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JP5160005B2 - 徐放性製剤 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、投与直後の初期放出が少なく、長期間にわたって一定量の生理活性物質を放出する徐放性製剤およびその分散媒等に関する。
【0002】
【従来の技術】
生理活性ペプチドは、生体において種々の薬理作用を示すことが知られており、医薬品としての応用が図られている。しかしながら、これらの生理活性ペプチドは一般的に生体内での半減期が短いために、頻回投与が必要であり、注射に伴う患者の肉体的負担は無視できないものがある。例えば、成長ホルモン(以下、GHと略記することがある)は、元来下垂体前葉で産生・分泌される代表的なホルモンで、身体の成長促進に働くほか、糖・脂質代謝、蛋白同化、細胞増殖や分化に関与する等、幅広く多彩な生理作用を有する生理活性ペプチドであり、現在では遺伝子組換え技術を用いて大腸菌により大量生産され、医薬品として全世界で広く臨床応用されている。しかし、GHは生体内半減期が短く、有効血中濃度を維持するためには頻回投与が必要である。とりわけ、GH分泌不全性低身長症の場合には、乳幼児あるいは若年患者に対して、数ヶ月から10年以上の長期にわたる連日皮下投与がなされているのが実状である。
このような生理活性ペプチド性医薬品固有の問題に対処するため、薬物送達システムに関する種々の研究が行われてきた。例えば、生理活性ペプチドを長期間にわたって持続放出する徐放剤である。特開平8−217691号公報(WO96/07399号)には、水溶性ペプチド性生理活性物質を塩化亜鉛水溶液等により水不溶性ないし水難溶性多価金属塩とし、これと生体内分解性ポリマーとを含有してなる徐放性製剤の製造法が開示されている。また、特開平11−322631号公報には、生理活性ペプチド水溶液に、水混和性有機溶媒および/または揮発性塩類を添加し凍結乾燥することにより得られる生理活性ペプチド粉体を、生体内分解性ポリマーの有機溶媒液に分散させた後、有機溶媒を除去することを特徴とする徐放性製剤の製造法が開示されている。また、特開平9−132524号公報には、生理活性物質と生体内分解性ポリマーとを含有する徐放性マイクロカプセルの製造法において、マイクロカプセル化後に該生体内分解性ポリマーのガラス転移温度以上で約24〜120時間加熱乾燥することにより、残留有機溶媒が極めて少ない、医薬品として臨床上、非常に優れた性質を有する徐放性マイクロカプセルの製造法が開示されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
徐放性製剤は生理活性物質の活性を保持しながら、長期間にわたって一定量の生理活性物質を放出できることが望ましく、そのために投与直後の初期放出を抑制する手段が求められている。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記の課題を解決するため鋭意研究を進め、アルカリ金属イオン濃度を約10μg/mL以下とすることにより得られた微細粉末化した生理活性物質および生体内分解性ポリマーを含む徐放性製剤において、カチオン性物質またはポリオール類をマイクロカプセル等のマトリックスと共存させることにより、予想外にも投与直後の生理活性物質の初期放出が飛躍的に抑制され、長期間にわたって一定量の生理活性物質を放出し、医薬品として臨床上、非常に優れた性質を有する徐放性製剤を製造できることを見出し、これらに基づいて本発明を完成した。
【0005】
すなわち、本発明は、
(1)生理活性物質を含有したマトリックスとカチオン性物質および/またはポリオール類とを組み合わせてなる生理活性物質の初期放出が抑制された徐放性製剤、
(2)生理活性物質を含有したマトリックスとカチオン性物質および/またはポリオール類とを混合してなる上記(1)記載の徐放性製剤、
(3)生理活性物質を含有したマトリックスの表面にカチオン性物質および/またはポリオール類が保持された上記(1)記載の徐放性製剤、
(4)カチオン性物質が塩基性物質または水溶性多価金属塩である上記(1)記載の徐放性製剤、
(5)塩基性物質が塩基性アミノ酸である上記(4)記載の徐放性製剤、
(6)塩基性アミノ酸がアルギニンまたはリシンである上記(5)記載の徐放性製剤、
(7)塩基性物質が塩基性添加物である上記(4)記載の徐放性製剤、
(8)塩基性添加物が塩化ベンザルコニウムまたはN−メチルグルカミンである上記(7)記載の徐放性製剤、
(9)塩基性物質が塩基性ペプチド、塩基性ポリアミンまたは塩基性多糖類である上記(4)記載の徐放性製剤、
(10)塩基性ペプチドがプロタミンまたはその塩である上記(9)記載の徐放性製剤、
(11)塩基性ポリアミンがスペルミジンまたはスペルミンである上記(9)記載の徐放性製剤、
(12)塩基性多糖類がキトサンである上記(9)記載の徐放性製剤、
(13)水溶性多価金属塩が水溶性亜鉛塩である上記(4)記載の徐放性製剤、
(14)水溶性亜鉛塩が塩化亜鉛または酢酸亜鉛である上記(13)記載の徐放性製剤、
(15)ポリオール類がポリエチレングリコールまたはプロピレングリコールである上記(1)記載の徐放性製剤、
(16)生理活性物質が生理活性ペプチドである上記(1)記載の徐放性製剤、
(17)生理活性ペプチドが分子量約200〜約500,000である上記(16)記載の徐放性製剤、
(18)生理活性ペプチドが分子量約5,000〜約500,000である上記(16)記載の徐放性製剤、
(19)生理活性ペプチドがホルモン、サイトカイン、造血因子、増殖因子または酵素である上記(16)記載の徐放性製剤、
(20)生理活性ペプチドがヒト成長ホルモンである上記(16)記載の徐放性製剤、
(21)マトリックス基剤が生体内分解性ポリマーである上記(1)記載の徐放性製剤、
(22)生体内分解性ポリマーがα−ヒドロキシカルボン酸類の単独もしくは共重合体またはそれらの混合物である上記(21)記載の徐放性製剤、
(23)生体内分解性ポリマーが乳酸/グリコール酸の組成比が約100/0〜約40/60モル%の共重合体である上記(21)記載の徐放性製剤、
(24)生体内分解性ポリマーが乳酸単独重合体である上記(21)記載の徐放性製剤、
(25)生体内分解性ポリマーの重量平均分子量が約3,000〜約50,000である上記(21)記載の徐放性製剤、
(26)マトリックスがマイクロカプセルである上記(1)記載の徐放性製剤、
(27)注射用である上記(1)記載の徐放性製剤、
(28)生理活性物質を含有したマトリックスとカチオン性物質および/またはポリオール類と分散媒とを含有する上記(1)記載の徐放性製剤、
(29)上記(28)記載の徐放性製剤製造用のカチオン性物質および/またはポリオール類を含有する分散媒、
(30)カチオン性物質が塩基性物質または水溶性多価金属塩である上記(29)記載の分散媒、
(31)塩基性物質が塩基性アミノ酸である上記(30)記載の分散媒、
(32)塩基性アミノ酸がアルギニンまたはリシンである上記(31)記載の分散媒、
(33)塩基性物質が塩基性添加物である上記(30)記載の分散媒、
(34)塩基性添加物が塩化ベンザルコニウムまたはN−メチルグルカミンである上記(33)記載の分散媒、
(35)塩基性物質が塩基性ペプチド、塩基性ポリアミンまたは塩基性多糖類である上記(30)記載の分散媒、
(36)塩基性ペプチドがプロタミンまたはその塩である上記(35)記載の分散媒、
(37)塩基性ポリアミンがスペルミジンまたはスペルミンである上記(35)記載の分散媒、
(38)塩基性多糖類がキトサンである上記(35)記載の分散媒、
(39)水溶性多価金属塩が水溶性亜鉛塩である上記(30)記載の分散媒、
(40)水溶性亜鉛塩が塩化亜鉛または酢酸亜鉛である上記(39)記載の分散媒、
(41)ポリオール類がポリエチレングリコールまたはプロピレングリコールである上記(29)記載の分散媒、
(42)浸透圧調整剤を含有する上記(29)記載の分散媒、
(43)浸透圧調整剤が糖類または塩類である上記(42)記載の分散媒、
(44)粘稠化剤を含有する上記(29)記載の分散媒、
(45)粘稠化剤が水溶性多糖類である上記(44)記載の分散媒、
(46)界面活性剤を含有する上記(29)記載の分散媒、
(47)界面活性剤が非イオン性界面活性剤である上記(46)記載の分散媒、
(48)注射用である上記(29)記載の分散媒、
(49)生理活性物質を含有したマトリックスを含有する徐放性製剤にカチオン性物質および/またはポリオール類を混合することを特徴とする生理活性物質の初期放出の抑制方法、
(50)生理活性物質溶液中のアルカリ金属イオン濃度を約10μg/mL以下とすることにより得られる生理活性物質微細粒子、
(51)生理活性物質が生理活性ペプチドである上記(50)記載の微細粒子、
(52)生理活性ペプチドがホルモン、サイトカイン、造血因子、増殖因子または酵素である上記(51)記載の微細粒子、
(53)生理活性ペプチドがヒト成長ホルモンである上記(51)記載の微細粒子、
(54)重量平均粒子径が約0.5μm〜約2.0μmである上記(50)記載の微細粒子、
(55)生理活性物質溶液中のアルカリ金属イオン濃度を約10μg/mL以下である生理活性物質溶液を用いることを特徴とする、生理活性物質微細粒子の製造法、
(56)溶液にさらに酢酸アンモニウムを含有する上記(50)記載の微細粒子、
(57)上記(50)記載の微細粒子を含有した徐放性製剤、
(58)徐放性製剤の基剤が生体内分解性ポリマーである上記(57)記載の徐放性製剤、
(59)生体内分解性ポリマーがα―ヒドロキシカルボン酸類の単独もしくは共重合体、またはそれらの混合物である上記(58)記載の徐放性製剤、
(60)生体内分解性ポリマーが乳酸/グリコール酸の組成比が約100/0〜約40/60モル%の共重合体である上記(58)記載の徐放性製剤、
