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JP5148466B2 - 複合材料の修理方法 - Google Patents

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本発明は、複合材料の修理方法に関するものであり、特に、コーナーR部近傍や、損傷部近傍に他部材が存在しているなどの複雑形状部であっても修理可能な複合材料の修理方法に関するものである。
従来から軽量な材料としてプラスチックが広く用いられている。しかし、プラスチックは軽量ではあるが、弾性率が低く構造用材料としては適していないため、構造用材料として使用する場合には、弾性率の高い繊維を方向性を持たせたままプラスチックの中に入れて強化し、軽量で強度の高い繊維強化プラスチック(Fiber Reinforced Plastics:FRP)として用いられる。前記弾性率の高い繊維としては、例えば炭素繊維やガラス繊維などが用いられ、特に炭素繊維を強化繊維として用いたFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics:CFRP)は、その他のFRPと比べて強度と弾性率が高く、耐蝕性に優れることから、航空機、宇宙機器、自動車、鉄道など種々の分野で広く使用されている。
かかるFRP部品には、製造時に内部に気泡が生じたり、FPR部品を使用して構造物を組み立てる際に傷が生じたりするなど、欠陥部や損傷部が形成される場合がある。欠陥部や損傷部が生じると、FRP部品の強度が低下するため、修理を行う必要がある。
従来における、FRP部品の損傷部の修理方法について、図7を用いて説明する。
図7は従来のFRP部品の損傷部の修理方法の説明図である。
まず、FRP部品の母材102に形成された損傷部104を含み、該損傷部104の周辺を研削により削除する。このとき、損傷部だけを抉るようにして損傷部104及びその周辺を削除すると削除部分が母材102表面に対して垂直に近い形状になり、削除部に応力集中が起こるため、前記研削による削除する研削部の一定の傾斜106をもたせる。
次に前記研削部に、接着フィルムと、繊維補強材に未硬化の熱硬化性樹脂を含浸させたプリプレグで作成した修理パッチ108を配置する。
修理パッチ108を配置した後、修理パッチ108周辺の母材102の表面にサーモカップル110を設置するとともに、修理パッチ108全体を覆うようにヒータマット112を設置する。
その後、ヒータマット112全体を覆うようにバックフィルム116を設置し、バックフィルム116と母材102との間に形成され、修理パッチ108、サーモカップル110及びヒータマット112を含む空間を吸引装置114によって真空引きする。
さらに、サーモカップル110の温度をモニタリングして温度制御しながらヒータマット112から修理パッチ108に熱を加えて均温化をはかり、修理パッチ108を硬化させて母材102に接着させる。
このようにして、損傷部とその周辺を削除し、該削除した部分に修理パッチを配置し、修理パッチを硬化させて母材に接着させるFRPの修理方法は、例えば特許文献1に開示されている。
USP6,761,783号公報
しかしながら、図7で説明したような、損傷部とその周辺を削除し、該削除した部分に修理パッチを配置し、修理パッチを硬化させて母材に接着させるFRPの修理方法は、損傷部周辺の母材表面が一平面であれば問題なく損傷部の修理が可能であるが、損傷部周囲に他部材が存在したり、損傷部周囲の母材表面の形状が一平面ではなく複雑な形状である場合には適用が困難である。
例えば図8に示したように、母材102に形成された損傷部104の近傍に他部材120が存在している場合には、損傷部104の周囲Aを、他部材120に影響を与えず、ある一定の角度をもった形状で研削することは困難であり、損傷部104の修理が困難である。
また、例えば図9に示したように、母材102に形成された損傷部104の近傍にコーナーR狭隘部122のような複雑形状部がある場合にも、損傷部104の周囲Bを、ある一定の角度をもった形状で研削することは困難であり、損傷部104の修理が困難である。
