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JP5177494B2 - 医療用容器及び医療用容器セット - Google Patents

医療用容器及び医療用容器セット Download PDF

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Description

本発明は、経腸栄養法や静脈栄養法などを行う際に患者に投与する液状物を収納するための医療用容器に関する。また、本発明は、この医療用容器と栄養セットとからなる医療用容器セットに関する。
経口によらずに患者に栄養や薬剤を投与する方法として経腸栄養法や静脈栄養法が知られている。経腸栄養法では、患者の鼻腔から胃又は十二指腸にまで通されたチューブを介して栄養剤、流動食、又は薬剤などの液状物が投与される。また、静脈栄養法では、患者の静脈に挿入された輸液ラインを介してブドウ糖などの栄養成分や薬剤成分を含む液状物(一般に「輸液」と呼ばれる)が投与される。
病院等の医療現場では経腸栄養法や静脈栄養法は例えば以下のような手順で行われる。まず、作業室で患者に投与する液状物を調整し、医療用容器に注入する。次いで、医療用容器のポート(通液部)に、可撓性を有する長尺のチューブを含むいわゆる栄養セットの一端を接続する。次いで、医療用容器を、栄養セットが接続されたポートを下側にしてハンガーに吊り下げる。医療用容器をハンガーに吊り下げた状態で医療用容器及び栄養セットを患者がいる病室に搬送する。そして、栄養セットの医療用容器に接続された側とは反対側の端を患者に接続し、医療用容器内の液状物を患者に投与する。
このような経腸栄養法や静脈栄養法で使用される医療用容器は例えば特許文献1,2等で公知である。
実公昭61−25795号公報 特開2006−199303号公報
経腸栄養法や静脈栄養法の上記の作業手順では、作業室で液状物を充填した医療用容器をハンガーに吊り下げた後、病室で栄養セットを患者に接続するまでの間の栄養セットの取り扱いが煩雑であるという問題がある。
即ち、医療用容器をハンガーに吊り下げた状態で医療用容器及び栄養セットを患者がいる病室に搬送する際に、栄養セットを構成する可撓性を有する長尺のチューブが絡み合ったり、垂れ下がって床面に接触したりするのを防止する必要がある。従来は、例えば、栄養セットのチューブをハンガーに掛けたり、栄養セットのチューブを医療用容器の周囲に巻き付けたりしていた。しかしながら、栄養セットのチューブをハンガーに単に掛けるだけでは、医療用容器を搬送する途中で振動が加わったり作業者が誤って手を触れたりすることにより栄養セットが簡単に落下してしまう可能性が高い。また、栄養セットを医療用容器の回りに巻き付ける方法は、栄養セットを巻回する作業及びこれを解く作業が煩雑であるという問題がある。
本発明は、上記の従来の問題を解決し、医療用容器に接続された栄養セットの取り扱い性を向上させることを目的とする。
本発明の医療用容器は、可撓性を有するシートがシール領域で貼り合わされてなる袋状の容器本体を備えた医療用容器であって、前記シール領域内に開口(第1開口)が形成されており、前記開口は、可撓性を有するチューブを略U字状又は略V字状に屈曲させて前記開口に挿入し、前記チューブの前記開口に挿入した部分を略Ω字状に湾曲させ、前記チューブの前記略Ω字状に湾曲した部分を前記開口の端縁に係合させて前記チューブを保持するためのものであり、前記シール領域の表面に垂直な方向に沿って見た前記開口の端縁の形状が下記条件を満足することを特徴とする。
[条件]前記開口の端縁の形状が、長軸方向の両端の内角がいずれも鋭角である略菱形形状であり、3mm以上6mm以下の値Dを直径として有する同一直径の2つの仮想の円を、これらの間隔が最も大きくなるように前記開口の端縁に内接して配置したとき、前記2つの仮想の円は、互いに重なり合うことなく、いずれも前記開口の端縁と2点で接する。
本発明の医療用容器セットは、上記の本発明の医療用容器と、前記容器本体内に液状物を注入し、又は前記容器本体内に収納された液状物を取り出すための可撓性を有するチューブを含む栄養セットとを備えることを特徴とする。
本発明によれば、容器本体のシール領域内に所定の開口(貫通穴)が形成されている。この開口に栄養セットを構成するチューブを湾曲させて挿入すれば、チューブを開口の端縁に安定して保持させることができる。また、開口の端縁が所定の形状を有しているので、開口に挿入されたチューブが意図せずに開口から抜け落ちるのを防止できる。従って、シール領域内に開口を形成するという簡単且つ低コストな方法で、長尺のチューブを含む栄養セットの取り扱い性を向上させることができる。