(61)生体内分解性ポリマーが乳酸単独重合体である上記(58)記載の徐放性製剤、
(62)生体内分解性ポリマーの重量平均分子量が約3,000〜約50,000である上記(58)記載の徐放性製剤、および
(63)マイクロカプセルである上記(57)記載の徐放性製剤を提供するものである。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明における生理活性物質としては、特に限定されないが、例えば生理活性を有するペプチド系化合物(以下、「生理活性ペプチド」という)、その他抗生物質、抗真菌薬、抗高脂血症薬、抗腫瘍薬、解熱薬、鎮痛薬、消炎薬、鎮咳去痰薬、鎮静薬、筋弛緩薬、抗てんかん薬、抗潰瘍薬、抗うつ薬、抗アレルギー薬、強心薬、不整脈治療薬、血管拡張薬、降圧利尿薬、糖尿病治療薬、抗凝血薬、止血薬、抗血小板薬、抗結核薬、ホルモン薬、麻薬拮抗薬、骨吸収抑制薬、骨形成促進薬、血管新生抑制薬が挙げられる。このうち、特にペプチド系化合物が好ましい。
本発明における生理活性ペプチドとしては、哺乳動物にとって有用な生理活性を有し、臨床上用いることが出来る種々のペプチドまたはタンパク質が挙げられる。該「生理活性ペプチド」は、その分子量がモノマーとして、例えば約200ないし500,000のものが用いられ、好ましくは分子量約1,000ないし500,000のものが汎用される。さらに好ましくは分子量5,000ないし約500,000のペプチドが用いられる。
生理活性ペプチドの活性として代表的なものとしては、ホルモン作用が挙げられる。該生理活性ペプチドは天然物、合成物、半合成物のいずれでもよく、さらにそれらの誘導体ないし類縁体でもよい。該生理活性ペプチドの作用機作は、作動性あるいは拮抗性のいずれでもよい。
本発明における生理活性ペプチドとしては、例えばペプチドホルモン、サイトカイン、ペプチド性神経伝達物質、造血因子、各種増殖因子、酵素、ペプチド系抗生物質、鎮痛性ペプチド等が用いられる。
ペプチドホルモンとしては、例えばインスリン、ソマトスタチン、ソマトスタチン誘導体(サンドスタチン,米国特許第4,087,390号,同第4,093,574号,同第4,100,117号,同第4,253,998号参照)、成長ホルモン(GH)、ナトリウム利尿ペプチド、ガストリン、プロラクチン、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)、ACTH誘導体(エビラタイド等)、メラノサイト刺激ホルモン(MSH)、甲状腺ホルモン放出ホルモン(TRH)、その塩およびその誘導体(特開昭50−121273号、特開昭52−116465号公報参照)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、黄体形成ホルモン(LH)、卵胞刺激ホルモン(FSH)、ヒト絨毛ゴナドトロピン(HCG)、サイモシン(チモシン)、モチリン、バソプレシン、バソプレシン誘導体{デスモプレシン〔日本内分泌学会雑誌,第54巻 第5号 第676ないし691頁(1978)〕参照}、オキシトシン、カルシトニン、副甲状腺ホルモン(PTH)、グルカゴン、セクレチン、パンクレオザイミン、コレシストキニン、アンジオテンシン、ヒト胎盤ラクトーゲン、グルカゴン様ペプチド(GLP−1)およびその誘導体(特開平6−80584号、特開平7−2695号、EP658568号、特開平8−245696号、特開平8−269097号、WO97/15296号、WO97/31943号、WO98/19698号、WO98/43658号、特表平10−511365号、WO99/55310号、特表平11−513983号、CA2270320号、WO99/64061号、特表平11−514972号、特表2000−500505号、WO2000/66138号、WO2000/66142号、WO2000/78333号、特開2001−11095号、Tissue Eng. (1)35−44(2001)、Diabetologia 43(10)1319−1328(2000)、WO2000/34331号、WO2000/34332号、米国特許第6,268,343号、米国公開2001011071号、米国公開2001006943号、EP0733644号、WO2000/77039号、WO99/43707号、WO99/43341号、WO99/43706号、WO99/43708号、WO99/43705号、WO99/29336号、WO2000/37098号、EP0969016号、米国特許第5,981,488号、米国特許第5,958,909号、WO93/25579号、WO98/43658号、EP0869135号、米国特許第5,614,492号、米国特許第5,545,618号、米国特許第5,120,712号、米国特許第5,118,666号、WO95/05848号、WO91/11457号、EP0708179号、WO96/06628号、EP0658568号、WO87/06941号参照)、メタスチンおよびその誘導体(WO2000/24890号参照)等が用いられる。ペプチドホルモンとしては、好ましくはインスリンおよび成長ホルモン等である。
サイトカインとしては、例えばリンホカイン、モノカイン等が用いられる。リンホカインとしては、例えばインターフェロン類(アルファ型、ベータ型、ガンマ型等)、インターロイキン類(例えば、IL−2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12等)等が用いられる。モノカインとしては、例えばインターロイキン−1(IL−1)、腫瘍壊死因子(TNF)等が用いられる。サイトカインとしては、好ましくはリンホカイン等、さらに好ましくはインターフェロン等、特に好ましくはインターフェロンアルファ等である。
ペプチド性神経伝達物質としては、例えばサブスタンスP、セロトニン、GABA等が用いられる。
【0007】
造血因子としては、例えばエリスロポエチン(EPO)、コロニー刺激因子(G−CSF,GM−CSF,M−CSF等)、トロンボポエチン(TPO)、血小板増殖刺激因子、メガカリオサイトポテンシエーター等が用いられる。
各種増殖因子としては、例えば塩基性あるいは酸性の繊維芽細胞増殖因子(FGF)あるいはこれらのファミリー(例えば、EGF、TGF−瘁ATGF−竅APDGF,酸性FGF,塩基性FGF、FGF−9等)、神経細胞増殖因子(NGF)あるいはこれらのファミリー(例えば、BDNF、NT−3、NT−4、CNTF、GDNF等)、インスリン様成長因子(例えば、IGF−1,IGF−2等)、骨増殖に関与する因子(BMP)あるいはこれらのファミリー等が用いられる。
酵素としては、例えばスーパーオキシドディスミュターゼ(SOD)、ウロキナーゼ、ティシュープラスミノーゲンアクティベーター(TPA)、アスパラギナーゼ、カリクレイン等が用いられる。
ペプチド系抗生物質としては、例えばポリミキシンB、コリスチン、グラミシジン、バシトラシン等が用いられる。
鎮痛性ペプチドとしては、例えばエンケファリン、エンケファリン誘導体〔米国特許第4,277,394号,ヨーロッパ特許出願公開第31567号公報参照〕,エンドルフィン、キョウトルフィン等が用いられる。
その他、生理活性ペプチドとしては、サイモポエチン、ダイノルフィン、ボムベシン、セルレイン、サイモスチムリン、胸腺液性因子(THF)、血中胸腺因子(FTS)およびその誘導体(米国特許第4,229,438号参照)、およびその他の胸腺因子〔医学のあゆみ、第125巻,第10号,835−843頁(1983年)〕、ニューロテンシン、ブラジキニンおよびエンドセリン拮抗作用を有するペプチド類(ヨーロッパ特許公開第436189号、同第457195号,同第496452号、特開平3−94692号、同3−130299号公報参照)等が挙げられる。
本発明に特に好ましく適用される生理活性ペプチドとしては、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LH−RH)およびこれと同様の作用を有する誘導体あるいはLH−RH拮抗物質、成長ホルモン、インスリン等が挙げられ、中でも成長ホルモン、とりわけヒト成長ホルモンが好ましい。
【0008】
本発明において、生理活性ペプチドが金属を含有する場合、必要な場合には、生理活性ペプチドに含有されている金属を前もって除去しておいてもよく、金属を除去する方法としては公知の方法が用いられる。例えばインスリンの塩酸酸性水溶液を、水あるいは酢酸アンモニウム塩溶液に対して透析したのち凍結乾燥することによりアモルファス状態で金属が最小限のインスリンが得られる。
成長ホルモンとしては、いずれの種由来のものでも良いが、好ましくはヒト成長ホルモンである。また、脳下垂体等から抽出される天然由来も本発明に用いられるが、好ましくは遺伝子組換え型GH(特公平6−12996号公報、特公平6−48987号公報参照)であり、さらに好ましくはN末端にメチオニンを有さない天然型と同じ構造を有する組換え型hGHである。該GHとしては金属塩であってもよいが、実質的に金属を含有しないGHも用いられる。hGHとしては、分子量約22Kダルトンのみならず、分子量約20Kダルトンのもの(特開平7−101877号公報、特開平10−265404号公報参照)を用いてもよい。また、hGHの誘導体あるいはその関連タンパク質(WO99/03887号公報参照)を用いてもよい。
【0009】
本発明の徐放性製剤における生理活性物質の配合量は生理活性物質の種類等によって異なるが、例えば生理活性ペプチドの場合、通常約0.1〜50%(W/W)、好ましくは約0.2ないし30%(W/W)、さらに好ましくは約0.5ないし20%(W/W)である。
本発明におけるマトリックスとは、基剤(例えば、生体内分解性ポリマー)で生理活性物質を含有した固形物であり、必要に応じて添加物をも含有するものであり、実質的に徐放性を制御している単位であり、例えばマイクロカプセル、埋込用ロッド等の形態がある。
