JP5082122B2 - 繊維複合体の製造方法 - Google Patents
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Description
また、天然繊維及び熱可塑性樹脂繊維の混合物を交絡し、圧縮成形させてなる繊維基材も知られている。この繊維基材は、例えば、エアレイ装置により、搬送コンベア上に各繊維を供給し、交絡及び加熱圧縮等の工程を経て製造されている。
本発明は、補強繊維どうしの間に、熱膨張性カプセルが膨張(発泡)してなる熱可塑性樹脂が分散されており、軽量性及び剛性に優れた繊維基材である繊維複合体の効率的な製造方法を提供することを目的とする。
(1)補強繊維どうしが熱可塑性樹脂により結着された構造を有する繊維複合体の製造方法であって、
上記補強繊維は、植物性繊維及び無機繊維のうちの少なくとも一方であり、
上記補強繊維と熱可塑性樹脂繊維とが含まれたマットの表裏いずれか一面に、熱可塑性樹脂からなる殻壁を有する熱膨張性カプセルを供給する供給工程と、
上記マットの一面を押圧しつつ該マットの他面から加振して、該マットの一面に供給された上記熱膨張性カプセルを該マットの他面側へ向かって分散させる分散工程と、
上記マットを構成する上記熱可塑性樹脂繊維を溶融する溶融工程と、
上記マット内に分散された上記熱膨張性カプセルを加熱して膨張させる膨張工程と、を備え、
上記加振は、上記マットの移動方向に対して30〜90度の角度の方向へ振動させて行うことを特徴とする繊維複合体の製造方法。
(2)上記供給工程は、上記マットの一面に熱膨張性カプセルを静電塗布して行う上記(1)に記載の繊維複合体の製造方法。
(3)上記分散工程は、上記マットをコンベアで移動させながら行い、
上記押圧は、上記コンベアの移動方向へ上記マットが進むように回転されたローラで該マットの一面を押圧して行い、且つ、
上記加振は、上記マットのうちの押圧されている部分の他面から行う上記(1)又は(2)に記載の繊維複合体の製造方法。
(4)上記加振は、6mm以下の振幅で行う上記(1)乃至(3)のうちのいずれかに記載の繊維複合体の製造方法。
(5)上記溶融工程と上記膨張工程とを同時に行う上記(1)乃至(4)のうちのいずれかに記載の繊維複合体の製造方法。
(6)上記熱可塑性樹脂繊維を構成する第1の熱可塑性樹脂の融点が、上記熱膨張性カプセルの殻壁を構成する第2の熱可塑性樹脂の融点よりも低い場合であって、
上記溶融工程は、加圧して上記熱膨張性カプセルの膨張を抑制しつつ、上記第1の熱可塑性樹脂の融点以上且つ上記第2の熱可塑性樹脂の融点を超えない温度に加熱して行い、且つ、該溶融工程の後に上記膨張工程を行う上記(1)乃至(4)のいずれかに記載の繊維複合体の製造方法。
供給工程でマットの一面に熱膨張性カプセルを静電塗布して行う場合は、熱膨張性カプセルのロスを効果的に抑制でき、より低コストに繊維複合体を製造できる。
分散工程はマットをコンベアで移動させながら行い、押圧はコンベアの移動方向へマットが進むように回転されたローラでマットの一面を押圧して行い、且つ、加振はマットのうちの押圧されている部分の他面から行う場合は、より短時間でマット内に熱膨張性カプセルを高度に分散させることができる。
加振を6mm以下の振幅で行う場合は、特により短時間でマット内に熱膨張性カプセルを高度に分散させることができる。
溶融工程と膨張工程とを同時に行う場合は、繊維複合体の厚さをより確実に制御しながら軽量化を図ることができ、更には製造時間の短縮及び効率を更に図ることができる。
