以下、図面を参照して、本発明に係る車線逸脱抑制装置の実施の形態を説明する。
本実施の形態では、本発明に係る車線逸脱抑制装置を、車両に搭載される車線逸脱警報装置に適用する。本実施の形態に係る車線逸脱警報装置は、一対の白線(区画線)からなる車線を検出し、車線から自車両が逸脱する可能性がある場合には警報を出力する。なお、本実施の形態は、対象の道路としては片側一車線の道路(対向車線と合わせて2車線の道路)やセンタラインが引かれない1.5車線道路に好適な形態である。
図1〜図9を参照して、本実施の形態に係る車線逸脱警報装置1について説明する。図1は、本実施の形態に係る車線逸脱警報装置の構成図である。図2は、白線が引かれている道路の例であり、(a)が左右両側のラインを検出可能な道路であり、(b)がセンタライン(右片側白線)のみ検出可能な道路であり、(c)が道路の右端ライン(右片側白線)のみ検出可能な道路であり、(d)が道路の左端ライン(左片側白線)のみ検出可能な道路である。図3は、右片側白線の判定方法の説明図である。図4は、右片側白線(センタライン)のみ検出された場合のドライバ覚醒度が高いときの左側の仮想線の設定方法の説明図である。図5は、右片側白線(センタライン)のみ検出された場合のドライバ覚醒度が低いときの左側の仮想線の設定方法の説明図である。図6は、右片側白線(道路右端ライン)のみ検出された場合の対向車が存在しないときの左側の仮想線の設定方法の説明図である。図7は、右片側白線(道路右端ライン)のみ検出された場合の対向車が存在しかつドライバ覚醒度が高いときの左側及び右側の仮想線の設定方法の説明図である。図8は、左片側白線のみ検出された場合の対向車が存在しかつドライバ覚醒度が高いときの右側の仮想線の設定方法の説明図である。図9は、左片側白線のみ検出された場合の対向車が存在しかつドライバ覚醒度が高いときの右側及び左側の仮想線の設定方法の説明図である。
車線逸脱警報装置1は、基本的には、検出できた左右両側の白線に基づいて車線逸脱判定を行う。しかし、左右の白線のうちの一方側しか検出できない場合、車線逸脱警報装置1は、他方側の白線に対応する仮想線を推定し、一方側の白線と他方側の仮想線に基づいて車線の逸脱判定を行う。
車線逸脱警報装置1は、白線認識カメラ10、ミリ波センサ11、ナビゲーション装置12、ドライバモニタ13、ヨー角センサ14、車速センサ15、警報装置20、ECU[Electronic Control Unit]30を備え、ECU30に車線状況判定部31と車線逸脱判定部32が構成される。
本実施の形態では、白線認識カメラ10が特許請求の範囲に記載する区画線検出手段に相当し、ミリ波センサ11が特許請求の範囲に記載する対向車検出手段及び障害物検出手段に相当し、ドライバモニタ13が特許請求の範囲に記載する覚醒度検出手段に相当し、ECU30の車線状況判定部31が特許請求の範囲に記載する仮想線推定手段に相当する。
白線認識カメラ10は、自車両前方の白線を認識するセンサであり、カメラと演算装置などから構成される。カメラは、光軸方向が車両の進行方向と一致するように、自車両の前方に取り付けられる。カメラは、左右方向に撮像範囲が広く、走行している道路を十分に撮像可能である。カメラでは、自車両の前方の道路を撮像し、その撮像した画像を演算装置に出力する。演算装置では、カメラから画像を入力する毎に、画像から自車両前方の白線を認識する。この認識方法は、従来の方法を適用する。そして、演算装置では、認識できた白線が自車両の左右両側かあるいは左右の一方側だけかを判定する。左右両側を認識できた場合、演算装置では、認識した一対の白線から車線幅、一対の白線の中心を通る線(すなわち、車線の中心)、車線の中心線又は各白線のカーブ半径やカーブ曲率、自車両中心から各白線までの距離(オフセット)を算出する。片側しか認識できなかった場合、演算装置では、認識した片側の白線のカーブ半径やカーブ曲率、自車両中心から片側の白線までの距離(オフセット)を算出する。そして、白線認識カメラ10では、これら認識できた白線や算出した各種情報を白線認識信号としてECU30に送信する。なお、本実施の形態では、カーブ半径、カーブ曲率、オフセットは、右旋回方向や自車両中心に対して右側の値がプラス値で表され、左旋回方向や自車両中心に対して左側の値がマイナス値で表されるものとする。したがって、オフセットのプラス値/マイナス値によって、認識された白線が自車両の右側かあるいは左側かを判別できる。
