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JP5037419B2 - 複層塗膜の形成方法 - Google Patents

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JP5037419B2 JP2008111302A JP2008111302A JP5037419B2 JP 5037419 B2 JP5037419 B2 JP 5037419B2 JP 2008111302 A JP2008111302 A JP 2008111302A JP 2008111302 A JP2008111302 A JP 2008111302A JP 5037419 B2 JP5037419 B2 JP 5037419B2
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Description

本発明は、複層塗膜の形成方法に関し、特に3コート1ベーク法を用いて自動車車体に中塗り塗膜、ベース塗膜およびクリヤー塗膜からなる複層塗膜を形成する方法に関する。
自動車車体の塗装は、基本的には電着塗膜、中塗り塗膜、およびベース塗膜とクリヤー塗膜とからなる上塗り塗膜を被塗物である鋼板の上に順次積層して行われる。従来、これらの塗膜は、それぞれ塗膜の機能に応じて組成が調整された塗料組成物を塗布し、各塗膜毎に焼き付け硬化させて形成されてきた。複数の塗料を塗り重ねる場合、下地となる層を完全に成膜および平滑化しておかないと、隣接する塗膜層が相互に干渉し、下地層の凹凸が上層に反映されて、複層塗膜の外観が悪化するためである。
しかしながら、作業効率を上げ、特に近年要請が強い省エネルギーを実現するために、自動車車体塗装業界においても、複数の塗料を未硬化の状態で塗り重ね、その後、それらを同時に硬化させる複層塗膜形成方法、例えば、中塗り塗膜、ベース塗膜およびクリヤー塗膜を同時に焼き付け硬化させる工程を包含する3コート1ベーク法などが次第に採用されるようになってきた。
また、塗料を未硬化のまま連続して塗装する3コート1ベーク法などの塗装方法においては、最初に塗装する中塗り塗料の塗装時にタレが生じると塗膜外観が著しく悪化するので、当該分野では中塗り塗料の塗装時のタレを防止する技術が強く求められている。
特開2003−105257号公報(特許文献1)には、カルボキシル基含有水性ポリエステル樹脂とメラミン樹脂とを含む下地隠蔽性および平滑性が良好な水性中塗り塗料が開示されている。しかしながら、特許文献1には、水性中塗り塗料を塗布し、焼き付け硬化させて中塗り塗膜を形成した後、その上に上塗り塗料を塗布した後、加熱硬化することによって複層塗膜を得ることが記載されており、水性中塗り塗料の3コート1ベーク法への適用については全く開示されていない。従って、特許文献1においては、水性中塗り塗料の下地隠蔽性および平滑性については詳細に検討されているが、特許文献1では水性中塗り塗料を塗布後に焼き付け硬化するので、3コート1ベーク法用の水性中塗り塗料の塗装時のタレについては全く検討されていない。
特開2003−251264号公報(特許文献2)には、中塗り塗膜、ベース塗膜およびクリヤー塗膜を同時に加熱硬化させる工程を包含する3コート1ベーク法において、中塗り塗膜とベース塗膜との間の混層を防止し、黄変することなく、優れた外観を有する塗膜を形成することができる複層塗膜形成方法が開示されている。しかし、特許文献2では、中塗り塗料の塗装時のタレは、中塗り塗膜の特定せん断速度における粘度を調節することによって防止しているだけである。
特開2003−251275号公報(特許文献3)には、中塗り塗膜、ベース塗膜およびクリヤー塗膜を同時に加熱硬化させる工程を包含する3コート1ベーク法において、粘度を高めた水性中塗り塗料を用いることにより優れた外観を有する塗膜を形成することができる複層塗膜形成方法が開示されている。なお、特許文献3では、中塗り塗膜を形成する中塗り塗料として、アクリルエマルション樹脂、メラミン樹脂、分散剤顔料分散ペースト及び増粘剤からなる水性中塗り塗料を使用しており、増粘剤として好ましくは特定のウレタン会合型増粘剤を使用して塗料の粘度を高めることによって、塗装時におけるタレの発生を抑制している。
特開2003−251276号公報(特許文献4)には、中塗り塗膜、ベース塗膜およびクリヤー塗膜を同時に加熱硬化させる工程を包含する3コート1ベーク法において、耐チッピング性や耐衝撃性に優れ、優れた外観を有する塗膜を形成することができる複層塗膜形成方法が開示されている。しかし、特許文献4では、水性中塗り塗料の塗装時のタレは、特定の粘性剤を含有させるか、中塗り塗膜の乾燥膜厚を調節することによって防止しているだけである。
国際公開第2007/013558号パンフレット(特許文献5)には、水性メタリックベース塗料の光輝性顔料のフリップフロップ性を改善するために、特定の粘性改良剤を配合することが記載されている。しかし、特許文献5は、水性メタリックベース塗料とその上に塗布するクリヤー塗料との2コート1ベーク塗装方法に関するものであって、3コート1ベーク塗装方法に関するものでない。また、特許文献5には、中塗り塗料に特定の粘性改良剤を添加することは記載されていない。
特開2003−105257号公報 特開2003−251264号公報 特開2003−251275号公報 特開2003−251276号公報 国際公開第2007/013558号パンフレット
本発明は、上記従来の問題を解決するものであり、3コート1ベーク法において、中塗り塗料の粘度だけではなく、中塗り塗料に使用する樹脂の親水性能および疎水性能の割合を制御して、水性中塗り塗料の塗装時のタレを有効に防止し、優れた塗膜外観を有する複層塗膜の提供を目的とする。
本発明者らは、鋭意研究の結果、中塗り塗膜、ベース塗膜およびクリヤー塗膜を同時に焼き付け硬化させる工程を包含する3コート1ベーク法において、中塗り塗膜形成に使用する水性中塗り塗料が特定の水酸基含有アクリル樹脂エマルション、水酸基含有ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、カルボジイミドおよび会合型粘性剤を含み、水酸基含有アクリル樹脂エマルションにスチレン系モノマーを27〜65質量%配合することによって、水性中塗り塗料の塗装時のタレを有意に防止できることを見出した。従って、本発明は以下を提供する。
電着塗膜の上に水性中塗り塗料を塗装して中塗り塗膜を形成し、次に前記中塗り塗膜上に水性ベース塗料を塗装してベース塗膜を形成し、さらに前記ベース塗膜上にクリヤー塗料を塗装してクリヤー塗膜を形成した後、前記中塗り塗膜、ベース塗膜およびクリヤー塗膜を同時に焼付け硬化させて、複層塗膜を形成する方法であって、
前記水性中塗り塗料が、
スチレン系モノマーを27〜65質量%含有し、水トレランスが0.2〜5であり、ヘキサントレランスが5〜25である水酸基含有アクリル樹脂エマルション;
水酸基含有ポリエステル樹脂;
メラミン樹脂;
カルボジイミド;および
会合型粘性剤を含み、
前記会合型粘性剤が、下記式(1)で示されるウレタン化合物(A)および下記式(2)で示されるウレタン化合物(B)を含み、
R−(OA)−O−C(=O)−NH−Y−NH−C(=O)−O−(AO)−R ・・・(1)
R−(OA)−[O−C(=O)−NH−Y−NH−C(=O)−(OA)−O−C(=O)−NH−Y−NH−C(=O)−O−(AO)−R ・・・(2)
(式中、
Rは、それぞれ独立して、炭素数8〜24の炭化水素基であり、
Yは、それぞれ独立して、ジイソシアネ−トからイソシアナト基を除いた反応残基であり、
OAは、それぞれ独立して、炭素数2〜4のオキシアルキレン基であり、
AOは、それぞれ独立して、炭素数2〜4のアルキレンオキシ基であり、
Oは、酸素原子であり、
Cは、炭素原子であり、
Nは、窒素原子であり、
mおよびnは、それぞれ独立して、20〜500の整数であり、
aおよびdは、それぞれ独立して、1〜100の整数であり、
bは、40〜500の整数であり、
cは、1〜5の整数であり、
(b×c)は、150〜2500であり、
複数個のRおよびYは、それぞれ同じでも異なっていてもよく、
前記ウレタン化合物(A)および前記ウレタン化合物(B)のそれぞれにおいて、オキシアルキレン基およびアルキレンオキシ基の合計重量の少なくとも80重量%はオキシエチレン基およびエチレンオキシ基である)
前記水酸基含有アクリル樹脂エマルションと前記会合型粘性剤との配合割合が固形分重量比100/0.1〜100/50である、
複層塗膜の形成方法。
前記水酸基含有アクリル樹脂エマルションと前記会合型粘性剤との配合割合が固形分重量比100/1〜100/10である上記の複層塗膜の形成方法。
前記水酸基含有アクリル樹脂エマルションは、ガラス転移温度(Tg)が−10〜40℃であり、酸価が3〜50mgKOH/gであり、水酸基価が5〜80mgKOH/gであることを特徴とする上記の複層塗膜の形成方法。
前記水性中塗り塗料は、前記水酸基含有ポリエステル樹脂5〜70質量%、前記水酸基含有アクリル樹脂エマルション1〜30質量%、前記メラミン樹脂10〜40質量%、および前記会合型粘性剤0.05〜2質量%を含有することを特徴とする上記の複層塗膜の形成方法。
本発明は、さらに、上記の方法により得られた複層塗膜に関する。
本発明によれば、3コート1ベーク塗装方法に用いる水性中塗り塗料の水酸基含有アクリル樹脂中のスチレン系モノマーの含有量を制御して、アクリル樹脂の親水性能(具体的には、水トレランス)および疎水性能(具体的には、ヘキサントレランス)のバランスを保ち、カルボジイミドや会合型粘性剤を含む水性中塗り塗料の塗装時のタレを有効に防止することができ、優れた塗膜外観を有する複層塗膜を提供する。
本発明を以下に詳細に説明するが、まず、本発明で使用する水性中塗り塗料、水性ベース塗料およびクリヤー塗料をそれぞれ説明し、その後、複層塗膜の形成方法を詳細に説明する。
