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JP5143621B2 - 哺乳動物由来の生体液試料中のヒアルロン酸の分子量分布の測定方法 - Google Patents

哺乳動物由来の生体液試料中のヒアルロン酸の分子量分布の測定方法 Download PDF

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Description

本発明は、哺乳動物由来の生体液試料中のヒアルロン酸の分子量分布の測定方法、その測定方法を用いる慢性関節リウマチ疾患の判定方法、およびそれらの方法のための実験セットに関する。
近年患者数が増加している慢性関節リウマチ(RA)は慢性炎症性の関節疾患で長期の罹患により関節の破壊や機能障害をきたす。関節組織は様々な細胞外マトリックスによって構成されているが、その中でもヒアルロン酸(HA)は、N−アセチルグルコサミンとD−グルクロン酸の二糖の繰り返しからなる多糖類で、関節の保護作用を有する重要な関節の構成成分である。
一般に、RA患者の関節液中のHAの濃度や分子量は健常人に比較して低下することが知られているが、RAの病態と関節液中のHAの代謝の機序の相関については不明な点が多く、ほとんど解明されていないのが現状である。RA患者の関節ではHA合成酵素と分解酵素のバランスが崩れることが予想されるが、その影響についてはほとんど解明されていない。
従来公知のヒト血清中のHA分子量測定に関する主な文献としては、血清中のHA分子量を初めて測定した例として非特許文献1が知られている。また、非特許文献2には、ラジオアイソトープを用いてヒト血清中のHA分子量を定量する方法が記載されている。そして、非特許文献3には、ヒアルロン酸結合蛋白(HABP)を用いた定量法が記載されている。
Biochem. J., 236, 521-525(1986) Int. J. Cancer, 44, 445-448(1989) Res. Commun. Mol. Pathol. Pharmacol., 99(2), 207-216(1998)
しかしながら、上記文献記載の従来技術は、以下の点で改善の余地を有していた。
第1に、HAの濃度に限定して解析するだけであれば既存の方法を適用することも可能であるが、RA患者血清中のHAは病態の進行と共に関節から血中に移行し濃度と共に分子量が複雑に変化する。すなわち、血液中のHAはRAの病態における様々な部位と進行の過程を反映し更に複雑に変化するので、RA患者の病態解析においては、単にHAの濃度と分子量を測定するだけでは十分ではなく、その分子量分布を正確に把握することが極めて重要となる。
第2に、個々の患者の血清中のHAの挙動とRAの病態を相関させて解析するためには、患者の血液を長期間に亘って適宜採取して調べる必要がある。しかし、個々の患者から1回に採取可能な血液量には自ずと制限があるために、少量の患者血清からHAの動態に関する情報を得る必要がある。つまり、一回の検体採取量に量的制約がある場合にも、患者血清中のHAの分子量及び分子量分布を感度よく測定する方法の開発が望まれている。
しかし、非特許文献1では、血清中のHA分子量を測定する際に、50〜500mLのRA患者血清をプールして用いており、少量分析に応用できる方法ではない。また、非特許文献2に記載の方法は、ラジオアイソトープを用いて定量する方法であるため特別な施設を必要とし、かつ濃縮前の血清として2.5mLが必要である。さらに、非特許文献3に記載の方法は、ヒアルロン酸結合蛋白(HABP)を用いた定量法を採用しているが、血清が3mL必要である。このように、1mL以下の少量の血清量からHAの濃度のみならず、HAの分子量およびその分子量の分布パターンを効率よく測定できる方法は現在に至るまで見いだされていない。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、ラジオアイソトープを用いることなく、1mL以下の少量の哺乳動物由来の生体液試料からヒアルロン酸の分子量の分布パターンを効率よく測定する技術を提供することを目的とする。
本発明によれば、哺乳動物由来の生体液試料中のヒアルロン酸の分子量分布の測定方法であって、生体液試料を分子量分画する工程と、分子量分画されたヒアルロン酸を含む各画分を濃縮する工程と、濃縮された各画分のヒアルロン酸量を定量する工程と、を含む、測定方法が提供される。
この方法によれば、生体液試料を分子量分画する工程と、分子量分画されたヒアルロン酸を含む各画分を濃縮する工程と、濃縮された各画分のヒアルロン酸量を定量する工程と、を含むため、分子量分画の際にヒアルロン酸の濃度が低減した場合であっても、ヒアルロン酸の濃度を濃縮によって高めることができるので、濃縮された各画分のヒアルロン酸量を高感度で定量することが可能になる。そのため、この方法によれば、ラジオアイソトープを用いることなく、1mL以下の少量の哺乳動物由来の生体液試料からヒアルロン酸の分子量の分布パターンを効率よく測定することが可能になる。
また、本発明によれば、哺乳動物由来の生体液試料を分析して、生体液試料が慢性関節リウマチ疾患を罹患している哺乳動物から採取されたか否か判定するための判定方法であって、上述の測定方法を用いて哺乳動物由来の生体液試料中のヒアルロン酸の分子量分布を測定する工程と、測定された分子量分布および上述の哺乳動物と同種の正常な哺乳動物由来の生体液試料中のヒアルロン酸の分子量分布を比較する工程と、ヒアルロン酸の分子量分布の比較結果に基づいて、生体液試料が慢性関節リウマチ疾患を罹患している哺乳動物から採取されたか否か判定する工程と、を含む、判定方法が提供される。
この方法によれば、上述の測定方法を用いて哺乳動物由来の生体液試料中のヒアルロン酸の分子量分布を測定するため、ラジオアイソトープを用いることなく、1mL以下の少量の哺乳動物由来の生体液試料からヒアルロン酸の分子量の分布パターンを効率よく測定することが可能になる。そのため、被検体である哺乳動物由来の生体液試料について測定された分子量分布および被検体の哺乳動物と同種の正常な哺乳動物由来の生体液試料中のヒアルロン酸の分子量分布を比較することによって、被検体である哺乳動物由来の生体液試料が慢性関節リウマチ疾患を罹患している哺乳動物から採取されたか否か判定することが可能になる。
また、本発明によれば、哺乳動物由来の生体液試料を分析して、生体液試料が複数の型のうちいずれの型の慢性関節リウマチ疾患を罹患している哺乳動物から採取されたか判定するための判定方法であって、上述の測定方法を用いて哺乳動物由来の生体液試料中のヒアルロン酸の分子量分布を測定する工程と、測定された分子量分布および上述の哺乳動物と同種の複数の型の慢性関節リウマチ疾患を罹患している哺乳動物由来の生体液試料中のヒアルロン酸の分子量分布を比較する工程と、ヒアルロン酸の分子量分布の比較結果に基づいて、生体液試料が複数の型のうちいずれの型の慢性関節リウマチ疾患を罹患している哺乳動物から採取されたか判定する工程と、を含む、判定方法が提供される。
この方法によれば、上述の測定方法を用いて哺乳動物由来の生体液試料中のヒアルロン酸の分子量分布を測定するため、ラジオアイソトープを用いることなく、1mL以下の少量の哺乳動物由来の生体液試料からヒアルロン酸の分子量の分布パターンを効率よく測定することが可能になる。そのため、被検体である哺乳動物由来の生体液試料について測定された分子量分布および被検体の哺乳動物と同種の複数の型の慢性関節リウマチ疾患を罹患している哺乳動物由来の生体液試料中のヒアルロン酸の分子量分布を比較することによって、被検体である哺乳動物由来の生体液試料が複数の型のうちいずれの型の慢性関節リウマチ疾患を罹患している哺乳動物から採取されたか判定することが可能になる。
また、本発明によれば、哺乳動物由来の生体液試料中のヒアルロン酸の分子量分布の測定のための試薬およびカラムを含む実験セットであって、タンパク質分解酵素と、サイズ排除クロマトグラフィーカラムと、ヒアルロン酸結合タンパク質と、を含む実験セットが提供される。
