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JP5030280B2 - 焼入れ性、疲労特性、靭性に優れた高炭素鋼板及びその製造方法 - Google Patents

焼入れ性、疲労特性、靭性に優れた高炭素鋼板及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、産業機械や自動車の駆動系機械部品に適した焼入れ性と、熱処理後に優れた疲労特性、靭性を呈する高炭素鋼板及びその製造方法に関する。
産業機械や自動車の駆動系機械部品に用いられる鋼材には、部品形状に加工した後に優れた焼入れ性を呈するとともに、その後、熱処理された段階で優れた疲労特性と靭性を呈することが要求される。特に、軸受け、歯車、メリヤス針等の部品は、近年、高い疲労強度を得るために焼入れ焼戻し後の断面硬さを650〜750HVの高硬度に調質して使用されている。しかし、靭性の低下や疲労強度の低下、バラツキが生じているのが現状である。
一般的には、疲労強度のバラツキに関しては、打抜き加工面の性状、鋼中介在物、表面傷等の影響が大きいとされている。このため、製鋼工程では鋼中介在物の低減に努めている。また、例えば打抜き加工面に傷がないようにファインブランキング加工を施したり、表面傷がある場合にはバレル研磨を施したりしている。このような対策を講じることにより、確かに改善はされているが、それでもまだ疲労強度の低下、バラツキの問題は解消できていない。
さらに、熱処理時に、同一処理バッチ内において熱処理条件に僅かな違いが生じると、靭性、疲労特性のバラツキが生じる。このため、材料面においても、高い熱処理安定性、靭性、疲労強度の改善が求められている。
高靭性と高疲労強度の両方の特性を引き出すために、特許文献1では、比較的大きなサイズの球状炭化物を等軸状フェライトの分散させた素材組織とすることにより、熱処理後の破壊起点を減らして靭性を向上させている。また、特許文献2では、溶体化処理時の炭素量の適正化と未溶解炭化物の大きさを小さくすることで、靭性を向上させている。
特開2003−147485号公報 特開2006−63384号公報
ところで、上記特許文献1,2で紹介された技術は、いずれも未溶解炭化物の大きさ及び量を制限することにより靭性を向上させようとするものである。しかしながら、疲労特性の向上については何ら触れられていない。
また、一般に産業機械部品や自動車の駆動系機械部品は、鋼板を製品形状に打抜いた後、焼入れとその後の熱処理により所要の特性を発現させて用いられている。
前記した通り、打抜き前の鋼板は打抜き加工面に傷が生じないように加工性に優れるとともに、焼入れ性も必要である。そして、焼入れ後の熱処理で靭性に加え疲労特性も向上させる必要がある。
本発明は、このような問題を解消すべく案出されたものであり、打抜き加工性及びその後の焼入れ性に優れ、焼入れ焼戻し処理で未溶解炭化物の量及び粒度分布を容易に制御することが可能で、靭性に加え疲労特性も改善された部品を製造できる高炭素鋼板を提供することを目的とする。
本発明の焼入れ性、疲労特性、靭性に優れた高炭素鋼板は、その目的を達成するため、C:0.50〜0.70質量%,Si:0.5質量%以下,Mn:1.0〜2.0質量%,P:0.02質量%以下,S:0.02質量%以下,Al:0.001〜0.10質量%を含み、さらにV:0.05〜0.50質量%,Ti:0.02〜0.20質量%,Nb:0.01〜0.50質量%の1種又は2種以上を含み、残部がFe及び不可避的不純物である成分組成と、炭化物の球状化率が95%以上で、しかも最大粒径が2.5μm以下の炭化物を分散させた組織を有することを特徴とする。
本発明鋼板は、さらに、Cr:0.6質量%以下,Mo:0.5質量%以下,B:0.0002〜0.01質量%の1種又は2種以上を含む成分組成とすることもできる。
