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JP5024718B2 - 臭気捕捉用樹脂組成物 - Google Patents

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JP5024718B2 JP2005179615A JP2005179615A JP5024718B2 JP 5024718 B2 JP5024718 B2 JP 5024718B2 JP 2005179615 A JP2005179615 A JP 2005179615A JP 2005179615 A JP2005179615 A JP 2005179615A JP 5024718 B2 JP5024718 B2 JP 5024718B2
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Description

本発明は、酸素吸収材を含有する樹脂層から発生する酸化副生成物であるケトン、アルデヒド、アルコール、炭化水素等の臭気を捕捉することができる臭気捕捉用樹脂組成物、及び該樹脂組成物からなる層を有し、酸素存在下で劣化を起こしやすい内容物、特に飲料などの食品、及び医薬品等の包装材に用いるのに好適な酸素吸収性プラスチック多層構造体に関する。
近年、包装容器としては、軽量で透明且つ易成形性等の利点を有するため、各種プラスチック容器が使用されている。
プラスチック容器は、金属容器やガラス容器と比べると、酸素バリヤー性が劣るため、容器内に充填された内容物の変質や、フレーバーの低下が問題になる。
これを防止するために、プラスチック容器では容器壁を多層構造とし、少なくとも一層を酸素バリヤー性に優れている樹脂、例えば、エチレン−ビニルアルコール共重合体の層を設けている。また、容器内部に残存する酸素及び容器外部から侵入してくる酸素を除去するために、酸素吸収層を設けた容器がある。酸素吸収層に用いられる酸素吸収剤(脱酸素剤)には、例えば、エチレン性不飽和炭化水素と遷移金属触媒からなる酸素掃去剤を用いるもの(特許文献1〜3等)がある。
エチレン性不飽和炭化水素と遷移金属触媒からなる酸素掃去剤を用いる方法は、エチレン性不飽和炭化水素自体が酸素を吸収して酸素バリヤー性を達成するものであるが、酸素を吸収する際に低分子量の分解生成物が発生し、これが内容物の味覚や香りに影響するとの問題がある。このような問題を解決するために、分解生成物に着目して、酸−、アルコール−又はアルデヒド−反応性の中和剤、具体的には無機塩基又は有機アミンを添加することが開示されている(特許文献4)。
しかしながら、例えば、特許文献4の方法では、アルデヒドはある程度除去可能であっても、アルデヒドより反応性の乏しいケトンやアルコール或いは炭化水素の除去はできない。更に、従来公知の酸化バリヤー性を有するプラスチック多層構造体形成された容器では、湿度の高い雰囲気下で用いると該構造体から出てくる酸化分解生成物の量が多くなって、内容物の味などに大きな影響がでるとの問題があることがわかった。特に夏場における高温多湿下での長期保管や、水分を含む内容物、特に液状の食品や医薬品などを収容した場合に問題があることがわかった。
特開2001−39475号公報 特開平5−115776号公報 特表平8−502306号公報 特表2000−506087号公報
本発明は、酸素吸収材を含有する樹脂層からの酸化副生成物であるケトン、アルデヒド、アルコール、炭化水素等の臭気を捕捉することができる臭気捕捉用樹脂組成物を提供することを目的とする。
本発明は、又、酸化バリヤー性を有するプラスチック多層構造体であって、湿度の高い雰囲気下で用いても該構造体から出てくる酸化分解生成物の量を極めて少なくすることができる酸素吸収性プラスチック多層構造体を提供することを目的とする。
本発明は、又、水分を含む内容物を収容した時に該構造体から出てくる酸化分解生成物の量を極めて少なくすることができ、かつ内容物の味などに影響することが少ない酸素吸収性プラスチック多層構造体を提供することを目的とする。
本発明は、又、該プラスチック多層構造体で形成されてなる容器を提供することを目的とする。
本発明は、ハイシリカ型ゼオライトのうち、その交換カチオンがアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属であり、且つシリカ/アルミナ比が80以上のハイシリカ型ゼオライトを、マトリックスを構成する熱可塑性樹脂中に分散させた形態にすると、上記課題を解決できるとの知見に基づいてなされたのである。
すなわち、本発明は、交換カチオンとしてアルカリ金属及びアルカリ土類金属からなる群から選ばれる少なくとも1種を有し、且つシリカ/アルミナ比が80以上のハイシリカ型ゼオライトが熱可塑性樹脂マトリックス中に分散して含有されていることを特徴とする臭気捕捉用樹脂組成物を提供する。
本発明は、又、酸素バリヤー層(A−1)、酸素吸収層(B)、及び臭気捕捉用樹脂組成物からなる層(C)を有することを特徴とするプラスチック多層構造体を提供する。
本発明は、又、上記プラスチック多層構造体で形成されてなる容器を提供する。
本発明は、又、水分を含む食品を上記容器に収容した容器詰食品を提供する。
本発明の臭気捕捉用樹脂組成物によれば、酸素吸収材を含有する樹脂層から発生する低分子量の酸化副生成物であるケトン、アルデヒド、アルコール、炭化水素等の酸化副生成物を効率的に捕捉し、組成物中に保持することができるので、酸素吸収層と併用すると、該酸化副生成物に起因する味や香りの変化を効率的に予防することができる。さらに樹脂の分解や樹脂の着色を防止することもできる。
従って、本発明の臭気捕捉用樹脂組成物を1つ又は2以上の層として含むプラスチック多層構造体でボトルやパウチなどの各種容器を形成し、固形状物や液状物といった内容物を収容し、高温多湿条件下(例えば、温度30℃で相対湿度80%)で保存しても、従来の酸素バリヤー樹脂製容器に入れて保管した場合に比べて、内容物の味覚や香りが新鮮なまま保持できるとの利点がある。特に、内容物が水分を含有する液状物、飲料や経口投与用医薬の場合に効果的である。
本発明の臭気捕捉用樹脂組成物で使用する交換カチオンとしてアルカリ金属及びアルカリ土類金属からなる群から選ばれる少なくとも1種を有し、且つシリカ/アルミナ比(モル比)が80以上のハイシリカ型ゼオライトとしては、シリカ/アルミナ比が90以上であることが好ましく、より好ましくは100〜700である。このようなシリカ/アルミナ比のゼオライトは、シリカ/アルミナ比が低いゼオライトが吸着性を低下させてしまうような高湿度条件において逆に酸化副生成物の捕捉性能が向上するという性質を有しており、水分を含む内容品を包装する包装体に使用した場合、特に有効である。
