JP5033848B2 - 船舶用排気ガス浄化装置、および排気ガス浄化方法 - Google Patents
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Description
燃料である重質油には、炭素鎖長が長いHC成分や、芳香族成分の含有量が多いことから、軽質油に比べて着火性、燃焼性に劣り、また、硫黄成分も多いことから、燃焼後の排気ガス中には多量の有害物質が含まれることになる。
排気ガスに微粒子成分が多量に含まれる場合、それを燃焼し除去するために加熱処理を頻繁に繰り返す事になる。しかし、頻繁に加熱処理するとフィルターが熔解する恐れが生じ、また、頻繁に燃料を噴射することは燃費の悪化を引き起こす。
また、硫黄成分を多量に含む排気ガスには、微粒子成分としてサルフェートが含まれるので、これがフィルターに堆積し、フィルター再生時には、このサルフェートが燃焼してSOxとなって、新たに大気汚染の原因物質を排出してしまう。
4NO+4NH3+O2→4N2+6H2O
2NO2+4NH3+O2→3N2+6H2O
NO+NO2+2NH3→2N2+3H2O
このように、アンモニアを還元成分とするSCR法(NH3−SCR法)では、触媒(NH3−SCR触媒)が使用され、アンモニア源として尿素を使用する場合はUrea−SCR触媒とも言われている。なお、本発明では、特にことわりのない限り、SCR法と言った場合、これら、Urea(尿素)や、NH3を還元成分としたSCR法のことをさし、SCR触媒といった場合も同様とする。
しかし、ゼオライトは、排気ガス中の硫黄成分で活性が低下することがある。そのため、シリカ/アルミナ比の大きなゼオライトの使用が望ましい(特許文献4、特許文献5)。ところが、重質油を燃焼させたときの多量のSOxを含む排気ガスに対しては、このようなゼオライトでも触媒活性の維持が困難な場合がある。
ところが、近年、地球環境問題がクローズアップされ、船舶においても排気ガス成分の規制がより強化されることになった。そのため、硫黄成分を多量に含む燃料を使用する船舶に対しても効果的な排気ガス浄化技術が求められている。
また、本発明の第3の発明によれば、第1の発明において、フロースルー型選択還元触媒(B)が、還元活性成分として、バナジウム、タングステン、モリブデン、ニオブ、又はチタンから選ばれる一種以上の酸化物を含むことを特徴とする船舶用排気ガス浄化装置が提供される。
また、本発明の第4の発明によれば、第1の発明において、微粒子排出手段(E)で用いられる水が、海水、河川水、又は湖水から選ばれるいずれかであることを特徴とする船舶用排気ガス浄化装置が提供される。
また、SCR触媒、集塵装置にフロースルー構造を採用するので、多量に微粒子成分を含む排気ガスに対しても、装置の浄化能力の低下を招くことなく、高い浄化性能を発揮し続けることができる。
また、SCR触媒の主要な成分としてバナジウム、タングステン、モリブデン、ニオブ、チタンの少なくとも一種を含む酸化物を使用すれば、本発明の船舶用排気ガス浄化装置でSOx濃度の高い排気ガスを処理しても、優れた選択還元性能を発揮することができる。
本発明の船舶用排気ガス浄化装置は、図2に示すように、重質油を燃料とする船舶用ディーゼル機関2から排出される船舶用排気ガス浄化装置であって、窒素酸化物を浄化する還元成分を供給する還元成分噴霧手段と、前記還元成分と排気ガスを接触させ窒素酸化物を還元するフロースルー型選択還元触媒6と、排気ガス中の微粒子成分を吸着する静電吸着式フロースルー型集塵装置7と、集塵された微粒子成分に少なくとも衝撃または振動を作用させる微粒子除去手段8と、微粒子排出手段(水性媒体接触手段)11を含み、静電吸着式フロースルー型集塵装置7が、排気ガス流路3中のフロースルー型選択還元触媒6の下流に配置されている。静電吸着式フロースルー型集塵装置7の後段には、分離された微粒子成分を水と接触させてから排出するための微粒子排出手段が配置される。また、微粒子排出手段の後段には、更に微粒子回収手段を別途設けることができる。