本発明の上記の医療用容器において、前記開口の長軸方向の両端の内角がいずれも鋭角であることが好ましく、更に前記内角がいずれも60°以下であることが好ましい。これにより、開口に挿入されたチューブを、開口の端縁に、より安定して保持させることができる。
前記開口の長軸方向の両端の曲率半径RLがいずれも3mm以下であることが好ましい。これにより、開口にチューブを挿入したとき、チューブは開口の端縁と2点で接する可能性が高くなる。従って、開口の端縁にチューブをより安定して保持させることができる。
前記開口の前記長軸方向における寸法WLが20mm以上50mm以下であることが好ましい。寸法WLがこの範囲より小さいと、チューブを開口に挿入するのが困難になる。逆に、寸法WLがこの範囲より大きいと、開口に挿入されたチューブが、振動や外力等により開口から抜け落ちやすくなる。
本発明の上記の医療用容器が、前記容器本体の内外を連通させる通液部を更に備え、前記開口は前記通液部の近傍に形成されていることが好ましい。これにより、通液部を下側にして医療用容器を吊り下げたとき、開口も下側に位置することになる。従って、身長の低い作業者であっても開口に対するチューブの挿入・抜き取り作業がしやすくなる。ここで、開口が通液部の「近傍」に形成されているとは、医療用容器を平面視したときに、容器本体の中央に対して、開口が通液部が設けられた側と同じ側に形成されていることを意味し、より狭義には、開口と通液部との距離が、容器本体の中央から通液部までの距離以下(好ましくはこの距離の半分以下)であることを意味する。
前記容器本体の前記通液部が設けられた側とは反対側の前記シール領域内に、第2開口(貫通穴)が更に形成されていることが好ましい。これにより、第2開口を利用して容器をハンガーに吊り下げると、通液部が下方を向く。従って、容器本体内の液状物を重力を利用して流出させることができる。
本発明の上記の医療用容器セットにおいて、前記開口(第1開口)の長軸方向の両端の曲率半径RLが前記チューブの外周面の曲率半径よりも小さいことが好ましい。これにより、開口にチューブを挿入したとき、チューブは開口の端縁と2点で接する。従って、開口の端縁にチューブをより安定して保持させることができる。
前記開口の長軸方向と直交する方向における前記開口の最大寸法WSが前記チューブの外径よりも大きいことが好ましい。これにより、チューブを開口に挿入したり、開口から抜き取ったりする作業が容易になる。
前記開口に、前記チューブを湾曲させて挿入して保持させることができることが好ましい。これにより、長尺のチューブを含む栄養セットの取り扱い性が向上する。
以下、本発明を具体的な実施形態を示しながら詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施形態に限定されない。
図1は、本発明の一実施形態にかかる医療用容器(以下、単に「容器」という)1の概略構成を示した正面図である。本実施形態の容器1は、容器本体10と、容器本体10内に液状物を注入し又は容器本体10内に収納された液状物を取り出すためのポート(通液部)50とを備えている。
容器本体10は、柔軟で可撓性を有する同一寸法の2枚のシートを重ね合わせて、その周縁のシール領域11にて接合してなる袋状物(いわゆるパウチ)である。ポート50が容器本体10のシール領域11に取り付けられて、容器本体10の内外を連通させている。
図2はポート50の斜視図である。ポート50は、液状物が通過するための通液孔51が形成された円筒形状の管状部52と、管状部52の一端又はその近傍の外周面上に設けられたシール部55と、管状部52の他端側の外周面上に形成されたキャップ装着部56とを備えている。
シール部55は底面が略菱形である四角柱形状を有している。ポート50のシール部55を容器本体10を構成する2枚のシートの周縁間に挟んだ状態で2枚のシートの周縁をシール(例えば、ヒートシール、超音波シール)することで、シール領域11を形成するのと同時にポート50と容器本体10とを接合し一体化することができる(図1参照)。
キャップ装着部56は、栄養セット(詳細は後述する)の一端が接続されるキャップに形成された雌ネジと螺合する雄ネジからなる。但し、キャップ装着部56はこれに限定されず、キャップと係合してキャップを装着することができる周知の形状で構成することができる。