本発明では、又、ハイシリカ型ゼオライトの交換カチオンは、ナトリウム、リチウム、カリウムなどのアルカリ金属、カルシウム、マグネシウムなどのアルカリ土類金属の一種又は2種以上の混合物であることが必要である。この場合、交換カチオンとして少なくともナトリウムイオンを含有するのが好ましく、特に、実質的に全ての交換カチオンがナトリウムであるのが好ましい。これらの交換カチオンであることにより、図4に一例を示したように熱可塑性樹脂に配合した場合でも樹脂の分解による新たな生成物を発生させることなく、樹脂中に安定に配合することができる。
このようなハイシリカ型ゼオライトとしては、ZSM−5型ゼオライトが特に好ましいものとしてあげられる。また、ハイシリカ型ゼオライトが、微粒子が凝集した柘榴状構造を有することも重要であり、柘榴状構造により、吸着表面積が増大し、単純なゼオライト孔から予想される以上の大きさの有機化合物に対しても有効に作用するのである。本発明で用いるゼオライトとしては、平均粒径が0.5〜10μmであるのが好ましい。
上記ハイシリカ型ゼオライトのマトリックスである熱可塑性樹脂への分散は、公知の任意の方法で行うことができる。熱可塑性樹脂への含有量は、0.1〜5重量%とするのが好ましく、特に0.5〜2重量%であるのが好ましい。
本発明では、ケトン、アルデヒド、アルコール、炭化水素等の酸化副生成物の臭気捕捉用樹脂組成物のマトリックスとなる熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂を主体とする、或いは他の熱可塑性樹脂を含有するシート、ボトル等の容器の成形工程で発生するスクラップ等を粉砕したリグラインド樹脂が好ましい。
リグラインド樹脂は、その履歴から複数回に亘って熱履歴を受けていることが一般的であり、熱分解等による酸化分解物が発生しやすい樹脂で、特に、上記酸素吸収層を有する容器のスクラップを含有する場合、そこから発生する分解成分は異臭や異味の原因に繋がることがある。しかし、一方で成形工程中に発生したスクラップ等を容器に還元することは、廃棄物を削減するという環境に配慮した行為であり、スクラップの有効利用は極めて重要な課題である。
従って、リグラインド樹脂に特定のゼオライトを配合することで、異臭や異味の発生を抑え、しかも環境への配慮にも対応できることから、本発明の効果がより一層発現できる。この場合、リグラインド樹脂のみを使用することもできるが、50重量%以下の量でバージン樹脂を混合して使用するのが成形効率と容器物性の点で好ましい。
また、本発明で用いる臭気捕捉用樹脂組成物のマトリックスとなる熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂やポリエステル樹脂あるいはガスバリヤー性樹脂などがあげられる。このうちポリオレフィン系樹脂としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、線状超低密度ポリエチレン(LVLDPE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン−プロピレン共重合体、ポリブテン−1、エチレン−ブテン−1共重合体、プロピレン−ブテン−1共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン−1共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、イオン架橋オレフィン共重合体(アイオノマー)又はこれらのブレンド物等が挙げられる。
熱可塑性ポリエステル樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、又はこれらの共重合ポリエステル、さらに、これらのブレンド物等が挙げられる。
ガスバリヤー性樹脂としては、エチレン−ビニルアルコール共重合体やメタキシリレンアジパミドのような芳香族ポリアミド、ポリグリコール酸及びポリグリコール酸を主成分とする共重合体等が挙げられる。
これらのうち、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、線状超低密度ポリエチレン(LVLDPE)及びエチレン−酢酸ビニル共重合体であることが捕捉効率の点で好ましい。
本発明の臭気捕捉用樹脂組成物は、下記の酸素吸収層(B)と組み合わせて使用してもよい。すなわち、酸素吸収層(B)に臭気捕捉用樹脂組成物を含有させ、又は酸素吸収層(B)とは別に臭気捕捉用樹脂組成物からなる層を形成することができる。
本発明のプラスチック多層構造体は、酸素バリヤー層(A−1)、酸素吸収層(B)、及び臭気捕捉用樹脂組成物からなる層(C)を含有することを特徴とする。
ここで、層(C)の厚みは150〜1500μmとするのがよい。
酸素バリヤー層(A−1)を構成する酸素バリヤー性樹脂としては、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)を挙げることができる。例えば、エチレン含有量が20〜60モル%、好ましくは、25〜50モル%であるエチレン−酢酸ビニル共重合体を、ケン化度が96モル%以上、好ましくは、99モル%以上となるようにケン化して得られる共重合体ケン化物が使用される。
このエチレンビニルアルコール共重合体ケン化物は、フィルムを形成することができる分子量を有する。一般に、フェノール:水の重量比で85:15の混合溶媒中30℃で測定して0.01dl/g以上、好ましくは、0.05dl/g以上の粘度を有する。
酸素バリヤー性樹脂の他の例としては、ポリメタキシリデンアジパミド(MXD6)等のポリアミド樹脂、ポリグリコール酸等のポリエステル樹脂等を用いることができる。
酸素バリヤー層(A−1)の厚みは3〜50μmとするのがよい。
本発明の酸素吸収層(B)は、炭素数2〜8のオレフィンを重合してなるポリオレフィン樹脂(b-1)、樹脂(b-1)以外の樹脂であって樹脂(b-1)の酸化のトリガーとなる樹脂(b-2)、及び遷移金属触媒(b-3)を含有するのが好ましい。
ここで、ポリオレフィン樹脂(b-1)としては、例えば低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、線状超低密度ポリエチレン、アイソタクティック又はシンジオタクテイクスポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、ポリブテン−1、エチレン−ブテン−1共重合体、プロピレン−ブテン−1共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン−1共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、イオン架橋オレフィン共重合体、或いはこれらのブレンド物等が挙げられる。また、上記樹脂をベースポリマーとし、不飽和カルボン酸又はこれらの誘導体でグラフト変性された酸変性オレフィン系樹脂を用いる事も出来る。好ましくは、分子構造にエチレン構造を有するポリオレフィン樹脂であり、具体的には、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、線状超低密度ポリエチレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン−1共重合体等のエチレン系共重合体である。
