以下、本発明に係る車両台数特定装置の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも本発明の好ましい一具体例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。本発明は、請求の範囲だけによって限定される。よって、以下の実施の形態における構成要素のうち、本発明の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、本発明の課題を達成するのに必ずしも必要ではないが、より好ましい形態を構成するものとして説明される。
(実施の形態1)
まず、本発明の実施の形態1に係る車両台数特定装置について説明する。
図1は、本発明の実施の形態1における車両台数特定装置100の構成を示すブロック図である。図1の車両台数特定装置100は、自車両の周辺に存在する他車両の車両音をもとに他車両の台数を特定する装置であって、他車両音を検知する車両音検知マイク101と、周波数分析部102と、車両候補音選択部103と、位相曲線算出部104と、台数特定部105と、通知部106とを含む。なお、図1において、矢印線の横の記載は、その矢印線で伝達される主なデータを示す。また、通知部106は、車両台数特定装置100の必須の構成要素ではないが、備えられることが好ましいので(オプション的な構成要素なので)、点線枠で示されている。以下、他のブロック図についても同様である。
車両音検知マイク101は、車両音を含む周囲音を検知するマイクロホン、つまり、他車両のエンジン音、モーター音、走行音等、少なくとも他車両から発せられる車両音を検知するマイクロホン等であり、音情報(例えば、図1に示されるようなWAV形式の音声データ)を出力する。なお、車両音検知マイク101として自車両に搭載されたマイクロホンを用いる場合、風切り音などの雑音も同時に検知されるため、車両音検知マイク101は、車両音と雑音の混合音を検知する。
図2は、車両音検知マイク101による車両音検知を説明する図である。この図は、交差点に近づく自車両と、右側から交差点に近づく2台の他車両(他車両A、B)とを示している。自車両の所定の位置に設置された車両音検知マイク101によって、交差点に接近してくる他車両A及びBの音(以下、「他車両音」とする。)が検知される。自車両の所定の位置とは、例えば、ボンネット前、天井、サイドミラーである。
周波数分析部102は、車両音検知マイク101で検知された周囲音を周波数分析する。例えば、周囲音に対してフーリエ変換処理を施し、周囲音の周波数信号、振幅と位相などを求める。なお、周波数分析部102が行うフーリエ変換処理は、高速フーリエ変換、離散コサイン変換などの別の周波数変換方法による周波数変換でも良い。より詳しくは、この周波数分析部102は、車両音検知マイク101及び102で検知された周囲音に基づいて、複数の所定の時間区分のそれぞれ及び複数の所定の周波数帯域のそれぞれの組み合わせである分析区間毎に、周囲音の音圧を分析する。
図3(a)、(b)、(c)は、車両音検知マイク101で検知された実際の車両のエンジン音を周波数分析部102で周波数分析した結果を示すスペクトログラムである。縦軸は周波数、横軸は時間を表している。このスペクトログラムにおける濃淡は周波数信号のパワー(つまり、音圧)の大きさを示しており、濃い部分はパワーが大きい部分を示す。
エンジンは、所定数のシリンダーがピストン運動を行うことで駆動系を回転させている。そして、車両から発せられるエンジン音は、エンジンの回転に依存した音と、エンジンの回転には依存しない固定振動音や非周期音とからなる。特に車両の外部から検知できる主な音は、エンジンの回転に依存した周期音である。本実施の形態では、このエンジンの回転に依存する周期音に着目する。また、車両によってエンジン構造が異なり、また回転数も異なるため、音色が異なり、複数台の車両が存在する場合は、スペクトログラムにおいては、異なる周波数に大きなパワーを有することとなる。
例えば、図3(a)は、1台の車両が走行した場合に周波数分析部102で得られる車両音のスペクトログラムである。横軸は時間、縦軸は周波数を表している。20Hzから200Hz等の低い周波数帯では、前述の通りエンジン音が検出される。エンジン音は正弦波のような一定の音色を有し、特定の周波数にパワーを有する構造となる。図3(a)において、一筋の黒い部分Aが見られる。この部分Aがエンジン音であり、所定のパワーを有している。図3(d)は、図3(a)のスペクトログラムにおける、ある時間の周波数スペクトルである。横軸は周波数、縦軸はパワー(dB)を表している。ここでは、50Hzにピークを有していることが分かる。
一方、図3(b)、図3(c)は車両が2台の場合に周波数分析部102で得られるスペクトログラムである。横軸は時間、縦軸は周波数を表している。エンジン音が一筋の線として見られるのが分かる。しかし、図3(b)、図3(c)では、車両が2台であるので、2本の筋が見えることが分かる。エンジン音は車両によって異なり、またエンジンの回転数も異なることが多いため、車両が2台等、複数存在する場合、台数分の音色として検出される。ここでは黒い筋として見られている。図3(e)、図3(f)は、それぞれ、図3(b)、図3(c)のスペクトログラムにおける、ある時間の周波数スペクトルである。横軸は周波数、縦軸はパワー(dB)を表している。図3(e)では45Hzと70Hzにピークを有していることが分かる。図3(f)では40Hzと75Hzにピークを有していることが分かる。
車両候補音選択部103は、周波数分析部102による分析に基づいて、周囲音のうち、所定の閾値以上の音圧を有する周波数帯における音を、車両候補音として、選択する。本実施の形態では、車両候補音選択部103は、例えば、車両音と雑音とを区別する所定の音圧閾値を用い、閾値以上の周波数信号を、車両候補音として、選択する。その所定の音圧閾値は、例えば、−48dBなどである。さて、ここで、周波数スペクトルに対して、ピークサーチ法などを用い、ピークを探索し、所定の閾値(−48dBとする)以上であるピークの数を車両の台数として特定すれば、車両の台数を特定することが可能となる。特に実環境下では、周囲の騒音や暗騒音の影響で検知できる車両音は基本周波数や、所定の周波数等、一番パワーを有する周波数のみである場合がある。従って、上記に示すように所定の閾値を用い、閾値以上のピークの数を台数として特定することとしても良い。あるいは、スペクトルサブトラクション法などで予め雑音のレベルを特定し、残った部分を車両音として利用することとしてもよい。
しかしながら、現実に得られる周波数スペクトルでは、1台であっても複数の周波数帯にピークを有する場合もある。
例えば、図4(a)は車両が1台の場合に周波数分析部102で得られるスペクトログラムである。横軸は時間、縦軸は周波数を表している。前述と同様にエンジン音が検出されている。しかし、この図4(a)のスペクトログラムに示されるように、周囲に存在する車両が1台ではあっても、二筋の黒い部分が見られる。図4(d)は、図4(a)のスペクトログラムにおける、ある時間の周波数スペクトルである。横軸は周波数、縦軸はパワー(dB)を表している。当該時刻では、50Hzと90Hzにピークを有していることが分かる。このように、1台の車両音の周波数スペクトルであっても、周波数スペクトルに現れるピークとしては、必ずしも一つのピークとは限らず、複数のピークを有する。図4(d)では、周波数スペクトルは、2本のピークを有するが、3本や4本等、複数を有する場合もある。さらに、そのピークが、楽器などのように倍音に位置する複数のピークとは限らず、車両ごとに任意の位置にパワーを有する場合が多い。したがって、このようなケースでは、単に周波数スペクトルにおけるピークの個数からは、周囲に存在する車両が1台なのか2台なのか等、車両の台数を正確に特定することは困難となる。