図1に示すように、容器本体10の外形は略長方形状を有し、その一対の短辺のうちの一方の短辺(第1短辺)10S1の中央にポート50が取り付けられている。第1短辺10S1に沿ったシール領域11内に、略菱形の一対の開口(第1開口)20a,20bが形成されている。一対の開口(第1開口)20a,20bは、ポート50を第1短辺10S1方向に挟むように配置されている。容器本体10の一対の短辺のうち、ポート50が取り付けられていない方の短辺(第2短辺)10S2に沿ったシール領域11内には、略円形の第2開口32及び一対の略半円形の第3開口33a,33bが形成されている。第2開口32は第2短辺10S2のほぼ中央に配置されており、一対の第3開口33a,33bは第2開口32を第2短辺10S2の方向に挟むように配置されている。第2短辺10S2に沿ったシール領域11の近傍に繰り返して開閉が可能な線状ファスナ12が設けられている。線状ファスナ12を開くと、容器本体10の内部に通じる開口が形成される。
容器本体10を構成するシートの材質は特に限定されず、通常は、2層以上の複合シートが使用される。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのプラスチック材料の中から互いに異なる材料を選択してなる内層及び外層を含む複合シートを用いることができる。この複合シートに、バリア層として酸化アルミニウムやシリカなどの薄膜を形成してもよい。医療用容器10内の液状物の量などを確認することができるように、2枚のシートのうちの少なくとも一方は透明又は半透明であることが好ましい。医療用容器において一般的なヒートシール法にて2枚のシートをシールする場合、各シートの相手方のシートと対向する面にはヒートシール層が設けられる。
ポート50は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、エチレン酢酸ビニルコポリマー、熱可塑性エラストマー、ポリアセタール等の容器本体10に比べて相対的に硬い材料からなり、例えば射出成型にて一体的に製造することができる。
次に、本実施形態の容器1の使用方法の一例を説明する。
容器1は空の状態で病院等に供給される。病院等の作業室では、調整された液状物を容器1に注入する。液状物の注入は、ポート50の通液孔51を通じて行っても良いし、線状ファスナ12を開いて行っても良い。線状ファスナ12を通じて液状物を注入する場合、一対の第3開口33a,33bに一方の手の親指と人差し指を挿入すると、線状ファスナ12を大きく開口させた状態で容器1を保持することができ、液状物の注入作業を容易に行うことができる。
容器1に所定量の液状物の注入した後、図3に示すようにポート50の先端のキャップ装着部56にキャップ60を取り付ける。キャップ60には、ポート50のキャップ装着部56の雄ねじと螺合する雌ねじ(図示せず)が形成されている。更に、キャップ60に可撓性を有するチューブ71を含む栄養セット70を接続する。これにより、キャップ60を介して容器1の内部と栄養セット70のチューブ71とが連通する。図3に示した栄養セット70は、キャップ60に設けられた筒状体61に外挿されるゴムチューブ72をチューブ71の一端に備え、点滴筒73及び流量を調整するためのクランプ74をチューブ71の途中に備え、雄コネクタ75をチューブ71の他端に備えている。図3の状態ではクランプ74は閉じられている。栄養セットとしては、図3に示した栄養セット70に限定されず、経腸栄養法や静脈栄養法を行う際に使用される公知の栄養セット(輸液セットと呼ばれることもある)を適宜選択して用いることができる。また、キャップ60と栄養セット70との接続方法も、図3に示した筒状体61とゴムチューブ72とを結合させる方式に限定されない。例えば、キャップ60に設けたゴム栓に栄養セットのチューブの一端に取り付けられた中空針を突き刺す方式やルアー接続方式等であっても良い。
次に、容器1を、図4に示すように、例えばイルリガートル台91に吊り下げられたS字フック92を容器本体10のシール領域11内に形成された第2開口32内に通すなどしてイルリガートル台91に吊り下げる。第2開口32を利用して容器1を吊り下げることにより、容器本体10の長手方向(略長方形の容器本体10の一対の長辺と平行な方向)を重力方向とほぼ平行にして、ポート50を下方に向けさせることができる。従って、容器本体10に充填された液状物を重力を利用して残らずポート50から流出させることができる。
更に、図4に示すように、栄養セット70のチューブ71を略U字状(または略V字状)に屈曲させて開口20a,20bに挿入する。開口20a,20bに挿入されたチューブ71の部分71cは略Ω字状に湾曲し、この略Ω字状部分71cが開口20a,20bの端縁と係合し、チューブ71は開口20a,20bの端縁に保持される。