水性中塗り塗料
本発明の方法で用いる水性中塗り塗料は、水性媒体中に分散または溶解された状態で、水酸基含有アクリル樹脂エマルション、水酸基含有ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、カルボジイミドおよび会合型粘性剤を含有する。この水性中塗り塗料には更に顔料および自動車車体用水性中塗り塗料に通常含まれる添加剤を含有させてよい。
水酸基含有アクリル樹脂エマルション
水酸基含有アクリル樹脂エマルションは、必須モノマーとしてスチレン系モノマーを含み、さらに、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a)、酸基含有エチレン性不飽和モノマー(b)及び水酸基含有エチレン性不飽和モノマー(c)を含むモノマー混合物を乳化重合して得ることができる。尚、モノマー混合物の成分として以下に例示される化合物は、1種又は2種以上を適宜組み合わせて使用してよい。
アクリル樹脂エマルションにスチレン系モノマーを配合することによって、その疎水性効果のために得られる水性中塗り塗料の塗装時のタレを有意に防止することができる。
上記スチレン系モノマーとしては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、α−メチルスチレンダイマー、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン等が挙げられ、なかでも、疎水性、コスト、入手の利便性などの観点からスチレンが特に好ましい。
スチレン系モノマーの含有量は、アクリル樹脂エマルション合成に用いるモノマー全量に対して、27〜65質量%、好ましくは30〜55質量%、より好ましくは32〜50質量%である。スチレン系モノマーの含有量が27質量%未満であると、疎水性効果が得られず、得られる水性中塗り塗料の塗装時にタレが生じる場合がある。また、スチレン系モノマーの含有量が65質量%を超えると、得られる水性中塗り塗料から形成される中塗り塗膜の諸物性が低下する恐れがある。
また、スチレン系モノマーを上記含有量でアクリル樹脂エマルションに配合することによって、アクリル樹脂エマルションの水トレランスを0.2〜5(ml)、好ましくは0.3〜4(ml)、およびヘキサントレランスを5〜25(ml)、好ましくは6〜23(ml)に調節することができる。本明細書中、水トレランスは、親水性の度合いを評価するためのものであり、その値が高いほど親水性が高いことを意味し、ヘキサントレランスは、疎水性の度合いを評価するためのものであり、その値が高いほど疎水性が高いことを意味する。
水トレランスが0.2(ml)未満であると、相溶性が低下し、塗膜内に濁りが生じ、塗膜外観が低下するおそれがある。水トレランスが5(ml)を超えると耐水性が低下する場合もある。従って、水トレランスが上記範囲内であると、水性中塗り塗料の貯蔵安定性が改善され、塗装作業性が向上する。
ヘキサントレランスが5(ml)未満であると、相溶性が低下し、塗膜に濁りを生じ、塗膜外観が低下するおそれがある。また、ヘキサントレランスが25(ml)を超えると、相溶性が低下し、水性中塗り塗料の貯蔵安定性が低下する等の問題がある。
本明細書中、水トレランスは以下のようにして測定される値である。測定温度を20℃とし、測定対象である樹脂0.5gを100mlビーカーに秤量し、アセトン10mlをホールピペットを用いて加え、マグネティックスターラーによって樹脂をアセトンに溶解する。次に、50mlビュレットを用いて脱イオン交換水を上記で調製したアセトン溶液に滴下し、濁りが生じた点の水の滴下量(ml)を水トレランスとする。なお、ヘキサントレランスは、上記水トレランスにおける水をn−ヘキサンに置き換えて測定したヘキサンの滴下量(ml)である。
本発明で使用する水酸基含有アクリル樹脂エマルションは、好ましくは、スチレン系モノマーを27〜65質量%含有し、水トレランスが0.2〜5であり、ヘキサントレランスが5〜25である水酸基含有アクリル樹脂エマルションである。このような水酸基含有アクリル樹脂を使用することによって、得られる水性中塗り塗料の塗装時のタレを有意に防止することができ、塗膜外観が向上する。
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a)は、アクリル樹脂エマルションの主骨格を構成するために使用する。(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a)の具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル等が挙げられる。
上記酸基含有エチレン性不飽和モノマー(b)は、得られるアクリル樹脂エマルションの保存安定性、機械的安定性、凍結に対する安定性等の諸安定性を向上させ、塗膜形成時におけるメラミン樹脂等の硬化剤との硬化反応を促進するために使用する。酸基は、カルボキシル基、スルホン酸基及びリン酸基等から選ばれることが好ましい。特に好ましい酸基は上記諸安定性向上や硬化反応促進機能の観点から、カルボキシル基である。
上記カルボキシル基含有エチレン性不飽和モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、エタクリル酸、プロピルアクリル酸、イソプロピルアクリル酸、イタコン酸、無水マレイン酸及びフマル酸等が挙げられる。スルホン酸基含有エチレン性不飽和モノマーとしては、例えば、p−ビニルベンゼンスルホン酸、p−アクリルアミドプロパンスルホン酸、t−ブチルアクリルアミドスルホン酸等が挙げられる。リン酸基含有エチレン性不飽和モノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレートのリン酸モノエステル、2−ヒドロキシプロピルメタクリレートのリン酸モノエステル等のライトエステルPM(共栄社化学製)等が挙げられる。
上記水酸基含有エチレン性不飽和モノマー(c)は、水酸基に基づく親水性をアクリル樹脂エマルションに付与し、これを塗料として用いた場合における作業性や凍結に対する安定性を増すと共に、メラミン樹脂やイソシアネート系硬化剤との硬化反応性を付与するために使用する。
上記水酸基含有エチレン性不飽和モノマー(c)としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ε−カプロラクトン変性アクリルモノマー等が挙げられる。
上記ε−カプロラクトン変性アクリルモノマーの具体例としては、ダイセル化学工業(株)製の「プラクセルFA−1」、「プラクセルFA−2」、「プラクセルFA−3」、「プラクセルFA−4」、「プラクセルFA−5」、「プラクセルFM−1」、「プラクセルFM−2」、「プラクセルFM−3」、「プラクセルFM−4」及び「プラクセルFM−5」等が挙げられる。
モノマー混合物は、その他の成分として、(メタ)アクリロニトリル及び(メタ)アクリルアミドからなる群から選ばれる少なくとも1種のモノマーを含んでよい。
また、モノマー混合物は、カルボニル基含有エチレン性不飽和モノマー、加水分解重合性シリル基含有モノマー、種々の多官能ビニルモノマー等の架橋性モノマーを含んでよい。その場合、得られるアクリル樹脂エマルションは自己架橋性となる。
乳化重合は、上記モノマー混合物を水性液中で、ラジカル重合開始剤及び乳化剤の存在下で、攪拌下加熱することによって実施することができる。反応温度は例えば30〜100℃程度として、反応時間は例えば1〜10時間程度が好ましく、水と乳化剤を仕込んだ反応容器にモノマー混合物又はモノマープレ乳化液の一括添加又は暫時滴下によって反応温度の調節を行うとよい。
上記ラジカル重合開始剤としては、通常アクリル樹脂の乳化重合で使用される公知の開始剤が使用できる。具体的には、水溶性のフリーラジカル重合開始剤として、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩が水溶液の形で使用される。また、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素などの酸化剤と、亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、ロンガリット、アスコルビン酸などの還元剤とが組み合わされたいわゆるレドックス系開始剤が水溶液の形で使用される。
上記乳化剤としては、炭素数が6以上の炭素原子を有する炭化水素基と、カルボン酸塩、スルホン酸塩又は硫酸塩部分エステルなどの親水性部分とを同一分子中に有するミセル化合物から選ばれるアニオン系又は非イオン系の乳化剤が用いられる。このうちアニオン乳化剤としては、アルキルフェノール類又は高級アルコール類の硫酸半エステルのアルカリ金属塩又はアンモニウム塩;アルキル又はアリルスルホナートのアルカリ金属塩又はアンモニウム塩;ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリオキシエチレンアリルエーテルの硫酸半エステルのアルカリ金属塩又はアンモニウム塩などが挙げられる。また非イオン系の乳化剤としては、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリオキシエチレンアリルエーテルなどが挙げられる。またこれら一般汎用のアニオン系、ノニオン系乳化剤の他に、分子内にラジカル重合性の不飽和二重結合を有する、すなわちアクリル系、メタクリル系、プロペニル系、アリル系、アリルエーテル系、マレイン酸系などの基を有する各種アニオン系、ノニオン系反応性乳化剤なども適宜、単独又は2種以上の組み合わせで使用される。
また、乳化重合の際、メルカプタン系化合物や低級アルコールなどの分子量調節のための助剤(連鎖移動剤)の併用は、乳化重合を進める観点から、また塗膜の円滑かつ均一な形成を促進し基材への接着性を向上させる観点から、好ましい場合も多く、適宜状況に応じて行われる。