ミリ波センサ11は、ミリ波を利用して自車両前方の障害物を検出するセンサであり、ミリ波の送受信装置と演算装置などから構成される。送受信装置は、自車両の前側の中央の所定の高さ位置に取り付けられる。送受信装置では、ミリ波を左右方向に走査しながら自車両から前方に向けて送信し、反射してきたミリ波を受信する。そして、送受信装置では、その反射ミリ波を受信できた各反射点(検出点)についてのミリ波情報(左右方向の走査方位角、送信時刻、受信時刻、反射強度など)を演算装置に送信する。演算装置では、現時刻(t)でのミリ波情報を利用し、ミリ波の送信から受信までの時間に基づいて前方の障害物までの相対距離を算出する。さらに、演算装置では、その現時刻(t)で算出された距離と過去の時刻(例えば、前時刻(t−1))で算出された距離の変化に基づいて前方の障害物との相対速度を算出する。また、演算装置では、現時刻(t)でのミリ波情報を利用し、反射してきたミリ波の中で最も強く反射してきたミリ波の方向を検出し、その方向から自車両の進行方向と障害物の方向とのなす角度を求め、その角度から自車両からの距離(横位置)を算出する。そして、ミリ波センサ11では、これら検出できた障害物や算出した各種情報をミリ波検出信号としてECU30に送信する。検出される障害物としては、例えば、対向車両、前方車両、電柱、郵便ポスト、ガードレール、壁、歩行者、自転車などがある。
ナビゲーション装置12は、自車両の現在位置や進行方向を算出し、現在位置や進行方向を地図上に表示するとともに、ドライバが設定した目的地までの経路を探索し、探索した経路に従って案内を行う装置である。そのために、ナビゲーション装置12は、地図データベースを備えており、地図データベースには表示用、経路案内用などの地図情報が格納されている。地図情報には、道路の情報が含まれている。道路の情報としては、少なくとも道路の形状、車線幅(道路幅)、車線数、道路種別などの情報がある。ナビゲーション装置12では、現在位置情報とともに現在位置周辺の道路情報を含むナビ情報信号をECU30に送信する。
ドライバモニタ13は、ドライバの状態(特に、覚醒度)を検出する装置であり、カメラと演算装置などから構成される。カメラは、自車の車室内に運転者の顔周辺が撮像可能な位置及び角度で取り付けられる。演算装置では、カメラから画像を入力する毎に、その画像から顔領域や顔部品領域(目、口、眉など)を抽出し、その抽出した各領域画像に基づいて覚醒度を推定する。この推定方法としては、従来の方法を適用し、例えば、覚醒度の高いときや低いときの各顔部品画像と抽出した各顔部品領域画像とを比較し、顔の表情の変化を検出する方法がある。そして、ドライバモニタ13では、ドライバの覚醒度をドライバモニタ信号としてECU30に送信する。
ヨー角センサ14は、自車両のヨー角を検出するセンサである。ヨー角センサ14では、ヨー角を検出し、その検出したヨー角をヨー角信号としてECU30に送信する。
車速センサ15は、自車両の車速を検出するセンサである。車速センサ15では、車速を検出し、その検出した車速を車速信号としてECU30に送信する。
警報装置20は、ドライバに対する警報としてブザー音を出力する装置である。警報装置20では、ECU30からの警報出力信号を受信すると、警報出力信号に応じてブザー音を出力する。
ECU30は、CPU[Central ProcessingUnit]、ROM[Read Only Memory]、RAM[Random Access Memory]などからなる電子制御ユニットであり、車線逸脱警報装置1を統括制御する。ECU30では、ROMに格納されているアプリケーションプログラムをRAMにロードし、CPUで実行することによって車線状況判定部31及び車線逸脱判定部32を構成する。ECU30では、各種検出手段10〜15からの各信号を受信し、この各信号に基づいて車線状況判定部31及び車線逸脱判定部32などでの処理を行う。そして、ECU30では、自車両が車線を逸脱する可能性がある場合には警報装置20に警報出力信号を送信する。
車線状況判定部31について説明する。まず、車線状況判定部31では、白線認識カメラ10で認識できている白線が自車両に対してどの位置にある白線かを判定するために認識白線判定処理を行う。認識できている白線のパターンとしては、図2(a)に示すように自車両MVの左側の白線LLと右側の白線(センタライン)RL1を認識できるパターン、図2(b)に示すように自車両MVの右側の白線(センタライン)RL1のみを認識できるパターン、図2(c)に示すように自車両MVの右側の白線(道路右端ライン)RL2のみを認識できるパターン、図2(d)に示すように自車両MVの左側の白線LLのみを認識できるパターンがある。