従って、本発明はかかる従来技術の問題に鑑み、損傷部周辺に他部材が存在したり、損傷部周囲の母材表面の形状が一平面ではなく複雑な形状であっても、修理を行うことが可能な複合材料の修理方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため本発明においては、繊維をプラスチックの中に入れて強化することで形成される複合材料の損傷部に、繊維補強材に未硬化の熱硬化性樹脂を含浸させたプリプレグを配置し、加熱することで前記プリプレグを硬化させて前記損傷部を修理する複合材料の修理方法において、前記複合材料の損傷部に、対向する2側面にテーパ部を形成するように前記プリプレグを積層して配置し、前記テーパ部上に、ダミー部材を配置して、該ダミー部材と前記積層したプリプレグの表面とで平面を形成し、前記ダミー部材及び積層したプリプレグを覆うように、全面を加熱可能なヒータマットを配置し、前記ヒータマットの全面を被覆材で被覆して、該被覆材と前記複合材との間にできる空間を真空引きし、前記ヒータマットの全面を加熱させて、前記積層したプリプレグを硬化させてから、前記ダミー部材を取り除くことを特徴とする。
これにより、損傷部を研削せず、損傷部の上からプリプレグを積層して配置するため、損傷部周辺に他部材が存在したり、損傷部周囲の母材表面の形状が一平面ではなく複雑な形状であっても、修理が可能となる。
さらに、前記プリプレグを対向する2側面にテーパ部が生じるように積層して配置することにより、積層したプリプレグ(以下積層したプリプレグを修理パッチと称する)の端部に応力集中が生じることを防止することができる。
さらに、前記修理パッチの端部のテーパ部上にダミー部材を配置し、ダミー部材と修理パッチの表面、即ち前記ヒータマットと接する面を平面とすることで、ダミー部材及び修理パッチと、ヒータマットとの間に間隙がほとんど生じない。そのため、均圧に真空引きし、均温に加熱することができる。従って、圧力の不均一に起因する修理パッチの品質不良や、温度の不均一に起因する修理パッチの硬化不良等を防止することができる。
従って、損傷部周辺に他部材が存在したり、損傷部周囲の母材表面が複雑な形状であっても、良好な品質で修理が可能となり、従って複合材料修理の適用範囲が拡大する。
また、前記積層したプリプレグ(修理パッチ)と同じ厚みを有し、前記ヒータマットの加熱温度に対して耐熱性を有する補助部材を前記積層したプリプレグと並設し、前記ダミー部材と積層したプリプレグと補助部材とで形成され、前記ヒータマットと対向する面の面積を、前記ヒータマットの、前記積層したプリプレグと対向する面の面積よりも大としたことを特徴とする。
ヒータマットは、通常内部にニクロム線などの電熱線を埋設しており、その大きさや形状を変更するには新たに購入しなければならない。そのため、前記補助部材を使用せず、ヒータマットの修理パッチと対向する面の面積が、修理パッチのヒートマットと対向する面の面積よりも大きい場合には、修理パッチ又はダミー部材と接触できない部分でヒータマットが変形してしまう可能性があるが、前記補助部材を使用することにより、ヒータマット全面が修理パッチ、ダミー部材又は補助部材と接触することができるため、ヒータマットの変形を防止することができる。これにより、良好な品質で修理が可能であるとともに、ヒータマットの汎用性が高くなる。
なお、前記補助部材は、ヒータマットの加熱温度に対して耐熱性を有する必要があり、例えばシリコンラバーシート製やフッ素樹脂製のものを使用することができる。
また、前記プリプレグは、側端部が前記複合材料の表面と接して積層されていることを特徴とする。
これにより、前記テーパ部にプリプレグによる段差のない修理パッチを作成することができる。
また、前記テーパ部上に、前記ヒータマットの加熱温度に対して耐熱性を有する部材を配置してから、該部材上に前記ダミー部材を配置することを特徴とする。
これにより、ダミー部材を容易に取り除くことができる。前記部材としては、例えばフッ化エチレンプロピレン樹脂(Fluorinated−Ethylene−Propylene:FEP)製のフィルムシートを用いることができる。また、フィルムシートでなく、テーパ部上に耐熱性の油であるシリコーン油を塗布することもできる。
以上記載のごとく本発明によれば、損傷部周辺に他部材が存在したり、損傷部周囲の母材表面の形状が一平面ではなく複雑な形状であっても、修理を行うことが可能な複合材料の修理方法を提供することができる。
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但しこの実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
実施例1は、FRP部品の母材に形成された損傷部の近傍にコーナーR部が存在する場合における、前記損傷部の修理方法の例である。
図2は実施例1における損傷部周辺の斜視図である。図2において、2はFRP部品の母材であり、該母材2にはコーナーR部22が設けられており、コーナーR部22近傍の母材表面に損傷部4が形成されている。