さらに、複数台の車両が存在する場合、周波数帯やパワーだけでは、複数台の車両が存在するか否かの区別がより困難となる。
例えば、図4(b)は、車両が2台存在する場合に周波数分析部102で得られるスペクトログラムの例を示している。横軸は時間、縦軸は周波数を表している。実際は1台の車両が一定の速度で走行し、その後方から別の1台の車両が加速し、その一定速度で走行している車両に接近している様子、つまり、2台の車両が接近している状況を示すスペクトログラムである。ここでは、4本の筋の黒い部分が見られる。図4(d)は、図4(b)のスペクトログラムにおける、ある時間の周波数スペクトルである。横軸は周波数、縦軸はパワー(dB)を表している。ここでは、当該時刻では、40Hz、65Hz、85Hz、125Hzにピークを有していることが分かる。このように、1台の車両が存在する場合であっても、周波数スペクトルは、ピークを4本有する場合もあり、そのために、単にピークの個数からは、車両が1台で存在するのか、それとも2台や4台等、複数台存在するのかの特定が困難となる。
特に車両が複数存在する状況において、複数台の車両接近している状況下、もし、1台の車両が存在すると誤判定し、1台の車両のみをユーザに通知し、他方の車両の接近を通知できなかった場合、一方の車両が自車両の正面を通過し、ドライバは安心して交差点へ侵入してしまうので、検知できなかった他方の車両とその後、衝突してしまう可能性が多いにある。よって、複数台の車両を精度よく特定し、通知する必要が生じる。
さらに、実環境下では、風雑音等や反射や回折等によって車両音がかき消されることもある。加えて、車両検知においては瞬時に車両の存在を特定して通知する必要も生じる。
そこで本実施の形態では、車両台数特定装置100は、周波数分析部102によって周波数分析された情報のうち、音圧(パワー)だけでなく、さらに位相の情報を用いて車両台数を特定する。そのために、本実施の形態における車両台数特定装置100は、位相曲線算出部104を備える。その位相曲線算出部104は、車両候補音選択部103で選択された車両候補音のそれぞれについて、位相の時間変化を示す位相曲線を算出する。
ここで、図5を用いて本発明で用いる「位相」の定義を行う。図5(a)には、入力されたエンジン音の波形の例が模式的に示されている。横軸は時間を表しており、縦軸は振幅を表している。ここではエンジンの回転数が時刻(時間の経過)に対して一定であり、エンジン音の周波数が変化しない場合のエンジン音の波形の例が示されている。
また、図5(b)には、フーリエ変換を用いて周波数分析を行う場合の基底波形である所定の周波数fの正弦波(ここではエンジン音の周波数と同じ値を所定の周波数fとしている)が示されている。横軸と縦軸は図5(a)と同じである。この基底波形と、入力された音(つまり、混合音)との畳み込み演算を行うことで、周波数信号(より、特定的には、位相)を求める。この例では、基底波形を時間軸方向に移動させずに固定し、その基底波形と、入力されたエンジン音との畳み込み演算を行うことで、時刻ごとの周波数信号(位相)を求めている。
この処理で求めた結果を図5(c)に示す。横軸は時間を表しており、縦軸は位相を表している。この例では、エンジンの回転数が時刻に対して一定であり、入力したエンジン音の周波数が時刻に対して一定である。このため、所定の周波数fでの位相は一定である、言い換えると、「加速度的に増加又は加速度的に減少」はしていない。なお、この例では、回転数が一定であるエンジン音の周波数と同じ値を所定の周波数fとしたが、エンジン音の周波数よりも小さい値を所定の周波数fとした場合には、そのような周波数fの基底波形を用いた畳み込み演算によって得られる位相は一次関数的に増加する。また、エンジン音の周波数よりも大きい値を所定の周波数fとした場合には、そのような周波数fの基底波形を用いた畳み込み演算によって得られる位相は一次関数的に減少する。いずれの場合も(基底波形の周波数、つまり、所定の周波数fがエンジン音の周波数と同じ、より小さい、及び、より大きい場合も)、所定の周波数fでの位相は、一次関数で表現される変化を示し、加速度的に増加又は加速度的に減少はしていない。
なお、音声信号分野や高速フーリエ変換(FFT)などでは、基底波形を時間軸方向にずらしながら畳み込み演算を行うのが一般的である。この基底波形を時間軸方向にずらしながら畳み込み演算を行う場合は、後に位相を補正することで本発明で定義する位相へと変換することが可能である。以下、図を用いて説明する。そこで、本実施の形態では、基底波形を時間軸方向に移動させずに固定し、その基底波形と、入力されたエンジン音との畳み込み演算で得られる位相を、補正後位相とも呼ぶ。
図6は位相に対する補正方法を説明する図である。図6(a)には、入力されたエンジン音の波形の例が模式的に示されている。横軸は時間を表しており、縦軸は振幅を表している。
また、図6(b)には、フーリエ変換を用いて周波数分析を行う場合の基底波形である所定の周波数fの正弦波(ここではエンジン音の周波数と同じ値を所定の周波数fとしている)が示されている。横軸と縦軸は図6(a)と同じである。この基底波形と入力された音(つまり、混合音)との畳み込み演算を行うことで、周波数信号(より、特定的には、位相)を求める。この例では、基底波形を時間軸方向に移動させながら、その基底波形と、入力されたエンジン音との畳み込み演算を行うことで、時刻ごとの周波数信号(位相)を求めている。
この処理で求めた結果を図6(c)に示す。横軸は時間を表しており、縦軸は位相を表している。入力されたエンジン音の周波数は周波数fであるため、周波数fでの位相のパターンは、1/fの時刻の周期で規則的に繰り返される右肩上がりの傾斜となる。そこで、算出された位相ψ(t)に対して、規則的に繰り返される位相を補正することで、図6(d)に示すような、補正後の位相(ψ´(t)=mod2π(ψ(t)−2πft)(fは分析周波数))が得られる。つまり、基底波形を時間軸方向にずらしながら畳み込み演算を行うことによって位相を算出する場合であっても、位相補正を行うことにより、図5(c)に示す、本発明で定義される位相へと変換することが可能となる。
本実施の形態では、図5に示す位相、つまり、補正後の位相を用いる。また、説明の便宜のため、図6で算出した、基準波形を時間軸方向にずらしつつ算出する位相を補正前位相、補正をした後の位相を「補正後位相」と呼ぶ。そして、本実施の形態で用いる「位相」は「補正後位相」ということになる。
図7は、実際の車両から発せられたエンジン音のスペクトログラムである。車両1台が速度(エンジンの回転数)を変えながら走行した車両音のスペクトログラムである。横軸は時間、縦軸は周波数を表している。エンジン音が一筋の線として見られるのが分かる。なお、実際は車両1台であっても、図4に示すように、2本の筋になったり、3本になったり等、車両特有の音色を有することもあるが、ここでは説明の便宜のため、1筋の線となる区間を例として用いる。
図7の点線の円501、502及び503に示すように、エンジン音は、回転数が変化することで、スペクトログラムにおける筋(ピーク)の周波数が部分的に時刻に応じて変化していることが分かる。