また、乳化重合としては、通常の一段連続モノマー均一滴下法、多段モノマーフィード法であるコア・シェル重合法や、重合中にフィードするモノマー組成を連続的に変化させるパワーフィード重合法など、いずれの重合法もとることができる。
このようにして本発明で用いられる水酸基含有アクリル樹脂エマルションが調製される。得られたアクリル樹脂の重量平均分子量は、特に限定されないが、一般的に5万〜100万程度であり、例えば10万〜80万程度である。
上記アクリル樹脂のガラス転移温度(Tg)は−10℃〜40℃、好ましくは−7℃〜35℃、さらに好ましくは−5℃〜30℃の範囲とする。この範囲の樹脂のTgとすることにより、アクリル樹脂エマルションを含む水性中塗り塗料をウェットオンウェット方式において用いた場合に、下塗り塗料及び上塗り塗料との親和性や密着性が良好となり、ウェット状態の上側塗膜との界面でのなじみが良く反転が起こらない。また、最終的に得られる塗膜の適度な柔軟性が得られ、耐チッピング性が高められる。これらの結果、非常に高外観を有する複層塗膜が形成できる。樹脂のTgが−10℃未満では塗膜の機械的強度が不足し、耐チッピング性が弱い。一方、樹脂のTgが40℃を超えると、塗膜が硬くて脆くなるため、耐衝撃性に欠け、耐チッピング性が弱くなる。前記各モノマー成分の種類や配合量を、樹脂のTgが上記範囲となるように選択する。
上記アクリル樹脂の酸価は3〜50mgKOH/g、好ましくは5〜30mgKOH/gの範囲とする。この範囲の樹脂の酸価とすることにより、樹脂エマルションやそれを用いた水性中塗り塗料の保存安定性、機械的安定性、凍結に対する安定性等の諸安定性が向上し、また、塗膜形成時におけるメラミン樹脂等の硬化剤との硬化反応が十分起こり、塗膜の諸強度、耐チッピング性、耐水性が向上する。樹脂の酸価が3mgKOH/g未満では、上記諸安定性が劣り、また、メラミン樹脂等の硬化剤との硬化反応が十分行われず、塗膜の諸強度、耐チッピング性、耐水性が劣る。一方、樹脂の酸価が50mgKOH/gを超えると、樹脂の重合安定性が悪くなったり、上記諸安定性が逆に悪くなったり、得られた塗膜の耐水性が劣るものとなる。前記各モノマー成分の種類や配合量を、樹脂の酸価が上記範囲となるように選択する。前述したように、酸基含有エチレン性不飽和モノマー(b)の内でもカルボキシル基含有モノマーを用いることが重要であり、モノマー(b)の内、カルボキシル基含有モノマーが好ましくは50重量%以上、より好ましくは80重量%以上含まれる。
上記アクリル樹脂の水酸基価は5〜80mgKOH/g、好ましくは10〜70mgKOH/gの範囲とする。この範囲の樹脂の水酸基価とすることにより、樹脂が適度な親水性を有し、樹脂エマルションを含む塗料組成物として用いた場合における作業性や凍結に対する安定性が増すと共に、メラミン樹脂やイソシアネート系硬化剤との硬化反応性も十分である。水酸基価が5mgKOH/g未満では、前記硬化剤との硬化反応が不十分で、塗膜の機械的性質が弱く、耐チッピング性に欠け、耐水性及び耐溶剤性にも劣る。一方、水酸基価が80mgKOH/gを超えると、逆に得られた塗膜の耐水性が低下したり、前記硬化剤との相溶性が悪く、塗膜にひずみが生じ硬化反応が不均一に起こり、その結果、塗膜の諸強度、特に耐チッピング性、耐溶剤性及び耐水性が劣る。前記各モノマー成分の種類や配合量を、樹脂の水酸基価が上記範囲となるように選択する。
得られたアクリル樹脂エマルションに対し、カルボン酸の一部又は全量を中和してアクリル樹脂エマルションの安定性を保つため、塩基性化合物が添加される。これら塩基性化合物としては、通常アンモニア、各種アミン類、アルカリ金属などが用いられ、本発明においても適宜使用される。
水酸基含有ポリエステル樹脂
上記水酸基含有ポリエステル樹脂としては、多価アルコール成分と多塩基酸成分とを縮合してなるオイルフリーポリエステル樹脂、または多価アルコール成分および多塩基酸成分に加えてヒマシ油、脱水ヒマシ油、桐油、サフラワー油、大豆油、アマニ油、トール油、ヤシ油など、およびそれらの脂肪酸のうち1種、または2種以上の混合物である油成分を、上記酸成分およびアルコール成分に加えて、三者を反応させて得られる油変性ポリエステル樹脂などを挙げることができる。また、アクリル樹脂やビニル樹脂をグラフト化したポリエステル樹脂も使用できる。更に、多価アルコール成分と多塩基酸成分とを反応させてなるポリエステル樹脂に、ポリイソシアネート化合物を反応させて得るウレタン変性ポリエステル樹脂も使用することができる。
上記水酸基含有ポリエステル樹脂の数平均分子量(Mn)は、800〜10000、好ましくは1000〜8000である。Mnが800未満であるとポリエステル樹脂を水分散させた時の安定性が低下し、また10000を超えると樹脂の粘度が上がるため、塗料にした場合の固形分濃度が下がり、塗装作業性が低下する。
上記水酸基含有ポリエステル樹脂の水酸基価は、35〜170、好ましくは50〜150である。水酸基価が35未満であると得られる塗膜の硬化性が低下し、また170を超えると塗膜の耐チッピング性が低下する。
上記水酸基含有ポリエステル樹脂は15〜100mgKOH/gの酸価を有することが好ましい。好ましくは20〜80である。酸価が15未満であるとポリエステル樹脂の水分散安定性が低下し、また100を超えると塗膜にした時の耐水性が低下する。
また、上記水酸基含有ポリエステル樹脂のガラス転移温度は、−40〜50℃であることが好ましい。上記ガラス転移温度が−40℃未満である場合、得られる塗膜の硬度が低下する恐れがあり、50℃を超える場合、下地隠蔽性が低下する恐れがある。さらに好ましくは、−40〜10℃である。なお、ガラス転移温度は、示差走査型熱量計(DSC)等によって実測することができる。
上記多価アルコール成分の例としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,9−ノナンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステル、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチルペンタンジオール、水素化ビスフェノールA等のジオール類、およびトリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、グリセリン、ペンタエリスリトール等の三価以上のポリオール成分、並びに、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロールブタン酸、2,2−ジメチロールペンタン酸、2,2−ジメチロールヘキサン酸、2,2−ジメチロールオクタン酸等のヒドロキシカルボン酸成分を挙げることができる。
上記多塩基酸成分の例としては、例えば、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、無水トリメリット酸、テトラブロム無水フタル酸、テトラクロロ無水フタル酸、無水ピロメリット酸等の芳香族多価カルボン酸および酸無水物;ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、1,4−及び1,3−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族多価カルボン酸および無水物;無水マレイン酸、フマル酸、無水コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸等の脂肪族多価カルボン酸および無水物等の多塩基酸成分およびそれらの無水物等を挙げることができる。必要に応じて安息香酸やt−ブチル安息香酸などの一塩基酸を併用してもよい。
ポリエステル樹脂を調製する際には、反応成分として、更に、1価アルコール、カージュラE(商品名:シエル化学製)などのモノエポキサイド化合物、およびラクトン類(β−プロピオラクトン、ジメチルプロピオラクトン、ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン、γ−カプロラクトン、γ−カプリロラクトン、クロトラクトン、δ−バレロラクトン、δ−カプロラクトンなど)を併用してもよい。特にラクトン類は、多価カルボン酸および多価アルコールのポリエステル鎖へ開環付加してそれ自身ポリエステル鎖を形成し、さらには水性中塗り塗料組成物の耐チッピング性を向上するのに役立つ。これらは、全反応成分の合計重量の3〜30%、好ましくは5〜20%、特に7〜15%で含有されてよい。
上記水酸基含有ポリエステル樹脂は、その酸価を調整し、カルボキシル基を塩基性物質で中和(例えば、50%以上)することで容易に水性化可能である。ここで用いられる塩基性物質としては、例えばアンモニア、メチルアミン、エチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどがあり、このうち、ジエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミンなどが好適である。また、上記中和の際の中和率は特に限定されず、例えば、80〜120%である。
メラミン樹脂
メラミン樹脂としては、エマルションとして含まれるアクリル樹脂や水酸基含有ポリエステル樹脂と硬化反応を生じ、水性中塗り塗料中に配合することができるものであれば特に限定されないが、具体的にはイミノ型メラミン樹脂が好ましく、例えば、サイメル211(三井サイテック社製イミノ型メラミン樹脂、商品名)、サイメル327(三井サイテック社製イミノ型メラミン樹脂、商品名)などが挙げられる。