この実験セットによれば、あらかじめタンパク質分解酵素を用いて前処理した生体液試料をサイズ排除クロマトグラフィーカラムを用いて分子量分画した上で、分子量分画されたヒアルロン酸を含む各画分を研究室等に備え付けられている遠心エバポレータなどの適当な機器を用いて減圧乾固等して濃縮し、さらに濃縮された各画分のヒアルロン酸量をヒアルロン酸結合タンパク質を用いて定量することができる。
そのため、この実験セットによれば、サイズ排除クロマトグラフィーカラムによる分子量分画の際にヒアルロン酸の濃度が低減した場合であっても、ヒアルロン酸の濃度を遠心エバポレータなどの適当な機器を用いて減圧乾固等して濃縮することによって高めることができるので、濃縮された各画分のヒアルロン酸量をヒアルロン酸結合タンパク質を用いて高感度で定量することが可能になる。そのため、この実験セットによれば、ラジオアイソトープを用いることなく、1mL以下の少量の哺乳動物由来の生体液試料からヒアルロン酸の分子量の分布パターンを効率よく測定することが可能になる。
また、本発明によれば、哺乳動物由来の生体液試料を分析して、生体液試料が慢性関節リウマチ疾患を罹患している哺乳動物から採取されたか否か判定するための試薬およびカラムを含む実験セットであって、タンパク質分解酵素と、サイズ排除クロマトグラフィーカラムと、ヒアルロン酸結合タンパク質と、哺乳動物と同種の正常な哺乳動物由来の生体液試料または該生体液試料から得られたヒアルロン酸の分子量分布データと、を含む実験セットが提供される。
この実験セットによれば、あらかじめタンパク質分解酵素を用いて前処理した生体液試料をサイズ排除クロマトグラフィーカラムを用いて分子量分画した上で、分子量分画されたヒアルロン酸を含む各画分を研究室等に備え付けられている遠心エバポレータなどの適当な機器を用いて減圧乾固等して濃縮し、さらに濃縮された各画分のヒアルロン酸量をヒアルロン酸結合タンパク質を用いて定量することができる。
そのため、この実験セットによれば、サイズ排除クロマトグラフィーカラムによる分子量分画の際にヒアルロン酸の濃度が低減した場合であっても、ヒアルロン酸の濃度を遠心エバポレータなどの適当な機器を用いて減圧乾固等して濃縮することによって高めることができるので、濃縮された各画分のヒアルロン酸量をヒアルロン酸結合タンパク質を用いて高感度で定量することが可能になる。そのため、この実験セットによれば、ラジオアイソトープを用いることなく、1mL以下の少量の哺乳動物由来の生体液試料からヒアルロン酸の分子量の分布パターンを効率よく測定することが可能になる。
そして、この実験セットによれば、被検体である哺乳動物と同種の正常な哺乳動物由来の生体液試料またはその生体液試料から得られたヒアルロン酸の分子量分布データが含まれているので、いずれにしても被検体である哺乳動物と同種の正常な哺乳動物由来の生体液試料におけるヒアルロン酸の分子量分布データが得られる。そのため、被検体である哺乳動物由来の生体液試料について測定された分子量分布および被検体の哺乳動物と同種の正常な哺乳動物由来の生体液試料中のヒアルロン酸の分子量分布を比較することによって、被検体である哺乳動物由来の生体液試料が慢性関節リウマチ疾患を罹患している哺乳動物から採取されたか否か判定することが可能になる。
また、本発明によれば、哺乳動物由来の生体液試料を分析して、その生体液試料が複数の型のうちいずれの型の慢性関節リウマチ疾患を罹患している哺乳動物から採取されたか判定するための試薬およびカラムを含む実験セットであって、タンパク質分解酵素と、サイズ排除クロマトグラフィーカラムと、ヒアルロン酸結合タンパク質と、哺乳動物と同種の複数の型の慢性関節リウマチ疾患を罹患している哺乳動物由来の生体液試料または該生体液試料から得られたヒアルロン酸の分子量分布データと、を含む実験セットが提供される。
この実験セットによれば、あらかじめタンパク質分解酵素を用いて前処理した生体液試料をサイズ排除クロマトグラフィーカラムを用いて分子量分画した上で、分子量分画されたヒアルロン酸を含む各画分を研究室等に備え付けられている遠心エバポレータなどの適当な機器を用いて減圧乾固等して濃縮し、さらに濃縮された各画分のヒアルロン酸量をヒアルロン酸結合タンパク質を用いて定量することができる。
そのため、この実験セットによれば、サイズ排除クロマトグラフィーカラムによる分子量分画の際にヒアルロン酸の濃度が低減した場合であっても、ヒアルロン酸の濃度を遠心エバポレータなどの適当な機器を用いて減圧乾固等して濃縮することによって高めることができるので、濃縮された各画分のヒアルロン酸量をヒアルロン酸結合タンパク質を用いて高感度で定量することが可能になる。そのため、この実験セットによれば、ラジオアイソトープを用いることなく、1mL以下の少量の哺乳動物由来の生体液試料からヒアルロン酸の分子量の分布パターンを効率よく測定することが可能になる。
そして、この実験セットによれば、被検体である哺乳動物と同種の複数の型の慢性関節リウマチ疾患を罹患している哺乳動物由来の生体液試料またはその生体液試料から得られたヒアルロン酸の分子量分布データが含まれているので、いずれにしても被検体である哺乳動物と同種の複数の型の慢性関節リウマチ疾患を罹患している哺乳動物由来の生体液試料におけるヒアルロン酸の分子量分布データが得られる。そのため、被検体である哺乳動物由来の生体液試料について測定された分子量分布および被検体の哺乳動物と同種の複数の型の慢性関節リウマチ疾患を罹患している哺乳動物由来の生体液試料中のヒアルロン酸の分子量分布を比較することによって、被検体である哺乳動物由来の生体液試料が複数の型のうちいずれの型の慢性関節リウマチ疾患を罹患している哺乳動物から採取されたか判定することが可能になる。
本発明により、1mL以下の少量の哺乳動物由来の生体液試料からヒアルロン酸の分子量の分布パターンを効率よく測定することが可能になる。
<用語の説明>
(i)ヒアルロン酸
本明細書および特許請求の範囲において、「ヒアルロン酸」(hyaluronic acid)とは、グリコサミノグリカン(ムコ多糖)の一種であり、学術上は、ヒアルロナン(hyaluronan)とも呼ばれる物質を意味する。ヒアルロン酸は、N−アセチルグルコサミンとグルクロン酸(GlcNAcβ1−4GlcAβ1−3)の二糖単位が連結した構造をしている。
(ii)慢性関節リウマチ
本明細書および特許請求の範囲において、「慢性関節リウマチ」(Rheumatoid Arthritis;RA)とは、自己免疫が主に手足の関節を侵し、これにより関節痛、関節の変形が生じる炎症性自己免疫疾患を意味する。なお、慢性関節リウマチは、別名「関節リウマチ」と呼ばれることもある。第6回日本リウマチ学会総会(1962年)においてRheumatoid Arthritisの日本語訳が「慢性関節リウマチ」に決定されたが、第46回日本リウマチ学会総会(2002年)において「関節リウマチ」を正式名称とする声明が発表されている。これに伴い、2006年、厚生労働省による特定疾患の名称も「関節リウマチ」に変更されている。
(iii)その他
本明細書および特許請求の範囲において、「下限数値〜上限数値」とは、下限数値以上かつ上限数値以下を意味する。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
<実施形態1:ヒアルロン酸の分子量分布の測定方法>
本発明者らは、少量の血清を用いてHAの濃度のみならず、分子量及び分子量分布のパターンを効率よく測定する方法を開発すべく鋭意検討した。その結果、本発明者らは、少量の血清を用いて、血清中のヒアルロン酸の分子量および分子量分布を測定する方法を見出した。
