JP5030276B2 - 熱交換器用アルミニウム合金配管材及びその製造方法 - Google Patents
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本発明のアルミニウム合金配管材において、厚み方向にTiおよびVの周期的な高濃度層を有する。
Ti、Vは、高濃度層と低濃度層に分かれ、これらの層が厚み方向に交互に層状に分布する。低濃度層は高濃度層に比べて優先的に腐食するために腐食形態が層状となり、その結果、肉厚方向への腐食の進行が妨げられて、材料の耐孔食性が向上する。VはTiに比べ濃度層の間隔が緻密になり、Tiの1つの低濃度層にVの高濃度層、低濃度層が何層もでき、優れた耐孔食性を発揮できる。ここでいう高濃度層とは、Ti:0.07mass%以上、V:0.07mass%以上の組成を有する領域である。
高濃度層の間隔はTi:10−60μm、V:2−10μmとするのが好ましい。
Mn系析出物はカソードサイトとして作用し、マトリックスを溶解させる。Mn系析出物が粗大に分布しているとマトリックスの溶解が不均一に進行し、深い孔食が形成されやすい。一方、Mn系析出物を微細に分散させれば均一に腐食を進行させることができる。 このような効果を得るためには円相当径0.2μm以下のMn系析出物が2×105個/mm2以上存在する必要がある。
自然電位は、例えば、特級NaCl試薬と蒸留水で溶液を作製後1日放置した液を溶液として使用し、エレクトロメータを用いてアルミニウム合金と飽和カロメル電極(SCE)の間の電位差として測定できる。このようにして測定された自然電位はアルミニウム合金中のマトリックスと化合物の混成電位となる。化合物の分布が同じ場合、マトリックスの電位が卑なほど自然電位は卑になる。
MnはAl−Mn系金属間化合物として晶出又は析出して強度の向上に寄与し、また、Siと共存することによりAl−Mn−Si系の金属間化合物を生成して強度を向上させる元素である。本発明の場合、Mn系析出物を微細に分布させることにより腐食形態を面状にすることができる。これらの効果を確実に得るためには、0.5mass%以上のMnを添加する必要がある。なお、Mn量が1.5mass%を超えれば、押出し性の低下が懸念され、したがって、Mn量の上限は1.5mass%とした。
SiはMnと共存することによりAl−Mn−Si系の金属間化合物を生成し、Mn系析出物を微細に分布させることにより腐食形態を面状にすることができる。この効果を確実に得るためには0.01mass%以上のSiを添加する必要がある。Si量が0.8mass%を超えれば、耐食性の低下が懸念され、したがって、Si量の上限は0.8mass%とした。より好ましいSi量の上限は0.5mass%である。
これらの元素はアルミニウム合金の電位を卑にする作用があり、マトリックスがアノード、Ti、Vの高濃度層やMn系析出物がカソードとして作用するガルバニック腐食を有効に作用させることができる。この効果を確実に得るためには、それぞれZnを0.05mass%以上、Snを0.01mass%以上、Inを0.05mass%以上とする必要がある。
一方、それぞれZnが0.8mass%を超え、若しくはSnが0.2mass%を超え、或いはInが0.2mass%を超えると合金の腐食が著しく増大するため、それぞれZnは0.8mass%、Snは0.2mass%、Inは0.2mass%を上限とした。より好ましいZn量の上限は0.6mass%である。
アルミニウム合金中に添加されたTiおよびVは、高濃度層と低濃度層に分かれ、これらの層が厚み方向に交互に層状に分布する。低濃度層は高濃度層に比べて優先的に腐食するために腐食形態が層状となり、その結果、肉厚方向への腐食の進行が妨げられて、材料の耐食性が向上する。
Cr、Zr、Hfは、Ti、Vと同様、高濃度層と低濃度層に分かれ、これらの層が厚み方向に交互に層状に分布する。低濃度層は高濃度層に比べて優先的に腐食するために腐食形態が層状となり、その結果、肉厚方向への腐食の進行が妨げられて、材料の耐食性が向上する。
Cr、Zr、Hfの好ましい含有量は、それぞれ0.05−0.25mass%、0.05−0.25mass%、0.05−0.25mass%の範囲であり、それぞれ下限未満ではその効果が小さく、それぞれ上限を超えると鋳造時に粗大な化合物が生成されて材料の押出し性を阻害し、健全な押出し材が得難くなる。
Feは鋳造時にFe系化合物として晶出し、合金の耐食性を低下させる。このような悪影響を避けるためには、不可避不純物としてのFeを0.2mass%以下に規制するのが好ましい。