このような高炭素鋼板は、C:0.50〜0.70質量%,Si:0.5質量%以下,Mn:1.0〜2.0質量%,P:0.02質量%以下,S:0.02質量%以下,Al:0.001〜0.10質量%を含み、さらにV:0.05〜0.50質量%,Ti:0.02〜0.20質量%,Nb:0.01〜0.50質量%の1種又は2種以上を、さらに必要に応じてCr:0.6質量%以下,Mo:0.5質量%以下,B:0.0002〜0.01質量%の1種又は2種以上を含み、残部がFe及び不可避的不純物である成分組成を有する鋼に、仕上げ温度:830〜900℃,平均冷却速度:30〜45℃/s,巻取り温度:500〜680℃の条件の熱間圧延を施し、得られた熱延鋼板を酸洗した後、650〜(Ac1+20)℃の温度域に10h以上保持する焼鈍を施すことにより製造される。
熱延酸洗板焼鈍後、20%以上の冷間圧延とその後に650〜(Ac1+20)℃の温度域に10h以上保持する焼鈍を施す工程を1回又は2回付加しても良い。
本発明により、高炭素鋼板の成分組成と組織、特に炭化物の球状化率及び最大粒径を調整することにより、打抜き加工が容易で、焼入れ性に優れた高炭素鋼が得られる。
このため、本発明による高炭素鋼板を素材として所望形状への打抜き加工した後、当該打抜き製品を適宜の温度で焼入れして通常の熱処理を施すと、高い靭性に加えて疲労特性が改善された駆動系機械部品等が得られる。
したがって、本発明により、簡素な打抜き加工が採用でき、しかも通常の焼入れとその後の熱処理で所望特性の信頼性の高い駆動系機械部品等を、低コストで生産性良く製造することができる。
一般的に、高炭素鋼における靭性に関しては、熱処理時に如何なる金属組織形態により靭性向上が図れるかは必ずしも明らかになっていない。金属組織形態と靭性に関する従来の知見では、共析鋼、過共析鋼等の熱処理に際し、およそ0.6質量%程度の炭素を固溶させ、残りを未溶解炭化物として残存させる熱処理が行われている。これは炭素量が0.6質量%を超えると母組織が靭性の低いレンズ状マルテンサイト組織となるためである。
未溶解炭化物は、焼入れ時にオーステナイト結晶粒の粗大化を抑制するといわれているが、未溶解炭化物の形態や粒径が靭性に及ぼす影響は必ずしも明らかにされていない。そのため、焼入れ焼戻し後に得られる衝撃特性の安定性が低く、信頼性の高い駆動系機械部品が得られ難くなっている。
また、高炭素鋼を焼入れするとマルテンサイト組織からなる硬質の鋼材が得られるが、硬質化に伴って靭性が低下する傾向を示す。一方で、硬質な高炭素鋼は、旧オーステナイト粒を微細化すると、靭性が向上する傾向を示す。
そこで、本発明者等は、靭性、疲労特性に及ぼす未溶解炭化物の形態や粒径の影響について鋭意調査した。
その結果、焼入れ焼戻し後の金属組織において、固溶炭素量の低減によりレンズ状マルテンサイトの生成を抑制すること、破壊の起点となる大きな未溶解炭化物を低減すること、さらに旧オーステナイト結晶粒の微細化に有効な元素を添加することにより、所望形状品において、高い靭性に加えて疲労特性が向上することを見出した。
また、大きな未溶解炭化物を低減するための、焼入れ焼戻し前の素材の金属組織形態を制御する適正な製造条件の知見も得た。
具体的には、通常の焼入れ焼戻し後の未溶解炭化物の低減を容易にするために熱処理前素材の金属組織炭化物の球状化を均一なものとし、かつ炭化物粒径を小さくすることが有効である。炭化物粒径を小さくすることにより、後の熱処理時に容易に溶体化できる。また溶体化温度を可能な限り低くすることができる。
溶体化温度を低くした場合、未溶解炭化物が多く残存する方向となるが、Cr含有量を低減することにより炭化物が溶解し易くなる。さらに、V,Ti,Nb等の添加により内部破壊の起点となり難い微細な炭窒化物を形成させ、これらの微細炭窒化物によるピン止めの効果を利用し、旧オーステナイト粒を微細化する。