特に好ましくは、低密度ポリエチレン又は線状低密度ポリエチレンである。これらの樹脂は、単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
酸化のトリガーとなる樹脂(b-2)としては、例えば主鎖又は側鎖に炭素−炭素二重結合を有する樹脂、主鎖に三級炭素原子を含む樹脂及び主鎖に活性メチレン基を有する樹脂を挙げることができる。
これらは、樹脂(b-1)中に単独で含有されていてもよいし、二種以上の組合せで含有されていてもよい。
主鎖又は側鎖に炭素−炭素二重結合を有する樹脂としては、鎖状又は環状の共役又は非共役ポリエンから誘導された単位を含む樹脂が挙げられる。
このような単量体としては、例えばブタジエン、イソプレン等の共役ジエン;1,4−ヘキサジエン、3−メチル−1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、4,5−ジメチル−1,4−ヘキサジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン等の鎖状非共役ジエン;メチルテトラヒドロインデン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−メチレン−2−ノルボルネン、5−イソプロピリデン−2−ノルボルネン、5−ビニリデン−2−ノルボルネン、6−クロロメチル−5−イソプロペニル−2−ノルボルネン、ジシクロペンタジエン等の環状非共役ジエン;2,3−ジイソプロピリデン−5−ノルボルネン、2−エチリデン−3−イソプロピリデン−5−ノルボルネン、2−プロペニル−2,2−ノルボルナジエン等のトリエン等が挙げられる。
具体的な重合体としては、ポリブタジエン、ポリイソプレン、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体等が挙げられる。
また、主鎖に三級炭素原子を含む樹脂としては、炭素原子数3〜20のα−オレフィンから誘導された単位を含む重合体または共重合体、或いは側鎖にベンゼン環を有する重合体または共重合体が好適に使用される。上記α−オレフィンとしては、具体的には、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン、9−メチル−1−デセン、11−メチル−1−ドデセン、12−エチル−1−テトラデセンなどが挙げられる。具体的な重合体としては、特にポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、ポリ−1−ヘキセン、ポリ−1−オクテン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン−1共重合体、エチレン−プロピレン−1−ブテン共重合体が挙げられる。また、上記側鎖にベンゼン環を有する単量体としては、スチレン、3−フェニルプロペン、2−フェニル−2−ブテン等のアルケニルベンゼンが挙げられる。
具体的な重合体としては、ポリスチレンまたはスチレン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体が挙げられる。
また、主鎖に活性メチレン基を有する樹脂としては、主鎖に電子吸引性の基、特にカルボニル基とこれに隣接するメチレン基とを有する樹脂であり、具体的には、一酸化炭素とオレフィンとの共重合体、特に一酸化炭素−エチレン共重合体等が挙げられる。
樹脂(b-2)としては、側鎖にベンゼン環を有するポリスチレンまたはスチレン共重合体が、樹脂(b-1)の酸化のトリガーとしての機能の点から特に好ましい。
スチレン共重合体においては、スチレン部分を10重量%以上含有するものがラジカル発生効率の点で好ましく、スチレン部分を15〜80重量%含有するものがより好ましく、15〜70重量%含有するのが特に好ましい。
本発明で用いる酸素吸収層における樹脂(b‐2)の上記トリガー機能の作用機構に関しては、その全てが解明されているわけではないが、その1つとして本発明者らの検討により以下のような機構が推察されるが、上記トリガー機能の作用機構はこれに限定されるものではない。
本発明で用いる酸素吸収層では、始めに遷移金属触媒(b‐3)により樹脂(b‐2)の水素の引き抜きが起こり、ラジカルが発生し、続いて、このラジカルによる攻撃と遷移金属触媒(b‐3)により樹脂(b‐1)の水素の引き抜きが起こり、樹脂(b‐1)にもラジカルが発生し、このようにして生じたラジカルの存在下で、酸素が樹脂(b‐1)と接触したときに樹脂(b‐1)の初期酸化が起こると考えられる。以降、樹脂(b‐1)の酸化反応は遷移金属触媒の作用により自動酸化の理論に従って連鎖的に進行し、樹脂(b‐1)自体が酸素吸収剤として機能すると考えられる。このトリガー効果の発現において、ベンジル基の存在が極めて重要であり、ベンジル基を含むスチレン系共重合体においては、ベンジル炭素のC−H結合解離エネルギーが他のC−H結合より低いことからベンジルラジカルが最初に発生し、上記トリガー作用を引き起こすと推察される。
スチレン共重合体は、ジエン由来の部位を有することがトリガー効果の点で好ましい。
ジエン由来の部分としては、イソプレン単位、ブタジエン単位を含むことが好ましく、特にスチレンとイソプレン乃至ブタジエンの共重合体であるスチレン−イソプレン共重合体乃至スチレン−ブタジエン共重合体が好ましい。共重合体の態様としては、ランダム共重合体でもブロック共重合体でも良いが、ブロック共重合体がトリガー効果の点でより好ましく、特に分子末端部分にスチレンブロックを有するスチレン−イソプレンブロック共重合体乃至スチレン−ブタジエンブロック共重合体が好ましい。特に、スチレン−イソプレン−スチレントリブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレントリブロック共重合体が好ましい。上記トリブロック共重合体の化学構造的には、線状でもラジアル状でも良い。
上記ジエン由来の部位を有するスチレン共重合体のジエン由来部位を適度に水添した共重合体は、成形時の劣化や着色を抑制でき、しかもトリガー効率が高いので特に好ましい。