また、アルキルエーテル化したアルキルエーテル化メラミン樹脂が好ましく、メトキシ基及び/又はブトキシ基で置換されたメラミン樹脂がより好ましい。このようなメラミン樹脂としては、メトキシ基を単独で有するものとして、サイメル325、サイメル327、サイメル370、マイコート723;メトキシ基とブトキシ基との両方を有するものとして、サイメル202、サイメル204、サイメル232、サイメル235、サイメル236、サイメル238、サイメル254、サイメル266、サイメル267(何れも商品名、三井サイテック社製);ブトキシ基を単独で有するものとして、マイコート506(商品名、三井サイテック社製)、ユーバン20N60、ユーバン20SE(何れも商品名、三井化学社製)等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
カルボジイミド
カルボジイミド化合物としては、種々の方法で製造したものを使用することができるが、基本的には有機ジイソシアネートの脱二酸化炭素を伴う縮合反応によりイソシアネート末端ポリカルボジイミドを合成して得られたものを挙げることができる。より具体的には、ポリカルボジイミド化合物の製造において、1分子中にイソシアネート基を少なくとも2個含有するポリカルボジイミド化合物と、分子末端に水酸基を有するポリオールとを、上記ポリカルボジイミド化合物のイソシアネート基のモル量が上記ポリオールの水酸基のモル量を上回る比率で反応させる工程と、上記工程で得られた反応生成物に、活性水素及び親水性部分を有する親水化剤を反応させる工程とにより得られた親水化変性カルボジイミド化合物が好ましいものとして挙げることができる。
1分子中にイソシアネート基を少なくとも2個含有するカルボジイミド化合物としては、特に限定されないが、反応性の観点から、両末端にイソシアネート基を有するカルボジイミド化合物であることが好ましい。両末端にイソシアネート基を有するカルボジイミド化合物の製造方法は当業者によってよく知られており、例えば、有機ジイソシアネートの脱二酸化炭素を伴う縮合反応を利用することができる。
会合型粘性剤
本発明の水性中塗り塗料に用いられる会合型粘性剤は、下記式(1)で示されるウレタン化合物(A)および下記式(2)で示されるウレタン化合物(B)を含む。
R−(OA)−O−C(=O)−NH−Y−NH−C(=O)−O−(AO)−R
・・・(1)
R−(OA)−[O−C(=O)−NH−Y−NH−C(=O)−(OA)−O−C(=O)−NH−Y−NH−C(=O)−O−(AO)−R ・・・(2)
[式中、
Rは、それぞれ独立して、炭素数8〜24の炭化水素基であり、
Yは、それぞれ独立して、ジイソシアネ−トからイソシアナト基を除いた反応残基であり、
OAは、それぞれ独立して、炭素数2〜4のオキシアルキレン基であり、
AOは、それぞれ独立して、炭素数2〜4のアルキレンオキシ基であり、
Oは、酸素原子であり、
Cは、炭素原子であり、
Nは、窒素原子であり、
mおよびnは、それぞれ独立して、20〜500の整数であり、
aおよびdは、それぞれ独立して、1〜100の整数であり、
bは、40〜500の整数であり、
cは、1〜5の整数であり、
(b×c)は、150〜2500であり、
複数個のRおよびYは、それぞれ同じでも異なっていてもよく、
前記ウレタン化合物(A)および前記ウレタン化合物(B)のそれぞれにおいて、オキシアルキレン基およびアルキレンオキシ基の合計重量の少なくとも80重量%はオキシエチレン基およびエチレンオキシ基である]
炭素数8〜24の炭化水素基(R)の例としては、直鎖アルキル、例えばn−オクチル、n−ノニル、n−デシル、n−ウンデシル、n−ドデシル、n−トリデシル、n−テトラデシル、n−ペンタデシル、n−ヘキサデシル、n−ヘプタデシル、n−オクタデシル、n−ノナデシル、n−エイコシル、n−ヘンエイコシルおよびn−ドコシル等;分岐アルキル、例えば2−エチルヘキシル、イソデシル、イソトリデシルおよびイソステアリル等;直鎖アルケニル、例えばn−オクテニル、n−デセニル、n−ウンデセニル、n−ドデセニル、n−トリデセニル、n−テトラデセニル、n−ペンタデセニル、n−ヘキサデセニル、n−ヘプタデセニルおよびn−オクタデセニル等;および分岐アルケニル、例えばイソオクテニル、イソデセニル、イソウンデセニル、イソドデセニル、イソトリデセニル、イソテトラデセニル、イソペンタデセニル、イソヘキサデセニル、イソヘプタデセニルおよびイソオクタデセニル等;が挙げられる。これらのうち、仕上がり性の観点等から、直鎖アルキルおよび直鎖アルケニルが好ましく、さらに好ましくは直鎖アルキル、特に好ましくはn−ヘキサデシル、n−ヘプタデシル、n−オクタデシル、n−ノナデシル、n−エイコシル、n−ヘンエイコシルおよびn−ドコシルである。なお、式中のRは、同一であっても異なっていてもよい。
ジイソシアネートからイソシアナト基を除いた反応残基(Y)を構成するジイソシアネートとしては、脂肪族ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネートおよび脂環式ジイソシアネート等が含まれる。なお、式中のYは、同一であっても異なっていてもよい。
脂肪族ジイソシアネートの例としては、炭素数3〜15の脂肪族ジイソシアネート等が使用でき、メチレンジイソシアネート、ジメチレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ヘプタメチレンジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、ノナメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、ビス(イソシアナトプロピル)エーテル、1,1‐ジメチルブタン‐1,4‐ジイソシアネート、3‐メトキシヘキサン‐1,6‐ジイソシアネート、2,2,4‐トリメチルペンタン‐1,5‐ジイソシアネート、3‐ブトキシ‐1,6‐ヘキサンジイソシアネートおよび1,4‐ブチレングリコールビス(イソシアナトプロピル)エーテル等が挙げられる。
芳香族ジイソシアネートとしては、炭素数8〜20の芳香族ジイソシアネート等が使用でき、メタフェニレンジイソシアネート、パラフェニレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、ジメチルベンゼンジイソシアネート、エチルベンゼンジイソシアネート、イソプロピルベンゼンジイソシアネート、ビフェニルジイソシアネート、4,4’−ジイソシアナト−2,2’−ジメチルビフェニル、4,4’−ジイソシアナト−3,3’−ジメトキシビフェニル、1,5−ジイソシアナトナフタレン、4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン−4,4’−ジイソシア
ナト−2,2’−ジメチルジフェニルメタン、4,4’−ジイソシアナト−3,3’−ジメトキシジフェニルメタン、3,3’−ジイソシアナト−4,4’−ジメトキシジフェニルメタン、3,3’−ジイソシアナト−4,4’−ジエトキシジフェニルメタン、4,4’−ジイソシアナト−2,2’−ジメチル−5,5’−ジメトキシジフェニルメタン、メタキシリレンジイソシアネート、パラキシリレンジイソシアネートおよびテトラメチルキシリレンジイソシアネート等が挙げられる。
脂環式ジイソシアネートとしては、炭素数8〜20の脂環式ジイソシアネート等が使用でき、1,3−ジイソシアナトシクロヘキサン、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1−イソシアナト−3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサンおよび4,4’−ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン等が挙げられる。
これらのジイソシアネートのうち、脂肪族ジイソシアネートおよび脂環式ジイソシアネートが好ましく、さらに好ましくは脂肪族ジイソシアネート、特に好ましくはヘキサメチレンジイソシアネートおよびオクタメチレンジイソシアネートである。
炭素数2〜4のオキシアルキレン基(OA)としては、オキシエチレン、オキシプロピレンおよびオキシブチレンなどが挙げられる。これらのオキシアルキレン基は複数の混合でもよい。複数の混合の場合、その結合様式はブロック、ランダムおよびこれらの混合のいずれでもよいが、ブロック、およびブロックとランダムとの混合が好ましく、さらに好ましくはブロックである。
炭素数2〜4のアルキレンオキシ基(AO)としては、エチレンオキシ、プロピレンオキシおよびブチレンオキシなどが挙げられる。これらのアルキレンオキシ基は複数の混合でもよい。複数の混合の場合、その結合様式はブロック、ランダムおよびこれらの混合のいずれでもよいが、ブロック、およびブロックとランダムとの混合が好ましく、さらに好ましくはブロックである。
一般式(1)示されるウレタン化合物(A)および一般式(2)で示されるウレタン化合物(B)のそれぞれには、オキシエチレン基およびエチレンオキシ基が必ず含まれており、その含有量(重量%)は、それぞれの化合物のオキシアルキレン基およびアルキレンオキシ基の合計重量に基づいて、少なくとも80重量%が好ましく、さらに好ましくは85重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。この範囲であると、仕上り性がさらに良好となる。
mおよびnは、それぞれ独立して、20〜500の整数であり、好ましくは30〜300、さらに好ましくは40〜200である。この範囲であると仕上り性がさらに良好となる。
aおよびdは、それぞれ独立して、1〜100の整数であり、好ましくは2〜70、さらに好ましくは3〜40である。この範囲であると、仕上り性がさらに良好となる。
bは、40〜500の整数であり、好ましくは55〜400、さらに好ましくは70〜300である。この範囲であると、仕上り性がさらに良好となる。
cは、1〜5の整数であり、好ましくは1〜4、さらに好ましくは1〜3である。この範囲であると、仕上り性がさらに良好となる。