図2(a)のように左側の白線LLと右側の白線RL1を認識できる道路の場合、道路の幅は車両二台分よりも十分に広いと考えられる。図2(b)のように自車両MVの右側の白線(センタライン)RL1のみを認識できる道路の場合、道路の幅は車両二台分よりも十分に広いと考えられるが、自車両の左側に白線が無いため、左側に存在する障害物(例えば、電柱、歩行者)に注意する必要がある。図2(c)のように自車両MVの右側の白線(道路右端ライン)RL2のみを認識できる道路の場合や図2(d)のように自車両MVの左側の白線LLのみを認識できる道路の場合(センタラインがない道路の場合)、対向車OVが来たときに車両二台分に対して道路の幅が十分に広いとは考えられないので、対向車OVとすれ違うときには対向車OVと左側の障害物に注意する必要がある。
認識白線判定処理について説明する。車線状況判定部31では、白線認識カメラ10からの認識できた白線の情報に基づいて、左右両側の白線を認識できたのかあるいは片側の白線しか認識できなかったのか否かを判定する。左右両側の白線を認識できた場合、その両側の白線を用いて車線逸脱判定部32での車線逸脱判定処理に移行する。
片側の白線しか認識できなかった場合、車線状況判定部31では、自車両中心からその片側の白線までのオフセットのプラス値/マイナス値に基づいて、認識できている片側の白線が自車両の右側の白線かあるいは左側の白線かを判定する。左片側の白線の場合、車線状況判定部31では、左片側白線対応処理に移行する。
右片側の白線の場合、車線状況判定部31では、ミリ波センサ11からの障害物の情報に基づいて、自車両の右側の障害物の情報を抽出する。そして、車線状況判定部31では、図3に示すように、自車両MVから右側の白線RLまでのオフセットAと自車両MVから右側の障害物ROまでの距離B(横位置)との差(B−A)を算出する。この差(B−A)が車両が通行できる程度に広い場合、右側の障害物ROと白線RLとの間に対向車線が存在すると推測できるので、白線RLをセンタラインとする。一方、この差(B−A)が車両が通行できないほど狭い場合、右側の障害物ROと白線RLとの間に対向車線が存在しないと推測できるので、白線RLを道路の右端ラインとする。
そこで、車線状況判定部31では、差(B−A)が閾値以上か否かを判定する。閾値は、一般的な車両の車幅や車線幅に基づいて予め設定される。差(B−A)が閾値以上の場合、車線状況判定部31では、右片側白線センタライン対応処理に移行する。一方、差(B−A)が閾値未満の場合、車線状況判定部31では、右片側白線道路右端対応処理に移行する。
右片側白線センタライン対応処理について説明する。車線状況判定部31では、ドライバモニタ13からのドライバの覚醒度に基づいて、覚醒度が高いか否かを判定する。ドライバの覚醒度が高い場合、ドライバは左側の障害物や対向車に十分注意を払いながら運転を行う。しかし、ドライバの覚醒度が低い場合、ドライバは左側の障害物や対向車を見逃したりあるいは気付くのが遅くなるので、通常より早いタイミングで車線逸脱の警報を行う(通常よりも厳しい条件で車線逸脱判定を行う)必要がある。
覚醒度が高い場合、車線状況判定部31では、ミリ波センサ11からの障害物の情報に基づいて、自車両の左側に障害物が存在するか否かを判定する。左側に障害物が存在する場合、車線状況判定部31では、図4に示すように、自車両MVから左側の障害物LO(例えば、電柱)までの距離(横位置)に基づいて、左側の障害物LOの位置から所定距離C分中心側の位置に、右側の白線RL1に平行な仮想線ILL(自車両MVの左側の白線に対応する線)を設定する。所定距離Cは、実験などによって予め設定され、例えば、数10cm程度である。そして、この認識された右側の白線RL1と推定された左側の仮想線ILLを用いて、車線逸脱判定部32での車線逸脱判定処理に移行する。一方、左側に障害物が存在しない場合、覚醒度の高いドライバが左側の障害物に十分に注意を払いながら運転することを想定し、車線状況判定部31では、左側の仮想線を設定しない。そして、認識された右側の白線RL1だけを用いて、車線逸脱判定部32での車線逸脱判定処理に移行する。