図4に示すように、容器1をイルリガートル台91に吊り下げ、且つ、栄養セット70のチューブ71を開口20a,20bに挿入して保持させた状態で、容器1を患者がいる病室に搬送する。その後、チューブ71を開口20a,20bから抜き取り、栄養セット70の雄コネクタ75を患者に接続し、クランプ74を開いて、容器1内の液状物を患者に投与する。
本実施形態によれば、栄養セット70の長尺のチューブ71を図4に示すように容器本体10の開口20a,20bに挿入して保持させることができるので、栄養セット70が接続された容器1を搬送する際に、長尺のチューブ71が絡み合うことがない。また、後述するように、図4の状態で容器1を搬送する際に容器1や栄養セット70に振動や衝撃が加えられても、チューブ71が開口20a,20bから抜け落ちることがない。従って、容器1に接続された栄養セット70の取り扱い性が向上する。しかも、容器本体10のシール領域11内に開口20a,20bを形成するだけという極めて簡単且つ低コストな方法で、栄養セット70の取り扱い性を向上させることができる。
図4において、チューブ71の長さ等によっては、開口20a,20bのうちの一方のみにチューブを挿入しても良いことは言うまでもない。
容器本体10の開口20a,20bの端縁が図4のようにチューブ71を保持する原理を図5、図6、図7を用いて説明する。図5は開口20aを含む図1の部分Vの、シール領域11の表面に垂直な方向に沿って見た拡大図である。図6は、容器本体10のシール領域11の表面に垂直な方向に沿って見たときの、開口20aに挿入されたチューブ71と開口20aの端縁との配置を示した拡大断面図である。図6においてチューブ71はシール領域11の表面に沿った断面図であるチューブ断面71a,71bとして示されている。チューブ71の外周面は円筒面であるので、その断面図であるチューブ断面71a,71bの外形線は円形である。図7は図6のVII−VII線に沿った矢視断面図である。図7では、図面を簡単化するためにチューブ71はその外形線のみを図示している。以下では図5、図6、図7を用いて開口20aについて説明するが、本実施形態では開口20bは開口20aと容器1の中心軸(ポート50の中心を通り、容器本体10の長辺と平行な軸)に対して対称であるので、開口20aについての以下の説明は開口20bについても同様に適用される。
図7に示すように開口20aにチューブ71を湾曲させて挿入すると、チューブ71の開口20aを通過した部分71cは略Ω字状に膨らむ。略Ω字状部分71cの開口20aの長軸(即ち、開口20aの略菱形形状の2本の対角軸のうち長い方の対角軸)20L方向の寸法Wは開口20aの長軸20L方向の寸法WLよりも大きい。この状態において、容器本体10に対して略Ω字状部分71cとは反対側の2本のチューブ71に、チューブ71を開口20aから引き抜く向きの引っ張り力F0がそれぞれ印加された場合を考える。この引っ張り力F0によってチューブ71の略Ω字状部分71cが開口20aを通過するためには、略Ω字状部分71cの寸法Wが開口20aの長軸方寸法WLよりも小さくなるように、開口20aの端縁が略Ω字状部分71cを湾曲させなければならない。このとき、略Ω字状部分71cには、このように湾曲することに対して抵抗する弾性回復力Fが発生する。
この弾性回復力Fによって、図6に示すように、チューブ断面71a,71bは、その間隔が最も大きくなるように開口20aの端縁に内接して開口20a内に配置される。本実施形態では開口20aは略菱形形状を有しているので、チューブ断面71a,71bの中心は開口20aの長軸20L上に配置される。このとき、チューブ断面71aは、一方の長軸端PLaを挟む辺22a1,22a2と点Pa1,Pa2で接触し、チューブ断面71bは、他方の長軸端PLbを挟む辺22b1,22b2と点Pb1,Pb2で接触する。
引っ張り力F0が印加されたとき、チューブ断面71aは辺22a1,22a2からチューブ断面71aの中心に向かう押力Fa1,Fa2を受け、チューブ断面71bは辺22b1,22b2からチューブ断面71bの中心に向かう押力Fb1,Fb2を受ける。
図8を用いて開口20aの端縁がチューブ断面71aに印加する力を説明する。チューブ断面71bに印加される力は、チューブ断面71aに印加される力と、開口20aの短軸20S(即ち、開口20aの略菱形形状の2本の対角軸のうち短い方の対角軸)に対して対称であるので図示を省略する。上記押力Fa1は、開口20aの長軸20Lに平行な力成分Fa1Lと、開口20aの短軸20Sに平行な力成分Fa1Sとに分解することができる。同様に、上記押力Fa2は、開口20aの長軸20Lに平行な力成分Fa2Lと、開口20aの短軸20Sに平行な力成分Fa2Sとに分解することができる。引っ張り力F0が印加されたときにチューブ71の略Ω字状部分71cに発生する上記の弾性回復力Fは、長軸20Lに平行な力成分Fa1L,Fa2Lの合力と釣り合う。