本発明に用いられる生体内分解性ポリマーとしては、例えばα−ヒドロキシカルボン酸類(例えば、グリコール酸、乳酸等)、ヒドロキシジカルボン酸類(例えば、リンゴ酸等)、ヒドロキシトリカルボン酸(例えば、クエン酸等)等の1種以上から無触媒脱水重縮合で合成され、遊離のカルボキシル基を有する重合体あるいはこれらの混合物、ポリ−α−シアノアクリル酸エステル、ポリアミノ酸(例えば、ポリ−γ−ベンジル−L−グルタミン酸等)、無水マレイン酸系重合体(例えば、スチレン−マレイン酸重合体等)等が挙げられる。これらはホモポリマーまたはコポリマーのいずれであってもよい。重合の形式は、ランダム、ブロック、グラフトのいずれでもよい。また、上記のα−ヒドロキシカルボン酸類、ヒドロキシジカルボン酸類、ヒドロキシトリカルボン酸類が分子内に光学活性中心を有する場合、D−、L−、DL−体のいずれも用いることができる。
これらの中では、末端に遊離のカルボキシル基を有する生体内分解性ポリマー、例えばα−ヒドロキシカルボン酸類(例えば、グリコール酸、乳酸等)から合成された重合体(例えば、乳酸重合体、乳酸−グリコール酸共重合体等)、ポリ−α−シアノアクリル酸エステル等が好ましい。
生体内分解性ポリマーとしては、さらに好ましくはα−ヒドロキシカルボン酸類から合成された重合体等、特に好ましくは乳酸−グリコール酸重合体等である。
【0010】
本明細書においては、ポリ乳酸、ポリグリコール酸等の単重合体のみならず乳酸−グリコール酸共重合体も含めて、単に乳酸−グリコール酸重合体と称することがある。
生体内分解性ポリマーとして乳酸−グリコール酸重合体(乳酸−グリコール酸共重合体または単重合体)を用いる場合、その組成比(モル%)は約100/0ないし約40/60が好ましく、約85/15ないし約50/50がさらに好ましい。
乳酸−グリコール酸重合体の重量平均分子量は、約3,000ないし約50,000が好ましく、約3,000ないし約25,000がより好ましく、約5,000から約20,000がさらに好ましい。
乳酸−グリコール酸重合体の分散度(重量平均分子量/数平均分子量)は約1.2ないし約4.0が好ましく、約1.5ないし約3.5がさらに好ましい。
【0011】
なお、本明細書での重量平均分子量および分散度に関し、前者は重量平均分子量が120,000、52,000、22,000、9,200、5,050、2,950、1,050、580、162の9種類のポリスチレンを基準物質としてゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算の値、後者はこの値から算出した値である。測定は、GPCカラムKF804L x 2(昭和電工製)、RIモニターL−3300(日立製作所製)を使用し、移動相としてクロロホルムを用いて行う。
【0012】
また、末端に遊離のカルボキシル基を有する生体内分解性ポリマーとは、末端基定量による数平均分子量と上記のGPC測定による数平均分子量がほぼ一致するポリマーであり、末端基定量による数平均分子量は以下のようにして算出される。
約1gないし約3gの生体内分解性ポリマーをアセトン(25mL)とメタノール(5mL)との混合溶媒に溶解し、フェノールフタレインを指示薬としてこの溶液中のカルボキシル基を0.05Nアルコール性水酸化カリウム溶液で、室温(20℃)で攪拌下、速やかに滴定して末端基定量による数平均分子量を次式で算出した。
末端基定量による数平均分子量=20000×A/B
A:生体内分解性ポリマーの質量(g)
B:滴定終点までに添加した0.05Nアルコール性水酸化カリウム溶液(mL)
末端基定量による数平均分子量が絶対値であるのに対して、GPC測定による数平均分子量は、各種分析・解析条件(例えば、移動相の種類、カラムの種類、基準物質、スライス幅の選択、ベースラインの選択等)によって変動する相対値であるため、一義的な数値化は困難であるが、両測定による数平均分子量がほぼ一致するとは、例えば、α−ヒドロキシカルボン酸類から合成された重合体において、末端基定量による数平均分子量がGPC測定による数平均分子量の約0.5倍から約2倍の範囲内であること、好ましくは約0.7倍から約1.5倍の範囲内であることをいう。
例えば、1種類以上のα−ヒドロキシカルボン酸類から無触媒脱水重縮合法で合成され、末端に遊離のカルボキシル基を有する重合体では、GPC測定による数平均分子量と末端基定量による数平均分子量とがほぼ一致する。これに対し、環状二量体から触媒を用いて開環重合法で合成され、末端に遊離のカルボキシル基を本質的には有しない重合体では、末端基定量による数平均分子量がGPC測定による数平均分子量の約2倍以上に大きく上回る。この相違によって末端に遊離のカルボキシル基を有する重合体は、末端に遊離のカルボキシル基を有しない重合体と明確に区別することができる。
【0013】
末端に遊離のカルボキシル基を有する乳酸−グリコール酸重合体は、自体公知の製造法、例えば特開昭61−28521号公報に記載の方法(例えば無触媒下の脱水重縮合反応または無機固体酸触媒下での脱水重縮合反応による製造方法等)に従って製造することができる。
乳酸−グリコール酸重合体の分解・消失速度は、組成比あるいは重量平均分子量によって大きく変化するが、一般的にはグリコール酸分率が低いほど分解・消失が遅いため、グリコール酸分率を低くするかあるいは分子量を大きくすることによって放出期間を長くすること(例えば、約6ヶ月)ができる。逆に、グリコール酸分率を高くするあるいは分子量を小さくすることによって放出期間を短くこと(例えば、約1週間)もできる。例えば、1週間ないし2ヶ月型徐放性製剤とするには、上記組成比および重量平均分子量の範囲の乳酸−グリコール酸重合体を用いるのが好ましい。
【0014】
したがって、本発明において用いる生体内分解性ポリマーの組成は、目的とする生理活性ペプチドの種類、所望の徐放期間等に応じて、適宜選択されることが好ましい。その具体例としては、例えば、生理活性ペプチドとしてGHを用いる場合、乳酸−グリコール酸重合体を用いることが好ましく、該乳酸−グリコール酸重合体としては、その乳酸/グリコール酸組成比(モル%)が85/15ないし約50/50の乳酸−グリコール酸共重合体が好ましく、さらに好ましくは約75/25ないし約50/50の乳酸−グリコール酸共重合体である。またその重量平均分子量は約8,000ないし約20,000が好ましく、さらに好ましくは約10,000ないし約20,000である。また、乳酸−グリコール酸重合体の分散度(重量平均分子量/数平均分子量)は約1.2ないし約4.0が好ましく、さらに好ましくは約1.5ないし約3.5である。
用いる乳酸−グリコール酸重合体は、上記公報記載の方法等、公知の方法に従い製造できる。該重合体は無触媒脱水重縮合で製造されたものが好ましい。上記GPC測定法による数平均分子量と末端基定量法による数平均分子量とが、ほぼ一致する乳酸−グリコール酸重合体(PLGA)を用いることが好ましい。
また、該重合体は組成比および/または重量平均分子量の異なる2種の乳酸−グリコール酸重合体を任意の割合で混合して用いてもよい。このような例としては、組成比(乳酸/グリコール酸)(モル%)が約75/25で重量平均分子量が約10,000の乳酸−グリコール酸共重合体と、組成比(乳酸/グリコール酸)(モル%)が約50/50で重量平均分子量が約12,000の乳酸−グリコール酸共重合体との混合物等が用いられる。混合する際の重量比は、好ましくは約25/75ないし約75/25である。
【0015】
また、本発明で用いる生体内分解性ポリマーは、上記した生体内分解性ポリマーの金属塩であってもよく、例えば、WO97/01331号公報に記載の各種生体内分解性ポリマーの多価金属塩等が用いられる。好ましくは乳酸−グリコール酸重合体の多価金属塩(さらに好ましくは亜鉛塩,カルシウム塩,マグネシウム塩等、より好ましくは亜鉛塩等)等が用いられる。該多価金属塩の金属種としては、生体に悪影響を及ぼさない化合物であれば特に限定されず、例えば2価(例、鉄、亜鉛、銅、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、スズ、マンガン等)、3価(例、鉄、アルミニウム、マンガン等)、4価(例、スズ等)などの多価金属も用いることができる。
本明細書においては、生体内分解性ポリマーが金属塩の場合も含めて生体内分解性ポリマーと称することがあり、例えば乳酸−グリコール酸重合体が多価金属塩の場合も乳酸−グリコール酸重合体と称することがある。
これらの生体内分解性ポリマーの多価金属塩はWO97/01331号公報に記載の方法およびこれに準じる方法により製造することができる。
また、生体内分解性ポリマーの多価金属塩が亜鉛塩の場合には、生体内分解性ポリマーと酸化亜鉛とを有機溶媒中で反応させることによって製造することもできる。
有機溶媒への生体内分解性ポリマーおよび酸化亜鉛の添加順序は、生体内分解性ポリマーの有機溶媒溶液に酸化亜鉛を粉末状であるいは該有機溶媒に懸濁した状態で添加してもよく、逆に酸化亜鉛の有機溶媒懸濁液中に生体内分解性ポリマーの有機溶媒溶液を添加してもよい。また、両者を粉末状で混和後、有機溶媒を添加してもよい。
本発明の徐放性製剤に含まれる生体内分解性ポリマーの含量は、通常約30ないし99.9%(W/W)、好ましくは約60ないし97%(W/W)、さらに好ましくは約70ないし90%(W/W)である。
【0016】
