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JP5013445B2 - ピストンリング、それを備えたピストンおよびそれらの使用方法 - Google Patents

ピストンリング、それを備えたピストンおよびそれらの使用方法 Download PDF

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Description

本発明は潤滑油に煤などの異物が混入しても相手攻撃性が低く耐摩耗性に優れたピストンリング、およびそれを備えたピストンに関する。
近年のエンジンの軽量化、高出力化に伴い、エンジンを構成するピストンリングにおいても、軽量化や耐摩耗性等の特性の向上が要求される。このため、シリンダと摺接する外周面や、ピストンリング溝と摺接する、ピストンの往復動方向に対向する対向面に、PVD法によるCrN膜等の皮膜形成、Crめっき、窒化処理等の表面処理を施して耐摩耗性の向上を図っている。また、ピストンリングの薄幅化や形状の改良も種々試みられている。
しかし、表面にCrN膜や窒化層を持つピストンリングでは、アルミニウム合金製ピストンのピストンリング溝に対する攻撃性が問題となる。すなわち、ピストンリング表面のCrN膜等とピストンリング溝とが摺接すると、CrN膜等の表面にアルミニウムが凝着し、ピストンリング溝が摩耗してしまう。
このため、従来より、ピストンリング溝に耐摩環ニレジスト鋳鉄の鋳ぐるみ、アルマイト処理等の表面処理を施して、ピストンリング溝を強化する対策が講じられている。一方、アルミニウムの凝着を抑制するという観点から、特許文献1には、Si、Ti、W、Cr等の元素を5〜40at%含むダイヤモンドライクカーボン(DLC)膜が上下面(対向面)に形成されたピストンリングが開示されている。また、特許文献2には、上下面(対向面)に、W、Niを含む第1硬質炭素皮膜と、Siを50〜70wt%含む第2硬質炭素皮膜とが積層して形成されたピストンリングが開示されている。
しかしながら、ピストンリング溝の強化や、上記特許文献1、2に記載された方法によっても、アルミニウムの凝着、ピストンリングおよびピストンリング溝の摩耗の抑制は充分とはいえない。例えば、シール性を向上させるため、ピストンリングの形状をインターナルベベル形状とした場合、実働時にピストンリングがねじれ変形することにより、ピストンリングのエッジ部分とピストンリング溝とが局部的に摺接する。また、軽量化を図るべくピストンリングを薄幅化した場合にも、ピストンリングはねじれ変形し易い。特許文献1、2では、ピストンリングの対向面とピストンリング溝との摺動を想定している。このため、両文献に記載された方法では、このような局部当たりによるアルミニウムの凝着、ピストンリングおよびピストンリング溝の摩耗を抑制することはできない。
また、特許文献2に開示されたピストンリングには、Siを50〜70wt%含む第2硬質炭素皮膜が形成されている。Si含有量が多いため、第2硬質炭素皮膜の耐摩耗性は低い。加えて、第2硬質炭素皮膜にはアルミニウムが凝着し易く、ピストンリングおよびピストンリング溝の摩耗が進行し易い。
ところで、ディーゼルエンジン等では、エンジン油中に混入する煤などの異物がエンジン性能に影響を与えることが知られている。具体的には、エンジン油に煤が混入することで、油の粘度が増加し燃費の悪化を引き起こしたり、混入する煤の量が増加することで摺動部の摩耗が増大したり、などの問題を招く。特にピストンリングでは、ピストンリング自体はもちろん、ピストンリングと摺接するピストンリング溝やシリンダの摩耗が問題となる。なお、一般的に「煤」とは、燃料もしくはエンジン油の未完全燃焼生成物である。
特許文献3に開示されている炭素や酸素を固溶させたCrN膜、特許文献4に開示されている高クロムマルテンサイト系鋼の窒化処理による窒化層、などの硬質な表面をもつピストンリングであれば、ピストンリングの耐摩耗性は向上する。しかしながら、特許文献3、4に記載されたピストンリングを用いても、たとえば、相手材として耐摩環ニレジスト鋳鉄の鋳ぐるみ、アルマイト処理等の表面処理を施したピストンリング溝を用いた場合には、硬質な煤の存在によりアブレッシブ摩耗が生じ、リング溝は摩耗する。すなわち、従来のピストンリング溝やシリンダを用いる場合には、ピストンリングの表面にCrN膜などを形成するだけでは、煤による相手材の摩耗までを低減させることは困難である。
特開平11−166625号公報 特開2003−14122号公報 特開平10−306386号公報 特開2002−30394号公報
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、潤滑油に煤などの異物が混入しても相手攻撃性が低く耐摩耗性に優れたピストンリング、およびそれを備えたピストンを提供することを課題とする。
(1)本発明のピストンリングは、0.5重量%以上10重量%以下の煤を含む潤滑油の存在下で使用されるピストンリングであって、
ピストンリング本体と、該ピストンリング本体の表面の少なくとも摺動面を被覆する非晶質硬質炭素膜と、からなり、
該非晶質硬質炭素膜のSi含有量は1at%以上10at%以下、H含有量は20at%以上40at%以下、ナノインデンターを用いた試験により求めた硬さは7GPa以上20GPa以下、ナノインデンターを用いた試験により求めた弾性率は70GPa以上160GPa以下であることを特徴とする。
本発明のピストンリングは、Si含有量が1at%以上10at%以下であり、かつH含有量が20at%以上40at%以下である非晶質硬質炭素膜を備える。本非晶質硬質炭素膜は、アモルファス構造を有し、表面が平滑で、他の金属や窒化物に比べて表面エネルギーが小さい。このため、本非晶質硬質炭素膜と相手材とが摺動しても、相手材が凝着し難い。また、本非晶質硬質炭素膜は、上記所定量のSiを含むため耐摩耗性に優れ、低摩擦係数を示す。よって、本発明のピストンリングと相手材とを摺動させる場合に、本非晶質硬質炭素膜を摺動面とすれば、相手材の凝着は抑制され、ピストンリング自体および相手材の摩耗が低減される。
加えて、本発明のピストンリングは、非晶質硬質炭素膜の硬さは7GPa以上20GPa以下であり、かつ、弾性率は70GPa以上160GPa以下である。ピストンリングの摺動が煤や摩耗粉などの異物を含む潤滑油の存在下で行われると、これらの異物がアブレッシブ材として作用し、ピストンリング自体や相手材の摩耗を増大させる。上記の所定の物性値をもち低弾性特性をもつ非晶質硬質炭素膜は、このような条件下において変形して異物の一部を膜中に埋没させて保持することで、異物の存在により生じる摺動面の凹凸を実質的に低減し、相手材に対するアブレッシブ作用が低減される。たとえば、鋼製の基材の表面に低弾性特性をもつ非晶質硬質炭素膜(DLC−Si膜)を形成したピストンリング(図23左側)と、高弾性特性をもつCrN膜を形成したピストンリング(図23右側)と、のそれぞれを同じ条件でニレジスト鋳鉄からなる相手材と摺動させる。高弾性特性をもつCrN膜では、異物による変形は起こらず、異物の凹凸によって相手材のアブレッシブ摩耗が促進される。他方、低弾性特性をもつDLC−Si膜では、膜自体が変形して異物が保持されるため、異物による凹凸が低減され、相手材の摩耗が抑制される。