旧オーステナイト粒の微細化を図ることによる靭性の向上に加え、未溶解炭化物量の低減と微細化による亀裂発生源の減少で靭性、疲労特性の向上が図れる。旧オーステナイト粒の微細化で焼入れ性の低下を招くが、焼入れ性を向上させるMnを多く含ませることにより、焼入れ性の確保・向上を図る。
なお、素材の球状化率を向上させ、かつ炭窒化物粒径を小さくするには、熱間圧延における仕上げ圧延以降の冷却速度及び巻取り温度を制御すればよい。
以上の結果から、高炭素鋼板を素材とし、打抜き加工等で所望形状に成形した後、比較的低い温度からの焼入れが可能であって、焼戻し後に優れた靭性及び疲労特性を発揮する駆動系機械部品を得るには、請求項の記載で特定したような成分組成を有し、球状化率が大きく、しかも粒径の小さい炭化物を分散させたものを用いることが有効である旨の知見を得た。
以下にその詳細を説明する。
まず、本発明鋼板を構成する鋼の成分組成について説明する。
C:0.50〜0.70質量%
焼き入れ焼戻し材において、硬さ650HVを安定して得るためには、少なくとも0.50質量%以上のC量が必要である。しかし、0.70質量%を超えるほどの過剰量のCが含まれると、レンズ状マルテンサイトが生成し、また旧オーステナイト結晶粒界に炭化物が析出し、靭性が低下することになる。したがって、C含有量は0.50〜0.70質量%の範囲とする。
Si:0.5質量%以下
脱酸元素として添加される。焼入れ性を高め、フェライトの固溶強化元素として有効である。しかし、熱延や焼鈍、さらには熱処理において表面直下に内部酸化物を生じ、靭性及び疲労特性の低下の原因にもなる元素である。このため、Si含有量の上限は0.5質量%とした。なお、脱酸はMn,Al等、他の元素で補われるので、Siは無添加でも構わない。
Mn:1.0〜2.0質量%
Mnは焼き入れ性を確保するために必要な元素である。本発明では焼入れ焼戻し後の旧オーステナイト粒径を小さくするために、1.0質量%に満たないと焼入れ性が不十分になる。しかし、2.0質量%を超えるほどに過剰のMnを添加すると、靭性が低下する。製造コストも高くなる。
P、S:0.02質量%以下
いずれも靭性に悪影響を及ぼす成分である。そのため、可能な限り含有量を少なくすることが好ましいが、本成分系では、上限を0.02質量%とすることで、P,Sに起因する弊害を抑えることができる。
Al:0.001〜0.10質量%
鋼の脱酸材として有効な合金元素である。脱酸作用を発揮させるためには少なくとも0.001質量%の添加が必要である。しかしながら、過剰に含有すると鋼板の表面欠陥の原因となりやすいので、Al含有量の上限を0.10質量%とした。
V:0.05〜0.50質量%
鋼中で炭窒化物を形成し、強度および靭性を向上させるとともに、旧オーステナイト結晶粒を微細にする作用によって亀裂伝播抵抗を向上させる。このような作用・効果は、0.05質量%以上のVを含有させることにより発現する。しかしながら、0.50質量%を超えるほどの多量の含有は、強度,靭性,亀裂伝播抵抗を向上させる効果が飽和するだけであり、高価な元素のため製造コストの上昇を招く。したがって、V含有量は0.05〜0.50質量%の範囲とする。
Ti:0.02〜0.20質量%
熱処理時のオーステナイト結晶粒を微細化し、亀裂伝播抵抗を高める作用を呈する。また鋼中Nを固定することから、添加されたBの有効量確保にも有効である。このようなTiの作用は、0.02質量%以上で効果が顕著になる。しかし、0.20質量%を超える含有は、粗大な析出物が形成される原因となり、疲労特性の低下を招く。
Nb:0.01〜0.50質量%
炭窒化物を形成し、オーステナイト粒の粗大化を抑えて靭性を向上させる作用を呈する。このようなNbの作用は、0.01重量%以上で顕著になる。しかし、0.50質量%を超えて過剰に添加すると疲労特性劣化の原因となる粗大な析出物が形成されるので、上限を0.50質量%とした。
Cr:0.60質量%以下