引っ張り力F0が大きくなればなるほど、チューブ71が開口20aの端縁から受ける力は大きくなる。即ち、略Ω字状部分71cの寸法Wをより小さくするための力成分Fa1L,Fa2Lが大きくなり、これにともなって押力Fa1,Fa2も大きくなる。従って、チューブ断面71aと2辺22a1,22a2との間の摩擦力が増大する。また、開口20aの短軸20Sに平行な力成分Fa1S,Fa2Sが大きくなり、これにより辺22a1,22a2がチューブ断面71aの短軸20S方向の寸法が小さくなるようにチューブ71を局所的に圧縮変形させてチューブ71に食い込む。これと同様の現象が、チューブ断面71bと辺22b1,22b2との間においても発生する。その結果、引っ張り力F0でチューブ71を開口20aから引き抜くことが困難となる。
一方、図7において、チューブ71の略Ω字状部分71cを、その寸法Wが小さくなるように指で挟むなどして変形させて開口20a内に押し戻せば、チューブ71を開口20aから容易に抜き取ることができる。あるいは、容器本体10に対して略Ω字状部分71cとは反対側の2本のチューブ71のうちの一方のみをやや強く引っ張ったり、容器本体10に対して略Ω字状部分71cとは反対側の2本のチューブ71の両方を強く引っ張ったりしても、チューブ71を開口20aから抜き取ることができる。
このように、本実施形態では、開口20aの長軸方向の両長軸端PLa,PLb近傍の端縁形状は、長軸端PLa,PLbに近づくほど開口幅が狭くなるような略楔形状に形成されている。従って、開口20aに挿入されたチューブ断面71a,71bはそれぞれ略楔形状を構成する開口20aの端縁と2点で接触する。これにより、チューブ断面71a,71bに作用する弾性回復力Fはいずれもこの2点で支持されるので、チューブ71は開口20aの端縁に安定して保持される。従って、図4に示すように容器1を吊り下げた状態で搬送する際に、チューブ71に振動が加えられたり、チューブ71に手が触れたりする程度ではチューブ71が開口20a,20bから落下することはない。その一方で、開口20a,20bを通過した略Ω字状部分71cを指で挟んで変形させて開口20a,20b内に押し戻す等により、チューブ71を開口20a,20bから容易に抜き取ることができる。従って、医療用容器に接続された栄養セットの取り扱い性を向上させることができる。
上記の説明から明らかなように、本発明では、開口20aに挿入されたチューブ断面71a,71bが、その間隔が最も大きくなるように開口20aの端縁に内接して配置されたときに、円形のチューブ断面71a,71bのそれぞれが開口20aの端縁と2点で接触することが必要である。これを満足する限り、容器本体10のシール領域11に形成された開口の端縁の形状は、上記の実施形態の開口20a,20bのように略菱形に限定されない。例えば、開口の端縁形状は、図9Aに示すようにそれぞれが互いに平行である二対の辺を有する略平行四辺形や、図9Bに示すように互いに平行である一対の辺を有する略台形、あるいは、図9Cに示すように互いに平行な辺を有しない略四角形であっても良い。更に、図9Dに示すように、それぞれが互いに平行である三対の辺を有する略六角形であっても良い。また、図9Dに示す略六角形以外の六角形や、四角形や六角形以外の多角形であっても良い。多角形の隣り合う二辺は、応力集中を緩和するために、図5、図9A〜図9Dに示すように曲線(例えば円弧)で滑らかに繋がれていても良い。更に、開口の端縁の形状は多角形である必要もなく、例えば図9Eに示すように、略楕円形であっても良く、図9Fに示すように、互いに平行な同一長さの線分の両端を滑らかな曲線で繋いだ長円形状であっても良い。更に、図9Gに示すように、長手方向の中央部に開口幅が狭くなったくびれ部を有する形状であっても良い。
図9A〜図9Gにおいて、一点鎖線20Lは各開口の長軸を意味する。開口の長軸20Lは、開口幅が最大となるように選択された開口の端縁上の2点PLa,PLb間を結ぶ直線により定義される。この点PLa,PLbを長軸端と呼ぶ。長軸端PLa,PLb間の距離(即ち開口の最大開口幅)をWLとする。長軸20Lと直交する方向における開口の最大寸法をWSとする。