したがって、例えば、本発明のピストンリングをピストンに組み付けた場合、ピストンリング溝との摺動面を本非晶質硬質炭素膜で構成すれば、ピストンリング溝に鋳ぐるみやアルマイト処理が施された従来のピストンであっても、摩耗が低減される。
また、本非晶質硬質炭素膜はSiを含むため、摺動時に非晶質硬質炭素膜の表面にシラノール(SiOH)が生成される。生成したシラノールは、境界摩擦の低減に寄与していると考えられる。つまり、本発明のピストンリングは、低相手攻撃性、耐摩耗性に加え、低摩擦係数を示す。このため、本発明のピストンリングを採用すれば、摩擦によるエネルギー損失が低減し、燃費の向上につながる。
)本発明のピストンは、ピストンリング溝が周設されたピストン本体と、該ピストンリング溝に配置された上記本発明のピストンリングと、を備えることを特徴とする。たとえば、本発明のピストンリングとして、ピストンリング本体のピストンの往復動方向に対向する一対の対向面が非晶質硬質炭素膜で被覆された態様を採用した場合、実働時にはピストンリング溝と非晶質硬質炭素膜とが摺接する。この場合、ピストンリングおよびピストンリング溝の摩耗は少なく、摩擦係数も小さい。すなわち、ピストンリング溝(ピストン本体)に鋳鉄耐摩環の鋳ぐるみやアルマイト処理が施された従来のピストンであっても、凝着が抑制されるとともに異物による摩耗が低減される。
また、本発明のピストンは、シリンダ内に往復動可能に配置される。ここで、シリンダが鋳ぐるみやアルマイト処理が施された従来のシリンダであっても、上記同様の効果が得られる。すなわち、本発明のピストンリングとして、ピストンリング本体の外周面が非晶質硬質炭素膜で被覆された態様を採用することで、外周面と摺接するシリンダの内面に鋳ぐるみやアルマイト処理が施された従来のシリンダであっても、凝着が抑制されるとともに異物による摩耗が低減される。また、摩擦係数も小さくすることができる。
以下、本発明のピストンリングおよびピストンについて詳細に説明する。
〈ピストンリング〉
本発明のピストンリングは、ピストンリング本体と、ピストンリング本体の表面の少なくとも一部を被覆する非晶質硬質炭素膜と、からなる。ピストンリング本体の材質としては、炭素鋼、合金鋼、鋳鉄等の鉄系材料が望ましい。
非晶質硬質炭素膜は、炭素(C)、水素(H)、珪素(Si)を含む。Si含有量は1at%以上10at%以下である。Si含有量が1at%未満の場合には、耐摩耗性の向上効果および摩擦係数の低減効果が小さい。一方、Si含有量が10at%を超えると、耐摩耗性が低下することに加え、弾性率が高くなる。Si含有量を8at%以下、さらには5at%未満とすると好適である。
また、H含有量は、20at%以上40at%以下である。H含有量が20at%未満の場合には、非晶質硬質炭素膜の硬さは大きくなるが、密着力や靱性が低下する。好適なH含有量は25at%以上である。一方、H含有量が40at%を超えると、非晶質硬質炭素膜の硬さが小さくなり、耐摩耗性が低下する。H含有量を35at%以下、さらには30at%以下とすると好適である。
なお、ピストンリングの摺動に用いられる潤滑油は、本来は、異物をほとんど含まない潤滑油であるのが望ましい。エンジン油に混入する異物としては、使用条件によっても異なるが、金属や金属酸化物を含む摩耗粉や煤が挙げられる中でも煤は硬質であるため、摺動特性、特に摺動部材の摩耗に大きく影響する。煤の含有量が0.5重量%未満の潤滑油であれば、煤の存在により発生するアブレッシブ摩耗の影響はほとんどない。
一方、0.5重量%以上10重量%以下の煤を含む潤滑油の存在下で使用される本発明のピストンリングは、ピストンリング本体と、ピストンリング本体の表面の少なくとも一部を被覆する非晶質硬質炭素膜と、からなり、非晶質硬質炭素膜のSi含有量は1at%以上10at%以下、H含有量は20at%以上40at%以下、硬さは7GPa以上20GPa以下、弾性率は70GPa以上160GPa以下である。
なお、潤滑油は、一般に、煤の含有量が0.5重量%未満であれば、ガソリンエンジンのエンジン油と同等と見なすことができ、ディーゼルエンジン等のエンジン油であってもアブレッシブ摩耗の影響はほとんどない。煤の含有量が0.5重量%以上、さらには3.0重量%以上であると、摺動部が摩耗を受けやすい。本発明のピストンリングは、このような条件の下であっても、摩耗を低減できる。また、使用期間が経過してエンジン油中の煤の含有量が多くなる程、エンジン油の粘度は高くなることが知られている。煤が所定量を超えて含まれるエンジン油は、粘度が高くなり使用が困難となるため、通常、新鮮な油に交換される。本発明は、ディーゼルエンジンのエンジン油として用いられる可能性がある煤の含有量が0.5重量%以上10重量%以下のエンジン油を潤滑油として使用しても、優れた効果を発揮する。
非晶質硬質炭素膜の硬さは、7GPa以上20GPa以下である。7GPa以上とすれば、十分な耐摩耗性が得られる。10GPa以上とするとより好適である。また、ピストンリング本体の変形への追従性や相手材への攻撃性から、20GPa以下とする。15GPa以下であるとより好適である。
非晶質硬質炭素膜の弾性率は、70GPa以上160GPa以下である。シール性の点から70GPa以上とする。100GPa以上とすると好適である。また、非晶質硬質炭素膜は、相手材の弾性率よりも低いのが好ましく、弾性率が160GPa以下の非晶質硬質炭素膜は、変形して煤の一部を膜中に埋没させることができるため、相手材に対するアブレッシブ作用が低減される。
なお、鋼の弾性率は約200GPaである。非晶質硬質炭素膜の弾性率は160GPa以下であるため、鋼製のピストンリング本体が弾性変形した場合に、その変形に追従して非晶質硬質炭素膜被膜も変形し易い。その結果、非晶質硬質炭素膜の剥離が抑制される。特に、弾性率を130GPa以下とすると好適である。本明細書では、非晶質硬質炭素膜の硬さおよび弾性率の値として、ナノインデンター試験機(株式会社東陽テクニカ製 MTS)による測定値を採用する。
非晶質硬質炭素膜の表面粗さは、Rzjis3μm以下であることが望ましい。表面粗さがRzjis3μmを超えると、相手材への攻撃性が増し、摩擦係数の低減効果が小さくなる。表面粗さがRzjis1μm以下であるとより好適である。特に、シリンダと摺動する外周面の表面粗さは、他の面よりも小さい方が好ましく、燃費が向上する。なお、非晶質硬質炭素膜はピストンリング本体の表面の少なくとも一部を被覆するが、非晶質硬質炭素膜が被覆されていない部分の表面粗さについても同様である。表面粗さの算出方法は、JIS B 0601(1994)に規定された方法に従う。
非晶質硬質炭素膜は、プラズマCVD法、イオンプレーティング法、スパッタリング法等、既に公知のCVD法、PVD法により形成することができる。しかし、スパッタリング法に代表されるように、PVD法は指向性の成膜方法である。よって、PVD法で均一に成膜するためには、装置内に複数のターゲットを配置したり、成膜する基材(ピストンリング本体)を回転させることが必要となる。その結果、成膜装置の構造が複雑化し、高価になる。また、PVD法では、ピストンリング本体の内周面への成膜は容易ではない。
一方、プラズマCVD法は、反応ガスにより成膜するため、複雑な形状のものにでも容易に成膜することができる。また、成膜装置の構造も単純で安価である。プラズマCVD法には、例えば、高周波放電を利用する高周波プラズマCVD法や、直流放電を利用する直流プラズマCVD法等がある。特に、直流プラズマCVD法は、真空炉と直流電源とからなるシンプルな構成の成膜装置で実施でき、プラズマCVD法の中でも最も安価であるため好適である。また、直流プラズマCVD法は、ピストンリング本体の内周面を含めた表面に同時に成膜できるので、ピストンリングへの成膜に特に好適である。