ここで、スペクトログラムにおける筋(ピーク)の周波数の変化に着目すると、周波数がランダムに変化したり、離散的に飛んだりすることはほとんどなく、所定の時間間隔でみると、所定の増減を示していることが分かる。例えば、図7における区間Aでは、右肩下がりに筋(ピーク)の周波数が減少していることが分かる。この区間ではエンジンの回転数は減少しており車両は減速している。図7における区間Bでは、右肩上がりに筋(ピーク)の周波数が増加していることが分かる。この区間ではエンジンの回転数は増加しており車両は加速している。また、図7における区間Cでは、筋(ピーク)の周波数は、ほぼ一定の周波数で推移していることが分かる。この区間Cでは、エンジンの回転数は一定であり車両は定速走行している。
ここで、エンジンの回転数の増減とエンジン音の位相との関係について説明する。
図8(a)は、図7に示されるスペクトログラムの区間Cだけを示す図である。図8(b)は、図7の区間Cにおける、エンジンの回転数が一定のときのエンジン音の波形を模式的に示した図である。ここでは、エンジン音の周波数をfとする。図8(c)は基底波形を示す図である。ここでは基底波形の周波数をエンジン音の周波数fと同じ値にしている。図8(d)は、基底波形に対するエンジン音の位相を示す図である。エンジンの回転数が一定であるエンジン音は、図8(b)に示す正弦波のように、一定の周期を有する。このため、図8(d)に示すように、所定の周波数fでの位相は、時間変化に対して一定であり、つまり、加速度的に増加又は加速度的に減少はしない。
なお、対象とする音が一定の周波数であり、基底波形の周波数が対象とする音の周波数よりも低い場合、位相は徐々に遅れることとなる。しかし、減少量は一定となるため、位相の形状は線形的に減少することとなる。一方、対象とする音が一定の周波数であり、基底波形の周波数が対象とする音の周波数よりも高い場合、位相は徐々に早くなる。しかし、その増加量は一定となるため、位相の形状は線形的に増加することとなる。
図9(a)は、図7に示されるスペクトログラムの区間Bだけを示す図である。図9(b)は、図7の区間Bにおける、エンジンの回転数が増加して車両が加速するときのエンジン音の波形を模式的に示した図である。このときエンジン音の周波数は時間とともに増加する。図9(c)は基底波形を示す図である。例えば、基底波形の周波数はfとする。図9(d)は、基底波形に対する位相を示す図である。エンジン音は正弦波のように周期性を有しつつ、徐々に周期が高くなる波形を有することから(図9(b))、図9(d)に示すように、基底波形に対するエンジン音の位相は、時間変化に対して加速度的に増加する。
図10(a)は、図7に示されるスペクトログラムの区間Aだけを示す図である。図10(b)は、図7の区間Aにおける、エンジンの回転数が減少して車両が減速するときのエンジン音の波形を模式的に示した図である。このときエンジン音の周波数は時間とともに減少する。図10(c)は基底波形を示す図である。例えば、基底波形の周波数はfとする。図10(d)は、基底波形に対するエンジン音の位相を示す図である。エンジン音は正弦波のように周期性を有しつつ、徐々に周期が低くなる波形を有することから(図10(b))、図10(d)に示すように、基底波形に対するエンジン音の位相は、時間変化に対して加速度的に減少する。
したがって、図8(d)、図9(d)及び図10(d)に示すように、基底波形に対するエンジン音の位相を用いて、位相の時間変化に対する加速度的な増減を求めることで、エンジンの回転数の増減、すなわち車両の加減速を判定することができ、さらに、車両の加減速を利用することで、この差で(言い換えると、車両の加減速の同一性を利用することで)車両の台数を精度よく特定することが可能となる。
また、本実施の形態では、短時間で大きく変化する位相の性質を利用することで、スペクトルのパワーでは精度よく特定できない車両の台数を精度よく特定できる。
さらに、実環境下等、雑音などで瞬間的にしか検知できない車両音であっても、短時間のデータで瞬時に車両の台数を特定することが可能となる。よって、周囲に存在する車両の台数を精度よく短時間で運転者に知らせることができる。
そこで、図1の位相曲線算出部104は、車両候補音選択部103が選択した車両候補音における周波数信号の位相(ψ´(t)とする)を用いて、時間経過に伴い位相が変化する位相形状(つまり、位相曲線の形状)を算出する。つまり、車両候補音選択部103は、閾値処理を行い、つまり、閾値以上の音圧を有する所定の周波数帯及び所定の時間は車両音(車両候補音)であると考えて選択するので、位相曲線算出部104は、当該選択された周波数帯及び時間における車両音の位相曲線の形状を算出する。また、本実施の形態では、位相曲線算出部104は、時間経過に伴う変化を示す位相曲線を、例えば、二次曲線(二次の近似曲線)として計算する。
以下では、車両候補音選択部103における閾値処理で選択された周波数帯域(つまり、車両候補音)に対する位相曲線算出部104の処理について説明を行う。また、ここでは、周波数帯域の中心周波数と基底波形の周波数とが一致する場合を例にして説明を行う。つまり、分析周波数(基底波形の周波数)fに対して位相(ここでは、補正後位相ψ´(t)(=mod2π(ψ(t)−2πft))における周波数fが増加するか否かを判定することになる。なお、本実施の形態において、周波数分析部102は、図5に示す、いわゆる基底波形を時間軸方向にずらさない周波数分析とし、得られる位相は補正後位相ψ´(t)(=mod2π(ψ(t)−2πft))を用いる。
図11は、周囲音(ここでは、エンジン音)に対する周波数分析におけるパワーと位相について説明する図である。図11(a)は、図7と同様に、車両のエンジン音をDFT(Discrete Fourier Transform)分析したスペクトログラムである。
図11(b)は、DFT分析の概念を示す図である。例えばエンジンの回転数が増加して加速している区間である時刻t1から、所定の時間窓幅の所定の窓関数(ハニング窓)を用いて、複素空間上に周波数信号601を表したものである。周波数f1、f2、f3等、各周波数の振幅と位相が示されている。周波数信号601の長さが振幅の大きさ(パワー)を示し、周波数信号601と実軸とのなす角が位相を示している。そして、時間シフトを行いながら各時刻における周波数信号を求めることとなる。ここで、一般的にスペクトログラムは各時刻における各周波数のパワーを示すのみであり、位相については省略されている。図7や図11(a)に示すスペクトログラムも同様に、DFT分析したパワーの大きさのみを表示したものである。
周波数信号の位相ψ(t)及び大きさ(パワー)P(t)は、周波数信号の実部をx(t)と表し、周波数信号の虚部をy(t)と表すと、
及び
である。ここでの記号tは周波数信号の時刻を表している。
図11(c)には、図13(a)において、エンジンの回転数が増加して加速している区間(t1〜tn)である周波数(例えば周波数f4)のパワーの時間変動が示されている。横軸は時間軸である。縦軸は周波数信号の大きさ(パワー)を表している。図11(c)より、パワーの変動はランダムであり、増加や減少を観測することはできない。この図11(c)に示すように、一般的にスペクトログラムは位相情報を省略し、パワーのみで信号の変化を表す。このため、エンジン音の音圧の変化を観測するためには、十分に長い時間(数秒)の音信号を必要とする。さらに、風などの雑音を含む場合、音圧の変化はノイズに埋もれてしまうため、観測が困難となる。このため、パワーに関する情報のみから瞬時に車両の台数を特定し、運転者に短時間に知らせる必要がある安全運転支援などのアプリケーションに利用することが、従来困難であった。