本発明における徐放性製剤の製造時に、生体内分解性ポリマーの溶解に用いる有機溶媒は、沸点120℃以下であることが好ましい。該有機溶媒としては、例えばハロゲン化炭化水素(例えば、ジクロロメタン、クロロホルム等)、アルコール類(例えば、エタノール、メタノール等)、酢酸エチル、アセトニトリル等が挙げられる。これらは適宜の割合で混合して用いてもよい。有機溶媒を単独で用いる場合、例えばジクロロメタン、酢酸エチル、アセトニトリル等が好ましい。有機溶媒を混合溶媒として用いる場合、例えばハロゲン化炭化水素(例えば、ジクロロメタン、クロロホルム等)と、アルコール類(例えば、エタノール、メタノール等)あるいはアセトニトリルとの組み合わせが好ましい。ハロゲン化炭化水素と、アルコール類あるいはアセトニトリルとの混合比(体積比)は約100:1ないし約1:1であり、好ましくは約30:1ないし約2:1の混合溶媒を用いることが望ましい。また、生体内分解性ポリマーの溶液中濃度は分子量、有機溶媒等の種類によって異なるが、例えば約0.01ないし約80%(W/W)、好ましくは約0.1ないし約70%(W/W)、さらに好ましくは約1ないし約60%(W/W)である。
【0017】
本発明におけるカチオン性物質とは、塩基性物質あるいは水溶性多価金属塩を示す。
塩基性物質としては塩基性アミノ酸(例えば、アルギニン、リシン等)、塩基性ペプチド(例えば、プロタミン、硫酸プロタミン、塩酸プロタミン、リン酸プロタミン等のプロタミンまたはその塩等)、塩基性ポリアミン(例えば、スペルミジン、スペルミン等)、塩基性多糖類(例えば、キトサン等)、塩基性添加物(例えば、塩化ベンザルコニウム、N−メチルグルカミン(メグルミン)等)等が挙げられる。水溶性多価金属塩としては、水溶性亜鉛塩(例えば、塩化亜鉛、酢酸亜鉛)、水溶性カルシウム塩、水溶性マグネシウム塩等が挙げられる。
本発明におけるポリオール類としては、ポリエチレングリコールやプロピレングリコール等が挙げられる。
本発明におけるカチオン性物質および/またはポリオール類の投与量(添加量)は、カチオン性物質、ポリオール類の種類、対象動物、投与部位等によって種々異なるが、好ましくは小児あるいは成人1人あたり約0.0001ないし約100mg/kg体重の範囲から適宜選ぶことができる。カチオン性物質、ポリオール類の投与量(添加量)は、該カチオン性物質、ポリオール類の使用実績範囲量であることが好ましい。例えば、カチオン性物質が硫酸プロタミンである場合、小児あるいは成人に対する投与量は皮下投与の場合は使用実績量3.5mg以下が好ましい。カチオン性物質がアルギニンである場合は、小児あるいは成人に対する投与量は皮下投与の場合は使用実績量40mg以下、筋肉内投与の場合は1620mg以下が好ましい。
本発明の徐放性製剤に含まれるカチオン性物質および/またはポリオール類の含量は、製剤全体に対して、約0.0001〜80%(W/W)、好ましくは約0.001〜40%(W/W)、さらに好ましくは約0.01〜20%(W/W)である。
【0018】
本発明における徐放性製剤とは、マトリックス形成後に、必要に応じて賦形剤(例えば、マンニトール)を加えて処理(例えば、凍結乾燥)したものをいう。
本発明における生理活性物質の初期放出率とは、動物(ラット)に徐放性製剤を投与後1日以内に放出された生理活性物質量の投与用量に対する割合を示す。
本発明の徐放性製剤は、生理活性物質を含有したマトリックスとカチオン性物質および/またはポリオール類とが共存しておればよく、両者が混合されている場合の他、両者が別々の容器に含有されていて用時調製(懸濁)してもよい。また、例えば、1つの容器(例えば、デュアルチャンバー・プレフィルドシリンジ等)内で、マトリックスとカチオン性物質および/またはポリオール類と分散媒の三者が互いに接触することなく独立して存在し、投与する直前に三者が混合されるような形態をとることも可能である。
本発明の徐放性製剤におけるカチオン性物質および/またはポリオール類は、マトリックスの内部には存在しておらず、マトリックスの表面(外部)に保持(付着)されているか、または、分散媒に含有されていてもよい。
【0019】
本発明における分散媒とは、徐放性製剤を懸濁液として注射する際に使用する液媒体を示し、好ましくは水溶性媒体を示す。分散媒は通常、浸透圧調整剤(等張化剤)、粘稠化剤(懸濁化剤)、界面活性剤、保存剤(安定化剤)、無痛化剤、局所麻酔剤等を含有する。浸透圧調整剤(等張化剤)としては例えば、塩化ナトリウム、マンニトール、ソルビトール、ブドウ糖等が、粘稠化剤(懸濁化剤)としては例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、アルギン酸ナトリウム、ヒアルロン酸、デキストラン等の多糖類等が、界面活性剤としては例えば、ポリソルベート80(Tween80)、HCO−60等が、保存剤(安定化剤)としては例えば、メチルパラベン、プロピルパラベン等が、無痛化剤としては例えばベンジルアルコール等が、局所麻酔剤としては例えば塩酸キシロカイン、クロロブタノール等が用いられる。さらに、必要に応じてpH調整剤(例えば、塩酸、酢酸、水酸化ナトリウム、あるいは各種緩衝剤)を含有する。また、上記水性分散媒に加え、油性分散媒も使用される。ゴマ油、コーン油等の植物油あるいはこれにレシチン等のりん脂質を混合したもの、あるいは中鎖脂肪酸トリグリセリド(例えば、ミグリオール812)等が油性分散媒として使用できる。
【0020】
本発明における生理活性物質を含有したマトリックスは、生理活性物質溶液を凍結乾燥して得られる粉体(S相)を生体内分解性ポリマーを溶解した有機溶媒液(O相)に分散させた、S/O型分散液から溶媒を除去することにより、あるいは生理活性物質を水溶液とした水相(W相)を生体内分解性ポリマーを溶解した有機溶媒液(O相)に分散させた、W/O型乳化液から溶媒を除去することにより、もしくは生理活性物質を生体内分解性ポリマーとともに有機溶媒液(O相)に溶解させた液から溶媒を除去することにより、製造される。その製造法としては、例えば(a)水中乾燥法(S/O/W法およびW/O/W法もしくはO/W法)、(b)相分離法(コアセルベーション法)および(c)噴霧乾燥法、あるいはこれらに準じた方法等が挙げられる。以下に生理活性物質を含有したマトリックスとして、例えばマイクロカプセルを製造する場合の製造方法について記述する。
【0021】
(a−1)水中乾燥法(S/O/W法)
本法によれば、まず生理活性物質水溶液に水混和性の有機溶媒および/または揮発性塩類を添加した後、凍結乾燥により生理活性物質粉体(S相)を作成する。この際、微細な粉体を得るためには、生理活性物質溶液中の塩濃度、例えばアルカリ金属(ナトリウム、カリウム、カルシウムなど)イオン濃度が低いことが好ましい。例えば、アルカリ金属がナトリウムである場合には、そのイオン濃度は約10μg/mL以下であることが好ましい。次に生体内分解性ポリマーを有機溶媒に溶解し、この有機溶媒液中に上記の生理活性物質粉体を添加し分散させる。この際、生理活性物質と生体内分解性ポリマーとの比率(重量比)は、例えば約1:1000ないし約1:1、好ましくは約1:200ないし約1:5、さらに好ましくは約1:100ないし約1:5である。また、生理活性物質粉体を有機溶媒液中に均一に分散させるため、外部物理的エネルギーを加えることが好ましい。その方法としては例えば、超音波照射、タービン型撹拌器、ホモジナイザー等が用いられる。この時の有機溶媒液中での生理活性物質の平均粒子径としては約10μm以下、さらに好ましくは約0.1μmないし約5μm、より好ましくは約0.5μmないし約2μmであることが望ましく、本発明により得られた生理活性物質粉体を用いることにより容易に達成される。本発明における生理活性物質の平均粒子径は、ホモジナイザーを用いて該生理活性物質をジクロロメタン等の有機溶媒中で分散した後に、レーザー解析式粒度分布測定装置(SALD2000A:島津)により得られる値を示す。その際、生理活性物質はジクロロメタン等の有機溶媒に、例えば約20ないし100mg/mLの濃度で添加後、ホモジナイザー(例えば、ポリトロン(キネマチカ社))を用いて約20,000rpmで約30秒ないし1分間攪拌することにより分散液とされ、さらに上記粒度分布測定装置の測定可能な範囲となるように適宜、該有機溶媒で希釈し、供試される。
次いでこのようにして調製された有機溶媒分散液(S/O型分散液)を、さらに水性溶媒(W相)中に添加して、上記と同様の外部物理的エネルギー、例えば超音波照射、タービン型撹拌器、あるいはホモジナイザー等によりS/O/W型エマルションを形成させる。以後、油相溶媒を蒸発させマイクロカプセルを製造する。この際の水相体積は、一般的には油相体積の約1倍ないし約10,000倍から選ばれる。さらに好ましくは約2倍ないし約5,000倍から選ばれる。
特に好ましくは約5倍ないし約2,000倍から選ばれる。
上記外水相中には、乳化剤を加えてもよい。該乳化剤としては、一般的に安定なS/O/Wエマルションを形成できるものであれば何れでもよい。乳化剤としては、例えばアニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、レシチン、ゼラチン、ヒアルロン酸等が挙げられる。これらは適宜組み合わせて使用してもよい。外水相中の乳化剤の濃度は、好ましくは約0.001%ないし20%(W/W)である。さらに好ましくは約0.01%ないし10%(W/W)、特に好ましくは約0.05%ないし5%(W/W)である。
このようにして得られたマイクロカプセルは、遠心分離あるいは濾過操作により分取した後、マイクロカプセルの表面に付着している乳化剤等を蒸留水による洗浄で除去し、再び蒸留水等に分散して凍結乾燥する。
【0022】
本法において生理活性物質水溶液に添加される水混和性の有機溶媒としては、例えばアルコール類(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール等、好ましくはメタノール、エタノール等)、アセトン等が挙げられる。これらは適宜の割合で混合して用いてもよいが、好ましくはアルコール類、特にエタノールを単独で用いることが望ましい。また、生理活性物質水溶液への添加量(濃度)は、体積比において約0.03ないし0.5%(V/V)であり、好ましくは約0.06ないし0.25%(V/V)、さらに好ましくは約0.1ないし0.15%(V/V)である。このような水混和性の有機溶媒の添加により得られる生理活性物質水溶液を、さらに凍結乾燥することにより、取り扱いが容易で(操作性のよい)、かつ微細な(粒子径の小さな)生理活性物質粉体が作成できる。