覚醒度が低い場合、車線状況判定部31では、ドライバの覚醒度が高い場合(特に、左側に障害物が存在するとき)に収集されている自車両からセンタラインまでのオフセットの履歴に基づいて、そのオフセットの平均値Dを算出する。さらに、車線状況判定部31では、認識されている右側の白線(センタライン)RL1から平均値Dの2倍の距離(2×D)分左側の位置に、右側の白線RL1に平行な仮想線ILLを設定する。ここでは、車線逸脱の判定条件をより厳しくするために、平均値Dよりも少し小さな値を用いてよい。そして、この認識された右側の白線RL1と推定された左側の仮想線ILLを用いて、車線逸脱判定部32での車線逸脱判定処理に移行する。なお、車線状況判定部31では、ドライバの覚醒度が高い場合(特に、左側に障害物が存在するとき)、自車両からセンタラインまでのオフセットのデータを記憶している。
ちなみに、覚醒度の高い運転者は、通常、左側に障害物LOが存在する場合、その障害物LOを回避するために、センタライン寄りを走行するように運転を行う。したがって、上記のようなオフセットの履歴を用いて左側の仮想線ILLを設定することにより、左側の障害物LOから十分離れたセンタライン寄りに左側の仮想線ILLを設定できる。
右片側白線道路右端対応処理について説明する。センタラインを検出できない場合、自車両右側で最も注意を払う必要があるのは対向車である。そこで、車線状況判定部31では、ミリ波センサ11からの障害物の情報に基づいて、対向車が存在するか否かを判定する。
対向車が存在しない場合、車線状況判定部31では、ミリ波センサ11からの障害物の情報に基づいて、自車両の左側に障害物が存在するか否かを判定する。左側に障害物が存在する場合、車線状況判定部31では、図6に示すように、自車両MVから左側の障害物LOまでの距離(横位置)に基づいて、左側の障害物LOの位置から所定距離C分中心側の位置に、右側の白線RL2に平行な仮想線ILL1を設定する。そして、この認識された右側の白線RL2と推定された左側の仮想線ILL1を用いて、車線逸脱判定部32での車線逸脱判定処理に移行する。一方、左側に障害物が存在しない場合、車線状況判定部31では、ナビゲーション装置12からの道路情報に基づいて、右側の白線RL2から車線幅(あるいは、道路幅)E分離れた位置に、右側の白線RL2に平行な仮想線ILL2を設定する。そして、この認識された右側の白線RL2と推定された左側の仮想線ILL2を用いて、車線逸脱判定部32での車線逸脱判定処理に移行する。この場合、対向車が存在しないので、センタラインに相当する仮想線を設定する必要はなく、少なくとも道路の両端での車線から逸脱しないように走行すればよい。
対向車が存在する場合、まず、ドライバの状態を確認するために、車線状況判定部31では、ドライバモニタ13からのドライバの覚醒度に基づいて、覚醒度が高いか否かを判定する。
ドライバの覚醒度が高い場合、車線状況判定部31では、上記と同様の処理により、左側の障害物LO又は車線幅に基づいて、左側の仮想線ILLを設定する。さらに、車線状況判定部31では、図7に示すように、左側の仮想線ILLの横位置と自車両MVから対向車OVまでの距離(横位置)に基づいて、その左側の仮想線ILLの横位置と対向車OVの横位置との差Lを算出する。そして、車線状況判定部31では、その差Lが自車両MVの車幅Wより広いか否かを判定する。差Lが車幅Wより広い場合、センタラインに相当する仮想線を設定できる状況であるので(道路幅が広い)、車線状況判定部31では、対向車OVの横位置から所定距離F分左側の位置に、右側の白線RL2に平行な仮想線IRLを設定する。所定距離Fは、実験などによって予め設定され、例えば、数10cm程度である。そして、この推定された左側の仮想線ILLと右側の仮想線(センタライン)IRLを用いて、車線逸脱判定部32での車線逸脱判定処理に移行する。一方、差Lが車幅Wより狭い場合、対向車が存在するが、センタラインに相当する仮想線を設定できない状況であり(道路幅が狭い)、右側の車線に対する車線逸脱判定ができないので、ドライバに即時にその状況を知らせる必要がある。そこで、車線状況判定部31では、警報装置20でブザー音を出力するための警報出力信号を設定し、その警報出力信号を警報装置20に送信する。
ドライバの覚醒度が低い場合、対向車が存在し、しかもドライバの覚醒度も低いので、ドライバに即時にその状況を知らせ、車両を停車させる必要がある。そこで、車線状況判定部31では、警報装置20でブザー音を出力するための警報出力信号を設定し、その警報出力信号を警報装置20に送信する。
左片側白線対応処理について説明する。右片側白線道路右端対応処理の場合と同様に、センタラインを検出できていないので、車線状況判定部31では、ミリ波センサ11からの障害物の情報に基づいて、対向車が存在するか否かを判定する。