このようにして完成した本実施形態に係る測定方法は、哺乳動物由来の生体液試料中のヒアルロン酸の分子量分布の測定方法である。この測定方法では、生体液試料を分子量分画し、次いで、分子量分画されたヒアルロン酸を含む各画分を濃縮し、続いて、濃縮された各画分のヒアルロン酸量を定量する。
すなわち、別の表現をすれば、本実施形態は、下記の工程を含む血清中のヒアルロン酸の分子量及び分子量分布の測定法に関わる。
工程1:血清試料を分子量分画する
工程2:工程1で分子量分画したヒアルロン酸を含む各画分を濃縮する
工程3:工程2で濃縮したヒアルロン酸を定量する
工程4:得られたヒアルロン酸量から分子量分布を再構成する
本実施形態に係る方法は、生体液試料を分子量分画する工程と、分子量分画されたヒアルロン酸を含む各画分を濃縮する工程と、濃縮された各画分のヒアルロン酸量を定量する工程と、を含むため、分子量分画の際にヒアルロン酸の濃度が低減した場合であっても、ヒアルロン酸の濃度を濃縮によって高めることができるので、濃縮された各画分のヒアルロン酸量を高感度で定量することが可能になる。そのため、この方法によれば、ラジオアイソトープを用いることなく、1mL以下の少量の哺乳動物由来の生体液試料からヒアルロン酸の分子量の分布パターンを効率よく測定することが可能になる。
なお、上述の生体液試料は、特に限定されず、哺乳動物由来の任意の生体液試料を用いることができる。この生体液(別名体液)試料の具体例としては、大きく細胞内液(ICF)と細胞外液(ECF)に分けられるが、採取が容易な細胞外液であることが好ましい。この細胞外液には、血液やリンパ液、血管の外の細胞間を満たす組織液、および体腔内の体腔液などが含まれる。なお、本明細書および特許請求の範囲では、血液から得られる血清も生体液試料に含まれるものとする。上述の生体液試料としては、RAの病態における様々な部位と進行の過程を反映し更に複雑に変化すると考えられていることから、血液(血清)または関節液であることが特に好ましい。以下の説明では、生体液試料の中でも特に血清に絞って説明をする。
ここで、哺乳動物から採取する生体液試料(血清)の量は、被検体の哺乳動物の精神的・肉体的な負担の抑制を考えれば、1回あたり1mL以下であることが好ましく、500μL以下であることがより好ましく、200μL以下であることが最も好ましい。これまでに従来公知の技術では、このような少量の生体液試料(血清)を元にして、ヒアルロン酸の分子量分布を測定することは困難であったが、本発明者らは、分子量分画の際にヒアルロン酸の濃度が低減した場合であっても、ヒアルロン酸の濃度を濃縮によって高めることができるので、濃縮された各画分のヒアルロン酸量を高感度で定量することが可能になるという着想に基づいて様々な工程の組み合わせを試行錯誤し、1mL以下の少量の生体液試料(血清)をもとにしてヒアルロン酸の分子量分布を測定することを可能にした。
また、上述の分子量は、学術的に定義される分子量(molecular weight、molecular mass)または相対分子質量(relative molecular mass)の概念(分子の相対質量を表した値であり、原子量と同様に12Cの質量に対する比の12倍として定義される無次元量)に含まれるものであれば、任意の種類の分子量を用いることができる。すなわち、上述の分子量は、粘度平均分子量、重量平均分子量、数平均分子量のいずれでもよいが、一般的に用いられることが多く汎用性に優れる粘度平均分子量を用いることが特に好ましい。以下の説明では、単に分子量と記載した場合には粘度平均分子量を意味するものとして説明をする。
以下、本実施形態の方法に含まれる工程について、それぞれ説明する。
(i)前処理工程
本実施形態に係る方法では、生体液試料を分子量分画する前に、あらかじめタンパク質分解酵素で前処理する工程をさらに含んでもよい。すなわち、血清をそのまま、または希釈して分子量分画することもできるが、生体液試料血清または血清の希釈液をあらかじめタンパク質分解酵素で前処理することにより、血清中においてヒアルロン酸と混在しているタンパク質を分解することができるため、ヒアルロン酸の回収率の向上及び夾雑物質(タンパク質)の影響を除去することができ、より好適なヒアルロン酸の分子量分布の測定結果が得られる。
ここで、上述のタンパク質分解酵素としては、血清中のヒアルロン酸に結合しているタンパク質を分解することができ、ヒアルロン酸分解酵素が混入していないものであれば特に制約はなく、従来公知の任意のタンパク質分解酵素を用いることができる。上述のタンパク質分解酵素の具体例としては、入手容易性およびタンパク質分解性に優れることから、セリンプロテイナーゼ、金属プロテイナーゼ、チオールプロテイナーゼ、アスパラギン酸プロテイナーゼなどが好ましい。これらのタンパク質分解酵素の中でも、入手容易性およびタンパク質分解性が特に優れるため、セリンプロテイナーゼ、中でもプロテイナーゼKを用いることが好ましい。
このとき、プロテイナーゼKをはじめとするタンパク質分解酵素による前処理は、タンパク質分解反応が十分に進行し、タンパク質分解酵素が多すぎて悪影響が出ないように、タンパク質分解酵素を0.02w/v%〜1w/v%加えることが好ましく、タンパク質分解酵素を0.05w/v%〜0.2w/v%容量部加えることが特に好ましい。
このとき、プロテイナーゼKをはじめとするタンパク質分解酵素による前処理は、タンパク質分解酵素の活性が高まり、タンパク質分解酵素が失活しないように、20℃〜60℃の範囲内で行うことが好ましく、30℃〜50℃の範囲内で行うことが特に好ましい。
また、この前処理は、タンパク質分解反応が十分に進行し、タンパク質分解酵素が失活しないように、6hr〜48hrの範囲内で行うことが好ましく、12hr〜24hrの範囲内で行うことが特に好ましい。また、この前処理の反応液については、次の分子量分画工程に進む前に、前処理反応による沈殿物等を除くために、好ましくは孔径0.1μm〜1μm、特に好ましくは孔径0.2μm〜0.6μmのメンブランフィルターで遠心ろ過されることが望ましい。
(ii)分子量分画工程
また、本実施形態の工程1において、血清試料中のHAの分子量分画法としては、血清中のHAを分子量の違いによって分画できるものであれば特に制約はなく、従来公知の任意の分子量分画法を用いることができる。この分子量分画法の具体例としては、実行容易性および分画性能に優れることから、サイズ排除クロマトグラフィー、フィールド・フロー・フラクショネーション、電気泳動法、超遠心分離法などが好ましい。これらの分子量分画法の中でも、実行容易性および分画性能に特に優れることから、高速液体クロマトグラフィーを用いた方法が好ましく、中でもサイズ排除クロマトグラフィーを用いることが最も好ましい。なお、サイズ排除クロマトグラフィーを行う際には、必要に応じて、高分子から低分子まで良好な分離を得るため、2種類以上のサイズ排除クロマトグラフィーカラム(例えば、Shodex OHpak SB−806HQ、Asahipak GS−820HQなど)を直列接続して用いてもよい。
また、上述の工程1において、サイズ排除クロマトグラフィーを用いる場合の移動相としては、ヒアルロン酸を分子量で分離できる移動相であれば特に制約はなく、一般的にサイズ排除クロマトグラフィーに用いることのできる移動相を用いることができる。上述の移動相の具体例としては、入手容易性および移動特性・分離特性に優れ、ヒアルロン酸を変性させにくいことなどから、水、リン酸緩衝液、塩化ナトリウム添加リン酸緩衝液、酢酸緩衝液、クエン酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、塩化リチウム水溶液、塩化ナトリウム水溶液、塩化カリウム水溶液、硝酸ナトリウム水溶液、炭酸ナトリウム水溶液、酢酸ナトリウム水溶液、酢酸アンモニウム水溶液、ギ酸アンモニウム水溶液、重炭酸アンモニウム水溶液、トリス緩衝液、などを用いることができ、また、これらにエタノール、メタノール、アセトニトリル、など水と混和する有機溶媒を任意の割合で添加した溶液を用いることができる。これらの移動相の中でも、移動特性・分離特性に特に優れるため、リン酸緩衝液、酢酸アンモニウム水溶液、ギ酸アンモニウム水溶液、重炭酸アンモニウム水溶液を用いることが好ましい。また、上述の移動相として、酢酸アンモニウム水溶液、ギ酸アンモニウム水溶液、重炭酸アンモニウム水溶液を用いることにより、工程2の濃縮操作においてHAを含む画分中の塩を揮発除去することが可能である。