本法において生理活性物質水溶液に添加される揮発性の塩類としては、例えばアンモニウム塩(例えば酢酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、塩化アンモニウム等、好ましくは酢酸アンモニウム等)が挙げられる。これらは適宜の割合で混合して用いてもよい。揮発性の塩類の生理活性物質水溶液への添加量は、モル比において約10倍ないし約80倍モルであり、好ましくは約10倍ないし約70倍モルであり、さらに好ましくは約15倍ないし約70倍モルであり、より好ましくは約20倍ないし約70倍モルであり、最も好ましくは約20倍ないし約50倍モルである。水混和性の有機溶媒を添加する場合と同様に、揮発性塩類の添加により得られる生理活性物質水溶液を、さらに凍結乾燥することにより、取り扱いが容易で(操作性のよい)、かつ微細な(粒子径の小さな)微細生理活性物質粉体が作成できる。
本法において、生理活性物質水溶液に添加される水混和性の有機溶媒および/または揮発性の塩類は、単独で用いてもよいし、適宜組み合わせて用いてもよい。水混和性の有機溶媒および揮発性の塩類を組み合せて用いる時は、上記のそれぞれの添加量に従って、生理活性物質水溶液に添加することができる。
【0023】
(a−2)水中乾燥法(W/O/W法)
本法によれば、まず生理活性物質に水または適当な緩衝液を添加し、生理活性物質溶液(W相)を作成する。次に生体内分解性ポリマーを有機溶媒に溶解し、この有機溶媒液中に上記の生理活性物質溶液を添加し分散させる。このようにして得たW/O型乳化液をさらに水性溶媒(W相)中に添加して、上記S/O/W法と同様にW/O/W型エマルションを経由して、マイクロカプセルを得る。
(a−3)水中乾燥法(O/W法)
本法によれば、まず生理活性物質とともに生体内分解性ポリマーを有機溶媒に溶解し、有機溶媒液(O相)をさらに水性溶媒(W相)中に添加して、上記S/O/W法と同様にO/W型エマルションを経由して、マイクロカプセルを得る。
【0024】
(b)相分離法(コアセルベーション法)
本法においては、上記(a−1)のS/O型分散液あるいは(a−2)のW/O型乳化液もしくは(a−3)の油相溶液にコアセルベーション剤を撹拌下徐々に加えマイクロカプセルを析出、固化させる。該コアセルベーション剤は、上記分散液の約0.01倍ないし約1,000倍の体積量が加えられる。さらに好ましくは、約0.05倍ないし約500倍、特に好ましくは約0.1倍ないし約200倍の体積量である。コアセルベーション剤としては、生体内分解性ポリマーを溶解する有機溶媒と混和する高分子系、鉱物油系または植物油系の化合物で使用した生体内分解性ポリマーを溶解しないものであればよい。具体的には、例えばシリコン油、ゴマ油、大豆油、コーン油、綿実油、ココナッツ油、アマニ油、鉱物油、n−ヘキサン、n−ヘプタン等が用いられる。これらは2種以上混合して用いてもよい。このようにして得られたマイクロカプセルを濾過分取した後、ヘプタン等により繰り返し洗浄してコアセルベーション剤を除去する。さらに、上記(a)と同様に洗浄し、次いで凍結乾燥する。
水中乾燥法およびコアセルベーション法でのマイクロカプセルの製造では、粒子同士の凝集を防ぐために凝集防止剤を加えてもよい。該凝集防止剤としては、例えばマンニトール、ラクトース、ブドウ糖、デンプン類(例えば、コーンスターチ等)、ヒアルロン酸あるいはこのアルカリ金属塩等の水溶性多糖、グリシン、フィブリン、コラーゲン等の蛋白質、塩化ナトリウム、リン酸水素ナトリウム等の無機塩類等が適宜用いられる。
【0025】
(c)噴霧乾燥法
本法においては、上記(a−1)のS/O型分散液あるいは(a−2)のW/O型乳化液もしくは(a−3)の油相溶液を、ノズルを用いてスプレードライヤー(噴霧乾燥器)の乾燥室内へ噴霧し、極めて短時間に微粒化液滴内の有機溶媒を揮発させ、マイクロカプセルを製造する。該ノズルとしては、例えば二流体ノズル型、圧力ノズル型、回転ディスク型等がある。この際所望により、上記の分散液と同時に、マイクロカプセル粒子同志の凝集防止を目的として上記凝集防止剤の水溶液を別ノズルより噴霧することも有効である。このようにして得られたマイクロカプセルは、さらに、上記(a)と同様に洗浄し、必要であれば加温(要すれば減圧下)により、水分および有機溶媒をさらに除去する。
本発明における生理活性物質を含有したマトリックスとして、埋込用ロッドを製造する場合の製造方法としては、生理活性物質と基剤の混合物を基剤のガラス転移温度以上に加温後、鋳型に入れて成形する方法(mold)や押し出し成形法(extrude)等がある。形状としては、ロッド状のものの他、自在に選択できる。あるいは、予め生理活性物質と基剤の混合物を何らかの方法で微細粉末化あるいはマイクロカプセル化しておき、ステンレスチューブあるいはテフロンチューブに充填し、圧縮成形することでロッド状の埋込用製剤が製造できる。この時、必要に応じて基剤のガラス転移温度以上に加温しても良い。例えば、水中乾燥法で得たマイクロカプセルを内径2.0mmのテフロンチューブに充填し、60℃で15分間加熱後、直径2.0mmの棒で圧縮し冷却後成形することで、外径2.0mmのロッド状製剤が得られる。
【0026】
本発明の徐放性製剤は微粒子状であることが好ましい。なぜならば徐放性製剤は、皮下あるいは筋肉内注射に通常使用される注射針を通して投与される方が、患者に対し過度の苦痛を与えることがないからである。該徐放性製剤の粒子径は、例えば平均粒子径として約0.1ないし300μm、好ましくは約1ないし150μm、特に好ましくは約2ないし100μmである。本発明の徐放性製剤における生理活性物質の配合量は生理活性物質の種類等によって異なるが、例えば生理活性ペプチドの場合、通常約0.1〜50%(W/W)、好ましくは約0.2ないし30%(W/W)、さらに好ましくは約0.5ないし20%(W/W)である。また、本発明の徐放性製剤に含まれる生体内分解性ポリマーの含量は、例えば約30ないし99.9%(W/W)、好ましくは約60ないし97%(W/W)、さらに好ましくは約70ないし90%(W/W)である。
本発明における徐放性製剤の生理活性物質の初期放出率[投与後1日(24時間)までの放出率]は、好ましくは投与用量の約50%以下、より好ましくは約1ないし約30%、さらに好ましくは約2ないし約20%、もっとも好ましくは約2ないし約15%である。なお、該初期放出率は本発明の徐放性製剤皮下投与後24時間までの血中濃度のAUC(Area Under the Concentration-Time Curve)を、生理活性ペプチド溶液皮下投与後24時間までのAUCから得られる投与量−AUC直線に適用させることにより初期放出量が得られ、さらに初期放出率が算出される。
【0027】
本発明の徐放性製剤は、例えばマイクロカプセルとして、あるいはマイクロカプセルを原料物質として種々の剤形に製剤化し、非経口剤(例えば、筋肉内、皮下、臓器等への注射剤または埋め込み剤、鼻腔、直腸、子宮等への経粘膜剤等)、経口剤(例えば、カプセル剤(例えば、硬カプセル剤、軟カプセル剤等)、顆粒剤、散剤等の固形製剤、懸濁剤等の液剤等)等として投与することができる。
本発明の徐放性製剤は特に注射用であることが好ましい。例えば、徐放性製剤がマイクロカプセルである場合、上記分散媒を加え水性懸濁剤とすることにより実用的な注射用徐放製剤が得られる。また、上記油性分散媒を加え油性懸濁剤として実際に使用できる徐放性注射剤とする。
【0028】
徐放性製剤が例えばマイクロカプセルである場合、マイクロカプセルの粒子径は、懸濁注射剤として使用する場合には、その分散度、通針性を満足する範囲であればよく、例えば平均粒子径として約0.1ないし約300μmの範囲が挙げられる。平均粒子径は、好ましくは約1ないし約150μm、特に好ましくは約2ないし約100μmの範囲である。
上記したマイクロカプセルを無菌製剤にするには、製造全工程を無菌にする方法、ガンマ線で滅菌する方法、防腐剤を添加する方法等が挙げられるが、特に限定されない。
【0029】
本発明の徐放性製剤は、低毒性で、哺乳動物(例えば、ヒト、牛、豚、犬、ネコ、マウス、ラット、ウサギ等)に対して安全に用いることができる。
徐放性製剤の適応は、使用する生理活性物質により種々異なる。生理活性物質が、例えばインスリンである場合には、糖尿病等、インターフェロンアルファである場合には、ウイルス性肝炎(例えば、C型肝炎、HBe 抗原陽性活動性肝炎等)、癌(例えば、腎癌、多発性骨髄腫等)等、エリスロポエチンの場合には貧血(例えば、腎透析時貧血等)等、G−CSFの場合には好中球減少症(例えば、制ガン剤治療時)、感染症等、IL−2の場合には癌(例えば、血管内皮腫等)等、FGFの場合には骨折、創傷(床ずれ等)、歯周病、消化管潰瘍等、FGF−9の場合には血小板減少症等、NGFの場合には老人性痴呆、神経病(ニューロパシー)等、TPAの場合には血栓症等、腫瘍壊死因子の場合には癌等の治療または予防に有効である。また、GH含有徐放性製剤では、GHの成長ホルモン作用に基づき、GH分泌不全性低身長症の他、ターナー症候群、慢性腎不全、軟骨発育不全症(軟骨異栄養症)、さらには成人成長ホルモン欠損症(成人GHD)の治療やAIDS等の消耗性疾患の治療にも適応できる。また、GHはダウン症候群、シルバー症候群、骨形成不全症、あるいは若年性慢性関節症等の疾患にも適応され、有効な治療効果を得たとの報告もあり、GH含有徐放性製剤はこれらの疾患にも適応可能である。さらには鬱血性心不全等の治療または予防にも有効である。その他、GH含有徐放性製剤が適応できる対象としては、臓器移植時やAIDS患者の薬物治療時の造血、低栄養状態の改善、腎性貧血、狭心症、高脂血症、肥満、火傷・創傷・潰瘍の治療促進、外科侵襲(手術・外傷)/術後の早期回復、敗血症、骨粗鬆症の骨折予防、骨粗鬆症による骨折患者の術後筋力早期回復、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、褥瘡等が挙げられる。また、虚弱老人の生活の質(QOL)の向上を目的とする抗老化薬として、あるいはhGHの神経保護作用により神経変性疾患(アルツハイマー病、パーキンソン病、脳血管障害など)の進展抑制および改善にも効果が期待できる。GHを徐放性製剤化することにより、GH連日皮下注射剤よりも、これらの適応症に対してすぐれた薬効が得られる。
