重合体の30〜80重量%が不溶化していることを特徴とする皮膚貼付用粘着剤組成物を提供するものである。
【0009】
さらに、本発明は、基材フィルムの少なくとも片面に、直接的もしくは間接的に請求項1〜4の何れか1項に記載の皮膚貼付用粘着剤組成物を層状に形成してなる皮膚貼付用粘着テープもしくはシートを提供するものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の皮膚貼付用粘着剤組成物に用いる単量体混合物は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、アルコキシ基含有エチレン性不飽和単量体と、カルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体とを必須成分として含有するものである。
【0011】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、粘着剤組成物および粘着剤層に粘着性、皮膚接着性を付与する成分であり、特にアルキル基の炭素数が2以上、特に6〜15の長鎖アルキルエステルを用いると効果的である。また、(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、皮膚に対する刺激性が比較的少なく、長期間の使用によっても粘着性の低下が起こりにくいという利点を有するものである。
【0012】
このような(メタ)アクリル酸アルキルエステルの具体例としては、アクリル酸またはメタクリル酸のエチルエステル、プロピルエステル、ブチルエステル、ペンチルエステル、ヘキシルエステル、ヘプチルエステル、オクチルエステル、ノニルエステル、デシルエステル、ドデシルエステルなどを一種もしくは二種以上併用して用いることができる。なお、これらのアルキルエステル鎖は直鎖であっても、分岐鎖であってもよいことは云うまでもない。
【0013】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、後述する各種エチレン性不飽和単量体と共重合することによって粘着剤組成物となるが、本発明においては40〜80重量%、好ましくは50〜70重量%の範囲で共重合することが望ましい。(メタ)アクリル酸アルキルエステルの共重合量が40重量%に満たない場合には、得られたアクリル系共重合体に充分な皮膚接着性が付与されず、また、80重量%を超える量の共重合量では凝集力の低下が見られ、皮膚面からの剥離除去時に糊残り現象を生じることがある。
【0014】
一方、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合するアルコキシ基含有エチレン性不飽和単量体は、得られる粘着剤組成物や粘着剤層に親水性を与えて水蒸気透過性と吸湿性を付与する成分であり、本発明の効果を発揮するうえで重要な成分である。従って、最終的に得られるアクリル系共重合体中10〜60重量%、好ましくは20〜50重量%の範囲で共重合することが望ましい。共重合量が10重量%に満たない場合には、本発明の効果を発揮するための親水性の付与や発汗時の皮膚接着性の維持に対して充分な効果を得ることが難しく、また、60重量%を超える共重合量では、粘着剤としての皮膚接着性が低下して実用的な接着力を維持することが難しくなるのである。
【0015】
このようなエチレン性不飽和単量体としては、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、エトキシジエチレングリコールアクリレート、ブトキシジエチレングリコールアクリレート、メトキシエチルアクリレート、エトキシエチルアクリレート、ブトキシエチルアクリレートなどの炭素数が1〜4のアルコキシ基を有するアルコキシアルキルアクリレートを用いることが好ましい。
【0016】
また、本発明では上記アルコキシ基含有エチレン性不飽和単量体と共にカルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体を共重合する。つまり、該カルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体を共重合することによって、架橋処理する際の反応点を確保できると共に、得られるアクリル系共重合体の凝集力が向上するので、粘着剤組成物を調製する上では重要な単量体となる。しかしながら、この単量体は多量に共重合すると凝集力の向上は期待できるが、皮膚刺激性が次第に強くなる。従って、本発明ではカルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体を共重合する場合、1〜10重量%、好ましくは3〜8重量%程度の共重合比率とすることが望ましい。