図9A〜図9Gにおいて、2点鎖線で示された同一直径の2つの円80a,80bは、開口内に挿入されたチューブの外周面の、容器本体10のシール領域11の表面に沿った断面形状を想定した仮想の円である。上述したように、開口内に挿入されたチューブには弾性回復力Fが発生するので、上記の実施形態におけるチューブ断面71a,71bと同様に、2つの円80a,80bは、互いの間隔が最も大きくなるように開口の端縁に内接して配置される。そして、上記の実施形態と同様に、円80aは開口の端縁と点Pa1,Pa2で接触し、円80bは開口の端縁と点Pb1,Pb2で接触している。
2つの円80a,80bのそれぞれが開口の端縁と2点で接触するか否かは、開口の端縁形状のみならず、2つの円80a,80bの直径Dにも依存する。本発明の医療用容器に使用されるチューブの外径は特に制限はないが、一般に3.7〜5mm程度である。従って、本発明では、3mm以上6mm以下のある値Dを直径として有する2つの仮想の円80a,80bを、これらの間隔が最も大きくなるように開口の端縁に内接して配置したときに、該2つの仮想の円80a,80bのそれぞれが開口の端縁と2点で接触する必要がある。本発明では、開口の端縁と2点で接するような同一直径の仮想の円80a,80bの直径Dが3mm以上6mm以下の範囲内に少なくとも1つ存在していれば良く、3mm以上6mm以下の任意の値Dを直径として有する同一直径の仮想の円80a,80bの全てが開口20aの端縁と2点で接する必要はない。
図5,図9A〜図9D,図9Gに示すように、長軸端PLaを挟む2つの辺により定義される内角をθLa、長軸端PLbを挟む2つの辺により定義される内角をθLbとする。内角θLa,θLbはいずれも鋭角(θLa<90°且つθLb<90°)であることが好ましく、更にはθLa<60°且つθLb<60°であることが好ましい。図8において弾性回復力Fが同じ(即ち、力成分Fa1L,Fa2Lが同じ)であれば、内角θLa,θLbが小さくなればなるほど、押力Fa1,Fa2及び力成分Fa1S,Fa2Sは大きくなる。押力Fa1,Fa2が大きいほど、開口の端縁と開口内に挿入されたチューブとの間の摩擦力が増大する。また、力成分Fa1S,Fa2Sが大きいほど、開口の端縁がチューブを更に圧縮変形させてチューブに食い込む。従って、開口の端縁にてチューブをより安定して保持することができる。
図5,図9A〜図9D,図9Gに示すように、長軸端PLa,PLb近傍での開口の端縁の曲率半径をRLa,RLbとする。曲率半径RLa,RLbの値は、特に制限はないが、大きいほど長軸端PLa,PLb近傍での応力集中を緩和することができる。しかしながら、曲率半径RLa,RLbは、いずれも3mm以下であることが好ましい。上述したように、本発明の医療用容器に使用されるチューブの外径は一般に3.7mm以上であるので、長軸端PLa,PLbの曲率半径RLa,RLbが3mm以下であれば、チューブが開口の端縁と2点で接する可能性が高くなる。
また、曲率半径RLa,RLbは、容器1のポート50に接続される栄養セット70のチューブ71の外周面の曲率半径より小さいことが好ましい。これにより、図4のようにチューブ71を開口に挿入すると、チューブ71は開口の端縁と2点で接することができる。
図5,図9A〜図9Gに示すように、開口の長軸20L方向における寸法WLは、開口20aに挿入されるチューブ71の外径や機械的強度(例えば曲げ剛性)等を考慮して適切に設定すればよいが、一般に20mm以上50mm以下であることが好ましい。寸法WLがこの範囲より小さいと、チューブ70を開口に挿入するのが困難になる。逆に、寸法WLがこの範囲より大きいと、開口に挿入されたチューブ71が、振動や外力等により開口から抜け落ちやすくなる。
また、長軸20Lと直交する方向における開口の最大寸法WSは、容器1のポート50に接続される栄養セット70のチューブ71の外径よりも大きいことが好ましい。これにより、チューブ71を開口に挿入したり、開口から抜き取ったりする作業が容易になる。
図5,図9D〜図9Gに示すように、開口の端縁形状は、その長軸20Lに対して対称であることが好ましい。これにより、開口の端縁でチューブ71をバランス良く保持することができるので、チューブ71の保持特性が向上する。
本発明において、チューブ71は、特に制限はなく、例えば経腸栄養法や静脈栄養法などを行う際に使用される栄養セットを構成する公知のチューブを適宜選択して用いることができる。その材料は、特に制限はないが、例えばゴム、PVC(ポリ塩化ビニル)、PP(ポリプロピレン)、PBD(ポリブタジエン)、ポリウレタン、シリコーン、ポリ酢酸エチルが好ましく、これらの中でもPVCが特に好ましい。また、チューブ71の外径は一般に3.7〜5mm程度であるが、この範囲を外れた外径を有するチューブであっても良い。