熱可塑性樹脂繊維を構成する第1の熱可塑性樹脂の融点が熱膨張性カプセルの殻壁を構成する第2の熱可塑性樹脂の融点よりも低い場合であって、溶融工程は加圧して熱膨張性カプセルの膨張を抑制しつつ、第1の熱可塑性樹脂の融点以上且つ第2の熱可塑性樹脂の融点を超えない温度に加熱して行い、且つ、溶融工程の後に膨張工程を行う場合は、繊維複合体の厚さをより確実に制御しながら軽量化を図ることができ、更には製造時間の短縮及び効率を更に図ることができる。更に、この方法では、溶融工程と膨張工程との間に、膨張されていない熱膨張性カプセルが高度に分散されて含有された膨張前繊維複合体を流通させることができる。従って、膨張させた後の繊維複合体を流通させる場合に比べてより嵩高さを押さえて低コストで輸送を行うことができる。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の繊維複合体の製造方法は、補強繊維どうしが熱可塑性樹脂により結着された構造を有する繊維複合体の製造方法であって、
上記補強繊維は、植物性繊維及び無機繊維のうちの少なくとも一方であり、
上記補強繊維と熱可塑性樹脂繊維とが含まれたマットの表裏いずれか一面に、熱可塑性樹脂からなる殻壁を有する熱膨張性カプセルを供給する供給工程と、
上記マットの一面を押圧しつつ該マットの他面から加振して、該マットの一面に供給された上記熱膨張性カプセルを該マットの他面側へ向かって分散させる分散工程と、
上記マットを構成する上記熱可塑性樹脂繊維を溶融する溶融工程と、
上記マット内に分散された上記熱膨張性カプセルを加熱して膨張させる膨張工程と、を備えることを特徴とする。更に、上記加振は、上記マットの移動方向に対して30〜90度の角度の方向へ振動させて行うことを特徴とする。
本方法ではマットを湿式法(抄紙法など)で形成してもよく、乾式法で形成してもよいが、湿式法を用いた場合には高度な乾燥工程を要することになるため乾式法が好ましい。特に補強繊維として植物性繊維を用いる場合には、植物性繊維が吸水性を有するためにとりわけ乾式法が好ましい。
また、マットの厚さは10mm以上(通常50mm以下、更には10〜30mm、特に15〜40mm)とすることができる。
尚、上記密度はJIS K7112(プラスチック−非発泡プラスチックの密度及び比重の測定方法)に準じて測定される値である。
この植物性繊維としては、ケナフ、ジュート麻、マニラ麻、サイザル麻、雁皮、三椏、楮、バナナ、パイナップル、ココヤシ、トウモロコシ、サトウキビ、バガス、ヤシ、パピルス、葦、エスパルト、サバイグラス、麦、稲、竹、各種針葉樹(スギ及びヒノキ等)、広葉樹及び綿花などの各種植物体から得られた植物性繊維が挙げられる。この植物性繊維は1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。これらのなかではケナフ(即ち、植物性繊維としてはケナフ繊維)が好ましい。ケナフは成長が極めて早い一年草であり、優れた二酸化炭素吸収性を有するため、大気中の二酸化炭素量の削減、森林資源の有効利用等に貢献できるからである。
また、上記植物性繊維として用いる植物体の部位は、特に限定されず、木質部、非木質部、葉部、茎部及び根部等の植物体を構成するいずれの部位であってもよい。更に、特定部位のみを用いてもよく2ヶ所以上の異なる部位を併用してもよい。
また、上記ジュートは、ジュート麻から得られる繊維である。このジュート麻には、黄麻(コウマ、Corchorus capsularis L.)、及び、綱麻(ツナソ)、シマツナソ並びにモロヘイヤ、を含む麻及びシナノキ科の植物を含むものとする。
上記植物性繊維は単用してもよく併用してもよい。
更に、植物性繊維及び無機繊維は、いずれか一方のみを単用してもよく、植物性繊維と無機繊維とを併用してもよい。これらのうちでは補強効果に優れること及び取扱い性が良いことから植物性繊維が好ましく、無機繊維のなかではガラス繊維が好ましい。更に、これらのうちでも環境的観点から植物性繊維のうちのケナフ繊維が特に好ましい。