ジエン由来の部位としては、イソプレン単位乃至ブタジエン単位であることが好ましく、特にスチレンとイソプレン乃至ブタジエンの共重合体の水添物である水添スチレン−イソプレン共重合体乃至水添スチレン−ブタジエン共重合体が好ましい。共重合体の態様としては、ランダム共重合体でもブロック共重合体でも良いが、ブロック共重合体は、ブロック共重合体がトリガー効果の点でより好ましく、特に分子末端部分にスチレンブロックを有するスチレン−イソプレンブロック共重合体乃至スチレン−ブタジエンブロック共重合体が好ましい。ランダム共重合体としては、水添スチレン−イソプレンランダム共重合体乃至水添スチレン−ブタジエンランダム共重合体が挙げられる。ブロック共重合体としては、水添スチレン−イソプレンブロック共重合体乃至水添スチレン−ブタジエンブロック共重合体が好ましく、水添スチレン−イソプレン−スチレントリブロック共重合体、水添スチレン−ブタジエン−スチレントリブロック共重合体が好ましい。上記トリブロック共重合体の化学構造的には、線状でもラジアル状でも良く、また、水添前のジエン部位の結合形式はビニルでもビニレンでも良い。
また、ジエン由来の部位を適度に水添したスチレン共重合体の別の態様として、水添スチレン−ジエン−オレフィン結晶トリブロック共重合体も有用であり、特に、水添スチレン−ブタジエン−オレフィン結晶トリブロック共重合体が酸化副生成物が抑制される点で好ましい。
これら水添スチレン−ジエン共重合体は、該共重合体中にジエン由来の炭素−炭素二重結合が過剰に存在すると、樹脂(b-1)の酸化を抑制する傾向がある。
また、上記した樹脂(b-2)として列記した主鎖又は側鎖に炭素−炭素二重結合を有する樹脂、主鎖に三級炭素原子を含む樹脂、主鎖に活性メチレン基を有する樹脂においては、成形中の熱安定性及び樹脂(b-1)の酸化のトリガーとしての機能の点から、樹脂(b-2)は、炭素−炭素二重結合の量が過剰に存在すると、樹脂(b-1)の酸化を抑制する傾向がある。
さらに、本発明で用いる酸素吸収層に炭素−炭素二重結合が過剰に存在すると、樹脂(b-1)の酸化を逆に抑制する傾向がある。
尚、樹脂(b-2)の分子量については特に制限はないが、樹脂(b-1)への分散性の点から数平均分子量が1000〜500000の範囲であるのが好ましく、より好ましくは10000〜250000の範囲である。
樹脂(b-1)は、マトリックスの形成が可能であり、かつ酸化により多量の酸素を吸収することが可能であるように多割合で含有されるのが好ましく、樹脂(b-1)の含有量は90〜99重量%の範囲がより好ましく、92.5〜97.5重量%の範囲がさらに好ましい。また、樹脂(b-2)は、樹脂(b-1)のマトリックス中に分散した状態で存在することが可能であり、かつ樹脂(b-1)の酸化のトリガーとして機能を十分に発揮することが可能であるように少割合で含有されるのが好ましく、フィルム、シート或いはカップ、トレイ、ボトル、チューブとする際に成形性を考慮すると、樹脂(b-2)の含有量は1.0〜10.0重量%の範囲が好ましく、2.5〜7.5重量%の範囲がさらに好ましい。樹脂(b-2)が樹脂(b-1)のマトリックス中に分散した状態で存在する事は、電子顕微鏡を用いて簡便に観察する事ができる。
本発明に用いる遷移金属触媒(b‐3)としては、鉄、コバルト、ニッケル等の周期律表第VIII族の金属成分、銅、銀等の第I族金属、錫、チタン、ジルコニウム等の第IV族金属、バナジウムの第V族、クロム等VI族、マンガン等のVII族の金属成分を挙げることができる。好ましくは、鉄、コバルト、ニッケル等の周期律表第VIII族の金属成分であり、特に、コバルト成分は、酸素吸収速度が大きいため好ましい。
遷移金属触媒(b‐3)は、上記遷移金属の低価数の無機酸塩、有機酸塩又は錯塩の形で使用される。
無機酸塩としては、塩化物等のハライド、硫酸塩等の硫黄オキシ酸塩、硝酸塩等の窒素のオキシ酸塩、リン酸塩等のリンオキシ酸塩、ケイ酸塩等が挙げられる。
有機酸塩としては、カルボン酸塩、スルホン酸塩、ホスホン酸塩等が挙げられ、中でもカルボン酸塩が好ましく、その具体例としては、酢酸、プロピオン酸、イソプロピオン酸、ブタン酸、イソブタン酸、ペンタン酸、イソペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、イソヘプタン酸、オクタン酸、2−エチルヘキサン酸、ノナン酸、3,5,5−トリメチルヘキサン酸、デカン酸、ネオデカン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、マーガリン酸、ステアリン酸、アラキン酸、リンデル酸、ツズ酸、ペトロセリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、ギ酸、シュウ酸、スルファミン酸、ナフテン酸等の遷移金属塩が挙げられる。
遷移金属の錯体としては、β−ジケトン又はβ−ケト酸エステルとの錯体が使用され、β−ジケトン又はβ−ケト酸エステルとしては、例えば、アセチルアセトン、アセト酢酸エチル、1,3−シクロヘキサジオン、メチレンビス−1,3ーシクロヘキサジオン、2−ベンジル−1,3−シクロヘキサジオン、アセチルテトラロン、パルミトイルテトラロン、ステアロイルテトラロン、ベンゾイルテトラロン、2−アセチルシクロヘキサノン、2−ベンゾイルシクロヘキサノン、2−アセチル−1,3−シクロヘキサンジオン、ベンゾイル−p−クロルベンゾイルメタン、ビス(4−メチルベンゾイル)メタン、ビス(2−ヒドロキシベンゾイル)メタン、ベンゾイルアセトン、トリベンゾイルメタン、ジアセチルベンゾイルメタン、ステアロイルベンゾイルメタン、パルミトイルベンゾイルメタン、ラウロイルベンゾイルメタン、ジベンゾイルメタン、ビス(4−クロルベンゾイル)メタン、ビス(メチレン−3,4−ジオキシベンゾイル)メタン、ベンゾイルアセチルフェニルメタン、ステアロイル(4−メトキシベンゾイル)メタン、ブタノイルアセトン、ジステアロイルメタン、アセチルアセトン、ステアロイルアセトン、ビス(シクロヘキサノイル)−メタン及びジピバロイルメタン等を用いることが出来る。本発明において、遷移金属触媒(b‐3)は、単独で用いることも、又は二種以上を組み合わせて用いることもできる。
上記遷移金属触媒(b‐3)は、少なくとも樹脂(b‐1)中に存在するのが好ましく、樹脂(b‐1)の酸化反応の進行を促進し、効率良く酸素を吸収することができる。より好ましくは、遷移金属触媒(b‐3)は樹脂(b‐1)及び樹脂(b‐2)中に存在させて、樹脂(b‐2)のトリガー機能を促進させることができる。また、遷移金属触媒(b‐3)の配合量は、使用する遷移金属触媒の特性に応じて樹脂(b‐1)の酸化反応を進行できる量であれば良く、樹脂(b‐1)の酸化反応を十分に促進し、流動特性の悪化による成形性低下の防止の点から、一般的には10〜3000ppmの範囲が好ましく、50〜1000ppmの範囲がより好ましい。