図11(d)には、図11(a)において、エンジンの回転数が増加して加速している区間の所定の周波数間(f4から(f4+Δf)へと回転数が増加しているとする)での音のパワーの時間変動が示されている。横軸は時間軸である。縦軸は周波軸であり、斜線で塗りつぶした部分902を一定のパワーを有する区間として表している。図11(d)より、周波数の変動はランダムであり、エンジンの回転数の増加や減少を観測することはできないことが分かる。この図11(d)に示すように、一般的にスペクトログラムでは位相情報を省略し、パワーのみで信号の変化を表すため、エンジン音の周波数の変化を観測するためには、十分に長い時間(数秒)の音信号を必要とする。さらに、風などの雑音を含む場合、周波数変化はさらにノイズに埋もれてしまうため、観測が困難となる。
そこで、本実施の形態では、台数特定部105は、エンジン音の位相に着目し、その位相の時間変化(つまり、位相曲線の形状)をもとに、車両ごとにグループ化(つまり、位相曲線をグループ化)し、車両の台数を特定する。
上記エンジン音の回転数の増減と、位相の時間変化との関係を数式で表すと以下の関係式で表すことができる。
図7等に示すようにエンジン音の周波数の変化は、周波数がランダムに変化したり、離散的に飛んだりすることはほとんどなく、所定の時間間隔でみると、所定の増減を示していることが分かる。したがって、この増減を、例えば、下記の式4で示すような、
一次の区分線形で近似する。具体的には所定の時間区間で見た場合、時刻tにおける周波数f(t)は、初期値f0から時刻tに比例(比例係数A)して増減する線分で線形近似できると考えられる。
そして、周波数f(t)を上記式4で表した場合、時刻tにおける位相ψ(t)は、
と表せる。ここで右辺の第3項のψ
0は初期位相であり、第2項(2πf
0t)は時刻tに比例して角周波数2πf
0tだけ位相が進むことを示している。そして第1項(πAt
2)から、位相は二次曲線で近似できることを示している。よって、本実施の形態では、位相曲線算出部104は、車両候補音選択部103で選択された車両候補音のそれぞれについて、当該車両候補音を示す信号の時間ごとの位相から、位相曲線として、近似計算によって、二次曲線を算出する。
次に、基準波形を時間軸上でずらしつつ算出する位相(補正前位相)から、補正後位相を算出する手法について説明する。
なお、基底波形を時間軸上でずらしつつ、位相を算出する場合、図2(c)と図2(d)に示すように、位相ψ(t)を位相ψ´(t)=mod2π(ψ(t)−2πft)(fは分析周波数)に変換することで位相補正を行う必要がある。以下、詳細を説明する。
初めに、基準の時刻を決定する。図12(a)は、図9(a)における時刻t1からの所定時間区間における位相を示す図であって、図12(a)の黒丸印の時刻t0を基準の時刻に決定している。
次に、位相曲線算出部104は、位相を補正する周波数信号の複数の時刻を決定する。この例では、図12(a)の5個の白丸印の時刻(t1、t2、t3、t4、t5)を、位相を補正する周波数信号の時刻に決定している。
ここで、基準の時刻t0における周波数信号の位相を
と表すこととして、位相を補正する5個の時刻における周波数信号の位相を
と表すことにする。これらの補正する前の位相を図12(a)において×印で示してある。また、対応する時刻の周波数信号の大きさは
で表すことができる。
次に、図13に、時刻t2における周波数信号の位相を補正する方法を示す。図13(a)と図12(a)とは同じである。また、図13(b)は、1/f(fは分析周波数)の時間間隔で、等角速度で0〜2π(ラジアン)まで規則的に変化する位相を実線で表している。ここで、補正したあとの位相を
と表すことにする。図13(b)において、基準の時刻t0と時刻t2との位相を比較すると、時刻t2の位相は時刻t0の位相より
だけ大きい。そこで、図13(a)において、基準の時刻t0の位相ψ(t0)との時間差に起因する位相のずれを補正するために、時刻t2の位相ψ(t2)からΔψを差し引いてψ´(t2)を求める。これが位相補正後の時刻t2の位相である。このとき、時刻t0の位相は基準の時刻における位相であるので位相補正後も同じ値となる。具体的には、位相補正後の位相を
位相補正したあとの周波数信号の位相を図12(b)に×印で示す。図12(b)の表示の方法は図12(a)と同様であるため説明を省略する。なお、基準波形を時間軸上でずらさずに位相を算出する場合は、この補正後位相が直接得られることとなる。
位相曲線算出部104は、位相(補正後位相)の時間変化を曲線(二次曲線である位相曲線)として算出する。まず、位相の形状を計算する際に用いる周波数信号を選択する。ここでは、分析の対象とする時刻をt0として、時刻t0と時刻t1、t2、t3、t4、t5とにおける周波数信号の位相から位相の形状を算出する。このとき、位相曲線を求めるときに用いた周波数信号は所定の値以上の個数(ここでは、時刻t0〜t5の6個の周波数信号)から構成されている。これは、位相距離を求めるために選択された周波数信号の個数が少ない場合に、位相の時間変化の規則性を判定することが困難になるので、それを回避するためである。ここでの所定の時間幅の時間長は、エンジン音の位相の時間変化の性質に基づいて決定することとしてもよい。例えば、加速や減速を頻繁に行う細街路エリアや交差点エリアでは位相の変化が激しいので分析区間を短くし、比較的定常走行を行うエリアでは分析区間を長くする等、使用するエリアによって変更することとしてもよい。また、分析する周波数帯で分析区間を変更することとしてもよい。例えば、200Hz以下などの低周波数の場合、分析区間を長くし、200Hz以上の比較的高い周波数帯では分析区間を短くする等、周波数帯に適した分析区間を適宜使用することとしてもよい。
そして、位相曲線算出部104は、選択した周波数信号の位相から、近似計算によって、位相曲線を算出する。位相曲線は例えば以下の二次多項式(以下の式12)で近似して算出する。
図14は、位相曲線算出部104による位相曲線の算出処理を説明する図である。図23に示すように、位相曲線算出部104は、所定の数の点から二次曲線を算出する。本実施の形態では、位相曲線算出部104は、二次曲線を重回帰曲線として算出する。具体的には、位相曲線算出部104は、各時刻t
i(i=0,1,2,3,4,5)おける補正後の位相をψ´(t
i)とした場合、二次曲線Ψ(t)の各係数A
2、A
1、A
0を、それぞれ、
に従って算出する。なお、上記式13、式14の右辺における各項目は
である。
台数特定部105は、位相曲線算出部104が算出した二次曲線である位相曲線をもとに(より具体的には、二次曲線の二次の係数の類似性(符号の同一性)を用いて)、位相曲線をグループ化し、得られたグループ数を、車両の台数として、特定する。
具体的には、台数特定部105は、位相曲線算出部104が算出した二次曲線の凸(とつ)の向きの同一性を利用することで、車両の同異を区別し、台数を正確に特定する。式12で得られた係数A2が正、すなわち、位相曲線が下に凸(とつ)の場合は、エンジンの回転数が増加しており、加速している車両と考えることができる。一方、係数A2が負、すなわち上に凸(とつ)の場合は、エンジンの回転数が減少して減速している車両と考えることができる。仮にエンジン音が2本(つまり、異なる周波数に位置する2つの筋(ピーク)が)検出され、それら2つのエンジン音について、このように位相曲線の凸の向きが異なる場合は、台数特定部105は、それら2つのエンジン音は異なる車両から発せられたエンジン音であり、2台の車両がいると判定することができる。一方、2つのエンジン音について、位相曲線の凸の向きが同じであれば、台数特定部105は、それら2つのエンジン音は同一の車両から発せられたエンジン音と考えることができ、1台の車両がいると特定することとなる。このようにして、台数特定部105は、位相曲線算出部104が算出した二次曲線である位相曲線の二次の係数の類似性(符号の同一性)を用いて、位相曲線をグループ化し、得られたグループ数を、車両の台数として、特定する。