【0017】
このような単量体の代表例としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、フマール酸、(無水)マレイン酸などが挙げられる。これらのうち、共重合性や取扱性などの点で好ましい単量体としては、アクリル酸やメタクリル酸が挙げられる。
【0018】
なお、本発明の皮膚貼付用粘着剤組成物中に含有させる共重合体としては、上記各単量体の混合物を必須成分として得られる共重合体を用いることができるが、親水性の付与などの各種改質を行うための改質用単量体として、スチレンや酢酸ビニル、N−ビニル−2−ピロリドン、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレートなどの単量体を必要に応じて適宜共重合してもよいものである。
【0019】
本発明の皮膚貼付用粘着剤組成物におけるアクリル系共重合体は、ガラス転移温度が250°K以下とすることが好ましい。つまり、ガラス転移温度を250°K以下にすることによって、皮膚貼付用粘着テープやシートとして重要な皮膚接着力を充分に発現するようになるのである。
【0020】
また、アクリル系共重合体の重量平均分子量を100万以下、好ましくは50万〜90万程度に調整することが望ましい。つまり、本発明のアクリル系共重合体は、相溶させるカルボン酸エステルによって可塑化されても充分な凝集性を発揮させるために、架橋処理などを施して不溶分を30〜80重量%の範囲調整する必要があるが、アクリル系共重合体の重量平均分子量が大きすぎると、粘着剤組成物から粘着剤層を形成させた場合に、粘着剤層の内部凝集力が高まり過ぎて皮膚接着力不足に陥る場合がある。従って、本発明では用いるアクリル系共重合体の重量平均分子量を100万以下に調整しておくことが望ましいのである。
【0021】
上記アクリル系共重合体を得るための重合方法としては、溶液重合や乳化重合、懸濁重合など特に限定されるものではなく、過酸化物系化合物やアゾ系化合物のような通常のラジカル重合開始剤を用いたラジカル重合によって共重合することができる。
【0022】
本発明の皮膚貼付用粘着剤組成物は、上記アクリル系共重合体100重量部に対して、20〜120重量部のカルボン酸エステルを含有するものである。本発明に用いるカルボン酸エステルは、室温下で液状またはペースト状の性状を示すものであって、粘着剤組成物とした場合に接着性が許容できない範囲まで低下するために、ロウ状などの固形状のものを用いることはできない。
【0023】
本発明においてカルボン酸エステルは、前記アクリル系共重合体と相溶させることによって、粘着剤層にした場合に、微小変形領域での弾性率を低下させることができ、貼付する皮膚面の凹凸に対する粘着剤層表面の密着性(濡れ性)を向上させて、良好な皮膚接着性を発揮させることができ、さらに優れた耐汗接着性を発揮させるのである。この理由は明らかではないが、発汗時において皮膚面と粘着剤層との界面の水分が、界面活性剤的に作用するカルボン酸エステルによって粘着剤層内に吸収され、さらに吸収された水分によって粘着剤層の透湿度も向上するようになり、結果的に発汗時においても皮膚接着性を維持することができると推定される。
【0024】
用いることができるカルボン酸エステルとしては、前記アクリル系共重合体に親和性、相溶性を示すと共に、発汗時の水分に対しても親和性を示すものであって、具体的には、ミリスチン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、イソステアリン酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、フタル酸ジエチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、オレイン酸オクチルドデシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、2−エチルヘキサン酸セチル、2−エチルヘキサン酸イソセチル、2−エチルヘキサン酸ステアリル、コハク酸ジオクチルなどの一価アルコールを用いたカルボン酸エステルや、ジカプリル酸プロピレングリコール、ジカプリン酸プロピレングリコール、ジイソステアリン酸プロピレングリコール、モノカプリル酸グリセリル、トリカプリル酸グリセリル、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル、トリカプリン酸グリセリル、トリラウリン酸グリセリル、トリイソステアリン酸グリセリル、トリオレイン酸グリセリル、トリ2−エチルヘキサン酸トリメチロールプロパンなどの二価以上の多価アルコールを用いたカルボン酸エステルを用いることができる。