ここで、分子量分画のためにHPLCを行う際には、分子量分画を行うための分画のフラクションサイズについて、分子量分画の精度を上げつつ、操作の手間を省いて、さらに各フラクション毎に検出限界以上の十分な量のヒアルロン酸を得るために、50μL〜500μL/フラクションのサイズで分画することが好ましく、200μL〜300μL/フラクションのサイズで分画することが特に好ましい。もっとも、分子量分画のためにHPLCを行う際には、溶出時間の最初の方と最後の方には十分な量のヒアルロン酸が溶出してこないため、これらについては分画を省略することもできる。
(iii)濃縮工程
また、本発明の工程2において、HAを含む画分を濃縮する方法としては、分子量分画した画分中のHAを安定に濃縮できるものであれば特に制約はなく、従来公知の任意の濃縮方法を用いることができる。上述の濃縮方法の具体例としては、操作の容易性、ヒアルロン酸の安定性が優れており、濃縮時間が短く済み、さらに濃縮コストが安く済むことから、遠心エバポレーターなどによる減圧乾固法、凍結乾燥法、塩析法、溶剤沈殿法、等電点沈殿法などを用いることが好ましい。これらの濃縮方法の中でも、操作の容易性、ヒアルロン酸の安定性が特に優れているため、減圧乾固法または凍結乾燥法を用いることが特に好ましい。
ここで、仮に遠心エバポレーターで蒸発乾固する場合には、十分に蒸発乾固を行って水分を飛ばし、さらに必要以上に加熱してヒアルロン酸を変性させないようにするために、40℃〜80℃の範囲内で蒸発乾固することが好ましく、50℃〜70℃で蒸発乾固することが特に好ましい。また、十分に蒸発乾固を行って水分を飛ばし、さらに必要以上に加熱してヒアルロン酸を変性させないようにするために、1hr〜10hrの範囲内で蒸発乾固することが好ましく、2hr〜5hrの範囲内で蒸発乾固することが特に好ましい。
(iv)定量工程
さらに、上述の工程3において、工程2で濃縮したHAを定量する方法としては、HAを高感度に定量できるものであれば特に制約はなく、従来公知の任意の定量方法を用いることができる。上述の定量方法の具体例としては、感度および定量性に優れ、操作が容易であることから、ヒアルロン酸結合蛋白(HABP)を用いた方法、ポストカラム蛍光HPLC法(微生物由来のヒアルロン酸分解酵素を用いてHAを二糖単位まで消化し、不飽和二糖HAとする。HPLCカラムで不飽和二糖HAと夾雑物質を分離後、不飽和二糖HAを蛍光色素で誘導体化し、蛍光強度を測定する方法)、プレカラム蛍光HPLC法(微生物由来のヒアルロン酸分解酵素を用いてHAを二糖単位まで消化し、蛍光色素で誘導体化後にHPLCカラムで分離して定量する方法)、抗HA抗体を用いた免疫学的な方法などを用いることが好ましい。これらの定量方法の中でも、感度および定量性に特に優れるため、HABPを用いた方法またはポストカラム蛍光HPLC法を用いることが特に好ましい。
(v)分子量分布の再構成工程
また、本発明の工程4において、分子量分画した画分中のHA量から血清中のHAの分子量及び分子量分布をもとめる方法としては、血清中のHAの分子量分布が適切に表現できるのであれば特に限定されず、任意の公知の算術的方法、統計学的方法を用いることができる。上述の分子量分布をもとめる方法の具体例としては、血清中のHAの分子量の定量性に優れ、測定・計算が容易であり、簡単にグラフを描画できて直感的に分子量分布が把握できることから、各種分子量のHA標準品を分画して得られた画分のHA濃度を測定することにより各画分の分子量を求め、これを基に血清由来サンプル画分のHA濃度プロファイルから分子量および、分子量分布をもとめる方法が挙げられる。
このとき、HA標準液としては、十分な検出・定量が可能なように、HA濃度約100ng/mL〜2,000ng/mLの範囲内のものが好ましく、HA濃度約300ng/mL〜1,000ng/mLの範囲内の標準液を用意して検量線を引くものが特に好ましい。また、十分な検出・定量が可能でありながら、必要以上の手間を省くために、粘度平均分子量約1万〜1,000万の範囲内で適切な間隔を空けつつ3〜10点の標準液を用意することが好ましく、粘度平均分子量約5万〜500万の範囲内で適切な間隔を空けつつ4〜5点の標準液を用意して検量線を引くことが特に好ましい。
もっとも、必ずしも毎回、各種分子量のHA標準品を分画して得られた画分のHA濃度を測定することにより各画分の分子量を求める必要があるわけではなく、一度各種分子量のHA標準品を分画して得られた画分のHA濃度を測定して記録しておけば、その測定結果を使い回して次回からの血清由来サンプル画分のHA濃度プロファイルから分子量および、分子量分布をもとめる際に用いてもよい。この各種分子量のHA標準品を分画して得られた画分のHA濃度を測定した記録は、紙上に数値データまたはグラフデータとして記載されていてもよく、記録メディア中に数値データまたはグラフデータとして電磁気的に書き込んで格納されていてもよい。
以下、本実施形態の作用効果について説明する。
本実施形態に係る測定方法は、哺乳動物由来の血清中のヒアルロン酸の分子量分布の測定方法であって、血清を分子量分画する工程と、分子量分画されたヒアルロン酸を含む各画分を濃縮する工程と、濃縮された各画分のヒアルロン酸量を定量する工程と、を含むため、分子量分画の際にヒアルロン酸の濃度が低減した場合であっても、ヒアルロン酸の濃度を濃縮によって高めることができるので、濃縮された各画分のヒアルロン酸量を高感度で定量することが可能になる。そのため、この方法によれば、ラジオアイソトープを用いることなく、1mL以下の少量の哺乳動物由来の血清からヒアルロン酸の分子量の分布パターンを効率よく測定することが可能になる。すなわち、この方法によれば、1mL以下の血清量で、血清中のヒアルロン酸の分子量および分子量分布を測定することができる。
また、本実施の測定方法は、上述の血清を分子量分画する前に、あらかじめタンパク質分解酵素で前処理する工程をさらに含んでもよい。このようにすれば、血清中においてヒアルロン酸と混在しているタンパク質を分解することができるため、ヒアルロン酸の回収率の向上及び夾雑物質(タンパク質)の影響を除去することができ、より好適なヒアルロン酸の分子量分布の測定結果が得られる。
また、本実施の測定方法では、上述の分子量分画する工程が、血清をサイズ排除クロマトグラフィーによって分子量分画する工程を含んでもよい。このようにすれば、簡単な操作によって血清中のHAを分子量の違いによって精度良く分画できる。
また、本実施の測定方法では、上述の濃縮する工程が、分子量分画されたヒアルロン酸を含む各画分を減圧乾固する工程を含んでもよい。このようにすれば、簡単な操作によって分子量分画した画分中のHAを安定に濃縮できる。
また、本実施の測定方法では、上述の定量する工程が、濃縮された各画分のヒアルロン酸をヒアルロン酸結合タンパク質を用いて定量する工程を含んでもよい。このようにすれば、簡単な操作によって分画および濃縮されたHAを高感度に定量できる。
また、本実施の測定方法は、定量された各画分のヒアルロン酸量に基づいて、血清のヒアルロン酸の分子量分布を算出する工程をさらに含んでもよい。このようにすれば、簡単な算術的方法によって血清中のHAの分子量分布が適切に把握できる。
<実施形態2:慢性関節リウマチ疾患を罹患しているか否かの判定方法>