対向車が存在しない場合、センタラインに相当する仮想線を設定する必要はなく、少なくとも道路の両端での車線から逸脱しないように走行すればよいので、認識された左側の白線LLを用いて、車線逸脱判定部32での車線逸脱判定処理に移行する。なお、道路右端ラインの白線も認識されている場合、その右側の道路右端の白線も用いて、車線逸脱判定部32での車線逸脱判定処理に移行する。
対向車が存在する場合、まず、ドライバの状態を確認するために、車線状況判定部31では、ドライバモニタ13からのドライバの覚醒度に基づいて、覚醒度が高いか否かを判定する。
ドライバの覚醒度が高い場合、車線状況判定部31では、図8に示すように、左側の白線LLの横位置と自車両MVから対向車OVまでの距離(横位置)に基づいて、その左側の白線LLの横位置と対向車OVの横位置との差Lを算出する。そして、車線状況判定部31では、その差Lが自車両MVの車幅Wより広いか否かを判定する。差Lが車幅Wより広い場合、車線状況判定部31では、対向車OVの横位置から所定距離F分左側の位置に、左側の白線LLに平行な仮想線IRLを設定する。そして、この認識された左側の白線LLと推定された右側の仮想線(センタライン)IRLを用いて、車線逸脱判定部32での車線逸脱判定処理に移行する。一方、差Lが車幅Wより狭い場合、車線状況判定部31では、車線状況判定部31では、対向車OVの横位置から所定距離F分左側の位置に、左側の白線LLに平行な仮想線IRLを設定する。さらに、車線状況判定部31では、図9に示すように、ミリ波センサ11からの障害物の情報から自車両MVの左側の障害物LOの情報を抽出し、自車両MVから左側の障害物LOまでの距離(横位置)に基づいて、左側の障害物LOの位置から所定距離C分中心側の位置に、左側の白線LLに平行な仮想線ILLを設定する。そして、この推定された右側の仮想線(センタライン)IRLと左側の仮想線ILLを用いて、車線逸脱判定部32での車線逸脱判定処理に移行する。
ドライバの覚醒度が低い場合、対向車が存在し、しかもドライバの覚醒度も低いので、上記と同様に、車線状況判定部31では、警報出力信号を警報装置20に送信する。
車線逸脱判定部32について説明する。車線逸脱判定部32では、左右両側の白線が認識されている場合にはその2本の白線に対してそれぞれ車線逸脱判定処理を行い、一方側の白線が認識されかつ他方側の仮想線が設定されている場合にはその白線と仮想線に対してそれぞれ車線逸脱判定処理を行い、一方側の白線が認識されかつ他方側の仮想線が設定されていない場合にはその白線に対してのみ車線逸脱判定処理を行う。
車線逸脱判定処理について説明する。車線逸脱判定部32では、ヨー角センサ14からの自車両のヨー角及び車速センサ15からの自車両の車速に基づいて、所定時間後(例えば、数秒後)の自車両の位置あるいは自車両の進路を予測する。そして、車線逸脱判定部32では、認識された白線又は設定された仮想線の自車両からの距離やカーブ半径と所定時間後の自車両の位置あるいは自車両の進路に基づいて、自車両が白線又は仮想線を逸脱する可能性があるか否かを判定する。逸脱する可能性があると判定した場合、車線逸脱判定部32では、警報装置20でブザー音を出力するための警報出力信号を設定し、その警報出力信号を警報装置20に送信する。
図1〜図9を参照し、車線逸脱警報装置1における動作について説明する。特に、ECU30における認識白線判定処理は図10のフローチャートに沿って説明し、ECU30における右片側白線センタライン対応処理について図11のフローチャートに沿って説明し、ECU30における右片側白線道路右端対応処理については図12のフローチャートに沿って説明し、ECU30における左片側白線応処理について図13のフローチャートに沿って説明する。
白線認識カメラ10では、一定時間毎に、自車両の前方を撮像し、その撮像した画像に基づいて白線認識を行うとともに認識できた白線についての各種情報を算出し、白線認識信号をECU30に送信している。
ミリ波センサ11では、一定時間毎に、自車両の前方にミリ波を送信するとともに反射してきたミリ波を受信し、そのミリ波の送受信データに基づいて障害物についての各種情報を算出し、ミリ波検出信号をECU30に送信している。
ナビゲーション装置12では、一定時間毎に、自車両の現在位置などを検出し、現在位置周辺の道路情報を含むナビ情報信号をECU30に送信している。
ドライバモニタ13では、一定時間毎に、ドライバの顔周辺を撮像し、その撮像した画像に基づいてドライバの覚醒度を推定し、ドライバモニタ信号をECU30に送信している。