焼入れ性,強度,耐摩耗性を向上させる効果を併せ持つ。Cr含有量が0.10質量%以上でこれらの効果は十分発揮される。しかし、熱処理時の未溶解炭化物の溶体化を妨げる弊害があるので、上限を0.60質量%とした。本発明の焼入れ性は、Mnで確保するため、Cr無添加でも構わない。
Mo:0.50質量%以下
鋼の焼入れ性の向上に有効な合金元素である。しかし、高価な元素であり多量に添加すると製造コスト高になることからMoの上限を0.50重量%に設定した。本発明の焼入れ性は、Mnで確保するため、Mo無添加でも構わない。
B:0.0002〜0.01質量%
必要に応じて添加される合金成分であり、焼入れ性を高めると共に、粒界破壊を抑制する作用がある。Bの添加効果は、0.0002質量%以上のB含有量で顕著になる。しかし、B含有量が0.01質量%を超えると、靭性が劣化する。
炭化物の球状化率が95%以上で炭化物の最大粒径が2.5μm以下
焼鈍鋼板を素材として打抜き加工等で駆動系機械部品を得るには、駆動系機械部品への成形性と、駆動系機械部品として使用する際に所望の機械的特性を発揮することが求められる。
球状化率が高い炭化物は、球状化が不十分な炭化物と比べて打抜き加工時にミクロボイドの生成起点になり難く、局部延性がよくなる。そのため打抜き面における破断面の形成を抑制できる。十分な局部延性を呈し、良好な打抜き面性状を得るためには球状化率を大きくすることが好ましい。また、部品形状に成形した後に焼入れ焼戻しの熱処理を施して所望の機械的特性を発現させている。機械的特性の内、特に靭性,疲労特性に着目すると、破壊または亀裂の起点としての未溶解炭化物の存在が重要な位置付けとなっている。詳細は実施例に譲るが、焼入れ焼戻し後の組織にあって、未溶解炭化物を極力小さく、かつ少なくするためには、さらに旧オーステナイト粒径を小さくして粒界割れを抑制するためには、駆動系機械部品製造用素材のとしての焼鈍鋼板における球状化炭化物の面積率を95%以上とし、かつ炭化物の最大粒径を2.5μm以下にすることが必要となる。このような組織に調質することにより、加工性と焼入れ性に優れ、駆動系機械部品に成形した後の通常の焼入れ焼戻し処理により、処理後の未溶解炭化物を低減し、かつ微細にでき靭性,疲労特性の向上が図れる。
製造条件
熱間圧延においては、仕上げ温度を830〜900℃に限定する。900℃を超える温度では脱炭層が形成され熱処理品の疲労特性の低下を招く。830℃に満たない仕上げ温度では変形抵抗が高まり圧延機の負荷が大きくなりすぎる。
仕上げから巻取りまでの平均冷却速度を30〜45℃/sに限定する。平均冷却速度が45℃/sを超えると巻取温度が低くなりパーライトのラメラ間隔が小さく硬質となるため、後工程の連続酸洗などの工程での通板が困難となる。30℃/sに満たない平均冷却速度では、板形状が悪い,また通板時間が長くなり生産性が低下する。
巻取温度は、均一なパーライト組織を得るために500〜680℃に限定する。680℃を超える巻取温度では、鋼板の表面に脱炭層や粒界酸化が形成される。500℃に満たない巻取温度では、パーライトのラメラ間隔が小さく硬質となり後工程の通板が困難となる。
駆動系機械部品は、通常焼鈍材を打抜き加工等で所望形状に成形加工した後に焼入れ焼戻しされて使用される。このため焼鈍は、金型等加工冶具寿命の劣化を抑制するため、軟質化するために必須となる。650℃〜Ac1+20℃の温度域で10h以上の加熱を行う。650℃に満たなかったり、10hに満たないと、軟質化が不十分である。Ac1+20℃を超える温度で焼鈍すると、炭化物がかえって異常成長する。
焼鈍板の球状炭化物を高球状化率化するとともに均一分散化し、かつ板厚を均一化するとともに良好な板形状を得るためには、前記焼鈍板に、冷延率20%以上の冷間圧延と前記と同じ条件の焼鈍を、1回ないし2回繰り返しても良い。
前記した通り、駆動系機械部品は、通常焼鈍材を打抜き加工等で所望形状に成形加工した後に焼入れ焼戻しされて使用される。