本実施形態に係る判定方法は、哺乳動物由来の血清を分析して、その血清が慢性関節リウマチ疾患を罹患している哺乳動物から採取されたか否か判定するための判定方法である。この判定方法では、実施形態1に係る測定方法を用いて上述の哺乳動物由来の血清中のヒアルロン酸の分子量分布を測定し、次いで、測定された分子量分布および上述の哺乳動物と同種の正常な哺乳動物由来の血清中のヒアルロン酸の分子量分布を比較し、続いて、ヒアルロン酸の分子量分布の比較結果に基づいて、上述の血清が慢性関節リウマチ疾患を罹患している哺乳動物から採取されたか否か判定する。
この方法によれば、上述の測定方法を用いて哺乳動物由来の血清中のヒアルロン酸の分子量分布を測定するため、ラジオアイソトープを用いることなく、1mL以下の少量の哺乳動物由来の血清からヒアルロン酸の分子量の分布パターンを効率よく測定することが可能になる。そのため、被検体である哺乳動物由来の血清について測定された分子量分布および被検体の哺乳動物と同種の正常な哺乳動物由来の血清中のヒアルロン酸の分子量分布を比較することによって、被検体である哺乳動物由来の血清が慢性関節リウマチ疾患を罹患している哺乳動物から採取されたか否か判定することが可能になる。
ここで、上述の判定する工程は、ヒアルロン酸の分子量分布の比較結果において、分子量5万〜30万の範囲内の第1のピークおよび分子量50万〜200万の範囲内の第2のピークの有無が一致しているか否かに基づいて、上述の血清が慢性関節リウマチ疾患を罹患している哺乳動物から採取されたか否か判定する工程を含むことが好ましい。
後述する実施例で説明するように、実施形態1の測定方法で初めて可能になった哺乳動物から採取された血清中のヒアルロン酸の分子量分布の詳細な分析によって、本発明者らは、哺乳動物から採取された血清中のヒアルロン酸の分子量分布には、分子量5万〜30万の範囲内の第1のピークおよび分子量50万〜200万の範囲内の第2のピークがあり得ることを発見している。そして、これらの第1のピークおよび第2のピークの有無が一致しているか否かが、その血清が慢性関節リウマチ疾患を罹患している哺乳動物から採取されたか否か判定する上で役に立つであろうことが示唆されている。そのため、このようにすれば、これらの第1のピークおよび第2のピークの有無が一致しているか否かに基づいて、その血清が慢性関節リウマチ疾患を罹患している哺乳動物から採取されたか否か判定することができると考えられる。
また、上述の判定する工程は、上述のヒアルロン酸の分子量分布の比較結果において、第1のピークおよび第2のピークの有無が一致しているか否かに加えて、測定された分子量分布における第1のピークおよび第2のピークの高さの比に基づいて、上述の血清が慢性関節リウマチ疾患を罹患している哺乳動物から採取されたか否か判定する工程を含むことが好ましい。
後述する実施例で説明するように、実施形態1の測定方法で初めて可能になった哺乳動物から採取された血清中のヒアルロン酸の分子量分布の詳細な分析によって、本発明者らは、哺乳動物から採取された血清中のヒアルロン酸の分子量分布には、分子量5万〜30万の範囲内の第1のピークおよび分子量50万〜200万の範囲内の第2のピークがあり得ることを発見している。そして、これらの第1のピークおよび第2のピークの高さ(HA濃度の絶対値)の比が、その血清が慢性関節リウマチ疾患を罹患している哺乳動物から採取されたか否か判定する上で役に立つであろうことが示唆されている。そのため、このようにすれば、これらの第1のピークおよび第2のピークの有無が一致しているか否かに加えて、これらの第1のピークおよび第2のピークの高さの比に基づいて、その血清が慢性関節リウマチ疾患を罹患している哺乳動物から採取されたか否か判定することができると考えられる。
なお、上述の血清が慢性関節リウマチ疾患を罹患している哺乳動物から採取されたか否か判定するために用いることのできる指標は、上述の血清中のヒアルロン酸の分子量分布に関する指標に限定されるわけではなく、さらに別異の指標と組み合わせて慢性関節リウマチ疾患の有無についての判定の精度を高めることができることは言うまでもない。例えば、さらに血清中のヒアルロン酸の平均濃度(分子量分画しないで測定される濃度)を組み合わせてもよく、あるいは、医師などの医療従事者による問診・観察などの主観的な知見と組み合わせてもよい。
<実施形態3:いずれの型の慢性関節リウマチ疾患を罹患しているかの判定方法>
本実施形態に係る判定方法は、哺乳動物由来の血清を分析して、その血清が複数の型のうちいずれの型の慢性関節リウマチ疾患を罹患している哺乳動物から採取されたか判定するための判定方法である。この判定方法では、実施形態1に係る測定方法を用いて上述の哺乳動物由来の血清中のヒアルロン酸の分子量分布を測定し、次いで、測定された分子量分布および上述の哺乳動物と同種の複数の型の慢性関節リウマチ疾患を罹患している哺乳動物由来の血清中のヒアルロン酸の分子量分布を比較し、続いて、上述のヒアルロン酸の分子量分布の比較結果に基づいて、上述の血清が複数の型のうちいずれの型の慢性関節リウマチ疾患を罹患している哺乳動物から採取されたか判定する。
この方法によれば、上述の測定方法を用いて哺乳動物由来の血清中のヒアルロン酸の分子量分布を測定するため、ラジオアイソトープを用いることなく、1mL以下の少量の哺乳動物由来の血清からヒアルロン酸の分子量の分布パターンを効率よく測定することが可能になる。そのため、被検体である哺乳動物由来の血清について測定された分子量分布および被検体の哺乳動物と同種の複数の型の慢性関節リウマチ疾患を罹患している哺乳動物由来の血清中のヒアルロン酸の分子量分布を比較することによって、被検体である哺乳動物由来の血清が複数の型のうちいずれの型の慢性関節リウマチ疾患を罹患している哺乳動物から採取されたか判定することが可能になる。
ここで、上述の判定する工程は、上述のヒアルロン酸の分子量分布の比較結果において、分子量5万〜30万の範囲内の第1のピークおよび分子量50万〜200万の範囲内の第2のピークの有無が一致しているか否かに基づいて、生体液試料が複数の型のうちいずれの型の慢性関節リウマチ疾患を罹患している哺乳動物から採取されたか判定する工程を含むことが好ましい。
後述する実施例で説明するように、実施形態1の測定方法で初めて可能になった哺乳動物から採取された血清中のヒアルロン酸の分子量分布の詳細な分析によって、本発明者らは、哺乳動物から採取された血清中のヒアルロン酸の分子量分布には、分子量5万〜30万の範囲内の第1のピークおよび分子量50万〜200万の範囲内の第2のピークがあり得ることを発見している。そして、これらの第1のピークおよび第2のピークの有無が一致しているか否かが、その血清が複数の型のうちいずれの型の慢性関節リウマチ疾患を罹患している哺乳動物から採取されたか判定する上で役に立つであろうことが示唆されている。そのため、このようにすれば、これらの第1のピークおよび第2のピークの有無が一致しているか否かに基づいて、その血清が複数の型のうちいずれの型の慢性関節リウマチ疾患を罹患している哺乳動物から採取されたか判定することができると考えられる。
また、上述の判定する工程は、上述のヒアルロン酸の分子量分布の比較結果において、第1のピークおよび第2のピークの有無が一致しているか否かに加えて、測定された分子量分布における第1のピークおよび第2のピークの高さの比に基づいて、上述の血清が複数の型のうちいずれの型の慢性関節リウマチ疾患を罹患している哺乳動物から採取されたか判定する工程を含むことが好ましい。
後述する実施例で説明するように、実施形態1の測定方法で初めて可能になった哺乳動物から採取された血清中のヒアルロン酸の分子量分布の詳細な分析によって、本発明者らは、哺乳動物から採取された血清中のヒアルロン酸の分子量分布には、分子量5万〜30万の範囲内の第1のピークおよび分子量50万〜200万の範囲内の第2のピークがあり得ることを発見している。そして、これらの第1のピークおよび第2のピークの高さ(HA濃度の絶対値)の比が、その血清が複数の型のうちいずれの型の慢性関節リウマチ疾患を罹患している哺乳動物から採取されたか判定する上で役に立つであろうことが示唆されている。そのため、このようにすれば、これらの第1のピークおよび第2のピークの有無が一致しているか否かに加えて、これらの第1のピークおよび第2のピークの高さの比に基づいて、その血清が複数の型のうちいずれの型の慢性関節リウマチ疾患を罹患している哺乳動物から採取されたか判定することができると考えられる。