【0025】
上記のカルボン酸エステルのうち、酸化劣化を防止するという点から不飽和二重結合を有さない飽和脂肪酸を用い、皮膚への刺激性の小ささや経済性の点からグリセリンエステルとすることが望ましい。従って、飽和脂肪酸としては、カプリル酸やカプリン酸、2−エチルヘキサン酸などの飽和脂肪酸と、一価もしくは多価アルコールとのエステル化物を用いることが好ましく、最も好ましくはカプリル酸トリグリセリルや、カプリン酸トリグリセリル、2−エチルヘキサン酸トリグリセリルを用いることが望ましい。
【0026】
なお、上記カルボン酸エステルのうち、不飽和結合を有するものを用いた場合、大気中の酸素によって酸化劣化して物性変化を起こし、所望の特性を発揮しない恐れがあるので、このような場合には自体公知の酸化防止剤を粘着剤層中に配合しておくことが好ましいものである。
【0027】
上記カルボン酸エステルは一種もしくは二種以上を前記アクリル系共重合体に配合するが、その配合量はアクリル系重合体100重量部に対して、エステル化物の総量が20〜120重量部、好ましくは30〜100重量部の範囲になるように調製する。カルボン酸エステルの配合量が20重量部に満たない場合には、貼付する皮膚面の発汗時に皮膚接着性の低下が大きく、本発明の目的とする効果を得ることが難しく、また、120重量部を超える配合量では、カルボン酸エステルが粘着剤層からブルームして、発汗時でなくても皮膚接着性が低下する恐れがあり好ましくない。
【0028】
本発明の粘着剤組成物は少なくとも上記成分を有するものであるが、本発明ではアクリル系共重合体はその30〜80重量%、好ましくは35〜70重量%が不溶化していることを特徴とする。本発明において「不溶化」とは、有機溶剤に溶解しないという意味であるが、具体的にはトルエンに溶解しないという意味である。また、不溶化率は、乾燥したサンプルをトルエン中に常温で7日間浸漬し、平均孔径0.2μmのポリテトラフルオロエチレン膜(日東電工社製、NTF膜)にて不溶分を濾別、乾燥して浸漬前の乾燥サンプル重量との比率で算出した値である。
【0029】
本発明において、上記不溶化率が30重量%に満たない場合は、形成した粘着剤層の内部凝集力が不充分となって、皮膚面への貼付中にずれを生じたり、皮膚面から剥離したときに皮膚面に粘着剤が残留する、所謂糊残り現象を生じる恐れがある。一方、不溶化率が80重量%を超える場合には、皮膚接着性が極端に低下し、貼付使用中に端部剥がれや、剥離脱落現象を生じる恐れがある。
【0030】
本発明ではアクリル系共重合体を不溶化する方法として、一般的に架橋処理を施す方法を採用することができる。架橋処理としては、有機過酸化物やイソシアネート化合物、有機金属塩、金属アルコラート、金属キレート、エポキシ化合物、一級アミノ化合物などの架橋剤を用いた化学的架橋や、電離性放射線を照射してなる物理的架橋を行うことができ、これらのうち、架橋度合いの調整のし易さや配合しやすさ、ポットライフの点から、金属キレートや金属アルコラート、多官能性イソシアネートを用いた化学的架橋処理や電離性放射線照射による物理的架橋処理を施すことが好ましい。
【0031】
本発明の皮膚貼付用粘着剤組成物は、上記構成からなるものであるが、必要に応じてグリセリンやポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどの多価アルコールに代表される可塑剤や、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸架橋体、ポリビニルピロリドンに代表される水溶性もしくは吸水性の樹脂、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、石油系樹脂に代表される粘着性付与樹脂、各種軟化剤、各種充填剤、顔料などの各種添加剤を配合してもよい。
【0032】
以上のような構成からなる皮膚貼付用粘着剤組成物は、基材フィルムの片面に直接的もしくは間接的に層状に形成して皮膚貼付用粘着テープやシートとすることができる。ここで「間接的」とは、粘着剤層を基材フィルム上に直接接触させるのではなく、例えば、粘着剤層との投錨性を向上させるために、基材フィルムの表面に下塗り剤を塗布して粘着剤層を形成する方法などを意味するものである。
【0033】
本発明の皮膚貼付用粘着テープもしくはシートを構成する基材フィルムは、粘着剤層を指示するものであれば特に限定されるものではないが、粘着テープやシートとして皮膚面に貼付した場合の皮膚面の蒸れの防止や発汗時の皮膚接着性の低下の防止を著しく改善させるためには、透湿性を有する基材フィルムを用いることが好ましい。