(b×c)は150〜2500であり、好ましくは200〜2000、さらに好ましくは250〜1500である。この範囲であると、仕上がり性がさらに良好となる。
一般式(1)で示されるウレタン化合物(A)は、通常、(OA)、(AO)等には分布が生じるため、混合物であってもよい。混合物の場合、一般式(1)で示されるウレタン化合物(A)の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは5,000〜20,000であり、更に好ましくは7,000〜15,000である。この範囲であると、仕上り性がさらに良好となる。上記(A)の分子量が5,000未満の場合、得られる塗膜の仕上がり肌が低下し、20,000を超える場合は、得られる塗料を20℃において、No.4フォードカップでの粘度が45秒になるように希釈した場合の塗料固形分が24質量%未満となり、不適当である。
一般式(2)で示されるウレタン化合物(B)は、通常、(OA)、(OA)、(AO)および[O−C(=O)−NH−Y−NH−C(=O)−(OA)]等には分布が生じるため、それぞれ、混合物であってもよい。混合物の場合、一般式(2)で示されるウレタン化合物(B)の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは20,000〜100,000であり、更に好ましくは20,000〜60,000である。この範囲であると、仕上り性がさらに良好となる。上記(B)の分子量が20,000未満の場合、得られる塗膜のフリップフロップ性(FF性)が3.80未満となり、塗膜外観に不具合が発生する。一方、100,000を超える場合は得られる塗料を20℃において、No.4フォードカップでの粘度が45秒になるように希釈した場合の塗料固形分が24質量%未満となり、不適当である。
なお、重量平均分子量(Mw)は、分子量既知のポリスチレンを標準物質としてゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)を用いて測定することができる。例えば、東ソー(株)製(型式HLC‐8120GPC)GPC装置;東ソー製型式SuperH‐4000×2本および同型式SuperH‐3000×1本をそれぞれ直列に接続したカラム、示差屈折検出器、東ソー(株)製データ処理機(形式SC‐8020)を用い、カラム温度を40℃、溶離液をTHF(試薬1級、片山化学工業製)、流速を0.5mL/分、試料濃度を1質量%、試料溶液注入量を10μLとして測定される。
一般式(1)で示されるウレタン化合物(A)および一般式(2)で示されるウレタン化合物(B)は、公知のウレタン化反応を用いて合成することができる(たとえば、特開2000‐303006号公報)。例えば、ウレタン化合物(A)は、ポリエーテルモノオールとジイソシアネートとを2〜10時間反応して合成できる。また、ウレタン化合物(B)は、ポリエーテルモノオール、ポリエーテルジオールおよびジイソシアネートを2〜10時間反応して合成できる。反応により一部副生成物ができる場合があるが、副生成物との混合物のままで使用できる。
ウレタン化合物(A)の含有量(質量%)は、ウレタン化合物(A)およびウレタン化合物(B)の合計質量に基づいて、5〜95であることを要件とするが、10〜80が好ましく、さらに好ましくは20〜70、特に好ましくは25〜65である。この範囲であると、仕上り性がさらに良好となる。
ウレタン化合物(B)の含有量(質量%)は、ウレタン化合物(A)およびウレタン化合物(B)の合計質量に基づいて、5〜95であることを要件とするが、10〜80が好ましく、さらに好ましくは15〜60、特に好ましくは17〜40である。この範囲であると、仕上り性がさらに良好となる。
(A)の配合量が多いと仕上がり肌が不良となり、一方、(B)の配合量が多いと得られる塗料を20℃において、No.4フォードカップでの粘度が45秒になるように希釈した場合の塗料固形分が24質量%未満となり、不適当である。
本発明の水性中塗り塗料に用いられる粘性剤は、ウレタン化合物(A)およびウレタン化合物(B)を均一混合することにより得られる。均一混合の方法は、通常の方法でよく、混合効率の観点等から、70〜150℃程度で混合することが好ましい。
本発明の会合型粘性剤は必要に応じて、有機溶剤および水を含有してもよい。有機溶剤としては、特に限定されないが、例えばイソブチルアルコール、ブチルセロソルブ、ブチルカルビトール、イソプロパノール等が挙げられる。有機溶剤および水の合計含有量は全質量に基づき10〜99質量%である。
本発明の粘性剤の含有率は水性中塗り塗料中の樹脂固形分に対して、0.05〜2.0質量%が好ましく、さらに好ましくは0.5〜1.8質量%である。この範囲であると、水性中塗り塗料の粘性がさらに良好となる。
上記会合型粘性剤としては特に限定されないが、例えば、市販されているもの(以下いずれも商品名)としては、アデカノールUH−420、アデカノールUH−462、アデカノールUH−472、UH−540、アデカノールUH−814N(旭電化工業社製)、プライマルRH−1020(ローム&ハース社製)、クラレポバール(クラレ社製)等を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
会合型粘性剤を配合することにより、水性中塗り塗料の粘度を高くすることができ、水性中塗り塗料を塗装する際に、タレが発生することを抑制することができる。また、中塗り塗膜とベース塗膜との間での混層をより抑制することができる。その結果、粘性剤を含まない場合に比べて、塗装時の塗装作業性が向上し、得られる塗膜の仕上がり外観を優れたものとすることができる。
会合型粘性剤の含有量は、上記水性中塗り塗料の樹脂固形分(水性中塗り塗料に含まれる全ての樹脂の固形分)100重量部に対して、下限0.01重量部、上限20重量部であることが好ましく、下限0.1重量部、上限10重量部であることがより好ましい。0.01重量部未満であると、増粘効果が得られず、塗装時のタレが発生するおそれがあり、20重量部を超えると、外観及び得られる塗膜の諸性能が低下するおそれがある。
なお、本発明で使用する水性中塗り塗料において、水酸基含有アクリル樹脂エマルションと会合型粘性剤との配合割合は、固形分重量比100/0.1〜100/50、好ましくは100/1〜100/10(水酸基含有アクリル樹脂エマルション/前記会合型粘性剤)である。配合割合が上記範囲内であると、水性中塗り塗料の貯蔵安定性に優れ、塗装時の作業性が向上し、塗膜の仕上がり外観が優れるなどの効果が得られる。
その他の樹脂
本発明で用いる水性中塗り塗料は、さらに以下の成分を含むことができる。例えば、追加の樹脂成分、顔料分散ペースト、その他の添加剤成分等である。上記追加の樹脂成分としては特に限定されないが、例えば、ポリエステル樹脂、水溶性アクリル樹脂、ポリエーテル樹脂及びエポキシ樹脂等を挙げることができる。
顔料分散ペースト
顔料分散ペーストは、顔料と顔料分散剤とを少量の水性媒体に予め分散して得られる。顔料分散剤の固形分中には、揮発性の塩基性物質が全く含まれていないか、又は3重量%以下の割合で含まれている。本発明で用いる水性中塗り塗料においては、このような顔料分散剤を用いることによって、水性中塗り塗料から形成される塗膜中の揮発性塩基性物質の量が少なくなり、得られる複層塗膜の黄変を抑えることができる。従って、顔料分散剤の固形分中に揮発性の塩基性物質が3重量%を超えて含まれていると、得られる複層塗膜が黄変し、仕上がり外観が悪くなる傾向にあるため好ましくない。
揮発性の塩基性物質とは、沸点が300℃以下の塩基性物質を意味するものであり、無機及び有機の窒素含有塩基性物質を挙げることができる。無機の塩基性物質としては、例えば、アンモニア等が挙げられる。有機の塩基性物質としては、例えば、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、イソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジメチルドデシルアミン等の炭素数1〜20の直鎖状又は分枝状のアルキル基含有1〜3級アミン;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、2−アミノ−2−メチルプロパノール等の炭素数1〜20の直鎖状又は分枝状ヒドロキシアルキル基含有1〜3級アミン;ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン等の炭素数1〜20の直鎖状又は分枝状のアルキル基及び炭素数1〜20の直鎖状又は分枝状のヒドロキシアルキル基を含有する1〜3級アミン;ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等の炭素数1〜20の置換又は非置換鎖状ポリアミン;モルホリン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン等の炭素数1〜20の置換又は非置換環状モノアミン;ピペラジン、N−メチルピペラジン、N−エチルピペラジン、N,N−ジメチルピペラジン等の炭素数1〜20の置換又は非置換環状ポリアミン等のアミン類を挙げることができる。
本発明で用いる水性中塗り塗料には、上記顔料分散剤以外の成分にも、揮発性の塩基性物質が含まれる場合がある。従って、上記顔料分散剤に含まれる揮発性の塩基性物重量は、より少なく抑える程、より好ましい。すなわち、揮発性の塩基性物質を実質的に含まない顔料分散剤を用いて分散することが好ましい。また、従来一般的に使用されているアミン中和型の顔料分散樹脂を使用しないことが更に好ましい。そして、複層塗膜形成時に、単位面積1mmあたりの揮発性の塩基性物質が7×10−6mmol以下になるように顔料分散剤を用いることが好ましい。