本発明の酸素吸収性樹脂組成物における樹脂(b‐2)の上記トリガー機能の作用機構に関しては、その全てが解明されているわけではないが、その1つとして本発明者らの検討により以下のような機構が推察されるが、上記トリガー機能の作用機構はこれに限定されるものではない。
本発明の酸素吸収性樹脂組成物では、始めに遷移金属触媒(b‐3)により樹脂(b‐2)の水素の引き抜きが起こり、ラジカルが発生し、続いて、このラジカルによる攻撃と遷移金属触媒(b‐3)により樹脂(b‐1)の水素の引き抜きが起こり、樹脂(b‐1)にもラジカルが発生し、このようにして生じたラジカルの存在下で、酸素が樹脂(b‐1)と接触したときに樹脂(b‐1)の初期酸化が起こると考えられる。以降、樹脂(b‐1)の酸化反応は遷移金属触媒の作用により自動酸化の理論に従って連鎖的に進行し、樹脂(b‐1)自体が酸素吸収剤として機能すると考えられる。このトリガー効果の発現において、ベンジル基の存在が極めて重要であり、ベンジル基を含むスチレン系共重合体においては、ベンジル炭素のC−H結合解離エネルギーが他のC−H結合より低いことからベンジルラジカルが最初に発生し、上記トリガー作用を引き起こすと推察される。
本発明の酸素吸収層(B)は、例えば、以下の方法により形成することができる。上記成分(b‐1)〜(b‐3)の混合については、この三成分を別個に混合してもよく、また、上記三成分の内、二成分を予め混合し、これと残りの成分を混合してもよい。例えば、樹脂(b‐1)と樹脂(b‐2)とを予め混合し、これに遷移金属触媒(b‐3)を混合する方法や、樹脂(b‐1)と遷移金属触媒(b‐3)とを予め混合し、これに樹脂(b‐2)を混合する方法、或いは樹脂(b‐2)と遷移金属触媒(b‐3)とを予め混合し、これに樹脂(b‐1)を混合する方法が挙げられる。
樹脂(b‐1)及び/又は樹脂(b‐2)に、遷移金属触媒(b‐3)を混合するには、種々の手段を用いることができる。例えば、遷移金属触媒(b‐3)を樹脂に乾式でブレンドする方法や、遷移金属触媒(b‐3)を有機溶媒に溶解し、この溶液と、粉末又は粒状の樹脂とを混合し、必要によりこの混合物を不活性雰囲気下により乾燥する方法等がある。遷移金属触媒(b‐3)が樹脂に比して少量であるので、ブレンドを均質に行うため、遷移金属触媒(b‐3)を有機溶媒に溶解し、この溶液と、粉末又は粒状の樹脂とを混合する方法が好ましい。
遷移金属触媒(b‐3)を溶解させる溶媒としては、メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコール系溶媒、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、n−ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素系溶媒を用いることができる。遷移金属触媒(b-3)の濃度は、5〜90重量%が好ましい。
樹脂(b-1)、樹脂(b-2)及び遷移金属触媒(b-3)を混合するとき、及び混合した組成物を保存するときは、使用前にこの組成物が酸化しないように、非酸化性雰囲気中で行うことが好ましい。即ち、減圧下又は窒素気流中で混合又は保存を行うことが好ましい。
ベント式又は乾燥機付の押出成形機や射出成形機を使用すると、成形工程の前段階で混合及び乾燥を行うことができ、遷移金属触媒が配合された樹脂の保存に格別の配慮が不要になるため好ましい。
また、遷移金属触媒を比較的高い濃度で含有する樹脂のマスターバッチを調製し、これを未配合の樹脂と乾式ブレンドして調製することもできる。
酸素吸収層(B)には、ラジカル開始剤や光増感剤等の種々の添加剤を配合することができる。これらのうち、前述のハイシリカ型ゼオライトを含有させるのが好ましい。これらは、酸素吸収層(B)中に、0.5〜5重量%とするのが好ましく、特に1〜3重量%であるのが好ましい。
酸素吸収層(B)の厚みは5〜50μmとするのがよい。
また、酸素吸収層Bとして、ガスバリヤー性樹脂と炭素−炭素二重結合を有する樹脂を含有する酸素吸収性樹脂組成物を用いることもできる。この酸素吸収性樹脂組成物に用いるガスバリヤー性樹脂としては、酸素バリヤー層(A―1)において、記載したものが好適に用いられる。炭素−炭素二重結合を有する樹脂については、樹脂(b-2)において記載した鎖状又は環状の共役又は非共役ポリエンから誘導された単位を含む樹脂が好適に用いられる。この酸素吸収層Bには、必要に応じて遷移金属触媒等の酸化触媒を含有することができる。遷移金属触媒としては、遷移金属触媒(b-3)に記載した化合物が好適に用いられる。
酸素バリヤー層(A−1)の外層側にポリオレフィン系樹脂層(D−1)を設けることができる。ここでポリオレフィン系樹脂層(D−1)に使用するポリオレフィン系樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂があげられる。
ポリオレフィン系樹脂層(D−1)の厚みは20〜500μmとするのがよい。
層(C)の内層側に、第2の酸素バリヤー層(A−2)を設けることができる。ここで、第2の酸素バリヤー層(A−2)としては、酸素バリヤー層(A−1)について説明したのと同様の酸素バリヤー性樹脂があげられる。
第2の酸素バリヤー層(A−2)の厚みは3〜50μmとするのがよい。
さらに、本発明では、第2の酸素バリヤー層の内層側にポリオレフィン系樹脂層(D−2)を設けることができる。ここでポリオレフィン系樹脂層(D−2)に使用するポリオレフィン系樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂層(D−1)の項で説明したのと同様のポリオレフィン系樹脂があげられる。
ポリオレフィン系樹脂層(D−2)の厚みは50〜1000μmとするのがよい。
本発明ではさらに、酸素吸収層(B)の外側に、2番目の上記臭気捕捉用樹脂組成物からなる層(C)を設けるのも好ましい。このようにすると一層効果的に、酸素吸収層(B)から生成する酸化副生物を捕捉でき、味や香りに関する問題を解決することができる。
本発明のプラスチック多層構造体の1態様の層構成例を図1に示す。
本発明の積層体を構成する各樹脂層間に必要により接着剤樹脂を介在させることもできる。この場合、酸素バリヤー層(A−1)と酸素吸収層(B)の間、熱可塑性樹脂層(C)と第2の酸素バリヤー層(A−2)の間、酸素バリヤー層(A−1)とポリオレフィン系樹脂層(D−1)の間、酸素バリヤー層(A−2)とポリオレフィン系樹脂層(D−2)の間、に接着剤樹脂を介在させるのが好ましい。
また、酸素吸収層(B)がガスバリヤー性樹脂と炭素−炭素二重結合を含有する酸素吸収性樹脂組成物からなる場合には、酸素吸収層(B)と層(C)との間に接着剤樹脂を介在させるのが好ましい。
このような接着剤樹脂としては、カルボン酸、カルボン酸無水物、カルボン酸を主鎖又は側鎖に、1〜700ミリイクイバレント(meq)/100g樹脂、好ましくは、10〜500meq/100g樹脂、の濃度で含有する重合体が挙げられる。