ヨー角センサ14では、一定時間毎に、自車両のヨー角を検出し、ヨー角信号をECU30に送信している。車速センサ15では、一定時間毎に、自車両の車速を検出し、車速信号をECU30に送信している。
一定時間毎に、ECU30では、白線認識カメラ10からの白線認識信号に基づいて、認識できた白線の情報を取得する(S10)。そして、ECU30では、認識できている白線が片側かあるいは左右両側かを判定する(S11)。
S11にて白線を片側しか認識できていないと判定した場合、ECU30では、その片側の白線のオフセットに基づいて、片側の白線が自車両の右側の白線かあるいは左側の白線かを判定する(S12)。
S12にて片側の白線が自車両の右側と判定した場合、ECU30では、ミリ波センサ11からのミリ波検出信号に基づいて、右側の障害物の各種情報を取得する(S13)。そして、ECU30では、自車両から右側の障害物までの距離と自車両から右片側の白線までのオフセットとの差に基づいて右片側の白線の位置を推定し(S14)、右片側の白線がセンタラインかあるいは道路右端ラインかを判定する(S15)。S15にて右片側の白線がセンタラインと判定した場合、ECU30では、右片側白線センタライン対応処理に移行する(S16)。一方、S15にて右片側の白線が道路右端ラインと判定した場合、ECU30では、右片側白線道路右端対応処理に移行する(S17)。
S12にて片側の白線が自車両の左側と判定した場合、ECU30では、左片側白線対応処理に移行する(S18)。
S11にて白線を左右両側認識できていると判定した場合、ECU30では、左右両側の各白線に対する車線逸脱判定処理に移行する(S19)。この場合、自車両の左右両側の白線が検出されているので、通常の車線逸脱判定が行われる。
右片側白線センタライン対応処理に移行すると、ECU30では、ドライバモニタ13からのドライバモニタ信号に基づいて、ドライバの覚醒度を取得する(S20)。そして、ECU30では、ドライバの覚醒度が高いか否かを判定する(S21)。
S21にてドライバの覚醒度が高いと判定した場合、ECU30では、ミリ波センサ11からのミリ波検出信号に基づいて、障害物の各種情報を取得する(S22)。そして、ECU30では、自車両の左側に障害物が存在するか否かを判定する(S23)。
S23にて左側に障害物が存在すると判定した場合、ECU30では、左側の障害物の位置に基づいて左側の仮想線を設定する(S24)。そして、ECU30では、右片側白線(センタライン)と左側の仮想線に対する車線逸脱判定処理に移行する(S25)。この場合、自車両の右側の白線(センタライン)のみが検出されているので、右側の白線については通常の車線逸脱判定が行われ、左側については左側の障害物の位置に応じた仮想線に基づいて車線逸脱判定が行われる。
S23にて左側に障害物が存在しないと判定した場合、ECU30では、右片側白線(センタライン)のみに対する車線逸脱判定処理に移行する(S26)。この場合、自車両の右側の白線(センタライン)のみが検出されているので、右側の白線については通常の車線逸脱判定が行われ、左側については左側に障害物が存在せずかつドライバの覚醒度も高いので、車線逸脱判定が行われない。
S21にてドライバの覚醒度が低いと判定した場合、ECU30では、ドライバの高覚醒時の自車両とセンタラインとのオフセットの履歴に基づいて、左側の仮想線を設定する(S27)。そして、ECU30では、右片側白線(センタライン)と左側の仮想線に対する車線逸脱判定処理に移行する(S28)。この場合、自車両の右側の白線(センタライン)のみが検出されているので、右側の白線については通常の車線逸脱判定が行われ、左側については過去のドライバの走行実績に応じた仮想線に基づいて車線逸脱判定が行われる。これによって、ドライバの覚醒度は低いが、ドライバが通常走行しているときの走行感覚で逸脱判定ができる。
右片側白線道路右端対応処理に移行すると、ECU30では、ミリ波センサ11からのミリ波検出信号に基づいて、障害物の各種情報を取得する(S30)。そして、ECU30では、対向車が存在するか否かを判定する(S31)。
S31にて対向車が存在しないと判定した場合、ECU30では、自車両の左側に障害物が存在するか否かを判定する(S32)。S32にて左側に障害物が存在すると判定した場合、ECU30では、左側の障害物の位置に基づいて左側の仮想線を設定する(S33)。一方、S32にて左側に障害物が存在しないと判定した場合、ECU30では、車線幅に基づいて左側の仮想線を設定する(S34)。そして、ECU30では、右片側白線(道路右端ライン)と左側の仮想線に対する車線逸脱判定処理に移行する(S35)。この場合、自車両の右側の白線(道路右端ライン)のみが検出され、対向車が存在しないので、右側については道路右端の白線に基づいて車線逸脱判定が行われ、左側については左側の障害物の位置又は車線幅に応じた仮想線に基づいて車線逸脱判定が行われる。