顔料分散剤は、顔料親和部分及び親水性部分を含む構造を有する樹脂である。顔料親和部分及び親水性部分としては、例えば、ノニオン性、カチオン性及びアニオン性の官能基を挙げることができる。顔料分散剤は、1分子中に上記官能基を2種類以上有していてもよい。
ノニオン性官能基としては、例えば、ヒドロキシル基、アミド基、ポリオキシアルキレン基等が挙げられる。カチオン性官能基としては、例えば、アミノ基、イミノ基、ヒドラジノ基等が挙げられる。また、アニオン性官能基としては、例えば、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基等が挙げられる。このような顔料分散剤は、当業者にとってよく知られた方法によって製造することができる。
顔料分散剤としては、その固形分中に揮発性の塩基性物質を含まないか、又は3重量%以下の含有量であるものであれば特に限定されないが、少量の顔料分散剤によって効率的に顔料を分散することができるものが好ましい。例えば、市販されているもの(以下いずれも商品名)を使用することもでき、具体的には、ビックケミー社製のアニオン・ノニオン系分散剤であるDisperbyk 190、Disperbyk 181、Disperbyk 182(高分子共重合物)、Disperbyk 184(高分子共重合物)、EFKA社製のアニオン・ノニオン系分散剤であるEFKAPOLYMER4550、アビシア社製のノニオン系分散剤であるソルスパース27000、アニオン系分散剤であるソルスパース41000、ソルスパース53095等を挙げることができる。
顔料分散剤の数平均分子量は、下限1000、上限10万であることが好ましい。1000未満であると、分散安定性が充分ではない場合があり、10万を超えると、粘度が高すぎて取り扱いが困難となる場合がある。より好ましくは、下限2000、上限5万であり、更に好ましくは、下限4000、上限5万である。
前記顔料分散ペーストは、顔料分散剤と顔料とを公知の方法に従って混合分散することにより得られる。顔料分散ペースト製造時の顔料分散剤の割合は、顔料分散ペーストの固形分に対して、下限1重量%、上限20重量%であることが好ましい。1重量%未満であると、顔料を安定に分散しにくく、20重量%を超えると、塗膜の物性に劣る場合がある。好ましくは、下限5重量%、上限15重量%である。
顔料としては、通常の水性塗料に使用される顔料であれば特に限定されないが、耐候性を向上させ、かつ隠蔽性を確保する点から、着色顔料であることが好ましい。特に二酸化チタンは着色隠蔽性に優れ、しかも安価であることから、より好ましい。
二酸化チタン以外の顔料としては、例えば、アゾキレート系顔料、不溶性アゾ系顔料、縮合アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、インジゴ顔料、ペリノン系顔料、ペリレン系顔料、ジオキサン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリノン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、ベンズイミダゾロン系顔料、金属錯体顔料等の有機系着色顔料;黄鉛、黄色酸化鉄、ベンガラ、カーボンブラック等の無機着色顔料等が挙げられる。これら顔料に、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、クレー、タルク等の体質顔料を併用しても良い。
また顔料として、カーボンブラックと二酸化チタンとを主要顔料とした標準的なグレーの塗料を用いることもできる。他にも、上塗り塗料と明度又は色相等を合わせた塗料や各種の着色顔料を組み合わせた塗料を用いることもできる。
顔料は、水性中塗り塗料中に含まれる全ての樹脂の固形分及び顔料の合計重量に対する顔料の重量の比(PWC;pigment weight content)が、10〜60重量%であることが好ましい。10重量%未満では、隠蔽性が低下するおそれがある。60重量%を超えると、硬化時の粘性増大を招き、フロー性が低下して塗膜外観が低下することがある。
顔料分散剤の含有量は、顔料の重量に対して、下限0.5重量%、上限10重量%であることが好ましい。0.5重量%未満であると、顔料分散剤の配合量が少ないために顔料の分散安定性に劣る場合がある。10重量%を超えると、塗膜物性に劣る場合がある。好ましくは、下限1重量%、上限5重量%である。
その他の添加剤としては、上記成分の他に通常添加される添加剤、例えば、増粘剤、フィラー、紫外線吸収剤;酸化防止剤;消泡剤;表面調整剤;ピンホール防止剤等が挙げられる。これらの配合量は当業者の公知の範囲である。
本発明で使用する水性中塗り塗料は、配合する全樹脂固形分に対して、望ましくは、
前記水酸基含有ポリエステル樹脂5〜70質量%、好ましくは20〜65質量%、より好ましくは40〜60質量%;
前記水酸基含有アクリル樹脂エマルション1〜30質量%、好ましくは2〜25質量%、より好ましくは4〜20質量%;
前記メラミン樹脂10〜40質量%、好ましくは20〜37質量%、より好ましくは25〜35質量%;
前記カルボジイミド化合物3〜25質量%、好ましくは5〜15質量%、より好ましくは7〜12質量%;および
前記会合型粘性剤0.05〜2質量%、好ましくは0.1〜1.5質量%、より好ましくは0.2〜1.2質量%を含有する。各含有量が上記範囲内であると、水性中塗り塗料の塗装時にタレを有意に防止することができる。
本発明で使用する水性中塗り塗料は、上述の水酸基含有アクリル樹脂エマルション、水酸基含有ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、カルボジイミドおよび会合型粘性剤等を混合して調製される。
アクリル樹脂エマルションと水酸基含有ポリエステル樹脂との割合は、固形分重量比1/1〜1/20(アクリル樹脂エマルション/水酸基含有ポリエステル樹脂)とする。この割合が1/1を超えると塗膜の粘度が高くなり、中塗り塗膜の平滑性が低下して、外観が低下する。1/20未満であると吸水率及び溶出率が増加して、外観が低下する傾向がある。
追加の樹脂成分、顔料分散ペーストやその他の添加剤は、適量混合すれば良い。但し、追加の樹脂成分は、水性中塗り塗料用組成物中に含まれる全ての樹脂の固形分を基準として、50重量%以下の割合で配合することが好ましい。50重量%を越えて配合した場合は、塗料中の固形分濃度を高くすることが困難になるため、好ましくない。
これら成分を加える順番は、エマルションに硬化剤を加える前でもよいし、後でも良い。水性中塗り塗料は、水性であれば形態は特に限定されず、例えば、水溶性、水分散型、水性エマルション等の形態であればよい。
水性ベース塗料
本発明の方法で用いる水性ベース塗料は自動車車体用水性ベース塗料として通常使用される塗料組成物であればよい。例えば、水性媒体中に分散または溶解された状態で、塗膜形成樹脂、硬化剤、光輝性顔料、着色顔料や体質顔料等の顔料、各種添加剤等を含むものを挙げることができる。塗膜形成樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、カーボネート樹脂及びエポキシ樹脂等を使用することができる。顔料分散性や作業性の点から、アクリル樹脂及び/又はポリエステル樹脂とメラミン樹脂との組み合わせが好ましい。硬化剤、顔料、各種添加剤も、通常用いられるものを使用することができる。
水性ベース塗料中に含まれる顔料濃度(PWC)は、一般的には、下限0.1重量%、上限50重量%であり、より好ましくは、下限0.5重量%、上限40重量%であり、更に好ましくは、下限1重量%、上限30重量%である。上記顔料濃度が0.1重量%未満であると、顔料による効果が得られず、50重量%を超えると、得られる塗膜の外観が低下するおそれがある。
水性ベース塗料は、中塗り塗料と同様の方法によって調製することができる。また、水性ベース塗料は、水性であれば形態は特に限定されず、例えば、水溶性、水分散型、水性エマルション等の形態であればよい。
クリヤー塗料
本発明の方法で用いるクリヤー塗料は自動車車体用クリヤー塗料として通常使用される塗料組成物であればよい。例えば、媒体中に分散または溶解された状態で、塗膜形成性樹脂、硬化剤及びその他の添加剤を含むものを挙げることができる。塗膜形成性樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等が挙げられる。これらはアミノ樹脂及び/又はイソシアネート樹脂等の硬化剤と組み合わせて用いると良い。透明性又は耐酸エッチング性等の点から、アクリル樹脂及び/若しくはポリエステル樹脂とアミノ樹脂との組み合わせ、又は、カルボン酸・エポキシ硬化系を有するアクリル樹脂及び/若しくはポリエステル樹脂等を用いることが好ましい。
クリヤー塗料の塗料形態としては、有機溶剤型、水性型(水溶性、水分散性、エマルション)、非水分散型、粉体型のいずれでもよく、また必要により、硬化触媒、表面調整剤等を含有させても良い。
複層塗膜の形成方法
本発明の複層塗膜の形成方法では、まず、電着塗膜が形成された被塗物を提供する。電着塗膜は被塗物に対して電着塗料を塗装し、焼き付け硬化して形成する。被塗物は、カチオン電着塗装可能な金属製品であれば特に制限されない。例えば、鉄、銅、アルミニウム、スズ、亜鉛及びこれらの金属を含む合金等を挙げることができる。
電着塗料は、特に限定されるものではなく公知のカチオン電着塗料やアニオン電着塗料を使用することができる。また、電着塗装及び焼き付けは、自動車車体を電着塗装するのに通常用いられる方法及び条件で行なえばよい。
次いで、電着塗膜の上に水性中塗り塗料を塗布して中塗り塗膜を形成する。中塗り塗料は、例えば、通称「リアクトガン」と言われるエアー静電スプレー、通称「マイクロ・マイクロベル(μμベル)」、「マイクロベル(μベル)」、「メタリックベル(メタベル)」等と言われる回転霧化式の静電塗装機等を用い、スプレーして塗布することができる。