図1は、実施例1における複合材料の修理の手順を示すフローチャートである。図1を用いて図2におけるFRP部品の母材2に形成された損傷部4の修理の手順を説明する。
修理が開始されるとステップS1で、損傷部上に修理パッチを形成する。
修理パッチの形成について、図2及び図3を用いて説明する。図3は図2におけるC方向矢視図である。
修理パッチ8は、図2に示したように、損傷部4を覆うように形成される。
また、修理パッチ8は、図3に示したように、複数枚のプリプレグ18を積層して形成されている。それぞれのプリプレグ18の端部は母材2の表面と接触しており、さらに修理パッチ8の2側面に傾斜部6が設けられている。
プリプレグ18を対向する2側面に傾斜部6が生じるように積層して修理パッチ8を形成することにより、修理パッチ8の端部に応力集中が生じることを防止することができる。
ステップS1で修理パッチ8の形成が終了すると、ステップS2でダミー複合材を配置する。
ダミー複合材24は、例えば修理パッチ8を形成するときと同じプリプレグを積層して形成した複合材を使用することができる。
ダミー複合材24の配置について、図4を用いて説明する。図4は図2におけるD部拡大図である。なお図4においては、母材2の図示は省略している。
図4に示したように、ダミー複合材24は、修理パッチ8における傾斜部6に配置される。
なお、後述するように、ダミー複合材24は後に取り除くので、該取り除きを容易にするため、傾斜部6とダミー複合材24との間には、後述するヒータマットによる加熱温度に対して耐熱性を有する薄い部材(フィルム、塗膜など)を配置しておく。前記ヒータマットによる加熱温度に対して耐熱性を有する部材として、例えばFEP製のフィルムやシリコーン油塗膜などが挙げられる。
ダミー複合材24は、傾斜部6に配置することにより、ダミー複合材の表面26と修理パッチの表面28とで平面を形成するような形状とする。
ステップS2でダミー複合材24の配置が終了すると、ステップS3でヒータマットを配置する。
ヒータマット12の配置について、図4を用いて説明する。
図4に示したように、ヒートマット12はL字型のものを使用し、L字型のヒートマット12をダミー複合材の表面26と修理パッチの表面28の表面全体を覆うように設置する。ステップS2で説明したように、ダミー複合材の表面26と修理パッチの表面28とで平面を形成しているため、ヒートマット12とダミー複合材の表面26及び修理パッチの表面28との間には間隙はほとんど生じない。
さらに、修理パッチ8の近傍の母材2の表面にはサーモカップル10を配置する。
ステップS3でヒータマットの配置が終了すると、ステップS4で真空引きを行う。
真空引きについて、図5を用いて説明する。
図5は図4におけるE方向矢視図である。但し、図4においては母材2の図示は省略したが、図5においては母材2も図示し、後述するバックフィルム16は断面を示した。
まず、ヒータマット12全体を覆うようにバックフィルム16を設置する。次いで、バックフィルム16と母材2との間に形成され、修理パッチ8、ダミー複合材24、サーモカップル10及びヒータマット12を含む空間を吸引装置14によって真空引きする。
前述の通り、ヒートマット12とダミー複合材の表面26及び修理パッチの表面28との間には間隙はほとんど生じていないため、前記真空引き時に均圧に減圧することができ、圧力の不均一に起因する修理パッチの欠損等を防止することができる。
ステップS4で真空引きが終了すると、ステップS5で加熱を行う。
該加熱は、ステップS4で行った真空引き状態を維持したまま行い、サーモカップル10の温度をモニタリングして温度制御しながらヒータマット12から修理パッチ8に熱を加えて均温化をはかり、修理パッチ108を硬化させて母材2に接着させる。
前述の通り、ヒートマット12とダミー複合材の表面26及び修理パッチの表面28との間には間隙はほとんど生じていないため、温度の不均一に起因する修理パッチの硬化不良等を防止することができる。
ステップS5で加熱が終了すると、ステップS6で吸引装置14による真空引きを停止し、バックフィルム16、ヒータマット12を順に取り除き、その後ダミー複合材24を取り除く。ダミー複合材24と修理パッチ8の傾斜部6との間には、FEP製のフィルムなどを配置しているため、ダミー複合材24は簡単に取り除くことができる。
以上のステップS1からステップS6の手順で作業を行うことにより、損傷部周囲の母材表面が複雑な形状であっても、良好な品質で修理が可能である。従って複合材料の適用範囲が拡大する。
なお、本実施例1においては、コーナーR部形状近傍に損傷部がある場合の例について説明したが、その他の複雑な形状の近傍に損傷部がある場合においても適用可能である。