【0030】
徐放性製剤の投与量は、生理活性物質の種類と含量、放出の持続時間、対象疾病、対象動物等によって種々異なるが、該生理活性物質の有効濃度が体内で保持される量であればよい。該生理活性物質の投与量としては、例えば徐放性製剤が2週間型製剤である場合、好ましくは成人1人当たり約0.0001ないし約10mg/kg体重の範囲から適宜選ぶことができる。さらに好ましくは約0.05ないし約1mg/kg体重の範囲から適宜選ぶことができる。投与回数は、1週間に1回、2週間に1回、1ヶ月に1回、2ヶ月に1回等、該生理活性物質の種類と含量、剤型、放出の持続時間、対象疾病、対象動物等によって適宜選ぶことができる。好ましくは1週間ないし2ヶ月型徐放性製剤、さらに好ましくは1週間ないし1ヶ月型徐放性製剤が挙げられる。
徐放性製剤の有効成分である生理活性物質が、例えばインスリンである場合には、糖尿病の成人に対する投与量は、有効成分として通常、約0.001ないし約1mg/kg体重、好ましくは約0.01ないし約0.2mg/kg体重の範囲から適宜選び、1週間に1回投与するのがよい。
【0031】
徐放性製剤の有効成分である生理活性物質が、GHの場合には、投与量は、GHの種類と含量、放出の持続時間、対象疾病、対象動物等によって種々異なるが、該GHの有効濃度が体内で保持される量であればよい。上記した疾患の治療において、例えば徐放性製剤が2週間型製剤である場合、GHの投与量は有効成分として、好ましくは、小児あるいは成人1人当たり約0.01ないし約5mg/kg体重(約0.03ないし約15IU/kg体重)の範囲から適宜選択して安全に投与することができる。さらに好ましくは約0.05ないし約1mg/kg体重(約0.15ないし約3IU/kg体重)の範囲から適宜選ぶことができる。投与回数は、1週間に1回、2週間に1回あるいは1ケ月に1回等、GH含量、剤型、放出の持続時間、対象疾病、対象動物等によって適宜選ぶことができる。好ましくは1週間ないし2ヶ月型徐放性製剤、さらに好ましくは1週間ないし1ヶ月型徐放性製剤が挙げられる。
徐放性製剤は、常温あるいは冷所に保存することが好ましい。徐放性製剤は、冷所に保存することがさらに好ましい。ここでいう常温あるいは冷所とは、日本薬局方において定義されるものである。すなわち、常温とは15ないし25℃を、冷所とは15℃以下を意味する。冷所のうち、とりわけ2ないし8℃が好ましい。
【0032】
【実施例】
以下に参考例、実施例、比較例および試験例を挙げて、さらに具体的に説明するが、これらは本発明を限定するものではない。
参考例1
遺伝子組換え型hGH水溶液(hGH濃度=2mg/mL)に、酢酸アンモニウムの20倍モル等量を添加し、ドライアイス−エタノール浴中で冷却したナス型フラスコの内壁面にペリスタリックポンプを用いて30分間に100mL滴下し急速凍結後、真空乾燥することによりhGH粉体を得た。乳酸−グリコール酸共重合体(乳酸/グリコール=65/35,粘度=0.160dL/g)1.690gと酸化亜鉛10mgとをジクロロメタン2.7mLに溶解した。この有機溶媒液に上記のhGH粉体を300mg添加し、ポリトロン(キネマチカ社)を用いて微粒化した。このS/O分散液を0.1%ポリビニルアルコール水溶液800mLに添加し、ホモミキサーを用いて撹拌・乳化した。室温で3時間撹拌してジクロロメタンを揮散させた後、遠心分離(約2,000rpm)することによりマイクロカプセルを分取した。次いで蒸留水400mLを用いて2回洗浄後、D−マンニトール0.2gを添加し凍結乾燥した。さらに残留溶媒除去のため、46℃で3日間真空乾燥してhGH含有マイクロカプセルを得た。
【0033】
参考例2
マンニトール5g、カルボキシメチルセルロースナトリウム0.5gおよびポリソルベート80 0.1gを約90mLの注射用蒸留水に溶解し、酢酸を用いてpH5〜7に調整した後、注射用蒸留水で100mLにメスアップした。得られた溶液を孔径0.45μmのフィルターでろ過後、マイクロカプセル注射用分散媒とした。
【0034】
実施例1
マンニトール5g、塩酸L−アルギニン2g、カルボキシメチルセルロースナトリウム0.5gおよびポリソルベート80 0.1gを約90mLの注射用蒸留水に溶解し、酢酸を用いてpH5〜7に調整した後、注射用蒸留水で100mLにメスアップした。得られた溶液を孔径0.45μmのフィルターでろ過後、マイクロカプセル注射用分散媒とした。
【0035】
実施例2
マンニトール5g、塩酸L−アルギニン2gおよびポリソルベート80 0.1gを約60mLの注射用蒸留水に溶解し、ポリエチレングリコール400を30mL加えた後、注射用蒸留水で100mLにメスアップした。得られた溶液を孔径0.45μmのフィルターでろ過後、マイクロカプセル注射用分散媒とした。
【0036】
実施例3
マンニトール5g、塩化ベンザルコニウム0.1gおよびポリソルベート800.1gを約60mLの注射用蒸留水に溶解し、ポリエチレングリコール400を30mL加えた後、注射用蒸留水で100mLにメスアップした。得られた溶液を孔径0.45μmのフィルターでろ過後、マイクロカプセル注射用分散媒とした。
【0037】
実施例4
マンニトール5g、硫酸プロタミン10mgおよびポリソルベート80 0.1gを約60mLの注射用蒸留水に溶解し、ポリエチレングリコール400を30mL加えた後、注射用蒸留水で100mLにメスアップした。得られた溶液を孔径0.45μmのフィルターでろ過後、マイクロカプセル注射用分散媒とした。
【0038】
実施例5
マンニトール5g、塩化亜鉛42mgおよびポリソルベート80 0.1gを約60mLの注射用蒸留水に溶解し、ポリエチレングリコール400を30mL加えた後、注射用蒸留水で100mLにメスアップした。得られた溶液を孔径0.45μmのフィルターでろ過後、マイクロカプセル注射用分散媒とした。
【0039】
実施例6
マンニトール5g、塩酸リシン1.7gおよびポリソルベート80 0.1gを約60mLの注射用蒸留水に溶解し、ポリエチレングリコール400を30mL加えた後、注射用蒸留水で100mLにメスアップした。得られた溶液を孔径0.45μmのフィルターでろ過後、マイクロカプセル注射用分散媒とした。
【0040】
実施例7
マンニトール5g、水溶性キトサン(PRONOVA社製、ウルトラピュアグレード、塩酸塩、CL113)10mgおよびポリソルベート80 0.1gを約60mLの注射用蒸留水に溶解し、ポリエチレングリコール400を30mL加えた後、注射用蒸留水で100mLにメスアップした。得られた溶液を孔径0.45μmのフィルターでろ過後、マイクロカプセル注射用分散媒とした。
【0041】
実施例8
マンニトール5gおよびポリソルベート80 0.1gを約60mLの注射用蒸留水に溶解し、ポリエチレングリコール400を30mL加えた後、注射用蒸留水で100mLにメスアップした。得られた溶液を孔径0.45μmのフィルターでろ過後、マイクロカプセル注射用分散媒とした。
【0042】
実施例9
遺伝子組換え型hGH水溶液(hGH濃度=2mg/mL)に、酢酸アンモニウムの20倍モル等量を添加し、ドライアイス−エタノール浴中で冷却したナス型フラスコの内壁面にペリスタリックポンプを用いて30分間に100mL滴下し急速凍結後、真空乾燥することによりhGH粉体を得た。乳酸−グリコール酸共重合体(乳酸/グリコール=65/35,粘度=0.160dL/g)1.690gと酸化亜鉛10mgとをジクロロメタン2.7mLに溶解した。この有機溶媒液に上記のhGH粉体を300mg添加し、ポリトロン(キネマチカ社)を用いて微粒化した。このS/O分散液を0.1%ポリビニルアルコール水溶液800mLに添加し、ホモミキサーを用いて撹拌・乳化した。室温で3時間撹拌してジクロロメタンを揮散させた後、遠心分離(約2,000rpm)することによりマイクロカプセルを分取した。次いで蒸留水400mLを用いて2回洗浄後、D−マンニトール0.2gおよび硫酸プロタミン0.4mgを添加し凍結乾燥した。さらに残留溶媒除去のため、46℃で3日間真空乾燥してhGH含有マイクロカプセルを得た。
【0043】
実施例10
遺伝子組換え型hGH水溶液(hGH濃度=2mg/mL)に、酢酸アンモニウムの20倍モル等量を添加し、ドライアイス−エタノール浴中で冷却したナス型フラスコの内壁面にペリスタリックポンプを用いて30分間に100mL滴下し急速凍結後、真空乾燥することによりhGH粉体を得た。乳酸−グリコール酸共重合体(乳酸/グリコール=65/35,粘度=0.160dL/g)1.690gと酸化亜鉛10mgとをジクロロメタン2.7mLに溶解した。この有機溶媒液に上記のhGH粉体を300mg添加し、ポリトロン(キネマチカ社)を用いて微粒化した。このS/O分散液を0.1%ポリビニルアルコール水溶液800mLに添加し、ホモミキサーを用いて撹拌・乳化した。室温で3時間撹拌してジクロロメタンを揮散させた後、遠心分離(約1,500rpm)することによりマイクロカプセルを分取した。次いで蒸留水400mLを用いて2回洗浄後、D−マンニトール0.2gおよび塩酸L−アルギニン0.25gを添加し凍結乾燥した。さらに残留溶媒除去のため、46℃で3日間真空乾燥してhGH含有マイクロカプセルを得た。