【0034】
このような基材フィルムとしては、ポリエーテルウレタンやポリエステルウレタンなどのウレタン系ポリマー、ポリエーテルポリアミドブロックポリマーなどのアミド系ポリマー、ポリアクリレートなどのアクリル系ポリマー、ポリエチレンやポリプロピレン、エチレン/酢酸ビニル共重合体などのポリオレフィン系ポリマー、ポリエーテルポリエステルなどのポリエステル系ポリマーなどの材料から得ることができる。また、これらの基材フィルムは皮膚面への貼付時にムレや白化などを生じないようにするために、水蒸気透過性を有する材質から選択することが好ましく、例えばウレタン系やアミド系のフィルムを用いることが好適である。なお、基材フィルムは上記材料のうちの何れか一種からなるものであってもよいし、任意の材料からなるフィルムを複数枚積層した積層フィルムであってもよい。
【0035】
上記基材フィルムは皮膚面に貼付した際に、違和感を生じないようにするために、その厚みを10〜100μm、好ましくは20〜40μm程度にすることがよい。また、皮膚面に貼付した際の皮膚追従性を良好にするためには、引張強度を100〜900kg/cm2 、100%モジュラスを10〜100kg/cm2 程度に調整することが好ましい。この範囲に調整した基材フィルムを用いると、関節部位のような動きの大きい皮膚面に貼付した際に効果的である。
上記基材フィルムは無孔フィルムだけでなく、水蒸気透過性であって非透水性である多孔性フィルムを用いることも、貼付中のムレの防止の点から効果的である。このようなフィルムの場合には、材質には特に制限はされず、公知の多孔化技術を施すことによって簡単に得ることができる。無孔性フィルムの場合にはフィルム厚が大きくなるほど水蒸気透過性は低下する傾向が顕著に現れるが、多孔性フィルムの場合には厚みに比例して水蒸気透過性の低下が顕著に現れないので有用である。
【0036】
本発明の粘着テープもしくはシートは救急絆創膏や大型絆創膏、ドレッシング材、ドレープ材などに好適に用いることができるが、その用途に応じて、例えば厚みが比較的大きいとされる絆創膏(厚みは通常、100μm程度)には多孔性フィルムを用いることが好適である。多孔性フィルムに好適な基材フィルムとしては、ポリオレフィン系樹脂からなる多孔質プラスチックフィルムが好適であり、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体などの樹脂を用いることができる。特に、線状低密度ポリエチレン樹脂を使用することが、生産性や加工性の点から好ましいものである。線状低密度ポリエチレン樹脂とは、エチレンとα−オレフィンとの共重合体であり、α−オレフィンとしては、ブテンやヘキセン、オクテンなどが挙げられる。
【0037】
一方、上記基材フィルムの少なくとも片面に形成される粘着剤層は、厚みを10〜80μm程度とすることが好ましい。厚みが10μmに満たない場合には、皮膚に貼付する際に充分な皮膚接着性を発揮できない場合があり、また、80μmを超えた厚みでは、粘着テープやシート全体として充分な水蒸気透過性を得ることができないので耐汗性を付与しがたく、また、長期間の貼付で皮膚刺激性を発現する場合がある。
【0038】
また、本発明の皮膚貼付用粘着テープもしくはシートは、水蒸気透過性を有することが好ましく、貼付材全体としての透湿度は300g/m2 ・24h・40℃・30%R.H.以上、好ましくは300〜2400g/m2 ・24h・40℃・30%R.H.、さらに好ましくは800〜2400g/m2 ・24h・40℃・30%R.H.の範囲に設定する。人の皮膚面に貼付材を貼付した場合、個人差や貼付部位によっても異なるが、最低限300g/m2 ・24h・40℃・30%R.H.の透湿度を有するようにしないと、発汗量が多い部位などに貼付した場合には、充分な透湿性を発揮できずムレの原因となってしまうからである。
【0039】
なお、本発明の粘着テープもしくはシートは上記構成からなるものであるが、通常、粘着剤層の露出表面には、表面にシリコーン処理などの剥離処理を施した剥離シートを仮着しておくことが一般的である。
【0040】
【発明の効果】
本発明の皮膚貼付用粘着剤組成物は以上のような構成からなるので、皮膚に対して刺激性が少なく、長期間の貼付に対して有用である。特に、皮膚面の発汗による水分放散に対しても皮膚接着力の著しい低下を招くことがなく、優れた耐汗接着性を有するので、夏場やスポーツ時、入浴時の貼付使用においても不都合が生じないという効果を発揮するものである。
【0041】
【実施例】