S31にて対向車が存在すると判定した場合、ECU30では、ドライバモニタ13からのドライバモニタ信号に基づいて、ドライバの覚醒度を取得する(S36)。そして、ECU30では、ドライバの覚醒度が高いか否かを判定する(S37)。
S37にてドライバの覚醒度が高いと判定した場合、ECU30では、自車両の左側に障害物が存在するか否かを判定する(S38)。S38にて左側に障害物が存在すると判定した場合、ECU30では、左側の障害物の位置に基づいて左側の仮想線を設定する(S39)。一方、S38にて左側に障害物が存在しないと判定した場合、ECU30では、車線幅に基づいて左側の仮想線を設定する(S40)。
さらに、ECU30では、その左側の仮想線と対向車との距離を算出し、その距離が自車両の車幅より広いか否かを判定する(S41)。S41にてその距離が車幅より広いと判定した場合、ECU30では、対向車の位置に基づいて、右側の仮想線(センタラインに相当)を設定する(S42)。そして、ECU30では、左側の仮想線と右側の仮想線に対する車線逸脱判定処理に移行する(S43)。この場合、自車両の右側の白線(道路右端ライン)のみが検出され、対向車が存在するので、右側については対向車の位置に応じた仮想線に基づいて車線逸脱判定が行われ、左側については左側の障害物の位置又は車線幅に応じた仮想線に基づいて車線逸脱判定が行われる。
一方、S41にてその距離が車幅より狭いと判定した場合、ECU30では、警報出力信号を警報装置20に送信する(S44)。この警報出力信号を受信すると、警報装置20では、ブザー音を出力する。このブザー音によって、ドライバは、対向車により注意を払い、必要に応じて車両を左側に寄せて停止させる。この場合、対向車がいるにもかかわらず、センタラインに対する車線逸脱判定ができないが、ブザー音によってドライバに対して注意喚起される。
S37にてドライバの覚醒度が低いと判定した場合、ECU30では、警報出力信号を警報装置20に送信する(S45)。この警報出力信号を受信すると、警報装置20では、ブザー音を出力する。このブザー音によって、ドライバは、覚醒度が低い状態から覚醒度が高くなる。そして、ドライバは、対向車に気付き、必要に応じて車両を左側に寄せて停止させる。この場合、対向車がいるにもかかわらず、ドライバの覚醒度が低かったが、ブザー音によってドライバの覚醒度が回復し、注意喚起される。
左片側白線対応処理に移行すると、ECU30では、ミリ波センサ11からのミリ波検出信号に基づいて、障害物の各種情報を取得する(S50)。そして、ECU30では、対向車が存在するか否かを判定する(S51)。
S51にて対向車が存在しないと判定した場合、ECU30では、左片側白線(但し、道路右端の白線が認識できている場合は道路右端の白線も)に対する車線逸脱判定処理に移行する(S52)。この場合、自車両の左側の白線のみが検出されているので、左側の白線については通常の車線逸脱判定が行われ、右側については対向車が存在しないので、道路の右端の白線で車線逸脱判定が行われる。
S51にて対向車が存在すると判定した場合、ECU30では、ドライバモニタ13からのドライバモニタ信号に基づいて、ドライバの覚醒度を取得する(S53)。そして、ECU30では、ドライバの覚醒度が高いか否かを判定する(S54)。
S54にてドライバの覚醒度が高いと判定した場合、ECU30では、左側の白線と対向車との距離を算出し、その距離が自車両の車幅より広いか否かを判定する(S55)。
S55にてその距離が車幅より広いと判定した場合、ECU30では、対向車の位置に基づいて、右側の仮想線(センタラインに相当)を設定する(S56)。そして、ECU30では、左側の白線と右側の仮想線に対する車線逸脱判定処理に移行する(S57)。この場合、自車両の左側の白線のみが検出され、対向車が存在するので、左側の白線については通常の車線逸脱判定が行われ、右側については対向車の位置に応じた仮想線に基づいて車線逸脱判定が行われる。