塗布量は、硬化塗膜の膜厚が10〜40μm、好ましくは15〜30μmになるように調節する。膜厚が10μm未満であると得られる塗膜の外観及び耐チッピング性が低下するおそれがあり、40μmを越えると塗装時のタレや焼付け硬化時のピンホール等の不具合が起こることがある。
この中塗り塗膜は、水性ベース塗料を塗布する前に、加熱または送風することによって予備乾燥(プレヒート)させることが好ましい。その理由は、乾燥が不充分な場合、塗膜中に残存した水が複層塗膜を焼き付ける工程で突沸を起こし、ワキを発生しやすくなるからである。また中塗り上にベースを塗装した際にベースと混ざりやすくなり外観が低下する可能性があるからである。
ついで、中塗り塗膜を硬化させないで中塗り塗膜の上に水性ベース塗料およびクリヤー塗料を、ウェットオンウェットで順次塗布してベース塗膜およびクリヤー塗膜を形成する。ここで、ウェットオンウェット塗布とは、複数の塗膜を硬化させることなく、予備乾燥(プレヒート)程度で塗り重ねることをいう。
水性ベース塗料は、通常、塗膜の硬化後の膜厚が10〜30μmとなるように塗布量が調節される。硬化後の膜厚が10μm未満である場合、下地の隠蔽が不充分になったり、色ムラが発生するおそれがあり、また、30μmを超える場合、塗装時にタレや、加熱硬化時にピンホールが発生したりするおそれがある。
クリヤー塗料は、通常、塗膜の乾燥硬化後の膜厚が10〜70μmとなるように塗布量が調節される。硬化後の膜厚が10μm未満であると複層塗膜のつや感などの外観が低下し、70μmを越えると鮮映性が低下したり、塗装時にムラ、流れ等の不具合が起こったりする。
次いで、中塗り塗膜、ベース塗膜およびクリヤー塗膜を同時に焼き付け硬化させる。焼き付けは、通常110〜180℃、好ましくは120〜160℃の温度に加熱して行われる。これにより、高い架橋度の硬化塗膜を得ることができる。加熱温度が110℃未満であると、硬化が不充分になる傾向があり、180℃を超えると、得られる塗膜が固く脆くなるおそれがある。加熱する時間は、上記温度に応じて適宜設定することができるが、例えば、温度が120〜160℃である場合、10〜60分間である。
以下、本発明について実施例を掲げて更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。また実施例中、「部」は特に断りのない限り「重量部」を意味する。
水性中塗り塗料
製造例1:水酸基含有アクリル樹脂エマルションの調製
攪拌機、温度計、滴下ロート、還流冷却器及び窒素導入管などを備えた通常のアクリル系樹脂エマルション製造用の反応容器に、水445部及びニューコール293(日本乳化剤(株)製)5部を仕込み、攪拌しながら75℃に昇温した。表1または2に示すモノマー混合物24.6部、水240部及びニューコール293(日本乳化剤(株)製)30部の混合物をホモジナイザーを用いて乳化し、そのモノマープレ乳化液を上記反応容器中に3時間にわたって攪拌しながら滴下した。モノマープレ乳化液の滴下と併行して、重合開始剤としてAPS(過硫酸アンモニウム)1部を水50部に溶解した水溶液を、上記反応容器中に上記モノマープレ乳化液の滴下終了時まで均等に滴下した。モノマープレ乳化液の滴下終了後、さらに80℃で1時間反応を継続し、その後、冷却した。冷却後、ジメチルアミノエタノール2部を水20部に溶解した水溶液を投入し、不揮発分40.6重量%の水酸基含有アクリル樹脂エマルションを得た(EmA〜EmJ)。30%ジメチルアミノエタノール水溶液を用いてアクリル樹脂エマルションのpHを7.2に調整した。
Figure 0005037419
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MAA:メタクリル酸(日本触媒社製、メタクリル酸(商品名))
HEA:アクリル酸2−ヒドロキシエチル(共栄社化学社製、ライトエステル HOA(商品名))
St:スチレン(三菱化学社製、スチレンモノマー(商品名))
NBA:アクリル酸−n−ブチル(東亜合成社製、アクリル酸n−ブチル(商品名))
EA:アクリル酸エチル(東亜合成社製、アクリル酸エチル(商品名))
DC−1(商品名):三菱化学社製、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルのメチルエーテル化物)
EHA:アクリル酸2−エチルヘキシル(東亜合成社製、アクリル酸2−エチルヘキシル(商品名))
製造例1で調製したアクリル樹脂エマルション(EmA〜EmF)におけるスチレン含量、水トレランス、ヘキサントレランス、ガラス転移温度(Tg)、水酸基価(OHV)、酸価(AV)を以下の表3および4に示す。
Figure 0005037419
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スチレン含量(質量%):製造例1で調製したアクリル樹脂エマルションの全固形分質量に対するスチレンの質量を百分率で表す(質量%)。
水トレランス(ml):製造例1で調製したアクリル樹脂エマルションのアクリル樹脂サンプル0.5gをビーカー内で秤量し、アセトン(10ml)を加えてアセトン溶液を調製する。アセトン溶液が濁るまでアセトン溶液に水を滴下し、溶液が濁った点での水の滴定量(ml)を水トレランスとする。
ヘキサントレランス(ml):製造例1で調製したアクリル樹脂エマルションのアクリル樹脂サンプル0.5gをビーカー内で秤量し、アセトン(10ml)を加えてアセトン溶液を調製する。アセトン溶液が濁るまでヘキサンを滴下し、溶液が濁った点でのヘキサンの滴定量(ml)をヘキサントレランスとする。
上記水酸基含有アクリル樹脂エマルションのエマルション樹脂のガラス転移温度(Tg)、水酸基価(OHV)および酸価(AV)は、上記エマルション樹脂を実測して求めることもできるが、上記α,β−エチレン性不飽和モノマー混合物の配合量から計算によって求めることもできる。なお、上記アクリル樹脂エマルションの酸価は、樹脂(固形分)1g中に含まれる酸性成分を0.1Nの水酸化カリウム(KOH)で中和するのに要した水酸化カリウムの量(mg)で表した実測値であり、水酸基価およびガラス転移温度は、合成に使用した各種不飽和モノマーの配合量から計算によって求めた値である。
製造例2:水酸基含有ポリエステル樹脂の調製
反応器にイソフタル酸25.6部、無水フタル酸22.8部、アジピン酸5.6部、トリメチロールプロパン19.3部、ネオペンチルグリコール26.7部、ε−カプロラクトン17.5部、ジブチルスズオキサイド0.1部を加え、混合撹拌しながら170℃まで昇温した。その後3時間かけ220℃まで昇温しつつ、酸価8となるまで縮合反応により生成する水を除去した。次いで、無水トリメリット酸7.9部を加え、150℃で1時間反応させ、酸価が40のポリエステル樹脂を得た。さらに、100℃まで冷却後ブチルセロソルブ11.2部を加え均一になるまで撹拌し、60℃まで冷却後、イオン交換水98.8部、ジメチルエタノールアミン5.9部を加え、固形分50重量%、固形分酸価40、水酸基価110、数平均分子量2870、ガラス転移温度(Tg)−3℃の水酸基含有ポリエステル樹脂を得た。上記水酸基含有ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、セイコーインスツル(SII)社製の示差走査熱量計(DSC220C)を用いて測定した[測定条件:試料量10mg、上昇速度10℃/分、測定温度−20〜100℃]。
製造例3:カルボジイミド化合物の調製
4,4−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート3,930部を、カルボジイミド化触媒である3−メチル−1―フェニル−2−ホスホレン−1−オキシド79部と共に、180℃で16時間反応させ、1分子にカルボジイミド基を4個有し、両末端にイソシアネート基を有するカルボジイミド化合物を得た。ここに、オキシエチレン基の繰り返し単位が平均9個であるポリエチレングリコールモノメチルエーテル1,296部及びジブチル錫ジラウレート2部を加え、90℃で2時間加熱して、末端がイソシアネート基及び親水性基であるカルボジイミド化合物を得た。次に、グリセリンの3つの水酸基に、OR基に相当するプロピレンオキサイドを平均で16.7モルずつ付加した構造を有するGP−3000(三洋化成社製)3000部を加え、90℃で、6時間反応させた。反応物は、IRによってイソシアネート基が消失していることが確認された。ここに脱イオン水18,800部を加えて撹拌し、樹脂固形分30質量%のカルボジイミド化合物の水分散体を得た。
製造例4:顔料分散ペーストの調製
市販分散剤「Disperbyk 190」(ビックケミー社製アニオン系・ノニオン分散剤、商品名)4.5部、消泡剤「BYK−011」(ビックケミー社製消泡剤)0.5部、イオン交換水22.9部、ルチル型二酸化チタン72.1部を予備混合した後、ペイントコンディショナー中でガラスビーズ媒体を加え、室温で粒度5μm以下となるまで混合分散し、顔料分散ペーストを得た。
製造例5:水性中塗り塗料の調製
製造例1で調製した水酸基含有アクリル樹脂エマルション(EmA)24.6部、製造例2で調製した水酸基含有ポリエステル樹脂99.9部、硬化剤としてサイメル211(三井サイテック社製イミノ型メラミン樹脂、商品名)37.5部、製造例3で調製したカルボジイミド化合物33.3部、および製造例4で調製した顔料分散ペースト139部を混合した後、アデカノールUH−814N(ウレタン会合型粘性剤、有効成分30%、旭電化工業社製、商品名)3.33部を混合攪拌し、水性中塗り塗料を得た。
実施例1:複層塗膜の形成
リン酸亜鉛処理したダル鋼板に、パワーニクス110(日本ペイント社製カチオン電着塗料、商品名)を、乾燥塗膜が20μmとなるように電着塗装し、160℃で30分間の加熱硬化後冷却して、鋼板基板を準備した。