以下に本発明の実施例を示し、さらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で種々の応用が可能である。なお、以下の文中で「部」とあるのは「重量部」を意味し、「%」とあるのは「重量%」を意味する。
【0042】
実施例1
不活性ガス雰囲気下で、イソノニルアクリレート65部、2−メトキシエチルアクリレート30部、アクリル酸5部からなる単量体混合物を、トルエン80部に均一に溶解混合し、重合開始剤としてのアゾビスイソブチロニトリル0.3部を添加して共重合反応を行い、アクリル系共重合体を得た。
【0043】
次に、この共重合体100部に対してカプリル酸トリグリセリル60部、架橋剤として三官能性イソシアネート化合物(日本ポリウレタン社製、コロネートHL)0.1部をトルエン溶媒中で混合し、これを片面にシリコーン処理を施した剥離シートの処理面に、乾燥後の厚みが40μmとなるように塗布し、110℃で3分間加熱乾燥して架橋された皮膚貼付用粘着剤層を形成した。
【0044】
次いで、得られた粘着剤層の表面に、ポリエステル系不織布(デュポン社製、ソンタラ8010)を貼付圧着し、さらに、60℃で72時間熟成して、本発明の皮膚貼付用粘着シートを作製した。
【0045】
実施例2
実施例1において、カプリル酸トリグリセリルの量を30部とした以外は、実施例1と同様にして本発明の皮膚貼付用粘着シートを作製した。
【0046】
実施例3
実施例1において、カプリル酸トリグリセリルの量を100部とし、架橋剤としての三官能性イソシアネート化合物の量を0.14部とした以外は、実施例1と同様にして本発明の皮膚貼付用粘着シートを作製した。
【0047】
比較例1
実施例1において、カルボン酸エステルとしてのカプリル酸トリグリセリルを配合しない以外は、実施例1と同様にして皮膚貼付用粘着シートを作製した。
【0048】
比較例2
実施例1においてアクリル系共重合体を、2−エチルヘキシルアクリレート92部、アクリル酸8部からなる単量体混合物を共重合して得られた共重合体とし、架橋剤としての三官能性イソシアネート化合物の量を0.11部とした以外は、実施例1と同様にして皮膚貼付用粘着シートを作製した。
【0049】
比較例3
実施例1においてアクリル系共重合体を、2−エチルヘキシルアクリレート70部、2−メトキシエチルアクリレート30部からなる単量体混合物を共重合して得られた共重合体とし、架橋剤を配合しなかった以外は、実施例1と同様にして皮膚貼付用粘着シートを作製した。
【0050】
比較例4
実施例1において、カルボン酸エステルとしてのカプリル酸トリグリセリル60部を、ポリエチレングリコール(分子量400)に代え、架橋剤としての三官能性イソシアネート化合物の量を0.16部とした以外は、実施例1と同様にして皮膚貼付用粘着シートを作製した。
【0051】
比較例5
実施例1において、架橋剤としての三官能性イソシアネート化合物の量を0.05部に代えた以外は、実施例1と同様にして皮膚貼付用粘着シートを作製した。
【0052】
比較例6
実施例1において、架橋剤としての三官能性イソシアネート化合物の量を0.40部に代えた以外は、実施例1と同様にして皮膚貼付用粘着シートを作製した。
【0053】
比較例7
スチレン/イソプレン/スチレンブロック共重合体(スチレン含量15%)30部、液状ポリイソプレン30部、β−ピネン系重合体(軟化点115℃)40部をトルエン中で均一に混合し、これを実施例1と同様に片面にシリコーン処理を施した剥離シートの処理面に塗布、乾燥して皮膚貼付用粘着シートを作製した。
【0054】
比較例8
実施例1において、カプリル酸トリグリセリルの量を15部とした以外は、実施例1と同様にして皮膚貼付用粘着シートを作製した。
【0055】
比較例9
実施例1において、カプリル酸トリグリセリルの量を140部とし、架橋剤としての三官能性イソシアネート化合物の量を0.12部とした以外は、実施例1と同様にして皮膚貼付用粘着シートを作製した。
【0056】
実施例4
実施例1において、カプリル酸トリグリセリル60部を、ミリスチン酸イソプロピル50部に代え、架橋剤としての三官能性イソシアネート化合物の量を0.12部とした以外は、実施例1と同様にして本発明の皮膚貼付用粘着シートを作製した。
【0057】
実施例5
実施例1において、粘着剤組成をイソノニルアクリレート70部、2−エトキシエチルアクリレート25部、アクリル酸5部に代えた以外は、実施例1と同様にして本発明の皮膚貼付用粘着シートを作製した。
【0058】
上記各実施例および各比較例にて得られた皮膚貼付用粘着シートについて、以下の試験を行い、その結果を表1に示した。
【0059】
<不溶分の測定>