接着剤樹脂としては、例えば、エチレン−アクリル酸共重合体、イオン架橋オレフィン共重合体、無水マレイン酸グラフトポリエチレン、無水マレイン酸グラフトポリプロピレン、アクリル酸グラフトポリオレフイン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、共重合ポリエステル、共重合ポリアミド等があり、これらを二種以上の組み合わせたものでもよい。
これらの接着剤樹脂は、同時押出又はサンドイッチラミネーション等による積層に有用である。また、予め形成されたガスバリヤー性樹脂フィルムと耐湿性樹脂フィルムとの接着積層には、イソシアネート系又はエポキシ系等の熱硬化型接着剤樹脂も使用される。
本発明のプラスチック多層構造体を構成する各層には、各種添加剤、例えば、充填剤、着色剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、酸化防止剤、老化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、金属セッケンやワックス等の滑剤、改質用樹脂又はゴム等の添加剤などを必要に応じて、それ自体公知の処方に従って添加することができる。
本発明のプラスチック多層構造体の製造には、例えば、それ自体公知の共押出成形法を用いることができる。例えば、樹脂の種類に応じた数の押出機を用いて、多層多重ダイを用いて押出成形を行うことで積層体が成形できる。
これにより、フィルム、シート、ボトル、カップ、キャップ、チューブ形成用パリソン又はパイプ、ボトル又はチューブ成形用プリフォーム等の積層体が成形できる。
フィルム等の包装材料は、種々の形態の包装袋として用いることができる。例えば、三方又は四方シールの通常のパウチ類、ガセット付パウチ類、スタンディングパウチ類、ピロー包装袋等が挙げられる。製袋は公知の製袋法で行うことができる。
パリソン、パイプ又はプリフォームを一対の割型でピンチオフし、その内部に流体を吹込むことにより容易にボトルが成形できる。また、パイプ、プリフォームを冷却した後、延伸温度に加熱し、軸方向に延伸すると共に、流体圧によって周方向にブロー延伸することにより、延伸ブローボトル等が得られる。
さらに、フィルム又はシートを、真空成形、圧空成形、張出成形、プラグアシスト成形等の手段に付することにより、カップ状、トレイ状等の包装容器が得られる。
多層射出成形体の製造には、樹脂の種類に応じた数の射出成形機を用いて、共射出法や逐次射出法により多層射出成形体を製造することができる。
さらに、多層フィルムや多層シートの製造には、押出コート法や、サンドイッチラミネーションを用いることができ、また、予め形成されたフィルムのドライラミネーションによって多層フィルムあるいはシートを製造することもできる。
本発明のプラスチック多層構造体は、酸素を有効に遮断するので、包装材又は包装容器に好ましく使用できる。この積層体は長期間酸素を吸収できるので、内容物の香味低下を防止し、シェルフライフを向上させる容器として有用である。
特に、酸素存在下で劣化を起こしやすい内容品、例えば水分を含む食品、例えば飲料ではビール、ワイン、フルーツジュース、炭酸ソフトドリンク等、食品では果物、ナッツ、野菜、肉製品、幼児食品、コーヒー、ジャム、マヨネーズ、ケチャップ、食用油、ドレッシング、ソース類、佃煮類、乳製品類等、その他では医薬品、化粧品等の包装材に有用である。
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
参考例、実施例及び比較例に使用したゼオライトの特徴を表1に示す。
Figure 0005024718
参考例1
[ゼオライトの吸着性能評価]
本発明に用いるゼオライトの吸着性能を評価するため、以下の分析を行った。
水添スチレン−ブタジエン共重合体(タフテック P2000:旭化成(株)製)5重量部、低密度ポリエチレン(JB221R:日本ポリエチレン(株)製)95重量部、及びコバルト換算で90ppmのステアリン酸コバルトを、二軸押出機により200℃でブレンドして作製した酸素吸収材を凍結粉砕した粉体0.1g(試験1)、この前記酸素吸収材粉体0.1gとゼオライトNa−ZSM−5−100の粉末を1mg(試験2)をそれぞれ内容積85ccの密封容器中に封入して酸化させた場合の容器ヘッドスペースガスをパージ&トラップ式(Tekmar4000)のGC−MS(Agilent社製、カラムDB-1)で分析した。結果を図2に示す。図中、図2a及び2bは、それぞれ、試験1及び2の結果を示す。
図2から明らかなように、ゼオライトを封入することによって、ヘッドスペースガス中のアルデヒド、アルコール、炭化水素などが激減していることがわかる。特に、炭素数が4以上の水溶性の低い化合物、すなわちオクタノール/水分配係数が0以上のヘテロ原子含有化合物や炭化水素は、臭気ばかりでなく味覚にも悪影響する物質であるが、これらの悪影響物質が特に効率良くゼオライトにより減少していることが分かる。
次に、ゼオライトNa−ZSM−5−100について、酸化副生成物のモデル物質である数種類のアルデヒド、アルコールに対する吸着性能を、以下の方法で調べた。
なお、各物質のオクタノール/水分配係数Powは、JIS Z 7260−107に従い求めた。化合物のオクタノール/水分配係数の一例を表2に示す。
Figure 0005024718
湿度30%RH以下の環境中で、ゼオライト粉末0.5〜2.0mgを内容量22mlのヘッドスペースガスクロマトグラフィー(GC)用のバイアルに入れてバイアル内を窒素置換した。吸着分子として炭素数が4以上のアルデヒド、アルコール類、ケトンを用いて、これらの1wt%メタノール溶液又はアセトン溶液5〜10μlをバイアルにそれぞれ封入した。このバイアルを30℃で保管して1日後にGCの測定を行い、このときの測定値とブランク値との差から揮発性物質の吸着量を算出した。
また、調湿用としてガラスインサートに蒸留水0.15mlを入れたバイアルで同様の評価を行い、湿度100%RHでのゼオライトの吸着性能も同様に評価した。結果を表3に示す。












Figure 0005024718
表3より、本発明に用いるシリカ/アルミナ比が80以上のゼオライトは、アルデヒド、アルコール類、ケトンのいずれに対しても優れた捕捉性能があることが分る。図3には本発明に用いたゼオライトの走査型電子顕微鏡(SEM)測定の結果を示した。図3bの粗粒子の断面からわかるように、ゼオライトの粒子はサブミクロン以下の粒子から形成された柘榴状構造を呈している。粒子が密に充填することで粒子間に二次的な空間が生まれ、吸着性能をさらに向上させる要因の一つにもなりうる。