ここで、慢性関節リウマチ疾患の複数の型とは、特に限定されず、何らかの生理学的所見、病理学的所見、臨床学的所見に基づいて、別異の型の慢性関節リウマチ疾患に分類することができる型であれば任意のものを用いることができる。
例えば、慢性関節リウマチ疾患の進行状況(例えば関節内部における軟骨の減り具合、痛みの進行具合など)に応じて、慢性関節リウマチ疾患を(i)初期、(ii)中期、(iii)後期、(iv)末期の4つに分類してもよい。あるいは、慢性関節リウマチ疾患の患者の性別、年齢等に応じて、(i)若年男性型、(ii)若年女性型、(iii)老年男性型、(iv)老年女性型の4つに分類してもよい。そして、慢性関節リウマチ疾患の(i)初期にヒアルロン酸の第1のピークが増大し、(ii)中期にヒアルロン酸の第2のピークが増大し、(iii)後期にヒアルロン酸の第1のピークが減少し、(iv)末期にヒアルロン酸の第2のピークが減少するのであれば、そのようなヒアルロン酸の分子量分布の変動と照らし合わせて、被検体の哺乳動物から採取した血清のヒアルロン酸の分子量分布を分析して、その被検体慢性関節リウマチ疾患の型を判別すればよい。いずれにしても、そのような適切な分類が、今後の医学、薬学、生化学分野などでの研究開発の進展によって明らかになり、本発明者等の着想になる本実施形態に係る判定方法が好適に用いられるようになると想定される。
なお、上述の血清が複数の型のうちいずれの型の慢性関節リウマチ疾患を罹患している哺乳動物から採取されたか判定するために用いることのできる指標は、上述の血清中のヒアルロン酸の分子量分布に関する指標に限定されるわけではなく、さらに別異の指標と組み合わせて慢性関節リウマチ疾患の型についての判定の精度を高めることができることは言うまでもない。例えば、さらに血清中のヒアルロン酸の平均濃度(分子量分画しないで測定される濃度)を組み合わせてもよく、あるいは、医師などの医療従事者による問診・観察などの主観的な知見と組み合わせてもよい。
<実施形態4:ヒアルロン酸の分子量分布の測定のための実験セット>
本実施形態の実験セットは、哺乳動物由来の生体液試料中のヒアルロン酸の分子量分布の測定のための試薬およびカラムを含む実験セットであって、タンパク質分解酵素と、サイズ排除クロマトグラフィーカラムと、ヒアルロン酸結合タンパク質と、を含む。
この実験セットによれば、あらかじめタンパク質分解酵素を用いて前処理した血清をサイズ排除クロマトグラフィーカラムを用いて分子量分画した上で、分子量分画されたヒアルロン酸を含む各画分を研究室等に備え付けられている遠心エバポレータなどの適当な機器を用いて減圧乾固等して濃縮し、さらに濃縮された各画分のヒアルロン酸量をヒアルロン酸結合タンパク質を用いて定量することができる。
そのため、この実験セットによれば、サイズ排除クロマトグラフィーカラムによる分子量分画の際にヒアルロン酸の濃度が低減した場合であっても、ヒアルロン酸の濃度を遠心エバポレータなどの適当な機器を用いて減圧乾固等して濃縮することによって高めることができるので、濃縮された各画分のヒアルロン酸量をヒアルロン酸結合タンパク質を用いて高感度で定量することが可能になる。そのため、この実験セットによれば、ラジオアイソトープを用いることなく、1mL以下の少量の哺乳動物由来の血清からヒアルロン酸の分子量の分布パターンを効率よく測定することが可能になる。
<実施形態5:慢性関節リウマチ疾患の罹患を判定するための実験セット>
本実施形態に係る実験セットは、哺乳動物由来の血清を分析して、その血清が慢性関節リウマチ疾患を罹患している哺乳動物から採取されたか否か判定するための試薬およびカラムを含む実験セットであって、タンパク質分解酵素と、サイズ排除クロマトグラフィーカラムと、ヒアルロン酸結合タンパク質と、哺乳動物と同種の正常な哺乳動物由来の血清またはその血清から得られたヒアルロン酸の分子量分布データと、を含む。
この実験セットによれば、あらかじめタンパク質分解酵素を用いて前処理した血清をサイズ排除クロマトグラフィーカラムを用いて分子量分画した上で、分子量分画されたヒアルロン酸を含む各画分を研究室等に備え付けられている遠心エバポレータなどの適当な機器を用いて減圧乾固等して濃縮し、さらに濃縮された各画分のヒアルロン酸量をヒアルロン酸結合タンパク質を用いて定量することができる。
そのため、この実験セットによれば、サイズ排除クロマトグラフィーカラムによる分子量分画の際にヒアルロン酸の濃度が低減した場合であっても、ヒアルロン酸の濃度を遠心エバポレータなどの適当な機器を用いて減圧乾固等して濃縮することによって高めることができるので、濃縮された各画分のヒアルロン酸量をヒアルロン酸結合タンパク質を用いて高感度で定量することが可能になる。そのため、この実験セットによれば、ラジオアイソトープを用いることなく、1mL以下の少量の哺乳動物由来の血清からヒアルロン酸の分子量の分布パターンを効率よく測定することが可能になる。
そして、この実験セットによれば、被検体である哺乳動物と同種の正常な哺乳動物由来の血清またはその血清から得られたヒアルロン酸の分子量分布データが含まれているので、いずれにしても被検体である哺乳動物と同種の正常な哺乳動物由来の血清におけるヒアルロン酸の分子量分布データが得られる。そのため、被検体である哺乳動物由来の血清について測定された分子量分布および被検体の哺乳動物と同種の正常な哺乳動物由来の血清中のヒアルロン酸の分子量分布を比較することによって、被検体である哺乳動物由来の血清が慢性関節リウマチ疾患を罹患している哺乳動物から採取されたか否か判定することが可能になる。
<実施形態6:いずれの型の慢性関節リウマチ疾患を罹患しているか判定するための実験セット>
本実施形態にかかる実験セットは、哺乳動物由来の血清を分析して、その血清が複数の型のうちいずれの型の慢性関節リウマチ疾患を罹患している哺乳動物から採取されたか判定するための試薬およびカラムを含む実験セットであって、タンパク質分解酵素と、サイズ排除クロマトグラフィーカラムと、ヒアルロン酸結合タンパク質と、哺乳動物と同種の複数の型の慢性関節リウマチ疾患を罹患している哺乳動物由来の血清またはその血清から得られたヒアルロン酸の分子量分布データと、を含む。
この実験セットによれば、あらかじめタンパク質分解酵素を用いて前処理した血清をサイズ排除クロマトグラフィーカラムを用いて分子量分画した上で、分子量分画されたヒアルロン酸を含む各画分を研究室等に備え付けられている遠心エバポレータなどの適当な機器を用いて減圧乾固等して濃縮し、さらに濃縮された各画分のヒアルロン酸量をヒアルロン酸結合タンパク質を用いて定量することができる。
そのため、この実験セットによれば、サイズ排除クロマトグラフィーカラムによる分子量分画の際にヒアルロン酸の濃度が低減した場合であっても、ヒアルロン酸の濃度を遠心エバポレータなどの適当な機器を用いて減圧乾固等して濃縮することによって高めることができるので、濃縮された各画分のヒアルロン酸量をヒアルロン酸結合タンパク質を用いて高感度で定量することが可能になる。そのため、この実験セットによれば、ラジオアイソトープを用いることなく、1mL以下の少量の哺乳動物由来の血清からヒアルロン酸の分子量の分布パターンを効率よく測定することが可能になる。
そして、この実験セットによれば、被検体である哺乳動物と同種の複数の型の慢性関節リウマチ疾患を罹患している哺乳動物由来の血清またはその血清から得られたヒアルロン酸の分子量分布データが含まれているので、いずれにしても被検体である哺乳動物と同種の複数の型の慢性関節リウマチ疾患を罹患している哺乳動物由来の血清におけるヒアルロン酸の分子量分布データが得られる。そのため、被検体である哺乳動物由来の血清について測定された分子量分布および被検体の哺乳動物と同種の複数の型の慢性関節リウマチ疾患を罹患している哺乳動物由来の血清中のヒアルロン酸の分子量分布を比較することによって、被検体である哺乳動物由来の血清が複数の型のうちいずれの型の慢性関節リウマチ疾患を罹患している哺乳動物から採取されたか判定することが可能になる。