本発明は、燃料として重質油を使用した船舶用ディーゼル機関から排出される排気ガスの浄化に適用される。船舶用ディーゼル機関は、図1に、船舶内の電気や動力を賄う補機S、推進用のスクリューPを駆動する主機Mが示すように、船舶に二基以上搭載されることがある。
本発明の船舶用排気ガス浄化装置は、補機S、主機Mのどちらにも使用可能であるが、小型化が容易な構造であることから、搭載スペースに制限を受けやすい補機Sにおける排気ガスの浄化に適している。
図5に示すディーゼル自動車の排気ガス浄化システムでは、排気ガスの流路に還元剤を噴霧し、選択還元触媒(SCR)と接触させた後、フィルターで微粒子成分を除去している。重質油を使用した船舶用ディーゼル機関では、このようなディーゼル自動車の排気ガス浄化システムをそのまま適用することが難しい。排気ガスに含まれる膨大な粒子状物質を濾過すると、フィルターがすぐに目詰まりを起こして機能しなくなり、微粒子成分の除去が出来なくなる他、背圧の上昇を招きディーゼル機関の出力低下を招くためである。また、堆積した微粒子状物質を除去してフィルターを再生するためには、微粒子状物質を除去する必要があるが、粒子状物質の量が膨大であるために、巨大なフィルターを設置したり、燃料噴霧による燃焼再生やフィルターを頻繁に交換する必要があり、現実的な手段とはいえない。
本発明において還元成分は、ガソリン、軽油などの炭化水素成分の他、アンモニア水溶液や尿素水溶液等が使用できる。アンモニア水溶液や尿素水溶液によれば、効率的にNOxを浄化でき、特に尿素水溶液はその取り扱いの容易さ、安全性の高さ、インフラの普及により、自動車排気ガス中のNOx成分を浄化するSCR法の還元成分として主流になりつつある。以下、アンモニア水溶液や尿素水溶液を総称してアンモニア成分ということがある。
選択還元触媒に改質成分を含ませる場合、図4(a)のように、改質成分をハニカム構造体にコートした選択還元触媒とは別に排気ガス流れの上流側に偏って被覆したり、選択還元触媒と一体化しても良く、図4(b)のように選択還元触媒の表面部に偏って被覆させてもよい。分解成分を選択還元触媒の表面部のみに含ませる場合、図4(c)のように排気ガス流れの選択還元触媒の上流側に被覆しても良い。
すなわち、前述のとおり、燃料として重質油を使用する場合には排気ガス中にSOx等多量の硫黄成分が含まれることになる。一般に、内燃機関から排出される排気ガスの還元成分が炭化水素であれば、炭化水素源として燃料を使用することが多い。しかし、炭化水素の改質に使用できる分解成分としては、ゼオライトや白金、パラジウムが一般的である。しかし、これらは硫黄成分により劣化されやすいので改質性能が低下する傾向があり、硫黄成分を多く含む重質油に対しては充分な改質が出来ない場合がある。
これに対し、尿素の改質成分には、タングステン、モリブデン、ニオブ、バナジウム、チタンを含む酸化物が使用される。このような酸化物は、ゼオライトや白金、パラジウムに比べると、硫黄被毒による活性低下の程度が小さいためである(特開2001−300309、[0005])。
本発明に使用される選択還元触媒は、還元成分が混合された排気ガス中の窒素酸化物を選択的に還元する機能を有するものであり、燃料である重質油に由来する硫黄成分に対する耐被毒性能に優れる触媒であれば特に限定されないが、アンモニア成分を還元成分としたSCR触媒が好ましい。