図15は、台数特定部105による車両の台数の特定方法を説明する図である。図15(a)は図4(a)と同様、1台の車両が接近してくるときに車両音検知マイク101で検出された実際の車両音のスペクトログラムである。ここでは、車両が1台ではあるが、音色を有しているため、所定の閾値以上の音圧のピークが90Hzと、50Hzの2箇所の周波数帯で検出されており、スペクトログラムでは2本の黒い筋として見えることが分かる。これらの2本の黒い筋が、車両候補音選択部103によって選択される領域(車両候補音)である。台数特定部105は、このような2本の黒い筋、つまり、このように所定の周波数帯であって、所定の時間幅(ここでは例えば100msとする)の周波数信号の位相の形状をもとに台数を特定する。図15(a)において黒い四角で囲む領域は分析区間(つまり、車両候補音選択部103によって選択された領域)である。分析領域1は周波数90Hz、時間100msから200msまでの100ms間であり、分析領域2は周波数50Hz、時間100msから200msまでの100ms間である。当該分析区間1及び2での位相を、それぞれ、矢印で指し示す位相曲線の通りとする。つまり、位相曲線の形状は、分析領域1及び2ともに、下に凸の形状と算出されている。このようなケースでは、両分析領域1及び2での形状がともに下に凸と類似しているので、これら両分析領域1及び2に対応する2本の筋(ピーク)は1台の車両から発せられたエンジン音と考えられ、台数特定部105は、1台の車両が存在すると特定することとなる。一方、2台の車両の場合は、位相曲線の形状が異なるため、台数特定部105によって別車両と区別されることとなる。
一方、図15(b)は図4(b)と同様、2台の車両が接近してくるときに車両音検知マイク101で検出された実際の車両音のスペクトログラムである。所定の閾値以上の音圧のピークが125Hz、85Hz、65Hz、40Hzの4箇所の周波数帯で検出されており、スペクトログラムでは4本の黒い筋として見えることが分かる。これらの4本の黒い筋が、車両候補音選択部103によって選択される領域(車両候補音)である。
分析領域1は周波数125Hz、分析領域2は周波数85Hz、分析領域3は周波数65Hz、分析領域2は周波数40Hzのそれぞれ時間100msから200msまでの100ms間の分析領域(つまり、車両候補音選択部103によって選択された領域)である。当該分析区間における車両音の位相をそれぞれ矢印で指し示す位相曲線の通りとする。分析領域1と分析領域3では、位相曲線は下に凸となっており、台数特定部105によって、これらの分析領域1及び3に対応する2本の筋(ピーク)が1台の車両と分類される。また、分析領域2と分析領域4では、位相曲線は上に凸となっており、これらの分析領域2及び4に対応する2本の筋(ピーク)が他方の1台の車両と分類される。よって、台数特定部105によって、合計2台の車両が存在すると特定されることとなる。
通知部106は、台数特定部105で特定された台数をユーザに通知する表示制御部及び表示部等である。また、この通知部106は、台数に応じて通知の様態を制御する。例えば、カーナビゲーションシステムなどに備えられた場合、出力の様態は音とし、通知部106は、音で車両の接近と、その台数を通知する。
図16は、通知部106による通知の例を説明する図である。
図16(a)は交差点に差し掛かった自車両に対し、右側から1台車両接近している状況を示す図である。ここでは、台数特定部105により1台と特定されているとする。ここで通知部106は、車両が1台接近しているとして「ポーン」と音でドライバに通知している。
図16(b)は交差点に差し掛かった自車両に対し、右側から2台車両接近している状況を示す図である。ここでは、台数特定部105により2台と特定されているとする。ここで通知部106は、車両が2台接近しているとして「ポーン、ポーン」と音でドライバに通知している。
車両の接近を通知する場合、より早く、かつ簡易にドライバに通知する必要があり、通知部106により「ポーン」と音で通知することで、安全走行の支援を促す効果を生じる。また、単に車両の接近のみを通知したのでは、ドライバは車両が1台接近しているのか、それとも複数台接近しているのか分からず、混乱を生じる。そこで特定された車両が1台の場合は「ポーン」と1回、通知し、特定された車両が2台の場合は「ポーン、ポーン」と2回音を鳴らすことでその差を知らせる。つまり、通知部106は、台数特定部105で特定された車両が1台の場合と複数台の場合とで、異なる様態でドライバへの通知を行う。
なお、本実施の形態では、周囲に存在する車両が1台と2台であるケースを例に説明を行ってきたが、本発明は、これに限ったものではない。3台等、複数台、車両が存在すれば、その台数分、通知部106が音を鳴らすこととしてもよい。
さらには、車両が3台など、2台以上存在する場合は、台数分ではなく、2台の通知と同様に例えば「ポーン、ポーン」と複数台である旨を通知し、特定された車両が1台か、それとも複数台かで通知を切り替えることとしてもよい。ドライバとしては、特定された車両が1台なのか複数台なのかさえ分かるだけでも、判断の支援につながる場合も多い。特定された車両が1台のみであれば、当該1台が通過後、すぐに交差点に侵入するが、特定された車両が複数台の場合は、その車両の台数が2台であろうが、3台であろうが、いずれにせよ待機する等、判断することが可能となる。そこで、本実施の形態に示す手法を用いて、特定された車両が1台か複数台かを区別し、通知部106は、通知の態様を切り替えることとしてもよい。また、本実施の形態では、出力様態を音として説明を行っているが、本発明に係る通知部106はこれに限ったものではない。車両の存在を視覚的に通知する場合、通知部106は台数分の車両を表示してもよい。
このように、特定された車両が1台であるか、複数台であるかによって通知部106での制御を変えることとしてもよい。運転状況によっては、特定された車両が1台か、それとも複数台であるかがドライバには重要な場合がある。例えば、交差点で接近車両の存在を知りたい場合、特定された車両が1台であればその1台が通過後、交差点に侵入できるが、特定された車両が複数台の場合は、2台であろうが3台であろうが、いずれにせよ待機しなければならない。そこで、1台か、複数台かによって通知の様態を変えることとしてもよい。
図17、図18のフローチャートを用いて本実施の形態における車両台数特定装置100の動作フローを説明する。なお、図17は、本実施の形態の車両台数特定装置100の動作を示すフローチャートである。図18は、図17におけるステップS105の詳細を示すフローチャートである。
まず、車両音検知マイク101は、車両音を検知する(ステップS101)。次に周波数分析部102は、周囲音の周波数分析を行う(ステップS102)。
次に車両候補音選択部103は、周波数分析された周囲音から、所定の周波数帯及び時間区分を、車両候補音として、選択する(ステップS103)。例えば、車両候補音選択部103は、音圧に閾値を設け、予め定められた閾値以上の周波数帯及び時間区間を、車両候補音として、選択する。次に、位相曲線算出部104は、選択された区間(車両候補音)の位相の時間経過に伴う形状を位相曲線として算出する(ステップS104)。つまり、位相曲線算出部104は、車両候補音選択部103で選択された区間(車両候補音)の位相(補正後位相)から、式13、式14、式15を用いて算出する。