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
例えば、上記実施の形態では生体液試料を血清としたが、特に限定する趣旨ではなく、たとえば、血液やリンパ液、血管の外の細胞間を満たす組織液、および体腔内の体腔液などとしてもよい。このようにしても、血液やリンパ液、血管の外の細胞間を満たす組織液、および体腔内の体腔液などは、互いに生体内で成分を交換し合っているので、上記実施の形態と同様にヒアルロン酸の分子量分布の測定、慢性リウマチ疾患の有無または型の判定が可能になると想定される。
以下、本発明を実施例によりさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<実施例1>
プロテイナーゼK(ロシュダイアグノスティクス社製)25mgを蒸留水2.5mLで溶解し酵素溶液を調製した。RA患者血清(症例1、HA濃度:約320ng/mL)180μLを採取し、酵素溶液18μLを加え、40℃で16hr静置反応した。反応終了後、100℃で10分間煮沸し、完全に酵素を失活させた。
反応液を孔径0.45μmのメンブランフィルターで遠心ろ過し、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)で分取した。
SECの分離条件
カラム:Shodex OHpak SB−806HQとAsahipak GS−820HQを直列接続
カラム温度:40℃
流速:0.6mL/分
移動相:50mM−リン酸ナトリウム緩衝液(pH6.0)
注入量:100μL
分析時間:60min
分画:270μL/フラクション
SECで分画分取して得た各フラクションを、遠心エバポレーターで60℃で3hr蒸発乾固した。
各フラクションの乾固物をヒアルロン酸測定キット(生化学バイオビジネス社製、HABPを用いた方法)の反応緩衝液55μLで再溶解し、ヒアルロン酸測定キットのプロトコールに従ってHA濃度を定量した。
得られたHA濃度と各フラクションの溶出時間から作成したSECのクロマトグラムを図1に示した。
濃度約500ng/mL、粘度平均分子量約10万、40万、90万、及び210万のHA標準液を用いて、血清試料と同様の操作を行い、各HA標準液のクロマトグラムのピークトップの溶出時間から作成した粘度平均分子量の検量線を図2に示した。
粘度平均分子量の検量線を用いて、血清試料のクロマトグラムの横軸を溶出時間から粘度平均分子量に変換して再構成した分子量分布チャートを図3に示した。その結果は、粘度平均分子量20万及び100万付近にピークをもつ、ブロードな分子量分布であった。
<実施例2>
プロテイナーゼK(ロシュダイアグノスティクス社製)を蒸留水2.5mLで溶解し酵素溶液を調製した。RA患者血清(症例2、HA濃度:約360ng/mL)180μLを採取し、酵素溶液18μLを加え、40℃で16hr静置反応した。反応終了後、100℃で10分間煮沸し、完全に酵素を失活させた。
反応液を孔径0.45μmのメンブランフィルターで遠心ろ過し、実施例1と同様の条件でSECにより分取した。
SECで分画分取して得た各フラクションを、遠心エバポレーターで60℃で3hr蒸発乾固した。
各フラクションの乾固物に、50mMリン酸緩衝液(pH6.0)で1mU/mLに調製したコンドロイチナーゼACIIアルスロ(生化学バイオビジネス社製、HAを不飽和二糖まで分解する微生物由来のヒアルロン酸分解酵素)を30μL添加し、40℃水浴中で3hr静置しHAの分解反応を行った。ポストカラム蛍光HPLC法を用いて不飽和二糖HA量を測定した。
HPLC条件
カラム:CAPCELL PAK NH2 UG80(250mm×1.5mmI.D)
カラム温度:30℃
溶離液:0.15M−KH2PO4
溶離液流速:0.1mL/min
注入量:3μL
反応液:0.125M−四ホウ酸ナトリウム/1M−NaOH/0.5M 2−シアノアセトアミド
反応液流速:各0.04mL/min
反応温度:130℃
検出:蛍光 EX.346nm EM.410nm
分析時間:20min
不飽和二糖HA標品:既知濃度のHA標品(粘度平均分子量210万)をコンドロイチナーゼACIIアルスロ消化して得たもの(0.5、1.0、2.5、5.0、10ng/3μL)
得られた不飽和二糖HA濃度と各フラクションの溶出時間からSECのクロマトグラムを作成した。
濃度約500ng/mL、粘度平均分子量約10万、40万、90万、及び210万のHA標準液を用いて、血清試料と同様の操作を行い、各HA標準液のクロマトグラムのピークトップの溶出時間から粘度平均分子量の検量線を作成した。粘度平均分子量の検量線を用いて、血清試料のクロマトグラムの横軸を溶出時間から粘度平均分子量に変換して再構成した分子量分布チャートを図4に示した。その結果は、粘度平均分子量20万及び100万付近にピークをもつ、ブロードな分子量分布であった。
<実施例3>
RA患者血清(症例3、HA濃度:約770ng/mL)180μLを採取し、実施例1と同様に処理を行い、各フラクションのHA濃度と溶出時間からSECのクロマトグラムを作成し、血清試料のクロマトグラムの横軸を溶出時間から粘度平均分子量に変換して再構成した分子量分布チャートを、図5に示した。その結果は、粘度平均分子量10〜20万付近にピークをもつ分子量分布であったが、症例1のように粘度平均分子量100万付近にはピークが認められなかった。このことから、血中のHA粘度平均分子量がRAにおける関節の状態を反映している可能性が示唆された。
<実施例4>
RA患者血清(症例4、HA濃度:約400ng/mL)180μLを採取し、実施例1と同様に処理を行った。ただし、SECの移動相は50mM酢酸アンモニウム溶液とした。各フラクションのHA濃度と溶出時間からSECのクロマトグラムを作成し、血清試料のクロマトグラムの横軸を溶出時間から粘度平均分子量に変換して再構成した分子量分布チャートを、図5に示した。その結果は、粘度平均分子量20〜30万付近にピークをもつ分子量分布であった。粘度平均分子量100〜200万付近にも明瞭なピークはないもののショルダーが認められ、高分子HAも存在していることがわかる。このように、移動相を酢酸アンモニウム溶液に変えても測定可能である。
<考察>
実施例1〜4のいずれも、わずか180μLのRA患者血清を用いて、血清中のヒアルロン酸の分子量分布をグラフ化することに成功している。つまり、実施例1〜4のいずれにおいても、ラジオアイソトープなどの安全な取扱の難しい実験試薬・実験機器等を用いることなく、簡単な操作によって1mL以下の少量のRA患者由来の血清からヒアルロン酸の分子量の分布パターンを効率よく測定できている。
また、実施例1〜4の症例の違いによって、第1のピークおよび第2のピークの有無または高さ(HA濃度の絶対値)の比が変化しており、血中のHA粘度平均分子量の分布(パターン)がRAにおける関節の状態を反映している可能性が示唆されている。すなわち、血中のHA粘度平均分子量の分布(パターン)を分析することによって、被験者がRA患者であるか否か判定でき、被験者がRA患者である場合には、どのようなタイプのRA患者であるか判定できる可能性が示唆されていると言える。
以上、本発明を実施例に基づいて説明した。この実施例はあくまで例示であり、種々の変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