また、その繊維径は1mm以下が好ましく、0.01〜1mmがより好ましく、0.02〜0.7mmが更に好ましく、0.03〜0.5mmが特に好ましい。この繊維径が上記範囲にあると、特に高い強度を有する繊維複合体を得ることができる。補強繊維として、上記の繊維長及び繊維径を外れるものを含んでもよいが、その繊維の含有量は、補強繊維の全体に対して10質量%(特に3体積%)以下であることが好ましい。これにより得られる繊維複合体の強度を高く維持できる。
尚、上記繊維長は平均繊維長を意味し(以下同様)、JIS L1015に準拠して、直接法にて無作為に単繊維を1本ずつ取り出し、置尺上で繊維長を測定し、合計200本について測定した平均値である。更に、上記繊維径は平均繊維径を意味し(以下同様)、無作為に単繊維を1本ずつ取り出し、繊維の長さ方向の中央における繊維径を光学顕微鏡を用いて実測し、合計200本について測定した平均値である。
熱可塑性樹脂繊維を構成する熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン、ポリエステル樹脂、ポリスチレン、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂及びABS樹脂などが挙げられる。このうち、ポリオレフィンとしては、ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン・プロピレンランダム共重合体などが挙げられる。ポリエステル樹脂としては、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン及びポリブチレンサクシネート等の脂肪族ポリエステル樹脂、並びに、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート及びポリブチレンテレフタレート等の芳香族ポリエステル樹脂などが挙げられる。アクリル樹脂はメタクリレート及び/又はアクリレート等を用いて得られた樹脂である。これらの熱可塑性樹脂は、補強繊維(特に補強繊維の表面)に対する親和性を高めるために変性された樹脂であってもよい。また、上記熱可塑性樹脂は単用してもよく併用してもよい。
上記ポリエステル樹脂としては、生分解性を有するポリエステル樹脂(以下、単に「生分解性樹脂」ともいう)が好ましい。この生分解性樹脂は、以下に例示される。
(1)乳酸、リンゴ酸、グルコース酸、3−ヒドロキシ酪酸等のヒドロキシカルボン酸の単独重合体;これらのヒドロキシカルボン酸のうちの少なくとも1種を用いた共重合体等のヒドロキシカルボン酸系脂肪族ポリエステル。
(2)ポリカプロラクトン、上記ヒドロキシカルボン酸のうちの少なくとも1種と、カプロラクトンとの共重合体等のカプロラクトン系脂肪族ポリエステル。
(3)ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンアジペート等の二塩基酸ポリエステル。
これらのうち、ポリ乳酸、乳酸と、乳酸以外の他の上記ヒドロキシカルボン酸との共重合体、ポリカプロラクトン、及び、上記ヒドロキシカルボン酸のうちの少なくとも1種と、カプロラクトンとの共重合体が好ましく、ポリ乳酸が特に好ましい。これらの生分解性樹脂は、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。尚、上記乳酸は、L−乳酸及びD−乳酸を含むものとし、これらの乳酸は単独で用いてもよく、併用してもよい。
また、その繊維径は0.001〜1.5mmが好ましく、0.005〜0.7mmがより好ましく、0.008〜0.5mmが更に好ましく、0.01〜0.3mmが特に好ましい。この繊維径が上記範囲にあると、熱可塑性樹脂繊維を切断させず、補強繊維と分散性よく交絡できる。なかでも補強繊維が植物性繊維である場合に特に適する。