表3には、これらのハイシリカ型ゼオライトは、通常のゼオライトや多孔質シリカが化学物質に対する捕捉能力が低下するような高湿度条件の方が乾燥条件より、化学物質の捕捉性能が向上するという、興味深い事実が示されている。このことは、日本のような湿度の高い環境において、水分を含有する内容品を保管する容器に適用する場合、本発明に用いるシリカ/アルミナ比が80以上のゼオライトは好適な酸化副生物捕捉剤として作用することを意味している。
[評価]
1.樹脂分解物の評価
作製した酸化副生成物捕捉材のペレットを、内面をポリプロピレン(PP)樹脂でラミネートしたアルミ袋に密封し、アルミ袋中のヘッドスペースガスについてGC−MS測定(ガスクロマトグラフィー−質量スペクトル測定)を行い、樹脂から生じる揮発性分解物を測定した。
尚、図4aは酸化副生成物捕捉材のベース樹脂のみのGC-MS測定結果、図4bは実施例1、図4cは比較例3の測定結果を示す。
2.樹脂の着色の評価
作製した酸化副生成物捕捉材の樹脂の着色について、目視試験で評価した。
3.臭気・味覚の評価
作製したボトルに、85〜90℃に加熱した蒸留水500mlを注ぎ、ボトルの開口部にアルミ箔をバリヤー層とする蓋材でヒートシールした。
このボトルを22℃−60%RH条件下で6ヶ月経時した後、前記蓋材を剥がし、ボトル内の臭気・味覚を官能試験で評価した。
臭気について、リファレンス(コントロール)ボトルとほぼ同等であるときを○、異臭・異味を感じたときを×とした。
4.内容物保存性の評価
作製したボトルに常温でマヨネーズをほぼ満注で充填し、ボトルの開口部にアルミ箔をバリヤー層とする蓋材をヒートシールした。
このボトルを30℃−80%RH条件下で3ヶ月保存した後、ボトル中のマヨネーズの味覚を官能試験で評価した。
味覚について、フレッシュなマヨネーズの味覚に近い場合を○、フレッシュなマヨネーズともリファレンスボトル中で保存したマヨネーズとも異なる異味を感じた場合を×とした。
実施例1
[臭気捕捉用樹脂組成物(以下、酸化副生物捕捉材ともいう)の作製]
出口部分にストランドダイを装着した二軸押出機(TEM−35B:東芝機械(株))を用いて、メインホッパーより低密度ポリエチレン(LDPE)樹脂を投入し、一方、粉体フィーダーを用いてゼオライトNa−ZSM−5−100を、樹脂990重量部に対して10重量部となるようにサイドフィードして、スクリュー回転数100rpmで高真空ベントを引きながら、成形温度200℃でストランドを引き、ペレタイズすることにより目的とする酸化副生成物捕捉材aのペレットを作製した。
作製したペレットは、内面をポリプロピレン(PP)樹脂でラミネートしたアルミ袋に密封した。
[酸素吸収層用樹脂組成物の作製]
LDPE樹脂(JB221R:日本ポリエチレン(株))95重量部に、水添スチレン−ブタジエン−スチレントリブロック共重合体(タフテック P2000:旭化成(株))2.5重量部、水添スチレン−ブタジエンラバー(ダイナロン 1320P:JSR(株))2.5重量部、及びステアリン酸コバルト(大日本インキ化学工業(株))をコバルト換算で90ppm配合し、出口部分にストランドダイを装着した二軸押出機(TEM−35B:東芝機械(株))を用いて、スクリュー回転数100rpmで高真空ベントを引きながら、成形温度200℃でストランドを引き、酸素吸収層用樹脂組成物Aのペレットを作製した。
[実施例に係るボトルの作製]
ダイレクトブロー成形機により、外層側からLDPE層(10)/接着剤層(1)/EVOH層(3)/接着剤層(1)/酸素吸収A層(10)/酸化副生物捕捉材a層(45)/接着剤層(1)/EVOH層(3)/接着剤層(1)/LDPE層(25)(括弧内は各層のボトル中の重量構成比)の5種10層から成り、胴部の最薄肉部の総厚みが300μm、内容量525ml、重量20gの多層ボトルを作製した。
[リファレンス(コントロール)ボトルの作製]
ダイレクトブロー成形機により、実施例に係るボトルの作成における同種の樹脂を用いて、外層側からLDPE層(10)/接着剤層(1)/EVOH層(3)/接着剤層(1)/LDPE層(55)/接着剤層(1)/EVOH層(3)/接着剤層(1)/LDPE層(25)(括弧内は各層のボトル中の重量構成比)の3種9層から成り、胴部の最薄肉部の総厚みが300μm、内容量525ml、重量20gの多層ボトルを作製した。
実施例2
[酸素吸収層用樹脂組成物の作製]
32モル%のエチレンを共重合したエチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂ペレット(EP−F101B:(株)クラレ)とコバルト含有率14wt%のネオデカン酸コバルト(DICNATE5000:大日本インキ化学工業(株))をコバルト量で350ppm配合し、撹拌乾燥機(ダルトン(株))で予備混練後、ホッパーに投入した。次いで、出口部分にストランドダイを装着した二軸押出機(TEM−35B:東芝機械(株))を用いて、液体フィーダーにより無水マレイン酸変性ポリイソプレン(LIR−403:(株)クラレ)を、ネオデカン酸コバルトを配合したエチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂950重量部に対して50重量部となるようにサイドフィードより混合し、スクリュー回転数100rpmで低真空ベントを引きながら、成形温度200℃でストランドを引き、酸素吸収層用樹脂組成物Bのペレットを作製した。
[実施例に係るボトルの作製]
ダイレクトブロー成形機により、外層側からLDPE層(10)/接着剤層(1)/EVOH層(3)/酸素吸収B層(6)/接着剤層(1)/酸化副生物捕捉材a層(45)/接着剤層(1)/EVOH層(3)/接着剤層(1)/LDPE層(29)(括弧内は各層のボトル中の重量構成比)の5種10層とした以外は、実施例1と同様の多層ボトルを作製した。
[リファレンス(コントロール)ボトルの作製]
ダイレクトブロー成形機により、実施例に係るボトルの作成における同種の樹脂を用いて、外層側からLDPE層(10)/接着剤層(1)/EVOH層(9)/接着剤層(1)/LDPE層(45)/接着剤層(1)/EVOH層(3)/接着剤層(1)/LDPE層(29)の層構成(括弧内は各層のボトル中の重量構成比)とした以外は、実施例1に記載したリファレンスボトルと同様の3種9層の多層ボトルを作製した。
実施例3
[酸化副生物捕捉材の作製]
エチレン−ビニルアルコール共重合体(EP−F101B:(株)クラレ)を用い、配合比を樹脂950重量部に対して50重量部とした以外は、実施例1と同様に酸化副生物捕捉材bを作製した。
[実施例に係るボトルの作製]
ダイレクトブロー成形機により、外層側からLDPE層(10)/接着剤層(1)/酸化副生物捕捉材b層(3)/接着剤層(1)/酸素吸収A層(10)/LDPE層(45)/接着剤層(1)/酸化副生物捕捉材b層(3)/接着剤層(1)/LDPE層(25)(括弧内は各層のボトル中の重量構成比)から成る4種10層の多層ボトルとした以外は、実施例1と同様の多層ボトルを作製した。