例えば、非晶質硬質炭素膜を、直流プラズマCVD法により成膜する場合には、まず、真空容器内にピストンリング本体を配置して、反応ガスおよびキャリアガスを導入する。そして、放電により反応ガス中のプラズマイオンを基材に付着させればよい。反応ガスには、メタン(CH4)、アセチレン(C22)等の炭化水素ガスと、Si(CH34[TMS]、SiH4、SiCl4、SiH24等の珪素化合物ガスとを用い、キャリアガスには水素ガス、アルゴンガス等を用いればよい。
ピストンリングは、摺動面圧の高い摺動環境で使用される。このため、耐久性を考慮して、非晶質硬質炭素膜の膜厚は厚い方がよい。例えば、膜厚を2μm以上、好ましくは5μm以上とすればよい。さらには10μm以上とするとより好適である。なお、非晶質硬質炭素膜の硬さが小さく、弾性率が低い場合には、10μm以上に厚く成膜しても、非晶質硬質炭素膜の剥離や破損は少なく、表面も平滑である。なお、特に、0.5重量%以上10重量%以下の煤を含む潤滑油の存在下で使用される場合には、3μm以上、好ましくは5μm以上とすればよい。
また、ピストンリング本体から非晶質硬質炭素膜の剥離を抑制するためには、ピストンリング本体と非晶質硬質炭素膜との密着力を10N以上とすることが望ましい。20N以上とするとより好適である。なお、特に、0.5重量%以上10重量%以下の煤を含む潤滑油の存在下で使用される場合には、15N以上、好ましくは25N以上とすればよい。ピストンリング本体と非晶質硬質炭素膜との密着力には、通常のスクラッチ試験による膜の剥離荷重を採用する。すなわち、頂角120度、先端半径0.2mmのダイヤモンドコーンに荷重をかけて膜を引掻き、膜が剥離した時の荷重を密着力とする。
ピストンリング本体と非晶質硬質炭素膜との密着性を向上させるという観点から、非晶質硬質炭素膜が形成されるピストンリング本体の表面には、予めイオン衝撃法による凹凸形成処理が施されていることが望ましい。
具体的には、まず、容器内にピストンリング本体を設置し、容器内のガスを排気して所定のガス圧とする。次に、凹凸形成用ガスの希ガスを容器内に導入する。次に、グロー放電またはイオンビームによりイオン衝撃を行い、ピストンリング本体の表面に数十nmの凹凸を形成する。また、ピストンリング本体の表面に、均一で微細な凹凸を形成するため、凹凸形成処理の前に、窒化処理を施しておくとよい。窒化処理の方法としては、例えば、ガス窒化法、塩浴窒化法、イオン窒化法がある。
本発明のピストンリングは、所望の特性を得るため、種々の形状を採用することができる。ここで、非晶質硬質炭素膜は、ピストンリング本体の形状や相手材の材質等を考慮して、ピストンリング本体の表面に適宜形成すればよい。例えば、ピストンリング本体の表面が、外周面、内周面、およびピストンの往復動方向に対向する一対の対向面を持つ場合、以下の態様が挙げられる。非晶質硬質炭素膜を、実働時にシリンダ側に配置される外周面に形成した態様では、シリンダとの摩擦係数が低下し、シリンダの摩耗が抑制される。また、非晶質硬質炭素膜を、外周面と縮径方向に対向する内周面や一対の対向面に形成した態様では、ピストンリング溝との摩擦係数が低下し、相手材の凝着がなく、ピストンリング溝の摩耗が抑制される。
また、ピストンリング本体の表面は、外周面、内周面、およびピストンの往復動方向に対向する一対の対向面に加えて、さらに該内周面と該一対の対向面の少なくとも一方との間に、面取り部を有する内周側コーナー部を持つ態様を採用することができる。この態様では、内周面と対向面との間のエッジ部分が面取りされるため、ピストンリング溝への攻撃性は低下する。また、面取り部を含む内周側コーナー部を非晶質硬質炭素膜で被覆することで、ピストンリングがねじれ変形し、内周側コーナー部がピストンリング溝へ局部的に摺接しても、相手材の凝着、ピストンリングおよびピストンリング溝の摩耗を抑制することができる。さらに、ピストンリングおよびピストンリング溝の耐摩耗性を向上させ、摩擦係数の低減を図るためには、内周側コーナー部に加え、ピストンリング本体の一対の対向面をも非晶質硬質炭素膜で被覆すると望ましい。
ピストンリングの軽量化、および相手材との摩擦低減を図るためには、ピストンリング幅は薄い方が望ましい。従来は、ピストンリング幅を薄くすると、ピストンリングがねじれ変形し易くなるため、局部当たりによるピストンリング溝の摩耗が生じていた。しかし、少なくとも内周側コーナー部が非晶質硬質炭素膜で被覆された上記本発明のピストンリングによれば、ピストンリング幅を薄くしても、ピストンリング溝の摩耗は進行し難い。例えば、本発明のピストンリングでは、ピストンリング本体の一対の対向面間の幅を0.6mm以上1.5mm以下とすることが望ましい。特に1.2mm以下の場合には、軽量化および摩擦低減効果が大きい。なお、特に、0.5重量%以上10重量%以下の煤を含む潤滑油の存在下で使用される場合には、0.6mm以上3.5mm以下とすることが望ましく、さらには0.6mm以上1.7mm以下、0.8mm以上1.7mm以下、0.8mm以上1.3mm以下とすればよい。
以下に、内周側コーナー部を持つ本発明のピストンリングの実施形態を挙げる。図1に、本発明の第一実施形態のピストンリングの一部断面図を示す。図1に示すように、ピストンリング5は、ピストンリング本体50と非晶質硬質炭素膜51とからなる。
ピストンリング本体50は、外周面52と、内周面53と、上面54と、下面55とを持つ。上面54と下面55とは、ピストンの往復動方向に対向する一対の対向面に相当する。内周面53と上面54との間には、第一面取り部56が配置される。内周面53と下面55との間には、第二面取り部57が配置される。第一面取り部56と第二面取り部57とは、ともに曲面状を呈する。本実施形態では、ピストンリング本体50の表面は、二つの内周側コーナー部を持つ。内周側コーナー部はそれぞれ第一面取り部56と第二面取り部57とからなる。
また、外周面52と上面54との間には、第三面取り部58が配置される。外周面52と下面55との間には、第四面取り部59が配置される。第三面取り部58と第四面取り部59とは、第一面取り部56、第二面取り部57と同じ曲面状を呈する。
非晶質硬質炭素膜51は、第一面取り部56および第二面取り部57を含むピストンリング本体50の全表面を被覆する。
本実施形態では、内周面53と上面54、下面55との間に、それぞれ曲面状の第一面取り部56、第二面取り部57が設けられる。そして、両面取り部56、57は非晶質硬質炭素膜51で被覆される。このため、実働時にピストンリング5がねじれ変形し、第一面取り部56、第二面取り部57がピストンリング溝へ局部的に摺接しても凝着が発生することなく、ピストンリング溝の摩耗は抑制される。また、ピストンリング本体50の全表面が非晶質硬質炭素膜51で被覆されるため、シリンダおよびピストンリング溝の摩耗が抑制され、摩擦係数も小さい。
図2に、本発明の第二実施形態のピストンリングの一部断面図を示す。なお、図1と対応する部材は、同じ符号で示す。第二実施形態と第一実施形態との相違点は、各面取り部の形状を曲面状から平面状に変更した点である。それ以外の構成は、第一実施形態と同じであるため、ここでは、相違点のみ説明する。