各粘着シートから粘着剤を所定量(約0.2g)採取し、これを秤量して重量(W1)を求めた。次いで、この粘着剤をトルエン中に常温下で7日間浸漬し、可溶分を抽出した。不溶分(残渣)をポリテトラフルオロエチレン膜(平均孔径0.2μm、日東電工社製、NTF膜)にて濾別、乾燥し、秤量して重量(W2)を求めた。不溶分の比率(ゲル分率)を、以下の式にて算出した。
【0060】
【数1】
Figure 0005177726
【0061】
<透湿度>10mlの蒸留水を内径40mm、高さ40mmのガラス製容器に入れ、直径50mmの円形に裁断した皮膚貼付用粘着シートを粘着剤層を下向きにして容器の口に貼付、固定した。粘着シートを貼付した容器全体の重量(W)を測定したのち、これを40℃、相対湿度30%R.H.の恒温恒湿機中に入れ、24時間放置後の重量(W4)を測定した。透湿度を、以下の式にて算出した。
【0062】
【数2】
Figure 0005177726
透湿度(g/m2・24h・40℃・30%R.H.)=(W3-W4)/(0.02×0.02×π)
【0063】
<皮膚接着力(常態)>
23℃、相対湿度30%R.H.の恒温恒湿条件の試験室で、30分以上安静にしたボランティアの背中に、20mm×60mmの矩形状に裁断した皮膚貼付用粘着シートを、2kgのローラーで1往復して圧着貼付し、20分経過したのち、速度300mm/分の引き剥し速度で180度方向に粘着シートを剥離し、その際の剥離抵抗応力を皮膚接着力(常態)とした。
【0064】
<皮膚接着力(発汗時)>
23℃、相対湿度30%R.H.の恒温恒湿条件の試験室で、30分以上安静にしたボランティアの背中に、20mm×60mmの矩形状に裁断した皮膚貼付用粘着シートを、2kgのローラーで1往復して圧着貼付し、さらに、粘着シートの貼付部位全体をポリエステルフィルム(透湿度10g/m・24h・40℃・30%R.H.以下)で密封し、6時間経過したのち、ポリエステルフィルムを除去し、速度300mm/分の引き剥し速度で180度方向に粘着シートを剥離し、その際の剥離抵抗応力を皮膚接着力(発汗時)とした。
【0065】
<剥離時の糊残り>
上記のように常態時および発汗時の皮膚接着力測定をした後の皮膚面を目視観察し、皮膚面上への糊残りの有無を以下の判断基準にて判定した。
○:皮膚面上に糊残りは見られない。
△:皮膚面上の一部に糊残りが見られた。
×:糊残りが全面に見られた。
【0066】
<剥離時の皮膚の浸軟>発汗時の皮膚接着力試験に行ったのち、皮膚面を目視観察し、以下の判断基準にて皮膚面の浸軟の程度を判定した。
○:浸軟は認められ、周囲の皮膚と同じ状態である。
△:僅かに白くふやけており、周囲の皮膚との差が認められる。
×:明らかに白く浸軟している。
【0067】
【表1】
Figure 0005177726
【0068】
上記表1の結果から明らかなように、実施例品は比較例品に比べて、常態での皮膚接着力と発汗時の皮膚接着力の差が少なく、耐汗接着性に優れた粘着シートである。また、実施例品は剥離時の糊残りもなく、皮膚の浸軟を生じないものである。

Claims (7)

  1. (メタ)アクリル酸アルキルエステル40〜80重量%、アルコキシ基含有エチレン性不飽和単量体10〜60重量%、カルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体1〜10重量%を含む単量体混合物から得られるアクリル系共重合体100重量部と、室温で液状またはペースト状のカルボン酸エステル20〜120重量部を含有する粘着剤組成物であり、アクリル系共重合体の30〜80重量%が架橋剤を用いた化学的架橋により不溶化していることを特徴とする皮膚貼付用粘着剤組成物。
  2. カルボン酸エステルが、飽和脂肪酸のグリセリンエステルである請求項1記載の皮膚貼付用粘着剤組成物。
  3. 飽和脂肪酸がカプリル酸、カプリン酸、2−エチルヘキサン酸の何れかである請求項2記載の皮膚貼付用粘着剤組成物。
  4. グリセリンエステルがトリグリセリンエステルである請求項2または3記載の皮膚貼付用粘着剤組成物。
  5. 基材フィルムの少なくとも片面に、直接的もしくは間接的に請求項1〜4の何れか1項に記載の皮膚貼付用粘着剤組成物を層状に形成してなる皮膚貼付用粘着テープもしくはシート。
  6. 基材フィルムが、透湿性を有する基材フィルムである請求項5記載の皮膚貼付用粘着テープもしくはシート。
  7. 全体の透湿度が、300〜2400g/m2・24h・40℃・30%R.H.である請求項5または6記載の皮膚貼付用粘着テープもしくはシート。
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