鋳塊の加熱を500℃以下とし、鋳造後に高温に保持しないことによって、粗大なMn系化合物の析出を抑制できる。
鋳塊を500℃以下に加熱し、押出し加工することによって得られた素材をダイス穴に通して引抜き加工度65%以上の抽伸加工を行うことによってTiおよびVの高濃度層と低濃度層の間隔が狭くなり、腐食形態を層状にすることができる。
また抽伸途中または抽伸終了後に析出処理を250−400℃で行うことにより微細なMn系析出物の分布を得ることができる。析出処理は350℃以下で行うのがより好ましく、析出処理は2h以上行うことが好ましい。
下記表1、2に示す成分組成のAl合金を常法により溶解・鋳造して、直径100mmのビレットを鋳造し、押出し用ビレットとした。これを450−550℃に加熱して押出し、外径25mm、内径20mmの管を作製し、抽伸加工を行い外径15mm、内径14mmの管とした。
但し、表2の合金No.10はMnが上限を超えているために押出しを行うことができなかった。さらに100−500℃、3hの最終焼鈍を行い、種々の試験を行った。
なお、分析により、Mn系析出物のみが存在することを確認してからTEM明視野像の撮影を行った。撮影したTEM明視野像を二値化できる画像編集ソフトで、Al合金マトリックスとMn系析出物を二値化し、Mn系析出物の測定面積から円相当径を計算し、その数を数えた。
以上の結果を表3及び表4に示す。
合金No.1は請求項2の範囲を満たし、かつ鋳塊を480℃に加熱し、300℃の析出処理を行っているので、鋳塊を500℃以下に加熱し、250−400℃の析出処理を行うとする本発明請求項3の条件を充足して製造されている。また、0.2μm以下のMn系析出物密度が11×105個/mm2であり、マトリックス中に0.2μm以下のMn系析出物が5×105個/mm2以上存在することを条件とする本発明の請求項1の条件を充足すると共に5%NaCl水溶液中における自然電位がが−754mVvsSCEであり、NaCl水溶液中における自然電位が−740〜−900mVvsSCEに規制されるとする本発明の請求項1の条件を充足している。その結果、孔食深さが235μm程度であり耐孔食性に優れる。
析出処理温度が100℃であり、250−400℃の析出処理とする本発明請求項3の条件を充足せず不適切な合金No.4−1は表1に示すように成分組成は本発明請求項2の範囲を満たしているものの、0.2μm以下のMn系析出物密度が2×105個/mm2であり、マトリックス中に0.2μm以下のMn系析出物が5×105個/mm2以上存在することを条件とする本発明の請求項1の条件を充足せず、孔食深さが427μmに達し、孔食深さが172〜356μmにとどまる本発明配管材に比べ性能が劣る。
Claims (2)
- Si:0.01−0.5mass%、Mn:0.5−1.5mass%、Ti:0.05−0.25mass%、V:0.05−0.25mass%を含有し、Zn:0.05−0.6mass%、Sn:0.01−0.2mass%、In:0.005−0.2mass%の内1種以上含有し、さらに不可避不純物としてFe:0.2mass%以下、Cu:0.4mass%以下に規制され、残りがAlおよび不可避不純物からなる熱交換器用アルミニウム合金配管材が、厚み方向にTiおよびVの周期的な高濃度層を有し、マトリックス中に円相当径が0.2μm以下のMn系析出物が5×105個/mm2以上存在し、さらに5%NaCl水溶液中における自然電位が−740〜−900mVvsSCEであることを特徴とする熱交換器用アルミニウム合金配管材。
- Si:0.01−0.5mass%、Mn:0.5−1.5mass%、Ti:0.05−0.25mass%、V:0.05−0.25mass%を含有し、Zn:0.05−0.6mass%、Sn:0.01−0.2mass%、In:0.005−0.2mass%の内1種以上含有し、さらに不可避不純物としてFe:0.2mass%以下、Cu:0.4mass%以下に規制され、残りがAlおよび不可避不純物からなる鋳塊を500℃以下に加熱して押出し加工する工程と、押出し加工して得られた素材に抽伸加工を行う工程と、抽伸途中または抽伸終了後、250−400℃の析出処理を行う工程とよりなり、得られるアルミニウム合金配管材が、厚み方向にTiおよびVの周期的な高濃度層を有し、マトリックス中に円相当径が0.2μm以下のMn系析出物が5×105個/mm2以上存在し、さらに5%NaCl水溶液中における自然電位が−740〜−900mVvsSCEであることを特徴とする熱交換器用アルミニウム合金配管材の製造方法。
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