図2に示すように、内周面53と上面54との間には、第一面取り部60が配置される。内周面53と下面55との間には、第二面取り部61が配置される。第一面取り部60と第二面取り部61とは、ともに平面状を呈する。本実施形態では、ピストンリング本体50の表面は、二つの内周側コーナー部を持つ。内周側コーナー部はそれぞれ第一面取り部60と第二面取り部61とからなる。
また、外周面52と上面54との間には、第三面取り部62が配置される。外周面52と下面55との間には、第四面取り部63が配置される。第三面取り部62と第四面取り部63とは、第一面取り部60、第二面取り部61と同じ平面状を呈する。
本実施形態では、第一面取り部60、第二面取り部61が、ともに平面状を呈し、非晶質硬質炭素膜51で被覆される。このため、上記第一実施形態と同様の効果が得られる。
図3に、本発明の第三実施形態のピストンリングの一部断面図を示す。なお、図1と対応する部材は、同じ符号で示す。第三実施形態と第一実施形態との主な相違点は、ピストンリング本体の形状をインターナルベベル形状とした点である。
図3に示すように、ピストンリング5は、ピストンリング本体50と非晶質硬質炭素膜51とからなる。ピストンリング本体50は、外周面52と、内周面53と、上面54と、下面55とを持つ。内周面53の上部は下方に向かって縮径するテーパー状を呈する。内周面53と下面55との間には、第一面取り部64が配置される。第一面取り部64は曲面状を呈する。本実施形態では、ピストンリング本体50の表面は、一つの内周側コーナー部を持つ。内周側コーナー部は第一面取り部64からなる。
また、外周面52と上面54との間には、第三面取り部65が配置される。外周面52と下面55との間には、第四面取り部66が配置される。第三面取り部65と第四面取り部66とは、平面状を呈する。
非晶質硬質炭素膜51は、第一面取り部64を含むピストンリング本体50の全表面を被覆する。
本実施形態では、内周面53と下面55との間に、曲面状の第一面取り部64が設けられる。そして、第一面取り部64は、非晶質硬質炭素膜51で被覆される。このため、第一面取り部64のピストンリング溝への攻撃性は低い。よって、ピストンリング本体がインターナルベベル形状であっても、第一面取り部64がピストンリング溝に摺接することによる相手材の凝着、ピストンリング5およびピストンリング溝の摩耗は抑制される。また、本実施形態によれば、シール性の向上等のインターナルベベル形状特有の効果も得られる。
以上、内周側コーナー部を持つ本発明のピストンリングの実施形態を説明したが、同ピストンリングは、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、ピストンリング本体の全表面を非晶質硬質炭素膜で被覆した。しかし、非晶質硬質炭素膜は、少なくとも内周側コーナー部の一つを被覆すればよく、それ以外の表面については、必要に応じて適宜被覆すればよい。また、ピストンリング本体も種々の形状を採用することができる。
上記実施形態では、外周面と一対の対向面との間にも、それぞれ面取り部を配置した。しかし、これらの面取り部は、いずれか一方のみでもよく、または無くてもよい。上記実施形態では、内周側コーナー部の面取り部を、平面状または曲面状とした。例えば、曲面状とする場合には、曲率半径が一定のR形状とするとよい。なお、面取り部の好適な寸法については後述する。
上記実施形態では、内周側コーナー部を面取り部のみから構成した。しかし、内周側コーナー部は、面取り部と、該面取り部から対向面に続く境界部と、からなり、該境界部は曲面状を呈する態様を採用することが望ましい。面取り部と対向面との間に曲面状の境界部を設けると、エッジ部分が無くなるため、内周側コーナー部に形成された非晶質硬質炭素膜の剥離や欠けを抑制することができる。
以下に、内周側コーナー部の好適な態様を挙げる。図4に、本発明の第四実施形態のピストンリングの一部断面拡大図を示す。図4に示すように、内周側コーナー部は、ピストンリング本体70の内周面71と下面72との間に配置される。下面72は一対の対向面の一方に相当する。内周側コーナー部は、面取り部73と、境界部74とからなる。面取り部73は、内周面71に続き、平面状を呈する。境界部74は、面取り部73と下面72とを連結し、曲面状を呈する。
図5に、本発明の第五実施形態のピストンリングの一部断面拡大図を示す。図4と対応する部材は、同じ符号で示す。図5に示すように、内周側コーナー部は、面取り部75と、境界部76とからなる。面取り部75は、内周面71に続き、曲面状を呈する。境界部76は、面取り部75と下面72とを連結し、曲面状を呈する。
ここで、境界部は、曲率半径が一定のR形状であることが望ましい。この場合、曲率半径をR10〜1000mmとすると好適である。R10mm未満の場合には、R加工が難しく、非晶質硬質炭素膜の剥離や欠けの抑制効果も充分ではない。また、R1000mmを超えると、シール性が低下し、オイル消費等のピストンリングの性能が問題となる。なお、0.5重量%以上10重量%以下の煤を含む潤滑油の存在下で使用される場合であっても、R10〜1000mmとすればよい。また、境界部の落差、すなわち、連続する対向面からの高さhは、0.0005mm以上0.015mm以下とすると好適である。境界部の落差が0.0005mm未満では、境界部を設けた効果が発揮されず、非晶質硬質炭素膜の剥離や欠けを充分に抑制することができない。一方、0.015mmを超えると、ガス通路面積が大きくなり不具合を生じるおそれがある。なお、0.5重量%以上10重量%以下の煤を含む潤滑油の存在下で使用される場合であっても、高さhは、0.0005mm以上0.015mm以下とすればよい。
面取り部の寸法、すなわち、面取り部を設けない場合の仮想外縁(図4、図5中一点鎖線で示す。)に対するピストンリング径方向の面取り長さa、およびピストン往復動方向の面取り長さbは、例えば0.05mm以上0.5mm以下とするとよい。0.05mm未満の場合には、面取り加工が難しく、非晶質硬質炭素膜の剥離や欠けの抑制効果も充分ではない。また、0.5mmを超えると、シール性が低下し、オイル消費等のピストンリングの性能が問題となる。なお、0.5重量%以上10重量%以下の煤を含む潤滑油の存在下で使用される場合であっても、0.05mm以上0.5mm以下とすればよい。
〈ピストン〉
本発明のピストンは、ピストンリング溝が周設されたピストン本体と、該ピストンリング溝に配置された上記本発明のピストンリングと、を備える。0.5重量%以上10重量%以下の煤を含む潤滑油の存在下で使用される場合には、少なくともピストンリングの対向面と摺接するピストンリング溝の溝面およびその周縁部は、耐摩耗性の高い材料として従来からピストン本体に用いられている、耐摩環ニレジスト鋳鉄の鋳ぐるみ、または、溝面がアルマイト処理されたアルミニウム合金からなるとよい。アルマイト処理された表面の硬さはヴィッカース硬さでHv300〜400、ニレジスト鋳鉄の硬さはロックウェル硬さでHRB75〜92であり、耐摩耗性を有するため、煤によるリング溝の摩耗が低減される。
以下に、本発明のピストンの一実施形態を示す。図6に、本実施形態のピストンが配置されたシリンダの透過斜視図を示す。図7に、同ピストンに組み付けられたトップリングの斜視図を示す。