S55にてその距離が車幅より狭いと判定した場合、ECU30では、対向車の位置に基づいて、右側の仮想線(センタラインに相当)を設定する(S58)。さらに、ECU30では、左側の障害物の位置に基づいて、左側の仮想線を設定する(S59)。この場合、自車両の左側の白線のみが検出され、対向車が存在し、道路幅が狭いので、右側については対向車の位置に応じた仮想線に基づいて車線逸脱判定が行われ、左側については左側の障害物の位置に応じた仮想線に基づいて車線逸脱判定が行われる。
S54にてドライバの覚醒度が低いと判定した場合、ECU30では、警報出力信号を警報装置20に送信する(S61)。この警報出力信号を受信すると、警報装置20では、ブザー音を出力する。このブザー音によって、ドライバは、覚醒度が低い状態から覚醒度が高くなる。そして、ドライバは、対向車に気付き、必要に応じて車両を左側に寄せて停止させる。この場合、対向車がいるにもかかわらず、ドライバの覚醒度が低いが、ブザー音によってドライバの覚醒度が回復し、注意喚起される。
車線逸脱判定処理に移行すると、ECU30では、ヨー角センサ14からのヨー角信号及び車速センサ15からの車速信号に基づいて、所定時間後の自車両の位置を予測する。そして、ECU30では、左側の白線又は仮想線の自車両からの距離やカーブ半径と所定時間後の自車両の位置に基づいて、自車両が左側の白線又は仮想線を逸脱する可能性があるか否かを判定する。また、ECU30では、右側の白線又は仮想線の自車両からの距離やカーブ半径と所定時間後の自車両の位置に基づいて、自車両が右側の白線又は仮想線を逸脱する可能性があるか否かを判定する。逸脱する可能性があると判定した場合、ECU30では、警報装置20でブザー音を出力するための警報出力信号を設定し、その警報出力信号を警報装置20に送信する。このブザー音によって、ドライバは、車線から逸脱しようになっていることに気付き、車線を逸脱しないように操舵操作を行う。
この車線逸脱警報装置1によれば、自車両の左右の片側の白線しか検出できない場合、ドライバの状態や自車両の周辺の状況に応じて仮想線の推定を行うことにより、検出できない側に適切な仮想線を推定でき、適切な車線逸脱判定を行うことができる。その結果、ドライバにとって不要な警報出力を防止できるとともに、必要な警報出力を行うことができる。
特に、車線逸脱警報装置1では、ドライバの覚醒度に応じて仮想線の推定を行うことにより、ドライバの状態に応じた適切な仮想線を推定できる。また、車線逸脱警報装置1では、自車両に対して右片側の白線しか検出できない場合、左側の障害物に応じて仮想線の推定を行うことにより、左側の障害物に応じた適切な左側の仮想線を推定できる。また、車線逸脱警報装置1では、自車両に対して左片側の白線又は道路右端の白線しか検出できない場合、対向車に応じて仮想線の推定を行うことにより、対向車の状況に応じた適切な右側の仮想線(センタラインに相当)を推定できる。
以上、本発明に係る実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されることなく様々な形態で実施される。
例えば、本実施の形態では車線を逸脱する可能性がある場合に警報出力する車線逸脱警報装置に適用したが、車線を逸脱する可能性がある場合に逸脱を抑制するための操舵制御を行うなどの他の車線逸脱抑制装置に適用してもよい。
また、本実施の形態では区画線として一対の白線からなる車線を対象としたが、白線以外の黄線等の他の線にも適用可能である。
また、本実施の形態では白線(区画線)を検出する手段として車両前方を撮像した画像から検出する白線認識カメラを適用したが、区画線を他の方法で検出してもよい。
また、本実施の形態ではドライバの覚醒度を検出する手段として顔の撮像画像から検出するドライバモニタを適用したが、ドライバの生体情報(心拍、血圧など)から検出する方法などの他の方法でドライバの覚醒度を検出してもよい。
また、本実施の形態では対向車や路側の障害物を検出する手段としてミリ波センサを適用したが、車両前方を撮像した画像から検出する方法、路車間通信や車車間通信で周辺車両の情報を取得する方法などの他の方法で対向車や路側の障害物を検出してもよい。
また、本実施の形態では片側の白線しか検出できない場合にドライバの覚醒度、障害物の情報(対向車の情報、左側の障害物の情報)などを用いた仮想線の推定方法の一例を示したが、この推定方法以外の方法で仮想線を推定してもよい。
1…車線逸脱警報装置、10…白線認識カメラ、11…ミリ波センサ、12…ナビゲーション装置、13…ドライバモニタ、14…ヨー角センサ、15…車速センサ、20…警報装置、30…ECU、31…車線状況判定部、32…車線逸脱判定部