図6は実施例2における、修理パッチ端部周辺の斜視図である。
図6において、実施例1における説明で用いた図1〜図5と同一符号は同一物を表し、その説明を省略する。
図6においては、ダミー複合材の表面26と修理パッチの表面28とで形成される平面の面積よりも、該平面と対向する面の面積が大であるヒータマット12bを使用する。
修理パッチ8に並設するようにして、補助部材32を配置している。補助部材32は、シリコンラバーシートを用いているが、ヒータマット12bによる加熱温度に対して耐熱性を有する部材で形成されていれば他の部材で代用することもできる。
また、補助部材32は、その厚みが修理パッチ8と同じであり、従ってダミー複合材の表面26と修理パッチの表面28と補助部材の表面30とで平面が形成される。このとき、ダミー複合材の表面26と修理パッチの表面28と補助部材の表面32とで形成される平面の面積が、該平面と対向するヒータマット12bの面の面積以上となるように、補助部材30の大きさを選定する。
ヒータマット12bは、通常内部にニクロム線などの電熱線を埋設しており、その大きさや形状を変更するには新たに購入しなければならない。そのため、補助部材32を使用せず、ヒータマット12bを使用した場合には、ヒータマット12bのダミー複合材の表面26及び修理パッチの表面28の何れとも接触できない部分が生じ、該部分で変形してしまう可能性があるが、補助部材32を使用することにより、ヒータマット12bの修理パッチ8と対向する面の全面がダミー複合材の表面26、修理パッチの表面28又は補助部材の表面32の何れかと接触することができるため、ヒータマット12bの変形を防止することができる。これにより、良好な品質で修理が可能であるとともに、大きめのヒータマットを用意しておけばよく、ヒータマット12bの汎用性が高くなる。
損傷部周辺に他部材が存在したり、損傷部周囲の母材表面の形状が一平面ではなく複雑な形状であっても、修理を行うことが可能な複合材料の修理方法として利用できる。
実施例1における複合材料の修理の手順を示すフローチャートである。 実施例1における損傷部周辺の斜視図である。 図2におけるC方向矢視図である。 図2におけるD部拡大図である。 図4におけるE方向矢視図である。 実施例2における、修理パッチ端部周辺の斜視図である。 従来のFRP部品の損傷部の修理方法の説明図である。 従来のFRP部品の損傷部の修理方法が困難となる例の説明図である。 従来のFRP部品の損傷部の修理方法が困難となる別の例の説明図である。
符号の説明
2 母材(複合材料)
4 損傷部
6 傾斜部(テーパ部)
8 修理パッチ(積層したプリプレグ)
12、12b ヒータマット
16 バックフィルム(被覆材)
18 プリプレグ
22 コーナーR部
24 ダミー複合材(ダミー部材)
32 補助部材

Claims (4)

  1. 繊維をプラスチックの中に入れて強化することで形成される複合材料の損傷部に、繊維補強材に未硬化の熱硬化性樹脂を含浸させたプリプレグを配置し、加熱することで前記熱硬化性樹脂を硬化させて前記損傷部を修理する複合材料の修理方法において、
    前記複合材料の損傷部に、対向する2側面にテーパ部を形成するように前記プリプレグを積層して配置し、
    前記テーパ部上に、ダミー部材を配置して、該ダミー部材と前記積層したプリプレグの表面とで平面を形成し、
    前記ダミー部材及び積層したプリプレグを覆うように、全面を加熱可能なヒータマットを配置し、
    前記ヒータマットの全面を被覆材で被覆して、該被覆材と前記複合材との間にできる空間を真空引きし、
    前記ヒータマットの全面を加熱させて、前記積層したプリプレグを硬化させてから、前記ダミー部材を取り除くことを特徴とする複合材料の修理方法。
  2. 前記積層したプリプレグと同じ厚みを有し、前記ヒータマットの加熱温度に対して耐熱性を有する補助部材を前記積層したプリプレグと並設し、
    前記ダミー部材と積層したプリプレグと補助部材とで形成され、前記ヒータマットと対向する面の面積を、
    前記ヒータマットの、前記積層したプリプレグと対向する面の面積よりも大としたことを特徴とする請求項1記載の複合材料の修理方法。
  3. 前記プリプレグは、側端部が前記複合材料の表面と接して積層されていることを特徴とする請求項1又は2記載の複合材料の修理方法。
  4. 前記テーパ部上に、前記ヒータマットの加熱温度に対して耐熱性を有する部材を配置してから、該部材上に前記ダミー部材を配置することを特徴とする請求項1〜3何れかに記載の複合材料の修理方法。
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