図6に示すように、ピストン2は、シリンダ1内に上下方向に往復動可能に配置される。シリンダ1は鋳鉄製である。ピストン2はアルミニウム合金製である。ピストン2を構成するピストン本体20には、ピストンリング溝21が三つ周設される。ピストンリング溝21には、いずれも鋳ぐるみ、アルマイト処理等の表面処理は施されていない。つまり、ピストン本体20とピストンリング溝21とは同じ材質である。ピストンリング溝21には、上から順にトップリング30、セカンドリング31、オイルリング32がそれぞれ組み付けられる。トップリング30、セカンドリング31、オイルリング32は、それぞれ本発明のピストンリングに含まれる。
図7に示すように、トップリング30を構成するトップリング本体300は、外周面301と、内周面304と、上面302と、下面303と、を持つ。トップリング本体300はCr鋼製であり、本発明におけるピストンリング本体に相当する。また、上面302と下面303とは、ピストン2の往復動方向に対向する一対の対向面に相当する。外周面301と、内周面304と、上面302と、下面303とは、Si含有量1at%以上10at%以下、H含有量20at%以上40at%以下の非晶質硬質炭素膜(図略)で被覆される。また、トップリング30と同様に、セカンドリング31、オイルリング32における各面も同非晶質硬質炭素膜(図略)で被覆される。
ピストン2は、潤滑油の存在下でシリンダ1内を上下方向に往復動する。この時、ピストンリング30、31、32の各外周面を被覆する非晶質硬質炭素膜と、シリンダ1を構成するシリンダ本体10の内周面11とが、それぞれ摺接する。また、ピストンリング30、31、32の上下各面を被覆する非晶質硬質炭素膜と、ピストンリング溝21とが、それぞれ摺接する。このように、ピストンリング30、31、32では、シリンダ1との摺動面、およびピストンリング溝21との摺動面が、非晶質硬質炭素膜で被覆されている。よって、ピストンリング溝21との摺接による相手材の凝着は少なく、ピストンリング溝21の摩耗は抑制される。また、非晶質硬質炭素膜は摩耗し難いため、ピストンリング30、31、32は、耐摩耗性に優れる。さらに、ピストンリング30、31、32と、シリンダ1およびピストンリング溝21との摩擦係数は小さい。
0.5重量%以上10重量%以下の煤を含む潤滑油の存在下で使用される本発明のピストンは、少なくともピストンリングの外周面と摺接する内面およびその周縁部が高強度アルミニウム合金または鋳鉄からなるシリンダに往復動可能に配置されるとよい。高強度アルミニウム合金としては、たとえば、過共晶アルミニウム−シリコン系合金製の粉末押出材が挙げられる。また、鋳鉄としては、ニレジスト鋳鉄が挙げられる。さらに、鋳鉄やアルミニウム合金からなり内面に金属および/またはセラミックスからなる溶射被膜を形成したシリンダであってもよい。金属系溶射被膜としては、鉄またはアルミニウムを主成分とする溶射被膜、セラミックス系溶射被膜としては、アルミナ、クロミアなどの酸化物、炭化珪素などの炭化物、窒化珪素などの窒化物を主成分とする溶射被膜が挙げられる。また、サーメットであってもよい。溶射被膜は、少なくともピストンリングの外周面と摺接する内面に形成されていればよい。
以上、本発明のピストンの実施形態を説明したが、本発明のピストンは、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、トップリング、セカンドリング、オイルリングを、いずれも本発明のピストンリングで構成した。しかし、これらのいずれかを、従来のピストンリングと置き換えて構成してもよい。また、ピストンリングにおける非晶質硬質炭素膜の態様、被覆箇所、およびピストンリングの形状等については、上述した本発明のピストンリングの好適な態様を適宜採用することができる。
次に、本発明の実施例を、参考例および比較例とともに具体的に説明する。
〈非晶質硬質炭素膜について〉
(1)Si含有非晶質硬質炭素膜(以下、適宜「DLC−Si膜」と称す。)の形成
図8に示す直流プラズマCVD成膜装置を用いて、基材の表面に種々のDLC−Si膜を形成した。図8に示すように、直流プラズマCVD成膜装置4は、ステンレス製の容器40と、基台41と、ガス導入管42と、ガス導出管43とを備える。ガス導入管42は、バルブ(図略)を介して各種ガスボンベ(図略)に接続される。ガス導出管43は、バルブ(図略)を介してロータリーポンプ(図略)および拡散ポンプ(図略)に接続される。
まず、容器40内に設置された基台41の上に、基材45を配置した。基材45は、13Cr鋼(Hv380)製であり、その表面には窒化処理が施されている。次に、容器40を密閉し、ガス導出管43に接続されたロータリーポンプおよび拡散ポンプにより、容器40内のガスを排気した。容器40内にガス導入管42から水素ガスを15sccm導入し、ガス圧を約133Paとした。その後、容器40の内側に設けたステンレス製陽極板44と基台41との間に200Vの直流電圧を印加して、放電を開始した。そして、基材45の温度が500℃になるまで、水素ガスを用いたイオン衝撃による昇温を行った。
次に、ガス導入管42から水素ガスとアルゴンガスとを30sccmずつ導入し、圧力約533Pa、電圧300V(電流1.6A)、温度500℃でスパッタリングし、基材45の表面に微細な凹凸を形成した(凹凸形成処理)。凸部の幅は60nm、高さは30nmであった。次に、ガス導入管42から反応ガスとしてTMSおよびメタンガスを導入し、さらにキャリアガスとして水素ガスとアルゴンガスとを導入し、圧力約533Pa、電圧320V(電流1.8A)、温度500℃で成膜した。成膜時間を制御して、膜厚を2.7μmとした。
これとは別に、上記13Cr鋼製の基材の表面に、カソードアーク法によりDLC−Si膜を形成した。また、アークイオンプレーティング法によりCrN膜を、マグネトロンスパッタリング法によりW含有非晶質硬質炭素膜(以下「DLC−W膜」と称す。)と、H含有非晶質硬質炭素膜(以下「DLC−H膜」と称す。)とを、それぞれ形成した。
表1に、形成した各膜の成膜方法、組成、硬さ、弾性率、および密着力を示す。なお、表1には、窒化処理無しの基材(表中「13Cr鋼」と示す。以下同じ。)の硬さおよび弾性率、および、上記基材(表面に窒化処理)の硬さおよび弾性率を併せて示す。表1中、#1、#2のDLC−Si膜は、本発明を構成する非晶質硬質炭素膜に含まれる。
DLC−Si膜中のSi含有量は、電子プローブ微小部分析法(EPMA)、X線光電子分光法(XPS)、オージェ電子分光法(AES)、ラザフォード後方散乱法(RBS)により定量した。また、膜中のH含有量は、弾性反跳粒子検出法(ERDA)により定量した。ERDAは、2MeVのヘリウムイオンビームを膜表面に照射して、膜からはじき出される水素を半導体検出器により検出し、膜中の水素濃度を測定する方法である。
Figure 0005013445
(2)摩擦摩耗試験
往復動摩擦試験機(帝国ピストンリング株式会社製)を用いて摩擦摩耗試験を行い、表1に示した#1、#6、#8の各膜等の摩擦摩耗特性を評価した。図9に、往復動摩擦試験機の構成を示す。図9に示すように、往復動摩擦試験機8は、ピン型試験片80と、相手材となるプレート材81とから構成される。ピン型試験片80は13Cr鋼製であり、直径8mmの円柱状を呈する。ピン型試験片80の一端は、表面が鏡面仕上げされた球面部800を持つ。プレート材81はアルミニウム合金(AC8A)製である。プレート材81の大きさは17mm×7mm×70mmであり、表面粗さはRzjis1.0μmである。ピン型試験片80は、球面部800の頂部がプレート材81と当接する状態で設置される。