上記の実施形態は一例に過ぎず、本発明はこの実施形態に限定されず、適宜変更することができる。
例えば、上記の実施形態の容器本体10では、同一形状の2枚のシートが袋状に接合されていたが、本発明はこれに限定されず、3枚以上のシートが袋状に接合されていても良い。また、容器本体の平面視形状は長方形である必要もない。更に、容器本体が線状ファスナ12を有していなくても良い。本発明の容器本体を構成するシートの数、形状、及びその組み合わせ方に限定はなく、容器本体が少なくとも2枚のシートが貼り合わされたシール領域を備えており、このシール領域内に栄養セットのチューブを挿入するための第1開口が形成されていればよい。
上記の実施形態では、容器本体10の内外を連通させる通液部としてのポート50に栄養セット70のチューブ71を接続したが、本発明はこれに限定されない。例えば、容器本体10のシール領域11に栄養セットのチューブが、上記のポート50と同様の方法で取り付けられていても良い。この場合、栄養セットのチューブが、容器本体10の内外を連通させる通液部として機能する。
容器1における通液部(例えばポート50)の配置やシール領域に形成される開口の配置は上記の実施形態に限定されない。例えば、平面視形状が長方形である容器本体の4つのコーナーのうちの1つに通液部を取り付けても良い。この場合、容器1を吊り下げるための第2開口32は、通液部が取り付けられたコーナーと対角位置にあるコーナーに設けることが好ましい。これにより、通液部の開口を重力方向に沿って下向きにして吊り下げることができるので、容器本体10内の液状物を重力を利用して流出させることができる。
また、容器1の内外を連通させる通液部の数は1つに限定されず2以上であっても良い。
容器1を吊り下げた状態において容器本体10内の液状物の量を目視にて判別するための目盛りが容器本体10に印刷などで設けられていても良い。
栄養セットのチューブを挿入するための第1開口の数は上記の実施形態のように2つである必要はなく、1つ又は3つ以上であっても良い。複数の第1開口が設けられている場合、複数の第1開口の全てに栄養セットのチューブを挿入する必要はなく、チューブの長さなどに応じて複数の第1開口の一部のみにチューブを挿入しても良いことはいうまでもない。また、複数の第1開口の端縁の形状や大きさは全て同一である必要はない。
第1開口の長軸20Lは、上記の実施形態では容器1の中心軸に対して傾斜していたが、本発明はこれに限定されない。一般に、第2開口を用いて容器1を吊り下げた状態において第1開口の長軸20L方向が水平方向に対してなす角度が小さくなるほど、チューブを安定して保持することができる。
また、第1開口の配置位置も、シール領域内であれば良く、上記の実施形態に限定されない。但し、容器1内の液状物を流出させる通液部の近傍に配置されていると、この通液部を下側にして容器1を吊り下げたとき、第1開口も下側に位置するので、身長の低い作業者であっても第1開口に対するチューブの挿入・抜き取り作業がしやすくなるので好ましい。
縦30cm×横14cmの略長方形状の2枚のシートを、一方の短辺にポート50を挟んで重ね合わせて,その周囲をヒートシールすることにより、図1に示すような容器1を作成した。シートとして、ナイロン層及びポリエチレン層を含む、厚みが0.1mmの複合シートを用いた。シール領域11内に、図5に示すような略菱形の開口20a,20bを形成した。開口20a,20bの長軸20Lは、容器1の中心軸に対して45°傾斜させた。開口20a,20bの長軸20L方向の寸法WLは30mm、短軸20S方向の寸法WSは10mmとした。開口20a,20bの長軸端PLa,PLb近傍での開口の端縁は曲率半径RLa,RLbが1mmの円弧状に形成し、短軸端PS近傍での開口の端縁は曲率半径RSが5mmの円弧状に形成した。
ポート50に外径が5mmのポリブタジエンからなるチューブを含む栄養セット70を接続した。
栄養セット70が接続された容器1を図4に示すように吊り下げて、チューブ70を開口20a,20bに挿入した。容器1に振動を加えたり、チューブ70を軽く引っ張ったりする程度ではチューブ70が開口20a,20bから抜け落ちることはなかった。
本発明の利用分野は特に制限はないが、経腸栄養法や静脈栄養法などを行う際に使用される医療用容器及び医療用容器セットとして好ましく利用することができる。