このようにSARの大きなゼオライトを使用すると、例えば、特開平7−96194に開示されるように耐硫黄被毒性が向上する。その理由は、アルミナは硫黄成分との良好な反応性を示すこと(「触媒利用技術集成」33頁、編集:「触媒利用技術集成」編集委員会、発売元:株式会社大学図書)、ゼオライトのSARが小さいとアルミナの量が多くなることから、ゼオライトとして硫黄被毒を起こしやすくなるためである。従って、SARが大きなゼオライトは、アルミナの量が相対的に少なくなり、被毒し難くなり、活性の低下が抑制されるのであろう。
このようなゼオライトの種類は、特に限定されないが、例えば、モルデナイト、フェリエライト、ゼオライトβ、ZSM−5、ZSM−8、ZSM−11、ZSM−12、ZSM−20、ZSM−22、ZSM−35、ZSM−57、チャバザイト等が使用できる。また、アルミナ比率の大きなゼオライトY、ゼオライトL等のゼオライトを脱アルミニウム化したものを使用してもよい。また、SAPO(silicoaluminophosphate)などのモルキュラーシーブ(molecular sieve)を使用してもよい。
ゼオライトには、カチオンでイオン交換可能なカチオンサイトがあるが、このようなイオン交換サイトは、La、Ceなどの希土類元素、Fe、Cu、Sn、Gaなどの金属元素、Ag、Pt、Pd、Rh等の貴金属元素がイオン交換されていてもよく、アンモニウムイオンまたはプロトンがイオン交換されていてもよい。
また、バナジウム、タングステン、モリブデン、ニオブ、チタンのような元素の酸化物、複合酸化物は、耐硫黄被毒性が高いことが知られている(例えば、特開2007−182812、特開2007−167698)。その理由は定かではないが、ゼオライトのように硫黄成分と反応し易いアルミニウム成分を含まないためではないかと考えられる。
このようなSCR触媒には、上記触媒成分の他、セリア、ジルコニア、アルミナ、シリカ、白金、ロジウム、パラジウムなど公知の触媒成分を、本発明の触媒性能を阻害しない範囲で適宜添加することができる。これら酸化物には耐熱性や活性を向上する機能がある。
触媒成分をハニカム構造体に塗工する場合、まず、触媒成分と水系媒体を所定の比率で混合してスラリー状混合物を得る。本発明においては、水系媒体は、スラリー中でSCR触媒が均一に分散できる量を用いれば良い。
この際、必要に応じてpH調整のための酸、アルカリを配合し、粘性の調整やスラリー分散性向上のための界面活性剤、分散用樹脂等を配合する事ができる。スラリーの混合方法としては、ボールミルなどによる粉砕混合が使用可能であるが、他の粉砕、もしくは混合方法を使用しても良い。
次に、ハニカム構造体へスラリー状混合物を塗工する。塗工方法は、特に限定されないが、ウオッシュコート法が好ましい。塗工した後、乾燥、焼成を行う事により触媒組成物が担持されたフロースルー型ハニカム構造型触媒が得られる。なお、乾燥温度は、100〜300℃が好ましく、100〜200℃がより好ましい。また、焼成温度は、300〜700℃が好ましく、特に400〜600℃が好ましい。加熱手段については、電気炉やガス炉等の公知の加熱手段によって行う事ができる。
本発明では、排気ガス中の微粒子成分を集塵するため、図3のようにSCR触媒の後方に静電吸着式フロースルー型集塵装置7(以下、単に集塵装置7ということがある)が配置されている。
本発明において、微粒子除去手段(D)は、振動を加えることで、集塵装置7に集塵された微粒子成分を除去する手段である。衝撃または振動を加える手段としては、図3のように、高圧空気のブロー装置10などの間接的入力手段と、振動子、超音波発生装置、エアハンマー装置等の衝撃、振動装置8の直接的入力手段を単独または組み合わせて使用できる。また、衝撃または振動を加える際には、集塵装置7または電極に、噴霧等の手段(図示せず)により、船舶の利用環境で入手し易い海水等の水系媒体や有機溶剤を供給しても良い。
本発明において、微粒子排出手段(E)は、粗大化粒子11aに海水、湖水、河川水など、船舶の使用環境で容易に手に入る水系媒体に接触させ、粗大化粒子11bに水分を含ませ、より飛散し難くする手段である。