実施例4
[実施例に係るボトルの作製]
ダイレクトブロー成形機により、外層側からLDPE層(10)/接着剤層(1)/酸化副生物捕捉材b層(3)/酸素吸収B層(6)/接着剤層(1)/LDPE層(45)/接着剤層(1)/酸化副生物捕捉材b層(3)/接着剤層(1)/LDPE層(29)(括弧内は各層のボトル中の重量構成比)から成る4種10層の多層ボトルとした以外は、実施例1同様の多層ボトルを作製した。
比較例1
ダイレクトブロー成形機により、外層側からLDPE層(10)/接着剤層(1)/EVOH層(3)/接着剤層(1)/酸素吸収A層(10)/LDPE層(45)/接着剤層(1)/EVOH層(3)/接着剤層(1)/LDPE層(25)(括弧内は各層のボトル中の重量構成比)の4種10層から成る多層ボトルとした以外は、実施例1と同様の多層ボトルを作製した。
臭気、味覚評価において、強い異臭、異味が感じられた。また、内容物保存性の評価においても、強い異味が感じられた。
比較例2
[比較例に係るボトルの作製]
ダイレクトブロー成形機を用いて、外層側より、LDPE層(10)/接着剤層(1)/EVOH層(3)/酸素吸収B層(6)/接着剤層(1)/LDPE層(45)/接着剤層(1)/EVOH層(3)/接着剤層(1)/LDPE層(29)(括弧内は各層のボトル中の重量構成比)の4種10層の多層ボトルとした以外は、実施例1と同様の多層ボトルを作製した。
臭気、味覚評価において、強い異臭、異味が感じられた。また、内容物保存性の評価においても、強い異味が感じられた。
比較例3
[酸化副生物捕捉材の作製]
ゼオライトH−ZSM−5−100を用いた以外は、実施例1と同様に酸化副生物捕捉材cを作製し、樹脂の分解物及び着色の評価を行ったが、用いたゼオライトがH型であるためゼオライトの触媒作用により樹脂の分解を誘発して飽和及び不飽和炭化水素が発生し、わずかに異臭が認められ、また、樹脂の着色もわずかに認められた。
従って、比較例3においては、多層構造体での臭気・味覚の評価及び内容物保存性の評価は行わなかった。
比較例4
[酸化副生物捕捉材の作製]
エチレン−ビニルアルコール共重合体(EP−F101B:(株)クラレ)及びゼオライトH−ZSM−5−100を用いた以外は、実施例1と同様に酸化副生物捕捉材dを作製し、樹脂の着色の評価したところ著しい着色が認められた。
従って、比較例4においては、多層構造体での臭気・味覚の評価及び内容物保存性の評価は行わなかった。
比較例5
[酸化副生物捕捉材の作製]
ゼオライトEX122を用いた以外は、実施例1と同様に酸化副生物捕捉材eを作製し、樹脂の分解及び着色の評価を行ったが、樹脂の分解は起こらず、着色も認められなかった。
また、上記酸化副生物捕捉材eを用いた以外は、実施例1と同様の5種10層ボトルを作製し、臭気・味覚を評価したところ、異臭・異味を感じた。また、内容物保存性の評価においては、弱い異味が感じられた。
これは、比較例5で用いたゼオライトEX122は、SiO2/Al23の値が小さく、酸化副生物を効率よく捕捉できないためと考えられる。
比較例6
[比較例に係るボトルの作製]
酸化副生物捕捉材eを用いた以外は、実施例2と同様の5種10層のボトルを作製し、臭気・味覚を官能試験で評価したところ、異臭・異味を感じた。また、内容物保存性の評価においては、弱い異味が感じられた。
比較例7
[酸化副生物捕捉材の作製]
エチレン−ビニルアルコール共重合体(EP−F101B:(株)クラレ)及びゼオライトEX122を用いた以外は、実施例1と同様に酸化副生物捕捉材fを作製した。このとき、樹脂の分解は起こらず、着色も認められなかった。
また、上記酸化副生成物捕捉材fを用いた以外は、実施例3と同様の5種10層ボトルを作製し、臭気・味覚を評価したところ、異臭・異味を感じた。また、内容物保存性の評価においては、弱い異味が感じられた。
比較例8
[比較例に係るボトルの作製]
酸化副生物補足材fを用いた以外は、実施例4と同様の4種10層のボトルを作製し、臭気・味覚を官能試験で評価したところ、異臭・異味を感じた。また、内容物保存性の評価においては、弱い異味が感じられた。
上述した実施例及び比較例の結果を表4に示す。
Figure 0005024718
本発明のプラスチック多層構造体の1態様の層構成例を示す。 各種ゼオライトを用いたときの酸化生成物の吸着性能を示す。 本発明に用いたゼオライトの走査型電子顕微鏡(SEM)写真を示す。 交換カチオンの種類と樹脂の分解性を示す。

Claims (8)

  1. 酸素バリヤー層(A−1)、酸素吸収層(B)、シリカ/アルミナ比が80以上及び交換カチオンがナトリウムイオンであるZSM−5型ゼオライトが熱可塑性樹脂マトリックス中に分散して含有されている臭気捕捉用樹脂組成物からなる層(C)を有することを特徴とするプラスチック多層構造体。
  2. 熱可塑性樹脂マトリックスが、リグラインド樹脂、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、線状超低密度ポリエチレン(LVLDPE)及びエチレン−酢酸ビニル共重合体よりなる群から選択される樹脂の1種である請求項1に記載のプラスチック多層構造体
  3. エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)からなる酸素バリヤー層、酸素吸収層(B)、接着剤層、シリカ/アルミナ比が80以上及び交換カチオンがナトリウムイオンであるZSM−5型ゼオライトが、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、線状超低密度ポリエチレン(LVLDPE)及びエチレン−酢酸ビニル共重合体からなる群から選ばれる熱可塑性樹脂マトリックス中に分散して含有されている臭気捕捉用樹脂組成物からなる層をこの順序で有することを特徴とするプラスチック多層構造体。
  4. 酸素吸収層(B)が、分子構造にエチレン構造を有する熱可塑性樹脂(b−1)、水添スチレン−ジエン共重合体(b−2)、及び遷移金属触媒(b−3)を含有する請求項1又は3記載のプラスチック多層構造体。
  5. 酸素吸収層(B)が、ガスバリヤー性樹脂、及び炭素−炭素二重結合を有する有機成分を含有する請求項1又は3記載のプラスチック多層構造体。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項記載のプラスチック多層構造体で形成されてなる容器。
  7. 水分を含む食品を収容するための請求項6記載の容器の使用。
  8. 水分を含む食品を請求項6記載の容器に収容した容器詰食品。
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