特に補強繊維が植物性繊維である場合にあっては、植物性繊維と熱可塑性樹脂繊維との合計量を100質量%とした場合に、植物性繊維は10〜95質量%とすることが好ましく、20〜90質量%とすることがより好ましく、30〜80質量%とすることが特に好ましい。
尚、マットには、補強繊維及び熱可塑性樹脂繊維以外にも、又は、熱可塑性樹脂繊維内に添加剤(酸化防止剤、可塑剤、帯電防止剤、難燃剤、抗菌剤、防かび剤、着色剤等)が含まれてもよい。
尚、この熱膨張性カプセルは膨張した後、破泡して殻壁は不定形化してもよく、破泡することなく殻壁がカプセル形状を維持してもよい。更に、発泡剤を用いる場合、その発泡剤は、殻壁の外部に放出されてもよく、膨張後の殻壁内に一部又は全部が残存されてもよい。
また、熱膨張性カプセルの発泡倍率(発泡後体積/発泡前体積)は特に限定されないが、例えば、1.2〜5倍とすることができる。
一方、上記(2)の場合、即ち、溶融工程と膨張工程と同時に行う場合には、殻壁の軟化温度(発泡開始温度、第2の熱可塑性樹脂の軟化温度)は、熱可塑性樹脂繊維の軟化温度(第1の熱可塑性樹脂の軟化温度)に対して−30〜+60℃(より好ましくは−10〜+40℃)の範囲とすることが好ましい。
尚、上記軟化温度はいずれもJIS K7206「熱可塑性プラスチックのビカット軟化温度試験方法」による。
上記「押圧」は、マットの上記一面を押さえつけることである。マットを一面から押圧することで、マットの一面に供給された熱膨張性カプセルをマット内に押し込むと共に、加振によってマットと熱膨張性カプセルとが同じ動きをしてマット内へ熱膨張性カプセルが分散され難くなることを防止することができる。
更に、振動における最大加速度も特に限定されないが、3G以上であることが好ましく、5〜20Gがより好ましく、7〜15Gが更に好ましい。通常、この最大加速度は20G以下である。
更に、加振を行う手段は特に限定されず種々の装置を用いることができる。即ち、例えば、単に加振を行うだけの加振装置であってもよいが、部品搬送を行うためのフィーダ等を用いることもできる。フィーダとしては、電動フィーダを用いてもよく、電磁フィーダを用いてもよく、これらを併用してもよい。
これら2つの工程は、順不同で行うことができる。即ち、(1)溶融工程を先に行い、次いで、膨張行程を後に行ってもよく、(2)溶融工程と膨張工程とを同時に行ってもよく、(3)膨張工程を先に行い、次いで、溶融工程を後に行ってもよい。これらのなかでは、上記(1)又は(2)が好ましい。
また、膨張工程では、得られる繊維複合体の成形を同時に行うことができる。即ち、厚さ及び形状を制御することができる。例えば、膨張前成形体を膨張工程において十分に膨張させた上で、膨張後成形体を加圧圧縮して所望の厚さの繊維複合体を得ることもできる(即ち、成形工程を備える)が、膨張工程において、熱膨張性カプセルを膨張させる際に所望厚さのクリアランスを維持できる金型を用いて膨らみを適度に拘束しつつ、熱可塑性樹脂の温度を低下させることで、所望の厚さの繊維複合体を得ることができる。更に、金型に所望の凹凸形状を付与することで、凹凸形状を有する繊維複合体を得ることもできる。
図1は、溶融工程、膨張工程及び成形工程を、全て別装置を用いて別工程として行った場合を模式的に示している。即ち、溶融工程では、溶融手段61として熱間プレス機を用いて、熱膨張性カプセルが分散含有されたマット10bを加圧しながら、熱膨張性カプセルを膨張させることなく、熱可塑性樹脂繊維を溶融する。従って、この溶融工程の後には、膨張されていない熱膨張性カプセルが分散含有されながら、補強繊維は、熱可塑性樹脂繊維に由来する熱可塑性樹脂により結着されてなる繊維複合体(膨張前繊維複合体10c)が得られる。その後、膨張手段62としてオーブン等の各種炉を用いて、熱膨張性カプセルを膨張させることで、補強繊維が、熱可塑性樹脂繊維に由来する熱可塑性樹脂と、熱膨張性カプセルを構成していた殻壁に由来する熱可塑性樹脂と、の両方により結着された膨張後繊維複合体10cが得られる。次いで、膨張後繊維複合体を構成する熱可塑性樹脂の可塑性が失われない温度で、成形手段63として冷間プレス機を用いて成形を行うことで、繊維複合体からなる成形体が得られることとなる。尚、膨張工程の後に除熱されて可塑性が失われた場合には、再度加熱を行って賦形を行うこともできる。