摩擦摩耗試験は、プレート材81にピン型試験片80を荷重29.4Nで押圧した状態で、プレート材81を図9中左右方向に往復動させて行った。往復動距離は50mm、往復サイクルは300cpm(cycles per minute)とした。ピン型試験片80とプレート材81との摺動部には、オイル供給パイプ82から、潤滑油として10W−30エンジンオイルを1.0ml/hで供給した。このように、ピン型試験片80とプレート材81とを1分間摺動させた後、摩擦係数を測定した。また、30分間摺動させた後、ピン型試験片80およびプレート材81の各摩耗深さを測定した。
摩擦摩耗試験は、ピン型試験片80の球面部800を何も表面処理せずに行った(上記#10)他、球面部800に上記#1(DLC−Si膜)、#6(DLC−W膜)、#8(CrN膜)の各膜をそれぞれ被覆して、また、上記#9の窒化処理を施して行った。図10、図11に、各摩擦摩耗試験の結果を示す。なお、図10に示した各摩耗量比は、窒化処理を施したものを基準として算出した。
図10に示すように、表面処理を施さなかった場合(13Cr鋼)には、ピン型試験片の摩耗量は非常に大きくなった。しかし、何らかの表面処理を施すことにより、ピン型試験片の摩耗を抑制できることがわかる。一方、相手材への攻撃性という観点から、表面処理を施した場合についてプレート材の摩耗量を比較すると、CrN膜>窒化処理>DLC−W膜>DLC−Si膜の順で小さくなった。これより、本発明を構成する非晶質硬質炭素膜は、相手材への攻撃性が最も低いことがわかる。
摩擦係数については、図11に示すように、13Cr鋼>窒化処理>CrN膜>DLC−W膜>DLC−Si膜の順で小さくなった。これより、本発明を構成する非晶質硬質炭素膜によれば、摩擦係数を低減できることがわかる。以上より、本発明を構成する非晶質硬質炭素膜は、耐摩耗性に優れ、低相手攻撃性、低摩擦係数を示すことが確認された。
(3)焼付試験
先の図9に示した往復動摩擦試験機を用いて焼付試験を行い、表1に示した#1、#6、#8の各膜等の耐焼付性を評価した。焼付試験は、プレート材81にピン型試験片80を荷重19.6Nで押圧した状態で、プレート材81を図9中左右方向に往復動させて行った。往復動距離は50mm、往復サイクルは200cpm(cycles per minute)とした。なお、ピン型試験片80の球面部800と、それと摺接するプレート材81の表面については、予め10W−30エンジンオイルを塗布し、その後拭き取っておいた。このように、ピン型試験片80とプレート材81とを摺動させて摩擦係数を測定し、摩擦係数が急激に上昇した時間を焼付時間とした。焼付試験は、上記摩擦摩耗試験と同様、ピン型試験片80の球面部800を何も表面処理せずに行った他、球面部800に上記#1(DLC−Si膜)、#6(DLC−W膜)、#8(CrN膜)の各膜をそれぞれ被覆して、また、上記#9の窒化処理を施して行った。図12に、各焼付試験における焼付時間比を示す。焼付時間比は、窒化処理を施したものを基準として算出した。
図12に示すように、窒化処理を施したり、CrN膜を形成しても、表面処理を施していない場合(13Cr鋼)よりも焼付時間は短くなった。つまり、これらの表面処理は耐アルミ凝着性に劣ることがわかる。これに対して、DLC−Si膜を被覆した場合には、焼付きは生じなかった。これは、アルミニウムの凝着が抑制されたことを意味する。これより、本発明を構成する非晶質硬質炭素膜は、耐アルミ凝着性に優れることが確認された。
(4)総合評価
上述した摩擦摩耗試験、焼付試験の両結果に基づいて、各表面処理における摺動特性を評価した。表2に評価結果をまとめて示す。
Figure 0005013445
表2に示すように、DLC−Si膜、つまり本発明を構成する非晶質硬質炭素膜は、耐摩耗性、耐焼付性に優れ、低い摩擦係数を示すことに加えて、アルミニウム合金製部材に対する攻撃性が極めて低い。よって、このような非晶質硬質炭素膜を備える本発明のピストンリングによれば、アルミニウムの凝着を抑制し、ピストンリング溝の摩耗を低減することができる。
次に、潤滑油として煤を含むエンジンオイルの使用を想定して、各膜等の摩擦摩耗特性を評価した。以下に、実施例を挙げて説明する。
(5)Si含有非晶質硬質炭素膜の形成
既に説明した図8に示す直流プラズマCVD成膜装置を用いて、窒化処理が施された10Cr鋼(Hv1000)製の基材の表面に、(1)と同様の手順で、DLC−Si膜を形成した。これとは別に、同様の基材の表面に、マグネトロンスパッタリング法によりW含有非晶質硬質炭素膜(DLC−W膜)を、アークイオンプレーティング法によりCrN膜を、それぞれ形成した。
表3に、形成した各膜の成膜方法、組成、硬さ、弾性率、および密着力を示す。なお、表3には、上記基材(表面に窒化処理)の硬さおよび弾性率を、#12として併せて示す。表3中、#11のDLC−Si膜は、本発明を構成する非晶質硬質炭素膜に含まれる。
DLC−Si膜中のSi含有量は、電子プローブ微小部分析法(EPMA)、X線光電子分光法(XPS)、オージェ電子分光法(AES)、ラザフォード後方散乱法(RBS)により定量した。また、膜中のH含有量は、既に説明した、弾性反跳粒子検出法(ERDA)により定量した。
Figure 0005013445
(6)摩擦摩耗試験
ブロック・オン・リング型摩擦試験機(FALEX社製LFW−1型試験機)を用いて摩擦摩耗試験を行い、表3に示した#11〜#14の各膜等の摩擦摩耗特性を評価した。図13にブロック・オン・リング型摩擦試験機の構成を示す。図13に示すように、ブロック・オン・リング型摩擦試験機8’は、リング試験片85と、相手材となるブロック試験片86と、から構成される。リング試験片85は窒化処理された10Cr鋼製であり、外径φ35mm幅7mmのリング状を呈する。ブロック試験片86はニレジスト鋳鉄製である。ブロック試験片86の大きさは6.3mm×15.7mm×10.1mmであり、表面粗さはRzjis0.08μmである。リング試験片85は、その外周面850がブロック試験片86の表面860と当接する状態で設置される。
摩擦摩耗試験は、リング試験片85にブロック試験片86を荷重600N(最大ヘルツ面圧310MPa)で押圧した状態で、リング試験片85を図13の矢印方向に回転させて行った。回転数は160rpm(0.3m/sec)とした。リング試験片85は、その半分程度が油槽89に満たされたエンジンオイル(150℃)に入っている。リング試験片85が回転すると、ブロック試験片86との摺動部には、エンジンオイルが潤滑油として供給される。このように、リング試験片85とブロック試験片86とを60分間摺動させた後、リング試験片85の重量変化およびブロック試験片86の摩耗深さを測定した。摩耗深さは、非接触式表面粗さ測定機(Zygo社製 NewView5022)により測定した。また、試験終了直前の摩擦係数を測定した。
摩擦試験は、リング試験片85の外周面850に上記#11(DLC−Si膜)、#13(DLC−W膜)、#14(CrN膜)の各膜をそれぞれ3μm以上の膜厚で被覆して、また、上記#12の窒化処理を施して行った。各リング試験片85の外周面850の表面粗さはRzjis1.6μmであった。また、エンジンオイルとしては、粘度グレードOW−20でMo−DTC配合のディーゼルエンジンオイルにカーボンブラックを6重量%分散させたカーボン分散エンジン油を用いた。#11と#12の表面処理を施したリング試験片85に関しては、カーボンが分散されていないエンジン油(単に「エンジン油」と記載)についても試験を行った。図14〜図20に、各摩擦試験の結果を示す。なお、試験は、各試料について2回実施し、図14〜図16には、その平均値を示す。