次に、算出された位相曲線をもとに、台数特定部105は、車両の台数を特定する(ステップS105)。
図18は、台数特定部105による台数特定(ステップS105)の詳細フローである。まず、台数特定部105は、位相曲線の凸の向きを参照し(ステップS201)、凸の向きで処理を分岐させる(ステップS202)。つまり、位相曲線が上向き(上に凸)なら上向きに対応するフラグを立てる(ステップS203)。具体的には、台数特定部105は、式13の係数A2の値の正負を参照することとなる。
一方、位相曲線の凸の向きが下向きなら、台数特定部105は、下向きのフラグを立てる(ステップS204)。最後に、台数特定部105は、フラグの数を参照し、車両の台数を算出することとなる(ステップS205)。このように、台数特定部105は、位相曲線算出部104が算出した二次曲線である位相曲線の二次の係数の類似性を用いて、車両の台数を特定する。
なお、本実施の形態では2値処理(ステップS202〜S204)を行っているが、本発明に係る車両の台数の特定方法は、これに限ったものではない。例えば、図19に示される、図17におけるステップS105の別の詳細を示すフローチャートのように、係数A2の値及び所定の誤差閾値(k1、k2)をもとに、位相曲線の形状を3種類以上に分類し、車両の台数を特定することとしてもよい(ステップS601〜S606)。例えば、係数A2の値が2のものと(下に凸)、1のもの(下に凸ではあるが別車両となる)、そして−1(上に凸)の3台等、車両の台数に応じて位相曲線の形状を分類することも可能である。
最後に、通知部106は、特定された車両の台数に応じて通知を行う(ステップS106)。
以上のように、本実施の形態における車両台数特定装置100によれば、車両音の位相曲線の形状、つまり、車両音に特有の性質をもとに精度よく車両の台数を特定し、ドライバに通知し、安全走行を支援することが可能となる。また、車両の接近を通知する場合、より早く、かつ簡易にドライバに通知する必要があるが、本実施の形態における車両台数特定装置100は、位相の時間に伴う変化をもとに車両の台数特定するため、数百ms等、短い時間で車両の台数を特定することもできる。
また、従来技術のように単に車両の接近のみを通知したのでは、ドライバは1台の車両が接近しているのか、それとも複数台の車両が接近しているのか分からず、混乱を生じることがある。一方、本実施の形態における車両台数特定装置100は、車両音に特有の位相曲線の形状をもとに台数を特定するため、複数台車両が存在する場合により効果を発揮し、1台の車両が通過後に誤って自車両が交差点に侵入してしまう危険性を回避することもできる。
このように、本実施の形態では、車両台数特定装置100は、同時刻における車両音の位相の曲線の形状を用いて車両の台数を特定した。具体的には、車両台数特定装置100は、図15(a)に示すように、同時刻における車両音の位相曲線の凸の向きを参照し、同じ向きであれば、それら複数の位相曲線は一台の車両から発せられた車両音に係る位相曲線であると特定し、位相曲線の凸の向きが異なれば、それら複数の位相曲線は別車両から発せられた車両音に係る位相曲線であるとして車両の台数を特定した。これによって、車両の加減速の状態における類似性も判断した上で車両の台数が特定され、複数の車両が接近している状況等の複雑な状況においても、より正確に、車両の台数が特定される。
なお、本発明に係る車両台数の特定方法は、これに限ったものではない。例えば、所定の時間幅を有し、所定の時間幅内における位相曲線の形状を用いて車両台数の特定を行うこととしても良い。
図20は、所定の時間幅内における位相曲線の形状を用いて車両台数の特定を行う方法を説明する図である。図20(a)は、図15(b)に示すスペクトログラムと同様である。車両2台が走行しているときに得られたスペクトログラムであり、閾値以上の車両音としては4本の筋として現れている。図15(b)に示されるように、本実施の形態では、ある同時刻の位相の形状をもとに車両の台数を特定した。図20(a)に示される方法では、同時刻ではなく、所定の時間幅内(ここでは、100ms〜500msの400ms内)で車両の台数を特定する。具体的には、分析領域1は、300msから400msの100ms間、分析領域2は、200msから300msの100ms間、分析領域3は、100msから200msの100ms間、分析領域4は、400msから500msの100ms間であり、それら分析領域1〜4のそれぞれについて、位相曲線の形状を算出する。そして、これらの位相曲線の形状を用いて車両の台数を特定する。具体的には、分析領域1と分析領域3では位相曲線の形状が上に凸、分析領域2と分析領域4では位相曲線の形状が下に凸であるため、複数台(2台)と特定する。
一般に、車両は、加減速を短時間のうちに頻繁に繰り返し行うことは少なく、ある所定時間内では加速のままであったり、減速のままであったりする。したがって、所定時間内における位相形状は類似する事が多い。また、実環境下におけるエンジン音は、周囲の雑音等の影響で必ずしも所定の閾値の音圧を有しているとは限らず、同時刻にすべての車両音が検出できない場合もある。したがって、同時刻の位相形状ではなく、所定時間幅内における位相曲線の形状をもとに車両の台数を特定することとしてもよい。これにより、より実環境下に即した車両台数の特定が可能となる。
また、スペクトログラムにおける同一の筋(ピーク)における時間の異なる複数の分析領域を用いて位相曲線の形状を判断することとしてもよい。図20(b)も、図20(a)や図15(b)に示すスペクトログラムと同様である。車両2台が走行しているときに得られたスペクトログラムであり、閾値以上の車両音としては4本の筋として現れている。図15(b)や図20(a)に示されるように、実施の形態2及びその変形例では、ある時刻の分析領域を用いて1台の車両の特定を行った。ここでは、所定の時間幅内(100ms〜500msの400ms内)の分析領域を用いて特定する。具体的には、分析領域1は、分析周波数を125Hz、時間100msから200msの100ms間、分析領域2は、分析周波数を125Hz、200msから300msの100ms間、分析領域3は、分析周波数を125Hz、400msから500msの100ms間であり、それら分析領域1〜3のそれぞれについて、位相曲線の形状を算出する。そして、これらの位相曲線の形状を用いて、一つの筋(ピーク)に対する位相曲線の形状(言い換えると、車両の加減速に関する状態)を算出する。具体的には、125Hzの分析区間(図20(b)における最も高い周波数帯の筋(ピーク)における3つの分析区間)である分析領域1、分析領域2、分析領域3では、位相曲線は、いずれも上に凸であるため、これらの分析領域1〜3に係る一つの筋(ピーク)では、この車両は加速状態にあると判断する。これにより、より信頼度が高い車両の状態を特定することができる。他方、周波数40Hzの分析区間(図20(b)における最も低い周波数帯の筋(ピーク)における3つの分析区間)では、位相曲線は、いずれも上に凸であるので(位相曲線の図示を省略)、以上のことから、125Hzの筋(ピーク)の車両音を発する車両と40Hzの筋(ピーク)の車両音を発する車両とは別車両であると判断する。これにより、より信頼度が高く、車両の区別をすることが可能となり、したがって台数についても、より高い精度で特定することが可能となる。