本発明で提供される焼鈍鋼板も、通常の成形加工で所望部品形状に形作られた後、通常の焼入れ焼戻し処理が施されて使用される。
ところで、高炭素鋼では、高硬度で使用されるため、熱処理後の旧オーステナイトの平均粒径の大きさが靭性に大きな影響を及ぼす。本発明で提供される焼鈍鋼板は、部品形状に形作られた後の焼入れのための加熱を高すぎない温度に設定して熱処理されることが好ましい。例えば860℃を超えるような温度に加熱して焼入れ焼戻し処理を施すと、旧オーステナイトの平均粒径が15μmを超えるほどに大きくなり、粒界割れが発生し易くなる。靭性及び疲労特性を向上させるためには、焼入れ温度を860℃以下に抑えて、旧オーステナイトの平均粒径を15μm以下にすることが好ましい。より好ましくは10μm以下にする。
焼入れ後の焼戻し処理は通常の条件で行って構わない。焼入れ前の加熱で十分に溶体化されているため、未溶解炭化物は極めて少なく、かつ小さくなっている。通常、未溶解炭化物が多いと亀裂発生源の増加により靭性及び疲労特性が低下する。また未溶解炭化物が少なくても粒径の大きい未溶解炭化物が残存すると亀裂発生源となり靭性及び疲労特性を低減する。本発明者等は、焼入れ焼戻し処理後の未溶解炭化物が、面積率で1.5%以下、かつ1.5μm以上の粒径のものの分散状況が観察面積3000μm2当り3個以下であれば、靭性及び疲労特性を低減することができると考えている。
詳細は実施例に譲るが、事実、本発明焼鈍鋼板を用いると、未溶解炭化物の面積率を1.5%以下に、かつ粒径1.5μm以上の未溶解炭化物を観察面積3000μm2当り3個以下にすることができている。
表1に示す化学成分を有する鋼を溶製し、表2,3に示す条件で熱間圧延を行い、さらに表2,3に示す条件で焼鈍ないしその後の処理を行った。熱延板の板厚は、冷延・焼鈍後の板厚が2.0mmになるよう調整した。最終焼鈍後の鋼板の球状化炭化物の面積率、球状化炭化物の最大粒径及び硬さを測定した。その結果を表4に示す。焼鈍鋼板は軟化されているので、打抜き加工等が容易に行えるようになっている。
その後、表5に示す焼入れ焼戻し条件で熱処理を行い、硬さ,マルテンサイト面積率,旧オーステナイト粒径,未溶解炭化物の面積率,未溶解炭化物1.5μm以上の個数,衝撃値,疲労限を調査した。
上記球状炭化物及び未溶解炭化物の調査は5%ピクリン酸アルコール溶液でエッチング後、画像処理機能を有するレーザー顕微鏡にて調査した。
旧オーステナイト粒径の測定は、JIS G 0551に規定される鋼のオーステナイト結晶粒度試験方法を準じ、直線交差線分法により旧オーステナイトの平均粒径を求めた。
衝撃値は、2mmUノッチ試験片を用い、JIS Z 2242のシャルピー衝撃試験で衝撃値を求めた。衝撃値は25J/cm2以上を良好とした。
疲労限は、JIS Z 2275の金属平板の平面曲げ疲れ試験方法に準じて実施した。試験片は1号試験片を用いた。試験片は表面傷や加工面の仕上げの変動により疲労限のバラツキが生じるため焼入焼戻の後にバレル研摩と化学研摩を実施した。疲労限は1000N/mm2以上を良好とした。
焼入れ焼戻し後の組織及び特性を表6,7に示す。
表6,7に見られる通り、本請求項1で特定される要件を備えた試料No.2,3,4,6,10,12,15,16,17,18,19,20,23,24,25,26,27,29,31は、衝撃値:25J/cm以上、疲労限:1000N/mm2以上の高い靭性と疲労特性を有している。
一方、C量の少ないNo.1は、焼入れ焼戻し後の硬さが得られないため疲労限が低い。Cr含有量の多いNo.5は、未溶解炭化物の面積率が高くかつ大きいために衝撃値と疲労限が下限値未満である。本発明鋼であるが熱間圧延時の冷却速度が遅く巻取り温度が高いNo.7は、セメンタイトが厚く生成し、冷延焼鈍後に得られる球状化炭化物は大きくなり、その後の焼入れ焼戻し時に未溶解炭化物が多く残存する。このため、焼入れ焼戻し材の衝撃値と疲労限が下限値未満である。