各リング試験片の摩耗重量を図14に示す。図14に示すように、DLC−Si膜の形成やピストンリングとして一般的な窒化処理を施すことで、エンジン油中でのリング試験片の摩耗を大きく抑制することができた。ところが、カーボン分散エンジン油中では、DLC−Si膜を形成しても、窒化処理を施しても、摩耗量が増加した。特に窒化処理を施した場合には、摩耗量の増大が著しかった。
DLC−Si膜を形成した場合には、エンジン油へのカーボン混入にともなう摩耗量の増加は、窒化処理のものよりも少なかった。すなわち、DLC−Si膜は優れた耐摩耗性を有することが分かった。一方、DLC−W膜は、カーボン分散エンジン油を用いた摩擦試験により、大きく摩耗した。DLC−Si膜とDLC−W膜とは同じ非晶質炭素膜であるが、Si原子による共有結合を有するDLC−Si膜は、高い耐摩耗性を有すると考えられる。
図14からは、煤などの異物が混入するエンジン油中での摺動において、摺動部材の耐摩耗性を確保するためには、DLC−Si膜もしくはCrN膜が有効であると判断された。しかしながら、図15に示すように、CrN膜を形成した場合には、ブロック試験片(相手材)の摩耗量が著しく多いことが分かった。すなわち、煤などの異物が混入するエンジン油中では、ピストンリングの表面にDLC−Si膜を用いることにより、ピストンリング自体の耐摩耗性と、ピストンリング溝などの相手材の摩耗低減と、を両立することができる。
また、図15に示すように、DLC−Si膜の形成やピストンリングとして一般的な窒化処理を施すことで、エンジン油中でのブロック試験片(相手材)の摩耗を抑制することことができた。エンジン油中での摩耗量に比べ、カーボン分散エンジン油中では、DLC−Si膜を形成した場合には、摩耗量の増加は小さかった。ところが、窒化処理を施した場合には、摩耗量の増大が著しく、相手攻撃性が高かった。これは、窒化処理後の弾性率が200GPaと高いため、カーボン粒子の存在により生じる相手材のアブレッシブ摩耗が低減されないためである。また、弾性率が350GPaであるCrN膜も同様の理由により、相手攻撃性が高かった。一方、DLC−Si膜は、他の膜等に比べ、相手材の摩耗を2分の1以下に低減できた。DLC−Si膜では、弾性率が128GPaと低いため、カーボン粒子はDLC−Si膜の変形によりカーボン粒子を膜中に埋没させて保持できるため、カーボン粒子のアブレッシブ作用が抑制される。
したがって、相手材の摩耗低減には形成される膜の弾性率が大きく影響し、形成される膜には少なくとも200GPa未満の弾性率が求められることが分かった。なお、DLC−W膜の弾性率は130GPaと低いが、既に述べたように、膜自体の摩滅が激しいため、それ自体の表面粗さが増大し、相手攻撃性が高くなる。
また、図16に各摩擦試験での摩擦係数を示すが、DLC−Si膜の摩擦係数が最も低かった。図17〜図20には、摩擦試験後の各試験片の表面粗さを示す。図中の矢印は、摺動方向である。図17〜図20のなかでも、リング試験片のDLC−Si膜(図17A)およびブロック試験片(図17B)の両者の表面が平滑化した。この摺動面の平滑化が、油膜の形成を促進し、摩擦低減に寄与したと推測される。
よって、このような非晶質硬質炭素膜を備える本発明のピストンリングであれば、煤を含む潤滑油の存在下であっても、相手攻撃性が低く耐摩耗性に優れる。
〈ピストンリングの形状について〉
(1)叩き摩擦試験
叩き摩擦試験を行い、ピストンリングの形状によるDLC−Si膜の密着性の違いを調べた。図21に、叩き摩擦試験機の構成を示す。また、図21中のA部の拡大図を図22に示す。図21に示すように、叩き摩擦試験機9は、ピストン材90と、リング保持部材91と、スプリング92とから構成される。
ピストン材90は、アルミニウム合金製であり、直径86mm、厚さ10mmの円柱状を呈する。ピストン材90の中には、軸直方向にピストン材ヒーター900が配置される。
リング保持部材91は、ピストン材90と対向して配置され、スプリング92で支持される。リング保持部材91の底部には、軸直方向にリング保持部材ヒーター910が配置される。ピストン材90と対向するリング保持部材91の上面には、環状のリング溝911が形成される。リング溝911の底部は、拡径方向において下方に傾斜している。リング溝911には、試験対象のピストンリング93が配置される。ピストンリング93は、リング保持部材91の上面から少し突出した状態で配置される。
図22に示すように、ピストンリング93は、ピストンリング本体930と、ピストンリング本体930の全表面を被覆するDLC−Si膜931と、からなる。ピストンリング本体930は、インターナルベベル形状を呈する。ピストンリング本体930の表面は、内周側コーナー部932を持つ。ピストンリング93は、内周側コーナー部932を上にして配置される。
叩き試験は、ピストン材90を上下方向に往復動させるとともに、リング保持部材91を繰り返し軸直水平面において180°回転、反転させて行った。これにより、ピストンリング93の内周側コーナー部932は、ピストン材90により叩かれる。叩き試験の条件は、叩き荷重を29.4N、58.8Nの二種類とし、ピストン材90の叩き速度700rpm、リング保持部材91の回転速度10cpm、試験温度200℃、試験時間3時間、潤滑無しとした。
(2)試験結果
内周側コーナー部の態様、およびDLC−Si膜の組成を変更して叩き試験を行った結果を表4に示す。表4中、境界部形状のかっこ内の数値は曲率半径を示す。また、表4には、DLC−Si膜に変えてDLC−H膜を被覆した場合(#33)、および被膜を形成しなかった場合(#34)の結果についても併せて示す。
Figure 0005013445
表4に示すように、Si量が1at%未満、または10at%を超えるDLC−Si膜を被覆した場合、荷重が低くても(29.4N)、内周側コーナー部の態様に関わらず膜の剥離が発生した。例えば、内周側コーナー部の態様が同じ#22、#28、#29、#33を比較すると、内周側コーナー部を被覆する膜の種類やSi含有量により、剥離の有無、つまり膜の密着性が異なることがわかる。Si含有量が1at%のDLC−Si膜を被覆した#22では、荷重が高くても(58.8N)、膜の剥離は発生しなかった。
なお、#30のピストンリングでは、面取り部と境界部とがともにエッジ状態、つまり本発明における内周側コーナー部を配置しなかったため、Si量が4at%であっても膜の剥離が発生した。一方、Si量が1at%以上10at%以下のDLC−Si膜を被覆し、かつ境界部を曲率半径10〜1000mmのR形状とした#21〜#24のピストンリングでは、荷重が高くても膜の剥離は発生しなかった。これより、膜の剥離を抑制するためには、内周側コーナー部、特に境界部の形状が重要であることがわかる。