上記同様、車両は、加減速を短時間のうちに頻繁に繰り返し行うことは少なく、ある所定時間内では、特に位相曲線の凸の向きなど、位相曲線の形状が類似することが多い。しかし、実環境下におけるエンジン音は、周囲の雑音等の影響で位相が乱れ、形状に誤差を生じることとなる。そこで、ある瞬間の位相曲線の形状ではなく、所定時間内の位相曲線の形状をもとに当該車両の状態、例えば加速中であると判定することで、より高い信頼度で位相曲線の形状を特定することが可能となり、車両台数の特定の精度も向上する。
さらに、本実施の形態では、位相曲線の凸の向きで車両音をグループ化し、車両台数の特定を行ったが、本発明に係る車両台数の特定はこれに限ったものではない。同じ加速中の状態にある車両であっても、複数台の車両が存在する場合、それらの車両から発せられる車両音の位相曲線について、凸の度合い(式12の二次の係数A2)が異なることとなる。そこで、凸の度合い(式12の二次の係数A2)でグループ化し、車両台数を特定することとしても良い。
また、本実施の形態では、位相曲線を二次曲線とし、その二次曲線の凸の向き(つまり、二次曲線の二次の係数の類似性(符号の同一性))でグループ化することで、車両台数の特定を行ったが、本発明に係る位相曲線のグループ化の方法はこれに限ったものではない。例えば、所定の位相曲線の形状を予め蓄積しておき、その形状との誤差でグループ化することとしてもよい。例えば、上に凸のある曲率を有した位相曲線(位相曲線1とする。)と、下に凸のある曲率を有する位相曲線(位相曲線2とする。)を蓄積しておく。そして、検知された車両音から得られた各時間における位相と、当該各位相曲線上の位相との誤差を算出し、誤差の小さい位相曲線を、その車両音の位相曲線として、当てはめる。そして位相曲線1と誤差が小さい分析区間を一つのグループ、位相曲線2との誤差が小さい分析区間を他の一のグループとして台数を特定することとしてもよい。これにより、近似曲線を算出する必要がなく、処理量の削減になり、瞬時に車両の台数を特定してユーザに通知する必要がある車載アプリケーションにも効果を奏する。
また、特定する車両の台数については、正確な台数でなくても、1台であるか、複数台であるかの区別であってもよい。これにより、車両が複数台存在するにもかかわらず、1台の車両が存在すると誤ってユーザに通知し、ドライバに誤解を生じさせることを防ぐという、安全走行支援の効果を奏することが可能となる。
さらに、本発明に係る車両の特定方法は上記手法に限ったものではなく、位相の時間経過に伴う位相曲線の形状をもとに分類し、車両の台数を特定する方法であれば、いかなる方法も、本願発明の思想を逸脱しない限り、当然本願発明に含まれる。
なお、本実施の形態では、位相曲線の凸の向きで車両音(位相曲線)をグループ化し、車両台数の特定を行ったが、本発明に係る車両台数の特定はこれに限ったものではない。位相曲線の凸の向きは、すなわち、車両の加減速を示す情報となる。そこで、グループ化するのみではなく、当該グループ化された車両が、加速しているのか、減速しているのかを判断し、加減速をもとに通知を切り替えることとしてもよい。
例えば、図15(b)に示すように、1台の車両は減速しており、一方、他方の車両が加速している場合は、当該車両が後方、あるいは死角から追い抜きをしているとも考えられる。一方、2台の車両が存在し、一台が減速し、他方も減速している場合は、前方の車両が止まろうとし、後方の車両もそれに従って止まろうとしていると考えられる。そこで、これらを区別し、通知部106による通知を変更することとしてもよい。例えば、後者の場合、2台の車両が存在するが、危険度は低いため、「ポーン、ポーン」と台数だけ通知し、一方、前者の場合は後方車両が追い抜きをかけている危険性もあるため、「ポーン、ポーン、車両注意」等、通知の様態を切り替えることとしてもよい。このように、車両の台数のみならず、複数台の車両の加減速の組み合わせに応じて通知を制御することとでより安全走行支援の効果を奏する。
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2に係る車両台数特定装置について説明する。
前記実施の形態1では、車両音を周波数分析し、分析された位相から位相曲線を算出し、当該曲線をもとに車両の台数を特定していた。本実施の形態では、位相曲線をもとに風などの雑音との混合音から車両音を抽出し、抽出した車両音に基づいて車両の台数を特定してもよい。
図21は、位相曲線をもとに混合音から車両音を抽出し、抽出した車両音に基づいて車両の台数を特定する、実施の形態2における車両台数特定装置200の構成を示すブロック図である。実施の形態1の構成要素に加え、車両音抽出部107が加わる。前記実施の形態1と同じ構成要素には同じ符号を付与し、説明を省略する。
車両音抽出部107は、位相曲線算出部104で算出された位相曲線をもとに車両音を抽出する。つまり、車両音抽出部107は、は、周波数分析部102による分析によって得られた位相と、位相曲線算出部104で算出された位相曲線上の位相との誤差を算出し、算出した誤差をもとに、周波数分析部102による分析によって得られた領域から、車両音に対応する領域を抽出する。
そして、台数特定部105は、車両音抽出部107で抽出された車両音の領域における位相曲線を用いて、車両の台数を特定する。
ところで、本発明に係る車両台数特定装置を例えば車両に搭載し、実環境下で用いる場合、周囲の環境音や自車両の走行によって生じる風切り音等、雑音の影響が非常に大きくなる。
図22は車両音と雑音を説明する図である。図22(a)は、実環境下において車両音検知マイク101で検知された車両音と雑音をスペクトル分析した結果を示している。横軸は時間、縦軸は周波数を表している。黒色の濃い部分がパワーの高い部分を示す。図7や図15等と比較し、全体的に黒色になっていることが分かる。風などの雑音が大きく、エンジン音以外の部分もパワーが大きいことを示している。時刻t2はエンジン音部分であり、図22(b)は当該時間のパワーを示している。一方、時刻t3は雑音部分であり、図22(c)は当該時間のパワーを示している。パワーを比較すると、雑音もエンジンと同程度のパワーを有することもあり、例えばパワーの閾値だけでは車両音を精度よく抽出できない場合がある。そこで、本実施の形態では、位相曲線をもとに車両音をより精度よく抽出する。
図23は、車両音抽出部107による車両音の抽出方法を説明する図である。図23(a)は、図22(a)と同様に混合音のスペクトログラムである。図23(b)は、図23(a)に示されたスペクトログラムのうち、ある車両のエンジン音の部分であって、減速をしている領域における位相の分析結果を示す。横軸は時間、縦軸は位相を表し、丸印は実際の各時間における位相(補正後位相)の値である。前記実施の形態1で示すように、位相曲線算出部104において、上に凸の二次曲線が算出されている。二次曲線を黒い点線で示している。ここで、車両音抽出部107は、当該領域が車両音か否かの判断をする。例えば当該二次曲線との誤差を算出し、誤差が所定の閾値以内である場合は当該領域が車両音を示しており、一方、誤差が所定の閾値以上の場合は当該領域が雑音を示していると判断する。誤差は、例えば、残差絶対値和によって算出する。すなわち、各実際の位相の値と、対応する時間における二次曲線の値と差の絶対値を加算して時間平均した値である。なお、誤差の評価方法としては、これに限ったものではなく、分析する領域が位相曲線と、どの程度ずれているかを示す指標であればいかなる評価方法であってもよい。
図23(b)に示された例の場合、位相の二次曲線と、実際の位相の値との誤差が小さく、車両音として抽出されることとなる。