成分組成が本発明の規定を満たしていても、焼鈍条件IIの温度が高いNo.8は、再生パーライトが生成したために未溶解炭化物が多く残存し、焼入れ焼戻し材の衝撃値と疲労限が下限値未満である。成分組成が本発明の規定を満たしているが焼鈍条件Iの後の冷間圧延率が低いNo.9は、残存した棒状の炭化物の分断が不十分となり、焼鈍条件IIで大きな球状化炭化物が多く形成されたことにより、未溶解炭化物が多く残存し衝撃値と疲労限が下限値未満である。同じくNo.11は、焼鈍条件Iの温度が高いために多くの粗大な棒状の炭化物が形成されたことにより未溶解炭化物が多く残存し衝撃値は高いが疲労限は下限値未達である。
No.13,14,21,22は、本請求項の規定を満たしているが、焼入時の加熱温度が高いために旧オーステナイト粒径が大きくなり衝撃値が下限値未達である。No.28は熱間圧延において、冷却速度が大きく、巻取り温度が低いため、鋼板が硬質となり後工程の通板不可となり、熱間圧延工程以降の評価は中止した。また、No.30は、焼鈍温度が低く硬質となり打抜き加工時の金型寿命が劣化するため焼入れ焼戻し後の評価は中止した。さらに、No.32は、C量が規定外のため未溶解炭化物が多く残存し衝撃値と疲労限が下限値未達である。No.33はV,Ti,Nbが添加されていないため旧オーステナイトが大きく衝撃値と疲労限が下限値未達である。No.34は、V添加量が少ないために旧オーステナイト粒径が大きく衝撃値と疲労限が下限値未達である。
No.35は、Mn量が下限未満であり、焼入れ不良が認められたために疲労限が下限値未達である。No.36は、Si量が高いために鋼板の表層に粒界酸化が生じ疲労限が下限値未達である。No.37は、C量,Cr量が高いために未溶解炭化物が多く残存し、衝撃値は高いが疲労限が下限値未達である。
以上で見られるように、請求項1で規定された成分組成と炭化物の分散形態を有した高炭素焼鈍鋼板は、硬さも低いので成形加工性に優れ(表4の硬さ参照)、かつ焼入れ性に優れる(表6,7のマルテンサイト面積率参照)とともに焼戻し後に残存する未溶解炭化物が少なく、しかも小さいために、疲労特性や靭性に優れた駆動系機械部品を安価に製造できることが理解される。
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Claims (4)

  1. C:0.50〜0.70質量%,Si:0.5質量%以下,Mn:1.0〜2.0質量%,P:0.02質量%以下,S:0.02質量%以下,Al:0.001〜0.10質量%を含み、さらにV:0.05〜0.50質量%,Ti:0.02〜0.20質量%,Nb:0.01〜0.50質量%の1種又は2種以上を含み、残部がFe及び不可避的不純物である成分組成と、炭化物の球状化率が95%以上で、しかも最大粒径が2.5μm以下の炭化物を分散させた組織を有することを特徴とする焼入れ性、疲労特性、靭性に優れた高炭素鋼板。
  2. さらに、Cr:0.6質量%以下,Mo:0.5質量%以下,B:0.0002〜0.01質量%の1種又は2種以上を含む成分組成を有する請求項1に記載の焼入れ性、疲労特性、靭性に優れた高炭素鋼板。
  3. 請求項1又は2に記載された成分組成を有する鋼に、仕上げ温度:830〜900℃,平均冷却速度:30〜45℃/s,巻取り温度:500〜680℃の条件の熱間圧延を施し、得られた熱延鋼板を酸洗した後、650〜(Ac1+20)℃の温度域に10h以上保持する焼鈍を施すことを特徴とする、請求項1又は2に記載の焼入れ性、疲労特性、靭性に優れた高炭素鋼板の製造方法。
  4. 熱延酸洗板焼鈍後、20%以上の冷間圧延とその後に650〜(Ac1+20)℃の温度域に10h以上保持する焼鈍を施す工程を1回又は2回付加する請求項3に記載の焼入れ性、疲労特性、靭性に優れた高炭素鋼板の製造方法。
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