尚、図1〜3では、いずれも溶融工程では、熱膨張性カプセルを膨張させないように加圧して熱可塑性樹脂繊維の溶融を行ったものとしているが、この加圧を行わないことにより、熱可塑性樹脂繊維の溶融と同時に、熱膨張性カプセルの膨張を行うこともできる。
本方法により得られた繊維複合体10cは、補強繊維11と、補強繊維11どうしを結着する熱可塑性樹脂30と、を含む(図6参照)。また、この繊維複合体は、図4〜6に示すように、補強繊維11と熱可塑性樹脂繊維12とが含まれたマット10aの表裏いずれか一面d1に熱膨張性カプセル20が供給され(供給工程)た後、マット10aの一面d1を押圧しつつマット10aの他面d2から加振して、マット10aの一面d1に供給された熱膨張性カプセル20をマット10aの他面d2側へ向かって分散させ(分散工程)て、その後、熱膨張性カプセルが内部に分散された熱膨張性カプセル分散マット10b(以下、単に「マット10b」ともいう)を構成する熱可塑性樹脂繊維12を溶融し(溶融工程)、マット10b内に分散された熱膨張性カプセル20を加熱して膨張させ(膨張工程)て、得られた繊維複合体10cである。
[1]繊維複合体の製造(実施例1−熱膨張性カプセル6質量部添加)
(1)マットの製造
補強繊維として植物性繊維(ケナフ繊維)を用いたマットを、図7に示すマット製造装置を用いて製造した。このマット製造装置では、植物性繊維及び熱可塑性樹脂繊維の混合繊維を2機のエアレイ装置(第1エアレイ装置及び第2エアレイ装置)を用いて2つのウェブ(第1ウェブ及び第2ウェブ)を調製し、これらのウェブを積層した後、ニードルパンチを行って2層のウェブどうしを交絡させて1層のマットを製造する装置である。更に、図7に示すように、このマット製造装置の後端には、得られたマットに熱膨張性カプセルを供給し、これをマット内に分散させる熱膨張性カプセル供給分散装置が連結されている。
上記(1)で得られたマット10aは、マット製造装置40に連結された熱膨張性カプセル供給分散装置50へ引き続いて搬送される。この熱膨張性カプセル供給分散装置50では、マット10aの一面に対して熱膨張性カプセルが供給され、その後、分散部52によりマット内部に熱膨張性カプセル20が分散されてマット10bが得られる。更に、熱膨張性カプセル供給分散装置50は、供給部(熱膨張性カプセル供給部)51と分散部52とを備える。供給部51は、熱膨張性カプセルをマット10aの一面d1へ供給する供給手段511を備え、分散部52は、マット10aの一面d1を押圧する押圧手段521及びマット10bの他面d2から加振する加振手段522を備える。本実施例では、供給手段511として静電塗布装置が用いられており、直流高電圧により帯電された熱膨張性カプセル20をスプレー(吐出)して、静電引力によりマット10aの一面d1に供給・付着させることができる。
上記(2)で熱膨張性カプセルが一面d1に供給されたマット10a(図4の状態にある)は、その後、熱膨張性カプセル供給分散装置50の分散部52へと送られて、分散工程に供される。この分散部52では、押圧手段521としては、幅100cm×直径10cmであり、表面材質がクロムメッキからなる搬送ローラ(マット10aを搬送させる方向へ回転されている)を用いた。この搬送ローラは、コンベア413とのクリアランスが10mmに維持されて回転されており、マット10aはこの搬送ローラに引き込まれて厚さが50%程度にまで圧縮されて押圧される(押圧力として換算した場合、1MPaに相当)。また、加振手段522としては、電磁フィーダ(駆動方式;電磁石、電源60Hzにおける振動数3600vpm、最大振幅;1.5mm、トラフ最大加速度;約12G)を用いた。