一方、図23(c)は加速をしている領域での分析結果を示す。この領域では、位相曲線算出部104において下に凸の二次曲線が算出されている。図23(b)のケースと同様に、実際の位相と二次曲線との誤差が小さく、当該領域も車両音として抽出されることとなる。
さらに、図23(d)は定常走行をしている領域での分析結果を示す。位相曲線算出部104において二次の係数が0の直線が算出されている。こちらも、実際の位相と曲線(より厳密には、直線)との誤差が小さく、当該領域も車両音として抽出されることとなる。
一方、図24(e)は風雑音の領域での分析結果を示す。風雑音は、エンジン音と異なり、突発的なカルマン渦の重ねあわせによって生じる。そして、スペクトル上では、エンジン音と区別がつかない程度にパワーを有するものの、位相はエンジン音とは異なり、ばらばらとなる性質を有する。従って、算出された位相曲線との誤差は大きくなる。図24(e)を参照すると、位相曲線は算出されているが、その位相曲線と各値(実際の位相)との差は大きく、当該領域の位相の誤差は非常に大きいものとなる。
図24は、エンジン音と風雑音について、位相曲線との誤差を説明する図である。縦軸は誤差を度(位相差)で示している。実際に検知されたエンジンの誤差は10度であるのに対し、風雑音は50度という結果が得られた。そこで、例えば、誤差に閾値(例えば20度等)を設け、閾値を用いて、車両音を抽出することができる。
図25は、車両音抽出部107による車両音の抽出結果の例を説明する図である。図25(a)は、図23(a)と同様に、実際に検知されたエンジン音と風雑音の混合音のスペクトログラムである。図25(b)は、図25(a)に示されるスペクトログラムのうち車両音抽出部107で抽出されたエンジン音部分である。横軸は時間、縦軸は周波数を表している。抽出された領域を黒く塗りつぶして示している。雑音が除去され、エンジン音の部分のみが精度よく抽出されている。
なお、本実施の形態における台数特定部105は、車両音抽出部107で抽出された領域を用いて、前記実施の形態1で示す手法を用いて車両の台数を特定する。
図26、図27のフローチャートを用いて本実施の形態における車両台数特定装置200の動作を説明する。
前記実施の形態1と同様のフローには同様の符号を付与し、説明を省略する。
前記実施の形態1における位相曲線算出部104が位相曲線を算出した後(ステップS104)、車両音抽出部107が車両音の抽出を行うステップが加わる(ステップS401)。
車両音抽出ステップでは、車両音抽出部107は、まず、周波数分析部102による分析によって得られた各時間の位相と位相曲線算出部104で算出された位相曲線との差を算出し(ステップS501)、その平均を算出する(ステップS502)。そして、車両音抽出部107は、平均が所定の閾値(20度など)未満か否かを判断し(ステップS503)、閾値未満であれば(ステップS503でYes)、当該各時間に対応するスペクトログラムの領域を、車両音として抽出する(ステップS504)。その後に、台数特定部105は、車両音抽出部107で抽出された領域を用いて、前記実施の形態1で示す手法を用いて車両の台数を特定する(ステップS105)。そして、通知部106は、台数特定部105で特定された車両の台数に応じた通知を行う(ステップS106)。
このように、本実施の形態2における車両台数特定装置200によれば、位相曲線をもとに混合音から車両音を抽出し、抽出した車両音に基づいて車両の台数が特定され、ドライバに通知される。よって、本実施の形態2に示す手法を用いることで、走行に伴う風切り音など、雑音環境下でも精度よく車両音を抽出することができ、当該車両音をもとに台数を特定して通知することが可能となる。
以上、本発明に係る車両台数特定装置について、実施の形態及び変形例を用いて説明したが、本発明は、これらの実施の形態及び変形例に限定されるものではない。
たとえば、本発明の主旨を逸脱しない範囲で、上記実施の形態及び上記変形例における構成要素をそれぞれ任意に組み合わせてもよい。
また、今回開示された実施の形態及び変形例は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
また、上記実施の形態における車両台数特定装置を構成する構成要素は、専用の電子回路等のハードウェアで実現されてもよいし、マイクロプロセッサ、ROM、RAM、ハードディスクドライブ、ディスプレイユニット、キーボード、マウスなどから構成されるコンピュータシステムとして構成されてもよい。RAMまたはハードディスクドライブには、コンピュータプログラムが記憶されている。マイクロプロセッサが、コンピュータプログラムに従って動作することにより、各システムまたは各装置は、その機能を達成する。ここで、コンピュータプログラムは、所定の機能を達成するために、コンピュータに対する指令を示す命令コードが複数個組み合わされて構成されたものである。
さらに、上記実施の形態及び変形例における車両台数特定装置を構成する構成要素の一部または全部は、1個のシステムLSI(Large Scale Integration:大規模集積回路)から構成されているとしてもよい。システムLSIは、複数の構成部を1個のチップ上に集積して製造された超多機能LSIであり、例えば、マイクロプロセッサ、ROM、RAMなどを含んで構成されるコンピュータシステムである。RAMには、コンピュータプログラムが記憶されている。マイクロプロセッサが、コンピュータプログラムに従って動作することにより、システムLSIは、その機能を達成する。
さらにまた、上記実施の形態及び変形例における車両台数特定装置を構成する構成要素の一部または全部は、各システムまたは各装置に脱着可能なICカードまたは単体のモジュールから構成されているとしてもよい。ICカードまたはモジュールは、マイクロプロセッサ、ROM、RAMなどから構成されるコンピュータシステムである。ICカードまたはモジュールは、上記の超多機能LSIを含むとしてもよい。マイクロプロセッサが、コンピュータプログラムに従って動作することにより、ICカードまたはモジュールは、その機能を達成する。このICカードまたはこのモジュールは、耐タンパ性を有するものであってもよい。
また、本発明は、上記に示す方法であってもよい。また、これらの方法をコンピュータにより実現するコンピュータプログラムであってもよいし、前記コンピュータプログラムからなるデジタル信号であってもよい。
さらに、本発明は、上記コンピュータプログラムまたは上記デジタル信号をコンピュータ読み取り可能な非一時的な記録媒体、例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、CD−ROM、MO、DVD、DVD−ROM、DVD−RAM、BD(Blu-ray Disc(登録商標))、半導体メモリなどに記録したものであってもよい。また、これらの非一時的な記録媒体に記録されている上記デジタル信号であってもよい。
また、本発明は、上記コンピュータプログラムまたは上記デジタル信号を、電気通信回線、無線または有線通信回線、インターネットを代表とするネットワーク、データ放送等を経由して伝送してもよい。
また、本発明は、マイクロプロセッサとメモリを備えたコンピュータシステムであって、上記メモリは、上記コンピュータプログラムを記憶しており、上記マイクロプロセッサは、上記コンピュータプログラムに従って動作するものであってもよい。
また、上記プログラムまたは上記デジタル信号を上記非一時的な記録媒体に記録して移送することにより、または上記プログラムまたは上記デジタル信号を、上記ネットワーク等を経由して移送することにより、独立した他のコンピュータシステムにより実施してもよい。