得られた基板に、製造例5で調製した水性中塗り塗料をエアースプレー塗装にて20μm塗装し、80℃で5分プレヒートを行った後、アクアレックスAR−2000シルバーメタリック(日本ペイント社製水性メタリックベース塗料、商品名)をエアースプレー塗装にて10μm塗装し、80℃で3分プレヒートを行った。更に、その塗板にクリヤー塗料として、マックフロー O−1800W−2クリヤー(日本ペイント社製酸エポキシ硬化型クリヤー塗料、商品名)をエアースプレー塗装にて35μm塗装した後、140℃で30分間の加熱硬化を行い、試験片を得た。
加熱硬化後に得られた複層塗膜の仕上がり外観を以下の評価基準に従って目視評価した。結果を以下の表3に示す。なお、上記水性中塗り塗料、水性ベース塗料およびクリヤー塗料は、下記条件で希釈し、塗装に用いた。
水性中塗り塗料
シンナー:イオン交換水
40秒/NO.4フォードカップ/20℃
塗料固形分は、54重量%であった。
水性ベース塗料
シンナー:イオン交換水
45秒/NO.4フォードカップ/20℃
クリヤー塗料
シンナー:EEP(エトキシエチルプロピオネート)/S−150(エクソン社製芳香族系炭化水素溶剤、商品名)=1/1(重量比)の混合溶剤
30秒/NO.4フォードカップ/20℃
実施例2〜5および比較例1〜6
以下の表5〜7に示す成分および量を用いて水性中塗り塗料を調製し、実施例1と同様にして複層塗膜を形成した(実施例2〜5および比較例1〜10)。評価結果を以下の表5〜7に示す。
Figure 0005037419
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C−211:サイメル211(商品名)(三井サイテック社製イミノ型メラミン樹脂)
粘性剤A:アデカノールUH−814N(商品名)(旭電化工業社製ウレタン会合型粘性剤、有効成分30%)
粘性剤B:シックナーSN−1(商品名)(サンノプコ製アルカリ膨潤型粘性剤)
NV:水性中塗り塗料の全重量に対する不揮発性成分の重量を百分率で表す(重量%)
TI値:B型粘度計(東機産業製、VISCOMETER TVB−10(商品名))で測定した6rpmでの粘度と60rpmでの粘度との比(6rpm/60rpm)
*水性中塗り塗料として不安定となり、塗料化できなかったことを示す。
タレの評価
直径10mmの穴が空いている塗板に水性中塗り塗料を以下のロボット塗装条件にて塗装し、垂直でセッティングし、垂直のまま塗膜を加熱硬化させた。穴の縁部(垂直下側)から形成された塗料のタレの長さ(タレ長)を計測した。
ロボット塗装の条件
温度:22℃
湿度:78%
機種:ABBカートリッジベル
線速:600mm/s
回転数:25000rpm
シェービングエアー圧:1.5kg/cm
印過電圧:−90KV
膜厚:35μm
セッティング時間:2分間
プレヒート:80℃で5分間
加熱硬化:140℃で30分間
タレの評価基準
◎:タレ長0〜3mm
○:タレ長4〜5mm
△:タレ長6〜8mm
×:タレ長9mm以上
貯蔵安定性の評価
希釈塗料を40℃で10日間静置し、沈降物を目視観察した。
○:沈降物なし
△:撹拌すると溶解するソフトな沈降物あり
×:撹拌しても溶解しないハードな沈降物あり
本発明に従って調製した水性中塗り塗料を3コート1ベーク法において使用することによって、実施例1〜5に示すように、タレを有意に抑制することができ、優れた塗膜外観を有する複層塗膜を提供することができる。また、水性中塗り塗料に優れた貯蔵安定性を提供することもできた。
対して、比較例1〜10では、いずれにおいても、タレを有意に抑制することは不可能であった。
詳細には、比較例1ではアクリル樹脂エマルション(EmC)を使用しており、アクリル樹脂エマルション(EmC)におけるスチレン系モノマーの含有量が本願発明の範囲外であるためにタレを有意に抑制することができない。
比較例2ではアクリル樹脂エマルション(EmE)を使用しており、アクリル樹脂エマルション(EmE)におけるスチレン系モノマーの含有量が本願発明の範囲外であるためにタレを全く抑制することができない。さらに、貯蔵安定性も低下する。
比較例3では実施例1と同様にアクリル樹脂エマルション(EmA)を使用しているが、その使用量が低いためにタレが悪化した。
比較例4でも実施例1と同様にアクリル樹脂エマルション(EmA)を使用しているが、使用する粘性剤Aの使用量が低いためにタレが悪化した。
比較例5では実施例1と同様にアクリル樹脂エマルション(EmA)を使用しているが、粘性剤B(会合型ではなくアルカリ膨潤型の粘性剤)を使用しているためにタレおよび貯蔵安定性が悪化した。
比較例6ではアクリル樹脂エマルション(EmF)を使用しており、アクリル樹脂エマルション(EmF)におけるスチレン系モノマーの含有量が70質量%であり、また、ヘキサントレランスが40(ml)であり、本願発明で規定する範囲を逸脱するため、水性中塗り塗料として不安定となり、塗料として成立しなかった。
比較例7ではアクリル樹脂エマルション(EmG:水トレランス0.1)を使用しており、比較例8ではアクリル樹脂エマルション(EmH:水トレランス6)を使用しており、水トレランス値が本願発明の範囲外であるために水性中塗り塗料を形成することができない(比較例7)、タレおよび貯蔵安定性が著しく悪化することが分かった(比較例8)。
比較例9ではアクリル樹脂エマルション(EmI:ヘキサントレランス4)を使用しており、比較例10ではアクリル樹脂エマルション(EmJ:ヘキサントレランス30)を使用しており、ヘキサントレランス値が本願発明の範囲外であるためにタレおよび貯蔵安定性が著しく悪化する(比較例9)、水性中塗り塗料を形成することができないことが分かった(比較例10)。
本発明によると、3コート1ベーク法において、中塗り塗膜形成に使用する水性中塗り塗料が特定の水酸基含有アクリル樹脂エマルション、水酸基含有ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、カルボジイミドおよび会合型粘性剤を含み、水酸基含有アクリル樹脂エマルションにスチレン系モノマーを27〜65質量%配合することによって、水性中塗り塗料の塗装時のタレを防止し、なおかつ、優れた塗膜外観を有する複層塗膜を提供することから、本発明は自動車車体の塗装に特に適している。また、本発明では3コート1ベーク法を使用するので塗装工程短縮、コスト削減および境負荷低減が可能となった。

Claims (5)

  1. 電着塗膜の上に水性中塗り塗料を塗装して中塗り塗膜を形成し、次に前記中塗り塗膜上に水性ベース塗料を塗装してベース塗膜を形成し、さらに前記ベース塗膜上にクリヤー塗料を塗装してクリヤー塗膜を形成した後、前記中塗り塗膜、ベース塗膜およびクリヤー塗膜を同時に焼付け硬化させて、複層塗膜を形成する方法であって、
    前記水性中塗り塗料が、
    スチレン系モノマーを27〜65質量%含有し、水トレランスが0.2〜5であり、ヘキサントレランスが5〜25である水酸基含有アクリル樹脂エマルション;
    水酸基含有ポリエステル樹脂;
    メラミン樹脂;
    カルボジイミド;および
    会合型粘性剤を含み、
    前記会合型粘性剤が、下記式(1)で示されるウレタン化合物(A)および下記式(2)で示されるウレタン化合物(B)を含み、
    R−(OA)−O−C(=O)−NH−Y−NH−C(=O)−O−(AO)−R ・・・(1)
    R−(OA)−[O−C(=O)−NH−Y−NH−C(=O)−(OA)−O−C(=O)−NH−Y−NH−C(=O)−O−(AO)−R ・・・(2)
    (式中、
    Rは、それぞれ独立して、炭素数8〜24の炭化水素基であり、
    Yは、それぞれ独立して、ジイソシアネ−トからイソシアナト基を除いた反応残基であり、
    OAは、それぞれ独立して、炭素数2〜4のオキシアルキレン基であり、
    AOは、それぞれ独立して、炭素数2〜4のアルキレンオキシ基であり、
    Oは、酸素原子であり、
    Cは、炭素原子であり、
    Nは、窒素原子であり、
    mおよびnは、それぞれ独立して、20〜500の整数であり、
    aおよびdは、それぞれ独立して、1〜100の整数であり、
    bは、40〜500の整数であり、
    cは、1〜5の整数であり、
    (b×c)は、150〜2500であり、
    複数個のRおよびYは、それぞれ同じでも異なっていてもよく、
    前記ウレタン化合物(A)および前記ウレタン化合物(B)のそれぞれにおいて、オキシアルキレン基およびアルキレンオキシ基の合計重量の少なくとも80重量%はオキシエチレン基およびエチレンオキシ基である)
    前記水酸基含有アクリル樹脂エマルションと前記会合型粘性剤との配合割合が固形分重量比100/0.1〜100/50である、
    複層塗膜の形成方法。
  2. 前記水酸基含有アクリル樹脂エマルションと前記会合型粘性剤との配合割合が固形分重量比100/1〜100/10である請求項1に記載の複層塗膜の形成方法。
  3. 前記水酸基含有アクリル樹脂エマルションは、ガラス転移温度(Tg)が−10〜40℃であり、酸価が3〜50mgKOH/gであり、水酸基価が5〜80mgKOH/gであることを特徴とする請求項1または2に記載の複層塗膜の形成方法。
  4. 前記水性中塗り塗料は、前記水酸基含有ポリエステル樹脂5〜70質量%、前記水酸基含有アクリル樹脂エマルション1〜30質量%、前記メラミン樹脂10〜40質量%、および前記会合型粘性剤0.05〜2質量%を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の複層塗膜の形成方法。
  5. 前記請求項1〜4のいずれかに記載の方法により得られた複層塗膜。
JP2008111302A 2008-04-22 2008-04-22 複層塗膜の形成方法 Active JP5037419B2 (ja)

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