上記(3)で得られた熱膨張性カプセル分散マット10bは、その後、裁断機により裁断し、次いで、加熱プレス装置の平板金型内で溶融工程に供した。この加熱プレスに際しては、型温度235℃及びプレス圧力24kgf/cm2の条件で加熱プレスを行い、被加熱プレス物の内部温度210℃になったことを確認し、加熱プレスを停止した。その結果、厚さ2.5mmの膨張前繊維複合体が得られた。即ち、この膨張前繊維複合体内部では、熱可塑性樹脂繊維12は溶融されて補強繊維どうしを結着した状態にあるものの、加圧により熱膨張性カプセル20は膨張されていない状態にある。
上記(4)で得られた膨張前繊維複合体を、235℃に加熱されたオーブン内に搬送して、オーブン内で膨張前繊維複合体内部の温度が210℃(熱膨張性カプセル20の最大発泡温度208℃を超える温度)に達することを確認し、十分にオーブン内で熱膨張性カプセル20を膨張させて膨張後繊維複合体10cを得た。
その後、可塑性が失われる前に、すばやく膨張後繊維複合体を冷間プレス機の型内へ移動した。この冷間プレス機の型温度は40℃に調温されている。この冷間プレス機において面圧36kgf/cm2で60秒間加圧して、厚さ4mm、目付1,000g/m2、密度0.28g/cm3である繊維複合体10cを得た。
上記[1]において、熱可塑性樹脂繊維に換えて、ポリプロピレン樹脂(日本ポリプロ株式会社製、品名「ノバテック SA01」)と無水マレイン酸変性ポリプロピレン(三洋化成工業株式会社製、品名「ユーメックス 1001」)とを質量割合97:3(合計100質量%)で混合して繊維化(溶融紡糸法による)した酸変性ポリプロピレン繊維(平均径0.025mm、平均繊維長51mm)を用いた以外の条件はすべて同じにして、厚さ4mm、目付1,000g/m2、密度0.25g/cm2である実施例2の繊維複合体を得た。
上記[1]において、熱膨張性カプセル20を用いないこと以外の条件はすべて同じにして、厚さ4mm、目付1,000g/m2、密度0.27g/cm2である比較例1の繊維複合体を得た。
JIS K7171に準じて、最大曲げ荷重、曲げ強さ、及び曲げ弾性率を測定した。この測定に際しては、含水率約10%の状態における試験片(長さ150mm、幅50mm及び厚さ4mm)を用いた。そして、試験片を支点間距離(L)100mmとした2つの支点(曲率半径5.0mm)で支持しながら、支点間中心に配置した作用点(曲率半径3.2mm)から速度50mm/分にて荷重の負荷を行って各特性の測定を行った。その結果を下記各値が得られた。
実施例1 ; 38.02N
実施例2 ; 47.57N
比較例1 ; 21.14N
「曲げ強さ」
実施例1 ; 8.26MPa
実施例2 ; 10.33MPa
比較例1 ; 4.08MPa
「曲げ弾性率」
実施例1 ; 971.87MPa
実施例2 ; 980.60MPa
比較例1 ; 472.53MPa
この結果は、比較例1と同等の最大曲げ荷重、曲げ強さ及び曲げ弾性率を得るには実施例1の目付を約600g/m2まで小さくできることを意味する。また、比較例1と同等の最大曲げ荷重、曲げ強さ及び曲げ弾性率を得るには実施例2の目付を約500g/m2まで小さくできることを意味する。従って、本方法を用いて得られた繊維複合体は、従来の方法による繊維複合体に比べて著しい軽量化を達成できることが分かる。
(1)押圧手段の差異による効果