本発明の第一実施形態のピストンリングの一部断面図である。 本発明の第二実施形態のピストンリングの一部断面図である。 本発明の第三実施形態のピストンリングの一部断面図である。 本発明の第四実施形態のピストンリングの一部断面拡大図である。 本発明の第五実施形態のピストンリングの一部断面拡大図である。 ピストンが配置されたシリンダの透過斜視図である。 同ピストンに組み付けられたトップリングの斜視図である。 直流プラズマCVD成膜装置の概略図である。 往復動摩擦試験機の概略図である。 摩擦摩耗試験におけるピン型試験片およびプレート材の摩耗量比を示すグラフである。 摩擦摩耗試験における摩擦係数の測定結果を示すグラフである。 焼付試験における焼付時間比を示すグラフである。 ブロック・オン・リング型摩擦試験機の概略図である。 ブロック・オン・リング型摩擦試験におけるリング試験片の摩耗重量を示すグラフである。 ブロック・オン・リング型摩擦試験におけるブロック試験片の摩耗深さを示すグラフである。 ブロック・オン・リング型摩擦試験における摩擦係数の測定結果を示すグラフである。 ブロック・オン・リング型摩擦試験後のリング試験片のDLC−Si膜(#11)の表面粗さ(図17A)およびブロック試験片の表面粗さ(図17B)を示す。 ブロック・オン・リング型摩擦試験後の窒化処理されたリング試験片(#12)の表面粗さ(図18A)およびブロック試験片の表面粗さ(図18B)を示す。 ブロック・オン・リング型摩擦試験後のリング試験片のDLC−W膜(#13)の表面粗さ(図19A)およびブロック試験片の表面粗さ(図19B)を示す。 ブロック・オン・リング型摩擦試験後のリング試験片のCrN膜(#14)の表面粗さ(図20A)およびブロック試験片の表面粗さ(図20B)を示す。 叩き摩擦試験機の概略図である。 図21中のA部の拡大図である。 異物によるアブレッシブ摩耗の発生メカニズムを示す説明図である。
符号の説明
1:シリンダ 10:シリンダ本体 11:内周面
2:ピストン 20:ピストン本体 21:ピストンリング溝
30:トップリング 31:セカンドリング 32:オイルリング
300:トップリング本体
301:外周面 302:上面 303:下面 304:内周面
4:直流プラズマCVD成膜装置 40:容器 41:基台 42:ガス導入管 43:ガス導出管 44:ステンレス製陽極板 45:基材
5:ピストンリング 50:ピストンリング本体 51:非晶質硬質炭素膜
52:外周面 53:内周面 54:上面 55:下面
56、60、64:第一面取り部 57、61:第二面取り部
58、62、65:第三面取り部 59、63、66:第四面取り部
70:ピストンリング本体 71:内周面 72:下面 73、75:面取り部 74、76:境界部
8:往復動摩擦試験機 80:ピン型試験片 800:球面部 81:プレート材 82:オイル供給パイプ 8’:ブロック・オン・リング型摩擦試験機
85:リング試験片 850:外周面 86:ブロック試験片
860:表面(摺動面)
9:叩き摩擦試験機 90:ピストン材 900:ピストン材ヒーター
91:リング保持部材 910:リング保持部材ヒーター 911:リング溝
92:スプリング 93:ピストンリング 930:ピストンリング本体
931:DLC−Si膜 932:内周側コーナー部

Claims (24)

  1. 0.5重量%以上10重量%以下の煤を含む潤滑油の存在下で使用されるピストンリングであって、
    ピストンリング本体と、該ピストンリング本体の表面の少なくとも摺動面を被覆する非晶質硬質炭素膜と、からなり、
    該非晶質硬質炭素膜のSi含有量は1at%以上10at%以下、H含有量は20at%以上40at%以下、ナノインデンターを用いた試験により求めた硬さは7GPa以上20GPa以下、ナノインデンターを用いた試験により求めた弾性率は70GPa以上160GPa以下であることを特徴とするピストンリング。
  2. 前記非晶質硬質炭素膜のSi含有量は、8at%以下である請求項1記載のピストンリング。
  3. 前記非晶質硬質炭素膜のSi含有量は、5at%未満である請求項2記載のピストンリング。
  4. 前記非晶質硬質炭素膜のH含有量は、25at%以上である請求項1〜3のいずれかに記載のピストンリング。
  5. 前記非晶質硬質炭素膜のH含有量は、35at%以下である請求項1〜4のいずれかに記載のピストンリング。
  6. ナノインデンターを用いた試験により求めた前記非晶質硬質炭素膜の硬さは、10GPa以上である請求項1〜5のいずれかに記載のピストンリング。
  7. ナノインデンターを用いた試験により求めた前記非晶質硬質炭素膜の弾性率は、130GPa以下である請求項1〜6に記載のピストンリング。
  8. ナノインデンターを用いた試験により求めた前記非晶質硬質炭素膜の弾性率は、100GPa以上である請求項1〜7のいずれかに記載のピストンリング。
  9. 前記非晶質硬質炭素膜の表面粗さはRzjis3μm以下である請求項1〜8のいずれかに記載のピストンリング。
  10. 前記非晶質硬質炭素膜は、直流プラズマCVD法で形成される請求項1〜9のいずれかに記載のピストンリング。
  11. 前記潤滑剤は、煤を3.0重量%以上含む請求項1〜10のいずれかに記載のピストンリング。
  12. 前記ピストンリング本体の前記表面は、外周面、内周面、およびピストンの往復動方向に対向する一対の対向面を持ち、
    該表面は、さらに該内周面と該一対の対向面の少なくとも一方との間に、面取り部を有する内周側コーナー部を持ち、
    前記非晶質硬質炭素膜は、少なくとも該内周側コーナー部の一つを被覆する請求項1〜11のいずれかに記載のピストンリング。
  13. 前記非晶質硬質炭素膜は、さらに前記一対の対向面を被覆する請求項12に記載のピストンリング。
  14. 前記面取り部は、平面状または曲面状を呈する請求項12または13に記載のピストンリング。
  15. 前記内周側コーナー部は、前記面取り部と、該面取り部から前記対向面に続く境界部と、からなり、
    該境界部は曲面状を呈する請求項12〜14のいずれかに記載のピストンリング。
  16. 前記境界部の曲率半径は、R10〜1000mmである請求項15に記載のピストンリング。
  17. 前記ピストンリング本体は、インターナルベベル形状をなす請求項12〜16のいずれかに記載のピストリング。
  18. 前記一対の対向面間の幅は0.6mm以上3.5mm以下である請求項12〜17のいずれかに記載のピストンリング。
  19. 前記潤滑油は、ディーゼルエンジンのエンジン油である請求項1〜18のいずれかに記載のピストンリング。
  20. ピストンリング溝が周設されたピストン本体と、
    該ピストンリング溝に配置された請求項1〜19のいずれかに記載のピストンリングと、
    を備えることを特徴とするピストン。
  21. 前記非晶質硬質炭素膜は、前記ピストンリングにおける前記ピストンリング溝との摺動面を被覆する請求項20に記載のピストン。
  22. 前記ピストン本体は、少なくとも前記ピストンリング溝の溝面がニレジスト鋳鉄からなる請求項20または21記載のピストン。
  23. 請求項1〜10および12〜19のいずれかに記載のピストンリングの使用方法であって、潤滑油中の煤が0.5重量%未満から0.5重量%以上10重量%以下になるまで使用されることを特徴とするピストンリングの使用方法。
  24. 請求項20〜22のいずれかに記載のピストンの使用方法であって、潤滑油中の煤が0.5重量%未満から0.5重量%以上10重量%以下になるまで使用されることを特徴とするピストンの使用方法。
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