粗大化粒子11aと水系媒体との接触は、集塵装置7後段の排気ガス系内へ水系媒体の噴霧手段9による噴霧や、排気ガスを水系媒体の中を通過させること(図示せず)で行う事ができるが、背圧の上昇を防ぐためには、排気ガス系内へ水系媒体を噴霧する方法が好ましい。水分を含んだ粗大化粒子は、そのまま排気ガスの系外へ排出されても良いが、更に、フィルターや遠心分離機などの微粒子成分回収手段を使用して集積し、分離除去してもよい。
本発明の排気ガス浄化方法は、重質油を燃料とする船舶用ディーゼル機関からの排気ガスを、前記の船舶用排気ガス浄化装置に導入し、排気ガスに還元成分を噴霧し、選択還元触媒に接触させて窒素酸化物を還元し、その後、静電吸着式フロースルー型集塵装置によって微粒子成分を集塵し、次に、集塵された微粒子成分に衝撃または振動を加えて集塵した微粒子成分を除去し、除去された微粒子成分を水系媒体に接触させ回収することによって、排気ガスを浄化することを特徴とする。
また、燃料に由来して発生が避けられないサルフェートを含む微粒子成分を、あえて燃焼処理しないので、サルフェートを加熱することで生じるSOxの大気中への放出を最小限に抑制することができる。
また、バンカー油を燃料として使用した場合には、原油精製時の触媒成分であるアルミナ、シリカなどの燃焼除去不可能な無機微粒子が混入するが、本発明では前記特許文献6のような燃焼再生を必要とするフィルターを使用しないことから、無機微粒子によって、微粒子成分除去手段に再生不可能な障害が生じることもない。
2 ディーゼル機関
3 排気管
4 還元成分タンク
5 還元成分噴霧装置
6 選択還元触媒(SCR触媒)
7 静電吸着式フロースルー型集塵装置
8 衝撃、振動装置
9 水性媒体接触手段
10 高圧エアブロー
11 微粒子物質
11a 凝集した微粒子物質
11b 含水した微粒子物質
S ディーゼル機関(補機)
M ディーゼル機関(主機)
P スクリュー
Claims (5)
- 重質油を燃料とする船舶用ディーゼル機関からの排気ガスを浄化する船舶用排気ガス浄化装置であって、
排気ガスへ窒素酸化物の還元成分を噴霧供給する還元成分噴霧手段(A)と、前記還元成分と排気ガスを接触させて窒素酸化物を還元するフロースルー型選択還元触媒(B)と、排気ガス中の微粒子成分を吸着する静電吸着式フロースルー型集塵装置(C)と、集塵された微粒子成分に少なくとも衝撃または振動を作用させ、微粒子を分離する微粒子除去手段(D)、及び分離された微粒子成分に水を接触させて微粒子成分を排出する微粒子排出手段(E)を含み、
静電吸着式フロースルー型集塵装置(C)が、排気ガス流路中のフロースルー型選択還元触媒(B)の下流に配置されてなる船舶用排気ガス浄化装置。 - 還元成分が、尿素水溶液であることを特徴とする請求項1記載の船舶用排気ガス浄化装置。
- フロースルー型選択還元触媒(B)が、還元活性成分として、バナジウム、タングステン、モリブデン、ニオブ、又はチタンから選ばれる一種以上の酸化物を含むことを特徴とする請求項1記載の船舶用排気ガス浄化装置。
- 微粒子排出手段(E)で用いられる水が、海水、河川水、又は湖水から選ばれるいずれかであることを特徴とする請求項1記載の船舶用排気ガス浄化装置。
- 重質油を燃料とする船舶用ディーゼル機関からの排気ガスを、請求項1〜4のいずれかに記載の船舶用排気ガス浄化装置に導入し、排気ガスに還元成分を噴霧し、選択還元触媒に接触させて窒素酸化物を還元し、その後、静電吸着式フロースルー型集塵装置によって微粒子成分を集塵し、次に、集塵された微粒子成分に衝撃または振動を加えて集塵装置から微粒子成分を分離し、分離された微粒子成分を水系媒体に接触させることによって、排気ガスを浄化することを特徴とする排気ガス浄化方法。
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