上記[1](3)における分散工程では、押圧手段として搬送ローラを用いたが、これに換えて重さ10kg且つ厚さ1cmの略正方形状の錘を押圧手段として用い、その他は同様にして分散工程を行った。その結果、同様な物性を確保できたが、律速となり、量産性を考慮した作業性おいて搬送ローラを用いた場合に劣っていた。
上記[1](3)における分散工程では、加振条件を、加振角度45度、振幅1mm、振動数3600vpmとしたが、この加振条件を変化させてその効果の比較を行った。その結果、下記に示すように試験1の加振条件が優れていることが分かった。
[試験1]加振条件;加振角度45度、振幅1mm、振動数3600vpm
分散具合;10秒以内でマット表面から白色状態が目視されなくなり、
極めて効率的な分散ができた。
[試験2]加振条件;加振角度30度、振幅6mm、振動数900vpm
分散具合;10秒超過後にマット表面から白色状態が目視されなく
なり、試験1の条件に比べると劣るものの、分散可能である
ことが分かる。
[試験3]加振条件;加振角度40度、振幅2mm、振動数3000vpm
分散具合;10秒超過後にマット表面から白色状態が目視されなく
なり、試験1の条件に比べると劣るものの、分散可能である
ことが分かる。
101;第1ウェブ、102;第2ウェブ、103;積層ウェブ、
40;マット製造装置、
411a;第1混合繊維供給部、411b;第2混合繊維供給部、
412a;第1エアレイ装置、412b;第2エアレイ装置、
413;搬送手段(コンベア)、
414a;第1交絡手段、414b;第2交絡手段、
50;熱膨張性カプセル供給分散装置、
51;供給部、511;供給手段(静電塗布装置)、
52;分散部、521;押圧手段、522;加振手段、
61;溶融手段、62;膨張手段、63;成形手段。
Claims (6)
- 補強繊維どうしが熱可塑性樹脂により結着された構造を有する繊維複合体の製造方法であって、
上記補強繊維は、植物性繊維及び無機繊維のうちの少なくとも一方であり、
上記補強繊維と熱可塑性樹脂繊維とが含まれたマットの表裏いずれか一面に、熱可塑性樹脂からなる殻壁を有する熱膨張性カプセルを供給する供給工程と、
上記マットの一面を押圧しつつ該マットの他面から加振して、該マットの一面に供給された上記熱膨張性カプセルを該マットの他面側へ向かって分散させる分散工程と、
上記マットを構成する上記熱可塑性樹脂繊維を溶融する溶融工程と、
上記マット内に分散された上記熱膨張性カプセルを加熱して膨張させる膨張工程と、を備え、
上記加振は、上記マットの移動方向に対して30〜90度の角度の方向へ振動させて行うことを特徴とする繊維複合体の製造方法。 - 上記供給工程は、上記マットの一面に熱膨張性カプセルを静電塗布して行う請求項1に記載の繊維複合体の製造方法。
- 上記分散工程は、上記マットをコンベアで移動させながら行い、
上記押圧は、上記コンベアの移動方向へ上記マットが進むように回転されたローラで該マットの一面を押圧して行い、且つ、
上記加振は、上記マットのうちの押圧されている部分の他面から行う請求項1又は2に記載の繊維複合体の製造方法。 - 上記加振は、6mm以下の振幅で行う請求項1乃至3のうちのいずれかに記載の繊維複合体の製造方法。
- 上記溶融工程と上記膨張工程とを同時に行う請求項1乃至4のうちのいずれかに記載の繊維複合体の製造方法。
- 上記熱可塑性樹脂繊維を構成する第1の熱可塑性樹脂の融点が、上記熱膨張性カプセルの殻壁を構成する第2の熱可塑性樹脂の融点よりも低い場合であって、
上記溶融工程は、加圧して上記熱膨張性カプセルの膨張を抑制しつつ、上記第1の熱可塑性樹脂の融点以上且つ上記第2の熱可塑性樹脂の融点を超えない温度に加熱して行い、且つ、該溶融工程の後に上記膨張工程を行う請求項1乃至4のいずれかに記載の繊維複合体の製造方法。
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