たとえば、上記実施例では、患者である哺乳動物の種類はヒトを用いたが、特にヒトに限定する趣旨ではなく、他の哺乳動物(マウス、ラット、ブタ、ウサギ、ウシ、ヤギ、イヌ、ネコ、サルなど)であってもよいのは言うまでもない。もっとも、実際の医療上の治療のための測定または判定の対象としては、ヒトまたは霊長類であることが好ましい。
また、上記実施例では、分子量として、粘度平均分子量を用いたが、特にヒトに限定する趣旨ではなく、重量平均分子量でも、数平均分子量でも、互いの数値を比較する基準を揃えておけば、あるいは互いに換算可能にしておけば、粘度平均分子量と同様にヒアルロン酸の分子量分布の測定または慢性リウマチ疾患の有無または型の判定に好適に用いうる。
本発明によれば、少量のRA患者血液を用いてHAの血中動態に関する情報を得ることが可能となり、その結果、患者の血液を長期間に亘って適宜採取して、RA病態の進行状況を経時的に調べることが可能となり、RA患者の診断、治療及びRAの発症メカニズムの解明に大きく貢献することができる。
実施例1において作成したクロマトグラムである。 実施例1において作成した検量線である。 実施例1において再構成した分子量分布チャートである。 実施例2において再構成した分子量分布チャートである。 実施例3において再構成した分子量分布チャートである。 実施例4において再構成した分子量分布チャートである。

Claims (7)

  1. 哺乳動物由来の血清中のヒアルロン酸の分子量分布の測定方法であって、
    前記血清を分子量分画する前に、あらかじめタンパク質分解酵素で前処理する工程と、
    前記血清サイズ排除クロマトグラフィーによって粘度平均分子量に基づき分子量分画する工程と、
    前記分子量分画されたヒアルロン酸を含む各画分を減圧乾固により濃縮する工程と、
    前記濃縮された各画分のヒアルロン酸量をヒアルロン酸結合タンパク質を用いて定量する工程と、
    前記定量された各画分のヒアルロン酸量に基づいて、前記血清のヒアルロン酸の分子量分布を算出する工程と、
    を含む、測定方法。
  2. 哺乳動物由来の血清を分析して、前記血清が慢性関節リウマチ疾患を罹患している哺乳動物から採取されたか否か判定するための判定方法であって、
    請求項1に記載の測定方法を用いて前記哺乳動物由来の血清中のヒアルロン酸の分子量分布を測定する工程と、
    前記測定された分子量分布および前記哺乳動物と同種の正常な哺乳動物由来の血清中のヒアルロン酸の分子量分布を比較する工程と、
    前記ヒアルロン酸の分子量分布の比較結果に基づいて、前記血清が慢性関節リウマチ疾患を罹患している哺乳動物から採取されたか否か判定する工程と、
    を含
    前記判定する工程は、前記ヒアルロン酸の分子量分布の比較結果において、分子量5万〜30万の範囲内の第1のピークおよび分子量50万〜200万の範囲内の第2のピークの有無が一致しているか否かに基づいて、前記血清が慢性関節リウマチ疾患を罹患している哺乳動物から採取されたか否か判定する工程を含む、判定方法。
  3. 前記判定する工程は、前記ヒアルロン酸の分子量分布の比較結果において、前記第1のピークおよび前記第2のピークの有無が一致しているか否かに加えて、前記測定された分子量分布における前記第1のピークおよび前記第2のピークの高さの比に基づいて、前記血清が慢性関節リウマチ疾患を罹患している哺乳動物から採取されたか否か判定する工程を含む、請求項記載の判定方法。
  4. 哺乳動物由来の血清を分析して、前記血清が複数の型のうちいずれの型の慢性関節リウマチ疾患を罹患している哺乳動物から採取されたか判定するための判定方法であって、
    請求項1に記載の測定方法を用いて前記哺乳動物由来の血清中のヒアルロン酸の分子量分布を測定する工程と、
    前記測定された分子量分布および前記哺乳動物と同種の前記複数の型の慢性関節リウマチ疾患を罹患している哺乳動物由来の血清中のヒアルロン酸の分子量分布を比較する工程と、
    前記ヒアルロン酸の分子量分布の比較結果に基づいて、前記血清が複数の型のうちいずれの型の慢性関節リウマチ疾患を罹患している哺乳動物から採取されたか判定する工程と、
    を含
    前記判定する工程は、前記ヒアルロン酸の分子量分布の比較結果において、分子量5万〜30万の範囲内の第1のピークおよび分子量50万〜200万の範囲内の第2のピークの有無が一致しているか否かに基づいて、前記血清が複数の型のうちいずれの型の慢性関節リウマチ疾患を罹患している哺乳動物から採取されたか判定する工程を含む、判定方法。
  5. 前記判定する工程は、前記ヒアルロン酸の分子量分布の比較結果において、前記第1のピークおよび前記第2のピークの有無が一致しているか否かに加えて、前記測定された分子量分布における前記第1のピークおよび前記第2のピークの高さの比に基づいて、前記血清が複数の型のうちいずれの型の慢性関節リウマチ疾患を罹患している哺乳動物から採取されたか判定する工程を含む、請求項に記載の判定方法。
  6. 哺乳動物由来の血清を分析して、前記血清が慢性関節リウマチ疾患を罹患している哺乳動物から採取されたか否か判定するための試薬およびカラムを含む実験セットであって、
    タンパク質分解酵素と、
    サイズ排除クロマトグラフィーカラムと、
    ヒアルロン酸結合タンパク質と、
    前記哺乳動物と同種の正常な哺乳動物由来の血清または該血清から得られたヒアルロン酸の分子量分布データと、
    を含み、
    哺乳動物由来の血清が分子量分画する前に、あらかじめ前記タンパク質分解酵素で前処理され、
    前記血清が前記サイズ排除クロマトグラフィーによって分子量分画され、
    減圧乾固により濃縮された各画分のヒアルロン酸量が、前記ヒアルロン酸結合タンパク質によって定量され、
    前記定量された各画分のヒアルロン酸量に基づいて算出された分子量分布および前記哺乳動物と同種の正常な哺乳動物由来の血清中のヒアルロン酸の分子量分布が比較され、
    前記ヒアルロン酸の分子量分布の比較結果において、分子量5万〜30万の範囲内の第1のピークおよび分子量50万〜200万の範囲内の第2のピークの有無が一致しているか否かに基づいて、前記血清が慢性関節リウマチ疾患を罹患している哺乳動物から採取されたか否か判定されることを特徴とする、
    実験セット。
  7. 哺乳動物由来の血清を分析して、前記血清が複数の型のうちいずれの型の慢性関節リウマチ疾患を罹患している哺乳動物から採取されたか判定するための試薬およびカラムを含む実験セットであって、
    タンパク質分解酵素と、
    サイズ排除クロマトグラフィーカラムと、
    ヒアルロン酸結合タンパク質と、
    前記哺乳動物と同種の複数の型の慢性関節リウマチ疾患を罹患している哺乳動物由来の血清または該血清から得られたヒアルロン酸の分子量分布データと、
    を含み、
    哺乳動物由来の血清が分子量分画する前に、あらかじめ前記タンパク質分解酵素で前処理され、
    前記血清が前記サイズ排除クロマトグラフィーによって分子量分画され、
    減圧乾固により濃縮された各画分のヒアルロン酸量が、前記ヒアルロン酸結合タンパク質によって定量され、
    前記定量された各画分のヒアルロン酸量に基づいて算出された、前記血清のヒアルロン酸の分子量分布を算出し、
    前記定量された各画分のヒアルロン酸量に基づいて算出された分子量分布および前記哺乳動物と同種の前記複数の型の慢性関節リウマチ疾患を罹患している哺乳動物由来の血清中のヒアルロン酸の分子量分布が比較され、
    前記ヒアルロン酸の分子量分布の比較結果において、分子量5万〜30万の範囲内の第1のピークおよび分子量50万〜200万の範囲内の第2のピークの有無が一致しているか否かに基づいて、前記血清が複数の型のうちいずれの型の慢性関節リウマチ疾患を罹患している哺乳動物から採取されたか判定されることを特徴とする、
    実験セット。
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