【0044】
実施例11
遺伝子組換え型hGH水溶液(hGH濃度=2mg/mL)に、酢酸アンモニウムの20倍モル等量を添加し、ドライアイス−エタノール浴中で冷却したナス型フラスコの内壁面にペリスタリックポンプを用いて30分間に100mL滴下し急速凍結後、真空乾燥することによりhGH粉体を得た。乳酸−グリコール酸共重合体(乳酸/グリコール=65/35,粘度=0.160dL/g)1.690gと酸化亜鉛10mgとをジクロロメタン2.7mLに溶解した。この有機溶媒液に上記のhGH粉体を300mg添加し、ポリトロン(キネマチカ社)を用いて微粒化した。このS/O分散液を0.1%ポリビニルアルコール水溶液800mLに添加し、ホモミキサーを用いて撹拌・乳化した。室温で3時間撹拌してジクロロメタンを揮散させた後、遠心分離(約1,500rpm)することによりマイクロカプセルを分取した。次いで蒸留水400mLを用いて2回洗浄後、D−マンニトール0.2gおよびN−メチルグルカミン0.25gを添加し凍結乾燥した。さらに残留溶媒除去のため、46℃で3日間真空乾燥してhGH含有マイクロカプセルを得た。
【0045】
実施例12
実施例9で得た硫酸プロタミンを含有するマイクロカプセルを内径2.0mmのテフロンチューブに充填し、60℃で15分間加熱した。加熱後棒で圧縮し冷却後成形した。外径2.0mm、長さ約1cmのロッド状製剤を得た。
【0046】
実施例13
マンニトール5g、塩酸L−アルギニン0.2g、カルボキシメチルセルロースナトリウム0.5gおよびポリソルベート80 0.1gを約90mLの注射用蒸留水に溶解し、酢酸を用いてpH5〜7に調整した後、注射用蒸留水で100mLにメスアップした。得られた溶液を孔径0.45μmのフィルターでろ過後、マイクロカプセル注射用分散媒とした。
【0047】
実施例14
マンニトール5g、塩酸L−アルギニン1.2g、カルボキシメチルセルロースナトリウム0.5gおよびポリソルベート80 0.1gを約90mLの注射用蒸留水に溶解し、酢酸を用いてpH5〜7に調整した後、注射用蒸留水で100mLにメスアップした。得られた溶液を孔径0.45μmのフィルターでろ過後、マイクロカプセル注射用分散媒とした。
【0048】
実施例15
マンニトール5g、塩酸L−アルギニン2.4g、カルボキシメチルセルロースナトリウム0.5gおよびポリソルベート80 0.1gを約90mLの注射用蒸留水に溶解し、酢酸を用いてpH5〜7に調整した後、注射用蒸留水で100mLにメスアップした。得られた溶液を孔径0.45μmのフィルターでろ過後、マイクロカプセル注射用分散媒とした。
【0049】
実施例16
マンニトール1.5g、塩酸L−アルギニン2.4g、カルボキシメチルセルロースナトリウム0.5gおよびポリソルベート80 0.1gを約90mLの注射用蒸留水に溶解し、注射用蒸留水で100mLにメスアップした。得られた溶液を孔径0.45μmのフィルターでろ過後、マイクロカプセル注射用分散媒とした。
【0050】
実施例17
マンニトール5g、塩酸リシン2.1g、カルボキシメチルセルロースナトリウム0.5gおよびポリソルベート80 0.1gを約90mLの注射用蒸留水に溶解し、注射用蒸留水で100mLにメスアップした。得られた溶液を孔径0.45μmのフィルターでろ過後、マイクロカプセル注射用分散媒とした。
【0051】
実施例18
マンニトール5g、N−メチルグルカミン1g、メチルセルロース0.5gおよびポリソルベート80 0.1gを約90mLの注射用蒸留水に溶解し、塩酸を用いてpH6に調整した後、注射用蒸留水で100mLにメスアップした。得られた溶液を孔径0.45μmのフィルターでろ過後、マイクロカプセル注射用分散媒とした。
【0052】
実施例19
マンニトール5g、酢酸亜鉛1g、メチルセルロース0.5gおよびポリソルベート80 0.1gを約90mLの注射用蒸留水に溶解し、注射用蒸留水で100mLにメスアップした。得られた溶液を孔径0.45μmのフィルターでろ過後、マイクロカプセル注射用分散媒とした。
【0053】
実施例20
マンニトール5g、水溶性キトサン(PRONOVA社製、ウルトラピュアグレード、塩酸塩、CL113)0.1g、メチルセルロース0.5gおよびポリソルベート80 0.1gを約90mLの注射用蒸留水に溶解し、注射用蒸留水で100mLにメスアップした。得られた溶液を孔径0.45μmのフィルターでろ過後、マイクロカプセル注射用分散媒とした。
【0054】
実施例21
ナトリウムを9.6μg/mL含む遺伝子組換え型hGH水溶液(hGH濃度=2mg/mL)に、酢酸アンモニウムの20倍モル等量を添加し、ドライアイス−エタノール浴中で冷却したナス型フラスコの内壁面にペリスタリックポンプを用いて30分間に100mL滴下し急速凍結後、真空乾燥することによりhGH粉体を得た。乳酸−グリコール酸共重合体(乳酸/グリコール=65/35,粘度=0.160dL/g)1.690gと酸化亜鉛10mgとをジクロロメタン2.7mLに溶解した。この有機溶媒液に上記のhGH粉体を300mg添加し、ポリトロン(キネマチカ社)を用いて微粒化した。このS/O分散液を0.1%ポリビニルアルコール水溶液800mLに添加し、ホモミキサーを用いて撹拌・乳化した。室温で3時間撹拌してジクロロメタンを揮散させた後、遠心分離(約2,000rpm)することによりマイクロカプセルを分取した。次いで蒸留水400mLを用いて2回洗浄後、D−マンニトール0.2gを添加し凍結乾燥した。さらに残留溶媒除去のため、46℃で3日間真空乾燥してhGH含有マイクロカプセルを得た。
【0055】
実施例22
ナトリウムを7.3μg/mL含む遺伝子組換え型hGH水溶液(hGH濃度=2mg/mL)を使用し、以下、実施例21と同様にhGH含有マイクロカプセルを得た。
【0056】
比較例1
ナトリウムを16.3μg/mL含む遺伝子組換え型hGH水溶液(hGH濃度=2mg/mL)を使用し、以下、実施例21と同様にhGH含有マイクロカプセルを得た。
【0057】
試験例1
参考例1で得たhGH含有マイクロカプセルに実施例1で製造した分散媒を加えて得た分散液を用いて以下の試験を実施した。
(1)ラットでのin vivo放出性
SDラット(雄性、6週齢)はタクロリムスにより免疫抑制処理を施した。プログラフ注射液5mg(藤沢薬品工業)を生理食塩水で希釈し、マイクロカプセル投与3日前に0.4mg/0.2mL/ラット、マイクロカプセル投与直後、投与4、7および11日後に0.2mg/0.2mL/ラット、投与14、18、21、25、28および32日後に0.3mg/0.2mL/ラットの投与量で皮下投与することで、hGHに対する抗体産生を抑制でき、投与後5週間にわたるラット血清中hGH濃度をすることが可能となった。
参考例1で得たマイクロカプセルは16mg hGH/mLとなるように、実施例1で製造した分散媒に分散した。得られた分散液0.75mLをエーテル麻酔下、ラット背部に皮下投与した。投与量はhGHとして12mgとした。マイクロカプセル投与後、尾静脈から経時的に採血し、血清を分取した。血清中hGH濃度の測定はイムノラジオメトリックアッセイ(AbビーズHGH、栄研化学)により測定した。
(2)初期放出率
免疫抑制SDラットにhGH溶液を5、10および20mg/kgの投与量で皮下投与し、経時的に採血を行い、血清中hGH濃度を測定した。AUCは台形法で算出した。マイクロカプセル投与24時間後までのAUCからhGH溶液皮下投与の場合のそれに相当するhGH投与量を算出し、マイクロカプセルの投与量12mgで除することにより初期放出率を算出した。
実施例1の分散媒を加えて得た分散液投与群における初期放出率は6%であった。この結果から明らかなように、塩酸L−アルギニン含有分散媒を用いたマイクロカプセル投与群では、初期放出が小さく、その後1ヵ月に亘る高い血中hGH濃度が達成された。
【0058】
試験例2
参考例1で得たhGH含有マイクロカプセルに実施例2、実施例3、実施例4あるいは実施例5で製造した各分散媒を加えて得た各分散液を用いて以下の試験を実施した。
(1)ラットでのin vivo放出性
試験例1(1)と同様の操作により、免疫抑制SDラットにおける血清中hGH濃度推移を評価した。
(2)初期放出率
試験例1(2)と同様の操作により、免疫抑制SDラットにおける初期放出率を評価した。
実施例2、実施例3、実施例4あるいは実施例5の各分散媒を加えて得た各分散液投与群における初期放出率は、それぞれ5%、6%、3%および7%であった。この結果から明らかなように、塩酸L−アルギニン、塩化ベンザルコニウム、硫酸プロタミンあるいは塩化亜鉛を含有する分散媒を用いたマイクロカプセル投与群では、初期放出が小さく、その後1ヵ月に亘る高い血中hGH濃度が達成された。これら塩基性物質あるいは水溶性多価金属塩を含有する分散媒による初期放出の抑制効果が明らかとなった。
【0059】
試験例3
実施例9で得たhGH含有マイクロカプセルに参考例2で製造した分散媒を加えて得た分散液を用いて以下の試験を実施した。
(1)ラットでのin vivo放出性
試験例1(1)と同様の操作により、免疫抑制SDラットにおける血清中hGH濃度推移を評価した。
(2)初期放出率
試験例1(2)と同様の操作により、免疫抑制SDラットにおける初期放出率を評価した。
実施例9で得たhGH含有マイクロカプセルに参考例2の分散媒を加えて得た分散液投与群における初期放出率は8%であった。この結果から明らかなように、塩基性物質である硫酸プロタミンをマトリックスの表面に保持する徐放性マイクロカプセル投与群では、初期放出が小さく、その後1ヵ月に亘る高い血中hGH濃度が達成された。
【0060】
試験例4