図1は、本発明の一実施形態にかかる医療用容器の概略構成を示した正面図である。 図2は、本発明の一実施形態にかかる医療用容器に使用されるポートの概略構成を示した斜視図である。 図3は、ポートに栄養セットが接続された本発明の一実施形態にかかる医療用容器の概略構成を示した図である。 図4は、ポートに栄養セットが接続された本発明の一実施形態にかかる医療用容器をポートを下にして吊り下げた状態を示した図である。 図5は、開口を含む図1の部分Vの、シール領域の表面に垂直な方向に沿って見た拡大図である。 図6は、本発明の一実施形態にかかる医療用容器に形成された開口にチューブを挿入した状態を示した拡大断面図である。 図7は、図6のVII−VII線に沿った矢視断面図である。 図8は、本発明の一実施形態にかかる医療用容器に形成された開口に挿入されたチューブが開口の端縁から受ける力を示した拡大断面図である。 図9Aは、本発明の医療用容器のシール領域に形成される、チューブを保持する開口の端縁の形状の別の例を示した拡大正面図である。 図9Bは、本発明の医療用容器のシール領域に形成される、チューブを保持する開口の端縁の形状の更に別の例を示した拡大正面図である。 図9Cは、本発明の医療用容器のシール領域に形成される、チューブを保持する開口の端縁の形状の更に別の例を示した拡大正面図である。 図9Dは、本発明の医療用容器のシール領域に形成される、チューブを保持する開口の端縁の形状の更に別の例を示した拡大正面図である。 図9Eは、本発明の医療用容器のシール領域に形成される、チューブを保持する開口の端縁の形状の更に別の例を示した拡大正面図である。 図9Fは、本発明の医療用容器のシール領域に形成される、チューブを保持する開口の端縁の形状の更に別の例を示した拡大正面図である。 図9Gは、本発明の医療用容器のシール領域に形成される、チューブを保持する開口の端縁の形状の更に別の例を示した拡大正面図である。
符号の説明
1 医療用容器(容器)
10 容器本体
11 シール領域
12 線状ファスナ
20a,20b 開口(第1開口)
32 第2開口
33a,33b 第3開口
50 ポート(通液部)
51 通液孔
52 管状部
55 シール部
56 キャップ装着部
70 栄養セット
71 チューブ
71a,71b チューブ断面
80a,80b 仮想の円

Claims (9)

  1. 可撓性を有するシートがシール領域で貼り合わされてなる袋状の容器本体を備えた医療用容器であって、
    前記シール領域内に開口が形成されており、
    前記開口は、可撓性を有するチューブを略U字状又は略V字状に屈曲させて前記開口に挿入し、前記チューブの前記開口に挿入した部分を略Ω字状に湾曲させ、前記チューブの前記略Ω字状に湾曲した部分を前記開口の端縁に係合させて前記チューブを保持するためのものであり、
    前記シール領域の表面に垂直な方向に沿って見た前記開口の端縁の形状が下記条件を満足することを特徴とする医療用容器。
    [条件]前記開口の端縁の形状が、長軸方向の両端の内角がいずれも鋭角である略菱形形状であり、3mm以上6mm以下の値Dを直径として有する同一直径の2つの仮想の円を、これらの間隔が最も大きくなるように前記開口の端縁に内接して配置したとき、前記2つの仮想の円は、互いに重なり合うことなく、いずれも前記開口の端縁と2点で接する。
  2. 前記開口の長軸方向の両端の曲率半径RLがいずれも3mm以下である請求項1に記載の医療用容器。
  3. 前記開口の前記長軸方向における寸法WLが20mm以上50mm以下である請求項1に記載の医療用容器。
  4. 前記容器本体の内外を連通させる通液部を更に備え、
    前記開口は前記通液部の近傍に形成されている請求項1に記載の医療用容器。
  5. 前記容器本体の前記通液部が設けられた側とは反対側の前記シール領域内に、第2開口が更に形成されている請求項4に記載の医療用容器。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の医療用容器と、前記容器本体内に液状物を注入し、又は前記容器本体内に収納された液状物を取り出すための可撓性を有するチューブを含む栄養セットとを備える医療用容器セット。
  7. 前記開口の長軸方向の両端の曲率半径RLが前記チューブの外周面の曲率半径よりも小さい請求項6に記載の医療用容器セット。
  8. 前記開口の長軸方向と直交する方向における前記開口の最大寸法WSが前記チューブの外径よりも大きい請求項6に記載の医療用容器セット。
  9. 前記開口に、前記チューブを湾曲させて挿入して保持させることができる請求項6に記載の医療用容器セット。
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