参考例1および実施例10で得たhGH含有マイクロカプセルに実施例8で製造した分散媒を加えて得た各分散液を用いて以下の試験を実施した。
(1)ラットでのin vivo放出性
試験例1(1)と同様の操作により、免疫抑制SDラットにおける血清中hGH濃度推移を評価した。
(2)初期放出率
試験例1(2)と同様の操作により、免疫抑制SDラットにおける初期放出率を評価した。
参考例1および実施例10で得たhGH含有マイクロカプセルに実施例8の分散媒を加えて得た各分散液投与群における初期放出率は、それぞれ7%および5%であった。この結果から明らかなように、ポリオール類であるポリエチレングリコール400を含有する分散媒で懸濁した徐放性マイクロカプセル製剤投与群では、初期放出が小さく、その後1ヵ月に亘る高い血中hGH濃度が達成された。
【0061】
試験例5
参考例1で得たhGH含有マイクロカプセルに実施例13、実施例14、あるいは実施例15で製造した各分散媒を加えて得た各分散液を用いて以下の試験を実施した。
(1)ラットでのin vivo放出性
試験例1(1)と同様の操作により、免疫抑制SDラットにおける血清中hGH濃度推移を評価した。
(2)初期放出率
試験例1(2)と同様の操作により、免疫抑制SDラットにおける初期放出率を評価した。
実施例13、実施例14あるいは実施例15の各分散媒を加えて得た各分散液投与群における初期放出率は、それぞれ11%、7%および6%であった。この結果から明らかなように、塩酸L−アルギニンを含有する分散媒を用いたマイクロカプセル投与群では、その添加量の増大に伴い初期放出が小さくなり、その後1ヵ月に亘る高い血中hGH濃度が達成された。分散媒中塩酸L−アルギニン量に依存した初期放出の抑制効果が明らかとなった。
【0062】
試験例6
参考例1で得たhGH含有マイクロカプセルに実施例16で製造した分散媒を加えて得た各分散液を用いて以下の試験を実施した。
(1)ラットでのin vivo放出性
試験例1(1)と同様の操作により、免疫抑制SDラットにおける血清中hGH濃度推移を評価した。
(2)初期放出率
試験例1(2)と同様の操作により、免疫抑制SDラットにおける初期放出率を評価した。
実施例16の分散媒を加えて得た各分散液投与群における初期放出率は、4%であった。この結果から明らかなように、塩酸L−アルギニンを含有する分散媒を用いたマイクロカプセル投与群では、分散媒を等張にするためマンニトールを減量しても、初期放出が小さく、その後1ヵ月に亘る高い血中hGH濃度が達成された。初期放出の抑制効果は塩酸L−アルギニン量に依存し、マンニトールは減量しても影響がないことが明らかとなった。
【0063】
試験例7
参考例1で得たhGH含有マイクロカプセルに実施例17、実施例18、実施例19あるいは実施例20で製造した各分散媒を加えて得た各分散液を用いて以下の試験を実施した。
(1)ラットでのin vivo放出性
試験例1(1)と同様の操作により、免疫抑制SDラットにおける血清中hGH濃度推移を評価した。
(2)初期放出率
試験例1(2)と同様の操作により、免疫抑制SDラットにおける初期放出率を評価した。
実施例17、実施例18、実施例19あるいは実施例20の各分散媒を加えて得た各分散液投与群における初期放出率は、それぞれ8%、11%、10%および7%であった。この結果から明らかなように、塩酸リシン、N−メチルグルカミン、酢酸亜鉛あるいはキトサンを含有する分散媒を用いたマイクロカプセル投与群では、初期放出が小さく、その後1ヵ月に亘る高い血中hGH濃度が達成された。これら塩基性物質、水溶性多価金属塩あるいは塩基性多糖類を含有する分散媒による初期放出の抑制効果が明らかとなった。
【0064】
試験例8
実施例21あるいは比較例1で得たhGH含有マイクロカプセルについて以下の試験を実施した。
(1)ジクロロメタン中のhGH重量平均粒子径
平均粒子径は、ホモジナイザー(ポリトロン(キネマチカ社))約20,000rpm、約30秒処理により、hGHをジクロロメタン中で分散した後に、レーザー解析式粒度分布測定装置(SALD2000A:島津)の測定可能な範囲となるように適宜、ジクロロメタンで希釈し、測定した。
(2)マイクロカプセル中hGH封入率
マイクロカプセル10mgに1.75mLのアセトニトリルを添加後、超音波処理に付した。得られたアセトニトリル溶液に3.25mLの10mMリン酸食塩緩衝液(pH8.0)を添加、再度超音波処理し、主薬であるhGHを抽出した。次いでこのhGH抽出液を下記条件のサイズ排除高速液体液体クロマトグラフィーに供してhGH含量を測定し、封入率を算定した。
カラム: TSKgelG 3000SWXL(Tosoh)
溶離液: 50mM NHHCO
流速: 0.6mL/min
検出波長: 214nm
(3)初期放出率
試験例1(2)と同様の操作により、免疫抑制SDラットにおける初期放出率を評価した。
実施例21あるいは比較例1のジクロロメタン中hGH重量平均粒子径は、それぞれ1.2μmおよび2.4μm、マイクロカプセル中hGH封入率は、それぞれ85%および73%、免疫抑制ラットにおける初期放出率は、18%および40%であった。この結果から明らかなように、ヒト成長ホルモン溶液中ナトリウム濃度を約10μg/mL以下とすることにより、重量平均粒子径が約0.5μm〜約2.0μmのヒト成長ホルモン微細粒子を得ることが可能となり、hGH封入率が高く、しかも初期放出の少ないマイクロカプセルが得られた。すなわち、生理活性物質溶液中塩濃度を低下させることにより、薬物が微細化され、高封入率で初期放出が抑制された徐放性製剤が得られることが明らかとなった。
【0065】
試験例9
実施例22で得たhGH含有マイクロカプセルについて以下の試験を実施した。
(1)ジクロロメタン中のhGH重量平均粒子径
試験例8(1)と同様の操作により、ジクロロメタン中のhGH重量平均粒子径を評価した。
(2)マイクロカプセル中hGH封入率
試験例8(2)と同様の操作により、マイクロカプセル中hGH封入率を評価した。
(3)初期放出率
試験例1(2)と同様の操作により、免疫抑制SDラットにおける初期放出率を評価した。
実施例22のジクロロメタン中hGH重量平均粒子径は、1.2μm、マイクロカプセル中hGH封入率は、83%、免疫抑制ラットにおける初期放出率は、14%であった。この結果から明らかなように、ヒト成長ホルモン溶液中ナトリウム濃度を約10μg/mL以下とすることにより、重量平均粒子径が約0.5μm〜約2.0μmのヒト成長ホルモン微細粒子を得ることが可能となり、hGH封入率が高く、しかも初期放出の少ないマイクロカプセルが得られた。すなわち、生理活性物質溶液中塩濃度を低下させることにより、薬物が微細化され、高封入率で初期放出が抑制された徐放性製剤が得られることが明らかとなった。
【0066】
【発明の効果】
本発明によれば、塩基性物質あるいは水溶性多価金属塩をマトリックス外部あるいはその分散媒に添加することにより、投与直後の生理活性物質の初期放出が飛躍的に抑制され、投与直後から長期間にわたって一定量の生理活性物質を放出し、かつ生理活性物質の変質および残留有機溶媒が極めて少ない、医薬品として臨床上、非常に優れた性質を有する徐放性製剤が得られる。

Claims (10)

  1. 生理活性物質を含有したマトリックス基剤が生体内分解性ポリマーであるマイクロカプセル
    アルギニン、リシン、塩化ベンザルコニウム、N−メチルグルカミン、プロタミンもしくはその塩、スペルミジン、スペルミン、キトサン、塩化亜鉛、および酢酸亜鉛から選択されるカチオン性物質と
    水溶性媒体である分散媒
    とを含有する注射用徐放性製剤であって、
    生理活性物質が生理活性ペプチドであり、
    生体内分解性ポリマーがα−ヒドロキシカルボン酸類の単独もしくは共重合体またはそれらの混合物であり、
    分散媒中に、製剤全体に対して0.01〜20%(W/W)であるカチオン性物質が存在する、生理活性物質の初期放出が抑制された注射用徐放性製剤。
  2. 生理活性物質を含有したマイクロカプセルとカチオン性物質とを混合してなる請求項に記載の注射用徐放性製剤。
  3. 生理活性ペプチドが分子量200〜500,000である請求項1または2記載の注射用徐放性製剤。
  4. 生理活性ペプチドが分子量5,000〜500,000である請求項記載の注射用徐放性製剤。
  5. 生理活性ペプチドがホルモン、サイトカイン、造血因子、増殖因子または酵素である請求項1〜4のいずれかに記載の注射用徐放性製剤。
  6. 生理活性ペプチドがヒト成長ホルモンである請求項1〜5のいずれかに記載の注射用徐放性製剤。
  7. 生体内分解性ポリマーが乳酸/グリコール酸の組成比が100/0〜40/60モル%の共重合体である請求項1〜6のいずれかに記載の注射用徐放性製剤。
  8. 生体内分解性ポリマーが乳酸単独重合体である請求項1〜6のいずれかに記載の注射用徐放性製剤。
  9. 生体内分解性ポリマーの重量平均分子量が3,000〜50,000である請求項1〜8のいずれかに記載の注射用徐放性製剤。
  10. 生理活性物質を含有したマトリックス基剤が生体内分解性ポリマーであるマイクロカプセルを含有する注射用徐放性製剤であって、
    生理活性物質が生理活性ペプチドであり、
    生体内分解性ポリマーがα−ヒドロキシカルボン酸類の単独もしくは共重合体またはそれらの混合物である、注射用徐放性製剤、アルギニン、リシン、塩化ベンザルコニウム、N−メチルグルカミン、プロタミンもしくはその塩、スペルミジン、スペルミン、キトサン、塩化亜鉛、および酢酸亜鉛から選択されるカチオン性物質を含む水溶性媒体である分散媒を、製剤全体に対して0.01〜20%(W/W)であるカチオン性物質が存在するように混合することを特徴とする生理活性物質の初期放出の抑制方法。
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